145 :
法の下の名無し:2007/03/02(金) 21:21:51 ID:rIMLSaNi
>>143-144の事実関係
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,平成11年4月1日から日野市立南平小学校に音楽専科の教諭として勤務し
ていた。
(2) 南平小学校では,同7年3月以降,卒業式及び入学式において,音楽専科の教諭による
ピアノ伴奏で「君が代」の斉唱が行われてきており,同校の校長(以下「校長」という。)
は,同11年4月6日に行われる入学式(以下「本件入学式」という。)においても,式次
第に「国歌斉唱」を入れて音楽専科の教諭によるピアノ伴奏で「君が代」を斉唱することと
した。
(3) 同月5日,南平小学校において本件入学式の最終打合せのための職員会議が開かれた際,
上告人は,事前に校長から国歌斉唱の際にピアノ伴奏を行うよう言われたが,自分の思想,
信条上,また音楽の教師としても,これを行うことはできない旨発言した。校長は,上告人
に対し,本件入学式の国歌斉唱の際にピアノ伴奏を行うよう命じたが,上告人は,これに応
じない旨返答した。
(4) 校長は,同月6日午前8時20分過ぎころ,校長室において,上告人に対し,改めて,
本件入学式の国歌斉唱の際にピアノ伴奏を行うよう命じた(以下,校長の上記(3)及び(4)
の命令を「本件職務命令」という。)が,上告人は,これに応じない旨返答した。
(5) 同日午前10時,本件入学式が開始された。司会者は,開式の言葉を述べ,続いて「国
歌斉唱」と言ったが,上告人はピアノの椅子に座ったままであった。校長は,上告人がピア
ノを弾き始める様子がなかったことから,約5ないし10秒間待った後,あらかじめ用意し
ておいた「君が代」の録音テープにより伴奏を行うよう指示し,これによって国歌斉唱が行
われた。
(6) 被上告人は,上告人に対し,同年6月11日付けで,上告人が本件職務命令に従わなか
ったことが地方公務員法32条及び33条に違反するとして,地方公務員法(平成11年法
律第107号による改正前のもの)29条1項1号ないし3号に基づき,戒告処分をした。
146 :
法の下の名無し:2007/03/02(金) 21:22:42 ID:rIMLSaNi
平成15年12月03日 東京地方裁判所 判決《要約》(
>>143-145の1審判決)
2 争点
(1) 原告の本件行為について,地方公務員法29条1項1号ないし3号に該当する事由
があるか。
(2) 本件処分は違法か。
第3 当裁判所の判断
2 争点(1)について
(1) 職務命令違反(地方公務員法32条違反)の有無
ア 職務命令の存否
「…校長が原告に対して,…同年度入学式の国歌斉唱の際にピアノ伴奏を行うようにとの本
件職務命令を発したことが認められる。」
イ 職務命令の適法性
(ア) 原告の職務に関する事項であるか否か
「…入学式において『君が代』を含む児童の歌唱をピアノで伴奏することは,原告の職務に
関する事項に含まれるというべきである。」
(イ) 憲法19条違反の有無
a 原告の権利侵害の有無
「…思想・良心の自由も,公務員の職務の公共性に由来する内在的制約を受けることからす
れば,本件職務命令が,教育公務員である原告の思想・良心の自由を制約するものであって
も,原告において受忍すべきもので,これが憲法19条に違反するとまではいえない。」
b 子ども及びその保護者の権利侵害の有無
「…校長が教諭に対して『君が代』のピアノ伴奏をするよう職務命令を発したからといって,
それによって直ちに原告主張の子ども及びその保護者の思想・良心の自由が侵害されるとま
ではいえない。」
147 :
法の下の名無し:2007/03/02(金) 21:23:51 ID:rIMLSaNi
>>146の続き
(ウ) 憲法1条違反の有無
「…『君が代』のピアノ伴奏を命じた本件職務命令が憲法1条に違反するということはでき
ない。」
(エ) 憲法99条違反の有無
「…本件職務命令は憲法に違反するものではないから,その発出が公務員の憲法尊重擁護義
務を定めた憲法99条に違反するとはいえない。」
(オ) 校長の管理権ないし校務掌理権の濫用の有無
「…本件職務命令が校長の管理権ないし校務掌理権を濫用したとまではいえない。…本件職
務命令が権利濫用にあたるとまでいうことはできない。」
ウ 小括
「 以上のとおり,適法に存在した本件職務命令を遵守しなかった原告の本件行為は地方公
務員法32条に違反する。」
(2) 信用失墜行為(地方公務員法33条違反)の有無
「 原告のした本件行為は,…職務命令に違反し,…教育公務員の職に対する信用を傷つけ
る行為にあたり,地方公務員法33条に違反する。」
(3) 結論
「 したがって,原告のした本件行為は,地方公務員法32条,33条に違反するものであ
り,少なくとも同法29条1号,2号に該当する。」
148 :
法の下の名無し:2007/03/02(金) 21:24:45 ID:rIMLSaNi
>>147の続き
3 争点(2)について
(1) 本件職務命令の適法性
「…上記2(1)イに述べたとおり,本件職務命令は適法である…」
(2) 憲法31条違反の有無
ア 日野市教育長の答弁の性質
「…日野市教育長は,教諭の処分権を有するものではないから,(日野市教育長の)発言は,
…教育長の解釈を発表したに過ぎない…」
「…「君が代」に関する職務命令違反につき教職員を処分する場合があり得ることを告知し
なければ,本件職務命令の発出や本件処分を行うことができないと解することはできない。」
イ 調査義務の懈怠
「…教育長の発言は個人的な解釈の表明に過ぎないといわざるを得ないから,…教育長の発
言について調査しなかったからといって,本件処分に適正手続違反があるとすることはでき
ない。」
ウ 事情聴取過程等における瑕疵
「…事情聴取過程等における瑕疵をいう原告の主張は採用できない。」
エ 小括
「 したがって,本件処分が適正手続の保障に違反するとはいえない。」
(3) 有責性の阻却の有無
「…原告の本件行為に非難可能性があることは後記(4)のとおりであり,原告の主張は採
用できない。」
(4) 懲戒権の濫用の有無
「…戒告という,文書訓告や口頭注意よりは重いけれども懲戒処分としては最も軽い形式に
よる本件処分が社会観念上著しく妥当性を欠き,裁量権を濫用したとまで認めることはでき
ない。」
(5) 小括
「 したがって,本件処分は違法であるとまではいえず,適法であるというべきである。」
「4 以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決す
る。」(主文 1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。)
149 :
法の下の名無し:2007/03/02(金) 21:40:51 ID:rIMLSaNi
150 :
法の下の名無し:2007/03/02(金) 21:49:57 ID:rIMLSaNi
2 合憲裁判の通常の方法
(1)入念な合憲裁判
最高裁判所の合憲裁判の多くは、簡単な理由を付すだけで、立ち入った憲法論議を
展開しないのが通例であるが、中には、殊に大法廷の裁判では、入念な理由を示して
合憲の結論を導く場合がある
たとえば、1973年の全農林事件判決、1974年の猿払事件判決、1995年の非嫡出子
相続分規定合憲決定(注1)が入念な理由を示した合憲裁判の代表例である。
――「入念な」といっても、その理由が説得力ある立派な内容などとの評価を
しているのではない。理由が詳細になっていることの要因として、判例変更を
説明するため、説得力ある判例法を形成しようとする意欲の表われ、争点を
めぐって裁判官の間で意見が分かれている、社会や学説において盛んな論議が
交わされている、といったことをあげることができる。
(2)簡単な合憲裁判
圧倒的に多数の合憲裁判では、最高裁判所は、違憲の主張に対して簡単な理由を
付すのみで処理している。それは、たとえば、合理性の基準を適用して合憲の結論を
下す場合のように、合憲裁判の際には、立法目的や目的達成のための手段について
立ち入った審査を加えない方式を採用する傾向があることから当然だといえる。また、
次の例のように、およそ違憲の主張への審査に立ち入らないで処理する場合もある。
いわゆる三行判決は、その典型例である。それは、「記録によって認められる本件
訴訟の経緯に照らすと、原審が所論の措置をとらなかったことに違法はない。右違法の
あることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、採用することが
できない」(注2)と、論述する場合である。
あるいは、次のような例も数多くみられる。「論旨は、違憲の主張を含め、独自の
見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものであり、採用
することができない。」(注3)
これらの判示では、憲法判断は無いに等しいのであるが、違憲の主張を排斥しては
いることと、法律について一般的に合憲性推定の原則が働いていることを考慮に
入れて、合憲裁判の範疇に取り込むのが適当だといえる。
(注1) それぞれ、最大判昭48・4・25刑集27巻4号547頁、最大判昭49・11・6刑
集28巻9号393頁、最大決平7・7・5民集49巻7号1789頁。
(注2) 最1小判平3・1・17税訴資182号31頁。
(注3) 最2小判平8・7・12判時1584号100頁。
>>151は、戸松秀典『憲法訴訟』(有斐閣、平成12〔2000〕年)327-328頁より引用
153 :
法の下の名無し:2007/03/06(火) 02:28:48 ID:lHYV8q2W
本件は、公立小学校の音楽専科の教諭(以下「本件教諭」という。)に対する、入学式の
国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うことを内容とする校長の職務上の命令(以下
「本件職務命令」という。)違反を理由とする戒告処分(以下「本件処分」という。)の取
消しを求めている事案である。
本件職務命令それ自体は、ピアノ伴奏という外部的行為を要求するにすぎないものであり、
本件教諭の職務として、「国歌を尊重する態度を育てる」という教育目的のために行われる
ものである。それは、本件教諭が主張するような「君が代」に関する特定の解釈を前提とす
るものではないから、本件教諭が「思想・良心」と主張するところは、結局のところ「君が
代」に対して特定の見解を採ることによる嫌悪感ないし不快感にすぎない。また、職務命令
に従い、自己の考えに反する行為を行うことによって嫌悪感ないし不快感が生ずるとしても、
特定の思想を持つことを強制するものではなく「思想・良心の自由」を侵害するということ
もできない。さらに、本件教諭が、嫌悪感ないし不快感を理由としてピアノ伴奏を拒否した
場合には、国歌を尊重する立場から、殊更「君が代」についてのみピアノ伴奏をしない教職
員がいることに嫌悪感ないし不快感を覚える者もいると考えられる。
他方、小学校の教員である本件教諭の入学式における言動や態度が児童(特に年少の児童)
に与える影響は大きく、本件教諭が、国歌斉唱の際にピアノの椅子に座っているにもかかわ
らず、「君が代」についてのみピアノ伴奏をしないという行為が、児童に「君が代」に対す
る疑念、不信感、警戒感等の否定的な感情や見方を引き起こすおそれがあることは否定でき
ない。また、本件教諭が、校長が決定した式次第に従わないことによって、児童のみならず、
参列する保護者、地域住民その他の来賓に対して、学校の運営についての不安を抱かせ、学
校教育に対する信頼感を損なうことも考えられる。
以上のことから、本件職務命令は憲法19条に違反せず合憲であり、校長の裁量権濫用も
無く適法である。適法に存在した本件職務命令を遵守しなかった本件教諭の行為は、地方公
務員法32条に違反する。また、教育公務員の職に対する信用を傷つける行為にあたり、同
法33条に違反する。したがって、懲戒事由を定めた同法29条1項1号、2号に該当し、本
件処分の取消しを求めた本件教諭の主張に理由は無く、本件処分(戒告)は相当である。
本件で問題となっているのは、公立学校の教諭(以下「本件教諭」という。)に対する、
入学式・卒業式等の学校行事において、国歌である「君が代」斉唱の際に起立をすることを
要求する、校長の職務上の命令(以下「本件職務命令」という。)の合憲性である。
まず、本件職務命令が、本件教諭の職務に関する事項であるか否かが、問題となる。
入学式・卒業式は、公立学校における教育過程の一部として実施されるものであり、学校
が実施する教育活動ということができる。教育活動の主体は、原則として個々の教師である
といえるが、児童・生徒の側に、教育の内容を批判する能力がなく、教師が児童・生徒に対
して強い影響力、支配力を有すること、学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会均
等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があることからすれば、普通教
育における教師に完全な教授の自由を認めることはできない。
学校教育法は、「校務」すなわち、学校教育の事業を遂行するため必要とされる一切の事
務をつかさどるのは校長であると規定しており、教育課程の計画及び実施についての責務と
権限は、校長にあると解するのが相当であるから、入学式・卒業式の式次第については、校
長が、その裁量の範囲においてこれを決定する権限を有し、校長は、その実施のために、各
教員に対して、職務命令を発することができると解される。入学式・卒業式は、公立学校に
おける教育課程の一部として実施されるものであるから、その式次第に従い、運営に協力す
ることは、学校における具体的職務の内容にかかわらず、式に参加する以上は、学校に勤務
する職員としての当然の職務と言うべきである。
したがって、国歌斉唱時に起立することは、本件教諭の職務であって、入学式・卒業式に
おいて、国歌を斉唱をするという式次第を前提として、国歌斉唱時に起立することを要求す
る本件職務命令は、本件教諭の職務に関する事項であるといえる。
次に、本件職務命令の根拠について検討する。公立学校の校長は、学校教育法に基づき、
校務をつかさどり、所属職員を監督する権限を有しており、所属職員に対して、職務命令を
発することができる。そして、所属教職員は、地方公務員法32条に基づき、校長の職務命令
に従う義務を負う。なお、国旗国歌法2条1項は、「国歌は、君が代とする。」と規定するに
とどまり、直ちに本件職務命令の根拠にはなり得ない。
ただ、職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には,これに従う義務がないものと解さ
れる(最三小判昭和53年11月14日判タ375号73頁)から、本件職務命令に重大かつ明白な瑕
疵があれば、本件教諭は、これに従う義務はないといえる。そこで、本件職務命令の合憲性
が問題となる。以下、本件職務命令の合憲性に限定して検討する。
思想・良心の自由は、「外部に向って表現されるに至るときは『表現の自由』の問題とな
り、内面的精神作用にとどまる場合でも、宗教的方面に向えば『信教の自由』の問題となり、
論理的・体系的知識の方面に向えば『学問の自由』の問題となる(佐藤幸治『憲法』〔初版〕
332頁)。ただ、人の内面の精神的活動は外部的行為と密接な関係を有するから、外部的行
為(国歌斉唱時に起立すること)を要求する本件職務命令が、本件教諭の内心の自由を侵害
するかについて、「思想・良心の自由」との関係で問題となる。
本件教諭のような公務員であっても「思想・良心の自由」はあるから、本件教諭が内心に
おいて、どのような「思想・良心」を抱いていても自由であり、その自由は尊重されなけれ
ばならないことは言うまでも無い。
しかしながら、憲法15条2項は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉
仕者ではない。」と定めており、本件教諭のような地方公務員は、地方公共団体の住民全体
の奉仕者としての地位を有するものである。こうした地位の特殊性及び職務の公共性にかん
がみ、地方公務員法30条は、地方公務員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務
し、かつ、職務の遂行に当たっては全力を挙げてこれに専念しなければならない旨規定し、
同法32条は、上記の地方公務員がその職務を遂行するに当たって、法令等に従い、かつ、
上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない旨規定する。
そして、学習指導要領において、「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,
国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と規定し、それは「国
旗・国歌を尊重する態度を育てる」という教育目的によるものと解される。
これを本件についてみると、本件職務命令は、公務員である本件教諭に対して、国歌斉唱
時に起立するという外部的行為を要求するにすぎないことは明らかであるから、それ自体は、
本件教諭の内心における精神的活動を否定するものではない。そして、人の内心における精
神的活動は、外部的行為と密接な関係を有するものといえるが、本件職務命令は、公立学校
の教諭の入学式・卒業式における言動や態度が児童・生徒(特に年少の児童)に与える影響
は大きく、本件教諭が、国歌斉唱の際に起立をしないで座ったままでいるという行為であっ
ても、児童・生徒に国旗・国歌に対する疑念、不信感、警戒感等の否定的な感情や見方を引
き起こすおそれがあることは否定できないから、「国旗・国歌を尊重する態度を育てる」と
いう教育目的のために、国歌である「君が代」斉唱の際に起立をすることを要求しているも
のである。それは、「踏み絵」とは違って、本件教諭に対し、特定の思想を持つことを「強
制」するものではなく、「君が代」についての一定の見解を前提として、特定内容の道徳や
イデオロギーを児童・生徒に対して、教え込ませるものともいえないから、それ自体が本件
教諭の思想・良心(本件教諭の有する「歴史観ないし世界観」、すなわち、「君が代」が過
去において果たして来た役割に対する否定的評価)に反する精神的活動を「強制」するもの
でもないことは明らかである。また、歌を歌う際に起立をすること自体は一般的なことであ
り、国歌斉唱が、「国歌を尊重する態度を育てる」という教育目的のために行われるもので
あることからすれば、児童・生徒に対して範を示すという観点に照らし、入学式・卒業式に
参加する教員に起立を要求する本件職務命令は、その目的及び内容において不合理であると
いうことはできないというべきである。
そうすると、本件職務命令は、本件教諭のもつ特定の思想、すなわち「君が代」が過去に
おいて果たして来た役割に対する否定的評価自体を否定させるものではないことは明らか
であるから、「思想・良心の自由」を侵害するものではなく、本件教諭が本件において「思
想・良心」と主張するところは、結局のところ本件職務命令に対する「誤解」ないし「曲解」
に基づく「嫌悪感ないし不快感」にすぎない。このような「嫌悪感ないし不快感」を理由に
一般的法義務を拒否する自由を一般的に承認するならば、おそらく社会は成り立たないと考
えられるから、仮に「嫌悪感ないし不快感」を「思想・良心」とした場合でも、その「思想・
良心(嫌悪感ないし不快感)の自由」は、公共の福祉の見地から、公務員の職務の公共性に
由来する内在的制約を受けるものと解するのが相当である(憲法12条、13条)。
したがって、本件教諭(公立学校の教諭)に対する、本件職務命令(入学式・卒業式等の
学校行事において、国歌である「君が代」斉唱の際に起立をすることを要求する、校長の職
務上の命令)は、「思想・良心の自由」を定めた憲法19条に違反せず「合憲」である。
適法に存在した(
>>154-156)本件職務命令(国歌斉唱時に起立)を遵守しなかった本件
教諭(公立学校の教諭)の行為は、その職務を遂行するに当たって、法令等に従い、かつ、
上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない旨規定する地方公務員法32条に違反する。
また、本件教諭が、校長が決定した式次第に従わないことによって、児童・生徒のみならず、
参列する保護者、地域住民その他の来賓に対して、学校の運営についての不安を抱かせ、学校
教育に対する信頼感を損なうことも考えられるから、教育公務員の職に対する信用を傷つける
行為にあたり、同法33条に違反する。
したがって、懲戒事由を定めた同法29条1項1号、2号に該当し、懲戒処分を受けるのは
当然である。
会議録 第145回国会 本会議 第41号(平成11年6月29日(火曜日))
国旗及び国歌に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 志位和夫議員にお答え申し上げます。
(中略)
国旗及び国歌の法制化と学校における国旗及び国歌の指導との関係について、お尋ねがあ
りました。
学校における国旗と国歌の指導は、児童生徒が国旗と国歌の意義を理解し、それを尊重す
る態度を育てるとともに、すべての国の国旗と国歌に対してひとしく敬意を表する態度を育
てるために行っているものであり、今回の法制化に伴い、その方針に変更が生ずるものでな
いと考えております。
(中略)
良心の自由についてお尋ねがありましたが、憲法で保障された良心の自由は、一般に、内
心について国家はそれを制限したり禁止したりすることは許されないという意味であると
理解をいたしております。学校におきまして、学習指導要領に基づき、国旗・国歌について
児童生徒を指導すべき責務を負っており、学校におけるこのような国旗・国歌の指導は、国
民として必要な基礎的、基本的な内容を身につけることを目的として行われておるものであ
りまして、子供たちの良心の自由を制約しようというものでないと考えております。
教育現場での教職員や子供への国旗の掲揚等の義務づけについてお尋ねがありましたが、
国旗・国歌等、学校が指導すべき内容については、従来から、学校教育法に基づく学習指導
要領によって定めることとされております。学習指導要領では、各教科、道徳、特別活動そ
れぞれにわたり、子供たちが身につけるべき内容が定められておりますが、国旗・国歌につ
いて子供たちが正しい認識を持ち、尊重する態度を育てることをねらいとして指導すること
といたしておるものであります。
国旗掲揚等の義務づけを行わなかったことに関するお尋ねでありますが、今回の国旗及び
国歌の法制化の趣旨は、日の丸・君が代が長年の慣行により、それぞれ国の国旗と国歌とし
て定着していることを踏まえ、二十一世紀を迎えることを一つの契機として、成文法にその
根拠を明確に規定することであります。したがって、このような法制化の趣旨にかんがみ、
法律案は国旗と国歌を規定する簡明なものといたした次第でございます。
教職員や子供たちにも国旗の掲揚等を義務づけはできないのではないかとのお尋ねであ
りますが、国旗・国歌等、学校教育において指導すべき内容は学習指導要領において定める
こととされており、各学校はこれに基づいて児童生徒を指導すべき責務を負うものでありま
す。
(中略)
国旗及び国歌の強制についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、国旗・国歌
の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したが
って、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております。
なお、学校における国旗及び国歌の指導については、教育指導上の観点から行っているこ
とは、既に答弁いたしたところでございます。
以上、御答弁を申し上げました。(拍手)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000114519990629041.htm?OpenDocument
平成18年6月20日 最高裁判所第三小法廷 判決(山口母子殺人事件)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060620163659.pdf(全文)
主 文
原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。
理 由
検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であって,刑訴
法405条の上告理由に当たらない。しかしながら,所論にかんがみ職権をもって調査す
ると,原判決は,下記1以下に述べる理由により破棄を免れない。
なお,弁護人安田好弘,同足立修一は,当審弁論及びこれを補充する書面において,原
判決が維持した第1審判決が認定する各殺人,強姦致死の事実について,重大な事実誤認
がある旨を指摘する。しかし,その指摘は,他の動かし難い証拠との整合性を無視したも
ので失当であり,本件記録によれば,弁護人らが言及する資料等を踏まえて検討しても,
上記各犯罪事実は,各犯行の動機,犯意の生じた時期,態様等も含め,第1,2審判決の
認定,説示するとおり揺るぎなく認めることができるのであり,指摘のような事実誤認等
の違法は認められない。
1 本件事案の概要及び原判決の要旨
(1) 本件は,当時18歳の少年であった被告人が,白昼,配水管の検査を装って上がり込
んだアパートの一室において,当時23歳の主婦(以下「被害者」という。)を強姦しよ
うとしたが,激しく抵抗されたため,被害者を殺害した上で姦淫し,その後,同所におい
て,激しく泣き続ける当時生後11か月の被害者の長女(以下「被害児」という。)をも
殺害し,さらに,その後,同所において,被害者管理の現金等在中の財布1個を窃取した,
という殺人,強姦致死,窃盗の事案である。
(2) 原判決は,被告人に対する量刑について,次のように判示して第1審判決の無期懲役
の科刑を維持した。
本件強姦致死及び殺人の各犯行は,その結果が誠に重大であるところ,犯行の動機に酌
量の余地は全くない。また,犯行の態様は,冷酷で残虐なものであり,犯行後の情状も良
くない。遺族らが被告人に対して極刑を望む心情は,十分理解することができ,本件が社
会に与えた影響も大きい。したがって,被告人の刑事責任には極めて重大なものがあり,
本件は,被告人を極刑に処することの当否を慎重に検討すべき事案である。
しかしながら,第1審判決が死刑を選択しない事由として説示する以下の点は,検察官
が控訴趣意書において論難するが,誤りであるとはいえない。すなわち,本件は,強姦の
点についてこそ計画的ではあるが,各被害者の殺害行為は計画的なものではない。また,
被告人には,不十分ながらも,被告人なりの反省の情が芽生えるに至っていると評価でき,
これに加え,被告人は,犯行当時18歳と30日の少年であり,内面の未熟さが顕著であ
ること,これまで窃盗の前歴のみで,家庭裁判所から保護処分を受けたことがないなど犯
罪的傾向が顕著であるとはいえないこと,被告人の実母が中学時代に自殺するなどその家
庭環境が不遇で生育環境において同情すべきものがあり,それが本件各犯行を犯すような
性格,行動傾向を形成するについて影響した面が否定できないこと,少年審判手続におけ
る社会的調査の結果においても,矯正教育による可塑性は否定されていないことなどの被
告人自身に関する情状に照らすと,被告人について,矯正教育による改善更生の可能性が
ないとはいい難い。
そして,本件各犯行の罪質,動機,態様,結果の重大性,遺族の被害感情,社会的影響,
被告人の年齢,前科,犯行後の情状等を総合し,近時の死刑求刑事案に関する量刑の動向
等を併せて考察すると,本件について,極刑がやむを得ないとまではいえず,被告人を無
期懲役に処した第1審判決の量刑を是認することができる。
2 当裁判所の判断
(1) 死刑は,究極のしゅん厳な刑であり,慎重に適用すべきものであることは疑いがない。
しかし,当審判例(最高裁昭和56年(あ)第1505号同58年7月8日第二小法廷判
決・刑集37巻6号609頁)が示すように,死刑制度を存置する現行法制の下では,犯
行の罪質,動機,態様殊に殺害の手段方法の執よう性・残虐性,結果の重大性殊に殺害さ
れた被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等各般
の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般
予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択をするほかない
ものといわなければならない。
これを本件についてみると,被告人は,強姦によってでも性行為をしたいと考え,布テ
ープやひもなどを用意した上,日中若い主婦が留守を守るアパートの居室を物色して被害
者方に至り,排水検査の作業員を装って室内に上がり込み,被害者のすきを見て背後から
抱き付き,被害者が驚いて悲鳴を上げ,手足をばたつかせるなど激しく抵抗するのに対し
て,被害者を姦淫するため殺害しようと決意し,その頸部を両手で強く絞め付けて殺害し,
万一のそ生に備えて両手首を布テープで緊縛したり,同テープで鼻口部をふさぐなどした
上,臆することなく姦淫を遂げた。さらに,被告人は,この間,被害児が被害者にすがり
つくようにして激しく泣き続けていたことを意にも介しなかったばかりか,上記犯行後,
泣き声から犯行が発覚することを恐れ,殺意をもって,被害児を持ち上げて床にたたき付
けるなどした上,なおも泣きながら母親の遺体にはい寄ろうとする被害児の首に所携のひ
もを巻いて絞め付け,被害児をも殺害したものである。強姦を遂げるため被害者を殺害し
て姦淫し,更にいたいけな幼児までも殺害した各犯行の罪質は甚だ悪質であり,2名の尊
い命を奪った結果も極めて重大である。各犯行の動機及び経緯に酌むべき点はみじんもな
く,強姦及び殺人の強固な犯意の下に,何ら落ち度のない被害者らの生命と尊厳を相次い
で踏みにじった犯行は,冷酷,残虐にして非人間的な所業であるといわざるを得ない。さ
らに,被告人は,被害者らを殺害した後,被害児の死体を押し入れの天袋に投げ入れ,被
害者の死体を押し入れに隠すなどして犯行の発覚を遅らせようとし,被害者の財布を窃取
しているなど,犯行後の情状も良くない。遺族の被害感情はしゅん烈を極め,これに対し,
慰謝の措置は全く講じられていない。白昼,ごく普通の家庭の母子が自らには何の責めら
れるべき点もないのに自宅で惨殺された事件として社会に大きな衝撃を与えた点も軽視で
きない。
以上の諸点を総合すると,被告人の罪責は誠に重大であって,特に酌量すべき事情がな
い限り,死刑の選択をするほかないものといわざるを得ない。
(2) そこで,特に酌量すべき事情の有無について検討するに,原判決及びその是認する第
1審判決が酌量すべき事情として掲げる事情のうち,被害者らの殺害について計画性がな
いという点については,確かに,被告人は,強姦については相応の計画を巡らせていたも
のの,事前に被害者らを殺害することまでは予定しておらず,被害者から激しい抵抗に遭
い,また,被害児が激しく泣き叫ぶという事態に対応して殺意を形成したものにとどまる
ことを否定できず,当初から被害者らを殺害することをも計画していた場合と対比すれば,
その非難の程度には差異がある。しかしながら,被告人は,強姦という凶悪事犯を計画し,
その実行に際し,反抗抑圧の手段ないし犯行発覚防止のために被害者らの殺害を決意して
次々と実行し,それぞれ所期の目的も達しているのであり,各殺害が偶発的なものといえ
ないことはもとより,冷徹にこれを利用したものであることが明らかである。してみると,
本件において殺害についての計画性がないことは,死刑回避を相当とするような特に有利
に酌むべき事情と評価するには足りないものというべきである。
また,原判決及び第1審判決は,被告人が,それなりに反省の情を芽生えさせていると
見られることに加え,犯行当時18歳と30日の少年であったこと,犯罪的傾向も顕著で
あるとはいえないこと,その生育環境において同情すべきものがあり,被告人の性格,行
動傾向を形成するについて影響した面が否定できないこと,少年審判手続における社会的
調査の結果においても,矯正教育による可塑性が否定されていないこと,そして,これら
によれば矯正教育による改善更生の可能性があることなどを指摘し,死刑を回避すべき事
情としている。しかしながら,記録によれば,被告人は,捜査のごく初期を除き,基本的
に犯罪事実を認めているものの,少年審判段階を含む原判決までの言動,態度等を見る限
り,本件の罪の深刻さと向き合って内省を深め得ていると認めることは困難であり,被告
人の反省の程度は,原判決も不十分であると評しているところである。被告人の生育環境
についても,実母が被告人の中学時代に自殺したり,その後実父が年若い外国人女性と再
婚して本件の約3か月前には異母弟が生まれるなど,不遇ないし不安定な面があったこと
は否定することができないが,高校教育も受けることができ,特に劣悪であったとまでは
認めることができない。さらに,被告人には,本件以前に前科や見るべき非行歴は認めら
れないが,いともたやすく見ず知らずの主婦をねらった強姦を計画した上,その実行の過
程において,格別ちゅうちょした様子もなく被害者らを相次いで殺害し,そのような凶悪
な犯行を遂げながら,被害者の財布を窃取した上,各死体を押し入れに隠すなどの犯跡隠
ぺい工作をした上で逃走し,さらには,窃取した財布内にあった地域振興券を友人に見せ
びらかしたり,これでカードゲーム用のカードを購入するなどしていることに徴すれば,
その犯罪的傾向には軽視することができないものがあるといわなければならない。
そうすると,結局のところ,本件において,しん酌するに値する事情といえるのは,被
告人が犯行当時18歳になって間もない少年であり,その可塑性から,改善更生の可能性
が否定されていないということに帰着するものと思われる。そして,少年法51条(平成
12年法律第142号による改正前のもの)は,犯行時18歳未満の少年の行為について
は死刑を科さないものとしており,その趣旨に徴すれば,被告人が犯行時18歳になって
間もない少年であったことは,死刑を選択するかどうかの判断に当たって相応の考慮を払
うべき事情ではあるが,死刑を回避すべき決定的な事情であるとまではいえず,本件犯行
の罪質,動機,態様,結果の重大性及び遺族の被害感情等と対比・総合して判断する上で
考慮すべき一事情にとどまるというべきである。
以上によれば,原判決及びその是認する第1審判決が酌量すべき事情として述べるとこ
ろは,これを個々的にみても,また,これらを総合してみても,いまだ被告人につき死刑
を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできないのであり,原判決が
判示する理由だけでは,その量刑判断を維持することは困難であるといわざるを得ない。
(3) そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の
選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告
人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だし
く不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
3 結論
よって,刑訴法411条2号により原判決を破棄し,本件において死刑の選択を回避す
るに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理を尽くさせるため,
同法413条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり判決する。
検察官幕田英雄,同吉田宏公判出席
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)
《参考》
平成14年3月14日 広島高等裁判所 判決(山口母子殺人事件〔原審〕)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/DB35ABFE0BC4594249256BB200385F3D.pdf(全文)
平成18年6月20日 最高裁判所第三小法廷 判決(山口母子殺人事件)《要約》
「被告人の罪責は誠に重大であって,特に酌量すべき事情がない限り,死刑の選択をする
ほかないものといわざるを得ない。」
「特に酌量すべき事情の有無について検討するに,原判決及びその是認する第1審判決が
酌量すべき事情として掲げる事情のうち,」
@被害者らの殺害について計画性がないという点について
「本件において殺害についての計画性がないことは,(強姦という凶悪事犯を計画し,そ
の実行に際し,反抗抑圧の手段ないし犯行発覚防止のために被害者らの殺害を決意して
次々と実行し,それぞれ所期の目的も達しているのであり,各殺害が偶発的なものといえ
ないことはもとより,冷徹にこれを利用したものであることが明らかであるから)死刑回
避を相当とするような特に有利に酌むべき事情と評価するには足りない」
A被告人が,それなりに反省の情を芽生えさせていると見られること
「被告人は,捜査のごく初期を除き,基本的に犯罪事実を認めているものの,少年審判段
階を含む原判決までの言動,態度等を見る限り,本件の罪の深刻さと向き合って内省を深
め得ていると認めることは困難」
B犯行当時18歳と30日の少年であったこと
C犯罪的傾向も顕著であるとはいえないこと
「(被告人の犯行の態様に照らすと)その犯罪的傾向には軽視することができないものが
ある」
Dその生育環境において同情すべきものがあり,被告人の性格,行動傾向を形成するにつ
いて影響した面が否定できないこと
「被告人の生育環境についても,……不遇ないし不安定な面があったことは否定すること
ができないが,高校教育も受けることができ,特に劣悪であったとまでは認めることがで
きない」
E少年審判手続における社会的調査の結果においても,矯正教育による可塑性が否定され
ていないこと,そして,これらによれば矯正教育による改善更生の可能性があること
「結局のところ,本件において,しん酌するに値する事情といえるのは,被告人が犯行当
時18歳になって間もない少年であり,その可塑性から,改善更生の可能性が否定されて
いないということ(上記B及びE)に帰着する」
「(犯行時18歳未満の少年の行為については死刑を科さないものとしている少年法の)
趣旨に徴すれば,被告人が犯行時18歳になって間もない少年であったことは,死刑を選
択するかどうかの判断に当たって相応の考慮を払うべき事情ではあるが,死刑を回避すべ
き決定的な事情であるとまではいえず,本件犯行の罪質,動機,態様,結果の重大性及び
遺族の被害感情等と対比・総合して判断する上で考慮すべき一事情にとどまる」
「(原審が酌量すべき事情として掲げる事情は、)これを個々的にみても,また,これら
を総合してみても,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由に当たる
と認めることはできない」
「原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の選択を回避する
に足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告人を無期懲役に
処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,
これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。」
「刑訴法411条2号により原判決を破棄し,本件において死刑の選択を回避するに足り
る特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理を尽くさせるため,同法41
3条本文により本件を原裁判所に差し戻す」
168 :
法の下の名無し:2007/12/15(土) 20:33:52 ID:bIv8isML
ゲッツサラダ油事件について知っている人います?
169 :
法の下の名無し:2008/02/18(月) 17:36:07 ID:qL/uActt
gets!
170 :
法の下の名無し:2008/02/28(木) 17:55:20 ID:q3P62mSF
age
171 :
法の下の名無し:2008/03/08(土) 19:27:27 ID:W9/+uvBF
age
172 :
法の下の名無し:2008/05/13(火) 17:18:18 ID:TcQSw5CF
北方ジャーナル事件での不法行為については山本敬三先生の考え方でいいのですか?
調べるほど憲法や民法の根底にぶつかって苦戦しています。
助言があったら是非お願いします。
【名張毒ぶどう酒事件】
平成9年1月28日 最高裁判所 第三小法廷 決定(第5次再審請求〔特別抗告審〕)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/26102D0207E1CBCF49256A850030A93D.pdf 3 申立人以外の者による犯行の機会
「新旧全証拠を総合しても、本件ぶどう酒瓶が公民館の囲炉裏の間に持ち込まれて以降、
申立人以外の者が本件ぶどう酒に農薬を人知れずひそかに混入することは不可能であった
とする確定判決の認定は、以下のとおり、正当として是認することができる。
(一)申立人は、捜査段階の否認調書(昭和三六年四月二四日付け検察官調書等)において、
c総会開会中に便所に行った際、妻a(本件事件により死亡)が左手に本件ぶどう酒瓶、右手に
白いもので包んだ瓶を持ってぶどう酒瓶に注ぎ込む格好をしているのを見た旨供述するが、
第一審では、aが囲炉裏のそばにいたのは見たが、瓶を触っているのは見ていないと供述を
変更し(第七回、第八回各公判期日)、原原審では、aが本件ぶどう酒瓶に何かを入れようと
しているのを見たことはないと明言している(昭和六一年七月一五日、同年八月二八日)。
しかも、c総会出席者の供述を総合すると、aは、遅れて公民館を訪れた者に挨拶するため
会場から囲炉裏の間に出てきた以外、総会開会中に中座しなかったことが認められるから、
aが本件ぶどう酒に農薬を注入したものでないことは明らかである。
(二)本件ぶどう酒瓶は、申立人により公民館に持ち込まれてから、囲炉裏の間の流しの前の
板敷きに置かれていたが、c総会が開かれるまでは、そのすぐそばに申立人が座り、後記のとおり、
fが公民館に戻って以降、他の会員も順次囲炉裏の周りに集まってきて雑談していたこと、
総会開会中は、隣室の会場に着席した会員らから、本件ぶどう酒瓶の置かれた板敷き付近が
十分見通せたほか、遅れてきた会員らが会場に入るために順次囲炉裏の間を通る状況にあったこと、
懇親会の準備が始まってからは、囲炉裏の間で男女数人が立ち働きしていたことは、関係証拠から
明らかであって、人知れず本件ぶどう酒瓶に近づき農薬を入れることは不可能であったと認められる。
ちなみに、総会出席者の中で、囲炉裏の間に置かれた本件ぶどう酒瓶にだれかが近づくのに
気付いたと供述する者は、申立人以外にはない。
4 以上の事実を総合すると、本件ぶどう酒瓶が開栓され農薬が混入されたのは、
確定判決の認定するとおり、公民館の囲炉裏の間であり、したがって、本件ぶどう酒瓶が
いつd方に持ち込まれたかについて検討するまでもなく、申立人以外の者は本件ぶどう酒に
農薬を混入する機会がなく、その実行が不可能であったものと認められる。」
>>173の続き
5 申立人による犯行の機会
「申立人は、本件ぶどう酒瓶等を公民館の囲炉裏の間に持ち込んだ後、fがd方に向かい公民館を
出発してから戻ってくるまでの約一〇分間、公民館内に一人でいたと認められる。しかも、前示のとおり、
申立人が本件犯行前に有機燐テップ製剤の農薬であるニッカリンTを購入して所持していたことも
考慮すると、申立人は、本件犯行を実行することが可能であり、かつ、その機会が十分にあったと
いうことができる。
6 以上のとおり、本件事件当日に、公民館の囲炉裏の間において、本件ぶどう酒に有機燐テップ製剤の
農薬が混入されたが、申立人以外の者は本件ぶどう酒に右農薬を混入する機会がなく、その実行が
不可能であったのに対し、申立人はその実行が可能であり、かつ、その機会が十分にあったと
認められるから、以上の情況証拠によって、申立人が本件犯行を犯したものと認めることができる。」
>>174の続き
四 自白の任意性及び信用性
「1 次いで、本件犯行の動機、準備行為、犯行態様、犯行の証拠隠滅工作等について詳細に供述する
申立人の自白について検討を進めるに、所論は、申立人の捜査段階における自白には任意性に疑いが
ある旨主張するが、関係する新旧全証拠を総合的に評価しても申立人の自白の任意性に疑いを生じさせる
事由が認められないとした原決定の判断は、正当として是認することができる。
2 また、関係証拠によれば、申立人は、身柄が拘束される前に、捜査機関が既に入手していた
資料から創作できるとは考えられないような具体的な自白をしており、その内容も、客観的状況
―特に、本件ぶどう酒瓶に付着する封緘紙と囲炉裏の間付近で発見された大小封緘紙の一体性、
付け根の鋭く切れ込んだ耳付き冠頭の存在、申立人の自白後発見押収された火挟みの存在、
本件替栓に付けられた人歯痕とみられる傷痕―と矛盾なく符合していると認められるのであって、
本件替栓表面の傷痕に関する三鑑定の証明力が大幅に減殺されたことを前提に、所論にかんがみ
申立人の自白の信用性に関する新旧全証拠を慎重に検討しても、申立人の自白の信用性に疑いを
挟ませるような事実は認められないから、申立人の自白の信用性を認めた原決定の判断も、
正当として是認することができる。」
>>175の続き
五 結論
「以上要するに、本件替栓の表面の傷痕に関する三鑑定は、再審請求後に提出された証拠によって、
その証明力が大幅に減殺されたとはいえ、新旧全証拠を総合して検討すると、犯行の機会に関する
情況証拠から、申立人が本件犯行を犯したと認めることができ、これに信用性が高いと認められる
申立人の自白を総合すれば、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないというべきで
あるから、所論引用の各証拠が刑訴四三五条六号にいう証拠の明白性を欠くとして本件再審請求を
棄却すべきものとした原決定の判断は、これを是認することができる。」
昭和44年9月10日 名古屋高等裁判所刑事第一部 判決(確定判決による死刑の理由)
「本件犯行は、被告人が妻A子と恋愛結婚し、同女との間に、二人の子供まで儲けておきながら、
妻A子の信頼を裏切って、しかも夫に死別して間もない判示B子と情交関係を結び、不倫な
いわゆる三角関係を続けるなどして、家庭不和の原因を自ら招来したものであるにかかわらず、
右の三角関係の善後措置方に窮するに及び、右のA子、B子の両名にとどまらず、多数の
罪なき人々までも犠牲にすることを十分認識しながら、敢行したものであって、その犯行の動機は、
全く人倫に背き、憫諒すべき点がなく、また被告人は、その犯行をなすに際し、いわゆる完全犯罪を
企図して、事前に、予め証拠の隠滅方法に関し、種々思いをめぐらしたうえ、周到な用意と計画の下に
本件犯行を敢行しており、しかもその犯行の態様は、年一回開催されるに過ぎない前記「三奈の会」
会員による懇親会の機会を捉え、同懇親会の席上、これを出席した多数の予て面識のある
婦女子に対し、猛毒性を有する農薬入りのぶどう酒を飲ませて、同婦女子の殺害を企てたという
極めて兇暴残虐なものであったこと、被告人の該犯行により、一瞬のうちに、妻A子、B子の
両名を含め五名の婦女子の尊い生命が奪われ、一二名の婦女子がそれぞれ重軽傷を負い、
とくに、その生命を奪われた被害者本人はもちろん、その遺家族に対しても、取り返しのつかない
不幸と苦痛を与えるに至ったこと、しかるに被告人は、本件に関し、司直の取調べを受けた当初、
本件を、妻A子の犯行であったかの如き言を弄して、自己の責任を、既に本件所為により殺害された
妻A子に転嫁しようとしたばかりでなく、当審における事実取調べの結果に徴すれば、被告人は、
本件が原審に係属中の昭和三九年八月ごろ三重刑務所拘置監において、当時同拘置監に
被告人同様未決囚として在監中のCに対し、本件に関する罪証隠滅のため、内容虚偽のいわゆる
偽せ手紙の作成方を依頼するなどして、本件の罪責を免れようと工作した事跡を窺知するに足り、
その心情の卑劣さを看過し難いのに加え、被告人には今なお本件につき、反省悔悟の情が毫も
認められないこと、更には、本件が、前記の如き本件各被害者もしくはその遺家族に与えた痛恨は
もちろん、一般社会に及ぼした影響等を考慮すれば、被告人の本件犯行による罪責は、まさに
極刑に値するといわなければならない。そして、本件記録に現れた被告人の年令、経歴、境遇
その他一切の事情を斟酌考量してみても、被告人に対し、本件につき、特に情状を酌量すべき
特段の事情のごときは、これを見出し得ない。よって、被告人に対しては、本件につき、前記の
刑法第一九九条の所定刑中死刑を選択して、被告人を死刑に処する」
>>173の補足
三 犯行の場所と機会に関する情況証拠
「1 本件はぶどう酒瓶の中に有機燐テップ製剤が混入されたことによって生じた事件であるが、
本件ぶどう酒に有機燐テップ製剤が混入したのは、本件ぶどう酒の製造過程や流通過程ではなく、
c懇親会が開かれた本件事件当日であったことは、関係証拠に照らし明らかである。
2 犯行の場所
所論にかんがみその引用する新証拠を含む全証拠を総合的に検討しても、本件ぶどう酒に
有機燐テップ製剤が混入されたのは、本件事件当日で、かつ、公民館の囲炉裏の間においてで
あったとする確定判決の認定は、正当として是認することができる。その理由は、以下のとおりである。
(一)本件ぶどう酒が瓶詰されていた一・八リットル瓶(名古屋高裁昭和四〇年押第二二号の一。
以下「本件ぶどう酒瓶」という)には、内栓として四つ足替栓、外栓として瓶口を巻き四つ足替栓を
上から押さえる耳付き冠頭がそれぞれ装着され、更に内栓の四つ足部分と外栓の耳の部分を
覆うように一枚の封緘紙が瓶口の周囲に巻かれて両端が貼り合わされていたものであるところ、
内栓の四つ足替栓は、外栓の耳付き冠頭を外さなければ開けることができないし、封緘紙は、
外栓の耳付き冠頭を外す際に破れる関係にあったことが認められる。そして、本件事件発生後に
公民館の囲炉裏の間及びその周辺から発見押収された本件替栓(押収日は昭和三六年三月二九日)、
耳付き冠頭一個(同号の二、押収日は同日)、包装紙の破片一枚(同号の三、押収日は同日)及び
封緘紙の破片大小各一枚(同号の四、押収日は大が同月三〇日、小が同月三一日)を調査するに、
確定判決の認定するとおり、これらはいずれもその印刷文字や模様等からみて、本件ぶどう酒と
同一の醸造所で製造された同銘柄のぶどう酒(三線ポートワイン)の瓶に装着ないし使用されていた
ものであり、とりわけ右封緘紙の破片大と右封緘紙の破片小及び本件ぶどう酒瓶の瓶口に付着して
残っている封緘紙の破片とは、いずれもその破れ目が符合し、印刷文字や模様が連続していて、
右各封緘紙は元来は一体をなしていたものであることが認められ、加えて本件公民館周辺の徹底的な
捜索にもかかわらず、これら以外には、本件ぶどう酒瓶に装着ないし使用されたと思われる栓や
封緘紙等は発見されなかったこと、右栓や封緘紙等が発見された当時、犯人や犯行手段といった
本件犯行の実態はほとんど未解明であり、捜査機関による作為の入り込む余地がなかったことは、
関係証拠に照らし明らかなところであるから、右栓や封緘紙等はいずれも本件ぶどう酒瓶に装着ないし
使用されていたものと認めることができる。
(二)そして以上の事実に、前記耳付き冠頭の耳の付け根が鋭く切れ込み、耳の部分が右切れ込み
部分から持ち上がっていると認められることを加味すると、本件ぶどう酒瓶は、公民館の囲炉裏の間
付近において、何者かが耳の部分を持ち上げて右耳付き冠頭を開栓し、その際、前記封緘紙も
破れたものと推認される。しかも、本件ぶどう酒瓶は、本件事件当日の夕刻、申立人により初めて
公民館の囲炉裏の間に持ち込まれて以降、cの懇親会が開かれるまでの間、囲炉裏の間から
持ち出された形跡のないことは、関係証拠により明らかである。そうすると、内栓である四つ足替栓も、
本件ぶどう酒瓶が申立人により囲炉裏の間に持ち込まれた後、同室において、右耳付き冠頭に引き続き
開栓され、その際、本件ぶどう酒に有機燐テップ製剤が混入されたものと推認することができる。」
【尾田信夫・第5次再審請求(特別抗告審)】
平成10年10月27日 最高裁判所第三小法廷 決定(刑集52巻7号363頁)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070622110405.pdf 「一 本件再審請求の対象である第一審判決(以下「確定判決」ともいう。)が認定した強盗殺人、同未遂、
現住建造物放火の罪となるべき事実の要旨は、次のとおりである。すなわち、申立人は、aとの間で、
申立人の以前の稼働先である福岡市内のb株式会社川端店に押し入り宿直員を殺害して金品を強取し
同店に放火して犯跡を隠蔽することを計画して、共謀の上、昭和四一年一二月五日午後一〇時ころ、
同店営業部事務室において、宿直中のc及びdに対し、玩具のけん銃と登山用ナイフを突き付けるなどして
金銭を要求し、これに従おうとしない両名を計画どおり殺害しようと決意して、cの頭部を小型ハンマーで
強打するなどし、その反抗を抑圧して現金合計二二万一〇〇〇円等を強取するとともに、dの首を
電熱器用コードで締め上げ、両名の頭部等を右小型ハンマーで殴打するなどの暴行を加えて両名に
瀕死の重傷を負わせた。そして、かねてからの計画どおり、同店(木造瓦葺二階建店舗)に火を放って
焼燬し、右宿直員両名を窒息死あるいは焼死させて犯跡を隠蔽しようと企て、aが同事務室内の棚に
積み上げられていた多数の商品カタログ紙を取り出して同室内一面にまき散らし、申立人が侵入前から
点火されていた同事務室内の石油ストーブを、火炎の部分を覆っていた金属製防護網を取り外した上で、
反射鏡が上になり火炎の部分が下になるように足蹴にして横転させ、aに命じて右ストーブの火炎が
同事務室内の机等に燃え移っていることを確認させた上で同人とともにその場から逃走し、よって、
cらが現在する同店を半焼させるなどして焼燬するとともに、cを前記暴行による高度の脳挫傷及び
一酸化炭素中毒によりその場で死亡させて殺害したが、dに対しては加療約五箇月を要する陥没骨折を
伴う前額部、右側頭部の各挫創等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。」
「二 申立人は、逮捕直後から右事実を全面的に認め、公判においてもこの自白を維持して、
第一審において死刑の宣告を受けた。申立人は、この第一審判決を不服として控訴し、
控訴審において、死刑制度の違憲性、心神耗弱、量刑不当等の主張に加え、放火の犯意に
ついても争ったが、第一審判決挙示の証拠により十分これを認めることができるとして、
その主張は排斥され、上告も棄却されて、第一審判決が確定した。
三 本件再審請求においても、申立人が強盗殺人、同未遂の犯行に及んだことには争いがなく、
本件再審請求は、前記各犯罪事実のうち、現住建造物放火の点のみを否定し、火災の真の原因は
事務室内で燃焼中の石油ストーブ(以下「本件ストーブ」という。)が直立したままの状態で異常燃焼した
ことによるものであるとして、この点について申立人を無罪とすべき明らかな証拠を新たに発見したと
主張するものである。右放火の罪は、確定判決において強盗殺人、同未遂の罪と一個の行為で三個の
罪名に触れる観念的競合の関係にあるものとして処断されたものであるところ、このように確定判決に
おいて科刑上一罪と認定されたうちの一部の罪について無罪とすべき明らかな証拠を新たに発見した
場合は、その罪が最も重い罪ではないときであっても、主文において無罪の言渡しをすべき場合に
準じて、刑訴法四三五条六号の再審事由に当たると解するのが相当である。
四 原決定は、確定判決が放火の方法に関し燃焼中の本件ストーブを足蹴にして横転させたと
認定したことについて、原審における検証調書等によれば、本件ストーブを蹴り付けて横転させようと
しても、ストーブは重心が低く設計されているため床面を前方に滑るだけで容易に転倒させることが
できず、また、所論引用の新たな証拠であるe作成の『東芝KV202石油ストーブ実験結果のまとめ』と
題する書面及び原原審における証人eの尋問調書等によれば、本件ストーブを横転させると裏蓋が
開いて給油タンクがストーブ本体から外れてしまい、本件ストーブの発見時のように給油タンクが
納まったままの状態で横転させることはできないことから、確定判決の右認定には合理的な疑いを
生じたとしている。その上で、原決定は、放火の方法について更に検討を加え、申立人及びaの
各自白を含む関係証拠、とりわけ確定判決を言い渡した裁判所に提出されていた福岡県警察
技術吏員f作成の鑑定書、再審請求後に検察官から提出された同技術吏員g作成の鑑定書二通等
によれば、申立人が本件ストーブをその前面下部の扉部分が床面に接するように設置して
火を放ったことを認定することができるとし、申立人が本件ストーブを故意に転倒させ、その火を
机等に燃え移らせて放火の犯行に及んだことに変わりがないから、無罪を言い渡すべき場合に
当たらないと判示し、本件再審請求を棄却している。」
「五 記録に徴すれば、原決定の右判断は、結論において正当として是認することができる。
すなわち、申立人の自白のほか、共犯者aの供述、本件ストーブや防護網の発見状況、
現場の焼燬状況等を総合すれば、原決定のように本件ストーブを前傾した状態に設置したとまで
認定すべきか否かはともかくとしても、申立人及びaが、事務室内にあった燃焼中の本件ストーブを
防護網を取り外して移動させ、その火力を利用して室内の机等に燃え移らせるようにして火を放ち、
その場から逃走したことは、動かし難いところであるから、申立人に現住建造物放火罪が成立する
ことは明らかである。
所論は、確定判決の判示した放火の具体的方法が実行可能であることについて合理的な疑いを
生ずるに至ったのであるから、再審事由に該当すると主張している。しかし、放火の方法のような
犯行の態様に関し、詳しく認定判示されたところの一部について新たな証拠等により事実誤認の
あることが判明したとしても、そのことにより更に進んで罪となるべき事実の存在そのものに
合理的な疑いを生じさせるに至らない限り、刑訴法四三五条六号の再審事由に該当するということは
できないと解される。本件においては、確定判決が詳しく認定判示した放火の方法の一部に誤認が
あるとしても、そのことにより申立人の現住建造物放火の犯行について合理的な疑いを生じさせる
ものでないことは明らかであるから、所論は採用することができない。」
「六 前記f作成の鑑定書は、確定判決を言い渡した裁判所の審理中に提出されたが、確定判決には
その標目が示されなかった証拠であり、また、原審における検証調書及び前記g作成の鑑定書は、
本件再審請求の後に初めて得られた証拠である。所論は、確定判決に標目が挙示されなかった
証拠や再審請求後に提出された証拠を考慮して再審請求を棄却することは許されないと主張する。
しかし、刑訴法四三五条六号の再審事由の存否を判断するに際しては、e作成の前記書面等の新証拠と
その立証命題に関連する他の全証拠とを総合的に評価し、新証拠が確定判決における事実認定について
合理的な疑いをいだかせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠(最高裁昭和四六年(し)第六七号
同五〇年五月二〇日第一小法廷決定・刑集二九巻五号一七七頁、最高裁昭和四九年(し)第一一八号
同五一年一〇月一二日第一小法廷决定・刑集三〇巻九号一六七三頁、最高裁平成五年(し)第四〇号
同九年一月二八日第三小法廷決定・刑集五一巻一号一頁参照)であるか否かを判断すべきであり、
その総合的評価をするに当たっては、再審請求時に添付された新証拠及び確定判決が挙示した
証拠のほか、たとい確定判決が挙示しなかったとしても、その審理中に提出されていた証拠、更には
再審請求後の審理において新たに得られた他の証拠をもその検討の対象にすることができるものと
解するのが相当である。原決定は、これと同旨の見解の下に、刑訴法四三五条六号の再審事由の
存否について判断したものであるから、正当である。」
「七 以上のとおり、所論引用の新証拠のほか、再審請求以降において新たに得られた証拠を含む
他の全証拠を総合的に評価しても、申立人が放火の犯行に及んだことに合理的な疑いが生じていない
ことは明らかであるから、所論引用の新証拠が刑訴法四三五条六号にいう証拠の明白性を欠くとして
本件再審請求を棄却すべきものとした原決定の判断は、正当であり、是認することができる。
よって、同法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。」
判例の解説が詳しい本でおすすめなのってありますか?
ホシュ
186 :
法の下の名無し:2009/05/06(水) 20:37:51 ID:T3L7LslK
???
ちょっと聞いて良いか?
例えばチェーン店のコンビニで入浴剤かなんか買って風呂で使う
入浴後体中が痒くなって病院へ
実はその入浴剤にはカビが生えていた
ってケースで悪い奴は誰なんだ?
製造会社?チェーン店の社長?そこの店長?それともそれを売ったバイトの人?
携帯からで申し訳ない
188 :
法の下の名無し:2009/05/06(水) 23:10:37 ID:dLTPjJ5w
チェーン店の社長です。
189 :
法の下の名無し:2009/05/08(金) 15:22:59 ID:0HCD2+EU
ロースクールの法律の択一試験って旧司法試験と同じ憲法・民法・刑法なんでしょうか?
誰か教えてください
190 :
法の下の名無し:2009/05/27(水) 16:07:59 ID:K5BNldhL
スレ違いでしたら、誘導してください。
車の板で↓のようなレスがあったのですが
この案件について裁判記録を調べたく思っています。
どのように調べれる方法があるでしょうか?
(なんとなく、ガセネタっぽいんですが・・・ )
902 名無しさん@そうだドライブへ行こう [] Date:2009/05/27(水) 03:13:33 ID:8/KXS7Jb0 Be:
http://page13.auctions.yahoo.co.jp/jp/show/qanda?aID=r54998559 ドアロックピン欲しいんだと。こう言う人は、まともに整備してんのか?
会社の同僚が(後輩)は、前の車に追突事故した際(ちょっと複雑な)、相手の被害者の弁護士から指摘でユーザー車検二回(もちろんまともな整備記録なし)分が
指定工場で行ってないことを突かれて(事故原因)、訴えられ裁判で負けてた。
事故は間違いなく後輩の落ち度だが、結論は整備不良とのことで、任意保険も一部しか下りずに見る目も当てられない。
相手の入院費と車の弁償で1千万越えてるが(慰謝料はこれから清算だそうだ)、どうするんだか…
最近は整備記録まで見る保険会社は、よほど厳しいのか?それともまともな整備すらしないで乗るほうが悪いのか?
191 :
法の下の名無し:2009/06/19(金) 21:23:58 ID:KNtw7TDX
よみにくい
判例は見つからんが、厳しくもなんともないし保険が降りないケースなんてごくまれ
簡単に言うと車検というのは車が不慮の事故を起こさないように定期的に行うもので、それによって将来起こりうる危険を回避する役目を持ってる
それを行わないっていうことは普通の一般常識を持ち合わせている人であるならば、将来車検を行ってないことによって事故を起こす確立があるということを予見できるはずである(予見可能性がある)
よって、本来行うべき行為をやらなかったことによっておきた結果であると因果関係が発生するので後輩が悪いのは決定的に明らか(キリッ
ダルかったから途中ではしょった、後悔はしてない
先生、車つながりで質問です。
3ヶ月前に盗まれた車を発見したとします。
しかしその車のパーツが、3ヶ月前と比べて90%交換されてたとします。
果たして被害者は、その車の所有権を主張出来るのでしょうか?