「WiLL」2007年9月号「小沢総理なんてまっぴらだ」石原慎太郎 その1
そして一九九一年(平成三)に湾岸戦争が起きた。ブレディというアメリカの財務長官が
日本に圧力をかけに飛んできた。アメリカにはカネがないから、日本はカネを出せと言いに来た。
当時は傀儡政権の海部政権、これは金丸と小沢が作った内閣です。金丸は海部の言うことなんか
全く聞かずに、自分で人事をし、内閣を作った。海部は総理にしてもらっただけで、人事は
何もできなかった。その海部内閣の主要閣僚、外務大臣・中山太郎、大蔵大臣・橋本龍太郎、
通商産業大臣・武藤嘉文、内閣官房長官・坂本三十次の四人で紀尾井町の「福田屋」という
料理屋で接待したら、ブレディがいきなり四十億ドル出せと言った。四人はぶったまげて
「そんなカネは急には出せない」と断った。ブレディは繰り返し三回言った後、
「駄目なら俺は帰るぞ。駄目なんだな」と念を押した。「よしわかった。これで日米関係は
悪くなる。あんた方の責任だ。もう一回名前を教えろ。中山、橋本、武藤、坂本だな」。
そうしたら慌てて一人が立ち上がって「ちょっと待ってください!」。恐らく官房長官の坂本
でしょう、そう言ってある人に電話をかけた。当然、相手は幹事長の小沢です。その後には金丸が
いたろう。小沢が相談して、金丸が「それじゃあ出してやれ」となって、四十億出すことになった。
「WiLL」2007年9月号「小沢総理なんてまっぴらだ」石原慎太郎 その2
ブレディは日本に四、五時間しかいなかったのに四十億ドルせしめて帰ってきて、ワシントンで
記者会見をした。私は日本の政治家で一人だけ外人記者クラブのメンバーなんです。年中アメリカ人
の記者と喧嘩する。喧嘩すると仲良くなるので、こちらに嫌な情報も教えてくれる。その一人から
ブレディの情報を聞いた。けれども嘘か本当かわからない。NHKの日高義樹くんが当時ワシントン
の支局にいたので、帰国した時に裏をとって聞きました。その通りだと。記者会見で、記者が
「あまり機嫌がよくないけど、日本はやっぱりカネを出しませんでしたか」と聞いた。ブレディは
「出したよ」と答える。記者が「不機嫌なのを見ると、額が少ないんですね?いくらなんですか?」
と聞かれて、ブレディが「四十億ドル」と言ったら、みんなぶったまげた。日本に数時間しか
いなくてそれだけのカネが取れたのなら大成功じゃないですか、と言われたブレディがニヤッと笑って
「俺は二日かかると思ったんだが、アイツらちょっと脅かしたら四時間でカネを出した。だったら
最初からもっとふっかければよかった」。こんなことまで言われていたんだ。その後、さらに
アメリカは九十億ドルを要求してきた。さすがにこれは内閣の一存では決まりませんから、九月に
臨時国会を開いて、結局、合わせて百三十億ドルを出してアメリカの戦争を助けた。ところが出した
直後に戦争は終わってしまった。カネをどう使ったか報告がない。日本にキックバックしたという
噂があります。日本のメディアはやる能力も覇気もないから調べられない。アメリカ人の二人の記者
が書きました。そのカネが誰にいったのか。想像に難くないけど。そして、それからすぐ小沢一郎は
党を割って出て行った。その後、一九九二年(平成四)に金丸事件が起き、金丸さんは略式起訴された。
「WiLL」2007年9月号「小沢総理なんてまっぴらだ」石原慎太郎 その3
警察が金丸さんの事務所に踏み込んでみると、刻印のない金の延べ棒が出てきた。金塊というのは、
それを作った国の刻印が必ずあるんです。刻印のない金塊は北朝鮮です。北とどういう取り引きが
あってのことか。途中で当人が亡くなってしまい真相は闇に葬られてしまった。小沢・金丸は何を
やったんですか。アメリカに約束した八年間に四百三十兆のカネを無駄遣いして日本の経済力を弱めた。
四百三十兆のカネを使って何をやったか。沖縄の経済需要の全くない島に五万トンのコンテナ船が
着くような港ができている。市長が自慢して見に来てくれと言われたけれど、船が来るのかと聞けば
ニヤニヤ笑うだけ。北海道で熊や鹿しか出てこないようなところに道路を作った。その先に街なんか
ありゃしない。そういう馬鹿なことをやった。みんな国民の税金です。そのため国債も発行した。
それで日本の財政はガタガタになってしまった。いまだに六百七十兆という厖大な国債がある。
あっという間にイタリアの倍の国債依存率になってしまった。この体たらくを作ったのは誰なんですか。
アメリカの言いなりになって、いまだに国をアメリカ化するための要望書をつきつけられている。
こんな国は日本しかない。こんな体制を作ったのは誰か。小沢一郎じゃないですか。こんな男がリード
する政党が日本を変えていくとはとても思えない。