三菱重工業は、米航空宇宙業界最大手のボーイング社を中心にアメリ
カの官民が二〇〇五年の実用化を目指している次世代大型ロケット「デ
ルタ4」向けに、エンジンと燃料タンクを供給することで基本合意した
。関係筋が五日明らかにしたもので、今夏までに正式契約する。三菱重
工の高性能エンジンが高く評価されたためで、日本の宇宙技術が海外で
本格的に採用されるのは初めてだ。アメリカの官民大型プロジェクト「
デルタ4」に、三菱重工の技術が採用されることで、「H2ロケット」
の打ち上げ失敗で低下した日本の信頼回復につながるとともに、輸出に
よる量産効果で、日本の航空宇宙産業の競争力を高める効果も期待され
ている。
「デルタ4」は米航空宇宙局(NASA)や国防総省が開発を支援し
ており、百回以上の打ち上げが予定されている。価格は一機当たり百億
円に上り、一兆円規模の市場が見込まれる大型プロジェクトだ。
三菱重工が提供するのは「デルタ4」の第二段エンジン。初の純国産
ロケット「H2」の開発で蓄積した技術を応用し、昨年からボーイング
社との共同開発に着手した。このエンジンは、一度着火が終了した後も
再び着火できるため、「再着火式」と呼ばれ、業界では世界最先端レベ
ルとの評価を受けている。
「H2」は打ち上げに失敗したものの、失敗の主因は第一エンジン部
分にあり、三菱重工が開発した第二エンジンの再着火式技術は無関係だ
った。このため、ボーイング社は打ち上げ失敗後も三菱重工のこの技術
を高く評価、共同開発の成果も踏まえて「デルタ4」に採用することを
決めた。
三菱重工はエンジンを名古屋誘導推進システム製作所(愛知県小牧市
)で製造する方向だ。
また、「デルタ4」のエンジンや燃料タンクだけでなく、二段目用の
液体水素タンクを三菱重工が供給することでもすでに基本合意している
。このため、ボーイング社は主要部品の多くを三菱重工に依存する見通
しで、米国のロケットに外国製エンジンが使用されるのも極めて異例の
ことだ。
(2月5日14:32)
http://www.yomiuri.co.jp/newsj/0205it03.htm