12月31日猪木祭でのこと。
アビディの控室に煙草を吹かしながらバンナがやってきた。
よくあることである。
アビディの控室に戦慄が走る。
だが、一人だけさっと立ち上がった男がいた。
アビディ本人である。
「先輩、チィース!」
グローブを放り投げ駆け寄る。
「どうぞ!火ッス!」
「おう」
鷹揚に後輩の火を受けるバンナ。
挨拶もしないで震えているセコンド陣ににらみをきかせながら
フウと白煙を吐き出したバンアは、アビディに憤懣をぶつける。
「ところでアビディよ。最近のおまえの試合、ありゃあなんだ?何がフランスの喧嘩屋だテメェ」
「オ、オス。いけませんでしたでしょうか…」
「100年早ェんだよ」
「オ、オス…」
「見所のある奴だと思ってたが、調子付いてんじャねェぞこら!」
「オ、オス!すいませんです!」
「テメェは、まだベスト8に早ぇんだよ。もう一度地区予選から出直して来い。
総合なんざナマやってんじゃねェ!」
バンナは再びにらみをきかせながら去っていった。
「1回戦敗退が何逝ってやがるボケが」
と、いつものようにアビディは心中で毒づくのであった。
何これ?面白いの?
バンナはタバコなんて吸わんだろ。
これ面白い
面白いのかな?つまんないけど笑ってしまった。
永田戦を終えたミルコの控え室。
アビディはミルコと共に、モニターでバンナと安田の試合眺めている。
ミルコのセコンドたちは、すでに帰り支度を始めている。
「で、何て言われたって?」
「はい、地区予選から出直して来い。だそうです」
モニターには、安田に対して攻めあぐねるバンナが映し出されている。
控え室内にいるK-1関係者に聞かれないよう、アビディは必死に笑いを噛み殺す。
「なんで言い返さなかったの?」
「え? いや、やっぱ人気も実績もオレより上ですし、下手に逆らったら…」
「いいんだって、あいつの時代なんて来やしないんだから。ガツンと行っちゃって」
「マジっすか?」
「今年のトーナメント見たろ?俺とお前出てたら決勝で当たってるよ。正直言って
アーツもホーストも落ち目だし、それにバンナも今日負けて完全に消えるから」
「え!?」
いつのまにかリング上では、安田が娘を肩車にして涙を流す光景が映し出されている。
「ああ、お前もイシイに呼ばれてるんだろ?俺は先に行ってるから」
そう告げるとミルコはセコンド陣に挨拶をしながら控え室を後にした。
うーん、微妙・・・