>>173の補足
三 犯行の場所と機会に関する情況証拠
「1 本件はぶどう酒瓶の中に有機燐テップ製剤が混入されたことによって生じた事件であるが、
本件ぶどう酒に有機燐テップ製剤が混入したのは、本件ぶどう酒の製造過程や流通過程ではなく、
c懇親会が開かれた本件事件当日であったことは、関係証拠に照らし明らかである。
2 犯行の場所
所論にかんがみその引用する新証拠を含む全証拠を総合的に検討しても、本件ぶどう酒に
有機燐テップ製剤が混入されたのは、本件事件当日で、かつ、公民館の囲炉裏の間においてで
あったとする確定判決の認定は、正当として是認することができる。その理由は、以下のとおりである。
(一)本件ぶどう酒が瓶詰されていた一・八リットル瓶(名古屋高裁昭和四〇年押第二二号の一。
以下「本件ぶどう酒瓶」という)には、内栓として四つ足替栓、外栓として瓶口を巻き四つ足替栓を
上から押さえる耳付き冠頭がそれぞれ装着され、更に内栓の四つ足部分と外栓の耳の部分を
覆うように一枚の封緘紙が瓶口の周囲に巻かれて両端が貼り合わされていたものであるところ、
内栓の四つ足替栓は、外栓の耳付き冠頭を外さなければ開けることができないし、封緘紙は、
外栓の耳付き冠頭を外す際に破れる関係にあったことが認められる。そして、本件事件発生後に
公民館の囲炉裏の間及びその周辺から発見押収された本件替栓(押収日は昭和三六年三月二九日)、
耳付き冠頭一個(同号の二、押収日は同日)、包装紙の破片一枚(同号の三、押収日は同日)及び
封緘紙の破片大小各一枚(同号の四、押収日は大が同月三〇日、小が同月三一日)を調査するに、
確定判決の認定するとおり、これらはいずれもその印刷文字や模様等からみて、本件ぶどう酒と
同一の醸造所で製造された同銘柄のぶどう酒(三線ポートワイン)の瓶に装着ないし使用されていた
ものであり、とりわけ右封緘紙の破片大と右封緘紙の破片小及び本件ぶどう酒瓶の瓶口に付着して
残っている封緘紙の破片とは、いずれもその破れ目が符合し、印刷文字や模様が連続していて、
右各封緘紙は元来は一体をなしていたものであることが認められ、加えて本件公民館周辺の徹底的な
捜索にもかかわらず、これら以外には、本件ぶどう酒瓶に装着ないし使用されたと思われる栓や
封緘紙等は発見されなかったこと、右栓や封緘紙等が発見された当時、犯人や犯行手段といった
本件犯行の実態はほとんど未解明であり、捜査機関による作為の入り込む余地がなかったことは、
関係証拠に照らし明らかなところであるから、右栓や封緘紙等はいずれも本件ぶどう酒瓶に装着ないし
使用されていたものと認めることができる。
(二)そして以上の事実に、前記耳付き冠頭の耳の付け根が鋭く切れ込み、耳の部分が右切れ込み
部分から持ち上がっていると認められることを加味すると、本件ぶどう酒瓶は、公民館の囲炉裏の間
付近において、何者かが耳の部分を持ち上げて右耳付き冠頭を開栓し、その際、前記封緘紙も
破れたものと推認される。しかも、本件ぶどう酒瓶は、本件事件当日の夕刻、申立人により初めて
公民館の囲炉裏の間に持ち込まれて以降、cの懇親会が開かれるまでの間、囲炉裏の間から
持ち出された形跡のないことは、関係証拠により明らかである。そうすると、内栓である四つ足替栓も、
本件ぶどう酒瓶が申立人により囲炉裏の間に持ち込まれた後、同室において、右耳付き冠頭に引き続き
開栓され、その際、本件ぶどう酒に有機燐テップ製剤が混入されたものと推認することができる。」