1 :
市姉ハァハァ ◆iudQq2dlE6 :
少しうとうとしていると、誰かが僕の布団にさわるような気がした。
「なにをするんだ?」
僕はからだを半分僕の布団の中に入れようとしている彼女を見てどなった。
「(十二字欠)」(※神近市子のセリフ。古い本では「××××××××××××」)
彼女は、その晩はじめて口をききだした時と同じように、泣きそうにして言った。
「いけません、僕はもうあなたとは他人です」
「でも、私悪かったのだから、あやまるわ、ね、話してくださいね。ね、いいでしょう」
「いけません。僕はそういうのが大きらいなんです。
さっきはあんなに言い合っておいて、その話がつきもしない間に、そのざまはなんていうことです」
僕は彼女の訴えるような、しかしまた情熱に燃えるような目を手で斥けるようにしてさえぎった。
彼女のからだからはその情熱から出る一種の臭いが発散していた。
ああ彼女の肉の力よ。僕は彼女との最初の夜から、彼女の中にそれをもっとも恐れかつ同時にそれにもっとも引かれていたのだ。
そして彼女は、そのヒステリカルな憤怒の後に、その肉の力をもっとも発揮するのだった。
しかし今晩はもう、僕は彼女のこの力の中に巻きこまれなかった。僕は彼女のこの力を感ずると同時に、なおさらに奮然としてそれに抵抗して起った。
今晩の彼女の態度は、はじめからそのふだんの執拗さや強情の少しもない、むしろ実にしおらしいおとなしい態度だった。
が、このしおらしさが、彼女の手といってもいいくらいに、こうした場合にはきっと出てくるのだった。が、僕は最初からそれを峻拒していた。
彼女は決然として自分の寝床に帰った。そしてじっとしたまま寝ているようだった。(後略)
状況・人間関係の補足は
>>2-10
大正5年(1916)。
何度目かの雑誌社設立のため、栄は葉山の料亭に居続けで原稿執筆に専念することを決意し、「2,3日中に下宿屋を出て野枝とも別居する」と市子に洩らす。
市子もこの計画に賛成し、ゆっくりと、うんと仕事をしてくるようにとしきりに勧めた。
これを機にヨリを戻そうと考えたのか、市子は栄に「下宿屋を出る際には私を誘って出掛けて、葉山では一日デート」を約束させる。
(が、栄自身その頃すでに市子を疎ましく感じており、この約束については「うん、うん」と適当に返事をしていたらしい。)
数日後、栄は下宿屋を野枝と共に出て、葉山に向かう。市子への事前連絡はなし。
旧知に挨拶をするという野枝に付き合った後、栄と野枝は葉山に一泊。
翌日、栄は野枝との一日デートを終え料亭でくつろいでいると、そこに市子がやってくる。
2,3日と言うから毎日待っていたが音沙汰が無く、下宿屋から栄はすでに葉山にいると聞いて来たらしい。
三人の間に気まずい空気が流れるが、夜は更けて三人とも料亭に泊まることになった。
その夜、栄は寝床の市子を一瞥したとき、市子の形相の中に殺意を見出す。
実は以前にも栄と市子は際どい喧嘩を何度かしていた。
ある時、栄の「野枝に対する愛>市子に対する愛」に気付いた市子は、憤怒の末に落ち着きを取り戻し言う。
「私、あなたを殺すことに決心しましたから」と。
栄は市子の「殺す」という言葉を聞くと同時に、急に彼女に対する敵意の沸いてくるのを感じたが、冗談半分にそれを受け流す。
「殺すなら今までのお馴染み甲斐に、せめて一息で死ぬように殺してくれ」と。微笑を湛えて二人はそれを約束した。
このやりとりを機に、市子はまた元の「お姉さん」に戻ったのだが、以後は生来の執拗さに拍車がかかり、ヒステリーに近い有様になった。
その執拗さが満たされないと市子はヒステリーを起こし、そのたびに例の「殺す」という言葉が出て、栄は奮然として座を起って出た。
こうして栄は市子から三度ばかり絶交を申し渡され、翌日には市子が謝ってきて関係を修復するということを繰り返した。
最後の仲直りの時、栄は「こんどもし、君が殺すと言ったり、またそんな態度をみせた場合には、即刻僕は本当に君と絶交する」と市子に告げる。
……このような過去を経て、遂に栄は葉山の一夜で市子の殺意を認め、絶交を決意する。
一夜が明けて野枝は東京に帰り、市子は料亭にとどまった。
その日一日を終え、就寝を前に栄は前夜の市子の恐ろしい形相を思い浮かべ、「ゆうべは無事だった。が、いよいよ今晩は僕の番だ」と武者震いする。
市子がどんな凶器を持っていようと、それを凌いでみせるという気負いがあったようだ。
栄と市子はその夜もまた床を並べて眠りに就くが、1,2時間後に市子の方から話し掛けてきた時に、栄は市子に絶交を宣言する。
その後も市子は数度にわたり食い下がってきたが、若干風邪気味でもあった栄は聞き流して休息に専念する。
直後のうとうとが問題の
>>1のシーン。
>>1での同衾未遂の後、いよいよ栄は死を覚悟する。市子はやがて起き出して、栄の枕もとの火鉢の側に座っている。
「どんなことがあっても、こんどはけっして眠ってはならない。眠れば、僕はもうおしまいなのだ」
しかし、「今更こっちも起きるのも業腹」と思った栄の判断は誤りだった。
目を瞑り息をすまして向こうの動静を計っている間に、自分で自分の催眠術にかかって眠ってしまったのだ。
午前三時過ぎ、咽喉の辺りに熱い玉のようなものを感じて栄は目を覚ます。
障子を開けて室外へ逃げる市子を見つけ「待て!」と叫ぶ栄。市子は振り返りただ一言「許してください」と言った。
なおも逃げる市子を栄は呼吸困難をおぼえながら追いかける。「許してください」と市子は恐怖で慄えながらまた叫んだ。
(その間に料亭の女中が起きだして騒ぎ始める。)
やがて転倒した市子に覆いかぶさるかたちで栄も倒れる。
数分の昏倒の後、気がつくと血みどろになって栄一人でそこに倒れており、呼吸は困難どころではなくほとんど窮迫していた。
栄は女中に医者を呼ぶよう頼むが、来たのは警官。事情聴取を拒否し10〜20分後、自動車で病院へ。
手術台で栄は「長さ……センチメートル、深さ……センチメートル。気管に達す……」と聞き、昼までの命と覚悟し眠りに落ちる。
……というラストです。
その後、大正12年に軍部に殺されるまで栄は生きていたわけですが、この事件後の半年間、栄と野枝が一緒に寝ていると頻繁に市子の生霊が出たらしい。
決まって午前三時頃、栄の寝ている足元の壁に、市子が「許してください」と言って振り向いたときの表情そのままで立っていたという。
栄はそれが夢か現かわからないながらも大いに怯え、一緒に寝ている野枝にしっかりしがみついていたそうだ。
野枝に栄の恐怖が伝染することは無く、彼女はいつも「ほんとにあなたは馬鹿ね」と笑って、大きな体の栄の頭を子供のように撫でていた。
……らしい。
マジ長くてごめん……。
で、問題の「(十二字欠)」なんだが……
童貞の俺にはさっぱり見当がつかない。ググっても出ない。
誰かエロくて思慮深い人、一緒に考えてくれ。
瀬戸内寂聴が晴美時代に書いた『美は乱調にあり』『諧調は偽りなり』は
もう読んだ? 新潮社の瀬戸内寂聴全集に入ってる。
大杉周辺に関心があるなら必読。
チョコボ「何だこのスレは」
>>8 調べてみたら全集の12巻に収録されているようですね。
ちょっくら図書館行って読んできます。
>>9 ネタ:マジ=4:6くらいを想定してます。
適当に「××××××××××××」に入りそうなセリフ考えて遊んでください。
11 :
8:2006/08/03(木) 20:11:53 ID:Lyv8MHVn
日本図書センターから出ている自伝シリーズの『神近市子』も
おもしろいと思うよ、市子の側から見た大杉が描かれているから。
例の事件のことも、もちろん。
瀬戸内寂聴のと、「神近市子自伝」を読んでみた。
……栄自叙伝のあの記述は捏造だったのかよヽ(`Д´)ノ
栄もエロゲ主人公並の駄目人間だし……。
とりあえず栄は氏ね、というかあの時死ぬべきだった。
ついでに「市子エロいよ市子」とか考えてしまった俺も氏ね。
そのうちVIPにネタスレとして立ててみるかな……。
このスレは今週中に削除の方向で……。
13 :
8:2006/08/09(水) 20:55:31 ID:MjcA1v5C
大杉のだめんずぶりがわかりましたか。
野枝も、臭ってきそうなほど個性的だけどね……
(市子談「野枝さんは臭かった」)
あとは、大杉&野枝の四女ルイズ(1996年没)の伝記
松下竜一著『ルイズ:父に貰いし名は』とか、
ルイズ本人の遺した一連の本、
たとえば『海の歌う日 』を読んでみてはどうかと。
松下氏の『ルイズ』を読んでみた……
みんなみんな可哀想だ・゜・(ノД`)・゜・。
野枝は……我の強い我侭娘の印象が拭えない。
ひもじいからってカーチャンのご飯食べちゃ駄目だよ……