ゼロの院生<どん底からの国立医学部再受験>Part 5

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456消化器病
●肝臓の局所解剖と外科治療
   ○基本構造
   ※胆嚢と肝臓の上縁に見える下大静脈を結ぶカントリー線によって肝臓は右葉と左葉に分かれる(機能的境界)。
   ※肝臓は腹大動脈から分岐した腹腔動脈からでる総肝動脈が胃十二指腸動脈を出して固有肝動脈になりこれが左右の肝動脈となり肝臓を栄養する。
   ※組織レベルではグリソン鞘(小葉間結合組織)によって肝小葉が作られる。これは六角形をしており、その角(グリソン鞘のある部分)には
    三つ組み(固有肝動脈の枝である小葉間動脈、門脈の枝である小葉間静脈、胆管の枝である小葉間胆管)が存在する。肝小葉の中心には中心静脈があり下大静脈へつながる。
   ※肝区域は肝静脈の支配区域によって分けられ、その場合尾状葉という区分も発生する。
   ○外科治療…肝の予備機能の評価が大事であり、それによって施す手技が変わる。
   ※肝機能検査
      1.肝細胞壊死を反映するもの:ASTとALT、LDH、直接ビリルビン、血清鉄、血清銅、胆汁酸
      2.肝細胞の合成機能障害を反映するもの:アルブミン、コリンエステラーゼ、凝固因子、LCAT、プレアルブミン
      3.線維化、間葉系反応を反映するもの:ZTTとTTT、γ-グロブリン、ヒアルロン酸、血清4型コラーゲン
      4.胆汁うっ滞を反映するもの:胆道系酵素(ALP、LAP、γ-GTP)、コレステロール
      5.その他:フィブリノーゲン、AFPとPIVKA-U、CA19-9、アミラーゼ、色素排泄試験(BSP試験、ICG試験)、アシアロシンチグラム、ガラクトース負荷試験
          ※ICG(色素排泄試験)(重要):肝臓の働き(特に解毒作用)を知る検査のひとつ。異物であるICGという暗緑色の色素を一定量(体重1kg当たり0.5mg)
                     静脈より注入して、一定時間(15分)後に採血し、肝臓で排泄されずに血中に残存するICGの量(停滞率という)を
                     測定する検査。採血したものはその血清中のICG含量を吸光度測定する。10%以下が基準値。
   ※肝予備能評価(重要)
      1.肝障害度:腹水、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、ICG R15、プロトロンビン活性値をもって判断。
      2.Child-Pugh分類:腹水、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、脳症、プロトロンビン活性値をもって判断。(脳症の部分だけが肝障害度と違う)
      3.予定残存肝の肝容積測定:CTで肝をトレースし、容積を測定
   ※肝切除前門脈塞栓術:担癌領域の非癌肝実質を外科的切除前に萎縮・機能低下させ、残存予定肝を前もって代償肥大させておくことで、
              手術により残存肝にかかる負荷を軽減させる効果がある。
   ※肝癌に対する治療
      1.経皮的エタノール注入療法(PEIT) 2.肝動脈塞栓術(TAE) 3.マイクロ波凝固療法(MCT) 4.ラジオ波焼灼療法(RFA)
      5.肝切除 6.選択的肝動脈内制癌剤注入療法(肝動注) 7.肝移植 
      (3と4は癌を焼き殺す。ラジオ波は電子レンジと同じ作用。)
   ※肝移植について:保険適応疾患が決まっており、ミラノ基準に当てはまらない場合で手術する場合は、保険がきかない。