あぁ.........恍惚の耳かき part10

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504おさかなくわえた名無しさん
「夢」

昔から人より耳の穴が小さいのは分かっていた
普通の耳かきだと中で動かせないくらいだ
そのうえ母親の乱暴な耳かきさばきにより、耳かき=痛いと思い込んで早26年
耳かきとは名ばかりの、穴の入り口をちょこちょこ掻き出すだけの行為を続けてきた
もちろん大物に出会ったことなど一度もなく、耳かきとはそういうものだ、と思っていた

そんなとある昼間、うたた寝をしていて夢を見た

「ねぇ、耳かきしてあげようか」
夢の中で私に12歳くらいの可愛らしい女の子が呼びかけてくる
いいよ、私耳の穴が人より小さいから、やりにくいよ、それに私は耳かきが苦手なの…
夢の中で私はぼやぼやとしゃべっている
「大丈夫だよ、私に任せて」
女の子はにっこり微笑んで私を手招きする
断ろうとするのだが舌がもつれて言葉が出てこない
夢の中なのに不思議にひどく眠たくて、ぼんやりしてしまう
手をひかれるがままに女の子についていくと、急に場面が変わって薄暗い森の中にいる
慌てて辺りを見回したが女の子の姿はどこにもない
目の前には古いが大きな山小屋が一軒あるだけで、人の気配すらない
仕方なく傷んだ木の扉をギギ、ギギギと大きな音を立てて開けると…
そこには神経質に痩せこけたお爺さんが暗闇に一人立っていた
「待っていたよ、耳かきをしてあげよう」
その瞬間、私はヒッ!と短く悲鳴を上げて意識を失った
505おさかなくわえた名無しさん:2007/06/17(日) 23:40:00 ID:rOxmZmMW
「夢」2

どれくらい経っただろうか、気が付くと私はベッドに寝かされていた
背中の遠く後ろでかすかに人の声がする
「…あれは難しいな、あれは難しいぞ…」
よく聞こうとするのだが何かが耳の中に詰まっているのか、水の中にいるようだ
ボワァ〜ンボワァ〜ンと頭の中でこだまして何を言っているのかよく分からない
顔を向けて声の主を探そうとして気が付いた
頭が動かない
いや頭どころか身体さえ動かないではないか、どうやら何か器具でベッドに固定されているようだ
急に恐怖が襲った…背中に汗が伝う
無茶苦茶に身体を動かしていると誰かが側に近づいてきた
「目が覚めたかな。大丈夫、耳に薬が入っているだけじゃ。もうそろそろじゃて」
さっきのお爺さんだ、何か言わなければ…
「何をするんです!早く放してください…」
するとお爺さんは
「耳かきがしたいんじゃろう?安心せい、ワシは何千人とやってきた
ちょっとお前さんは変わった耳をしとるがの、まぁ任せておけばいい」
お爺さんはそう言うと、木机の引き出しを開けて何かを取り出し始めた
カチャカチャ…カチャカチャ…私は何とか首を動かして見ようとした
すると何やら歯医者で見るような小さなミラーと、細い細い棒のようなものが何十本か見えた
…あれは耳かきなのか…?何をされるか分からない恐怖がまた私を襲いはじめた
「大丈夫なんでしょうか…私は耳かきなんて痛くてまともに出来ないんですよ、耳の穴も小さいし…」
と、私が恐怖を隠しながら尋ねると
「それはやり手が下手糞じゃからの、お前さんのような耳は素人には難しい
とにかく、心配なんじゃろうが大丈夫ったら大丈夫!」
にっこり笑ってお爺さんは言った
その穏やかないなすようなお爺さんの口調に、私も少しづつ緊張が溶け始めた
私が動けなくされている不安を訴えると、暴れて耳を傷つけたらいかんから固定しとるだけじゃ、
暴れないとなったらすぐ外すわい、とお爺さんは朗らかに言った
506おさかなくわえた名無しさん:2007/06/18(月) 00:21:56 ID:vxQQsrZ6
「夢」3

「さて、薬はよく染みたろう、始めるかな」
と言うなりお爺さんは私の耳に顔を近付けた
そうしてどこからか、これまた歯医者のようなライトが上から近づいてきた
そしてお爺さんは手に細い管の付いた器具を持ち、私の耳に入れるなりスイッチを入れた

ヴィーン…と低い小さな虫の羽ばたきのような音がして、耳の中の液体がゆっくり吸い出されていく感覚がする
それは耳の中にあった圧迫感が柔らかく消えていく不思議な感覚だった
耳に水がある筈なのになんだろう、頭の中がふわっ…ふわっ…とまるで暖かな羊水に浮かんでいるような心地よさなのだ
気が付くと思わず目を閉じて、えもいわれぬこの不思議な感覚を味わっていた
しばらくして耳から完全に水気が抜けたのが自分でも分かった頃、頭の上からお爺さんの声がした
「入り口の大きいのを取るでな」
そう言うとお爺さんは、今度は先ほどより少し太い管の器具を手にした
私はというと、こうなったらもうどうにでもなれ、と半ばやけになって身を任せている
今度はピューンと少し高い音と共に風を吸い込む音がする
どうやらこれで耳垢を吸い込むらしい
ズボー…ズボー…という音がして、耳の中で何かが引っ張られる感覚が続いた
太い管の器具は先が柔らかなゴムになっているらしく、少しこそばゆい
しばらくして音が止んだ
「さて。機械の出番はここまでじゃ。やっぱりかなり固くなっとったのう。
これで入り口の蓋が空いたからの、これから耳の形に合わせた耳かきをしていくでな」
と言うとお爺さんはかなり使いこんだ耳かきを取り出した
が…かなり柄が短い…?思うやいなや
「これから頭を動かすでないぞ」
という声と共に、ガゾッと今まで聞いた事のない音がした