330 :
ミステリ板住人 ◆C2eJJPwS7M :
ここで、出来る限り客観的な観点に立った歴史・時代小説ベスト10(順不同)を紹介して
おこう。
作品選定にあたっては、読者が歴史・時代小説の多様なテーストに触れられるように
配慮し、一作家一作品(又はシリーズ)とし、長・短編、ジャンル等、
全て区別せずに込みとしたうえ、併せて、わたくしの簡単なオリジナルコメントを付してみた。
1 竜馬がゆく全8巻 司馬遼太郎 文春文庫
司馬作品から一作だけということであれば、この作品を推す。
一作だけなら、「坂の上の雲」の方が良いのではないか、という意見も当然あるだろうが、
時代小説の爽快な面白さも持つ本作を、あえてチョイスしてみた。
「坂の上・・」は、あまりに堂々たる歴史小説過ぎるような気がしたのだ。
2 長英逃亡 吉村昭 新潮文庫
自分としては、「桜田門外ノ変」とのチョイスに悩んだが、長英に関する吉村氏独自の
解釈が読ませどころでもある本作を取った。
前述したとおり、全編スリルとサスペンスの中に叙情性も溢れる佳作である。
3 三屋清左衛門残日録 藤沢周平 文春文庫
この人は、本来は短編の名手だと思うが、全編に渋い周平節とも言うべきものが満開、
ボリューム的にも読みごたえ十分な本作をチョイスしてみた。
人によっては、「蝉しぐれ」あたりを推す人もいるであろう。
4 樅の木は残った上・下 山本周五郎 新潮文庫
この人も、短編の名手だと思うが、長編なら、やはりこの作品であろう。
周五郎武家ものの最高傑作であり、歴史小説でありながら、この作者特有の
滋味が全編に溢れており、申し分ない。
5 甲賀忍法帖 山田風太郎 角川文庫
山田忍法帖の面白さの全ては、既にこの第一作である本作に集約されていたと言える。
後期の忍法帖のような、奇をてらったようなはしゃぎ過ぎな部分が無く、
クールな視点で貫かれているのがいい。
331 :
ミステリ板住人 ◆C2eJJPwS7M :03/06/14 08:35 ID:0j3sG4k8
6 影武者徳川家康 隆慶一郎 新潮文庫(絶版)
寡作ながら、実力派時代小説作家だった筆者の力量が十二分に発揮された作品。
板違いなミステリ板に単独スレが立ったほどの面白さ、と言えば本作の面白さの
一端でも伝わるだろうか。
7 木枯し紋次郎 笹沢左保 光文社文庫
「赦免花は散った」「女人講の闇を裂く」「六地蔵の影を斬る」初期の三作品集は、
紋次郎シリーズの基盤を形成した傑作揃い。まず、この三冊を読むこと。お薦め。
テレビ「新木枯し紋次郎」の原作にもなった後期は、面白い作品も多いが、
中期は、ややマンネリで迫力を欠く作品が多い。
8 鬼平犯科帳 池波正太郎 文春文庫
文庫の第5巻くらいまでは、息もつかせぬ面白さ。以後は、全体的に見ればマンネリ。
まだ鬼平も盗賊も人間臭く、ドキュメンタルな迫力さえある5巻くらいまでを読んで
みれ!
9 眠狂四郎無頼控全6巻 柴田錬三郎 新潮文庫
狂四郎シリーズの魅力は、やはりスピーディな読み切り短編にある。
シバレン作品には、テーマ性を持つ長編もあるが、やはりこの作品を推す。
まず、3巻くらいまで読んでみれ!
10 半七捕物帳全6巻 岡本綺堂 光文社文庫
半七捕物帳は、全編にわたり、出来不出来の差が少ない捕物帳の佳作揃いである。
捕物帳は、このシリーズに始まり、そして終った。(終りの始まり)
半七の養父吉五郎が主人公のシリーズ番外編の中編「白蝶怪」を含めて、
全6巻、全て読破しれ!