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プロレスの見すぎ:
「他の子の腹を訳もなくたたく」「おもちゃの取り合いで何度も『ぶっ殺す』と言う」「注意されると自分の手足をひっかく」―― 楠凡之・北九州市立大助教授(臨床教育学)らによる保育園の全国調査で、園児のこんな問題行動が報告された。
4、5歳児クラスの半数で観察され、背景に虐待被害を想定する保育士が多かった。少年犯罪で注目された「キレる」現象の“幼年化”とも言えそう。楠助教授は「問題児扱いするのではなく、虐待などを見落とさないよう注意が必要だ」と指摘する。
調査は昨年5月、北九州市を中心に全国120の保育園に質問用紙を郵送。保育士が「キレた」と感じた園児の人数(出現率調査)や具体的行動(事例調査、複数回答)を尋ねた。
回答は66園(計6892人)が寄せた。出現率は2・9%(45園計202人)で、年長者ほど増えた。事例調査の回答は37園から72人分(2〜6歳)。類型で分けると、身体攻撃が最も多く73%。以下「長時間泣き続ける」など感情制御が
困難63%▽「ガラスを割る」など物に当たる33%▽「死ね」「ばか」などの暴言26%。自傷行為も6%あった。
72人のうち、保育士が「虐待を受けている可能性がある」と受け止めた子が40人に上った。一方で医師から注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されるなど、病気が原因とみられる園児は12人(16%)だった。
全国保育士会の藤岡佐規子・前会長(北九州市)は「親のストレスは家庭内で弱い立場の子供にぶつけられる。キレる行為は助けを求める悲鳴に思える」と話す。楠助教授は「虐待も障害も対応には高い専門性が求められるが、国の基準では4、5歳児
30人に保育士1人しか配置されない。保育環境の充実が不可欠だ」と話している。 【高倉友彰】(毎日新聞)