胸がスーッとする武勇伝を聞かせて下さい!(50)

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その頃、サービス残業が続いていた。
疲労困憊していた俺は、夕食も取らせてもらえない事に怒り心頭
ではあったが、チョコバーをかじってごまかしながら、それに耐え、
毎日自分がなんで生きているのか分からなくなりながら、毎月明細に
書かれた嘘みたいな数字を眺めて過ごしていた。

ある日、犬キチである社長が立派ないでたちのワンコを会社に
連れてくるようになった。犬種は良く知らないが、毎日昼休みに
チョコバーをちょっとあげてみると、そのワンコは俺になつくように
なった。すごくカワイイ。なので、同僚と一緒に昼休みはワンコと
遊ぶようになった。同僚も、飴とかクッキーとかあげていた。
「社長はシブチンなのに、お前はなんでそんなにカワイイんだよー」
とか俺は言い、同僚は
「犬は飼い主に似るっていうけど、こいつは嘘だなー」
とか言っていた。

そんな事が続いていたのだが、ある日、社長が新しい某外国産車に
乗って出勤してきた。以前乗っていた某外国産車の新型だ。以前の
ものは3年程しか乗っていないはずなんだが・・・。

その日も、昼休みに同僚とワンコと遊びながら話をした。
同僚「社長の車って会社の経費で買ってるよな。多分。」
俺 「多分じゃなくて、そうだろ」
同僚「あの車、幾らするか知ってる?」
俺 「多分全部ひっくるめて500万くらいだろ。どういう減価償却
   してんだろーな」
同僚「うひょー、まじかよ。・・・でもそんだけあれば、俺たちのサビ残ぐらい
    余裕で払えるじゃん」
俺 「・・・だな。」
同僚「なんか本気で転職考えたくなってきたわ。あほらしー」
俺 「俺は100万回ぐらい考えたわ。あほらしー」
1232/2:2007/03/26(月) 19:20:02 ID:i01ralLf
その日、久しぶりに残業が無かった俺は、帰りに余っていたチョコバーを
ワンコに一本全部あげて帰ってきた。もっと欲しいと、くんくんすがりついて
きたが、「ごめんよー、もうないんだよー。また明日ねー」と言って、
その日は帰った。

次の日、ワンコはやってこなかった。というか、社長ごと来なかった。

翌々日、社長はやってきたが、なんだかやつれ果てていた。噂によると、
ワンコが死んで、昨日は泣いて過ごしていたらしい。
その日から、社長の人格がさらに悪化した。

「もう、やってられない」と感じていた俺は、会社を辞めた。同僚も辞めた。
すぐに親戚の司法書士の所へ行って、サビ残未払い請求の内容証明を
送った。


ある日、転職して心気一転仕事に励んでいた俺に、同僚から連絡が入った。
「なんか、あの会社潰れたらしいぞ」

別にもうなんとも感じなかったが、放漫経営を行う会社が一個世の中から
消えてくれて、スッとした。