☆*9が指定した児童文学を*0が書くスレ☆

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588なまえ_____かえす日:2005/11/13(日) 09:13:24 ID:bzPYnwu+
読んではいるんですけどね。

社会人になると時間がない…
589なまえ_____かえす日:2005/12/19(月) 17:05:51 ID:BA9XpHlX
[雪]と[光]でお願いします。
ドキドキ。
590なまえ_____かえす日:2005/12/21(水) 09:17:03 ID:OPtratil
ぼくが家のクリスマスツリーと同じ背丈になった年のクリスマスの日。
ぼくとママはレストランの扉を開けた。
そこはお子様ランチがあるようないつものレストランじゃなく、大人ばかりがしゃちほこばって座ってるような店。
いつものようにおうちでパーティーの方がいいのにな、
でも、ひょっとしたらサンタのプレゼントなのかもしれない。
ぼくの心をやさしくしてくれたのはゆらゆらゆれるキャンドルの明かりだった。
「お待たせ」とぼくの肩を優しくたたいたのは・・・
「パパ!!」大好きな大好きなパパだった。
「久しぶり。」パパは照れくさそうにママに頭を下げた。
ママも小さくパパに頭を下げた。
たくさんのお料理が運ばれてくる。パパとママが目の前にいる。
やっぱりこれはサンタの贈り物なんだ、ぼくはすっかり夢心地だった。
パパとママはぼくの話ばっかりしている。
二人ともへんなの。ぼくの前ではいつもいろんな話をしてくれるのに。
パパ、いつものママとの想い出の話聞かせてよ。ケーキの話がいいな。
クリームだらけの顔で作ったママのケーキは石のように固かったけど、すごーく甘かったんでしょ。
ママ、この間の話聞かせてあげなよ。ほら、カレーライスの話。
大人用の辛いカレーを作りすぎたときパパに助けて欲しかったんだよね。
パパはカレーが好きだからきっと全部食べてくれたはずだもんね。
・・・でも、結局パパもママもカチンコチンになって話ははずまなかった。
温かい明かりももお料理もパパとママを溶かすことはできなかったんだ。
お店を出たとき、星は1つも見えなかった。
パパもママも、そこを動けなかった。ぼくは一つのおねがいごとを思った。
そのとき星が1つまた1つ、空からふんわり落ちてきた。
「・・・雪」ママとパパは同時に言った。
そしてぼくの右手をパパが、左手をママが握ってあっためてくれた。
「ぼくはいいよ」ぼくはその手を動かし、パパにママの手を握らせた。
「ぼくの手は充分あったかいから、カチコチのママの手をあっためてあげて」
パパとママは少し目を丸くした。少し黙ったまま二人で見つめあったあと、
「・・・もう少しあっためていてくれる?」小さくママが笑った。
「君があとでコーヒーを淹れてくれるなら・・・。」パパは空を見上げ鼻をすすった。
「いっしょにかえろ」願いどおりになったぼくはうれしくて二人に抱きついた。
そして赤い目と鼻をしたパパにウィンクを1つしてやった。
「ママのケーキがうちで待ってるよ・・・石のように固くはないけどね。」
591なまえ_____かえす日:2005/12/21(水) 09:54:41 ID:OPtratil
↑0でしたね。お題書くの忘れた。
えーーーーと、「行く年 来る年 残るもの」で。
592589:2005/12/23(金) 00:17:54 ID:w6Gf7w2G
うわ〜〜〜〜♪
かなりの過疎スレなので
不安と期待が半分半分だったんですが。
素敵なお話をありがとうございます(>▽<)。
しかも今の季節ならではのクリスマスネタ!!!
うれしさヒトシオです。重ねて御礼申し上げマス。
593行く年 来る年 残るもの:2005/12/25(日) 00:58:25 ID:fvSumIGd
今年も残すところあと1週間をきりました。
クリスマスにサンタさんにプレゼントもらって
ケーキを食べて、ワクワクしたと思ったら
今度はバタバタとお正月の準備がはじまります。
一昨日は障子を破り、昨日は窓磨きを手伝いました。
大掃除はちょっと大変だけど、家族みんな
そろって、ワイワイいいながらやる掃除は
なんだか楽しくて好きです。
そして今日は、朝からお母さんはバタバタと
台所で忙しそう。
お正月と今日食べる年越しソバの準備です。
お料理運びを手伝いました。

紅白歌合戦をみて、年越しソバを食べて……
除夜の鐘がなりだしました。
あと少しで「今年」がおわって「来年」がくるそうです。
あと数分で、「今年」は「去年」になって
「来年」は「今年」になるのです。
こう考えているうちに、いつも瞼が重くなって
眠ってしまうのです。
でも、今年こそは。「来年」が「今年」に
変わる瞬間をみるのです。

重くなった瞼を、一生懸命もちあげながら
除夜の鐘をききました。
105、106、107……
いよいよ「来年」が「今年」に変わる時です。

ゴーーン、、
108つめの鐘がなった瞬間。
暗い暗い細長い、ぽっかりと穴へと
すいこまれるように落ちていきました。
シューっと、落ちていったと思うと
急に白くまばゆい光に包まれ、ふわりふわりと
漂いはじめました。
そこでは、いろんなものがグニャグニャとまがって
ただよっていました。
みると、オモチを詰まらせてる私がうつっていました。
その横をみると、赤いランドセルを背負って
サクラ並木をあるいている私。
海でスイカ叩きをしている私……
「あ、こんなこともあったなぁ。なつかしいなぁ。」
そこでは、一年間のできごとがクルクルと流れていました。
ふわりふわりと漂って、
ストンっと、足がつきました。
一番したまできたようです。
そのしたは、また暗い空間が細く、続いていていました。
するとそこへ、白い光がフワフワとやってきて
暗い空間に
「よろしくね」
と囁くと、なにやら光る丸いものをそっと
暗い空間へと落としました。

「ああ、落ちていく」

その丸いものをみながら、スーっと
そこで眠ってしまいました。
594行く年 来る年 残るもの:2005/12/25(日) 00:59:40 ID:fvSumIGd
「起きて、、、起きて、、」
目を覚ますと、お母さんがニッコリと微笑んでいました。
「あけましておめでとう。朝ごはんになるよ」
おきてみると、昨日はコタツで眠ったみたいでした。
上には毛布がかけられていました。
「今回もお前は鐘の途中で眠ってしまったなぁ」
お父さんが笑いながらからかいました。
「ううん、寝てないよ、来年が今年に変わる瞬間をみにいってたんだ」
「なんじゃそりゃ」
そこへ、お母さんが朝ごはんをもってきました。
「ほらほら、オシャベリばかりしていると
またオモチを喉に詰まらせるわよ。」
「そういえば、去年お前はモチつまらせたんだったなぁ。
それも良い思い出だなぁ」

それから、去年のお正月の思い出を話しながら
朝ごはんを食べ、初詣にいきました。
オモチは喉につまらせませんでした。
今年もいっぱい思い出を作って
来年に渡したいです。
あけましておめでとう。今年もよろしくね。
ーーーーーーーーーーーー

>>591
書いといてなんだけど、お題は9ですよん
595なまえ_____かえす日:2006/01/12(木) 01:27:22 ID:JghwUHhS
さあ、オレを踏んでゆけ!
596なまえ_____かえす日:2006/01/21(土) 21:20:15 ID:Zlnb611+
感想・作家ともに来ないな……
初期の繁栄がなつかしひ
597なまえ_____かえす日:2006/06/10(土) 01:14:44 ID:J2CEtjpo
もう六月だけど、前のお題「行く年 来る年 残るもの」で一個つくったよ。
踏み台がわりにどぞー(・ω・)っ旦
-------------------------------------------
「おい、ウメ。とっとと戻れやい」
ふるびれた神社の狛犬のタケが言いました。
ウメは自慢のくるっと輪になったふさふさ尻尾を左右に揺らしながら、タケの言葉を無視するように
タケの座っている台座の周りをゆっくり一周しました。
「おいおい、タケ。お前さんは全く面白みのない奴だな」
「おいおいおい、ウメ。平和が一番なんだよ、そして二番は睡眠だ。面白くなんてなくていい」
右前足を鼻先から五センチ下に添えて、ため息混じりにふーっと長く息を吐き出すと、
「だから面白みのない奴なんだよ、お前さんは」と遠くを見ながらウメは小さくつぶやきました。
ウメの最近のお気に入りの、“哀愁を漂わせる男のポーズ”です。
タケは平和なうちに眠ろうと思って、大きなあくびを一つして言いました。
「………。俺はもう寝る。さらばだ」
「えっ、あっ!ちょっと待って!!」
目を閉じかけていた狛犬のタケは、言われた通りに半分目を閉じかけたままにしました。
「……何か用か?」
「いいことを思いついたんだ!タケもきっと気に入る!」
慌ててしまったので“哀愁を漂わせる男のポーズ”の最後のシメである、
後ろ足でぐりぐりとタバコの火を消す動作をやり損なってしまったのが
ウメには少し残念でしたが、それよりもタケが眠ってしまっては大変です。
なにせ狛犬である二人は満月の夜しか自由に動けないのですから。
タケが寝てしまうと、ウメも寝るより他にすることがありません。
「……ふーん」
迷惑だということをそれとなく伝えるために、タケはあきらかに気のない返事をしました。
「買いに行くんだ!!」
「何を?」
「お守りだよ!」
「お守り?」
タケは目を丸くして聞きました。
598なまえ_____かえす日:2006/06/10(土) 01:16:15 ID:J2CEtjpo
「そう、お守りさ!一年いい年をすごせるようにさ!」
ウメはにんまりとしました。
この小さな古びれた神社にはもう神主さんさえいませんでした。
もちろんこの神社にお参りにくる人なんていません。
お守りなんてもうだいぶ昔に見たっきりです。
こんなにいい考えはないはずです。
しかし、タケは不機嫌そうにいいました。
「俺は別に…。だって一年の内で起きてる時間なんてほんのちょっとだし」
「なんて面白みのない奴なんだ、お前さんは!」
ウメはタケの台座に蹴りをいれました。
「……。面白くなくていい、寝る。」
ぶっきらぼうに目を閉じるタケの顔をウメがのぞきこみました。
「折角の満月の夜なのにもう寝ちゃうの?そんなに面白みのない奴だから、タケの体は苔でいっぱいなんだ!」
確かにタケの体にはたくさん苔がついていました。
タケは満月の夜もろくに台座から降りないばかりか、身繕いだってしないものぐさな狛犬でした。

大晦日の夜、二匹は使い物になりそうな葉っぱを集めながら山を下りていきました。
初日の出を拝む彼らの前足の間には、犬の絵が縫いこまれたお守りが置いてありました。
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クオリティ低くてスマン
599なまえ_____かえす日:2006/07/06(木) 16:17:16 ID:TbZO8SLz
山崎剛明は正真正銘のバカだ
600なまえ_____かえす日:2006/07/18(火) 02:32:20 ID:kfwhgK8W
まとめサイト作ってみようかなー
サーバーいいところがあるといいんだけど、みんな転載おkなのかな?
601なまえ_____かえす日:2007/01/19(金) 03:18:42 ID:Bi3tEoPd
なんだか目に見えるような情景がいいな。>597-
軽くどつきあいながら道を行くふたり?がほっこり。

ひさしぶりにざっくり全体読み返して面白かった。
推測スレッドも楽しい。この板、緩やかながら良いとこだな。

21さん、どうしたかな。
こんなところだからそう宣伝もできないかもしれないけど。
あのとき何も宣言も出来なかった396だけど、
絵の方で、児童書の世界に少しずつ関わってるよ。
なかなかまとまった仕事にはならないけど頑張ってる。
どこかで、児童書を好きなここの人たちの目に触れることができるように。
遅まきながらの所信表明ですが。がんばります。

>600
いんじゃないかな。よければぜひ。
転載駄目ならば申告してもらって取り下げることもできると思うし。


お題出しときます。「レンズ」「文字」で。
602レンズ 文字 :2007/01/20(土) 22:26:46 ID:YHPdPlGZ
「バラ色のレンズ」

僕はずっとバラ色のレンズを探している。

にいちゃんはバラ色のレンズを作るのが得意だった。
そっと、右手の親指と左手の親指、右手の人差し指と左手の人差し指で
作ったわっかをシャボン液にいれてだすと、薄いバラ色のレンズが
わっかの中にできあがる。

にいちゃんの作るバラ色のレンズは特別だ。
そっとのぞきこむと、綺麗な青空や花畑、海の向こうの国の景色が
次々と現れては消えていく。
僕は、にいちゃんにあうと必ず作ってもらった。
「ハルタは本当に好きなんだなぁ」
そう笑いながら、にいちゃんは嫌な顔もせず毎回作ってくれた。
にいちゃんとバラ色のレンズをのぞきながら、この景色はどこだろう?とか
この虫はなんて虫だろう?とか話す時間が好きだった。



そんなある日。
にいちゃんは僕の前からいなくなった。
海の向こうの遠い遠い国へ、戦争に行ってしまった。
出発の前の夜、にいちゃんはバラ色のレンズを作ってくれた。
「しばらく作ってやれないから、今日はいつもより長くみせてやろう」
そう言うと、にいちゃんはいつもより多めにシャボン液をつけて
バラ色のレンズを作った。
「……僕もバラ色のレンズが作れたら、毎日のぞいてにいちゃんを探すのに」
いつもよりはしゃぐにいちゃんに、なんだか不安になった僕はポツリとつぶやいた。
「そうだなぁ。毎日練習してごらん。にいちゃんもきっと向こうの国でも
レンズを作るから。そしてハルタを探すよ」


にいちゃんは次の日の朝早く、旅立っていった。
僕は毎日バラ色のレンズを作る練習をした。
なんどやってもパシャンッと消えてしまったり、なにもうつらなかった。
数ヶ月たったある日。
僕の指と指の間にレンズができあがった。バラ色のレンズ。
僕はさっそくにいちゃんを探して覗き込んだ。
そこには
美しい青空も 花畑も 美しい国も無かった

赤い炎が黒い空を染め、白い煙が立ち込める恐ろしい景色だった。

急にレンズはグネグネと色を変え始め、シャボンのマーブル模様がゆっくりと動き始めた。

「ハルタ」

マーブル模様の中にゆっくりと文字が浮かび上がった。
にいちゃん、にいちゃんだ!
そう叫ぶと、バラ色のレンズはパシャンッとわれてしまった。

その後、どんなにシャボンでレンズを作っても
バラ色のレンズは作れなかった。
もしかしたら、あの文字は目の錯覚だったのかもしれない。
でも僕は、にいちゃんだったと信じている。
そして僕は今日もシャボン液に指をそっといれる。
バラ色のレンズとにいちゃんを探して。
603なまえ_____かえす日:2007/01/20(土) 22:51:13 ID:YHPdPlGZ
半年近く書き込み無くても落ちないこの板が好きだ。

>>601
久しぶりの書き込みにテンションあがって
つい書いてしまいました。21も601もがんがれ。
そして600のサイトをwktkしながらまつ。
604なまえ_____かえす日:2007/01/21(日) 22:10:00 ID:XG21bPN9
>602
バラ色のレンズ、きれいだな。匂い立つような言葉。
話もせつなくて美しくて、素敵だった。

601ですが。がんばりますありがとうー
605なまえ_____かえす日:2007/02/16(金) 20:20:14 ID:91Ud92wa
ほしゅ
606なまえ_____かえす日:2007/07/17(火) 17:03:53 ID:tL4Fa+hj
保守。

>>602
悲しいけど素敵なお話でした。
文章もうまいね。趣味か仕事かで、よく書いたりしてるのかな。
607なまえ_____かえす日:2007/08/03(金) 20:06:50 ID:2pmyaEkK
>>602
頭にぱっと情景が浮かぶ素敵な文でした。
そして今目がうるうるしてます…
乙です。
608なまえ_____かえす日:2008/03/09(日) 14:26:15 ID:1RyVqpYO
期待age
609なまえ_____かえす日:2008/03/10(月) 16:47:32 ID:peAmglNT
人が少ないけど・・・と言うか、いないけど。
「帰り道」「四辻」でお願いします。
610なまえ_____かえす日:2008/03/12(水) 17:41:22 ID:9eaqAyUq
暗いイメージでいくけどいいかな。初挑戦してみようかと。
611610:帰り道 四辻:2008/03/12(水) 22:05:39 ID:MqOikxOf
四辻に棲む鬼の話

 「ぶたいち様」とも呼ばれる公方様のお膝元から、少し西にいったところにある
小さな村のはずれの四辻には、桜の木がつくねんと立っていて、
そこにはかつて京の都で悪道の限りを尽くしたおそろしい鬼が棲むという話である。
大層な縁起のある寺社仏閣もなければ、
耳目を引くような言い伝えとてあるでもない貧しい村に、
なぜそんなものが棲みついたのかはわからない。
その姿を見た者すらないが、鬼の辻という名は確かにあって、夜は決して通る者はない。

 五つになったばかりの小十は、貧しいきこりの末の子である。
ひとりでいつまでもつまらぬ草花をしゃがんでながめていたり、
そうかと思えば雲を見て急に笑い出したりするので、家族はおろか、
村の子らにことごとくのけ者にされ、彼らの機嫌がよければ小突かれた。
それでも洟をすすりながらにやにやと笑っているような小十であったから、
例の鬼の辻でその姿をよく見かけるようになっても、
村の者は誰一人とてそれを阻もうとせずに、ああまた小十が愚かにも屈託なく遊んでいる、
と思うばかりだった。一度、山に粗朶を拾いに行く途中で辻の小十を見かけた村の若者の話では、
小十は桜の木に手をかけ、まるで引っ張られまいと踏ん張るように、村から遠ざかる方に身体を倒して、
きゃあきゃあと喚きながら、「かえればかぜふくふけばたえよう」と回らぬ舌で歌っていたということである。
小十のやることにはいちいち構いつけない村の者は、それを聞いてただ呆れただけだった。

 辻の桜の木が零れるような花を咲かせた頃、村では疫病が流行り始めた。
命までは取られないらしかったが、一度患ってしまうとなかなか治らず、
ただ床に伏し続けるしかない病に、村は真綿で絞められるように苦しんだ。
間もなく災厄は全て四辻に潜む鬼の祟りということになり、
近頃になると連日辻で騒ぎ立てていた小十は、村人達によって住み慣れた家から鬼の辻まで引っ立てられた。
親であるきこり夫婦はそれを黙って見送った。襟首をつまみ上げられ、
迫る鬼から村を守るかのように、桜の木の向こう側に厳重に縛りつけられても、
小十は村人を見てにこにこと笑い続けた。小十と言えば、そんな風に笑うことしか知らぬ子供だった。
小十を縛り付けた村人が村の前を左右に走る道を跨いだ瞬間、
辺りを嵐のような風が駆け抜けた。山が鳴り、雲が吹き飛ぶほどの風に
腕で顔を覆った村人の全てが、帰さるるならば貰い受けようというおそろしい笑い声を聞いていた。
肝の据わったものは声がしたと思しき桜の木の上を睨みつけたが、
あっと言ったきりあとはもう言葉にならなかった。
風は桜の周りをぐるぐると荒れ狂い、
あっという間に道の向こうの山の方に吹き去っていったが、
桜の傍に小十の姿が見えなくなっていることに村人が気付いたころ、
道の上を再び村の方に帰ってくるように吹いてくる風があったが、
それは生臭いような変に人肌めいてぬるい風だった。
桜の花が全て散る頃になっても気の失せるような風は止むことなく、
何かの箍が外れたように猛威を振るうようになった疫病のため村は死に絶えた。
その後は行く人もなく、御一新のころには、四辻も草に覆われて見えなくなった。

612なまえ_____かえす日:2008/03/15(土) 02:52:49 ID:kTqbBbLh
携帯から失礼します。

わー!わー!
半年待つ覚悟だったので嬉しいです!
小十は鬼の子だったのかな?
帰らないように、桜の木にとりすがってるところが切ないです。

ありがとうございました!
613なまえ_____かえす日:2008/03/17(月) 14:16:19 ID:cmOzS6SQ
うわー・・・
ひさしぶりに2ちゃんに来て、とてもよいものを読ませていただきました。
ありがとうございました。このスレお気に入りに登録しよう。
桜の木が立つ、「つくねん」という描写に児童文学好きの真髄を見た・・・。

614なまえ_____かえす日:2008/06/09(月) 02:34:06 ID:kVh3sKZs
age
615なまえ_____かえす日:2008/06/23(月) 02:00:10 ID:6/qggbAL
5年以上経ってるのにまだ落ちないんだ・・・
児童書板ってすごいな。

久々に書いて見たいと思うけど、この状態だと
しばらく無理かな。
616なまえ_____かえす日:2008/06/25(水) 10:49:01 ID:T8DcbiAI
いえいえ、お待ちしてますよ。
617なまえ_____かえす日:2008/08/31(日) 16:23:58 ID:4EU5gb2b
期待を込めてage
618なまえ_____かえす日:2008/11/03(月) 02:09:27 ID:SDa9tajI
あれから5年か…今頃21サンはプロになってがんばられておるんだろうな…

うちですか?うちはいまだに趣味でぼちぼちです…
久々に文学フリマに参加しますが。
619なまえ_____かえす日:2008/11/22(土) 11:46:04 ID:kZN9TF/E
ふと久々に覗いてみたら*9!
と言うわけで指定します

「迷路のような」
「鳥の声」

ぱっと浮かんだ以上二つでヨロシクお願いいたします。
何年でも待つ!
620「迷路のような」「鳥の声」:2008/11/27(木) 02:16:12 ID:TTQl4LUR


「あ、一番星。」
ばいばい、とちぃちゃんがえりちゃんと別れて
公園をでた時には山の上側に夕焼けが顔を覗かせていたのに
今ではすっかり紺色に包まれて、東の空にキラキラと星が輝いていました。
もっと早く帰るつもりだったのにな、と足元の小石を蹴飛ばしながら
ちぃちゃんはお家に向かって歩きはじめました。
ちぃちゃんは冬の帰り道があまり好きではありません。
木の葉っぱは枯れて、辺りが早くに暗くなってシーンとして、
黒い深い影がずっと続いている、迷路のような道をあるかなければないからです。
歩いていると、塀に移った黒い影がグニャグニャと動きだしそうな気がします。
ほら、早く帰らないと、捕まえてお前も影にしちゃうぞ、と言っているようです。
ちぃちゃんは迷路のようにぐるぐるした道を走り始めました。
ちぃちゃんの口から息がハァハァと漏れます。
その時です。
白い鳥が、ちぃちゃんの目の前を飛んで行きました。
綺麗……
ふぅ、と息をつくと
今度はちぃちゃんの顔をなでながらもう一匹飛んで行きました。
ちぃちゃんがふぅふぅ白い息を吐きだすと、その度に白い鳥が次々とでてきます。
ちぃちゃんはすっかり楽しくなって、白い鳥たちと走りだしました。
顔の周りをふわふわただよっているのもいます。
遠くへ、遠くへ一番を目指して飛んで行くのもいます。
小さな小鳥をつれて飛んでいる親子もいます。
ちぃちゃんが走っていくと、明るい光の中に、大きな白い鳥がみえました。
うわぁ、あの白い鳥が一番大きいや!
その白い鳥の向こう側には、ちぃちゃんのお母さんが白い息をもくもく吐き名がら立っていました。
「ちぃちゃん、おかえり。遅かったね。」
「うん、お母さんただいま。白い鳥さんと帰ってきたの。」
ちぃちゃんがそういって、はぁーっと息を吐いたとき、もう鳥たちはいませんでした。
あれ、とちぃちゃんが白い息を見つめていると、
シーンと凍った夜の空に鳥の声が聞こえてきました。
みあげると、深い暗い夜の空に白い息をふぅっとふきかけたように
一直線にならんだ白い鳥が遠くへ飛んで行くところでした。
621なまえ_____かえす日:2008/12/12(金) 14:10:54 ID:BHMOmRYe
久しぶりに覗いてみたら、まだスレが細々ととはいえ
続いていてうれしいです。
休日、懐かしい部分から一気に読んでみたいなぁと思いました。

>620
冬の帰り道の気分を思い出しました。
なんとなく宮沢賢治っぽい情景が浮かびました。
622619:2008/12/21(日) 22:10:48 ID:H4PE8pmJ
まさか一週間以内にレスがあるとは…油断しました。
ありがとう>620さん。白い鳥って、去り行く魂というイメージなんだけど
これは幸せの象徴ですね。児童文学らしくていい作品でした。
623なまえ_____かえす日:2009/04/20(月) 21:57:49 ID:FhlA8brs
最近すごしやすくなりましたね。
春らしいお題に期待してage
624なまえ_____かえす日:2009/05/05(火) 03:05:46 ID:kzd203K/
こどもの日age
625なまえ_____かえす日:2009/05/19(火) 14:51:26 ID:j3Y2e5ZW
新作期待
626なまえ_____かえす日:2009/06/27(土) 08:52:28 ID:PZBp+ubb
暑くなってきましたね。
627なまえ_____かえす日:2009/07/22(水) 23:31:43 ID:hgME1rzu
皆既日食age
628なまえ_____かえす日:2009/08/12(水) 01:04:04 ID:/OeKbLu2
夏休み的な作品がよみたい
629なまえ_____かえす日:2009/08/13(木) 23:37:23 ID:M54bB5lO
じゃ、天文ショーにちなんで「流星群」。
630なまえ_____かえす日:2009/08/16(日) 09:18:26 ID:IOd/FXiG
おや、君は僕らと話が出来る人間なんだね?
へーめずらしいな。
うん。こんにちは。

僕の話を聞きたいって?
なぜ僕なんだい?
ここにはたくさんの興味深いモノ達がいるだろう?
よりによって僕みたいな小さなかけらに何の用があるんだい?

え?僕が異質だから、だって?

そうか。君にはそんなことも分かるんだね。
そう。僕はここにいる彼らの仲間ではない。
見つけた人間が、間違えちゃったんだよ。
僕が彼らの一部だってね。
まぁその頃には、彼らとも仲良くなっていたから別にかまわないけどね。

僕は昔・・・すごく昔だよ、たくさんの仲間と空を飛んでいたんだ。
雲よりもずっと上。
君たちが宇宙と呼んでいるところだよ。
そう。流星群と呼ばれているね。
「流星群」なんて言葉よく知っているね。
へぇ・・・最近見たって?
いいや違うよ。僕はその時君が見た星じゃない。
僕が来たのはもっとずっと昔のことだよ。
ごめんよ。がっかりしたのかい?
でも君が見た星の中にもそのうち、僕みたいに展示されるやつが出てくるかもしれないね。

僕たちはもともと地球と同じような、結構大きな星だったんだよ。
でも何かにぶつかって、細かい石の集団になっちゃったんだ。
自分のことにいい加減だって?
もうずいぶん昔のことで記憶があいまいなんだよ。
で、最初はひとつだったから、僕らはたくさんでひとつの意識を共有していたんだ。
でもそのうち、ばらばらになっている時間が長すぎて
僕らは小さな一つ一つに分かれた。
そして今まで一人だったがたくさんの仲間になったんだ。
僕らは小さなたくさんになっても、ひとつの星だった時と同じように
太陽の周りをくるくる回っていた。
たまに他の星にぶつかって、何人かはその星に降りてゆくんだ。
それが流星群ってやつだよ。
僕は地球の海の中に落ちた。
631なまえ_____かえす日:2009/08/16(日) 09:21:19 ID:IOd/FXiG
地球に入る時僕らは、燃える。
それが流れ星の光だよ。
燃えながら僕はどんどん落ちてゆく。

熱くなかったかって?
僕らと人間はちょっと感覚が違うから大丈夫だったよ。
火傷なんかしないんだよ。
ありがとう。

僕はじゅうじゅう音を立てながら海に落ちた。
真夏に水の中に飛び込むような気持ちよさだよ。
僕は真夏に水に飛び込んだことはないけどね。
僕が落ちた海は、たくさんの変わった格好の石があった。
君たちが遺跡と呼び、今ここに展示されている物たちだよ。
不思議で綺麗な風景だったよ。
君にも見せてあげたいなぁ。

ん?むこうで映像を流しているって?
そんなの駄目だよ。
全然違うんだ。

熱くなった体を冷やしながら、僕はどんどん海の深いところへ潜っていった。
周りにはたくさんの遺跡。
魚も泳いでいたよ。
あの水の感触。
あの気持ちよさは映像なんかじゃ分からないよ。

僕は適当なところに落ち着くと、その石ひとつと話した。
彼らは昔、地上にいて人間が形作ったんだってこと
彼らを作った人たちのこと、色々聞いたよ。

ある日僕らは地上に引き上げられた。
そしてパズルのように組み立てられて、展示されている。
僕は長い間、彼らと一緒にいて、彼らの話を聞いていたので
彼らのなくなった一部と同じような格好になってしまっていた。
だから、本当は彼らの一部じゃないのに、こうやって一緒に展示されているんだ。

展示会場は海に比べたら、楽しくもないし美しくもないけど
君のような子供がいるなら、なかなか悪くないね。

さぁ、むこうで呼んでいるのは君のパパじゃないかい?
早くお戻り。
僕の話もこれでおしまい。
632なまえ_____かえす日:2009/08/23(日) 10:09:41 ID:Dw5CNqLN
ありがとうございます。感激です。
633なまえ_____かえす日:2009/10/04(日) 20:57:56 ID:f0mMlnpT
あげ
634武田マンチカン:2009/10/05(月) 00:01:30 ID:AvYawLkn
635なまえ_____かえす日:2009/11/30(月) 12:21:35 ID:XEU2grvm
明日から12月ですね。
636なまえ_____かえす日:2010/04/30(金) 07:10:53 ID:f/sXsQx9
「しかし源氏物語を原文で読む人というのは果たしてどれくらいいるのかね。谷崎(潤一郎)源
氏、与謝野(晶子)源氏いろいろありますからね。それと(瀬戸内)寂聴さん訳してみたり。ま
あそういう形でね、活字のメッセージが安易に現代化されていることも便利になった一つだと思
うけど、それだって私は読書だと思いますよ。ただやっぱりね、テレビも新聞もなかったころの
ね、バルザックとかね、ドストエフスキーとかね、デューマとかね。ああいったね、古典的な作
家、今読んでみるととても退屈で読み切れないね。ていうのは、新聞が伝えるような情報をね、
小説が伝えた、あのころね」
「ですからね、行ったことのないね、サンクトペテルブルグとかパリとかね、あるいはローマの
風景はこういうものなのかなていうことね、みんな活字をもって摂取したから、ああいう小説も
なり得たけど、今とてもじゃないけども、やっぱりああいう小説退屈で読めないでしょ。それか
らまたこの間必要があってね、ニーチェ読み直してみたけども、やっぱり昔はとにかくあれで何
とか耐えて読んだけど、今はとてもじゃないが、ああいう翻訳というか、あのボリュームはアダ
プトされないと難しいなと思っていたら、ニーチェの簡訳本みたいなのが出ててね。今それが非
常にベストセラーになっているけども。私も一回それ買って読んでみたいと思ってますけども」
637なまえ_____かえす日
レスをしても一人・・・