ベル・カント唱法では、胸声と頭声(ファルセット)の各々を強化して、
バランスを調整しながら、これらを融合させるということを目指します。
この際に「母音の音質を純化する方法によって、声の自然な音色を見つけ出す」
ということがベル・カント唱法もう一つの主題となりますが、
この母音こそ、歌唱を向上させたい人ならばつねに忘れてはならないこと
であると私自身は考えています。
さて、この声区の融合ということから、胸声と頭声をミックスさせる混声
という概念が出てきます。
そもそも、共鳴とは、声帯において発生する喉頭原音が共鳴腔に共鳴する
ことにより、原音およびその倍音からなる様々な振動数が含まれるものです。
それをさらにミックスさせるというのも変な話ですが、
低い共鳴と高い共鳴には、たしかにそれぞれに共鳴しやすい場所があり、
また、母音のそれぞれにも共鳴しやすい場所があり、
これらをバランスよく調整して融合することにより、
応用範囲の広い歌唱がはじめて可能となります。