フリーさんは自分にフラット癖があると仰られてますね。
これについて、私なりの仮説が前からあって、この際なんで紹介させてもらいます。
あくまで“仮説”であって、間違ってるかもしれないし、見当はずれかもしれませんが…
フリーさんの以前の発声法は、いわゆるピエロ声。
典型的な日本人発声というか、自分の発した声を明確なまま相手に伝える発声法です。
これは発声分析をしてみると、基音に対する整数倍音が高次倍音に偏重したスペクトログラムを描くはずです。
また、相対的な音の量としてみると、全体的に非整数倍音が少ないのが特徴になります。。たぶん。
もうちょっと簡単に説明すると、440Hzの音を出すと、整数倍音は880Hz,1320Hz,1760Hz…のように出現します。
聴き手は基音である440Hzとしてピッチを感じ取るわけですが、倍音を含有したそれは単純なビープ音とは違い、もっと複雑な音質として届きます。
ここで最初に言った「整数倍音の高次倍音への偏重」が影響して、440Hzの音でも割と高めに聞こえるわけです。
また、非整数倍音が少ないので、音質(声質)としてはクリアで、音の輪郭がボヤけることはそれほどないでしょう。
※ より厳密にいうと、正確には整数倍ではなく、ちょっと高めだったりするんですが、ここは話を簡単にするため、あえて無視します^^;
低次倍音にしても、絶対量が少ないというよりは、相対量として多くないだけで、極端な話、各整数倍音が一様に広がっている感じです。
それに対してナルシス声、倍音たっぷりの発声法。
ピエロ声と比較して書いていくと、基音に対する整数倍音が低次倍音のところからすでに多く、
非整数倍音も音声に占める相対的な量としては全体的に多めであるはずです。
これによって聞こえ方はピエロ声とどう違ってくるのか?
まず低次倍音から整数倍音をたっぷり含んでいるので、観測者が感じる基音の音質(声質)はピエロ声のように高くは感じません。
同時に、非整数倍音が多く含まれるので、音声自体の輪郭がボヤけることになります。
例えば、きっちり周波数を合わずちょっとズレていたとしても、そのボヤけが功を奏して許容範囲に収めてくれます。
さぁ、ここで私が前々から抱いていた疑問への、1つの解法が導き出せるのです!!
キンキンしたピエロ声ってのは、その性質上スウィートポイントが少なくて、きっちりピッチを合わせずちょっとズレただけで、
「あ、今はずした…」って感づかれるんです。
これに対してナルシス声は声の輪郭がボヤけ気味なので、観測者は相当耳がよくないことには、小さいズレを認識できません。
スウィートポイントが広がって、多少はずしても何のその。
名前を変えるならば「骨太の発声」とでも言うんでしょうか、多少のミスは大目に見てもらえる発声なんです!
また発声の際は、だいたいの人が声帯閉鎖と呼気流入がほぼ同時に起こります。
このとき声の出始めはたいがい下から、大袈裟に言えば‘しゃくり’と呼ばれるような行為でもって始まります。
ピエロ声の人もナルシス声の人も、そこから狙ったピッチに上げて合わせる必要があります。
アプローチが毎回ピッタリなんて芸当、相当歌い込んで上達した人じゃない限り難しいもんです。
ぴったり合わせようとして上目を狙う人はいませんよね?
だいたい狙った所より多少たりないくらい、すなわち、ちょっとだけフラット気味になるんです。
それにくらべナルシスさんは上述の通り、少しズレてても感づかれにくいわけで、ここでまた得をします。
なんかナルシス声賛美の文章になっちゃいましたが、もちろん聴き手に届く声の感じは全然違います。
どっちが良いとか悪いとかはなく、どっちも一長一短のものを持ち合わせていて、
ピエロ声の方が日本語としてのメッセージが伝わりやすいとか、ナルシス声はカッコつけてるみたいで嫌いとか…
科学だけではない、聴き手がもつ心理的なものが大きなウェイトで存在するので、駆逐し合わず共存しているのです。
何かまだまだ補足とかの書き忘れもあって、論理的にも矛盾しているところがあるかもしれませんが、とりあえずこのへんで解説終了します。