判例解説スレ Part 1.1

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173法の下の名無し
【名張毒ぶどう酒事件】
平成9年1月28日 最高裁判所 第三小法廷 決定(第5次再審請求〔特別抗告審〕)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/26102D0207E1CBCF49256A850030A93D.pdf

3 申立人以外の者による犯行の機会
「新旧全証拠を総合しても、本件ぶどう酒瓶が公民館の囲炉裏の間に持ち込まれて以降、
申立人以外の者が本件ぶどう酒に農薬を人知れずひそかに混入することは不可能であった
とする確定判決の認定は、以下のとおり、正当として是認することができる。
(一)申立人は、捜査段階の否認調書(昭和三六年四月二四日付け検察官調書等)において、
c総会開会中に便所に行った際、妻a(本件事件により死亡)が左手に本件ぶどう酒瓶、右手に
白いもので包んだ瓶を持ってぶどう酒瓶に注ぎ込む格好をしているのを見た旨供述するが、
第一審では、aが囲炉裏のそばにいたのは見たが、瓶を触っているのは見ていないと供述を
変更し(第七回、第八回各公判期日)、原原審では、aが本件ぶどう酒瓶に何かを入れようと
しているのを見たことはないと明言している(昭和六一年七月一五日、同年八月二八日)。
しかも、c総会出席者の供述を総合すると、aは、遅れて公民館を訪れた者に挨拶するため
会場から囲炉裏の間に出てきた以外、総会開会中に中座しなかったことが認められるから、
aが本件ぶどう酒に農薬を注入したものでないことは明らかである。
(二)本件ぶどう酒瓶は、申立人により公民館に持ち込まれてから、囲炉裏の間の流しの前の
板敷きに置かれていたが、c総会が開かれるまでは、そのすぐそばに申立人が座り、後記のとおり、
fが公民館に戻って以降、他の会員も順次囲炉裏の周りに集まってきて雑談していたこと、
総会開会中は、隣室の会場に着席した会員らから、本件ぶどう酒瓶の置かれた板敷き付近が
十分見通せたほか、遅れてきた会員らが会場に入るために順次囲炉裏の間を通る状況にあったこと、
懇親会の準備が始まってからは、囲炉裏の間で男女数人が立ち働きしていたことは、関係証拠から
明らかであって、人知れず本件ぶどう酒瓶に近づき農薬を入れることは不可能であったと認められる。
ちなみに、総会出席者の中で、囲炉裏の間に置かれた本件ぶどう酒瓶にだれかが近づくのに
気付いたと供述する者は、申立人以外にはない。
4 以上の事実を総合すると、本件ぶどう酒瓶が開栓され農薬が混入されたのは、
確定判決の認定するとおり、公民館の囲炉裏の間であり、したがって、本件ぶどう酒瓶が
いつd方に持ち込まれたかについて検討するまでもなく、申立人以外の者は本件ぶどう酒に
農薬を混入する機会がなく、その実行が不可能であったものと認められる。」