学生時代にバイクで良くいっしょに旅行したフクちゃんは本当に性格のいい男だった。
「フクちゃんもう4時だけど今日はどこに泊まろうか?」
「んー、野宿じゃなきゃどこでもいいよー。
あそこの民宿のカンバンあるとこでも行って見よかー」
という感じで屈託が無くていつも救われる思いがした。
またオレがうっかり決めてしまったボロ宿でも不服は一切なし。「ヨッチャン何だかす
げーボロい宿だよなー」とケラケラ笑って楽しんでた。名所・観光地に行くといつも由
来を書いたカンバンをじーっと凝視して「なるほどなぁ・・」と感に堪えたように呟く
のがクセだった。必ず「来て良かった、楽しかった」みたいなニュアンスの事を言う。
そうなると何だかこっちも随分楽しい旅をしているような気になってくる。
実は他人に気遣いの出来る心根の優しい男だというフクちゃんの本性は一緒に旅行に行か
なかったら多分判らなかっただろう。たまにこういう人はいるね。