阪神大震災を経験した、中学の時のクラスメイト(以下知人)の体験談。
地震でボロボロになった知人の住んでた街。家族と一緒に急いで非難して、鎮まった頃に表に出てみると
もう道路も建物もボロボロになってたらしい。あまりの酷さに、ショックで言葉が出なかったそう。
近くの瓦礫の周りに人だかりが出来てるのが目に入って、近寄ってみると……
その瓦礫の山の中から小さな子供の泣き声が。そして瓦礫の山のすぐ手前には懸命に誰かの名前を呼び続けるおじさん。
この人の子供が埋まってるんだとすぐにわかったんだけど、知人も周りの人達もどうする事も出来ない。
悔しいような悲しいような気持ちでいっぱいになる知人。
しばらく名前を呼び続けた後そのおじさんはうなだれるように下を向いて、ふと何かに気が付いたように顔を上げて
瓦礫の山に向かって、「ぞーおさん、ぞーおさん、おーはながながいのね…」と優しい声で歌を歌い出した。
続き…
泣き声はずっと止まなかったんだけど、そのおじさん(お父さん)が歌い始めてから
少しずつ声が小さくなってきた。
「ぞーおさん、ぞーおさん…」
休む事なく語りかけるように歌うおじさんの様子を見てて泣きそうになる知人。
やがて、眠るように赤ちゃんの声は消えていった。
救助隊が瓦礫を掘り起こすと中から赤ちゃんの遺体が見つかった。
暗くて、痛くて、怖かっただろう。でも赤ちゃんはとても安らかな顔をしてたらしい。
さっきこの話を思い出して少し泣いた