740 :
めじろまいやー:
昨日、きさらぎ賞に勝った。NHKマイルの有力馬アグネスソニック君を振り切ったんだ。
メジロのおばあさんからも励ましの電話がかかってきた。
これでダービーに出れるんだ。メジロの馬はダービーが悲願なんだ。
アドドン君、アドMAX君、モノポ君、ローエン君、ヤマセラ君、タニギム君、シュタ君、
強敵ばかりでちょっと自信ないけど、全力は尽くそうと思う。
そんな僕が尊敬しているのは3年前の勝ち馬で同じ○父のナリタトップロード先輩だ。
母さんの父親がサッカーボーイさんだから、僕のおじさんということになる。
クラシック馬の叔父さんにどこまで近づけるか判らないけど……。頑張ろうと思う。
でも、僕と父親が同じで沖厩舎のロングユウシャ君にトップロードさんに紹介してよと頼んでも、
アイツはなぜかはぐらかすんだ。鬱とか日記とか言っていたけどなんだろう。
あっ、あそこにいるのはもしかしてトップロードさん。今度こそ話を聞いてみよう。
741 :
めじろまいやー:02/02/11 13:45 ID:7JrCbHVe
トップロードさん!あの、僕、僕、
憧れの先輩を目の前に僕は緊張に震えていた。
「きのうのきさらぎしょうをかった、めじろまいやーくん?」
感激だ。G1馬が僕の目の前にいる。あの人のオーラがひしひしと感じられる。
やっぱり、G1馬は違うんだ……。
「おめでとう……。くらしっくでもかんばるんだよ」
この言葉を聞くだけで、舞い上がってしまう。
……舞い上がってどうするんだ。トップロードさんから色々アドバイスとかいただかなければ、
――あのっ!! G1に望む心構えとか教えて下さい!?
「ぼくからはなにもいうことはないよ。きみのおとうさんやおじいさんにきいたほうがいいとおもうよ」
そんなぁ……。僕はちょっとガッカリした。
いやいやここで挫けてはいけない。次の質問にいってみよう。
――あのっ!! ロングユウシャが言っていた鬱ってなんですか!?
「………」
あれっ? トップロードさん、何も言ってくれないよ? どうしたんですかぁ?
「お〜い。マイヤー」
あっ、飯田さんだ。昨日の反省会をやるんだな。
トップロードさんが飯田さんのことを尋ねてきた。そして一言、
「渡辺とおなじにおいをかんじるモナ」
その言葉が不吉に響く。鬱ってなんだろう……。
742 :
名無しさん@お馬で人生アウト:02/02/11 13:52 ID:WMQrwBG9
とっぷろ、憧れられているんだね。
カコイイ!
743 :
めじろまいやー:02/02/11 13:56 ID:7JrCbHVe
飯田さんとの反省会が終わって、田島厩舎の僕の部屋に帰ってきた。
僕の部屋に小包があった。送り主は……、僕の親父だ。
色々差し入れがあったが、一つだけ変な荷物があった。
古ぼけた日記帳だった。タイトルは「サクラ軍団の○(ここだけかすれてて読めなかった)な日記」だった。
父さんも日記をつけていたんだ……。
僕は魅入られたように、日記を読み出そうとした。
「おーい! マイヤー! 親父さんから電話だよ」
僕は日記を置いて電話に出た。
744 :
めじろまいやー:02/02/11 14:11 ID:7JrCbHVe
――あっ、父さん。ありがとう。脚のほうは大丈夫かって。
――なに心配してるんだよ父さん。あっ、差し入れありがとう。
――父さんの日記が入ってた
「あれ、読んだのか……」
――どうしたの、父さん。そんなに慌てて。
「読んだのかと聞いているんだ!!」
――ううん、これから読もうかと思った時に、父さんから電話がかかってきたから……。
「そうか、まだ読んでないんだな。悪いが読まずに返してくれないか。私が間違って入れてしまったらしい」
――えー、僕も父さんの日記読みたいよ。
「絶対駄目だ!! お前には北野のババァの怨念をかなえる義務があるのだろう!!」
父さんの語気の強さに、僕は日記を読むことをあきらめた。
だけど、僕は父さんに日記を返すことはできなかった。
僕の部屋から父さんの日記がなくなっていたからだ。
その後、僕は父さんの日記を見ることはなかった。永遠に……。
あれはどこに行ったのだろう。
745 :
とーほうどりーむ:02/02/11 14:33 ID:7JrCbHVe
メジロマイヤーが慌てて部屋から出て行ったので、俺は一冊の日記を発見した。
「サクラ軍団の○(俺もこれが読めなかった)な日記」と書いてあって、裏表紙には「もらんぼん」と書いてあった。
サクラといえば俺の母方でもある。もしかして、これを読めば不振から脱出できるかもしれない。
だが、なぜか一人で読む気がしなかった。
仕方ないので日記を片手にトレセン中を彷徨った。
もうすぐ夕方というときにナリタトップロード先輩が声をかけてきた。
「どうしたんだ。とーほうくん」
――ああ、先輩、こんなものを拾っちゃいまして……。
「さくら の な日記?もしかしてゆたかおーせんぱいのはなしもあるのかな」
――俺も読んでないので、判りませんが……。
「じゃあ、よんでくれないかな。ぼくはかんじがよめないから」
――わかりましたよ。俺が読みます。聞いててくださいね。
俺はこの言葉を一生後悔した。
746 :
なりたとっぷろおど:02/02/11 14:47 ID:7JrCbHVe
とーほうどりーむくんがにっきをよみおわったときにはまっしろになっていた。
くちもとにだけはなじがたいりょうにながれていた。
僕もきぜつするすんぜんだった。
しょうじき、はなしのひとつひとつをのせるのはさすがにスレのしゅしからはんするので、
みなさんのりくえすとがなければこのにっきちょうにかくのはやめておこう。
しょうじきつかれたし。
でも、これをよんでおもった。
僕の鬱はこの日記にくらべたらぜんぜんましなんだ。
えいこうにつつまれたさくらのめいばも、とてつもなくくるしんでいたんだ。
ことしこそがんばろう。がんばれば鬱もなおるかもしれない。
ぼくはほしぞらをみあげた。
747 :
:02/02/11 14:51 ID:8gPVEcUZ
教えてください、とっぷろ君。
何が書いてあったのか?
748 :
:02/02/11 15:41 ID:am+ixB0b
S太郎のハードトレーニングとか、太のワタナベの比じゃないヘタレぶりとか書かれてるんだろうか…
749 :
:02/02/11 15:41 ID:am+ixB0b
S勝太郎だった
2月11日
俺もようやく元気を取り戻した。オペラオーはかなり心配していたらしく、
ためらいがちにあの夜の出来事を話してくれた。あれは夢じゃなかったんだ…
影武者だのサイボーグだのすぐには信じられないが、一応は納得のいく説明だろう。
あの夜の光景を思い出す度背中がぞくっとするんだけど、俺もベガの話を信じよう。
それから、俺達はトップロードに電話をした。あいつは京都記念に登録している。
今年最初のレースを控えた戦友を激励しようという訳だ。
サッカー親父から「親父が飼葉を食う生写真」が送られてきたとかで、
トップロードはげんなりしていた。「うまれつきののうてんきはこまる」だと。
あの親父の現役時代のことは話さないことにした。
いつか、トップロードが自分で知ればいいさ。親父はあれで、心からあいつを思ってるんだ。
「頑張れよな、トップロード」
サッカー親父の日記帳。その黄ばんだ表紙を見つめて、俺は呟いた。
トップロードは昔の自分の日記を読んでいるそうだ。
俺が旧3・4歳だった頃、何を思っていただろう。オペラオーやトップロードと出会って
あんなに激しい戦いをするなんて、その頃は想像すらしなかった。
今思えば、最高の競争生活だったんだ。
北海道に来て以来色々あったが、これからの種牡馬生活は楽しめそうだ。
そうだ、安田の奴にもエールを送るかな。
「頑張れよな、我が相棒!お前ならやれるぞ!応援してるからな!」
俺は、宝塚記念の口取り写真を引っ張り出して、俺の上で笑う安田にそう言った。
2月11日
ドトウ君に「10頭のサッカーボーイさん」の「真実」を話した。
さすがに驚いたようだけれど、僕達はベガ君の言葉を信じることにした。
結局、それが一番いい締め括りなのだ。
京都記念の週になり、今年の緒戦を目前にしたトップロード君に電話をした。
サッカーボーイさんからおかしな写真が届いたとこぼすトップロード君。
彼が、現役時代のお父さんの話を知ったらどう思うだろう。
でもそれは、トップロード君自身が知っていくべき物語だ。
そして、それはまだ先のことなのだ。
トップロード君は3年前の日記を見つけて読み返しているという。
あっという間に過ぎた競走馬としての日々を、僕も思い返している。
辛く苦しく、そして素晴らしい日々だった。
種牡馬としての第二の馬生もそうなればいいのにと、僕は思った。
そして、トップロード君にとっての2002年が素晴らしいものになるようにと。
「トップロード君にとって、今年が良いものでありますように」
「和田さんが今年10勝できますように。もう怪我をしませんように」
栗東の方角を見上げながら、僕は祈るように呟いた。
2がつ11にち
ムオペくんとドトウくんからでんわがあった。
ふたりとも、「京都記念ではいいはしりができるといいな」
とぼくをはげましてくれた。
ほっかいどうはあんなにとおいのに、でんわのむこうのふたりはこんなにちかい。
とおくてちかい、そのふしぎなきょりかんに、ぼくはせつなさをおぼえた。
おやじからおくられてきた、あのふざけたしゃしんへのぐちや、
3ねんまえのにっきをよみかえしてのおもいをはなすと、
ムオペくんもドトウくんも、「いろいろあったね」とかんがいぶかそうにしていた。
そう、ほんとうにいろいろあったし、きょうまであっというまだった。
ぼくのあたらしい1ねん、そのたたかいがもうすぐはじまる。
ぼくは、なによりもまずじぶんのためにせいいっぱいはしろうとけついした。
おやじはあいかわらずのうてんきだし、渡辺はあいかわらず渡辺のままだ。
1しゅうかんご、ぼくはどんなおもいでこのにっきをかいているだろう。
京都記念でよいはしりができたら――かつことができたら、
おやじにでんわしてみようとおもう。そして渡辺とも、しみじみはなしてみよう。
いっせんいっせん、ぜんりょくをだしきろう。
ぼくがそのきもちをわすれなければ、きっとけっかがでるはずだ。
鬱なぼくだけど、それをちからにかえるんだ。
鬱魂(渡辺におそわったかんじだ。たましい、という)は、ぼくのなかでもえている。
オペラオー・ドトウ日記のしめくくりのようなものを書いてみた。
オペドト日記は幾つか書かせてもらったけど、
こんな形で続くとは思いもしなかったので、驚いたけど楽しかったです。
この3頭、今年も元気でそれぞれ頑張れ、と思う。
(3年前日記に未来日記、声を出してワロタ。凄い)
>>752 とぷろ、がんばれよ…
こんなんじゃ京都記念、とぷろ単勝に突っ込んじゃいそうだろ。
どうしてくれるんだYO!w
>>745からの続きです。
とーほうどりーむくんがひょうしをひらくと、もくじがあった。
「先輩、文字が掠れれてよく読めませんね」
とーほうくんがいうにはどのうまがかいたのがわかるのが、
サクラバクシンオー サクラローレル サクラチトセオー サクラホクトオー
サクラチヨノオー サクラスターオー サクラユタカオー サクラエイコウオー
の8とうだけだという。
「先輩、パラっと見たところ、やけにフトシとか美浦黄門というのがいっぱい書いてますよ」
「どうしたんだ、こんなところでこそこそして。佐賀から帰ってくるなりこれかぁ」
まんぼう(マンボツイスト)さんだ。かっぷはもっていない。さがきねんでまけたことがすぐにわかった。
「あっ、マンボウ先輩。サクラの馬の日記を拾いまして、これからトップロさんと一緒に読んでみようかと」
「そうか、ウチの若いのに親父がサクラの馬が2頭いるからな、そいつらの土産話になるな」
まんぼうさんはみやげをもっていない。よっぽどまけたのがしょっくだったのだろう。
「じゃあ、バクシンオーさんから読みますか」
ぼくは、ゆたかおーさんの日記がよみたいといった。
くりげうまにとって、あのうまこそほんとうのきひんあふれるうまなのだ。
バカ親父とはちがう、ほんとうのくりげのめいばなのだ。ぼくのあこがれのうまだった。
「トーホウ先輩の言うことは聞くもんだぞ」
「わかりました。じゃぁ、読みますよ」
このとき、僕はとーほうくんをとめるべきだったのかもしれない。
けどもうあともどりはできなかった。
「じゃあ、読みますからね」
とーほうくんはよみはじめた。
サクラユタカオー
今日、境厩舎に入厩した。これから日記を付けてみようと思う。
さっそく嫌なことがあった。
僕の騎手になる派手な格好をした鼻のデカイ男――フトシとか言う男に嫌なことを言われた。
「綺麗な栗毛だなぁ」
フトシの顔面に思いっきり蹴りを入れた。しばらく動かなくなった。ざまあみろだ。
僕はこんな毛色に生まれた自分を呪っているのだ。
――いい馬だな。これで栗毛じゃなきゃなぁ。鹿毛ならなぁ。
牧場でも、競り市でも、育成中でも言われ続けた。
「テスコボーイの栗毛は走らない」と言われていたからだ。
ミホシンザン君やシリウスシンボリ君、サニーオーが羨ましい。
自分を鏡に見るたび鬱になってくる。どうしてこんな姿に生まれたのか、
父さんも母さんも鹿毛なのに……。自分の出生を呪ってしまう。
いやだ、この毛色はイヤなんだよ!!
……ぼくのなかのゆたかおーさんのいめーじがおとをたててくずれおちた。
それから、とーほうくんはひああせをながしながら日記をよみつづけた。
まんぼうさんもききながらひやあせをかいていた。
ゆたかおーさんは、フトシへのうらみつらみをかきなぐっていた。
なかみはフトシを渡辺にかえればまるでぼくといっしょだ。
いや、じっせきがあるぶんよけいにやっかいだ。
ふきまくるみほこうもんがついてくるぶんに鬱はにばいだ。
いや、みほでほかのうまに「チョ○馬、チョ○馬」とゆびをさされるから、
鬱がさんじょうだ。かれにはこころやすまるばしょがなかったのだろう。
おもったよりはやく日記がおわった。
僕はこころからほっとした。
しかし、とーほうくんのざんこくなひとことがあくむをつづけてしまった。
「あれっ? もう1ページありましたよ」
なんで、きづいてしまったのだろう。
今日、この間種付けにきた牝馬から電話が来た。
「ちょっと!! 私、受胎してないじゃない!! 話が違うじゃない!! この下手糞!!」
私は久しぶりに鬱になった。しかしそれは始まりだった。
次々電話がかかってくる。
責任取りなさいよ!!
このイン○テンツ!!
不能!! 短小!! 真性包茎!!
付けた牝馬の全てが私をなじった。私はしばらく動けなくなった。
私は次の日病院に行った。
検査が終わって、医者が残酷な一言を放った。
「あー、これは、急性ユタカ症候群ですな」
急性ユタカ症候群
男性器に種無し菌が付着し、精子が死滅する病気だという。
完治することはないと医者が宣告した。
その瞬間、私の種牡馬生活が終わりを告げた。
ゆたかおーさんの日記をよみおわった。
おもいでというのはきれいなままにしておくべきだったと、ものすごくこうかいした。
とーほうくんはさいごまでよみきった。
いたみにたえてよくがんばったと、いいたくもなったが、
なんでやめてくれなかったんだろうと、しょうしょううらんでみたりもした。
「じゃあ、次誰にします」
とーほうくんはにがわらいをうかべていう。
かれはとめてくれよとねがっていたのはわかっていたが、
ぼくもまんぼうさんももうあともどりはできなくなった。
「ちょっとまて」
まんぼうさんがいう。
「サクラスターオーさんといえば闘病日記だ。チヨノオーさんもホクトオーさんも競馬界では有数の鬱馬だ、
この3頭はやめとこう、俺たちに関係ないし……」
しょうじき、ほかの4とうもよむのもやめときたかったが、
こうきしんにはかてないことは3人ともしょうちだった。
「じゃあ、サクラエイコウオーにしましょうよ」
ぼくとまんぼうさんがうなずく、しょうじきそれがぶなんだとおもった。
とーほうくんがにっきをひらく、きけんぶつをひらくようにぼくたちのまんなかで、
そしてひらいた。
アヒャ、アヒャ、アヒャ(以下略)
すぐにとじた。これはでんぱのたれながしだ。このうまにくらべれば、フライト君など全然まともだ。
4こーなーで吹っ飛ぶなんて……。止めとこう。鬱になってくる。
しばらく、ぼくたちはこの日記をよむかどうかまよった。
あと3とうどうしようか。あしをかかえてかんがえこむ。
よむべきか、よまざるべきか。
760 :
:02/02/11 21:47 ID:TGSDSyns
ユタカオーさん。。。(号泣)
そうそう、栗毛で辛い思いしたんだよね。
ユタカ症候群(w)で最後まで鬱だったのか。
自分も「こうきしんにはかてない」ので、バクシンオー希望。
761 :
:02/02/11 22:02 ID:7ts9SckT
鞍上が換わっても鬱が続きそうなローレルに1票。
762 :
:02/02/11 22:06 ID:LhBRmIus
サクラホクトオーはもう他界したし、本当に現役時代は鬱っぽかったのでやめて欲しい、、、
ぼくはとーほうくんに、ちとせおーさんとばくしんおーさんとろーれるさんで鬱がえんどおそうなうまをきいてみた。
「う〜ん、年度代表馬が一番鬱とは縁がなさそうだからローレルさんからいくか」
「そうだな、ローマンに親父の話を聞かせてやりたいし」
僕もいろんはない。さくらろーれるさん。
むおぺくんのような名馬なのだろう……。
とーほうくんがよみはじめた。
とつぜん、とーほうくんがよむのをやめる。
かれはものすごいひやあせをながしていた。
さくらろーれるさん。
あおばしょうでけんりをてにいれながらダービーをこっせつでたたれたふうんなうま。
やっぱりこのうまも鬱ウマなのか……。
「これは3歳秋の日記ですね」
今日も負けた。これで復帰後3連敗だ。
厩舎に帰るとチトセオー先輩がふて腐れていた。美浦黄門とフトシは天皇賞に負けたことで気落ちしているといっているが、本当は違う、先輩は的場さんに乗ってもらいたかったのだ。僕もセントライトで乗ってもらったがあの時は黄門が僕の調整に失敗したからしょうがない。
腹立たしいのはフトシだ。前回もバースルートちゃんの大逃げをあっさり見逃しちゃったし、今日も早めに先頭に立ったらブランドミッシェルさんに内をすくわれた。
僕がもう少し強ければ勝てたかもしれない、でも今の軟弱な体では、騎手が上手く乗ってくれないと勝てない。それなのに…、フトシはろくにムチを持ち替えることができない。ずっと右ムチで叩かれたらそりゃ鬱によれますよ。
僕はカレンダーを見てみた、来週は菊花賞。ナリタブライアン君が三冠を達成する瞬間をテレビで見てようと思う。黄門が僕がブライアンの三冠を阻むとかいうから、プレッシャーがきつくなっちゃった。
連対しても負けたらボコボコに叩かれる、そう思うと僕もますます鬱になった。
鬱だ寝よう。
「これは目黒記念の後の日記ですね」
今日は目黒記念だった。僕は圧倒的な1番人気、正直おかしいと思う。
僕はG3を勝ったばっかり、ほんの数ヶ月前はどこにでもいる条件馬だったのに。
その原因はもちろん黄門だ。ナリタブライアンを負かすのは僕しかいないとかいったんだ。
正直、苦痛だ。まわりをみれば強そうな馬ばっかり……、僕は走った。
結果は2着だった。正直、フトシがうまく乗ってくれれば勝てたかもしれない。
早仕掛けに、右ムチONLY、これでは内にもたれてしょうがない。
勝ったハギノリアルキングさんに乗っていた藤田さんに乗ってもらえたらなぁと溜息をつく。
なんだが、両前脚が痛い。鬱だ帰ろう。
とーほうくんがいうには、このあと1ねんいじょうにっきがとだえているという。
そしてとーほうくんがなかやまきねんのにっきをよみはじめた。
ぼくはふしんだしゅつのひんとをえた。
さくらろーれる
今日は中山記念だった。正直もう少し早く復帰できたはずだが、正直フトシに乗られるのはもうウンザリだった。
あいつの騎乗だと今度こそ本当に壊れる。僕も命が惜しい。
だから、フトシが引退すると聞いたときみんなみんなお祭り騒ぎだった。
歓喜の渦。スピードオーなんて張り切ってラスト重賞をプレゼントしたし。
で、フトシに次の騎手を紹介してもらったんだ。なんか、髪がやばそうな人だったけど……。
僕は禿典さんと呼ぶことにした。
で、中山記念のゲートが開いた。正直、無事に回ってこればいいと思っていた。
でも、直線僕の背中に羽根が生えたようだった。1着。信じられなかった。
禿典さんに乗ってもらって本当によかった。
ただ、表彰式でフトシを見たら、なんだか偉く遠回りしたような気になって、少し鬱になった。
なるほど、禿典(よめない)さんにのってもらえればせなかにはねがはえるのか……。
つぎははるてんのにっきだった。ろーれるさんがかったれーすだ。そのさいごのほうで
ナリタブライアン君は悔しさに震えていた。女の子の黄色い悲鳴が上がる。
「いや〜ん、ブライアン可哀想!ローレル余計なことしないでよね!」
この言葉で僕の歓喜は吹っ飛んだ。なんか悪いことしたんだろうしたんだろうか…。勝ったのに鬱になる…。ブライアン君が後で「あんなことは気にするな。強かったのはお前だ」といってくれたのは嬉しかったが…、なんか腑に落ちない。
事件はその後で怒った。あるキティがマヤノトップガン君に生卵をぶつけたのだ。そこでキレたのがトップガン君。そのキティにカンフーキックを噛まして暴行の限りを尽くした。
ホッカイルソーさんとハギノリアルキングさんが取り押さえなければ彼は人を殺していただろう。
でも彼の言葉が印象に残る。「G1馬になったからって手のひら返すなよな!!」
そのつぎはおーるかまーのにっきだった。れーすご、ろーれるさんととっぷがんさんがのんだらしい。
トップガン君はべろんべろんに酔っぱらった。今日のレースはトップガン君にとっては散々なものだったからだ。
ファンへの文句。タヴァラ騎手への罵詈雑言。僕もフトシに脚を引っ張られていたから彼とはすぐに親友になれた。タヴァラとフトシが親友というのが逆に反骨を刺激される。
「だいたいよぉ〜。俺が勝っても、タヴァラマジックとかいってよー!」「おれに毎日朝っぱらから、ロックを聴かせるんだぜー。生で。けっ、あの音痴が」
正直、彼には同情する。彼の生活のサイクルにタヴァラが組み込まれているのだ。
最後に彼はこういった。「せんぱーい。今日から俺、日記をつけようとおもいまーす」
彼が日記帳を取り出した。タイトルは『未来日記』。それに彼は書き込んだ。2002年1月ローレル先輩の息子が重賞初勝利。って。
駄目だ、こいつ酔っぱらってるよ。でもトップガン君と鬱仲間として分かり合えたのが嬉しい。
タヴァラ? ロック? 『未来日記』? なんか、むかしあったようなきがする。
767 :
:02/02/12 00:23 ID:7nf7DK/N
こうなるとメジロ軍団の鬱な日記も読みたくなってくる。
アルダンとかライアンとか。
768 :
:02/02/12 00:28 ID:SJ2bNB52
769 :
名無しさん@お馬で人生アウト:02/02/12 00:34 ID:NRl/5kdq
禿げ典で負けた秋の天皇賞の日記はないのだろうか・・
読みたいものだ。
770 :
名無しさん@お馬で人生アウト:02/02/12 00:37 ID:OfmofcA5
こうしてみるとオペって結構幸せなんだなぁってつくづく思わされる
771 :
:02/02/12 00:39 ID:do7wmMnF
>>767 星一徹&飛雄馬ばりでライアンとブライトは親子2代で鬱になってるはずだぞ(w
ドーベルはさしづめ明子か。
ろーれるさんのにっきはつづく。つぎはあきてんだ。ろーれるさんはまけてしまった。
レース後、僕は腹立たしかった。確かに負けたのは悔しい。再三、不利を受けたのは確かだ。
でも、禿典さんもミスはする。マスコミやファンに叩かれるのもしょうがない。しかし、フトシに非難されるのは侮辱だ。アイツだけには非難されたくない。
黄門も禿典さんを非難した。おいおい! アンタ、フトシにはあまり非難しないくせにそれはあんまりだ! 鬱をフトシと黄門への怒りが打ち消した。今日はトップガン君と飲もう。
そのつぎはありまのにっきだった。かれはかったが……。
今日は有馬なのに、なんだか鬱だ。ファン投票は4位なのに1番人気、その矛盾に苦しんだ。黄門最後のG1とかプレッシャーをかけるし、レースが近づくたびに鬱になる。
歓声もヒシアマゾンちゃんや、トップガン君への声援が大きいし、なんだかやる気がなくなってきた。早く終わらせよう。
レースに勝ってもなんだかむなしい。ファンの歓声も黄門ばっかりだし。勝ってもなんだか鬱だ。惨敗したトップガン君は目に見えて鬱だし、勝ったんだから僕は作り笑いをしなければならない。
で、黄門が2月で引退するという。で、次の厩舎は……フトシ!? しかも奴は来年凱旋門賞挑戦などと言い出しやがった。
僕にプレッシャーをかけないでくれよ…。期待するとコケルのが僕なんだからさ。しかも、フトシのエエカッコシーに付き合わされる。あの、フランスかぶれが!!
駄目だ、鬱になってきた……。今日はトップガン君と飲もう。タヴァラとフトシの悪口で盛り上がろう。
ろーれるさんととっぷがんさんのゆうじょうをかんじた。
さいごにはるてんのにっきだ。さいご…? ろーれるさんはそのあとふらんすにいったはずでは…?
僕は負けてしまった。今年に入ってからなんだか脚が痛んだ。レースでも力んで走ってしまった。でも、禿典さんは逸る僕の気持ちをよく押さえ込んでくれたと思う。そうでなければべラサン君にも負けていたはずだ。
それに今日のトップガン君は凄かった。今日の彼には誰も勝てないだろう、彼は今まで溜め込んだ鬱を直線で爆発させたのだ。アレなら僕は悔いはない。負けてももの凄くさわやかだった。
そんな僕の気分を吹っ飛ばす。二つの事件が起きた。
一つは、トップガン君に「タヴァラマジックお見事でした」とインタビューでいいやがった。それは禁句だ。アナウンサーの冥福を祈ろう。
もう一つの事件が僕を鬱にさせてしまったのだ。
レース後、フトシが禿典さんの騎乗をなじったのだ。禿典さんはできる限りのことをしたのだ。だいたいなんだ!春天ぶっつけって、そんなローテーションを組んだのはフトシじゃないか!
お前にだけは言われたくない!! 次の言葉で完全に切れた。
「もう乗せねえよ!! ウァーン!!」
僕はフトシに殴りかかろうとした。
それを止めたのは、禿典さんだった。黙って首を横にふった。いいんだよ、ありがとう。そういってくれたのだ。
その夜、僕はトップガン君と祇園の街で倒れるまで飲んだ。
最後、二人で見た月は忘れない…。
なんだか、脚が痛いなぁと僕が言う。トップガン君も言う。俺もです。
そこで日記はおわっていた。なんかゆうじょうものがたりになってしまったきがするが…。
あとは、ちとせおーさんとばくしんおーさんの日記がのこっている。
どうしよう…、このふたつ…。
774 :
:02/02/12 01:21 ID:QnnQcHkY
ローレルには熱愛されてたんだな、禿。良い話だ。
トップガンはやはり……こうなると主戦2人のブライトが気になる。
職人さん頑張れ。
あ、あのさ、とーほうくん。ちとせおーさんとばくしんおーさんの日記をながしよみしてくれないかな。
「トップロ先輩! 僕を殺す気ですか! あなたが読んでくださいよ!」
いや、だって、僕かんじよめないし。
「じゃあ、マンボウ先輩読んでくださいよ!」
「oh! ワタシニホンゴワカリマセーン!!」
「二人ともきったねー!!」
「どうしたんですか、とぷろせんぱい?」
「あれっ、マンボウさんまだ厩舎に帰ってなかったんですか」
ろんぐゆうしゃとちとせさくせすだ。そういえば、のこりふたつのむすこはこいつらだ。
ぼくたち3にんのいけんはかたまった。
「あ、あのさ、君たちのお父さんの日記がここにあるんだけどさ、簡単に読んでおじさんたちに教えてくれないかな」
とーほうどりーむがいう。こういうのはこうはいのやくわりだ。これがけいばかいのひえらるきーというものだ。
「わかりました。よもう、ちとせくん」「うん」
ふたりはよみおわった。
ちとせさくせすくんはあおいかおをしてうずくまっていた。よっぽどしょうげきてきだったのだろう。
ろんぐゆうしゃはけろっとしていた。どうやらばくしんおーさんのはまともなにっきらしい。
「あの、チトセ君…。なんて書いてたの…」
「フトシ…、黄門…、グロ…、中山記…、ケント…、…駄馬…、暗記…、飽きて…、繭…、can…、…グル…」
どうやらしげきがつよすぎたようだ。しかもまた、フトシとこうもんらしい。
「で、ユウシャくんのお父さんはなんて書いてたの? やっぱりフトシとか黄門とか書いてたの?」
「ううん、あんまり。さいしょのほうはかいてたけど。あとのほうは、ふーちゃんばっかりだったよ?」
どうやらきまりらしい。ふーちゃんというのがだれかはわからないが。まさかきらっているひとにちゃんつけはしないだろう。
これできまりだな。ぼくたち3にんはうなずいた。
なぜ、ろんぐゆうしゃによませてしまったのだろう。
これがぼくたちのさいだいのしっぱいだった。
>775
ふーちゃんに(;´Д`)ハァハァなバクシンオーマンセー!!
これはぼくのおとうさんのにっきだという。
ぼくのおとうさんはさくらのうまで、さくらのうまはチョ○うまだからみほではさべつされてたらしい。
しかもとうさんはしゃだいのうまれだから、さくらのなかでもはくがいされてたんだって。
「さべつとはくがいってなんですか?」と、ぼくはいった。
とぷろさんも、まんぼうさんも、とーほうさんも、こえをあわせて。
「こどもはそんなことしらなくてもいいから」っていった。
つぎに、「うらかいどうってなんですか?」と、3にんにいった。
またこどもはしらなくていいからといった。
そしてとうさんはG1にかったのに、もにふくしていたからいわってもらえなかったそうだ。
もにふくすってなんですか、と。ぼくはいう。
みんなあおいかおして、こどもはしらなくていいからという。
なんだよ、ぼくがこどもだからってばかにして。
つぎのぺーじにはやすだきねんのことがかいてあった。
今日は安田記念だ。
距離が1ハロン長いのがただでさえ鬱なのに。
しかも、今日は雨が降っていた。鬱だ、雨が降ると鬱になるのは桜の遺伝子だ。おもわず「花」を歌いだしたくなる。
自然条件だけでも鬱になるというのに、今日は相手も鬱になる。
あそこにいる太り気味もといグラマラスなフランス女がスキーパラダイス、フランス馬なのに社台の服を着ている。
羨ましい。僕だって巡り合わせがよければ、あの服を着れたというのに。ああ、ますます鬱になってくる。
反対側にいる、気難しそうなイギリス女がサイエダディ。他にもドルフィンストリートやザイーテンなど葬送たるメンバーだ。
さらに僕の鬱エンジンを加速させるのが、僕のことを日本馬の大将とかいう人間もいることだ。
あいつらは僕のことを持ち上げるだけ持ち上げてどーんと叩き落すのが趣味なんだ…。
僕の心はこの府中の空と一緒なんだ…。
そのとき、僕は見た。あの子を。
僕はしばらくその子に見とれていた。彼女の姿に…。
その時、僕の鞍を叩いた馬がいた。
ホクトベガだった、正直、もう少し色気をつけて欲しいと思う。
「なに見てるんですか? バクシンオー先輩」
彼女は美浦で僕を差別しない数少ない馬だ。僕は彼女にあの子誰?といった。
「あー、ふーこですね」
ふーこ? 美浦の馬ではないようだけど。
「おーい、ふーこ、だーりん。今行くね」
ノースフライトそれが彼女の名前だった。
779 :
名無しさん@お馬で人生アウト:02/02/12 02:44 ID:aYefVi9l
ああああああ。ホクトベガ、泣かす〜。
こんな些細な所にまで、鬱の種が〜。
780 :
:02/02/12 02:45 ID:diPhPapY
ノースフライト・・・。
彼女の初年度の相手は
ノーザンテースト御大でしたな。
くっ!あんな爺のところへ!!
レースが始まった。
僕はふーこちゃんに何とかいいところを見せようと頑張った。
雨にも負けず、鬱にも負けないようにと僕は力の限り走った。
でも、残り200bで、離れた外側を1頭の馬があっという間に僕を抜き去った。
スキーパラダイス? サイエダディ? ドルフィンストリート?
その3頭ではなかった。ふーこちゃんだった。
その後姿を見た瞬間、僕の脚が止まった。
僕は彼女に恋をした。
安田記念に勝った彼女の歓喜の輪に僕は加わることはできなかった。
「ふーこ」は芦毛の女の子に抱きつかれたりして大変だったからだ。
彼女は恥ずかしがって戸惑っていた。そんな彼女を可愛いと思った。
しばらく歓喜の輪の中にいる「ふーこ」を僕は遠くから見つめていた。
でも、そろそろ帰ろう、帰り支度を済ませたときに。
「あの、バクシンオー先輩…」
「ふーこ」が声をかけてきた。僕は心房細動を起こしたかのように何も声が出なかった。
彼女が何を言ったか覚えていない。覚えているのは、芦毛の女の子に呼ばれて去っていくときの言葉。
「先輩、秋にまた会えますよね」
僕も会いたい。
あの日から僕は変わった。
僕の中にふーちゃんとの約束を守ることという生きがいができた。
美浦での日々も昔ほど辛くなくなった。石を投げられてもずっと前を向いていられるようになった。
だが、僕は秋のマイルまで座して氏もといふーちゃんを待つわけにもいかなかった。
だから栗東に情報源を入手することにした。
同じサクラで愚兄として虐げられたサクラトウコウ先輩を父に持つネーハイシーザー君と連絡をとることにした。
彼の情報だと。ふーちゃんはもしかしたら秋天に行くかもしれないという。
じゃあ、僕も秋天を目指そう。どっちにしろ毎日王冠に出てくるというが、少しでも多くのレースを彼女と走りたい。
だから、京王杯(当時)をチトセオーに譲った。エサは的場さんだ。
もし、秋天2頭出しになったら僕がフトシを引き受けるからとまで約束した。
ふーちゃんと会えるならフトシなんて軽い軽い。
そして、毎日王冠の日。ふーちゃんが見当たらない。僕は探した。厩舎中を探し回った。
一頭の黒鹿毛の馬が「やべっ」といって逃げ出した。ネーハイだ。奴に話を聞かねば。
いくら快速馬といえども、スプリント王から逃げ切れると思うな。そして奴を捕まえた。
「えっ、ふーこですか? アイツ調整が遅れて、3週後になったんですよ。ただ、秋天になるか阪神になるかまだよくわからないんですよ。…あと、これいっていいのかなぁ」
なんだよ。なに隠してるんだよ。
「いいんですか、言っちゃって。…アイツ、ビワハヤヒデに求婚されてましてね。ハヤヒデの野郎、僕と結婚する気があるなら東京競馬場に来てくれなんて言いやがりましてね。
そりゃあ、ふーこは美人で性格も最高ですよ。性悪、醜悪、ガニマタと三重苦が揃ったベガなんかと違って…って、どうしたんですか!バクシンオーさん!」
僕は泣き続けた。5ヶ月もの素晴らしき日々はこの日の鬱エンジンの燃料だったのだ。
結果は覚えていない。僕の秋天挑戦は没になって、チトセオーには暴行を食らった。
ああ、ふーちゃんはあの顔デカのものになってしまうのか…。そんなことを考えているとチトセオーの暴行も苦にならない。
僕にはこんな襤褸切れのような姿こそ相応しいのだ…。
僕はネーハイのこの言葉に縋りつくことにした。
「もしかしたら阪神に出るかもしれない」という言葉を信じて、
僕は阪神行きの馬運車に乗り込んだ。
784 :
_:02/02/12 03:53 ID:GZ1mkW3r
阪神?京都開催でしょ@スワンS
そして、スワンステークスの日が来た。今年は京都の改修工事の関係で阪神で行われた。
しかし、そんなことは関係なかった。僕にとってはふーちゃんがいるかどうか重要なのだ。
阪神競馬場を探し回りたかったが、黄門が僕を放してくれなかった。だからふーちゃんがいるのかどうかわからなかった。
パドックでも鬱だった。あまりに鬱だったので周りがまったく見えなかった。
フトシが乗るとき「1番人気だぞ」と言われてますます絶望した。ということは、ふーちゃんはいないんだ、あの顔デカお化けの所に行っちゃったんだ。
僕の鬱エンジンはオーバーフロー寸前だった。
ゲートが開いた。フジワンマンクロス君とエイシンワシントン君を交わして先頭に立つ。もうすぐゴールだ。ああ、鬱だ。
その時、風を感じた。その瞬間がゴールだった。
僕はゆっくりと脚を止めた、僕のそばを駆け抜けて行ったのは、ふーちゃんだった。
――えっ、どうして、どうしてここにいるの? 東京に行ったんじゃなかったの?
僕を選んでくれた、…んじゃない。ハヤヒデを選ばなかったことだけは確かだ。でも、それがとても嬉しかった。
どうして東京に行かなかったことは、ふーちゃんは話してくれなかった。
ただ、なんでいるなら僕に話してくれなかったのかは言ってくれた。
「先輩と……、先輩と互角の勝負ができる自信がなかったんです!!」
なんで、ふーちゃんは言いよどんだだろう?ふーちゃんは、去り際にこういった。
「先輩。次は絶対に負けませんからね!!」
次の日、天皇賞をテレビで見た。ビワハヤヒデは僕か見まがうほど鬱になっていた。勝ったのはネーハイだ、僕の数少ない友人なので嬉しい。
ハヤヒデは正直可哀想だった、命に関わらなかったのが救いだ。チトセオーが暴行を加えてきたでも、それはあまり気にならない。
今日はマイルCSだ。とてもとてもいい天気だ。
僕とふーちゃんとのデート……、もといレースが始まるんだ。
ローレルのパシリ(勝手にバクシンオー先輩がやってるだけです!!)も気にならないし。
本当に最高の日だ。ふーちゃんがいる競走馬厩舎に行って見よう。
そしたら、なんか人がいっぱいで、近づけなかった。なんだか少々物々しい雰囲気だった。
そういえば、ふーちゃんの走る前の姿を見たことなかったよね。僕なら顔パスだよね。
と、ふーちゃんの所に行こうとした僕の耳を引っ張る奴がいた。もちろん黄門だ。
――いてて、はなせよ!! 「バカもん!! とっととこっちこんか!!」
去り際にふーちゃんの顔が見えた。なんだかとても寂しそうだった。
パドックでもふーちゃんは僕に何か言いかけて、止めてしまう。
僕から話しかけても彼女ははぐらかす。そうこうしているうちにファンファーレが鳴った。
他の馬が入っていくときにふーちゃんが言った。
――先輩、私今日が最後なんです。
――私、北海道に帰るんです。このレースで引退なんです。
えっ、そんなのって。どうして、どうして…。ヤッパリ僕の鬱エンジンは満タンなんだ…。
――だから、だから、あと98秒だけ私にくれませんか。
えっ、そしてゲートが開いた。
あの後の走りは、僕とふーちゃんだけのものだった。なんだか僕とふーちゃんの背中に羽根が生えたようだった。
光の中を戯れる2頭のペガサス。僕とふーちゃんで永遠のものになった93秒。僕とふーちゃんだけの93秒。僕は忘れない。
僕を抜き去ったときにふーちゃんが何か言ったことを含めて。今日のことは絶対に忘れない。
僕が忘れさえしなければあの永遠の中でふーちゃんは……。
僕の眼から涙が流れた。これでサヨナラなんだ。……でも、ふーちゃんを僕は忘れない。
「先輩♪」
僕の後ろにふーちゃんが立っていた。信じられなかった
――表彰式は……、まだ、色々式とかあるだろ。
「サボっちゃいました」
そういってふーちゃんは僕の横に座る
その後、色々話をした。僕の話。サクラの馬の鬱な話。僕の話したいこと全部。
いや、一つだけ言えなかった。「好きだ」の一言だけがどうしても言えなかった。
――これで、お別れだね。北海道へ行っても元気でね。
「あら、もしかしたらすぐに会えるかもしれませんよ。だって…」
ふーちゃんは話してくれた。黄門がふーちゃんのお婿さんに僕を薦めて、ふーちゃんの先生もそれはいいですねといったのだ。
いつもいつも先走りする黄門に僕は感謝した。でも、ふーちゃんの気持ちはどうなんだろう…
「先輩、私のこと嫌いですか? 私、先輩なら…大丈夫です」
僕は真っ赤になった。心臓細動を起こす。ネーハイ君状態だ。
「じゃあ、私、先輩…バクシンオーさんに、一つだけ『初めて』をあげます」
そういってふーちゃん、いや、ノースフライトは僕の口にキスをした。
夕焼けがまぶしかった。
ぼくはないた。
「ううっ、ええ話や……」。まんぼうさんもないていた。
「よかったですぅ……」。とーほうくんもないていた。
ろんぐゆうしゃはぼくたちをみてきょろきょろしている。このばかはなにもわかっていない。
じぶんのとうさんがどんなにりっぱなうまだったのかわかっていない。
ばくしんおーさんはすごい。鬱にもまけず、はくがいにもまけず、ふーちゃんとのあいをつらぬいた。
だから、ふたりはむすばれたのだ。
ぼくはじぶんのことをふりかえってみる。
ヴィクちゃんをすきになりながらぼくはなにもできなかった。
ヴィクちゃんのあとをおって、砂のレースに出ることや、かのじょをおいかけてドバイにいくこともしなかった。
むすばれなくてあたりまえだ。僕にはバクシンオーさんのひとかけらの勇気がなかったんだ。
ムオペ君に勝てなかったのも、渡辺を落としてしまったのも、有馬でざんぱいしたのも、僕が臆病だったからだ。
僕は知らず知らずのうちにはいいんを鬱や渡辺、親父のせいにしてたんだ……。
ばくしんおーさん。ありがとう。
その感動をろんぐゆうしゃがうちけしてしまった。
「あれっ、まだつづきありますよ」
僕たちはいやなよかんがした。まさか…、やめてくれ!ろんぐ!
むちなろんぐゆうしゃがそのつづきをよんでしまった。
ないようはあまりに鬱だった。やまがたかかったぶんたにもまたふかかった。
あまりのひどさに、とーほうくんははなぢをふき、まんぼうさんはあわをふいてたおれた。
しょうじき、ここにのせていいのか、ものすごくなやむ。あまりにきょういくじょうふてきせつなないようなのでここにのせてはいけないのかもしれない。
ろんぐゆうしゃはよみおわってもけろっとしていた。ああ、むちがにくい。