ダンムーの愛は本物

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409名無しさん@実況で競馬板アウト
「叶わぬ恋が託すもの」

決戦は今週末に迫る。
これはあるひとつの叶わぬ恋路の末に、最大限のしるしを示す走りをするために、
得意の舞台で大逆転を企てる皐月賞馬の決心である。

ここまでの秋3戦は、彼にとって最も充実した内容だった。
春のマイラーズC勝ちを含めて、いよいよ名馬への階段を登りつめようとするところまで来た。
でも、それを後押しする存在がいたことを、彼は知っていた。
同期の同父で、桜花賞を勝った、ダンスインザムードの存在が…
彼女はいつも彼の後をついてきていた。
彼が今年勝った4つのレースのうち、3つにおいて彼女が2着。
その絆はいつの間にか相乗効果を生み出していたのであった。

香港の地に立ったダンスインザムードは結局レースが終わるまで、
彼の姿を捜し続けてしまったのかもしれない。
その不自然な惨敗は、武豊を以ってその口からジョークを飛ばせるほどであった。
そして彼女はそのまま、ターフを去ることとなってしまった。
でも、彼女には決して悔いはなかったという。
あのマイルCSのゴール前、
残り50mで彼が彼女を2枚腰で突き放して先頭のゴールを切ろうとしたとき、
ふとどこからか、風の中で呟く声がしたという。
「…今まで本当にありがと。叶わないのはわかっているけれど、大好きだよ…。」

そう。ダンスインザムード自身が、この後に香港へ行き、そのまま引退するということを知っていたから、
最後の「併せ馬」となりうるときに、その想いを伝えようとしていたのだ。
どこまで彼のもとに届いたのかは、
それを運んだ風が何所に辿り着いたのかによるだろう…
410名無しさん@実況で競馬板アウト:2006/12/19(火) 02:28:14 ID:AZve9Jyw0
しかし、確実に言えることがある。それは、
相乗効果を生み出し続けた絆が、彼を何回りも成長させたこと。
そして鞍上の安藤勝己とともに、重圧の中でもそれを乗り切る勇気を得たこと…

2004年皐月賞馬、ダイワメジャー。
京都で行われた宝塚記念では、壮行戦ムードの中、最強の敵の前に散ったが、
この秋以降、もしかしたらその最強の敵よりも輝けるかもしれない活躍を見せた。
そしてこれまでに数多くのドラマを上演してきた舞台で、3代の皐月賞馬が揃い踏みをする。
彼にはいくつかの意地がある。
まず、皐月賞馬の中で一番上の先輩としての意地がある。
次に、たった3頭の出走にとどまった関東馬のエースとしての意地がある。
そして、ひとつの強き想いを心に秘め、それを走りで示すための意地がある。
負けられないのではなく、勝つしかない。
最大の敵が引退レースで負けた、ではなく、
彼がそのレースで勝った、という競馬をしなければならない。
それが実現すると信じる者がいる限り、
それを実現しようとする力が失われることはないだろう。

今年もまた、それぞれの夢が走りだす。
夢は願うものではあるが、託すものでもある。
そして夢は運命に導かれて、現実のものになるかどうかの判断を受ける。
彼が願う夢と彼に託された夢は、有馬記念を走る優駿たちのそれらのひとかけらでしかないが、
確実に光を放ち、運命に導かれるためのスタンバイをしているのだ…!

叶わぬ恋は、最大限の夢を彼に託したのである…

                                      <終>