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凶気の桜:
ただし解決すべき問題が潜在していることも確かである。
ポツダム宣言12項、昭和20年8月11日付け連合国の日本政府に対する回答のかかげる
「日本国の最終的の政治形態はポツダム宣言にしたがい日本国国民の自由に表明する意思により
決定せらるべきものとする」という内政自己決定の原則との関係をどのように解するべきであるか
という問題である。
「各国はいかなる他国の国内事項にも干渉しない法的義務がある」という内政自己決定の原則は、
国際法上重要な原則であり、国際法は各国が享受すべきこの自由を保護しなければならない。
とはいえ、この原則には例外が存在する。
ストーウェルが指摘するとおり、広く国際社会の利益を防衛するために、一国の憲法の自立性を制約する
条約、それに基づく干渉は合法であると解することが十分可能なのである。
1944年に開催された国際法学者が発表した「将来の国際法」でも述べられているように、
内政自己決定の自由は、「国家の共同社会の利益を適正に尊重して行使されねばらない権利であり、
各国は国際法の下での義務を遂行する立場にあるという方針で、その制度を組織する義務が負う」からである。
「各国はその領土内にける状態が国際の平和と秩序を脅かさないよう注意する法的義務を負っている」以上、
国際の平和と安全に奉仕する条約に基づく干渉は、内政自己決定の原則に必ずしも矛盾しないと解するべきである。
主権国家であっても、一定の場合条約の定めるところにより憲法の自主性は制約を受け、しかもそれは
国際法上の内政自己決定の原則を侵すものとは考えられないとすれば、連合国が降伏によって完全な独立国家として
の地位を失った日本における憲法改正を指導し、日本の提議した改正憲法がポツダム宣言に言う民主的・平和的政治形態
樹立の義務の履行を怠っていると判断した場合、その遵守を適宜の方法で日本に対して要求すること自体は
「日本国の最終的の政治形態が国民の自由に表明する意思により決定せらるべきものとす」という条項に矛盾するものとは
言えないと判断できる。