■【合憲判決】 最高裁 【靖国参拝】■

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763法の下の名無し
(1)憲法判例とその拘束力
@憲法判例の意義
一般に憲法判例とは、憲法上の争点についての判断を含む判決例のことを指す。
しかし憲法判断は最終的には最高裁判所によって行われ、法的意味が問題になるのは
それであるから、以下に憲法判例というときには、最高裁判所の憲法判例のことを指す。
A判例の先例拘束性
憲法判例に限らず、一般に最高裁判所の判例は後の裁判を拘束するかどうかという問題
がある。(中略)裁判所法4条は「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件に
ついて下級審の裁判所を拘束する」と定めている。しかし問題は、それが後続のその他の
事件について裁判所を拘束するかということである。その場合の裁判所とは、最高裁判所
自身ならびに下級裁判所の両方を含む。
この点につき、従来の学説は、日本では英米法のような判例法主義の法制度をとって
いないから、先例の拘束力は事実上の拘束力であって法的な拘束力ではないと一般に
解してきた。(芦部・理論28頁、同演習301頁以下等)
しかし、アメリカ流の司法権ということのほかに、法の下の平等、裁判を受ける権利、
罪刑法定主義などを根拠に先例の法源性ないし法的拘束力が認められると解する立場も
有力になってきている(佐藤幸・憲法<第三版>27頁、小嶋和司「憲法判例の変更」
清宮他編・新版演習(3)222頁等)。
しかしそれが制定法と同じような強い拘束力をもつものではないと解する点は、論者に
おいて大体共通している(中略)。
ところでどちらにしても先例拘束性という場合、それは先例から引き出された法準則
すなわち英米法でいうレイシオ・レシデンダイ(ratio decidendi判決理由、主論の意味。
なお判決文中のそれ以外の部分をオビター・ディクタム〔obiter dictum傍論〕と呼ぶ。)
が、後の裁判の規準として適用されることを意味するとされる。
(有斐閣 憲法U〔第4版〕野中・中村・高橋・高見著 P315-316より引用)
764法の下の名無し:2006/12/04(月) 17:18:08 ID:ML8NGo5W
平成17年9月29日 東京高等裁判所第21民事部 判決(>>718-719
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/19941AB6586C98744925709E0002F5B8.pdf

>憲法第20条第3項に違反するとする控訴人らの主張(靖国参拝は違憲)は,
>その前提を欠く(「国及びその機関」の行為ではないので違憲ということはあり得ない)

本判決については最高裁に上告され、決定で上告が棄却されている。
また、上告不受理決定もされている。つまり、最高裁判所によって支持された判決である。

平成17年9月30日大阪高等裁判所第13民事部判決(傍論違憲判断の事例)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/261F2926F7BBCF26492570BC0019B4D2.pdf

原告(参拝反対派)側全面敗訴判決。原告側が上告しなかったので、そのまま確定。
違憲判断部分は、なんら法的ないし事実上の拘束力をもたない傍論であるうえ、
最高裁の判断を受けていない判決である。

両者の判例としての価値は、比較にもならない。(東京高裁>>>>>>>大阪高裁)

なお、内閣総理大臣の靖国参拝について法的ないし事実上の拘束力をもち、
将来に向かって先例としての拘束力をもつべき判例として、
つまり傍論ではない形での「違憲判決」は、1件もない。
765法の下の名無し:2006/12/04(月) 17:18:51 ID:ML8NGo5W
上訴の利益については、「当事者からの申立てと判決主文を比較して、申立てより少ない
判決が出された場合には不服がある」とする形式的不服説が判例・通説である。
(最高裁判所 第三小法廷 昭和31年4月3日 判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D9363AC99D6AB79049256A85003164F7.pdf

そこで、大阪高裁判決(>>764)をみると請求棄却〔控訴棄却〕(当事者からの申立て)を
求めた被告(国、首相、靖國神社)側の全面勝訴(請求棄却〔控訴棄却〕の判決主文)で
あるから不服(上訴の利益)はないといえる。

上訴の利益がない場合には上告は不適法となり、補正の見込みはないから原裁判所(本件
では大阪高裁)によって上告却下決定(民訴法316条1項)がされることは明らかで
ある。したがって、被告側が上告をすることは形式的には可能であるが、実質的には不可能
であるといえる。当然、最高裁によって傍論部分についての判断がされることはない。

なお、原裁判所による上告却下決定に対しては、特別抗告(民訴法336条)または
許可抗告(民訴法337条)をすることができる(ただし、特別抗告については憲法違反
に限る。また、許可抗告については原裁判所の抗告許可が必要である)。しかし、これらに
よる審理の対象は、上訴の利益がなく補正の見込みはないとの部分の当否に限られる。
したがって、最高裁によって、傍論部分についての判断がされることはない。

また、傍論での憲法判断は、なんら法的な拘束力をもたない。(>>307

以上のことから全面勝訴した被告(国、首相、靖國神社)側が上告をしなかったのは
当然である。