あとがき
インタビューやお手紙などでしばしば尋ねられたのが
「なぜ平場戦を主戦場にしたのか」という質問でした。
確かにデビュー当時は平場優先主義者は数えるほどしかいなかったし、
日本ではまだメジャーとは言いがたいスタイルでした。
デビュー前の競馬学校の生徒だったときも先生から
「平場優先主義はこの世界では1つのタブーとされている。」と何度か聞かされました。
ネタにされるのを覚悟しろという意味です。(たぶん)
それでも平場優先主義を貫くということは、少なくとも自分にとってはごく自然なことでした。
デビュー戦も平場戦だったし、その後の初勝利のときもそう、
そして通産1000勝を達成したときも平場戦が舞台でした。
「将来は騎手になろう。」と具体的に考え始めたころ最も燃えていたのが、
午前から始まる平場戦だったから、ごく自然に平場を主戦場に選んだのだと思います。
それ以外のレースは当時考えもしなかったということを思うと、
平場戦との出会いがなければはたして騎手になっていたかどうか、
ちょっと分からないなという気がしています。
「この騎手を知って平場戦が好きになった。」という手紙には素直に勇気付けられました。
そのおかげでその度に「もっといい騎乗をしよう。」「もっといい平場戦にしよう。」
という決意を新たにもつことができました。感謝の念に堪えません。
いい馬をまわしてくださった調教師さん、馬主さんには公私にわたり
大きな力になって頂きました。心より感謝します。
そのレース数の多さにもかかわらずマスコミの扱いは小さくて嫌になりますが、
好きな平場戦を好きなように乗らせてもらえたことは本当にありがたいことでした。
柴田善臣