東スポの「サイエンスで斬るグランプリ」はお見事でした。
以下長文スマソ。
「単純に考えれば2500mの長丁場だけど、
運動学的には1700mの有酸素運動と後半800mの無酸素運動を組み合わせたレース。
それに沿って稽古でうまく負荷をかけてやれば一流相手でも能力差を埋める事ができる」
有馬記念の夢舞台をこんな分割論で語るサイエンストレーナーが現れた。
タップダンスシチーの佐々木晶三調教師だ。
有酸素運動とは…ジョギングなどの軽い運動のこと。
一方、無酸素運動は短距離走など激しく息切れする運動の事。
一般に馬の有酸素運動はダク、キャンター、トロットまでを指し、
これを繰り返すと心臓が大きくなり、呼吸器の効率がアップする。
それに対し無酸素運動はスピードの乗ったギャロップ。
こちらは遺伝的要素が強く、鍛えたからと言って"性能"が上がるものではない。
穏やかに流れる前半7割が有酸素運動。
追い出され全力疾走する残り3割が無酸素運動。
これが冒頭の"佐々木理論"の正体だが、果たして師はどちらに注目しているのか。
やればやるだけ効果が出る前者?と思いがちだが、答えは逆。
「確かに追い出して息切れするまでの脚は潜在能力に支配されている。
ただしウチでは敢えて稽古で無酸素運動を繰り返し我慢する事を覚えさせるんだ。
火事場のバカ力ってあるだろ。
体がバテバテになっても気力でカバーする体験を積ませているんだ」
なるほど、この中間をみても、同じ中3週のジャングルポケット、ナリタトップロード、
ノーリーズンの無酸素運動(追い切り)が2本に対してタップは1本多い3本…
更に強めのギャロップを普段から多用するメニューが「精神力の強化」につながると
佐々木師は確信を持っている。
これを裏付ける専門家の後押しもある。
「人間でもイメージトレーニングをして能力の限界を超えようとする訓練がある。
ならば馬でもそれは充分に可能。
それに無酸素運動、有酸素運動を認識して鍛えている陣営とそれ以外とでは効果の違いも出るはず」
と証言するのはJRA生命科学研究室主任研究役・楠瀬良氏だ。
有馬記念は残り半マイル(800m)の無酸素運動が勝負の分かれ目…
これに対応したトレーニングを課してきた佐々木晶調教師・タップダンスシチーこそが、
限界点を超えるべきランナーとなるべきなのだ。