392 :
ロボ丸:
爆音が轟き、その衝撃は数十メートル離れた蛯名の場所まで伝わっていた。
また誰かと誰かが…そういえばさっきからトイレに行く、と言ったきり帰って来ない北村の事が頭に浮かんだ。
まさか巻き込まれた?!いや、そうじゃないとどこかで思いつつ、不安な思いが胸を締め付ける。
そして気がつけば、蛯名は瓦礫の山と化した投票所の前に立っていた。
ふと蛯名は、白いコンクリートの塊に混じって、黒い四角い物体があるのに気付いた。
近寄って手に取ると、それはグシャグシャになったノートパソコン…
北村がずっと肌身離さず持ち歩いていたものだった。
不安は徐々に確信となり、蛯名はひょっとしたら埋もれているかも知れない北村を助け出そうと
一つづつコンクリートの塊をどけていった。
やがて、ようやく人間の腕が蛯名の目の前に現れた。涙目になりながらも丁寧に腕の周りのコンクリートを退け、
その手を引こうとした瞬間───出てきたのは肘の途中からちぎれていた腕だけだった。