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法の下の名無し:
【上訴の要件】
上訴が適法であるためには、一般に、次の要件を充足することが必要である
1. 原裁判が独立の上訴に親しむものであること(終局判決に対して)
2. 適式で有効な上訴行為の存在
3. 上訴期間の遵守(期間徒過後は、追完事由の存在が必要)
4. 上訴の利益
5. 上訴権の放棄(放棄・合意がある場合には、上訴は不適法)
【控訴権】
当事者が原判決の変更を求めるために控訴審手続の開始を求めることができることを、当事者の権利
と見て、控訴権という。控訴権は、原判決により不利益を受ける当事者に生ずる。控訴権の存在は、
控訴の適法要件であり、これが欠ける場合には、控訴は却下される。
* 控訴権は、原判決が言渡しにより効力を生ずると共に生ずる(285条但書参照)。それ以前には生
じない。
* 控訴権は、控訴期間の徒過(=期間内に控訴を提起しないこと)により消滅する(285条本文)。
ただし、控訴期間を徒過していても、追完可能な場合がある(97条)。
* 控訴権は、控訴権の放棄によっても消滅する(284条)。不控訴の合意がなされると、これにより
控訴権は消滅あるいは不発生となる。
* 控訴権は、控訴提起後に控訴を取り下げても、それだけでは消滅しない。控訴期間内であれば再度
控訴を提起することができる。
【控訴を提起できる者】
控訴を提起できる者は、当事者またはその補助参加人である。補助参加、独立参加あるいは共同訴訟
参加しようとする者も、参加とともに控訴を提起することができる。
【控訴の利益(不服申立ての利益)】
自己に不利な第一審判決が変更されることについて当事者が有する利益を控訴の利益という。控訴の
利益を有しない者は、控訴権を有しない。控訴の利益の有無の判断基準については、見解が分かれて
いる。
<形式的不服説>
当事者が第一審で求めた判決 > 第一審判決 (例外あり)
<実質的不服説>
当事者が控訴審で求める判決 > 第一審判決
<新実質的不服説>
上訴以外の方法では得ることのできない利益(あるいは回避することのできない不利益)が存在する
こと
<自己責任説>
新実質的不服説+自己責任による上訴の抑制
(A)形式的不服説
当事者が第一審で求めた判決内容と第一審判決の内容とを比較して、後者が前者に満たない場合に控
訴の利益を肯定する見解である。第一審で求めた通りの判決を与えられた当事者(全面勝訴の当事者
)がそれより有利な判決を求めて上訴を提起することは、認められない。それは、敗訴にもかかわら
ず第一審で紛争を解決しようとする相手方の期待を害することになるからである。また、勝訴当事者
は、必要であれば別訴でそれを求めることができ、別訴に代えて上訴を許すと相手方の審級の利益が
害されやすい。形式的不服説が、現在の多数説である。
但し、第一審判決が確定するとその効力により別訴で請求できなくなる利益が存在する場合に、当該
利益を得るために上訴することは、例外的に認められている。例:(a1)黙示の一部請求を認容す
る判決により残部請求が遮断されることを前提にして、黙示の一部請求の全部認容判決を得た原告が
請求拡張のために上訴を提起する場合;(a2)離婚請求棄却判決を得た被告が自らの離婚の反訴を
提起する場合(人訴法25条により別訴が禁止されている);(a3)身分関係の重要性を考慮すると
、離婚請求を認容された原告が請求放棄のためにする控訴も許されてよい(266条参照。なお、人訴
法37条参照)。