ジョッキーバトルロワイヤル

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428ロボ丸
「何や?まだゴキブリがおったんか…こいつは早速駆除しないとな!!」
言うや否や、和田はターフビジョンに向かってマシンガンをぶっ放した。
バリバリバリ…と照明の割れる音が背中越しに響く。
まともに対峙しても勝ち目がない事は幹夫が身体を張って証明してくれた。
だとしたら…蛯名が選んだ道は「逃げる事」だった。

人間とはつくづく業の深い生き物だ、と蛯名は思った。
いつ死んでもいいと頭の中で思っていながら、最後の本能が逃げる方を選択してしまう。
「待たんかいワレェ!!」
髪を逆立てて和田がマシンガンを乱射する。双方の距離間が長いおかげか弾が届く前に
落ちてくれているが、この状態がいつまでも続く訳がない。
地下道に潜り込んでも和田の執拗な攻撃は続く。
出口が果てしなく長く感じる、逃げ道はない一方通行。
まるでロールプレイングのダンジョンのようだ。
いや、ダンジョンの方がまだマシか。

「早く、こっちだ!」
ふと、蛯名の耳許に誰かの声が聞こえた。豊の声ではない。まだ他に誰かいるのか?
声の方に向かうと、その声の主が後ろを走る和田に向かって何やら投げ付けた。
それは和田が乱射したマシンガンの弾に当たり、白い煙を吹き出して爆発した。
「な…何やッ?!ゲホゲホッ!!」
催涙ガスをもろに喰らって涙目になりながら咳き込む和田を呆然と見ている蛯名の腕を、
声の主が強引に引っ張る。
「マサヨシ、行くぞ!」
声の主に引きずられるように蛯名はさっきの場所からずっと離れたメモリアル60の
エレベーターに乗り込んだ。
ここまで来れば和田が追い掛ける事はまずないだろう。
「あ…ありがとう」
蛯名が礼を言い、顔を見上げると、 声の主の正体は調教師で、騎手候補生の太一の父でもある小島太だった。
「太さん……!」
「怪我はないか?とりあえず、上に向かおう」
429名無しさん@お馬で人生アウト:01/09/26 01:01 ID:wflfx6fU
「そこにいるのは武さんでっか、それとも蛯名さんかぃ?」
漆黒の闇夜に包まれた府中のターフに和田の声が響いた。

蛯名は「しまった、見つかった。」と焦りながらもじっと息を潜めて身を隠した。
・・・・どうする? 状況は極めて不利だった。緊張の連続で既に蛯名の意識は
限界に達していた。「まずい、このままじゃやられる!」なにか策は無いのか!?

「まぁ、どっちでもええわ。俺はどうしてもアンタらを全員始末せなあかんのや。」
不敵に笑みを浮かべて和田はゆっくりと蛯名に近づいていった。

「もう、だめだ。クッソー、やるしかないのか。」蛯名は決心した。
「ヨシトミさん、ノリちゃん。俺、また会えるかなぁ?」死んでいった友の名を呼び
ターフビジョンからまさに飛び出そうとしたその時!

まっ暗のターフに突如照明がついた。