読んだこと無い児童書を勝手に推測するスレ2冊目

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120M氏
・リクエスト
「もさもさぼうや」

<知っている事>
表紙にはもさもさした小汚い少年の絵がかかれている。
裏表紙には消防車や井戸がかかれている。
その坊やとは非常におとなしそうな少年である。

ワクワク
121なまえ_____かえす日:03/11/12 18:32 ID:+LOU9Qvh
>>120

『もさもさぼうや』

【もさもさ】(副)スル
(1)人の毛や草などが茂っているさま。
「雑草が―(と)はびこっている」
(2)動作がにぶいさま。
(三省堂提供「大辞林 第二版」より)

 町長が役場へ出勤する途中、毛のたくさん生えた子どもを見た。
子どもはゆっくりとした足取りで町の方へ向かっていた。
 その日いらい、町は一変してしまった。
 みんな毛むくじゃらになった。みんな仕事の手が鈍くなった。役
場に電話が殺到した。職員が必死で対応したが、何しろはかどらな
かった。動作はのろいし、受話器が毛むくじゃらなので持ちづらか
ったから。そのうち電話のベルの音が変わった。町長はそれが「も
さもさ」と聞こえることに気づき、今や町が「もさもさ」に支配さ
れていることを悟ったのだった。
 さんさんと輝いていた太陽が、もさもさと輝いた。さらさらと流
れる小川が、もさもさと流れた。風がもさもさと吹き、星がもさも
さと光った。ばたばたした人々も、もさもさするようになった。町
がもさもさしたのでトラブルが相次いだが、対応する人々がもさも
さしてたし、トラブル自体ももさもさしていたので 結局何もかも
がもさもさしたままだった。
 商店街で火がもさもさと燃え上がったとき、消防士がもさもさと
サイレンを鳴らしながらやって来た。水はもさもさと飛んだ。火は
もさもさと消えたが、燃えつきた家はもさもさと崩れた。何しろみ
んなもさもさしていたので、消火ははかどらなかった。しまいには
毛に火がつきだした。何しろ消防車も消防服も毛だらけだった。み
んな慌てたが、その様子はさもさしていたし、火もやっぱりもさも
さ燃えるのだった。

 町長は絶望して泣いた。もさもさと。

 すると、雨がざあざあと降り始めた。

 みんな我に返った。ホースの水はじゃーじゃーと飛んでいた。火
はぼうぼうと燃えて、じゅうじゅうと消えていた。消防士たちはや
る気をむらむらと取り戻し、きびきびと動いた。火はどんどんおさ
まり、雨がやむ頃には、火事の始末が終わっているばかりか、毛も
すっかり抜け落ちていたのだった。

 町長は、なぜもさもさが収まったのだろうと考えた。ある人が、
毛むくじゃらのぼうやが町を出て行くのを見た、と言った。それで
満足した。出勤途中、彼はにこにこと笑っていた。なぜなら太陽は
再びさんさんと輝いてるし、小川もさらさらと流れ、風もそよそよ
吹いているからだった。

 町長は役場に入ろうとして、ふと通りに目をやり、丸々ふとった
重そうな老婆が、いかにもだらけた様子で、町の中へ転がっていく
のを目撃した。

 彼の机の電話が、ごろごろと鳴り始めた。