ゼロの院生<どん底からの国立医学部再受験>Part 5

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3511病理1
●乳房の病気
  ※TDLU(terminal ductal-lobular unit)…乳管から小葉、腺房にいたる小葉外終末乳管、小葉内終末乳管、
          腺房、小葉内の間質は乳汁分泌機能の最小単位でありTDLUと呼ばれる。
  ※乳管を形成する上皮細胞は管腔側の乳管上皮細胞(腺上皮細胞)と、基底膜側の筋上皮細胞の2種類の細胞で、
   これらがこれらが2層性構造を呈する。癌ではだいたい腺上皮細胞がガン化し、筋上皮細胞が消失する。
   よってアクチン染色で染まれば癌ではない。
  1.良性腫瘍
    ○管腔内乳頭腫…乳腺の代表的な良性腫瘍の一。拡張した乳管内に毛細血管をもつ線維性の茎をもって
      管内に乳頭状に突出する病変。上皮の2層性構造は保たれる。
    ○乳頭部腺腫…乳頭内あるいは乳輪下に生じる良性病変で、乳頭のびらんや腫大を症状とし、
      Paget病との鑑別が問題になる。
  2.悪性腫瘍:骨転移が多く、肺、肝臓への転移も多い。発生する部位で最も多いのが乳房の外側上部、
      次いで多いのが内側上部である。乳癌などの内分泌系の癌は進行が遅い場合が多いため、
      五年生存率ではなく十年生存率で見る。TNM分類を用いる。
         ※TNM分類…Tはtumor、Nはnode、Mはmetastasisを示す。
    【分類】
      a.非浸潤癌…乳管癌、小葉癌
      b.浸潤癌…乳管癌(さらに乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌に分かれる)、特殊型癌
      c.Paget病
    ○非浸潤性乳管癌…乳管上皮細胞由来の癌で、乳管内癌のみで構成され間質への浸潤が見られないもの。
         DCIS(ductal carcinoma in situ)と同義。筋上皮細胞の消失、減少がみられる。
    ○非浸潤性小葉癌…小葉内乳管上皮から発生した癌で、間質への浸潤のないもの。
         LCIS(lobular carcinoma in situ)と同義。ときとして細胞質内に粘液を有することがある。
    ○浸潤性乳管癌…乳癌の九割はこの型。
      ◎乳頭腺管癌…高分化型乳癌に相当し予後は良い。乳癌の約20%を占める。
      ◎充実腺管癌…中分化ないしは低分化乳癌に相当する。予後は乳頭腺管癌と硬癌の中間に位置する。
             乳癌の約20%を占める。
      ◎硬癌(スキルス)…線維の造成が強い。低分化乳癌に相当し、予後不良。乳癌の約50%を占める。
             癌細胞は索状構造、あるいは孤立散在性を増殖形態を示す。
    ○特殊型…粘液癌、髄様癌、浸潤性小葉癌、腺様?胞癌、扁平上皮癌、紡錘細胞癌、アポクリン癌、管状癌、分泌癌
    ○Paget病…乳管内乳管由来で乳頭や乳輪の表皮内に進展する特徴を持つ。Paget細胞の増殖を示す。
         この細胞は細胞質内に粘液を有し、粘液を赤く染めるPAS反応陽性である。多くは非浸潤性で予後良好。
  3.結合織性および上皮性混合腫瘍
    ○線維腺腫…2、30代の若年に多い乳腺の良性腫瘍。悪性化はきわめてまれ。乳管と間質結合織の増生よりなる。
         境界明瞭な腫瘤性病変。上皮の2層性は保たれる。きわめてまれに癌が合併することがあるが、
         その多くは小葉癌。
    ○葉状腫瘍…上皮が葉状構造を示す。好発年齢は50代。悪性も存在する。
  4.その他
    ○乳腺症…エストロゲンの相対的過剰が原因となる。乳癌の周囲に合併して見られることがあるが、
         乳癌の直接的な前癌病変かどうかは不明。多くは両側性に発生。
3522病理1 :2009/01/03(土) 18:38:40 ID:vn/G9Fxf0
●胆嚢と肝外胆管
  ※肝内胆管からの左右肝管が合流し総肝管となり、それが胆嚢からの胆嚢管と合流し総胆管になる。
   総胆管は膵管と合流するとともに、十二指腸のVater乳頭に開口する。組織学的特徴として粘膜筋板を欠く。
  ○形成異常…無形成などの他に、膵管胆管合流異常がある。これは膵管と胆管がVater乳頭より上流で開口したもので、
     胆道癌(胆管癌、胆嚢癌)の危険因子となる。本症では圧勾配により膵液が胆管内に逆流する。
  ○肝外胆道閉鎖症…黄疸、肝肥大、灰白色便(胆汁が出ないため便が灰白色になる)が主要な症状。不可逆的な
     胆汁性肝硬変に移行する前に手術をすると良好な結果が得られる。末期には肝不全、食道静脈瘤破裂、感染で死亡する。
  ○胆石症…胆嚢に最も多い。胆石は主成分により、コレステロール胆石と色素胆石(ビリルビンカルシウム石、黒色石)、
     およびいずれにも属さないまれな胆石(炭酸カルシウム石など)に分類される。
       ◎コレステロール胆石…胆石の割面は放射状の模様を呈する。胆嚢胆石で最も多い。
       ◎色素胆石…胆汁色素成分から作られる胆石。以下の2つに分類される。
         1.ビリルビンカルシウム石…感染胆汁中で形成される。割面は茶褐色で層状。
                      肝外胆管や肝内胆管の結石のほとんどはこれである。
         2.黒色石…ビリルビン由来の黒色色素が主成分である胆石。外観および割面は黒色で無構造。
              非感染胆汁中で形成される。溶血機序が成因の一つ。
  ○胆嚢のコレステロール沈着
     ◎コレステローシス…粘膜固有層に泡沫状マクロファージが見られ、肉眼的に胆嚢粘膜が黄白色の網目状に見える。
     ◎コレステロールポリープ…桑の実状の形態を示す黄色の小さなポリープで、多発する。
  ○胆嚢炎…原因としては胆汁成分の異常、細菌感染、胆石による機械的刺激、循環障害などがある。
     ◎急性胆嚢炎…大部分は胆石によるもので、高熱、右季肋部痛、悪寒戦慄、悪心などの症状を示す。
            痛みはしばしば右肩に放散する。
     ◎慢性胆嚢炎…急性胆嚢炎の慢性化によるものと、急性胆嚢炎の先行がなく徐々に炎症が進むものがある。
            一般に慢性胆嚢炎は胆石の随伴所見として見られることが最も多い。上腹部痛や右季肋部痛、
            膨満感、悪心嘔吐などの症状を示す。組織像では筋層あるいは漿膜下層に粘膜上皮の陥入による腺管形成、
            いわゆるRokitansky-Aschoff洞が散見される。
  ○胆管炎…胆汁のうっ滞、胆嚢炎の波及、細菌感染により起こる。
  ○肝外胆道系の腫瘍…上皮性腫瘍では大部分が悪性。
     ※肝外胆道系の区分…『胆道癌取扱い規約』では、肝外胆管を3区域(上部胆管・中部胆管・下部胆管)に区別している。
          Vater乳頭から膵上縁までを下部胆管とし、あとは二等分して上部胆管・中部胆管とする。癌は下部胆管で最多。また
          『胆道癌取扱い規約』では、胆嚢を長軸方向に3等分し、底部、体部、頸部に区別している。底部に胆嚢癌が最多。
     ◎胆嚢癌…胆石を高率に合併し、底部に最も多くできる。腫瘍マーカーはCA19-9である。腺癌が主体。
     ◎肝外胆管癌…下部胆管に最も多い。腫瘍マーカーは、CA19-9である。腺癌が主体。
3532病理2(1):2009/01/03(土) 18:48:04 ID:vn/G9Fxf0
●膵臓
  ※縦走する上腸管膜静脈を境に十二指腸側を頭部、残りを2等分し体部、尾部とする。組織的に膵は
   外分泌腺としての腺房および導管(膵管)と、内分泌腺としてのランゲルハンス島(膵島)から構成される。
   ランゲルハンス島を構成する細胞には、グルカゴンを分泌するA細胞、インスリンを分泌するB細胞、
   ソマトスタチンを分泌するD細胞、膵ポリペプチドを分泌するPP細胞がある。6〜7割はB細胞が占める。
  ○先天性異常
     ◎輪状膵…膵が完全あるいは不完全に十二指腸を取り囲んでいる状態。
     ◎発生途上で膵組織が膵以外の組織中に迷入したもの。
  ○膵?胞…膵液、粘液、血液、壊死物質などを内容として含む膵内部あるいは膵周囲に形成する病変の総称。
     ◎仮性?胞…?胞壁に上皮成分を認めない?胞で膵?胞の8〜9割を占める。ほとんどは膵炎により生じる。
     ◎真性?胞…上皮に裏打ちされた?胞。
  ○糖尿病
     ※診断…空腹時血糖値(mg/dl)110〜125で境界型、126以上で糖尿病と診断する。
         75gGTT2時間値(mg/dl)140〜199で境界型、200以上で糖尿病と診断する。
         随時血糖値(mg/dl)200以上で糖尿病と診断する。
     ◎T型糖尿病…インスリン依存性。自己免疫を基礎にした膵B細胞の破壊が原因。
            若年発症で、発症様式は急激、非肥満が多い。家族発症は少ない。
     ◎U型糖尿病…インスリン非依存性。インスリン分泌不全とインスリン抵抗性が原因。
            成人発症が多く、発症様式は緩徐、肥満が多い。家族発症は多い。膵島へのアミロイド沈着。
  ○急性膵炎…上腹部痛や圧痛として発症し、血清、尿中アミラーゼ上昇。原因としてアルコール性(最多)、胆石性、
        特発性が三大因子。男性はアルコール性、女性は胆石性が多い。アミラーゼ上昇の程度は重傷度と相関しない。
        壊死を伴う場合、膵臓にカルシウムがくっついていくため、カルシウムの低下度は重傷度と相関する。
        合併症として膵仮性?胞などがある。組織では脂肪壊死、急性炎症のための好中球浸潤あり。(慢性では線維化)
  ○慢性膵炎…膵炎としての臨床像が6か月以上持続または継続している病態をいう。原因としてアルコール性、特発性、
        胆石性があり、アルコール性が最も多い。膵は硬化し、線維化を伴い石灰化が見られる。
        主な合併症は膵仮性?胞など。
3542病理2(2):2009/01/03(土) 18:51:54 ID:vn/G9Fxf0
  ○膵腫瘍…9割以上は悪性。
      ◎膵癌…大部分は膵管上皮由来で、そのうち浸潤性膵管癌(管状腺癌)が最も多い。2/3は膵頭部に生じる。
          膵頭部癌では総胆管の閉塞により閉塞性黄疸を早期に生じることが多い。進行すると、神経叢への浸潤を
          きたし疼痛も生じる。一方体尾部癌では黄疸は少なく、進行し腹痛、体重減少によって
          発見されることが多い。よって体尾部のほうが予後不良。CA19-9が腫瘍マーカーとして有用。
      ◎?胞性腫瘍
          1.漿液性?胞腫瘍…多くは良性の腺腫。膵体尾部に好発する。組織的に?胞壁は
                   PAS染色陽性のグリコーゲンを有す腫瘍細胞により覆われる。
          2.粘液性?胞腫瘍…良性、悪性いずれも存在し、膵尾部に好発する。
      ◎膵管内腫瘍…腺腫と腺癌があり、膵頭部に好発。
      ◎浸潤性膵管癌…管状腺癌が最も多く、膵頭部に好発。粘液産生がありPAS染色陽性。CA19-9陽性。
      ◎腺房細胞腫瘍…良性の腺房細胞腺腫と悪性の腺房細胞癌に分けられるが大部分は癌。
              腫瘍細胞は好酸性の細胞質を有す。CA19-9は陰性。
      ◎内分泌腫瘍…良性、悪性両方認められる。産生ホルモンによりさらに分類される。正所性と異所性のものがある。
          1.insulinoma…膵島腫瘍で最も多い。高インスリン血症により意識障害、昏睡を伴う低血糖発作を示す。
                 大部分は良性だが、悪性も存在する。
          2.gastrinoma(Zollinger-Elison症候群)…胃液の高酸、高ガストリン血症を示す。多くは悪性。
          3.VIPoma…水溶性下痢、低カリウム血症、胃の無酸いわゆるWDHA症候群をきたす。半数は悪性。異所性。
          ※VIP(vasoactive intestinal polypeptide)…小腸からの水と電解質を分泌を促進、胃液分泌の抑制などの作用をもつ。
      ◎多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)
          …特に多発性内分泌腫瘍症T型(MEN type T)はWermer症候群といい下垂体腫瘍、副甲状腺機能亢進症、
           膵内分泌腫瘍を合併する疾患である。