368 :
テレクラ話:
駅のそばの東急イン、シングルの部屋。おれは出張できている。
ベッドの上にはついさっきまで裸の女がいて、俺の下で声をあげていた。
チェックアウト前の朝からのセックス。
女は声を押し殺そうとはしていたが、たぶんその甲斐もなく両隣の部屋に届いていただろう。
三回目の出会い、四度目のセックス、最初のときと比べれば互いの
からだもわかってきている。屈曲位になると反応が強くなると知っている。
長い足を折り畳んでいくつかの姿勢をとるうち、女は達していた。
最初にあったのは去年の秋だった。二四歳のOL。彼氏はいないらしい。
商用で訪問した街。テレビさえ置いていない薄暗い狭いテレクラを介して会った。
四、五年前まではおれの街でもたまに見られた"フツーの女"からのコールだった。
地元の人だといつ知り合いに会ってしまうかわからないから怖い、だから
女はテレクラでは出張の人間だけと会うことにしているという。
待ち合わせて酒を飲みにいく。どうでもいい会話をしながら
やや気持ちがゆるんできたところで軽く膝に触れる。おれの目から見れば、
女の頬が赤らんだのは、酒のせいだけではない。
会話の時はセックスの話も取り混ぜる。自分が性的に放縦なタイプだということを隠さない。
女を口説くときにはセックスの話をするのが正道。最近読んだエッセイでは団鬼六もそうしてる
らしい。人によってやり方は違うだろうだが、おれはテレクラでもネット軟派でも
そうやって過ごしてきた。
この地にゆかりのないよそ者で、オヤジでもなくセックスの相性も悪くないおれは、
おんなにとって貴重なアタリだったようだ。携帯電話番号を教えてくれた。