>>8の内容について、一部うるさい人がいるので、ヒッソリ反論しておこう。
まず、「悪」という語の意味は多義的であるから、議論する前にその意味内容
は明らかにしておかなければならない。俺としては、この言葉を「正義の観点
からなされる否定的な法的価値判断」と言う意味で用いている。つまり違法の
意味。そもそも、「殺人はそれが死刑執行としてなされる場合でも悪(ないし
不正)と評価されるか」が構成要件の違法推定機能と絡めて議論になっていた
わけだが、この文脈で語られる「悪」とは、上記の意味と考えて良いだろう。
違うというなら、いかなる意味において「悪」という語を用いていたのか、ま
たそれは違法推定といかなる関連を有するか述べていただきたい。
そして、死刑執行としてなされる殺人に、上記意味の「悪さ」は認められない。
山口も刑罰に対し正義の観点から法的に否定的評価をしているはずはない(こ
の意味で否定的評価をするならそもそも刑罰は法的に許されないものとなる)。
で、件の人物は、山口の刑法の謙抑主義に関する叙述に、「刑罰=害悪」との
表現を見つけ、刑罰を「悪」と言う学者はいると言う。しかし、それは上記の
意味の「悪」とはニュアンスの違うものだ。「受刑者に苦痛を与え負担を課す
という刑罰の性質」を「害悪」と表現しているだけだろう。だから、これをもっ
て刑罰=悪の学説上のソースとするのは筋違いというべき。