神7のストーリーを作ろうの会part9

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1ユーは名無しネ
終わることのない 神7 Story
2ユーは名無しネ:2014/02/18(火) 23:59:29.16 0
作者さん続き待ってます
3ユーは名無しネ:2014/02/19(水) 01:16:28.49 0
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4ユーは名無しネ:2014/02/19(水) 20:58:16.15 0
水曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第十一話

「これは物置部屋か何かか?」
部屋に入るなり、羽生田が顔をしかめた。
「うわぁなんか昭和の匂いがするよぉ。ブラウン管のテレビの実物なんて初めて見たよぉ。ねぇ栗ちゃん?」
「ギャハハハハハ!!倉庫かなんかじゃね?」
中村と栗田が埃の被ったブラウン管テレビを珍しがっている横では谷村が「神田川」を口ずさんでいた。余計に辛気臭さが増す。
「おい!!泊まりの楽しみっつったら皆で有料放送観ながらエロ談義だろ!!これ有料放送観れんのかよ!?」
神宮寺にとって重要なのは部屋のボロさよりも何よりも有料放送が観れるかどうかであった。
「観れなさそう…どこにもカードの挿し込み口もないから…」
何故か有料放送視聴の仕組みを知っている岩橋がそう告げると神宮寺は暴れた。
「ごほ…神宮寺くんやめてよ埃が舞うよ…窓開けよう」
高橋が部屋の埃に耐えかねて窓を開けるとそこに広がった風景は…
「うわーこりゃ見事な墓地だなー」
倉本がポテトチップス片手に呟いた。
そう、旅館の裏は墓地だった。しかも秋なのに周りは枯れ木ばかりで不気味さを更に際立たせていた。
「そーいやこの旅館って「出る」ってことで有名らしいね。だから格安なんだよね?おに…森田先生?」
同じくカラムーチョ片手に中村(海)が問いかけると美勇人は何故か目を輝かせて答えた。
「大丈夫だみんな!おに…先生が守ってやるよ!ああ、自分のクラスだけじゃなく他にもこんな可愛い男の子達を守ってあげられるなんて俺は幸せ者…」
悦に浸る美勇人をよそに岸くんはなんとかして部屋を変えてもらえないか室内電話で教頭に交渉した。が、無情な答えが返ってくる。
「何言ってんの。7組が問題起こさないようにそこにわざわざ配置したんだから。岸先生よろしく頼むよ」
「そんな…」
窓から一陣の風が吹き抜ける。生温かくて湿り気を帯びたそれに、不吉な予感だけがまとわりつき岸くんは涙目になる。
出ませんように…
岸くんの願いといえばただ一つ、それだけであった。そんなことはおかまいなしに7組と寅菱学園の5人ははしゃぎまわっていた。そしてそれを眩しい目で見守る同期のイケメン少年愛好者…
気が遠くなりながら夕食会場に向かった。


.
5ユーは名無しネ:2014/02/19(水) 21:00:34.80 0
「1番!神宮寺勇太、「抱いてセニョリータ」いっきまーす!!!」
夕食会場の大広間では案の定、7組は大騒ぎだった。しかし端っこに配置されているためさして御咎めもない。時たま教頭の苦い顔が目に入るだけだった。
「おに…森田先生、飲んで飲んで」
「おにい…森田先生、パセリ好きだったよな?あげる」
「おに…森田先生、この後自由時間?」
またしても隣に配置されていた寅菱学園五人組は美勇人にお酌をしたり好物の交換をしたりと和気藹藹と楽しんでいる。相当慕われているようでなんだかうらやましかった。
でも俺も運動会やピンチの救出なんかで7組と絆も深まってきているし…みんなだって少しは俺のこと…と期待しているとぽんぽんと肩を叩かれる。
「岸ぃこれあげるぅ。これもぉ」
中村が岸くんのお膳にトマトとうにを入れた。よしきた、岸くんは感涙に咽ぶ。こうして生徒に慕われることこそ教師の醍醐味…鼻をすすった。
「お、ありがとう中村。じゃあ俺もこれあげる」
岸くんが中村の好物である卵焼きを渡そうとするとしかしその箸が払われる。
「てめーの唾液がついた卵焼きをれいあに食わそうとかセクハラにも程があんぞコラ!!このセクハラ大魔王」
「やだぁ岸ぃそんなのいらないよぉ谷村にでもやっといてぇトマトもうにも僕嫌いだからちゃんと処理しといてねぇ」
「…」
いや違う。これは中村特有のツンデレであって決して残飯処理じゃない。決して…
「谷村、はい…」
卵焼きを仕方なく谷村にあげようとすると彼は顔をしかめた。
「俺、卵嫌いなんだけど…」
「…」
沈黙。
暗い。暗すぎる。谷村は好き嫌いが多いからそこかしこによけられたにんじんやら大根やらがあった。自我修復を繰り返しながら食事をしている。なんだか食欲がそがれるから見ない方がいいかもしれない。
6ユーは名無しネ:2014/02/19(水) 21:02:25.01 0
「岸くんお疲れ。まあ飲みたまえ」
珍しく羽生田が岸くんのグラスに飲み物を注いだ。よしきた、こいつも普段は天から人を見下したような上から目線のもの言いだがどこかで慕ってくれているのだ。最近は教室をセレブ改造しなくなったしこれはこれで可愛いところが…
「ごふっ!!!」
液体を一口入れて、そのあまりに強烈な味に岸くんは思わず吹いた。なんじゃこりゃ。すっぱいのか甘いのか辛いのかしょっぱいのかわかりゃしない。一体何が入っているというのだ…?
「わはははははは。どうだ羽生田挙武特製ドリンクの味は?天にも昇る心地だろう?」
「ギャハハハハハ!!すっげー色!!そんなんよく口にするよな!?俺だったらぜってー飲まねえ!!」
「やだぁ岸ぃお行儀悪いよぉ口から出し過ぎぃ」
違う。これは愛嬌だ…。羽生田はこう見えてお茶目だからその冗談の延長で…あ、口が痛い。ダメこれ…これはアカンやつ…キシ君はあまりのまずさに意識が遠くなる。
「岸くん先生大丈夫!?お水お水!」
誰かが親切に水を持ってきてくれた。普通の水だ。ようやく意識が戻ってきて岸くんはその親切な生徒に涙ながらにお礼を述べる。
「ありがと…命の恩人様…」
ぎゅっと手を握るとしかしその手が触るのが痛いくらいに高温になっていく。
「そ…そそそそそそそそそそそんな、生徒として当たり前のことをしただけで、そそそそそそそそんな風に手なんか握られたら…ああああああああああああああああああああああ」
ぼんやりと開けて行く視界に、ゆで蛸のように真っ赤になった高橋が映った。
「ひゅーひゅー颯良かったなー!今夜岸くんとランデブーってか?」
「ギャハハハハハ!!颯、なんなら俺とれいあが実践して教えてやっか?おしべとおしべのアレをよ!!」
神宮寺と栗田が悪ノリで颯をはやしたてると彼の頭から湯気が立ち上った。
「ちょっと何言ってんの神宮寺くんに栗田くん、冗談やめてよ!あああああああああああああ」
岸くんがやばい、と思った時にはもう遅かった。すでに岩橋と中村と羽生田と谷村は非難済みであり、倉本もお膳を持ってそれに倣っていた。
「高橋、やめ…」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ああああああああダメえええええええここで超高速ヘッドスピンはダメええええええええええええええええ」
高橋は米国のハリケーンも真っ青の破壊力を伴った超高速ヘッドスピンを始めた。宴会場は一時騒然となり、当然の如く岸くんは教頭から大目玉をくらう。説教に疲れて部屋に戻るともう皆大浴場に行っていた。


つづく
7ユーは名無しネ:2014/02/20(木) 00:41:18.86 0
更新きた!作者さん乙です!
ここから寅菱学園とどう絡んでいくのか…
続きも楽しみにしてます
8ユーは名無しネ:2014/02/23(日) 19:14:15.27 0
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第十二話

部屋は悲惨だが大浴場はそれなりに広い。もっとも7組は他のクラスが入った後にまわされ順番的には最後だった。それでも大はしゃぎである。
「おい!誰が一番長く潜れるか潜水競争やろうぜ!ビリはみんなにジュース奢りな!」
神宮寺と栗田と羽生田と倉本が潜水競争をする横では高橋が不安にうなだれていた。
「どうしよう…俺のせいで岸くん先生が怒られてしまった…」
「気にすることないよぉ颯。岸が怒られるのはお約束じゃん。そうじゃなかったらつまんないしぃ」
中村がタオルを頭に乗せながら慰めるが、それでも高橋の表情は冴えない。
「岸くん先生に嫌われたら…どうしよう…」
「颯ほんとに岸のこと好きなんだねぇ。どこがいいのぉ?まぁこないだ助けてくれた時はちょっとかっこいいかもと思ったけどぉ相変わらずのあの感じでしょぉ?やっぱぁ男は栗ちゃんみたいに天真爛漫で明るくつっぱしってくれる子じゃないとぉ」
全裸でぎゃはぎゃは風呂の中を走りまわる栗田を眩しそうに見ながら中村がそう呟くと、高橋は入浴してまだ間もないのに顔を赤くして湯船に沈む。
「ど、どこがいいのっていうか…岸くん先生は俺の中での理想そのものだから…。優しいしかっこいいし不憫だしすぐ汗かくし真面目に見えて適当すぎるところがあるし舞台上でありえないミラクルミス犯すし…って何言ってんだろ俺…」
高橋と中村がガールズトークを繰り広げる横では谷村がのぼせてぐったりしていた。岩橋はマイペースにシャンプーをしている。
「これ女子風呂覗けんじゃね?ほら、ここんとこの子窓からさ」
神宮寺が何かを見つけてそう呼びかける。皆呆れながらもそれに付き合ってやると…
「…なんじゃありゃ?」
暗闇の中にぼんやりと浮かび上がるものがそこにはあった。


.
9ユーは名無しネ:2014/02/23(日) 19:15:06.50 0
「岸くん、さっきは大変だったな。風呂で疲れ落とそうよ」
教師の入浴は生徒の後である。岸くんは美勇人と共に大浴場に向かった。その途中でばたばたと通り過ぎる集団がいた。
「あれ?いまの可愛い子たち岸くんのクラスの子たちじゃなかった?」
「…そうだけど…どうしたんだろ?あいつら…」
7組の連中が血相をかえて通り過ぎて行く。てっきり大浴場で大騒ぎしているかと思ったら…
まあいいや、騒ぎを起こさないでいてくれるならその方が…と思い直して大浴場に入る。湯船に浸かっていると美勇人のクラスの5人組が入ってくる。
「あれ?お前ら風呂まだだったの?」
「卓球やって腕相撲対決してたら時間過ぎててさ。おにい…先生も俺と腕相撲やる?」
ゴリラのような腕を見せながら閑也が冗談めかすと梶山がやめとけやめとけ、と止めに入る。岸くんは彼がどこをどう見ても30代にしか見えない。年下だなんて信じられない。
「おに…先生、背中流すよ」
「お、ありがとう顕嵐。お前は可愛いなああああ」
涙ぐみながら美勇人は顕嵐に背中を流してもらっていた。生徒に背中を流してもらう…なんだかうらやましい。そんな思いと共にふと横を見やると中村(海人)が湯船に浸かりながらアニメソングを歌ってアイスを食べていた。
同じ中村でもうちのとはえらい違いだなぁ…と思いながら見ていると、誰かが何かを見つけたらしく声をあげた。
10ユーは名無しネ:2014/02/23(日) 19:15:40.79 0
「宮近、どしたの?」
美勇人が声をかけると子窓のようなものを開けて見ていた(何故そんなことをしていたのか分からないが)宮近が青白い顔を更に青白くさせて指をさしていた。
「なになに?なんかあるの?」
興味本位で岸くんがその子窓を除くと暗闇の中に薄ぼんやりと何かが浮かびあがっている。岸くんは己の視力の良さをこの時ばかりは呪わずにいられなかった。
これって所謂一つのつまるところ率直に言うところ「幽霊」ってヤツですか…?
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
認識すると同時に全裸で大浴場を飛び出していた。丁度居合わせた教頭にまた怒られるがそれでも岸くんはまっしぐらに部屋に戻った。
部屋に戻った岸くんを待っていたのは季節外れの大怪談大会だった。真っ暗な室内の真ん中に蝋燭の火だけが揺らめき、そこに青白い顔が…
「それでねぇ…その和尚さんが振り向いたらぁ…和尚さんの顔がぁノッペラボーでぇ…」
「ぎぃやぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
岸くんが腰を抜かして大絶叫すると連鎖反応で皆もびびりだす。幽霊だと思ったのは怪談を話す中村だった。あまりにも色が白いから見間違えてしまった。
11ユーは名無しネ:2014/02/23(日) 19:16:26.98 0
「失礼しちゃうよぉ。人のこと幽霊だなんてぇ。幽霊を引き寄せてそうとかって「霊感が強そうJr」に名前挙げるとか失礼にもほどがあるでしょぉ」中村は頬を膨らませた
「てめぇびびらすな岸!!心臓飛び出すかと思っただろ!!」栗田が蹴ってくる
「岸くんタチわりーよ!!いっちばん怖いとこで大声出すとかよ!」神宮寺が肩パンしてくる
「ひどい…あんな大きな声でびびらすなんてこれはいじめだ…心臓に悪いよ…」岩橋が涙目で非難してくる
「南無阿弥陀仏…」谷村は自我修復しながらお経を唱えている。
「岸くん先生にびびらされるなんて…幸せ…」高橋は何故か恍惚としている。
「お前らびびりすぎ。俺はお化けより飢えの方が怖いね」
皆が皆びびる中、倉本だけはお菓子片手に余裕だった。そして悪ふざけBABYこと羽生田が何かを思いついたらしくぽん、と手を叩いた。
「そうだ、せっかく墓地が裏にある絶好のロケーションだから肝試しなんかはどうだろう?修学旅行の思い出作りに」
岸くんは大反対したがあれよあれよという間に何故か風呂あがりの寅菱学園の連中も交えて裏の墓地で肝試し大会が行われることになった。


つづく
12ユーは名無しネ:2014/03/01(土) 17:31:41.97 0
あげ
13ユーは名無しネ:2014/03/02(日) 20:04:45.25 O
問題点

宗教は羽生の自由ですが薬事法違反のカルト商法は問題です

【血糖値が〜糖尿病にも!】【神のテープ・神の声】【新たな医療】【念を込めたアイテム】

チャクラ仙人のブログに書かれていることは某ゴーストライター詐欺師と同じ主張

そんなチャクラ仙人に【相棒】と書かれている羽生

税金でチャクラ仙人をソチ入りさせて閉会式も一緒に行動

羽生の父親も手伝ったと書かれているチャクラカード…【共犯者】です
14ユーは名無しネ:2014/03/02(日) 20:29:28.09 0
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第十三話

旅館の裏の墓地は世にも恐ろしいロケーションだった。
真っ暗闇の中ににょきにょきそびえる墓石と枯れ木のコラボレーションはその不気味さをよりお互い引き立てている。こんなところに何故旅館を建設したのかという疑問はともかくそのおあつらえ向きのおどろおどろしいムードに岸くんは戦慄した。
「皆、消灯時間もあるし問題起こしたら停学だし、やっぱりそろそろ寝た方が…」
しかし7組は岸くんの半分びびり、半分忠告を全く聞き入れずくじ引きを始めた。
駄目だこいつら…岸くんは美勇人に援護射撃を求めた。
「ねえ美勇人くん、やっぱりこういうのって何かあったら後々問題になると思うしどうにかしてやめさせた方が…」
「可愛い男の子達が恐怖に震える…それをお兄ちゃんが守ってやる…こんな素晴らしいシチュエーションはない…!」
悦に浸る美勇人に、駄目だこりゃ、と岸くんは諦めた。それならそれで現場監督としてゴール地点でずっと待ってようと思ったのだが…
「岸くんは颯とペアな。おめでとー」
神宮寺からくじを渡され、え?と岸くんは目が点になる。
「なんで俺もやるの?俺は教師…」
「あっちの先生もやるっつってんだから岸もやれ!ギャハハハハハハ!!」
栗田に尻を蹴られ、あれよあれよという間に肝試しは始まってしまった。ルールは30分かかる墓地を一周。5分間隔でスタートし、タイムが一番早かったり前のチームに追いついてしまうとヘタレ決定として罰ゲームの対象になる、と告げられスタートした。


.
15ユーは名無しネ:2014/03/02(日) 20:30:09.01 0
第一組 岩橋&閑也ペア

「僕は嫌だって言ったのに…これはいじめだ…」
岩橋はすでに泣きそうになっていた。怖がりびびりヘタレ…どう言われてもいいから逃げられるものなら逃げたい。恐怖心は腹痛を招く。早くもしくしく痛みだした。
「おい大丈夫かお前。顔色悪いぞ」
懐中電灯で照らされ、岩橋は目を細める。しかも人見知りなのに知らない人と一緒になんてなんたる拷問…
「こんなとこなんも出てきゃしねえよ。そんなビビるな」
がしっと逞しい腕が伸びてくる。岩橋は顔をあげた。
「さっさと行こうぜ。もっとも早すぎると罰ゲームだからほどほどにな」
「うん。ありがとう…」
なんだか頼もしくて岩橋は安心する。そうだ、彼の言う通りこんなところにオバケだのなんだの出てきやしない。ただちょっと暗くて不気味なだけだ。そう、何も問題はない。問題は…
そこでガサガサ!!と大きな音がする。風で何かが擦れ合ったのだろうが、岩橋は反射的にびびって大声をあげた。
「うわあああ!!!!」
閑也にしがみついてしまったものだから、彼はバランスを崩してその際に懐中電灯を落としてしまう。それはころころと転がって茂みの向こうに落ちて行ってしまった。
「おいおいどうすんだよ灯りなしじゃキツイぞ」
うんざりしたような閑也の声と共に、真っ暗闇の中で岩橋の意識は深い淵に落ちて行った。

.
16ユーは名無しネ:2014/03/02(日) 20:30:56.34 0
第二組 嶺亜&栗田&顕嵐トリオ

「両手に王子様とか僕幸せだよぉ」
中村はごきげんだった。右には栗田、左には顕嵐とイケメン二人に囲まれてうきうきピクニック気分である。墓石はカルストに見えなくもないし、枯れ木には花が咲いているように思え、カラスの鳴き声も小鳥のさえずりに聞こえるようだった。
オバケが出てきたらどっちに抱きつけばいいだろう…頭はそんな悩みでいっぱいだ。
「おいおめーくっつきすぎじゃね?ちょっと離れろ」
栗田は中村の肩を抱き寄せて顕嵐を牽制した。
「あ、ごめん」
顕嵐はスマートな動きで一歩離れる。ああ、紳士イケメンと自然体イケメンのどっちを選べばいいのぉ…?れあくりはジャスティスだしぃフォーエヴァーだけどぉれあらんも最近キてるよぉ…と中村が脳内にお花畑を作っていると懐中電灯であたりを照らした顕嵐の顔が青ざめた。
「どぉしたのぉ顕嵐くん?もしかしてオバケぇ?」
中村が問うと、顕嵐は首を横に振って少し震える声でこう囁いた。
「ここって意外と高いんだね…こっちが崖になってて…」
言われてみれば道の脇は急な崖になっていてかなりの落差だった。落ちたらひとたまりもないよぉ、と思っていると顕嵐がこう告白する。
「実は高所恐怖症で…オバケより高いところが苦手なぐらいで…」
「ギャハハハハ!俺は高いとこ大好きだぜ!!」
栗田が得意げに叫ぶ。中村はうんうんと頷きながら
「そうだよねぇ栗ちゃんと煙は高いところ好きだもんねぇ頼もしいよぉ」
と握った手に力をこめる。頼もしい栗ちゃんも素敵だけどイケメンが怯えてるところもまたいいよぉ…とうっとりしながら中村はもう一方の手で顕嵐の手を握った。
「怖い時はぁこうして手を握れば怖くないってJJLっていう番組で見たよぉ」
三人で手を繋ぎながらスキップ気分で中村は栗田と顕嵐とともに先を行くと、少し行ったところで見覚えのある人物が見えてくる
「あれぇ?」
そいつは全速力で逆走して通り過ぎて行った。

.
17ユーは名無しネ:2014/03/02(日) 20:31:53.56 0
第三組 倉本&中村(海人)ペア

「実際さー、罰ゲームとかよりご褒美の方がやる気出るよな」
たけのこの里を口に放り込んでボリボリやりながら倉本はぼやく。
「ほんとだよねー。優勝したら回転寿司食べ放題とかにしてくれたら優勝する自信あるんだけど」
きのこの山を次々にたいらげながら海人も同意した。
「けどよー、俺らってそれぞれのクラスで大食いキャラとして定着してんじゃん?でも最近俺思うんだよね。それだけっつうのも限界あるかなって。縦に伸び出してそんなにぽっちゃりでもなくなってきたしよ」
倉本が胸中を曝け出しながらじゃがりこチーズ味をかじると海人はうんうんと頷きながらカントリーマァムを次々に開ける。
「まあねー。俺なんかはほら、その他にもアニメオタクキャラができつつあるんだけどさ、正直大食いもアニメオタクもアイドルにとってはマイナスでしかないと最近思い始めてきてね。
顕嵐なんかは紳士イケメンとして確立してるし、梶山なんかは開き直ってオッサンキャラ貫いてるけどね」
「うちもさー、腹痛キャラとかなにかってえとすぐ回りだす担任ラブキャラとか乙女ドSキャラとかアホキャラとかエロキャラとかセレブキャラとかネガティブキャラとかでけっこう個性激しいんだよね。大食いだけじゃ埋没しちまうから悩みどころなんだよな」
「そっち個性強いっていうかある意味芸術だもんね。俺ら5人とはいえまだまだ模索中でねー。この長身を活かしたキャラ作りってないもんかなー」
「色々大変だよなー。大食いもそんな楽じゃねーしよー」
「だよねー。あ、期間限定のポテトチップスしあわせバター味あるけど食べる?お近づきの印に」
「まじかよそんなんあるの?うみんちゅお前ってやっぱいい奴だなー。今度俺の漫画コレクション貸してやるよ」
すっかり友情が深まった倉本と海人の前に突如として人影が踊り出る。二人は驚いてポテトチップスしあわせバター味を落としかけた。
「ちょっとおいこらシャレんなんねーぞしあわせバターがおじゃんになったらどうしてくれんだよ!!」
倉本が激怒しながらその人物に怒鳴ると海人がしあわせバターを死守しつつ首を傾げた。
「あれ?閑也じゃん。何やってんのお前一組目でしょ?」
不思議がる倉本と海人だが、閑也はただぜえぜえと息を切らしてこう呟くのみであった。
「デーモンが…デーモンが…」

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18ユーは名無しネ:2014/03/02(日) 20:32:28.65 0
第四組 神宮寺&宮近ペア

「やっべーなこの雰囲気…怪談モノとか今度見てみるのもいいかもな…これが終わったら早速検索だ」
神宮寺は程良い恐怖心を興奮に置換して心拍数を上げている。チャラ男キャラだが意外と小心者…そのギャップが自分でも魅力だと思っている。
「なになに怪談モノって。そんなんあるの?教えてよ!」
興味津々で宮近がノってくる。思春期男子そのもののノリに神宮寺のテンションも上がった。
「それでよ、さっき女子風呂覗けんじゃね?と思って窓の外見たらよ暗闇にボーっとなんかが浮かびあがって…」
「あ、それ俺も見た!やっぱ女子風呂覗きは定番だしな。ちょうど墓地の方角だったよな」
「幽霊でもさー色っぽくて巨乳の幽霊だったら大歓迎なんだけどな。初体験が幽霊とかちょっと面白くね?そーいうAVあんのかな?」
Y談にお花畑を作りながらどしどし進むと、ちょうど墓地の真ん中あたりにぼうっと灯りのようなものが浮かび上がっているのが見えた。
「おい宮近…なんだありゃ?」
「さあ…美人の幽霊かな?」
二人は唾を飲む。怖い。が、美人の幽霊なら見てみたい。恐怖心と好奇心の狭間で揺れた。
「宮近…お前確かめてこいよ。モノマネ得意だろ?幽霊にもうけるかもしれんぞ」
「神宮寺こそ…チーッス!ってチャラさ全開で行けば幽霊もフレンドリーになんじゃね?」
「いやそこは宮近、女優と熱愛報道されたお前が行けよ」
「その傷ほじくり返すのやめてくれる?ていうか初対面の設定だし世界観無茶苦茶になるじゃん」
らちがあかず、じゃんけんで決めることにした。だが置いて行かれたらそれはそれで怖いので結局は二人でそこまで向かう。だが…
「フフ…フフフ…」
背後から不気味な笑い声が響いた。振り返ってライトをあてたが誰もいない。
「おい宮近…俺の言いたいこと分かるな?」
「おう神宮寺…今日出会ったばかりだけど俺達テレパシー使えんじゃねってぐらいに以心伝心だぜ今ばかりは」
「だったら話は早い…いいな、せーので行くぞ」
「おう。せーの!」
神宮寺と宮近はダッシュで逃げた。

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19ユーは名無しネ:2014/03/02(日) 20:33:11.62 0
第五組 羽生田&梶山ペア

「このいかにもなシチュエーション…燃えてきたぞ…フフ…」
羽生田は血の騒ぎを抑えつつ愛用のモデルガンを撫でた。悪ふざけ大好き、ハリウッド映画大好き、普段はセレブに収まっているがこういう時に眠っていた血が騒ぐのである。
その羽生田を隣で若干ヒきながら梶山は見ていた。
「そんなもん持ってきていいのか?修学旅行だろ」
「フフ…先生は黙っていてくれ。他校なのだから口出し無用」
「誰が先生だ!俺はれっきとした生徒だ!高校一年生だ!」
梶山が主張すると羽生田は目を丸めた。
「なんと…こんな老けた高校生がいるのか?うちの高橋や谷村も充分老けているがそれにしても半端ないな。一体どういう人生を歩んできたら10数年で30代の貫録が身に付くんだ?」
「自分が比較的年相応だからって言いたいこと言いやがって…寅菱学園のワイルド梶山こと梶山朝日とは俺のことだ。ようく覚えて…うわち!!」
梶山の頬の横を物凄い勢いで放たれた弾丸がかすめる。それは羽生田のモデルガンから放たれていた。
「何すんだ!危ないだろうが!!」
「すまんな。近くに気配を感じたものだから」
梶山は頬に違和感を感じて触ると薄く血が滲んでいるのを認識して背筋が寒くなる。
「それ本当にモデルガンか?充分殺傷能力あるんじゃないか?合法なのか?」
「さあな…俺が「とりあえずカッコイイモデルガンを頼む」と言ったらこれが送られてきた。使用するのは今回が初めてだが」
羽生田はモデルガンを舐めた。すでに目がイっている。こいつは何をしでかすか分からない。
「お前一体どこの何者だ!…まあいい。先を進もう。まったく…こんなことならあの暗い奴と一緒の方がまだましだったぞくそ…」
ぶつくさ言いながら進むその最中も羽生田はモデルガンをぶっぱなしている。その彼がぴたっと足を止めた。
「どうした?」
「人の気配が…あっちだ!!」
「やめろ俺に当たる!!こんなとこで乱射すんな!!おい聞いてんのか!!人の気配がするんなら尚更ぶっぱなしちゃいかんだろうが!!」
梶山の叫びも虚しく、暗闇にモデルガンの乱射音だけが響き渡ったのであった。


つづく
20ユーは名無しネ:2014/03/03(月) 06:50:14.54 I
暗いやつw
さては谷茶浜…
21ユーは名無しネ:2014/03/05(水) 23:10:24.17 0
作者さん乙でっす
うみんちゅ倉本コンビはもはや鉄板ww
22ユーは名無しネ:2014/03/06(木) 19:18:05.05 I
作者さん乙です!

梶山 羽生田コンビとは珍しいw
ホント倉本うみんちゅコンビ鉄板だわw
23ユーは名無しネ:2014/03/09(日) 19:24:15.60 0
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第十四話

最終組 谷村&美勇人&颯&岸くん
岸くんは美勇人に頼みこんで4人で行かせてもらうことにした。どうにもこうにもこのロケーションは怖すぎる。とんだ時間外労働である。
「可愛い男の子を守ることができるなんて教師になって本当に幸せ…」
目を輝かせて美勇人は率先して最前線を歩いてくれた。頼もしい限りである。
「あの…岸くん先生…」
隣で懐中電灯を持つ高橋がおずおずと切り出す。その声は萎んでいた。
「何?どしたの?てかそんな小声で話さないでよ益々怖くなる…」
「さっきはごめんなさい…俺のせいで先生が怒られたって…」
しおらしいその態度に岸くんはなんだか忘れていた教師魂が蘇る。そうだ、俺は教師だ。肝試しでびびって怖がっている場合じゃない。こんな時こそ担任らしくあるべきだ。
「そんな気にすんなって!俺が怒られるのは毎度のことだしそうじゃないとこの話つまらないしお約束みたいなもんだからさ!ドンマイドンマイ!」
「岸くん先生…」
高橋は感激で目を潤ませる。彼の中でまた岸くんが神格化していく。懐中電灯を持つその手がぶるぶる震えたかと思うと美勇人が「しっ」と人差し指を立てた。
「これは…閑也の悲鳴…!可愛い教え子のピンチ!待ってろ閑也ああああああああああああああお兄ちゃんが助けてやるからなあああああああああ!!!!!!!!!!!」
何かを察知した美勇人は墓場の中を突っ切って行ってしまった。


.
24ユーは名無しネ:2014/03/09(日) 19:25:22.99 0
「…」
高橋は動揺した。こんな暗闇で岸くん先生と二人きり…吊り橋効果で二人の間には教師と生徒に芽生えてはならない感情が沸き上がってしまうのでは…?そんな…まだ心の準備が…
「俺もいるんだけど…」
背後の暗闇からぼそっと声がした。それは谷村だったが今高橋の脳内には彼はもう闇と同化してしまっている。
「あ、あ、あの…岸くん先生…」
何か話題、話題…沈黙になると変なムードになってしまう。ああでもそんなムードになっちゃったらもうこれはイケナイことになってしまう。
落ち着け颯。落ち着くんだこんな時はメロンパンのことでも考えよう。そしたら二人きりというこの極限状態にも耐えうるのではないか…
「だから俺もいるってば…」
また背後の闇が何かを呟いている。高橋はそれをシャットアウトした。闇は溜息をついた。
「ん?何?」
「あの…えっと…あ、明日の自由行動でど、どこを回ったらいいかな?京都って名所だらけでどこに行っていいか分かんなくて…」
「う〜ん…俺も詳しくないからなんとも言えないけど清水寺とか三十三間堂とかそういう有名なところかな?」
「そ、そうですか…清水の舞台からヘッドスピンして飛び降りたらど、どうなるかな…?」
ああ、もう心臓が限界だ…高橋は喘いだ。こんな状況で平静を装えっていう方が無理がある。いっそのことオバケでも出てくれた方がいいかも…。ああ、でもそうしたら岸くん先生に抱きついてしまって更に変な雰囲気になるんじゃなかろうか、どうしようか…
高橋の脳内がオーバーヒートしかけているとどこかで銃声のようなものが鳴り響いた。
「うわああああああああああ!!!!何今の音!?なんなのなんなの!?幽霊?オバケ!?うわああああああああああああああああああああ」
25ユーは名無しネ:2014/03/09(日) 19:26:51.66 0
びびって取り乱す岸くんの可愛さと幼稚さにまた高橋が胸をきゅんとさせていると突然墓場の中から人影が飛び出す。その人影は岸くんに抱きついた。
「はああああああ岸くん先生のピンチ!!ていうかうらやましい!!岸くん先生から離れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
逆上した高橋は高速ヘッドスピンを始めた。
「ちょ、待て…!!おい颯、俺だ、神宮寺だっつってんだろおい!!」
「神宮寺とりあえず俺から離れてえええええええハリケーンが来るうううううううううう!!!」
岸くんが必死に高橋のヘッドスピンを止めようと抱きついてきた神宮寺を離そうとすると今度は後頭部に激痛が走った。
「いで!!なんだこれ…いで!痛い痛い!!」
細かい粒のようなものが次々に当たってきて岸くんは悶えた。
「オバケはどこだ…この羽生田挙武が成敗してくれるわ…フフフ…!!」
なんとそれはライフルを持った羽生田であった。すでに目がイっていて説得は困難な様子である。もう無理。岸くんは全力で逃げた。走って走って走りついた先には…
「…岩橋?」
ゆらりと誰かが立っているのが見える。背格好は岩橋のように見えたから恐る恐る近づいたがやはり彼である。ちょっと安心して気を抜いたのだが…
「え?」
いきなりがしっと両腕を掴まれたがそれが尋常な力ではなかった。野球経験者とはいえどちらかというと華奢な岩橋の腕力とは到底思えない剛力…岸くんは本能的に恐怖を覚えたがもう遅かった。
「岸くん…トントンしてあげるね…」
すでにその眼はいつもの頼りないウェットな岩橋のそれではなかった。瞳の奥が妖しく光っている。最早それは人間のものではなく悪魔そのものだった。
26ユーは名無しネ:2014/03/09(日) 19:27:45.87 0
「ちょ…岩橋…何する気!?先生に暴力はいけません!校内暴力断固反対!!」
「優しくしてあげるからね…」
そう囁くと岩橋は物凄い力で押し倒して来た。抵抗しようとしたがそれが全く無駄であるほど岩橋は超人的な力でねじ伏せる。
「うわああああああああああちょっと待て無理いいいいいいいいいいいやめてええええええええええ犯さないでええええええええええ結婚するまで綺麗な体でいたいのおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
思いがけない貞操の危機に岸くんは叫んだ。まさかこんな形で失うなんて…お父さんお母さんごめんなさい、優太は穢れた子になってしまいます…生まれ変われるなら貝になってもう全てを閉ざしてしまいたい…
白目を剥きながら意識を遠くに飛ばしていると、突然その力が止まった。
「…?」
薄眼を開けると微かな眩しい光が挿し込んでくる。
「何やってんのぉ岸ぃ」
「ギャハハハハハ!!おめーらこんなとこでプロレスか!?やめといた方がいーんじゃね!?」
中村と栗田が笑っている。彼らの照らす懐中電灯の光を浴びて岩橋はまるで憑物が落ちたかのようにきょとん、としていた。
助かった…俺の貞操は守られた…
安心感と疲労とで岸くんはその場に倒れ込んだ。


.
27ユーは名無しネ:2014/03/09(日) 19:28:56.03 0
「生きてるって素晴らしい…綺麗な体でいられるって素晴らしい…」
肝試しは結局誰が一番早くゴールしたのかがうやむやになり、羽生田がぶっ放したモデルガンの銃声音を聞きつけた旅館の従業員が警察に通報してしまったがために岸くん達は慌てて旅館に戻ることになった。
「可愛い教え子達が無事で何より。さ、寝よう。おに…先生が寝かしつけてあげるからね」
美勇人はご満悦の様子で消灯し始める。まだ起きていたい神宮寺と栗田はぶーたれたが岸くんも疲れ果てていたからそれに倣った。
「おやすみ…いい夢見られますように」
そう願って蒲団に入った時である。
「…フフ…フフフ…」
暗い部屋に不気味な声が谺する。岸くんはこの声に聞き覚えがあった。本能的に恐怖を感じて飛び起きるとそこには再び澱んだ目をした岩橋が…
「うわあああああああああ!!!灯りつけて!!!デーモンが来る!!!!!!!」
岸くんが叫ぶと誰かが素早く点灯させた。そうすると岩橋は通常モードに戻る。
「岩橋は暗くなると人格変わるからぁ…電気つけて寝た方がいいかもねぇ」
中村がそう言って栗田と一緒の布団に再び入って行った。
「マジシャレんなんねーよこの俺の腕力でも敵わないんだからさ」
閑也がぐちぐち言いながら蒲団を被る。彼もどうやら恐怖体験を味わったようである。
「なんなんだ皆…まるで人のことを腫れもののように…いじめだ…これはいじめだ…」
涙ぐみながら岩橋は蒲団に入る。全員が寝付いたのを確認して岸くんも蒲団を被った。
夢すら見ず泥のように眠り、翌朝は自由行動でこれまた7組の監視に追われた。そんな岸くんの修学旅行の唯一の収穫は嵐山のお土産屋さんで買った青い唐草模様の扇子である。
帰りの新幹線では汗だくの体をそれで扇ぎつつ東京駅で教頭に起こされるまで爆睡であった。


つづく
28ユーは名無しネ:2014/03/09(日) 20:51:30.02 I
作者さん乙です!!

谷茶浜のセリフ「俺もいるんだけど」
だけw
さすが不憫2ww
29ユーは名無しネ:2014/03/09(日) 21:44:08.03 0
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
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ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
30春休み直前スペシャル 岸家の人々2:2014/03/16(日) 19:09:19.04 0
第九話 その1

「受験票…筆記道具…腕時計…電車賃…連絡用携帯電話…参考書etc…よし、忘れ物はないな」
リビングで家族全員が輪になり、龍一の荷物チェックをする。挙武が一つ一つ確認して鞄に入れた。
「体調は?龍一」
岸くんが訊ねると龍一は頷き、大丈夫という意を示した。
「消化にいいものとぉ頭にいいものちゃんと詰めといたからぁ…ゆっくり噛んで食べるんだよぉ。今日だけはぁ全部龍一の好きなものしか入れてないからぁ」
嶺亜がそう言って弁当箱を手渡す。
「おい龍一!俺が究極のリラックスのおまじない教えてやるぜ!これさえやりゃあプレッシャーなんて消えてなくなっちまうぜ!俺も去年これで乗りきったからな!ギャハハハハハハ!!いいか、手の平にだな…」
恵が言いかけて勇太がツッコんだ。
「おい恵、まさか「人」っていう字を三回書いてそれ飲み込む、とかじゃねーだろうな?」
「なんでおめーが知ってんだよ俺の必勝法を!!」
「…龍一、このアホはとりあえず無視していいぜ。この勇太お兄様が疲れた時に元気が出る動画を…」
「おめーの動画は下半身が元気になるだけだろ!!んなもん受験会場で見たらつまみ出されんぞコラ!!」
恵と勇太がやりあうその横で郁がハムエッグをもぐもぐ食べながら冷静に時計を見る。
「もうそろそろ出た方がいいんじゃね?てかさー、何もわざわざ颯兄ちゃんが付いて行かなくてもタクシー呼んで行けばよくね?」
「いや、郁…龍一の運の悪さと不憫さを甘く見るな。渋滞に巻き込まれたり事故ったりするかもしれん。電車の方が確実だ」
挙武がきっぱりと断言すると皆がうんうんと頷いた。
「大丈夫だよ皆!龍一のことは俺に任せて!!ちゃんと責任持って受験会場まで送り届けるから!この日のためにちゃんと二人でD高まで行ったし道もちゃんと覚えてるし」
どん、と胸を叩いて颯は言い切った。頼もしい双子の兄の言葉に皆胸を熱くする。そして岸くんは今こそ父親の出番…とばかりに総括した・
「龍一、皆がついてる。だからお前は絶対受かるよ。大丈夫。俺達を信じて、自分を信じて当たって砕けろ!!」
拳を握ってそうしめくくったが恵に「砕けてどうすんだおめー縁起でもねーこと言うな!!」と蹴りを入れられた。岸くんは仕切り直す。
「いてて…今のは言葉のアヤで…。ちゃんと昨日嶺奈の遺影にも上手くいくよう手を合わせてきたからきっと天国でお前のママも見守ってくれてるよ。帰ったら大好きなプリン食べようぜ」
「ありがとうパパ…兄ちゃん達…颯、郁…がんばります…絶対合格するから」
龍一は固い意思を瞳に宿してそう宣言し、第一歩を踏み出した。
「あ」
ちょうどそこに郁が飲みほしたファンタオレンジのペットボトルがあり、見事に龍一はそれを踏んづけて滑って転んだ。
「…」
沈黙。
起き上がった龍一は涙目で高速自我修復に励む。出だしの第一歩からつまづき、不吉なことこの上なし。そこに庭に黒猫が迷い込んで叫んでいるのが見えた。続いてリビングの掛け時計が傾いて落ちてくる。
「…」
どんよりしたムードが漂う。龍一の放つ尋常ならざる負のオーラにたった今まで盛り上がっていた気分はどん底にまで落ち込もうとしていた。
「と、とにかく、龍一がんばれ!勝利の女神がお前に微笑んでいるぞ!ほら!嶺亜!!女神の微笑みで励まして!」
「龍一がんばってぇ。ヘマしたらおしおきだよぉ」
嶺亜はにっこり笑って言ったがこれもいつもの癖で余計に追い込むようなセリフが出てしまう。
「ああー!!そうこうしてる間にこんな時間!早く行かなきゃ龍一!行くよ!」
時計を見て颯が龍一の腕を引っ張る。慌てた龍一は玄関先でもすっ転んだ。それを皆が不安いっぱいに見守る。
「ところでよ、龍一の受験番号って何番だ?」
勇太がなんとなく訊ねると挙武がしばし考えた後こう答えた。
「確か339番…さんざん苦しむ…」
「…」
「こりゃ…ダメかもな」勇太が溜息をついた
「とりあえずダメだった時のことをもう一度考えとくか」挙武が頭を掻いた
「やっぱり龍一の負のオーラの前には僕達無力なのかもねぇ」嶺亜は指を唇に当てた
「残念会は焼き肉だな!」郁は肉屋のチラシを見始めた
「いや…龍一を信じよう。天国の嶺奈もきっと見守ってくれているはず…」
岸くんが亡き前妻を想いながら手を合わせると嶺亜がそれを横目で睨んでこう呟いた。
「パパぁ、ママはねぇ龍一のこと『あんな不憫で負け神しょった子他にいないよぉ』って断言してたからねぇ。ママなんかの力借りようとすると絶対不合格だよぉ」

.
31ユーは名無しネ:2014/03/16(日) 19:10:19.95 0
「お、今日はすき焼き?豪勢だね」
夕飯の支度をする嶺亜と郁に仕事帰りの岸くんが問いかける。
「そぉ。恵ちゃんがバイト先ですきやき用のお肉安くしてもらってきたしぃ勇太が八百屋のおばちゃんに気に入られてるからぁお野菜も安くわけてもらったんだよぉ」
「あとは俺が春休みの農場体験で卵をもらってきたからな!」
郁が得意げに胸を張る。そろそろできあがろうかというところに龍一と、彼を迎えに行った颯が帰ってきて家族全員で鍋を囲んだが…
「…ダメかもしれない…」
開口一番、この世の終わりのような顔で龍一はそう呟き、リビングは凍りついた。
「…国語の問題で、途中分からない問題があってそれを飛ばして回答してたつもりだったんだけど…どうも回答欄を一つずつ間違えたかもしれない…最初の方の問題だったからあとの問題全部解答欄違いで撥ねられる…」
「…」
皆の箸を持つ手がぴたりと止まる。郁でさえも、である。
「…やっぱり俺には負け神が憑いてるんだ…この先何やってもどうせ上手くいかないんだ…」
「そ、そんなことないだろ龍一!お前の勘違いかもしれないだろ。その解答欄を空けて他の問題解いたんなら何も問題は…」
岸くんが元気づけようとしたが龍一はうなだれて首を振った。
「…最後の問題を解答しようとしたら…一つ空いてるはずなのにすでに全部の欄が埋まってしまってて…そこでパニックになってしまってあとは自分がどうしたか覚えてないんだ…もうだめだ…」
「いや…でも、1教科だけだったら他で挽回…」
「それが1限で、あとの時間もどうやって問題を解いたか覚えてないんだ…頭が真っ白になって…」
沈黙が流れる。鍋のぐつぐつと煮える音だけが虚しくこだまし、すき焼きはすでに煮えすぎてグラグラになってしまっていた。その残骸を皆が無言で自動的に口に入れて夕食は終わった。
それから一週間、龍一は生ける屍となっていた。いつもの10倍増しの暗さで同部屋の颯はいたたまれず郁の部屋に寝泊まりするほど負のオーラがだだ漏れていたのである。
そして合格発表の日…
「龍一!何言ってんの!?龍一の合格発表なんだから自分で見に行かないと!」
颯が部屋のドアを叩きながらそうまくしたてたが龍一は蒲団を被ってそれに抵抗した。
「…嫌だ…どうせ落ちてるんだから誰でもいいからそれを確かめてきて…俺には耐えられない…」
「おいおめー何言ってんだよ!おめーの合格発表をなんで俺らが代わりに行かなきゃなんねーんだ甘ったれんな!」
蒲団の上から恵が蹴りを入れたがそれでも龍一は出て来ない。
「龍一、いいから出てこい!ここにお前好みの巨乳美女のグラビアがあるぞ!」
勇太がエロ本で釣ったがしかし全く反応はない。
「おい龍一!!辛いのは分かるがこの僕だって去年、不合格と言う事実を甘んじて受け入れたのだからお前にそれができないなんて言わさないぞ!
心配しなくても不合格だった時の対処法も全て考えてあるからそんなに気に病むことはないんだ!だから行け!」
挙武が自身の苦い体験を励ましの言葉に変えたがそれでも龍一は「嫌だ」の一点張りである。
「龍一ぃ…出て来ないとおしおきだよぉ…それでもいいのぉ…?」
嶺亜がドスをきかせた声で脅しをかけると龍一は一瞬顔を覗かせたがそれでも再び蒲団を被った。
「んじゃ俺が行ってきてやるよ」
末っ子の郁が、仕方がないといった様子でそれを申し出ると岸くんが蒲団の前に座ってこう諭した。
32ユーは名無しネ:2014/03/16(日) 19:11:44.00 0
「龍一、じゃあ皆で行こう。お前が辛くて一人じゃ耐えられないなら皆で見よう。例え不合格でも皆はお前を責めたりしないよ。それは分かってるだろ?」
「…」
「お前が颯のために公立一本に絞って受験するって言った時…お前が家族みんなのこと思ってそう決断してくれたその気持ちは高校に合格するよりもずっと大事なことなんだって俺は思ったよ。結果じゃなくて課程が大事なんだって。
だから合否がどうであれ俺達は受け入れるし、お前にもそうしてほしい。不合格だから自分はダメな奴だなんて絶対思わないでほしいんだ」
「パパ…」
しばしの沈黙の後、龍一は折れたが歩くのがやっとといったおぼつかない足取りでいつ風と共に吹き散って行くか分からないような状態であった。
そして合格発表会場を目前にした門の前に到着する。会場の方から喜びの声や叫び声、その他歓声が飛んでくる。それとは正反対に泣きながら門を出て行く親子連れもちらほら目にする。まさに合格発表の悲喜こもごもである。
「龍一、行こう」
岸くんが手招きしたが、龍一はうつむいて立ち尽くしていた。
「龍一」
もう一度岸くんは龍一を呼んで手を取った。それでも龍一は泣きそうな顔で歯を食いしばっている。
「龍一ぃ、仕方ないからぁ今日は龍一が食べたいもの作ってあげるからぁ…だから行くよぉ」
反対側の手を嶺亜が握った。
「しゃーねー、今日だけは許してやるぜ!!」恵がばしっと龍一の背中を叩く。
「俺も兄貴らしいとこちょっとは見せとくか。おい龍一、今夜はお前の好きなジャンルのAV見放題のオールナイしてやる!帰りにツタヤに寄って帰ろうぜ!」勇太がぴしっと龍一の額を弾く
「まあ今日だけは僕のコレクションのモデルガンをいじらせてやってもいい。今日だけな」挙武がぺん、と龍一のお尻を叩く。
「龍一、帰りに俺のイチオシのメロンパン買って帰ろう!だから行こうよ!!」颯が前方を指差す
「どーしても嫌なら俺が見て来てやるからさ、龍一兄ちゃん」郁が前を歩く
「…」
兄弟達と岸くんに背中を押されて、龍一はようやく門をくぐる。そして震える足で合格発表の掲示板の前まで歩いた。人だかりの中を掻きわけて、受験票を手に龍一は自分の番号を探す。その後ろ姿を岸家一同が固唾を飲んで見守った。
ややあって、龍一が振り向く。その眼は大きく見開かれ、唇はわなないていた。
「龍一?どうだった!?」
岸くんが訊ねると龍一は震える声で
「…あった…」
と掠れた声で呟いた。

.
33ユーは名無しネ:2014/03/16(日) 19:13:21.64 0
「本当だ…339番。確かにある。合格だ。やったぞ龍一!!」
龍一の合格を家族全員がこの目で確かめ、周りがどん引きするくらい大騒ぎで胴上げをしてひとしきり騒いだその後は岸家で合格祝いパーティーが催された。どんちゃん騒ぎで夜を明かし、岸家は颯と龍一揃ってサクラが咲いた。そして入学式を迎える。
「良かったねぇパパぁ。龍一と颯の入学式が午前と午後で分かれててぇ。颯は絶対入学式に来てほしいって言ってたしぃ」
岸くんのネクタイを正してあげながら嶺亜は微笑む。岸くんは自分自身もちょっと前まで高校生だったのに今や保護者として入学式に参列だなんて不思議な感慨に浸った。
「パパありがとう来てくれて!俺は1年1組になったよ!あとで校門の桜の木の下で一緒に写真撮ってよ」
颯は入学式で大はしゃぎだった。陸上部の部室も一緒に見に行って噂のトラビスなんとかの先輩達も見て来た。そして午後は龍一の入学式に向かう。
さすがに超進学校なだけあって周りの保護者もどことなく上品な感じである。岸くんはその中で浮きまくっているのを痛いほどに感じる。保護者も楽ではない。

人生で初めて勝ち取った合格に龍一は少しポジティブになっているようで、入学式が終わって家に帰るとアルバイト雑誌をリビングで読み始めた。それを恵がからかう。
「ギャハハハハ!龍一無理すんじゃねーぞ。おめーまずは高校で友達作んねーと!」
「そうだよぉ龍一ぃ。中学の時だって凛と仲良くなるまでほとんどクラスの子としゃべってなかったんだからぁ。それにぃ進学校なんだから勉強だって大変だしねぇ」
嶺亜が夕飯の支度をしながらそれに加わる。龍一は苦い顔をしたが真剣にページをめくっている。
岸くんとしては恵と嶺亜の言う通り、まずは友達を作って高校生活を楽しんでほしかったが家族のために、自分を変えるためにバイトを始めたいという龍一の気持ちは尊重したかった。
そんなこんなで一週間ほど経った頃である。
「龍一…今、なんて?」
その日の夕食で龍一がぼそっと話した内容に全員が耳を疑い、挙武が「信じられない」というニュアンスを含んで訊き返した。
「…あ、明日…友達が家に来るから…」
もう一度、龍一は繰り返した。
「友達…だと…?」
勇太は絶句しながら箸を転がした。
「嘘でしょぉ…一体どうしたっていうのぉ龍一ぃ…なんか運勢まで変わってないぃ?」
味噌汁を入れる手を震わせながら嶺亜は呟いた。
兄弟達は皆顔を合わせて驚愕したが、岸くんは素直に喜ぶ。
「良かったじゃん龍一、友達できるか不安そうにしてたのに難なくできて。同じクラスの子?」
「うん…。隣の席で、ちょっとしたきっかけで話してそれから一緒にいるようになって…」
「そうなんだ。まあ同じ学校だし頭のいい子なんだろうな。大事にしろよ。やっぱ学校は友達といるのが一番楽しいから。俺もさー高校生の頃さー」
岸くんは高校時代の思い出を語ったが誰も聞いていなかった。そうこうしているうちに郁に半分食べられてしまっていた。

.
34ユーは名無しネ:2014/03/16(日) 19:14:44.59 0
「んじゃバイト行ってくるわれいあ。夕飯までには帰るから」
「うん。行ってらっしゃい恵ちゃん」
恵と勇太はいつもの肉屋とファミレスのバイト、颯は陸上部の練習に出かけて行った。
「さぁてとぉ、郁ぅお庭の畑のお手入れ手伝ってぇ」
「あいよ!」
嶺亜と郁は庭に作った畑の世話に精を出す。4月の陽気に包まれて岸家の家庭菜園は少しずつ芽吹き始めていた。
「これ収穫できる時期になったらさ、庭でバーベキューとか良くね?嶺亜兄ちゃん」
「そぉだねぇ…そのうち鶏とか牛とか飼いだしたりしてねぇ」
二人できゃっきゃと笑いながら鍬やスコップを動かしていると話題は今日龍一が連れてくる彼の友達になる。
「そーいやさー、さっき龍一兄ちゃん駅に迎えに行ったけどどんな奴かなー。あの龍一兄ちゃんとよくコミュニケーションとろうなんて思ったよな」
「だよねぇ。でも凛の時も龍一と似たようなタイプでお互い安心できてたみたいだからぁ似たようなタイプの子じゃないのぉ?おとなしくてくらぁい感じのぉ」
「てことは龍一兄ちゃんに負けず劣らず暗くてネガティブで負のオーラ放ってるってことか。あ、そういや空が曇ってきたからそろそろ帰ってくるかも」
郁に言われて嶺亜が空を見上げるとさっきまで晴れていた青空が今は一面の鉛色になっていた。ひと雨来そうな感じがして嶺亜は洗濯ものを早めに取りこむことにした。郁と物干しに向かうと門が開く音がしてそこに視線をやると龍一が帰ってきたところであった。
「あ、ただいま嶺亜兄ちゃん…。えっと…友達の…」
おずおずと龍一が連れて来た友達を紹介しようとする。嶺亜と郁は想像と全く違った龍一の友達に目を丸くした。
「初めまして、おじゃまします。本高克樹と申します」
はきはきと明るく、礼儀正しくお辞儀をしてにっこりと輝くような笑顔で自己紹介をすると、本高と名乗った美少年は龍一に向き直る。
「龍一君が言ってた通り、綺麗なお兄さんと可愛い弟さんだね」
「あ…うん…そう言っていただけると嬉しい…」
光と闇、陰と陽…二人から放たれる全く正反対の雰囲気に驚愕しつつ、嶺亜と郁はリビングにいる岸くんと挙武に報告しに行った。
35ユーは名無しネ:2014/03/16(日) 19:15:58.22 0
「冗談言うな嶺亜。龍一にそんな明るくて朗らかな友達なんてできるはずがない。エイプリルフールはとうに過ぎたぞ」
新聞の経済欄を見ながら挙武は鼻で笑う。岸くんも映画のDVDを見ながらまたまた〜と冗談めかす。
「本当だって!目がくりくりしててチャーミングで小動物的な可愛い感じだけどガタイは意外に良くて頭も良さそうで昆虫苦手っぽい感じでなんとなく絵が超ド級に下手そうなとにかく龍一兄ちゃんとは正反対な明るい美少年なんだよ!な、嶺亜兄ちゃん」
「そぉなのぉ。可愛い子だったよねぇ…ちょっとお茶出しにもう一回覗いてこよぉ」
嶺亜はいそいそとお茶とお菓子の用意をして二階の龍一の部屋にあがった。
「龍一ぃ、お菓子持ってきたからぁお友達と食べてぇ」
部屋を開けると二人とも勉強の最中だった。こういうところはいかにも進学校の生徒らしい。難しい参考書が広がっている。
「すみません、ご馳走になります」
「どういたしましてぇ。ゆっくりしていってねぇ。汚い家ですけどぉ」
謙遜ではなく部屋の中は本当に汚かった。颯と龍一の二人部屋だが颯は部活が忙しくて部屋の整理どころではないらしいし龍一も無頓着である。よくこんな部屋にせっかくできた貴重な友達を入れようなどと思ったものである。
「龍一ぃ、お友達連れてくるなら部屋くらい片付けときなさいぃ。これじゃ恥ずかしいでしょぉ」
「これでも少し片付けたんだけど…」
「こんなの片付けたって言わないよぉ。次からお友達来る時は僕が掃除するからちゃんと言ってねぇ」
小言を言いつつ本高には笑顔で対応して部屋を出ると嶺亜は岸くんに「可愛い子だったぁ。いい子だしぃ」と報告をする。しかし岸くんからは「あんまりぶりっこしちゃいけません」という忠告が帰ってきたのだった。
36ユーは名無しネ:2014/03/16(日) 19:17:09.35 0
嶺亜が出て行った直後、本高はほうっと溜息をついた。
「優しくていいお兄さんだね。お兄さんっていうよりお姉さんかお母さんみたい。綺麗だし可愛いし…」
「そうかな…ああ見えて怒ったら怖いし小言は多いしヘマするとおしおきくらうし…いいことばかりでもないんだけどね」
しかし兄を褒められて悪い気はしない。龍一はお菓子を食べながら顔が綻ぶ。
「龍一くん家は兄弟が多いんだよね。いいよねそういうの。うちは普通の核家族だから」
「いや…多くてもあんまりいいことはないよ…。二番目の兄ちゃんはすぐ暴力ふるうし笑い声がうるさいし三番目は下ネタ大好きで家族内セクハラがひどいし四番目は嫌味攻撃と理論攻めで精神的に責めてくるし。
双子の兄は普段は穏やかだしいいんだけど回り始めると手がつけられないし末っ子は食欲の権化でうっかりしてたら全部食べられるし…パパは優しくていいパパだけど」
「お父さんって義理のお父さんなんだよね?凄いよね、赤の他人なのにそこまで受け入れてるなんて。普通なかなかよそよそしくなって気まずくなってしまうと思うんだけど」
「まあ色々あって…。その点についてはバックナンバーかまとめサイトを読んでもらえば…って何を言っているんだろ」
すっかり和んで話をしていたらけっこうな時間が経っていた。バイトを終えた恵と勇太が帰宅し、颯も部活を終えて帰ってきた。
「ただいま!あ、友達来てるんだっけ龍一。こんにちは初めまして、俺は双子の兄の颯。人見知りだけどよろしくね」
人見知りなんだかフレンドリーなんだか分からない挨拶をして颯は本高と打ち解けたようである。
「龍一ぃ、良かったら本高くんにお夕飯食べて行ってもらったらぁ?恵ちゃんが唐揚げ用のお肉たくさん持って帰ってきたからぁ」
本高を気に入ったらしい嶺亜はそう持ちかけたがしかし龍一は気が進まなかった。というのも岸家は奇人変人のオンパレードだ。至って常識人の本高には刺激が強すぎる。ドン引きで顔をひきつらせるであろう彼の姿が容易に想像できた。
「いや、でも…あんまり遅くなったら家の人も心配しそうだし…そうだよね、本高君?」
頼む、断ってくれ…と龍一は願ったがしかしその祈りは届かなかった。
「いいんですか?今日は両親が遅くまで仕事で、弟は学校行事で泊まりに行ってるから夕食は僕一人でしなくちゃいけなかったから…嬉しいです」
かくして龍一の懸念をよそに本高は岸家と食卓を囲むことになったのだった。


その2に続く
37ユーは名無しネ:2014/03/16(日) 23:55:59.16 0
キタ━━( ゚∀゚ )━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━( ゚∀゚ )━━!!!!
まじ作者さん乙乙乙
38ユーは名無しネ:2014/03/20(木) 16:05:17.74 I
岸家の人々きた!!

谷茶浜よかったね〜おめでとう!
39ユーは名無しネ:2014/03/20(木) 16:05:54.73 I
岸家の人々きた!!

谷茶浜よかったね〜おめでとう!
40ユーは名無しネ:2014/03/21(金) 21:56:09.95 0
作者さんありがとう!
岸家の人々ずっと楽しみに待ってました!!
41ユーは名無しネ:2014/03/21(金) 22:02:49.06 0
谷村が中学卒業高校入学の季節にこのストーリーを持ってくるところがステキ
42ユーは名無しネ:2014/03/22(土) 18:05:56.72 0
この小説最高過ぎて泣ける!!
欲望を言えばきしれあをもっともっと書いて欲しいです←
43連載リレー小説 岸家の人々2:2014/03/23(日) 16:45:00.96 0
第9話 その2

「うちの家族は皆ちょっと変わってるから気にしないで。決してあまり深く考えないように。珍獣ハウスに迷い込んだと思って。世界ビックリ人間大賞を3D体験してるんだと思えば少しは笑えるだろうから」
夕飯ができてリビングに向かう途中で龍一は本高にそう言い聞かせた。個性的と言うにはあまりにもエキセントリック過ぎる家族をこんな常識人に紹介するのは気が進まない。
だけど兄弟達にそれらしく振る舞ってもらうなんて不可能だからせめて予備知識だけでも与えて置いた方が衝撃は少なかろう。
「龍一君て面白いね。最初会った時はそんな感じしなかったけど。そういう冗談も言うんだね」
あっけらかんと本高は笑う。駄目だ、通じてない…。純粋な彼の頭の中にはこの世の中に生息する奇人変人の類など想像もつかないのだろう。せっかくできた友達なのに、また明日からは一人かな…と龍一は覚悟した。
「いっただきまーす!」
威勢のいい郁の声で夕食は始まる。彼はまるで飲み物のように唐揚げを次々に胃袋に放り込む。最近、縦にも伸びてきてるからこのままいくと末っ子が一番巨漢になってしまいそうである。
「ギャハハハハハ!おめーこんな暗い奴と友達になってやるとかいい奴だな!ボランティアの一環か!?ギャハハハハハ!!」
早速バカ笑い全開で恵がからみにまわる。アホと秀才の対極にあるその構図になんだか皮肉なものを感じた。
「座った席が隣同士で、龍一君が筆箱忘れて困ってたからシャーペンを貸してあげたのがきっかけで話すようになったんです。僕も新しい環境で知ってる子もいなくて不安だったから」
「そぉなんだぁいい子だねぇ本高君。龍一ぃ、あれだけ学校に行く前に忘れ物ないかチェックしときなさいって言ったのに筆箱忘れたのぉ?ほんとうっかり屋なんだからぁ」
嶺亜が本高に感心しながら彼のご飯をよそった。
「頭のいい学校だし勉強とか大変でしょ?龍一もバイトするって言ってるけどそんな暇なさそうだよね。龍一、無理しなくていいからね」
岸くんが味噌汁をすすりながら優しく諭すと本高はそれをうらやましそうに見た。
「龍一君は偉いですよね。家族のためにバイトするって聞いて僕は自分のことしか考えてないからちょっと恥ずかしくなりました。でも将来なりたいものがあるから後悔はしたくなくて…」
「なりたいものってぇ?」
「医者です。そのためには大学もちゃんと選ばないといけないしそのために努力もしなきゃいけないし…」
それを聞いて勇太が指を鳴らした。
44ユーは名無しネ:2014/03/23(日) 16:45:49.56 0
「医者か!!いいな!診察で美女の裸体拝みたい放題だし産婦人科とかいいかもな!!美人ナースもいりゃあ天国だろうな。よし、女医モノでも探すか!」
ああまた下ネタ大魔王がぶち壊しにしたよ…と龍一が自我修復をしかけると本高はうんうんと頷く。
「産婦人科は今本当になり手がいないみたいだからそれも視野に入れてるんです。生命の誕生に携わる大事な仕事だしやりがいはきっとあるだろうから」
澱みのない瞳で本高がそう答えると挙武が「ほう…」と感心したように呟く。まあ挙武兄ちゃんはこの中では常識のある方だし秀才同士話も合うんじゃないか…と龍一が落ち着きかけていると挙武はいきなりその眼をヘッドライトのようにした。
「それではお近づきの印に僕がモノマネで迎えよう!まずは藤ヶ谷君のラップ…フジラップだ!!その次はサクラップ!サランラップはニュークレラップ!!」
いきなり立ち上がり、挙武はラップだのモノマネだのクオリティの低いものから高いものまで次々と連続で披露する。春の訪れとともにどうやら挙武の頭の中にはサクラが咲いているようである。恵と勇太がバカ笑いで盛り上げ、どんちゃん騒ぎである。いつものパターンだ。
「騒がしい家族でごめんねぇ。これからも龍一と仲良くしてあげてねぇ。暗くてネガティブで負のオーラと負け神を生まれつきしょいこんだどうしようもない弟ですけどぉ」
最後は嶺亜がぶりっこ全開で本高の手を握る。すると岸くんがオホン、と咳払いをする。郁は本高そっちのけでひたすら食べていたし颯はトレーニングのため空気椅子で食事をしていた。


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45ユーは名無しネ:2014/03/23(日) 16:47:03.61 0
「大変お見苦しいものをお見せしてしまって申し訳ない…放送事故のようなものとして処理していただければ…」
やはりこうなる運命なのか…と龍一は諦めに似た感情がやってくる。所詮俺には友達なんて立派なものはできなくて一人でくら〜く自我修復してろという神様の訓示…。そう、友達と高校生活を楽しむよりも家族のために馬車馬のように働けという…
たった一週間だったけど友達ができて嬉しかった。ありがとうさようなら本高君…俺のことはもう亡きものにしてくれてもかまわないからね…
龍一が数秒でそんなことを頭の奥に響かせていると本高はあっけらかんとこう言い放つ。
「面白かったよ。なんか今までに出会ったことのないタイプの人達だったし賑やかで楽しいよね。お父さんもあんなに若いなんてびっくりしたけどいい人だよね。雰囲気もいいしうらやましいな」
「…まじで言ってるの…?」
空耳ではないようである。本高は至って平然としているから冗談というわけでもなさそうだ。
「笑い声の大きなお兄さんは頭がカラッポそうで愉快だし産婦人科に異常に興味を持つお兄さんもファッションセンスとかかっこ良くて憧れるしモノマネ披露してくれたお兄さんは面白いし。
颯くんのヘッドスピンって凄いし郁くんはとにかく食べてて豪快だしお父さんは優しそうで人が良さそうで安心できるし、それに…」
そこで本高は何故か伏し目がちになる。どこか恥らっているようにも見えた。
「龍一君のお兄さんって、可愛いよね…なんか今までに出会ったことのないタイプで…」
「は?」
お兄さんってどの?四人いるけどそりゃあ四人ともそういないタイプの奇人変人オブジェクションだ。一体どれのことを言っているのか…分かるような気もしたが分かりたくない気もする。そう懸念した矢先に本高は独り言のように呟いた。
「苦手なカブトムシも『れいあ』って名前をつけたら可愛く思えるかなぁ…」
「ちょ、ちょっと待って…」
「あ、ごめんね。お兄さんのことこういう風に想われるのって嫌だよね。こういう奴とは友達になりたくないよね?」
「いや…そんなことはないけど…」
「ほんと?龍一君って心が広いね。良かった、友達になれて」
にっこりと笑顔でそう言われ、龍一は涙が出そうになる。もちろん、これは感動が半分である。そしてもう半分は…
46ユーは名無しネ:2014/03/23(日) 16:47:55.20 0
「あんなに可愛いけど彼女とかいるのかなあ…なんか想像できないなあ…それとも彼氏がいるのかなあ…まさかね」
「は…はは…」
まさか義理の父とデキてるだなんて清廉潔白な本高の頭の中には存在し得ない予想であろう。後ろめたさに泣きそうになる。
しかし憧れは憧れのままそっとしておくのが一番だ。龍一はそう判断した。家族の話はこの先ひかえよう…そう決心したのだが…。
「これは…」
あくる日の休み時間、ひょんなことから龍一は本高の持つスマホの画像フォルダを見てしまった。見るつもりなど全くなかったが不慮の事故だ。偶然だ。そこにあったものは…
「嶺亜兄ちゃん…?」
一体いつどこで撮ったのか、それは嶺亜の画像だらけだった。どう考えても男子高校生が男子高校生の画像を集めているのは普通じゃない。例え憧れという理由付けがされていようとも。
龍一は全身から血の気が失われて行くのを自覚する。見なかったことにして本高とは距離を置くのが一番いいかもしれない。だが…
「あ…」
5限が始まる直前、問題集を忘れてしまったことに気付く。今日の授業は問題集がなくてはどうにもならない。忘れると大幅に遅れを取ってしまう。
「どうしたの?あ、問題集忘れたの?良かったら見せてあげるよ」
焦っていると本高が察してくれて問題集を見せてくれた。それだけではなく、昼休みは一緒に食べようと誘ってくれて購買で買ったパンまでくれた。
こんないい友達と距離を置くなんてできるわけがない。ただでさえ暗くてネガティブで友達を作るより東大に合格する方が簡単な気がするくらいなのにそんな勿体ないことしたらもう未来永劫独りぼっちで生きなくてはならない気がした。
ならばせめて嶺亜と岸くんの道ならぬただならぬ関係を決して悟られることのないよう努めよう。龍一は固く心に誓う。
47ユーは名無しネ:2014/03/23(日) 16:49:08.26 0
「龍一くん…ちょっと頼みたいことがあるんだけど…」
放課後、一緒に下校すると本高がそう呟いた。少し浮かない表情である。
「何?」
「大変あつかましいんだけど…いや、やっぱりあつかましすぎるかな…」
本高は悩んでいる風だった。だから単純に龍一は力になりたいと思ったのである。問題集を見せてくれて、一緒にお昼を食べてくれて、パンまでくれた。こんなに親切にしてもらってるんだから何か一つくらいは恩返しをしないといけない。
「そんな遠慮しないでなんでも言って。俺にできることならなんでもするから」
龍一は自分の軽はずみな言動を後に激しく後悔することになる。本高は少し安心したようにこう言った。
「あのね、両親が明日から親戚の結婚式に行くんだ。北海道だから明日は帰って来なくて…。弟は付いて行くんだけど俺は勉強が遅れると困るからって残ったんだ。
でも一人で家にいるのは不安で…。龍一くんの家って家族が多くて賑やかで楽しそうだから泊めてくれると嬉しいんだけど…」
冗談じゃない。泊めるとなれば奇人変人ブラザーズが何をしでかすか分からないし嶺亜と岸くんの関係がバレる可能性が高くなる。絶対ダメだ。これは断固断るべき…
龍一が断る理由を考えていると本高はふっと暗い表情になって俯いた。
「あ…やっぱダメだよね…。ごめん、忘れて」
「いや全然!うちの家族は変わってるけどそれでもいいって言ってくれるなら大歓迎だよ。むさくるしい家ですがよろしければいつまでもいてもらってかまわないから」
口が勝手に回ってしまった。後悔先に立たず。龍一は本高を泊めることを約束してしまった。
48ユーは名無しネ:2014/03/23(日) 16:49:58.23 0
「まずい…非情にまずい…」
「何がまずいの龍一?嶺亜くんの作ったご飯まずいなんて言ったら素っ裸で外に放り出されて二度と家に入れてもらえなくなるから滅多なこと言わない方がいいよ」
隣で筋トレをしながら颯がトンチキなことを言っているが龍一はそれに付き合う余裕がない。なんとかしてこの危機的状況を脱しなくてはならない。考えろ、考えるんだ龍一、お前の頭脳はこんな時のためにあるんだろうが。
颯を無視して思案にあけくれていると彼は「あ」と何かに気付いたように筋トレを一時中断した。
「始まっちゃった。まだ10時なのに。今日は早いね」
時計を見ながら颯が呟いたと同時に壁の向こうから艶めかしい声が響いてきた。
「やだぁ…パパ、ちょっとそんなの無理ぃ…んっ…んんっ…!!」
忘れていた設定ではあるが龍一と颯の二人部屋は岸くんと嶺亜の寝室の隣である。壁一つ隔てて夜はあの声がわりとダイレクトに聞こえてくるのだ。
「あっ…やだっ…ダメだってばぁ…」
「もうちょっとだけ…ここをこう…おおっ…おおお」
「パパぁ…絶対出したらダメだからねぇ…黙って出したらもうしてあげないよぉ」
「分かってる分かってる…あっ…いい…!」
龍一は絶句する。こんなの聞かれたらもう終わりだ。三月は岸くんが長期出張があったりして随分溜まっているのか回数も内容の濃さもハンパない。
「始まったか!よしきた!今日のプレイは何かこの勇太お兄様が当ててみせようぞ!」
そうすると嬉々として盗み聞きに勇太がやってきて勝手にY談にお花畑を作るのである。エロ談義独演会を始めてティッシュ持って来いとパシられた。
49ユーは名無しネ:2014/03/23(日) 16:50:35.62 0
「駄目だもう…せめて明日だけは我慢してもらうようパパに頼むしかない」
大丈夫、パパは優しいしいい人だから聞いてくれる。可愛い息子のためならば…
「そんなの駄目だよ龍一!パパはね、嶺亜くんとすることだけが楽しみなんだからその楽しみを奪うなんてとんでもないよ!俺からヘッドスピンを奪うようなもんだ!」
岸くんバカが何か言っている…しかし折れるわけにはいかない。反論しようとするといつの間にか部屋にいた挙武がコップを壁にあてて耳に付けながらこう忠告してきた。
「パパはともかくとして龍一、お前が嶺亜にもの申すことなんてできるのか?まあ僕は止めないがな。明日にはお前が全裸で庭に作られた小屋に生活していると思うと兄としては心苦しいな」
「…」
龍一は己が全裸で犬小屋のような粗末な空間で震えながら生活してる様が脳裏に浮かび、気が遠くなった。
忘れてた。俺が嶺亜兄ちゃんに何か言おうものなら絶対零度でねじ伏せられるだけなのだと。
やっぱり友達を失うフローチャートになってたんだと絶望しながらリビングに降りると恵がプレステでバイオハザードをプレイしていて、叫びながら次々にゾンビをなぎ倒していた。
アホは悩みがなくていいよな…と思っていると声をかけられる。
「おい龍一。まだパパとれいあはヤってんのか?」
「え?あ、うん。今佳境みたいで…」
「なんかムカつくから俺が協力してやる。明日あいつらにヤらせなきゃいーんだろ?」
「え?今、なんて…」
我が耳を疑っていると最後のゾンビを倒してステージクリアした恵は立ち上がって龍一にこう言った。
「恵「お兄様」が弟のためにひと肌脱いでやるっつってんだよ。感謝しろよオメー!」
蹴りをいれられたが、溺れる者はなんとやら…龍一は恵の協力を得ることになった。


その3につづく
50ユーは名無しネ:2014/03/24(月) 08:15:24.31 0
早く続きみたいです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
51ユーは名無しネ:2014/03/26(水) 00:10:02.63 I
作者さん最高です!
面白い作品をありがとうございます!
辛いことがあってもここを見れば神7への思い、
楽しいお話があって玄樹が出ます^_^
これからも頑張って下さい!
52ユーは名無しネ:2014/03/30(日) 23:32:06.38 I
51です
誤字ですw
元気がでます!
53ユーは名無しネ:2014/03/31(月) 03:04:46.34 0
デブ豚死ねデブ豚死ねデブ豚死ねデブ豚死ねデブ豚死ねデブ豚死ねデブ豚死ねデブ豚死ねデブ豚死ね
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54ユーは名無しネ:2014/04/06(日) 21:42:29.59 0
第九話 その3

嶺亜は隣の部屋で兄弟達が聞き耳をたてていることを薄々勘付いていた。だから今夜はそこそこに切りあげるつもりでいたのだがいかんせん岸くんがやる気になっちゃっている。
「それでは続きまして…」
「ちょっと待ってパパぁ、颯達の部屋で勇太とか挙武が聞いてるよぉ。今夜はもぉこれくらいにしとこうよぉ」
「それは無理です」
キッパリハッキリと岸くんは言い切った。分かっていたことではあるがこの状態の岸くんと止めることなでできるはずもない。嶺亜は諦めて受け入れようとしたが…
「!?」
いきなり部屋の扉が開いた。驚いてそちらを見ると難しい顔をした恵が立っている。
「恵ちゃん!?なに?どぉしたのぉ?」
「け、恵…今お取り込み中なんだけど…」
嶺亜と岸くんが焦っていると恵はずかずかと入りこんで来て嶺亜の腕を掴んだ。
「な、なぁに?恵ちゃん?」
「れいあ、今夜は俺と寝るぞ!明日もな!」
「えぇ?あっちょっと待ってよぉ服くらい着させてよぉ」
嶺亜を半ば引き摺るようにして恵は強引に自分の部屋に連れ去る。岸くんは全裸で放心状態になった。一体どういう風のふきまわしだろうか。ここにきてブラコン魂がまた再燃してしまったのか。慌てて服を着た嶺亜は恵に問いかける。
「恵ちゃん急にどうしたのぉ?なんで一緒に寝るとか言いだしたのぉ?そりゃあ小さい頃は毎日一緒に寝てたけどぉ」
「れいあ、れあくりはフォーエヴァーなんだよ!例え今現在の俺が行方不明でもれあくりは確かに存在した青春の証なんだよ!俺がギャハハと笑えばれいあがうふふと笑う、そんな仲なんだよれあくりは!お前の誕生日にれあくりメモリーBDを見ながら作者は涙してんだよ!
だからこれから暫くは俺と一緒に寝んだよ、いいな?」
何を言っているのか全く分からないけど必死なことだけは伝わってきたから嶺亜は首を縦に振ることしかできなかった。
55ユーは名無しネ:2014/04/06(日) 21:43:40.45 0
嶺亜を連れていかれて岸くんが全裸で拗ねているとコンコンと部屋のドアをノックする音がする。今度はなんだと振り向くと枕を抱えた颯と夜食のスルメをかじった郁が入ってきた。
「パパ、嶺亜くんがいなくて寂しいだろうから今夜は俺達が一緒に寝てあげるね!」
颯ははりきって挙手をした。
「寝てやるから明日帰りに老老軒の肉まん買ってきてくれよパパ」
郁はスルメをへけもけと口の中で噛みながらたかってきた。
「いや…あの…お二人の気持ちは嬉しいんですけど…」
岸くんは丁重に御断りの方向でいった。というのも息子とはいえ颯はすでに岸くんよりかなり大きくてガタイもいいし郁は最近食欲のせいで加速度的に体格が大きくなってきてもう岸くんは身長を抜かされてしまった。
こんな二人に挟まれて寝たらどんなことになるかは想像せずとも分かる。
「せ…狭い…」
ダブルベッドに男三人川の字はきつい。これでは翌朝寝違えること必至である。
「パパ、あのね、今日学校の部活で朝日がね…」
「なーパパ聞いてくれよ。みずきがよー…」
しかしながら、最近忙しくてまともに子ども達の顔も見ていない話も聞いていないことに岸くんは気付いた。
たまにはこうして話を聞くのも悪くないかな…そう思い直して岸くんは颯と郁の新学期の生活から朝食のリクエストまでえんえんと話を聞いた。
「それにしても恵兄ちゃんはなんでまた急にブラコン魂が復活したんだろ」
郁が疑問を口にした。
「さあ…そりゃまあここでしかれあくりは見れないからな…って何言ってんだ俺は」
岸くんは自分の頭を小突く。
「龍一とさっきなんか話してたみたいだけど…。珍しいよね、龍一は恵くんに何か言うとすぐ蹴られるから嫌だって言ってたのに」
「俺夜食取りに行った時ちょこっと話聞こえてきたけど明日誰かうちに泊まりにくるみたいだぞ。来るなら手土産持参してもらわないとな」
「へえ。龍一と恵がねえ…。でもそれとブラコン復活となんの関係があるんだろう?ま、いいか。明日も早いしそろそろ寝よう。颯、寝ぼけてヘッドスピンだけはやめてね。郁も腹が減ったからって噛みついてくるのはやめてね。おやすみ」
「うん、おやすみパパ」
翌朝、やはり岸くんはベッドから放り出されていて首と腰が痛かった。
56ユーは名無しネ:2014/04/06(日) 21:44:39.54 0
「つーかよ、れいあとパパがデキてるってことを本高に気付かれずに帰ってもらえりゃそれでいーんだろ?」
恵と龍一は一緒に家を出る。学校へ向かう道で昨夜の相談の続きを始めた。本人達はもちろんのこと他の兄弟に漏れるとややこしいからである。
「そうだけど…昨日嶺亜兄ちゃんは怒ってなかった…?パパとのアレの邪魔をして…」
「あ?そんなん、れいあが俺に怒るわきゃねーだろ。おめーとは絆がちげーんだよ、キズナが!」
いきなり蹴られた。だが逆に頼もしいと言わざるを得ない。もしも龍一が同じことをしたら逆鱗に触れて全裸で叩きだされていただろうが恵だったら「どぉしたのぉ?」で済むのだから。
「れいあは可愛いからなー。悪い虫がやってこねーように追い払うのも楽じゃねーぜ。まあ悪い虫どころかパパみてーな汗だく涙目ほうれい線野郎とデキちまったんだからもう俺もそろそろブラコン卒業かとも思ったんだけどよ」
「そんな…本高くんは悪い虫なんかじゃ…むしろあんな純情で真面目な好青年を誑かす嶺亜兄ちゃんの波打つ魔性のDNA異次元フェロモンに問題があるわけで…」
「あ、言ってやろ。れいあに言ってやろー!龍一がれいあのことウルトラ淫乱尻軽ぶりっこ上目遣い性別不明男の娘っつってたって言ってやろー!」
「ちょ…そんなことまで言ってない…!!お願いですやめて下さいまたおしおきの絶対零度くらう…!!」
さんざん恵にからかわれて疲労感を抱えて龍一は登校した。隣の席にはもう本高が着席していて、不思議そうに龍一の顔を覗きこむ。
「どうしたの?なんかぐったりしてるけど」
「あ…いや、ちょっと昨日遅くまで勉強してたから睡眠不足で…」
「そうなんだ。凄いなあ。俺は昨日はなんだかフワフワしちゃってあんまり勉強できなかったんだ。遅れないように授業はちゃんと聞かないと」
「フワフワ…?」
「うん。今日泊まらせてもらうじゃん?お兄さん、何が好きかなあ…とか何持って行ったら喜んでくれるかなあ…とか何話そうかなあ…とかずっと考えちゃって。あ、予鈴なった。いけね、予習しなくちゃ」
本高は慌てて教科書を取り出していそいそと予習を始める。龍一は一抹の不安がよぎったがそれを無理矢理押し殺して授業に集中した。
57ユーは名無しネ:2014/04/06(日) 21:47:21.06 0
そして放課後、本高は商店街に寄りたいと龍一を誘った。本屋で参考書でも買うのか手土産のお菓子でも買うのかと思っていたら彼は花屋で足を止めた。
「喜んでくれるといいんだけど…」
はにかみながら本高は真っ赤なバラの花束を購入する。
「…」
花より団子の末っ子始め岸家には花を愛でる殊勝な心がけのものなどいない。花よりゲームの二男、花よりAVの三男、鼻は高いが花には全く興味のない四男、花より岸くんの五男、そして長男は花なんかより僕の方が可愛いよぉのスタンスである。
「あの…せっかくだけどうちにはそんな綺麗な花似合わないと思うんだよね」
「そう?綺麗な人には綺麗な花が似合うと思って。清楚な感じもいいけどこういう華やかな方が喜んでもらえそうだからさ」
その綺麗な花には無数の棘があって刺されてるとこれまた痛いんだよ、と龍一は喉まで出かかったが黙っておいた。
かくしてバラの花束を抱えた本高を迎え、第二ラウンドが始まろうとしていた。


その4に続く
58ユーは名無しネ:2014/04/09(水) 00:16:52.17 0
作者さん乙です
れあくりフォーエバーで涙が・・・
59ユーは名無しネ:2014/04/11(金) 07:28:13.72 I
作者さん乙です!!

れあくりフォーエバーサイコーです!
栗ちゃんと谷茶浜の絡みが見れて嬉しいな…
60ユーは名無しネ:2014/04/13(日) 23:24:21.56 0
ジャニーズJr.板VIP
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/subject.cgi/music/28222/

2年間閉鎖してたJr.板VIPが復活したけど過疎ってるからよろしく
61ユーは名無しネ:2014/04/14(月) 13:50:37.03 I
jr.板復活!?
嬉しいぃぃ!
ここも1年前は結構栄えてたよね
62ユーは名無しネ:2014/04/17(木) 09:48:20.18 0
きたぁぁぁあれあくりフォーエヴェア!!!!
本高の変態っぷりと、栗谷の協力関係もすばらしいね
63連載リレー小説 岸家の人々2:2014/04/20(日) 20:13:08.26 0
第9話 その4

「今日は無理言ってお邪魔させてもらってすみません。あの、これはほんのつまらないものですが…」
はにかみながら本高は嶺亜にバラの花束を渡す。岸くんは残業でまだ帰宅していなかったから嶺亜はぶりっこ全開だった。
「ありがとぉ。こんな綺麗なお花もらっちゃっていいのかなぁ」
「お兄さんのイメージに合うと思って…」
「お兄さんだなんてそんなぁ他人行儀だよぉ。嶺亜って呼んでねぇ」
ぶりっこ笑顔で嶺亜が微笑みかけると本高は頬を染めた。
「れ、嶺亜…くん…」
なんだかいいムードになりつつある二人を恵の強引で飾り気のない振る舞いが攪拌した。
「おい本高!お前ゲームは好きか!?好きだよな、よっしゃこっち来い俺と対戦だぜギャハハハハハ!!」
本高の腕をひっぱって恵はツインビー対戦を始めた。何故岸家にそんなカビの生えたようなレトロゲーがあったのかはともかくとして次々に兄弟達が帰ってくる。
「勇太様のお帰りだぜ!お?なんだ客か?あれお前確か龍一の友達…おいおいなんだよツインビーとかやってんじゃねーよときメモやろうぜ!」
「ときメモ…?ときメモってなんですか?」
本高がきょとん、とした顔で問う。
「お前ときメモ知らねーとかモグリかよ!いいか、ときメモはなあ…」
「なんの話をしてるんだ。おや本高くんこんにちは。今日も懲りずに龍一に付き合ってやってるのか。君もなかなか忍耐強いね」
勇太がときメモについて熱く語ろうとすると挙武が帰宅する。本高は礼儀正しく挨拶をした。
「ただいま!あれ?本高くん来てたの?こんにちは。これ高校の近くに来てた屋台で買ったメロンパンだけど食べる?」
部活帰りの颯がメロンパンを差し出すと郁が光の速さで奪い取った。
64ユーは名無しネ:2014/04/20(日) 20:14:37.84 0
「嶺亜兄ちゃん…あの…パパは…?」
ご機嫌で花瓶にバラの花束を移し換えている嶺亜に龍一が問う。
「パパは高校の時の友達と同窓会なんだってぇ」
有り難い展開だった。岸くんと嶺亜の道ならぬ関係さえ気付かれずに帰ってもらえたら後はもう安心なのだ。帰りが遅ければ遅いほどその危険が薄まるから願ってもない。
夕飯ができて岸くん抜きで食卓を囲む。今日はお好み焼きである。ホットプレート一面にタネが敷かれそれをコテで割って分けるという大家族岸家スタイルである。一枚ずつ焼いていたのではおっつかないのだ。
「パパ同窓会かよ。元同級生とランデブーしてなきゃいいけどな」
勇太が嶺亜に冗談めかすが龍一は背中に汗をかいた。お願いだからそれとなく分かるようなこと言わないでくれ…
「まあパパもたまには正真正銘の女と触れあいたいだろうからな。おっと嶺亜、コテで人の手を刺すのはやめろ」
挙武はさっと嶺亜の攻撃をよける。彼は絶対零度の人殺しの眼になっていたが本高は豚玉を食べていて気がつかない。顔をあげたと同時に女神の微笑みに戻って嶺亜は本高に話しかける。
「いっぱい食べてねぇ。あ、郁ぅ食べ過ぎだよぉポテトサラダが冷蔵庫にあるからそれ食べてなさぁい」
嶺亜のぶりっこは相変わらずだったし岸くんは帰宅が遅いからその前に本高を自分の部屋にでも連れて行けばさほど問題ないかもしれない。
何事もなくこのお泊まりが終われば明日からまた平穏な日々が訪れる…龍一は祈りながらお好み焼きを口にした。
「こら龍一ぃ、ソース零れてるよぉほんとだらしなぁい」
嶺亜にたしなめられて、慌てて龍一が拭くと本高がくすっと笑う。その後でうらやましそうに呟いた。
「いいなあ。俺もソース零して怒られたい…」
いつもならこれ絶対零度で「服に染みできるような真似したら洗濯大変なの分かってんのぉ?」って刺されるんだぞそれでもいいのか…という言葉を龍一は飲み込んだ。
本高がいるからか嶺亜は猫を被って優しいお姉さん…じゃなくてお兄さんを演じている。さすがと言うべきだろうか。
夕飯が終わり、恵が強引に本高をマリオカート対戦に付き合わせて洗いものを終えた嶺亜も参加する。
「あぁまた轢いちゃったよぉこれ難しいよぉ」
「ギャハハハハ!!れいあはカートで人轢くのがうめーな!ギャハハハハハハ!!」
恵がバカ笑いしていると本高がうっとりした表情でまた呟く。
「いいなあ。俺も嶺亜くんのカートで轢かれたい…」
龍一は思う。日曜の朝、遅くまで寝てると「ちょっと邪魔ぁ。自分で掃除しないんならさっさとどいてぇ」と掃除機で轢かれるんだけどそれでもいいのか…と。こいつならそれでも悦ぶんだろうか…
65ユーは名無しネ:2014/04/20(日) 20:16:11.63 0
「れいあ兄ちゃん、風呂入れたから俺先に入っていい?あ、冷蔵庫のコーヒー牛乳は俺のだから恵兄ちゃん飲むなよ!」
郁がバスタオルを持って風呂場に向かって行った。
「たくよー郁はちゃっかりしてやがんなー。れいあ後で俺と一緒に入ろーぜー!最近ずっとパパとばっか入ってっから今日から暫く俺とな!」
恵の際どい発言にハラハラしているとまた本高は恍惚の表情である。
「いいなあ。俺も一緒にお風呂に入って背中流しっこしたりシャンプーされて冷水や熱湯で責められてタオルを窒息寸前にまで被せられたい…」
まともな常識人だと思っていたが、龍一は本高に対するイメージが変わりそうだ。だがそんなことを言っている場合ではない。本高は嶺亜に幻想を抱き過ぎだ。初期段階でそれをやんわりと否定しておいた方がいいのではないか。
とすれば協力を仰ぐのはあの二人しかいない。嶺亜の本性を語らせるにはうってつけの三男と四男に…
「おいおいおい本高、お前さては童貞だな?女子に免疫ねーな?いいか、数々の女を相手にしてきたこの勇太様から言わせるとあんな二面性の激しい可愛いこぶりっこ小悪魔になんか騙されんなよ。
あいつピンクが大好きだよぉとか言ってっけど身に付けるのは黒系が多いしお料理大変だぁとか言ってるけど最近冷凍モン多いしとにかく自己アピールにだけは長けてっからそこんとこ騙されないようにな」
さすがだ…龍一は感心した。本人に聞かれたら「明日から勇太は犬の餌ねぇ」と言われかねないがそこはそれ。挙武も続ける。
「童貞に童貞と馬鹿にされる筋合いはないと思うが本高、嶺亜は男のくせに女々しいからな。昨日、この僕のメロンジュースを勝手に飲んだくせに「そんなに飲みたかったら名前書いとけばぁ?」なんて開き直るんだぞ。
おまけにトマトがどうしても無理ときたもんだ。全くあのぶりっこ小悪魔め」
「挙武と嶺亜の口論は一晩中でも続くからな。どっちも譲りゃしねえ。れあむオタにはたまんねえ光景なんだろうが俺はうるさくてAV鑑賞もできなくてとんだ迷惑だぜ」
勇太と挙武は嶺亜に対する愚痴を本高にこぼした。いい具合にイメージが崩れてくれればと思ったのだが…
「いいなあ。俺も嶺亜くんに犬の餌食べさせられてメロンジュース飲まれたい…一晩中口論したい…」
駄目だこりゃ、と龍一が白目を剥いていると嶺亜と恵が風呂からあがってくる。風呂あがりの嶺亜に本高はぽ〜っと魅入っていた。
「ごめんねぇお客さんより先に入っちゃってぇ。次入ってもらってねぇ龍一ぃ」
シャンプーの香りをちらつかせて嶺亜は猫かぶりぶりっこモード全開だ。分かっててやってんな…と龍一も挙武も勇太も呆れる。その後ろで颯が爽やかに挙手した。
「じゃあ本高くん俺と入ろう!どっちが長く湯船に潜ってられるか勝負!!」
また訳の分からんことを…と頭を痛くしていると本高はこう呟く。
「嶺亜くんの入ったあとのお風呂に潜る…ああ幸せ…」
もう勝手にしてくれ…と諦めの境地に達した龍一が静かに部屋の隅で自我修復を始めようとすると玄関のドアが開閉する音が聞こえた。
66ユーは名無しネ:2014/04/20(日) 20:17:23.13 0
「ただいま。終バスがなくなったから岩橋泊めることにしたよ。灯りはつけて寝てもらうから皆ご安心を…あれ?」
岸くんが岩橋を連れて帰宅した。本高の姿を見て首を傾げている。
「あ、お邪魔してますお父さん」
本高はぺこりと頭を下げる。龍一が今日泊めることになって…と説明すると岸くんはそうなんだ、と答えた後で本高に岩橋を紹介する。
「どうもこんにちは…」
岩橋は人見知り全開で挨拶をする。相変わらずである。
それからばたばたと順番に入浴を済ませてリビングでゲーム大会やら勇太推薦のギャルゲー大会なんかが催されて盛り上がったが龍一はそんな気分ではない。
さっさと床につきたかったがいかんせん本高が気にかかる。さっさと彼を連れて自室に寝に行きたかったが…
「んじゃ今日は俺とれいあが一緒に寝るかんなパパ!おめーは岩橋と寝ろ!ギャハハハハ!」
恵がさっさと嶺亜を確保した。よしこれで今夜アレの声が部屋の横から聞こえることはなくなった。ろくでもない兄だがこの時ばかりは龍一は恵に感謝した。
「あ、じゃあパパとは俺が寝る!!だって本高くんは龍一と寝るから俺が二段ベッドあけてあげないとね!」
颯が目を輝かせて挙手した。まあどうでもいいやと思っていると郁が空いた恵の部屋で寝たいと言いだした。
「とするとぉ…郁の部屋が余るよねぇ。颯のベッド、ヘッドスピンのしすぎで凹んでるからそんなとこに寝せたら本高くんが可哀想だからぁお客さん用の布団をそこに敷くかねぇ」
ということは…?と龍一が考えていると本高は先程のうっとりした目をなんと岩橋にも向けていた。
「岩橋くんって年上なのに可愛いよね龍一くん…。なんかモジモジして人見知りっぽいとことか…」
「…」
龍一は思う。本高ってこういう系にとことん弱いのではなかろうか…
しかしながら彼の興味の対象が嶺亜から岩橋に移ってくれるのは有り難い。これでもう心配することはないだろう。今夜は久しぶりに安眠できる。龍一が心の底から安堵して眠りにつくと階下から悲鳴が聞こえて来た。
後は察するとおりである。「電灯は消すな」のお達しを忘れた本高がうっかり暗闇にしてしまってデーモン化した岩橋に襲われかけたのであった。
当の岩橋本人はやはりその記憶はなく翌朝怯える本高に「これはいじめだ…」と涙目でトーストをかじって岸くんにフォローされていた。

おわり
67ユーは名無しネ:2014/04/21(月) 19:31:42.45 0
ツインビーなんだっけってつい検索しちまったじゃねーかwww
れあたんかわいいなぁ
なにはともあれ頑張れ龍一
68ユーは名無しネ:2014/04/22(火) 22:24:31.26 I
自分もツインビー検索したいわ
そして谷村が少しだけ明るくなって良かったw
69ユーは名無しネ:2014/04/27(日) 14:21:34.47 0
規制で全然感想書けないけど1スレ目からずっと楽しみに見てるよ
栗田はもうだいぶだけどついにおにくもoutで神7情勢も随分変わって来ちゃったね
個人的にはれあたんをお姉ちゃんと呼ぶという偉業を成し遂げた高橋海斗が気になる昨今
70ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:35:00.78 0
日曜ドラマ劇場 Beautiful Twins

第一話

都内某所。常識外れに巨大な邸宅の一室から悲鳴が轟く。
「あああああああああああああ!!!!!!!!!!!なんでこんな時間になってるんだ!?完全に遅刻だあああああああああああああもう!!!!!!!!!!」
バタバタと部屋を出て階段を駆け降りたその先はリビングである。そこから優雅な弦楽合奏が流れてきた。曲はモーツァルトのディベルティメント第二番…しかしそんなものはおかまいなしに魂の叫びをあげる。
「どういうことだよ嶺亜これは!!!!!なんで俺の部屋の目覚まし時計が止まってるんだ!!?お前の仕業だろう!!!?」
勢い良くリビングのドアを開けると朝食のオムレツを上品に口に運ぶ嶺亜がこちらを一瞥だけした。
「いいがかりよしてくれるぅ?自分がセットし忘れただけじゃないのぉ?人のせいにすんなよぉ」
しれっと言い放ってトーストにバターを塗り始め、嶺亜はくすくす笑う。そこでまた血圧が上がった。
「俺がそんなイージーミスを犯すわけがない!!昨日ちゃんとセットして寝たのを覚えてるんだぞ!!お前が止めたに決まってるだろ!!嘘ばっかつくな!!」
「証拠あんのかよぉ」
「お前しかいないだろ!!だいたい朝は無駄に早起きなくせにいつまでもモタモタ食べて…おい、トマトもちゃんと食えよ!残すなんて非人道的な…」
「あーもううるさいなぁ。そんなのんびりしてていいのぉ?遅れるよぉ学校ぉ」
トーストをかじりながら嶺亜はリビングの掛け時計を指差した。8時10分。あと20分で教室に着くなんてどこでもドアか天狗の抜け穴が開発されない限り不可能だ。
ひとまず続きは帰ってからするとして、身支度もそこそこに飛びだしロールスロイスをぶっとばしてもらってどうにか5分の遅刻で済んだ。5分は大目に見てもらった。安堵するとふつふつと怒りが再びこみあげてくる。
「おぼえてろあの小悪魔…今日という今日は許さん…泣いて謝るまで理論攻めで言い負かしてやる…」
爪を噛み噛み、その思案にくれた。
羽生田挙武は都内の超エリート校に通う高校二年生である。
容姿端麗、学業優秀、良家の子息と3拍子も4拍子も揃った彼の将来の夢はハリウッドスターになってアメリカに永住することである。ビバリーヒルズあたりでプール付きの家でエキサイティングな毎日を過ごすことが目下の目標である。
「羽生田くん、今朝はまた大慌てだったね。徹夜で勉強でもしてたの?」
クラスメイトが話しかけてくる。お上品な学校にはお上品な生徒しかいない。多少物足りなくも感じるが学校は穏やかに過ごすべきところだと割り切ることにしていた。
「いいや。双子の兄が…どうしようもない兄が俺の目覚ましを勝手に止めたんだ。ホント毎回いい加減にしてほしいよ。おかげで朝食を食べそこねた…あの小悪魔め、帰ったらどうやって泣かしてやろうか…」
呪詛を吐いているとクラスメイトは笑う。
「そっか。羽生田くんは双子なんだっけ。一度見てみたいね。やっぱりそっくりなの?」
「とんでもない!!似てるもんか!?俺はあんなに女々しくないし裏表の激しい二面性小悪魔でもないしトマトはちゃんと食べるしそれに…」
息を吸い込んで声高らかに宣言した。
「まともな神経の持ち主だ!!」
「なんかよく分かんないけど…仲悪いの?でも二人だけの兄弟なんでしょ?」
「仲が悪いわけじゃない!あんな兄だがいてもらわなくては困る。家を継ぐのは長男の役目だからな。俺には夢があるから会社はあいつに継いでもらわないと…」
そう、家は幾つものホテルを全国チェーンとして展開しているコンツェルンなのである。当然それを継ぐのは子である挙武か嶺亜のどちらかになるが一応長男は嶺亜である。
挙武は会社経営なんて夢のない仕事はまっぴらごめんだし将来のビジョンを早いうちから見据えてそれなりに努力もしている。だから当然継ぐのは長男である嶺亜なのだが…
「羽生田くんちは桁外れのセレブだもんね。お兄さんってさ、どこの高校通ってんの?開○とか麻○とか?ここにいないってことはここより偏差値の高いとこなんじゃないの?」
「それは聞いてくれるな。おっと授業始まるぞ」
嶺亜は地元の公立高校に通っている。しかも車で5分程度の距離だから毎朝あんなに優雅に朝食を食べている。勉強が嫌いなわけでもできないわけでもないが他に興味がいきすぎてそこそこどまりなのだ。ろくでもないことには恐ろしく知恵が回るくせに…
とりあえず、帰りにもう一つ目覚まし時計を買って嶺亜に分からない場所に隠してセットしておかないとな…
そう考えながら挙武は授業をこなした。
71ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:37:42.63 0
「あーもぉ寝グセついちゃってるよぉ。やだなぁもぉくせ毛はぁ」
髪の毛をいじいじしながら門の前で車から降りるとちょうど友人の高橋颯が通りかかる。
「あ、おはよう嶺亜。あれ、髪の毛変じゃない?」
「もぉ気にしてんだからさぁ。朝ご飯ゆっくり食べ過ぎて気が付いたらドライヤーの時間なくなっちゃっててさぁ」
「だったら朝ご飯を食べなきゃいいんだよ!どうせお昼にはお腹すくし」
自信満々に颯は言った。嶺亜はあーはいはいと適当に流しておいた。
高橋颯は一つ年下の幼馴染みである。この春同じ高校に進学するということで色々と高校について教えてあげている。相変わらず発想が突拍子もなく破天荒だ。こういうところは嫌いではないのだがたまについていけない。
お昼休みに二人で屋上で弁当箱を広げると颯は袋詰めされたパンをどかどかと出して来た。その全てがメロンパンである。
「見てるだけで甘ったるいよぉ。そんなに糖分摂ってるくせになんでそんな筋肉質なのぉ世界7不思議の一つだよぉ」
「糖分が筋肉にいいってことじゃない?嶺亜も食べる?」
「僕はいいよぉ。お弁当残して帰ったりしてそれが挙武にバレたらまたお説教聞かされるしぃ。そうだぁ、あのねぇ今日早起きして暇だったからぁ挙武の寝顔でも写メってやろうと部屋しのびこんだんだけどぉ
目覚まし時計が鳴ってるのに挙武ったらさぁ一向に起きる気配なくてさぁ一度止めて水でもかけて起こしてやろうと思ったら朝ご飯できましたよぉって言われてすっかり忘れてたら挙武が血眼でリビングに来てさぁ」
「嶺亜のイタズラは挙武にとってシャレになってないものばっかりだから…挙武怒ったでしょ。またこんなカッと目見開いてなかった?」
颯はそう言って挙武のヘッドライトアイズの物真似をする。けらけら笑っていると颯が急に何かに視線を奪われて話が中断されてしまった。
「あ…ふうん…なるほどぉ」
颯の視線の先にはとある人物がいる。そこで嶺亜は察した。
「かっこいいよねぇ。髪切ってなんか男らしくなったっていうかぁ…大人っぽく見えるよねぇ」
耳元で囁いても颯は聞いていない。ぽ〜っと魅入られている。
それを微笑ましく見ながら、暫く会話になりそうもないのでスマホをいじるとラインが入っていた。
「げ」
それは挙武からで、今夜は父親が客を連れて来て高級料亭に行くから予定は入れるなとあった。


.
72ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:38:51.19 0
挙武はイライラしている。腕に嵌められたスイス製の高級時計の針を見てまたそれが増幅される。
「何やってんだ嶺亜は…」
ラインは確かに既読になっている。6時までには家に帰って来いということも分かっているはずだ。
なのにもう5時55分にもなるのに一向に帰ってくる気配がない。電話をかけて呼び出そうとすると父親がやってくる。
「挙武、行くぞ」
「え?嶺亜がまだでしょ。それとも現地集合?」
聞き返すと父親はバツが悪そうに頬を掻きながらこう答えた。
「嶺亜はどうしてもはずせない用事があるそうだ。仕方がないから今日はお前だけ連れて行く」
「はぁ!?」
思わず叫んでしまった。しかしながらこれはいつもの嶺亜の常套手段である。嶺亜に甘い父親にのみ知らせるという…
「ちょっと待ってよ!なんで嶺亜だけ…だいたいあいつのはずせない用事って何?そこんとこちゃんと聞いてるんだろうね父さん!!」
詰め寄ると、父親は参ったといった風に両手を胸の前に広げる。
「聞こうとしたら…『パパは僕のこと信用してないのぉ?』って泣かれちゃって…嶺亜を泣かせるとほら、後が厄介だから」
「そんなん嘘に決まってるだろ!!だいたい父さんは嶺亜にだけ甘すぎる!俺だって本当は今日見たかったハリウッド映画の公開日だったのに我慢して来たんだぞ!それなのに…」
「分かった分かった。今度の連休ロスに行こう。最新の映画セットができたそうだから…それでいいだろう?な?待たせてあるから早く」
そそくさと父親は逃げて行く。挙武は収まりきらぬ怒りを抑えながら食事を終了した。そして…
「ここで降ろして」
帰り道、家の手前で車から降ろしてもらう。それは隣の家である。
インターホンを押すと「ふぁい?」と気の抜けるような高い声が返ってくる。名前と要件を告げると渋られたが半ば懇願、半ば圧力をかけてドアを開けてもらった。
「うちのどうしようもない我儘娘…じゃなかった兄がお邪魔してると思うんで」
「あ、でもぉ…嶺亜お姉ちゃんは…お兄ちゃんだったっけ?まぁいいやぁ…今お取り込み中で挙武お兄ちゃんが来ても通すなってぇ…」
「悪いけど緊急を要するから通してもらう。すまんな海人」
挙武が睨みをきかせると隣の高橋家の二男、海人はおろおろと道を開けた。声変わりもまだの中学三年生である。
「たのもう!!」
狙いを定めた部屋のドアを勢いよく開けると、案の定そこには嶺亜と幼馴染みの颯がいた。

.
73ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:40:36.17 0
挙武が嶺亜の小細工にブチ切れる少し前、コンビニで買ったメロンパンを食べながら嶺亜は颯と一緒に下校して彼の家に身を寄せることにした。
「嶺亜いいの?また挙武怒るよ」
「いいのいいのぉ。そしたら颯が助けてくれるでしょぉ」
「助けるとか無理っぽいんだけど。挙武が起こったら俺がどうにかできる感じじゃないよ」
「そんなことないよぉ。颯が一言言えば挙武はそれ以上強く出て来れないんだからさぁ」
そんな会話を交わしつつ高橋家の玄関をくぐると丁度颯の弟、海人が出て来た。
「あ、嶺亜お姉ちゃんこんにちはぁ」
エキゾチックな見た目に似合わぬマシュマロボイスで海人は挨拶をしてきた。もう中学三年生になるが声変わりはまだのようである。
「お姉ちゃんじゃないよぉ。海人どこ行くのぉ?ダンスレッスン?」
「うん。行ってきまぁす。お兄ちゃん、夕飯はママがカレー作ってくれたってぇ」
夕飯の報告をして海人はダンスレッスンに向かって行った。高橋兄弟は小さい頃からダンスを習っていて海人はヒップホップ、颯はブレイクダンスが得意なのだ。
「海人ってまだ僕のこと女の子だと思ってんのぉ?制服着てるのにさぁ」
「多分半信半疑かな。分かってはいるけどいざとなるとお姉ちゃんって言っちゃうっぽいんだ」
天然なのかなんなのか…さすが颯の弟だよぉと納得しながら嶺亜は颯と二人で映画のDVDを見たりゲームをしたりして過ごした。
その途中できちんと父親にも連絡はしておいた。嶺亜の計算通り、甘い父親は少し泣き真似をすると「仕方ないなぁ…今日だけだぞ」と折れた。
後はこうるさい挙武をなんとかしなきゃなぁと考えつつ颯の家でカレーをご馳走になった。そして再び颯と二人で宿題に勤しんでいると…
「たのもう!!」
ちょうど計算したぐらいの時間に怒りの形相の挙武が現れた。その後ろで海人がおろおろしている。
来たなぁ…と思いながら嶺亜は臨戦態勢に入る。
「嶺亜、俺の言いたいことは分かるな…?」
「挙武、まあまあちょっと落ち着いてメロンパンでも…」
颯があっけらかんとメロンパンを差し出したが挙武は首を横に振る。
「颯、邪魔したな。このどうしようもないろくでもない女々しい兄はちゃんと俺が連れて帰るから…暫くは勝手なことさせないつもりだから迷惑かけることももうないと思う。んじゃ!」
挙武は嶺亜の腕を掴んだ。
「今夜は寝かせないぞ…もちろんこれは口説き文句ではない、文字どおり徹夜でお説教だ。覚悟は出来てるよな、嶺亜!?」
「やだよぉちょっと離してよぉ寝不足はお肌の大敵なんだからさぁ。悪かったよぉごめんなさいごめんなさいもうしませんったらぁ」
「そんな軽口に騙されるか!これで何回目だと思う?記憶にある限り4歳の夏から数えてもう2789回目だ!2000回記念の時に初めて殴り合いの喧嘩をしたことを覚えてるだろう?記録は今夜でストップさせてやる」
「覚えてるぅ。僕が「なんだよぉもううるさいよぉ小姑挙武ぅ」ってほっぺたぺちんってやったら挙武が驚いて暴力に訴えるとは何事だって泣き叫んだんだよねぇほんと挙武って物理攻撃に弱いんだからさぁ」
「しっかり覚えてるじゃないか!暴力は俺の最も忌み嫌うところだ。だから今夜はみっちりと言葉のみで理解させてやるから安心しろ。とりあえず眠気覚ましのコーヒーは用意してきた!」
「コーヒーよりロイヤルミルクティがいいよぉ」
「そういう問題じゃない!なんなら眠眠○破を1ダース買ってやろうか?とにかく、ここだと迷惑がかかるからとっとと来い!」
「やだって言ってんだろぉ暴力反対ぃ!」
74ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:43:44.87 0
「暴力じゃない!俺は穏便に話し合いで決着つけようとしてるだろ!」
挙武が嶺亜の腕を再度ぐいっと引っ張ると海人のマシュマロボイスが後ろで響く。
「あのぉ…挙武お兄ちゃん…女の子に暴力はいけないと思うんだけどぉ」
颯が弟の間違いを正す。
「女の子じゃないって何度言ったら分かるの海人。嶺亜は男の子だよ。小さい頃一緒によくお風呂入ったでしょ?羽生田家のだだっぴろいお風呂」
「そうだっけぇ…昔すぎて覚えてないやぁ…」
高橋兄弟の呑気な会話をよそに挙武と嶺亜の口論は激化しようとしていた。
「うっさぁい!だいたいなんなんだよぉその鼻ぁ!ピラミッドかよぉ!」
「そっちこそなんだその白さは!太陽に申し訳ないと思わんのか!?ちゃんと紫外線は吸収しろ!!」
「余計なお世話ぁ!挙武なんかウニとイクラにまみれて溺れちゃえぇ!ばーか!」
「わけのわからん憎まれ口を叩くな!そっちこそトマトジュースで顔洗って出直して来い!」
「あ、言ったなぁ!挙武なんかトウガラシ飲まされてまたリバースしちゃえぇ!!」
「人のトラウマをやすやすと口にするな!!だったら俺も言わせてもら…」
「ちょっともう二人ともやめなよ!!」
挙武と嶺亜の永遠に続くかと思われる口論を一刀両断にしたのは颯の叫び声である。
シーン…と水を打ったように静まり返った次の瞬間、神妙な面持ちの颯が再び口を開く。
「目覚まし止めたり約束すっぽかしたのは嶺亜が悪いよ。挙武が怒るのももっともだよ。そうでしょ?」
「…そぉだけどぉ…」
不満そうに嶺亜は口を尖らせる。次に颯は挙武に向き直った。
「挙武も怒り過ぎ。セレブキャラのくせにキレキャラになってるじゃん…たった二人きりの兄弟でしかも双子なんだからもっと嶺亜に優しくなんなよ。本当は嶺亜のこと好きなくせに」
「…いや…でもな颯…」
挙武はばつが悪そうに天井を見上げる。
「兄弟っていいもんでしょ?俺は海人と喧嘩することもあるけどやっぱり大事な弟だし…嶺亜と挙武だって小さい頃からずっと一緒だから兄弟みたいなもんだもん。
だから二人が喧嘩するところは見たくないよ…まあ一日平均3.47回くらいは見てるけど…だけど本当はお互い仲良しって分かってるから仲良くしてほしいよ」
「…」
「…」
挙武と嶺亜は颯の説得にその勢いを完全に鎮火された。しかしながら、これもいつもの光景だった。挙武と嶺亜の口喧嘩を颯が止めるのは通算で6895回目である。
「颯お兄ちゃんかっこいいぃ…さすがお兄ちゃんだぁ…」
海人は感心している。颯はちょっぴり照れ臭かったが兄の背中は大きく見せなさいと親に言われて育った。それを実行で来てることに達成感を感じる。
感じているとすぐ側にあった携帯が振動した。
「あ」
それはラインで、その送り主は…
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
き、きききききききききききききき岸くんからだああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
跳び上がった颯は天井に頭をぶつけ、落下と同時にヘッドスピンでぐるぐる回りだした。その際の暴風で部屋の中はシッチャカメッチャカ、海人は跳ね飛ばされ左半身を強打し泣きだした。
それを見た彼の母親が「あれほど部屋の中でヘッドスピンはやめなさいと言ったでしょ!」と激怒りで挙武と嶺亜は巻き込まれないようそそくさと高橋家を後にしたのである。
75ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:45:30.78 0
屋敷に戻ると、嶺亜は凍りついた。
「嶺亜、そこにお座りなさい」
母親が般若のような形相で立っていた。元・女優で抜群の美貌を誇るが怒るとノストラダムスも裸足で逃げ出す程に恐ろしいマダムである。後ろで父親がおろおろと右往左往していた。
「マ、ママ、あんまり嶺亜を怒らないであげて…」
「あなたは黙ってなさい!全く…父親が甘すぎるからこの子がこんなに我儘娘…じゃなくて我儘息子になるのです!反省なさい!!」
一喝されて父親は黙りこんでしまった。
父親は嶺亜に甘いが母親はわけ隔てなく厳しい。今日は同じセレブ仲間のマダムとお茶会だと聞いていたから大丈夫だと思ったのに…
「嶺亜、あなたはこの羽生田家の跡取りでしょう…?そのあなたがお客様との食事をすっぽかすなんてこんな甘えた態度が許されるなんて思ってないでしょうね…」
ゆらりと首を回しながら母親は絶対零度を向けてくる。嶺亜の唯一にして最大の弱点がこの母親の絶対零度だ。その血を色濃く継いでるが故に恐怖を感じるのである。
「でもぉ…ママぁ…」
「デモもデモクラシーもありません!!朝ご飯のトマトを残したこともシェフから聞きました!!17歳にもなってトマトの一つも食べられないようでは立派なレディに…ジェントルマンになれませんよ!!
今からママが食べさせてやるからそこにお座りなさい!!」
「やだよぉトマトだけは死んでも嫌だぁ!」
食べるくらいなら舌噛み切って死んだ方がましだぁ、と叫ぼうとすると視界が遮られる。
挙武が前に立ったからだ。
「母さん、嶺亜がトマトを食べなかったのは朝俺と喧嘩したからだよ。それで時間がなくなってしまったんだ。
それに、食事会に出られなかったのは…嶺亜は颯と前から約束しててそれを家の都合で断るのは友達を大切にしなさいっていう母さんの教えに背くことになるでしょ?だからだよ」
「挙武…?」
なんと挙武は嶺亜をかばった。これは嶺亜の記憶が一番古い4歳の夏から数えてたった915回目である。数が多いように思えるが嶺亜はこの8倍はかばわれることなく付きだされている。
「どうしてあなた達は喧嘩をしたのです?仲良くなさいといつも言っているでしょう?」
だが母親のつっこみが別の方向から入った。それは…と挙武が口ごもっていると嶺亜が白状した。
「僕が挙武の目ざまし時計を止めちゃったからぁ…だから挙武が寝坊したのぉ。ごめんなさい、挙武ぅ…」
嶺亜が挙武に素直に謝るのは通算で12回目である。生まれてから6235日で12回。一年で平均0.7回だ。
「ママ、嶺亜も反省してるし、挙武もこう言ってるから許してあげようよ。家族仲良く!これが羽生田家の家訓だし」
父親が渾身の力で宥めてようやく嶺亜は御咎めなしで済んだ。


.
76ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:47:23.79 0
「疲れた…これというのも全てあの小悪魔のせい…」
へとへとになってベッドの上に突っ伏するとコンコンとノックがしてドアが開いた。入ってきたのは嶺亜である。両手にはゼリーカップと2本のスプーンが握られていた。
「食べるぅ?」
嶺亜が差し出してきたのは挙武が気に入っているコンビニスイーツだった。無言で受け取ると嶺亜は挙武の部屋のアームチェアーに座って蓋を開けて食べ始めた。
「これでチャラねぇ」
そんなこったろうと思った…と思いながら挙武も蓋を開ける。
「不公平すぎるだろ。母さんの折檻から救ってやって302円(税込)はないだろう。100個分くらいはするだろ」
「そんなことないよぉ。僕だって挙武が遅刻したことママに知られる前に救ってあげたんだからぁこれぐらいでちょうどかなぁってぇ」
「本当に口だけは達者だな…呆れるよ全く」
「それはこっちのセリフぅ」
ゼリーカップが空になった頃、羽生田家の家政婦がドアをノックした。
「お風呂のご用意ができてます」
「ありがとぉ。あのねぇお願いなんだけどぉお布団二つここに持ってきてぇ」
嶺亜は家政婦に蒲団の用意を申しつけた。一体何故?と思っていると風呂上がりにその疑問が解ける。
「…一緒に寝ろと?」
「やならいいよぉ。明日も遅刻しなきゃいいけどねぇ」
「…素直に一緒に寝たいと言えよ。全く、変なとこで意地になるんだから…」
ぼやきつつ蒲団に入ると嶺亜は満足げだった。
挙武は真っ暗にしないと寝られないが嶺亜は逆に薄明りでないと寝られない。ジャンケンの結果嶺亜が勝ち、薄明りで床につく。
嶺亜はすぐ寝付くが挙武は少し時間がかかる。これも双子でありながら全然違う。特に今夜は嶺亜の寝易い薄明りだから5分ほどして寝息が聞こえて来た。
「…」
浅い溜息をついて、挙武も目を閉じる。色々あったが世は全て事も無し。明日からまた色々とやるべきことはあるし…と考えながら眠りにつこうとすると、
「…あむぅ」
嶺亜の掠れ声が響く。なんだ?と言いかけたが寝がえりをうった嶺亜は目を閉じていたから寝言だということに気付いた。
「あむぅ、ごめんねぇ…」
やれやれ…と肩をすくめた。寝ている時なら…夢の中なら素直に謝ることができるんだな、と。
77ユーは名無しネ:2014/04/28(月) 23:55:44.82 I
その夜、挙武は夢を見た。小さい頃の夢だ。
「あむ、待ってよぉ、あむぅ」
高原の別荘に遊びに行った時、近くの林を探検していてさっさと進んでいく挙武に後ろから嶺亜が甘えた声を出す。早くしろよと急かすと嶺亜はむくれた。
「待っててくれてもいいじゃん、あむのいじわるぅ!」
「いじわるじゃないだろ、れいあが遅いのが悪いんだ。だいたい行こうって言いだしたのはれいあだろ」
喧嘩になり、拗ねた嶺亜は座りこんでしまった。しかも間が悪いことに雨が降り出した。二人とも傘を持っていない。
びしょ濡れになって帰ると二人とも母親にしこたま怒られてさんざんだった。しかも、その夜それが元で挙武は熱を出してしまった。
熱にうかされていると冷たいものが額に当たる。だるくて目を開ける気力がなかったがその声が微かに響いてくる。
「あむぅ、ごめんねぇ…」
朦朧とした意識の中で、その聞きなれた声がそう言った。生まれた時から聞いている声、この世の誰よりもたくさん聞いている声、だから聞き間違うなんて絶対にありえない。しかも、嶺亜が挙武に謝るのはそれが初めてであった。そう、5歳になってすぐのGWである。
だけど元気になってそれを問うと嶺亜は「そんなこと言ってなぁい。あむの勘違いぃ」と軽くあしらわれ笑われた。そこでまた喧嘩になった。
ふいに視界が白くなり、挙武はだるさと共に徐々に覚醒が促されてゆく。
朝だと気付いたのはそれから暫くまどろんだ後で、そのまどろみは次の瞬間一気に吹き飛んだ。
「あああああああああああああ!!!!!!!!!!!なんでこんな時間になってるんだ!?完全に遅刻だあああああああああああああもう!!!!!!!!!!」
目覚まし時計は死んだように止まっていて、時計の針だけがカチコチと動いている。昨日買っておいた二台目はあれやこれやで鞄の中に収められたままである。
確かに目覚ましはセットした。セットしたぞ、それなのに…
「あんにゃろう…」
もぬけの殻になった隣の蒲団を踏みつけると挙武はパジャマのままリビングにダッシュした。また優雅な弦楽合奏…ヘンデルの「水上の音楽」が聞こえてきて…
「ってそんなことはどうでもいい!!!嶺亜!!ふざけるなよお前!!今度という今度こそは許さないからなああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
嶺亜は優雅にコーンスープをすすっていた。そして涼しい顔をしながらこう言い放つ。
「僕はちゃんと起こしたよぉ。でも挙武全然起きないんだもん。僕に怒ってる暇があったら早く支度したらいいと思うよぉ。二日連続遅刻とかママが知ったら怖いよぉ」
挙武は息を吸い込んだ。
そしてありったけの大声で言い放つ。
「今日という今日こそそのフザけた態度を改めてもらう!!今夜は寝られると思うなよ、この小悪魔が!!!」







つづく
78ユーは名無しネ:2014/04/30(水) 20:50:21.07 I
作者さん最高です!!
やっぱり神7はForeverですね!!
79ユーは名無しネ:2014/04/30(水) 23:48:19.15 0
れあむうううううううううううううううううううううう
80ユーは名無しネ:2014/05/01(木) 00:50:14.40 0
高橋兄弟w
81ユーは名無しネ:2014/05/02(金) 07:24:22.61 I
神7 ショートギャグ
谷栗 オランジー○パロ

谷村龍一は列車に乗り込んだ。隣には栗田恵も一緒だ。
普段このアホにアホ扱いを受けていて、イラっとする時もあるがこのアホも割といいやつだ。
そんなことを思いながらふと前を見ると…超絶美女の色白小悪魔乙女、れあたんが座っていた。
谷村はそうだ、と思い、栗田に声をかけた。
「栗田、僕ちょっとあそこでオラン○ーナ買ってくるね!待っててね」
「うん!!ぎゃはは!早く戻ってこいよ!」

谷村は売店でオラ○ジーナを買っているとおばちゃんに声をかけられた。
「お兄さん、イケメンね〜」
こんなことを言われるのはいつも不憫で不幸な目にあっている谷村には久しぶりだった。
「ありがとうございます」
つい嬉しくなって口元を緩ませた。
しかしその瞬間栗田のダミ声が響いた。
「ぎゃはは!谷村!!ドア閉まってるぜ!!」
はっと我に返り、ダッシュで乗り込もうとしたがドアは閉まってしまった。なんとか後ろから飛び乗るが、その拍子に腰を打った。そして強風で飛ばされかけた。そして更に強風に耐えた際にまた腰をやった。
「……」
すっかりボロボロになって列車の席に向かおうとするが腰が痛い。
自我修復をしながらなんとか辿り着くと…。
「うふふ、栗ちゃん可愛いねぇ」
「ぎゃはは!れいあのほうがかわいいし!!!」
「……」
なんと栗田とれあたんは仲良くお話し中だった。
こんなアホなガキに先をこされるなんてと心が折れそうになるが、不幸な目は慣れている。めげずに小悪魔れあたんに話しかけた。
「あ、あの…これどうぞ!」
挙動不審になりながられあたんにさっき買ったオ○ンジーナを受け取るとれあたんはにっこり微笑んだ。
「ありがとぉ」
そう言ってから「栗ちゃん一緒にのもうねぇ」といちゃいちゃしながら蓋を開けた。
谷村は初めて会った相手にお礼を言われたはずなのに、この人とは何年もの付き合い、しかもかなり一緒にいた気がした。そのなかでもお礼を言われたのは初めてだと谷村は思う。
幸福感に浸っていると突然の不幸が訪れた。
なんとれあたんの顔にオ○ンジーナが勢いよく噴射されたのだ。
それは谷村が列車に乗る前の奮闘の証だ。
「あああああああの!!!すいませんごめんなさいもうしませんおしおきだけは勘弁してください…ほんっとうにす…」
谷村が必死に謝っていると絶対零度が飛んできた。
「谷村ぁ…。あとでおしおきぃ」
谷村はあまりの恐ろしさに泡を吹いて倒れた。
「ぎゃはは!アホだな谷村!!」
デジャヴ?なんかこんなことが日常茶飯事であったきがする…。
薄れゆく意識のなか、栗田の声と自分の思考がぐるぐる回っていた。


反応あれば続きます!
初めてなのに読んでくれた方ありがとう!
誤字脱字ご了承ください
82ユーは名無しネ:2014/05/02(金) 12:45:14.41 0
たにむ安定の不憫
クリエでも間違ってパンチされてるとか…
他のも読みたい!
83ユーは名無しネ:2014/05/02(金) 16:34:20.42 0
作者さん高橋海人出してくれてありがとう
この間クリエに行ったられあたんとか颯くんとかが見学に来てたよ
トラジャ組も神7組もかわいかった、明日からはまたコンサートも始まるね
84ユーは名無しネ:2014/05/02(金) 23:07:17.14 I
神7ショートギャグ
岸颯

みなさんは覚えているだろうか、あのCMを…。
作者は一部分しか覚えていない上にそこもかなりうろ覚えだ。

岸くんと颯はCMの撮影のためにとあるスタジオに呼ばれていた。
「岸くん!今日はなんのCM撮影するんだろうね!」
颯は大好きな岸くんと2人で撮影なんて、とウキウキだ。
「CM…、ついに神7もデビューの兆しか…。谷栗もなんか撮影したらしいし」
神7リーダーの岸くんはやっぱりウキウキだ。
実は2人にCMの内容は伝えられていなかった。
こんな2人で大丈夫なのかという心配はさておき、台本が渡された。
「「…‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」」
2人共目が飛び出るんじゃないかと心配になるほど驚いた。
「これは…」


一ヶ月後…
「岸くんと颯のCMは今日放送だな。良かったらうちのテレビで神7全員で見ないか?」
羽生田の一声で神7は全員集合したが、肝心の岸くんと颯はうかない顔をしている。
「栗ちゃん、岸と颯どぉしたんだろぉ?」
「ぎゃはは! CMでなんかやらかしたんじゃね?てかれあくり久しぶりだな!!」
中村と栗田は安定のいちゃいちゃ、
「あ、もしもしみずき?くらみずき久しぶりだな!」
『くらもっちゃん!そうだね!あ、電話代もったいないからあと10秒ね』
倉本と井上はツンとデレの温度差が半端じゃない。
「おいお前ら!!神7全員大集合は何年振りだよ!神宮寺様のこの腰フリをたっぷり拝め!」
神宮寺は相変わらずキチ…、素晴らしい腰フリを披露している。
「おお谷村、最近よくあうな」
「まあ…最近出番も増えて来たしね。作者Mが毎月一回ファンレターをくれるおかげかな」
「毎月一回!?まるでストーカ……。熱心なヲタ…ファンだな」
神7のエリート担当でおなじみの羽生田と谷村はファンのありがたさについて語る。

久しぶりだがずっと前から変わらない神7だ。

「あ!始まる!」
散々バカをやっているとついにCMが始まった。
「あ、これって颯と岸ぃ?」
『てってってってってってれってててってってれー細マッチョ…』
そこでテレビが切れた。
そして羽生田家の全ての電気が止まった。
停電か?そう言ってみんな辺りを見回す。
すると…
「竜巻…」
颯は恥ずかしさのあまりヘッドスピンで竜巻を起こしていた。
そしてその風圧で電線が切れたのだ。
「おい岸くん!これをなんとかできるのは君だけだ!早くあれを止めてこい!!」
羽生田は必死で叫んで岸くんが座っていた場所に目を向けた。
しかし岸くんはシャチホコポーズを保ったままフリーズしていた。

「…はっっっ!!」
羽生田は目を覚ました。汗びっしょりだ。
「嫌な夢を見たな…目覚めがよくない」
そう言ってリビングに下りた。
今日のニュースはなんだろうとテレビをつけた瞬間羽生田は仰天した。
「てってってってってってれってってってってってってれー細マ…」
羽生田は悪い夢を見ていると思いまた高級ベッドに潜り込んだ。
一時間後、学校に遅刻すると気付いて再び仰天し、絶叫することも知らずに…。
85ユーは名無しネ:2014/05/02(金) 23:08:53.41 I
乱文すいません。
調子に乗ってまた書きました
86ユーは名無しネ:2014/05/03(土) 20:11:06.91 0
昼ドラ 颯の心の葛藤

「もぉ岸口に付いてるよぉ汚ねぇなぁ」

「え、どこどこ!?!?拭いて拭いて!!!」

「もぉーしょうがないなぁ」

「うへへw」

何やってんだいあの二人

僕の岸きゅんがぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあの小悪魔乙女
美白皆の視線を独り占めぇおんn((
男に

とられちゃぅぅうぅぅぅう!!!!!

颯は小さい頃から変な妄想癖の持ち主で

自分に害のある妄想をした場合

高速ヘットスピンをするという

かなりの変人だ

颯は岸と付き合ってもないが

岸くん本気愛が凄すぎて

ただ間今心と葛藤中なのだ
87ユーは名無しネ:2014/05/07(水) 04:47:56.37 0
セクゾのコンサート行ったらたにれあが両手で恋人繋ぎして二人して弾けるような笑顔だった上にれあたんがそのまま全体重を谷村に預け挙げ句の果てには胸に頭をくっつけるような体勢になっていたよ
実はたにれあものすごく好きだから頭吹っ飛ぶかと思ったよ
久しぶりにまたたにれあの問題作も読みたいな…なんてね
88ユーは名無しネ:2014/05/07(水) 17:02:33.62 0
横浜アリーナバイバイDuバイ記念に


本日は晴天なり
谷村龍一は広がる青空を見上げながらそんなことを呟いた。
おりしも季節は5月、ツツジが咲き誇る麗らかな春…世間はGWだったがジャニーズJrにGWはない。4日間全てコンサートの仕事が入っている。
それでも谷村はそんな忙しさを嬉しく思っていた。何せ久しぶりのコンサートである。この春高校生になってようやく最後までいられる喜びに胸は躍っていた。
「おいそこ立ち位置違うぞ!もっとズレろ!」
しかし呑気に浮かれている余裕はない。必死に立ち位置や振りを覚えなくては二度と呼ばれなくなってしまう。バックダンサーとはいえ出演者の一人には違いないのだから少しのミスも許されない。
「…で、ここでJr紹介やるから。まずセクシーボーイズをマリウスが…」
Jrの中でも重要なポジションを与えられている彼らはしかし谷村よりも過酷な動きをこなしている。ふと周りの視線を見ると皆「いつか俺もあそこに…」といった眼をしている。もちろん谷村とて全く向上心がないわけではない。
「…」
真剣にスタッフの指示を聞いているJrの中の一人に谷村の視線は吸い込まれて行く。さっきまで必死にリハーサルの内容を頭に叩き込んでいたからその余裕はなかったが今は紹介Jr以外は休憩モードだから自然とそこに目が行ってしまった。
透き通るような白い肌に、髪を切って少しだけ短くなったその黒髪に真剣な眼差しが見え隠れしている。細い腕は17歳の男子のそれに比べてしなやかで、その全身から柔らかな美しさが溢れている。
一時期、肩を並べて活動していたのに今はなんだかひどく遠い存在のように思える。少し寂しさにも似た感情がかけめぐるがそれを無理矢理押し殺す意味で隣にいた菅田琳寧と他愛もない会話をしてごまかした。
「おいちょっと集まれJr!変更点今から言うぞ」
のんびりする間もなく変更点が告げられる。一日目、二日目とコンサートが全く同じ内容で進むことはまずない。
初日にはなかった変更が、昨日までこうだったことが、それがめまぐるしく変更するのはザラだ。こうして臨機応変に対応できる柔軟さが実は最もJrには必要だったりする。
「…で、次の曲…バイバイDuバイだけど、フォーメーションとフレンドシップの関係でバック増員。谷村、ちょっと来い!」
「…ふぁい!?」
突然呼ばれて谷村は驚いて変な声が出た。後ろで誰かがくすくす笑う。
「お前身長あるから追加な。フリは覚えてるよな?」
「…は、はい…」
こんなこともザラである。バックが増減するなんてさして珍しいことじゃない。むしろ出番が増えることは悦ぶべきことだ。谷村はそうポジティブに受け取ることにする。
「そんでこうきてこうきて…ここで二人組で向かい合って制止。おい谷村、お前はこっちだ」
振付師の指示に従って谷村は移動する。そこで二人組の相手が少しけだるそうに立っていた。谷村はその相手を確認して心臓が跳ねる。
「…よろしくぅ」
素っ気なく言って、その相手…中村嶺亜は振付師の指示に淡々と従っていた。


.
89ユーは名無しネ:2014/05/07(水) 17:03:13.76 0
「ヘイヘイヘイ!!横浜愛し合おうぜえ〜!!!」
コンサートは幕を開ける。谷村は雑念を振り払って集中しようと努めた。なんとか自分の出番はここまでミスなくこなせたのだが…
次だ。
青い衣装に着替えながら谷村は背中に汗をかいていた。もちろん、走り回ったり踊ったりして出た汗とは全く違う。
ある意味では…しくじったら振付師よりも誰よりも恐ろしい相手である。最終確認でも目も合わせず至って淡白に済まされたから何気にそれが精神的に響いているのだ。
考えてみれば、自分の前のシンメであるあいつが辞めて以来ほとんどろくに口もきいていない。元々共通の話題なんてないし性格も違うしこんな仕事をしていなければ出会うこともなかったし…それに…
あいつがいなくなってから、口にも素振りにも出さないけどやっぱり寂しいんだろうな、という感じはひしひしと伝わってくる。これは勘違いや考えすぎや深読みのしすぎとかではない。谷村は何故か確信があった。
それは、いつも見てるから。
だからその表情の細かい変化が谷村には分かるのだ。分かってしまうのだ。
時には目を逸らしたくなるくらい顕著に現れていて、どうしたらその曇りを除いてあげることができるのか、愚かな思案にも暮れた。自分なんかにどうにかできるほど彼は弱くない。余計なお世話でしかないだろう。
だから何をするでもなく、声をかけるでもなくもう一年近くにもなろうとしている。そういえば、去年のGWもここで一緒に仕事をして、その時はあいつもまだ自分のシンメで…
そんな思考に陥りかけてると肩を突かれた。
「何してんのぉ?早く着替えなよぉ次だよぉ」
一気に現実に引き戻され、谷村は超高速で振り向いた。そこには嶺亜がもう青の衣装に着替えていて…
「気ぃ抜くなよぉ。バックでもお前のことだけ見てるファンの子いるんだからぁ」
正論だけを言って、嶺亜は待機場所に向かって行った。
「…」
谷村は自分の両の頬をきつくはたいた。じんじんと痛みが伝わるがいい喝になったと思う。
失敗は許されない。真面目に、真剣にやらなきゃ。これはお遊びでもないしおふざけも許されない。ショーの邪魔をするわけにいかないんだ。例えバックでもアイドルはアイドル、舞台に立ったらファンの子に夢を与えなければ。
心を入れ替えて、谷村はステージに立つ。眩しいくらいに照らしつけるライトに勇気をもらってすでに頭に叩き込んでいる振付を懸命にこなす。
問題の個所…二人で手を合わせて数秒向かい合う、そこが近づくと否応なしに鼓動は早くなっていった。
90ユーは名無しネ:2014/05/07(水) 17:03:53.38 0
「…」
こんなにちっちゃかったっけ?とぼんやり思って自分の身長があの頃よりまた大分伸びているだけだということに気付く。少し見下ろすぐらいのその身長差がまた谷村の神経を昂ぶらせた。
黒いサラサラの髪、透き通るような白い肌に魅惑的な瞳が自分を捉えて見つめ合う…熱さのせいなのかなんなのか、谷村は頭がぼうっとしてしまう。すぐ近くにあるその嶺亜の顔に不思議な高揚感が呼び起こされ…
「…え?」
谷村はしかし、そうした幻想に浸ることを許されずぎょっとした。
合わせた掌から嶺亜が指をからませてくる。そして…
「…ちょ…」
思わず足に力が入る。踏ん張りをきかせていないとひっくりかえりそうなほどに重力がかけられて…
「れ、嶺亜くん!?」
まるで全体重を谷村にかけるかのように嶺亜はぐいぐいと押し寄せてきた。
「倒れちゃダメだよぉ。そしたら全部台無しだよぉ」
にたりと小悪魔的な笑みをたたえて、小声で嶺亜はそう呟いた。
「…ぎ…」
しかしこれはなかなかに辛い。そうこうしてる間にどんどん体重をかけてくる。大した重さではないがいかんせん動揺が先立ってしまって谷村は足が痙攣しかけているのを自覚する。
「ほら笑顔ぉ。苦しそうな顔してたらファンの子が何事だって思うじゃん」
「う…」
言われて咄嗟に笑顔を作ってみたものの、ひきつっていないか心配になる。だけど…
目の前の嶺亜は満面の笑顔だった。それは半分からかっているかのような笑いだったがそれでもその笑顔が自分に向けられて、こんな至近距離にあることを認識すると谷村は自分の顔面の筋肉が緩んでいくのが分かる。
態勢はかなり辛いのに、ずっとこのままでいたいと頭の奥で谷村の中の一番素直な人格が命じていた。
時間にして数秒…だけどその数秒だけはこうして見つめ合う喜び…それだけでなく、嶺亜特有の小悪魔めいた遊び心の餌食になっていることに悦びにも似た感情が全身を駆け巡っていた。
そして次の振りに変わる。そのまま手を繋いでくるくるとメインメンバーの周りを回る。
握った手に自然と力が入る。離したくない、だけどもう次の瞬間には離れていた。その温もりと感触だけが余韻のように掌に残っている。
「お疲れ。明日が最終日、皆疲れ残さないようにしっかり休んでがんばろう!!」
コンサート終了後、スタッフの締めに返事を返してJr達はそれぞれ着替えや帰宅準備にとりかかる。楽屋の中は当然のようにごちゃごちゃしていてこういうのが苦手な谷村はさっさと出ることにしている。
いつもなら、ここで出口に一直線だがその楽屋の前に来ると何故か足が止まった。
91ユーは名無しネ:2014/05/07(水) 17:04:22.26 0
まだいるのかな…
しかしいたところでこちらからどう声をかけていいものか…それより何より待ち伏せとか気持ち悪がられること間違いないだろう。浅い溜息をついて谷村は踵を返した。
「あ」
少し進んで、靴ひもがほどけてしまっていることに気付く。靴ひもを結ぶのは苦手だから面倒くさいな…と思いつつかがんでそれを結び直そうとしたその時である。
「…ひゃ!!」
いきなり頬に冷たいものが当たって反射的に悶絶してしまっておかしな声が出てしまった。
何事?と驚きつつそこに視線を合わすとコーラ缶があった。そのコーラ缶を持っていたのは…
「あげるぅ」
にこっと笑って谷村にコーラ缶を放ると機嫌良さそうに嶺亜は小走りで出口に向かって行った。
「…」
その冷たい缶を握りしめつつ嶺亜の後ろ姿をただ呆然と谷村が見つめていると突然彼は足を止めた。
そして、振り向きもせずこう言った。
「明日もちゃんと支えろよぉ」
谷村が返事をする前にもう嶺亜は廊下の曲がり角を曲がって行った。まるで、返事は決まりきっているから聞く必要はないとでも言いたげに。
支えるよ。
ずっと支えるよ。だからどれだけ寄りかかってくれても構わない。
誰もいない廊下で谷村はそう口にしていた。
そしてコーラを飲もうと缶を開けるとその中身が勢い良く吹きだして顔じゅうコーラまみれになり、さらにはその辺に飛散して通りかかったスタッフに谷村はめちゃめちゃ怒られた。




我らが天使を支える柱となってくれるのは、不憫な星の下に生まれた君しかいない。頼んだぞ、谷村

END
92ユーは名無しネ:2014/05/08(木) 00:18:51.35 I
たにれあやばい!
栗ちゃん懐かしいね…これからも小説に登場させたいな!
93ユーは名無しネ:2014/05/09(金) 02:01:49.10 0
早速の谷れあありがとう
れあたん最近高橋海人とふたり母子家庭みたいだけど頑張ってね
94ユーは名無しネ:2014/05/10(土) 19:08:30.91 0
横浜アリーナバイバイDuバイ記念(裏)


「龍一さん、今日はコーラ被って帰ってこないでね。お洗濯大変だから」
母親に小言を言われて谷村は「分かってる」と返事をして家を出た。
今日の横浜は平年をかなり下回る気温で5月とは思えない肌寒さだ。空を見上げると曇天で、GWの最終日にしては愛想のない天気である。
それでも谷村の足取りは軽かった。やる気に満ちていると言ってもいい。
電車に乗り込みながら昨日の回想に浸る。心なしかあの感触がまだこの手に残っている気がする。小さくて少し冷たい手…嶺亜の手の感触だ。
「明日もちゃんと支えろよぉ」と嶺亜は言った。だから今日は全身でその全てを受け留めるつもりで来た。俄然モチベーションが上がっていることを自覚しつつ外の景色を眺めていると…
「…?」
普段からほとんど着信のない自分の携帯電話が振動していた。鞄のポケットからそれを出して確認すると思ってもいない相手からの着信で思わず声をあげそうになった。
メールアドレスを交換した記憶はあったがそれが使われたことはほとんどない。それでもその名前はきちんと谷村の携帯電話のメモリに入っている。
『コンサート終わったらさっさと帰らずに楽屋○○の前で待っといて』
たったそれだけを簡潔にそのメールは記していた。


.
95ユーは名無しネ:2014/05/10(土) 19:09:49.56 0
バイバイDuバイの曲順が近づく度に谷村の体温は自動的に上がってゆく。だが浮かれているのとは少し違う。舞台裏で関西Jrと高橋海人の3人が披露する曲を舞台を見つめたまま聞いている嶺亜の背中を見ていると自然とそうした有頂天は消えて行く。
代わりにやってくるのは使命感にも似た思い。
嶺亜が何を思ってDuバイであんな気まぐれを起こしたのか、今朝メールをよこしたのか、谷村にはその真意は測れない。だけどそこに何かしらのメッセージがこめられているのかもしれないと勝手に解釈してその背中を見つめた。
そして曲が始まる。今日は心の準備ができているからパーフェクトに出来る自信がある。笑顔で嶺亜の体重を受け留めて見つめ合…
「…え?え?」
その顔がだんだん近づいてくる。身長差があるからそれは谷村の胸あたりに位置するが、それにしてもこれはまるで…
「…!」
心臓の音が嶺亜に聞こえやしないかと谷村は本気で危惧する。会場には爆音に近い音源が流れているがそれでも尋常ならざる鼓動の音に聞こえずとも触れられたら一発でバレる。
嶺亜の表情は見えない。何故なら、それを盗み見ることは許されない気がして谷村はただひたすら昨日言われた通りに笑顔を崩さずその態勢でいることしかできなかったからだ。
気がつけばコンサートは終わっていて、盛大な歓声の中嶺亜がステージ上でお辞儀をしていた記憶だけがぼんやりと残っている。
「あれ?谷村帰らないの?」
誰かに問われたが谷村は自分がどう返答したか次の瞬間には忘れてしまった。指定の場所で携帯電話をいじる振りをして待っていると15分後に彼は来た。
96ユーは名無しネ:2014/05/10(土) 19:10:44.96 0
「お待たせぇ」
柔らかい口調とは裏腹に表情は全くと言っていいくらいになかった。今仕方ステージの上で天使のような笑顔でファンに愛想を振りまいていたアイドルとは対極にある完全に無の表情。
だけどそれはぞっとする程に美しく、その絶対零度の冷たさが放つ凛とした美を目にすることを自分は許されたのだという不思議な優越感のようなものを抱いた。
「あの…嶺亜くん」
嶺亜の後ろを歩きながら谷村は問う。単純な疑問だ。
「何?」
「あの、俺今朝返事だけしか返してなかったけど…どっか行くの?だったら家に連絡…」
「行くよぉ。そこ」
嶺亜が指差した先は…
「え?ここで何を…」
谷村の質問には答えず、嶺亜はそこに入って行く。もうほとんどのJrが会場内にはいないだろうからそこもしんとしている。が、いつ誰が来るか分からない。だけど躊躇わず進んでいく嶺亜に導かれるようにして谷村は疑問符を打ち消して入った。
「嶺亜くん…?」
狭い個室内で向き合うと、さっきのステージの上でそうしたのとはまた違った心臓の変拍子がやってくる。何が起こるのか、どういう意図でこんなところに連れて来たのか分からないから余計にそれはひどく、殴りつけるように谷村の胸を打った。
「…声出すなよぉ、絶対にぃ」
そう命じたかと思うと嶺亜は谷村の両の頬をその手で包みこみ、そして…
「れ…」
その先を声に出すことができなかったのは、口を塞がれたからだ。
手ではなく、唇で。
97ユーは名無しネ:2014/05/10(土) 19:11:30.79 0
「…!!」
驚く間もなく、谷村の意識は強烈な閃光によって弾き飛ばされた。唇に伝わる柔らかい感触に、神経は一点に集中した。微かに柑橘系の匂い…いや、味?が掠めるのは嶺亜がガムか何かでも噛んだ後なのか、それともキスとはこういう味がするものなのか…
飛ばされた意識の向こうで谷村はそんなことを思った。
全身の筋肉が一時的に弛緩したのか、それとも神経がその一部分に一点集中されたからか谷村は足腰が立たなくなって閉じられた便座の蓋の上に腰をおろしてしまう。だが嶺亜はそんなこともおかまいなしに谷村に跨ってきた。
唇を離すと、向こうの見えない瞳で嶺亜はじっと谷村を見つめた。息遣いが感じられるほどに近く、瞳のガラスに自分が映っているのが認識できそうな気がした。
だけどその暇を与えず嶺亜は再び谷村の顔に自分のそれを近づけ、そして再び唇を重ねてきた。
どうして嶺亜がこんな行動におよんできたのか、谷村はその疑問の前にもう理性が毟り取られてしまう。あれこれ考えるのが馬鹿らしいくらいに震える本能を前面に出すと自分の中に爆発的な感情が芽生えるのを自覚した。
嶺亜の華奢な背中に腕を回し、きつく抱きしめながら暫く無言で唇を重ね合う。だけどだんだんそれだけでは足りなくなってしまって、谷村はもうすでに極限にまで上がりきったボルテージに従って本能のままに嶺亜を求めた。
「ちょっとぉ…調子のんなよぉ…」
乱れた息と共に嶺亜がそう囁いたがしかし抵抗はしない。これは受け入れてもらえるということだと勝手に解釈して谷村は彼の衣服の中に手を滑り込ませた。
すべすべの肌から体温が直に伝わってくる。抱き締めていて分かるが、全くごつごつとせずしなやかさすら感じるその体格も何もかもが谷村の神経を震えさせる。
「嶺亜くんっ…」
ほとんど吐息だけでそう囁き、谷村は嶺亜の全身に掌を這わせた。
「…」
谷村の拙い愛撫でも感じているのか、その瞳が潤みだす。まるで少女のようなそのいたいけな瞳に胸の奥から何かがこみあげてきて谷村は我を忘れて嶺亜にむしゃぶりついた。
98ユーは名無しネ:2014/05/10(土) 19:12:24.26 0
「はぁっ…」
嶺亜が大きく息を吐いたかと思うと、彼の体がぶるっと震えた。どうやら首筋が弱点らしい。そこに唇と舌を這わせるとまたびくん、と痙攣が訪れる。
「嶺亜くん…ここがいいの…?」
小声で囁くと、嶺亜は目をきつく閉じた。肯定とも否定ともつかなかったが体の反応で谷村はイエスであると確信する。すでにベルトを外しておいたから容易にそこに手を滑り込ませることができた。
「ちゃんとついてたんだ…」
疑っているわけではなかったがあまりにも中性的すぎて嶺亜にそれが存在することを半分忘れてしまっていた。そして今、それを確認して不思議な感慨が訪れる。谷村の愛撫でもうそれは十分な硬さを備えていた。2、3回さするといきなり耳たぶを噛まれた。
「いたっ…」
「調子のんなって言っただろぉ…どこ触ってんだよぉ…」
「だって…」
「だってじゃない。そこはダメぇ。離してぇ」
いつもなら、嶺亜の言うことに逆らえるはずもないのだが今谷村の中では色々壊れてしまって自分でも思ってもみない言葉がついて出る。
「じゃあ嶺亜くんがしてよ…。そしたら離すから」
嶺亜の目は『何言ってんのぉ?』と一瞬見開いた。だけど谷村には根拠のない自信があった。彼は首を縦に振るだろう、と。
そしてそれは当たった。嶺亜は憎たらしげに谷村を睨むとこう呟く。
「いつからそんな生意気になったのぉ…?」
その手は手際よく谷村のジーンズのチャックをおろしていた。小さな手が中に侵入してくる。暫く下着の上から擦ったあとで直に触れてきた。
「う…」
いともたやすく形勢逆転してしまった。経験ではかなうはずもないのか、嶺亜の手つきは男の性感を知り尽くしているかのように絶妙に刺激してくる。
99ユーは名無しネ:2014/05/10(土) 19:13:11.74 0
「はぅっ…あっ…」
抑えようとしても声が漏れてしまう。まるで全身に微電流でも通されたかのようにビリビリとした快感に包まれ、谷村は喘いだ。狭い個室内に自分の淫猥な声がこだまし、余計に興奮してくる。
「谷村ぁ、声出し過ぎぃ…誰か入ってきたらどうすんのぉ?」
「だって…無理だよこんなの…声出すななんて拷問…」
「自分が望んだんでしょぉ…?」
「そうだけど…それとこれとは…うぁっ…!」
「生意気なこと言った罰だよぉ。出るまでやめないからねぇ」
まるでおいたをした子を叱るような口調でそう囁いた後、嶺亜の手の動きは激しさを増す。そうなるともう谷村には太刀打ちできない。声を我慢することを早々に放棄して全身を快楽に委ねた。
「……くっ…!!」
自分の中から勢いよく粘液が放出されると果てしない充足感が包みこんでくる。うっすらと発汗する全身は燃えるように熱かった。
息を整え、閉じていた目を開けると現実的な光景が目に入ってくる。嶺亜はトイレットペーパーで手を拭いていた。事務的な動作だった。
「…あの…」
声をかけようとするとしかし冷たい目でとある部分を見おろされ、こう告げられた。
「早くしまいなよぉそれ」
「あ…」
羞恥心と、えもいわれぬぞくぞくとした悦びが沸き上がってくる。やっぱり自分は被虐趣味があるのかもしれない。だがそうされたい相手は限定されている。誰にでもそうされたいわけではないのだ。
だから谷村はその言葉に従う前に思わずこう口にしてしまった。
「嶺亜くんがして…」
案の定、絶対零度の視線で見下ろしながら嶺亜はこう返す。
「だから調子のんなって言ってるだろぉ。なんでそんなことまでしてあげなくちゃいけないのぉ?早く手ぇ洗いたいんだけどぉ。べとべとして不快なんだよねぇ。
だいたいねぇ、出る時はちゃんと言えよぉもう少しで服にかかるとこだったじゃん。そしたら洗濯してもらう時にすんごい厄介だからぁ…ほんと谷村って…」
一気に早口でまくしたてられ、これこそがまさに望んでいた返事であることを谷村は自覚し感動に似たものが全身を包んだ。
呆然とその美しい冷たさに魅入っていると呆れたような顔になって嶺亜は眉根を寄せた。
「ちょっとぉ…なんでもうそんな元気になってんのそれぇ…バケモンかよぉ…」


END
100ユーは名無しネ:2014/05/12(月) 00:48:38.71 I
たにれあきたぁぁぁ!!
テンションMAXになって夜中に1人でうぉぉって
なってたよ
作者さん乙です!
101ユーは名無しネ:2014/05/12(月) 08:04:16.82 0
たにむの変態っぷり最高です
102ユーは名無しネ:2014/05/12(月) 21:42:54.19 0
あがががががががg乙です
れいあくんがしてれいあくんがしてれいあくんが
103ユーは名無しネ:2014/05/15(木) 22:29:54.36 0
作者さんいつも楽しみにしてます!ありがとう!
嵐のwannabeっていう曲がすごい合うので、たにむらに歌ってほしいw
104ユーは名無しネ:2014/05/19(月) 23:52:51.32 0
作者さん
たにれあが兄弟の話が未完なのでずっと続きが気になってます
焦らずお好きなタイミングで良いのでいつか続きを書いて下さい
お願いします!
105ユーは名無しネ:2014/05/27(火) 15:02:41.26 0
久しぶりにたにれあで問題作が見れて嬉しいよ
スレ終盤いつも楽しみにしてたんだけど最近容量オーバーで満スレならずってのも多かったし
夏には神7周辺はどうなってるのかな
106ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 19:53:51.03 0
たにれあDuバイ記念番外編本高復帰祝い


ここは楽屋。リハーサルの休憩時間はJr達は思い思いに過ごしている。ゲームをしたりおしゃべりをしたり勉強をしたり…中には隅っこで寝ているのもいる。
本高克樹は勉強チームだ。鏡の前のわずかなスペースを机代わりに予習に勤しんでいる。半年Jrを休んで念願の第一志望の高校に合格したはいいが勉強についていくのに必死だ。Jr活動を言い訳にはしたくない。
隣では谷村龍一も同じように勉強をしている。彼の場合は輪の中に入りにくいのもあるようだ。さっきちびっこJrに「もう変なおじさん飽きた」と言われ自我修復ののち勉強に切り替えたようである。
「今日は物理にしよう。えっと…」
2〜30分もするとしかし喉が渇いてきた。午前中のリハでしこたま踊らされて汗をかいたせいだ。生憎手持ちのペットボトルは空だ。
仕方なく、自販機のあるフロアまで向かう。途中幾つもの楽屋を通り過ぎて行ったが静かなところもあればドアもあけっぱなしで大騒ぎのところもある。チラ見しながら歩いていると曲がり角で人とぶつかりそうになった。
「あ、ごめぇん」
そう言ってミルクティーのペットボトル片手に微笑んだのは中村嶺亜だった。
「あ、いえこちらこそ。嶺亜くんも飲み物買いに行ってたんですか?自販機ってこの下ですよね?」
何を隠そう嶺亜は本高の憧れの人である。といってもJrの先輩としてダンスが上手いから、とか歌が上手いから、とかではない。そういったごくごく当たり前の感情ではなかった。
「…」
通り過ぎた後、また二度見してしまう。後ろ姿までふんわりと可愛いオーラを纏っている。まさに天使。女の子だったらぜひ付き合いたい。密かにそう思っていた。
何せこれまで周りにいた男子と嶺亜は全く違う。軽いカルチャーショックのようなものもあり、またJrに入りたての頃色々と親切に教えてもらってそうしたことから本高の嶺亜への憧れは日増しに強くなっていった。
「あー、また嶺亜くんのこと二度見してるー」
振り向くとそこにはけらけら笑った松倉海斗がいた。
「いや、そんな…してないよ!何を根拠に…」
「嘘だー。してたしてたー」
きゃっきゃとからかってくる。松倉には誌面で嶺亜への思いをばらされたこともあり(もっともすでに周知の事実ではあったが)油断ができない。だけどもう確信しきった口調で彼は言った。
「嶺亜くんの楽屋、今嶺亜くんしかいないからさー。みんなであっちの楽屋で大トランプ大会するけど嶺亜くんはやらないって言って残ってたから本高行ってみればー?」
そんなことを言い放って松倉はスキップで去って行く。
「まったくもうまちゅくは…」
ぶつぶつ言いつつ自販機でお茶を買ってそれを飲みながら楽屋に戻ろうとするとそこが目につく。
楽屋の番号を確認する。嶺亜達が控えている楽屋だ。ちゃんと名前が記されている。
107ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 19:54:46.75 0
「…」
数秒考えた後、本高はその楽屋をコンコンとノックした。名目はなんでもいい、振りの確認とか立ち位置の確認とか…質問する振りをして少しでも二人で話ができれば…。
しかし返事はなかった。もう一度ノックしてみる。しばらく待つ。やはり返事はない。
「あのぉ…失礼します…」
いないのだろうか。本高はドアを開けてみた。
嶺亜はいた。確かにいた。だけど…
「…」
楽屋の真ん中で、薄いシーツを纏って寝ている最中だった。だから返事がなかったのだ。
疲れているのだろう、そっとして立ち去らなくては…
「あ、あれ?」
しかし気がつけば本高はポケットに入れていたスマホをたちあげ、カメラモードにしていたのである。スマホの画面には嶺亜の美しい天使のような寝顔が映し出されている。
無意識って怖い。これでまたフォルダのコレクションが増えるとか思ってしまっていることは否めない。いやいやだめだろこれは盗撮であって迷惑防止条例に引っ掛かる行為であるから…
しかしシャッター音が鳴り響いた。しかもその画像の確認までして保存してしまった。これはもう言い訳できない。
またスマホの中身を松倉に見られたらなんて言いふらされるか考えただけで怖い。今のことろ嶺亜は普通に接してくれているがそろそろ谷村のように扱われる危険もある。
消した方がいい。一瞬だけ堪能してこの後消去しなければ…
「なんで指が動いてくれないんだろう…何かの病気かな…」
いくらがんばっても消去キーに指がいかない。こんなに美しい寝顔を消すだなんてなんという非人道的行為…あ、これは違う人の口癖だったか…とにかく体が言うことを聞いてくれなかった。
「ん…」
そうこうしてたら嶺亜が寝がえりをうった。シーツに覆われていた体が露わになった。衣装のジャケットを脱いでいるからタンクトップ一枚だ。真っ白な肩と腕がそこから伸びている。
「…」
思わず唾を飲んでしまった。
108ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 19:55:48.61 0
確か思春期に入ると第二次性徴というものがあって男子は声変わりが始まり徐々に体に筋肉がついてがっしりしてくるはず…なのにこれはどうだ?まるで逆行しているかのように細くて滑らかでしなやかさすら感じる。
医者を志す者としては知っておかなくてはならない気がする…そんなものは個人差の範囲内だろという声も聞こえたが本高はその天の声を無視した。
柔らかそうな二の腕をじっと見ていると、ふつふつと沸き上がる感情が抑えられない。
触れてみたい。ふにふにしてみたい。どれだけ柔らかいのかこの手で確かめたい…
手を伸ばしかけて、思わずひっこめた。というのも嶺亜がまた寝がえりをうって触れそうになったからだ。
「…」
また唾が嚥下していく。今度はその脇だ。
実に不思議だ。成長期の発毛というのは誰にでも訪れるものである。保健体育の授業でもそう習った。現に自分にもその現象が訪れ始めている。
それなのにどうだろう。嶺亜の脇はまるで赤ちゃんのようにつるつるだ。抜いているわけでも剃っているわけでもない。ナチュラルなすべすべ感…。そこにも触れてみたくて欲求が次々に押し寄せてくる。
これは決してやましい意味でもいやらしい意味でもなく学術研究のようなもの…
そう、嶺亜の中性的な雰囲気はどこから醸し出てくるものなのかその謎を追求すべく、好奇心が沸いて出てくるのだ。
小学校の時の担任も「気になることや不思議なことはどんどん自分から調べて確かめて行きなさい」と言っていた。それを実行しようとしているだけだ。
「…はぁ…」
嶺亜が吐息を漏らした。今度は唾ではなく心臓が跳ねる。
閉じられた瞳とスーっと通った鼻筋、そして薄い唇とそれらを何倍にも際立たせる雪のような白い肌…いつまで見てても飽きない。ていうかこれも写真に収めときたい。本高はまたシャッターを切った。
しかし現物は写真よりよりリアルに鮮やかに五感に訴えかけてくる。こういうのをなんて表現したらいいんだろう…今度の現国の問題に出るだろうか。帰ったら調べなくては。
「…」
見つめているとどんどんそこに吸い込まれそうになる。気がつくとかなり至近距離で嶺亜の顔を見ていた。
ああ、美しい…こんな女の子がいたら迷わずお願いしますって言うのに…
だけど相手は男だ。しかも先輩だ。
普段から親切にしてもらってるのに盗撮したり劣情をもよおしたり寝顔をじろじろ見たり苦手な虫を「れいあ」と名付けて少しでも愛でられるよう克服しようとしたりするなんて恩知らずだし気持ち悪がられるしいけないことだ。
109ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 19:57:06.56 0
気を確かに持て本高克樹。お前には男の先輩の寝込みにハァハァするよりもやらなくてはいけないことがあるんだ。
もっとダンスも歌も上手くなってパフォーマンスに磨きをかけて勉学との両立を達成する。将来の夢である医者に向かって日々勉学に勤しみ、そして…
本高が自分自身を戒め始めたその時であった。
「なぁに?」
美しい瞳が開いて、可憐な唇が動いた。
本高は心臓麻痺をおこしそうになった。時間を巻き戻せるなら数分前に戻したい。
この状況は誰がどう無理矢理な論理的展開をしようとも最終的帰結は「寝こみを襲おうとした」ただ一つ。どう言い訳しても不可能。裁判なら確実に実刑モノだ。
もう駄目だ。明日から僕は嶺亜くんにとんでもない非人道ド変態痴漢野郎として汚物を見るような侮蔑の絶対零度を浴びせられるのだ。
生憎僕は谷村のようにそこに快感を感じるような性癖は持ち合わせていない。やっぱり好きな人には優しくされたい。でももうそれも終わりなんだそうなんだ…せっかく復帰したのにもうサヨナラだ。
「す…すいません…」
泣きそうになっているとしかし嶺亜はふっと笑う。こんな状況なのにその天使のような微笑みにクラっとくる。
その天使はこう言った。
「謝ることないのにぃ」
こんな状況においても優しい言葉をかけてくれるなんて感涙しきりである。本高は元々涙腺が弱いだけに泣きそうになった。先程とは違った種類の涙である。
「本高はホント可愛いよねぇ」
夢かなんかを見ているのだろうか?嶺亜はお得意の小悪魔な微笑みと共にそう囁く。
ぽや〜っと魅入っているとしかし嶺亜は少し目を細めて
「何しようとしてたのぉ?」
と問う。もちろん言えるはずがない。また背中に汗をかいた。
「え…えっと…」
口ごもっていると今度は嶺亜はけらけらと笑った。ころころ変わる表情もチャーミングだなぁ…とまた本高は状況を忘れてそう思ってしまう。嶺亜にはそんな魔力があるようだ。
「言えないようなことしようとしたんだぁ」
また表情が変わる。蠱惑的な微笑み…しかも嶺亜は本高の首の後ろに腕を回してきてまるで誘うように力をこめた。
110ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 19:57:51.50 0
「あ、ああああああああああああああああの…」
突然の展開にパニックに陥ってしまって本高は腰が抜けた。間抜けにもそのまま嶺亜に覆いかぶさってしまう形になった。密着し薄布越しに嶺亜の体の感触が伝わってくる。この時点で本高は頭が爆発しそうになっているが更に…
「いいよぉ何してもぉ。本高は可愛い後輩だもん」
僕の耳はついに幻聴まで聞こえるようになってしまったのだろうか?と本高はこの時本気で危惧した。
ハードな受験勉強から解放されて思わぬところにストレスの影響が現れて今ここにありもしないことを聞かせているのではなかろうか。今すぐ医者にかけこむべきなのかもしれない。
だけど…
「でもちょっと重いからぁ起き上がってもいいぃ?」
「はい…」
起き上がると嶺亜は可笑しそうに本高の顔を覗きこんでくる。
「可愛いぃ。真っ赤になってるぅ本高ぁ」
そう。もう茹であがった蛸のように顔が熱かった。心臓の鼓動もどえらいことになっていて皮膚を突き破って出てくるんじゃないかと思えるほどだ。不測の事態にもう頭も体も付いて行かない。
きゃっきゃと笑っていた嶺亜はしかし接近して本高の耳元で小声でこう囁く。
「ねぇ、本高はさぁ…キスしたことある?」
「え…?」
聞きとれなかったわけではない。どういった意図の下にこの質問が自分に投げかけられたのかを考えるが思考が付いて行かないだけだ。
「どっち?ある?ないぃ?」
「あ、ありません…」
その返答が望んでいたものだったのか嶺亜はふっと笑う。柔らかい、絹糸のような笑顔である。
「受験勉強大変だったでしょぉ?」
しかし嶺亜は急に話題を変えた。やはり意図は分からない。
「あ…ハイ。漫画もゲームも絶って集中しましたから。合格するまでの我慢だって自分に言い聞かせて」
「そっかぁ。じゃあ…」
嶺亜が視線を下に落としたかと思うと、次にとんでもない展開が訪れた。
「こっちも我慢してたのかなぁ?」
下半身に何かが当たった…かと思ったらそれは嶺亜の手だった。白くて割と小さめのその手が自分の大事なところを擦っている。認識した瞬間大パニックに襲われた。
111ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 19:59:08.55 0
「れ、嶺亜くん…!!!!!!?」
顎をカクカクさせていると、そのぞっとするような妖艶な瞳が目に飛び込んでくる。
「本高は自分でしたことあるのぉ?」
「あの…」
答えるのが躊躇われるくらい体が反応してしまっている。猛烈な羞恥心が押し寄せ、本高は泣きそうになった。
「答えてくんないならしちゃおうっと」
拗ねたように頬を膨らませると嶺亜は本高のズボンの中に手を入れてきた。ダイレクトにそこを掴まれ、思わず悲鳴に近い声が出てしまう。
嶺亜は「しっ」と無声音で囁くと顔を更に近づけて
「声出しちゃダメだよぉ。誰か入ってきたらどうすんのぉ」
すみません、と言おうとしたが声を我慢しようとするとそれができなかった。代わりに小刻みに頷くと嶺亜はくすっと笑う。
「やっぱり本高は素直でいい子だねぇ。可愛いよぉ」
慈愛に満ちた眼で見つめられているのと、物理的に快感を促進させられているのとで本高はクラクラしてきた。体温が上昇し、うっすらと汗が滲んでくるのを自覚した。
「気持ちいいぃ?」
「…ハイ…」
されるがままの状態でいるが、本高の中には一つの欲求が生まれつつあった。
「れ、嶺亜くん…」
「なぁに?」
考えるよりも先に声が出ていた。いつもの自分なら絶対にこんなことは言えない。そう、こんなことになっているからこそそれは口をついて出たのかもしれない。脳の奥で冷静に分析している自分がいた。
「キ…キスしてもいいですか…?」
一瞬、きょとん、と嶺亜は眼を見開いた。だがそれを本高が認識した瞬間にはもう小悪魔の瞳に戻っていて、微笑みながらこう返す。
「いいよぉ」
嶺亜はそっと目を閉じた。本高の記憶にとある映像がフラッシュバックする。
あれは…そう、JJLのパジャマパーティーのフリで嶺亜に「エアキス」を要求したことがあった。OAを見てそのキス顔を写メったっけ…
それが今、自分の目の前にある。しかも「エア」でなく「リアル」にできるのだ。本高の心臓は一層大きく脈打った。
「…」
嶺亜は手の動きを止めてじっと待っている。唾をごくりと飲んだ後本高は彼の肩に両手を置いた。そしてゆっくりと顔を近づける。
心臓が口から飛び出しそうだ。
顔が火を吹けるほどに熱い
震える腕を必死に宥めて本高は嶺亜の蕾のような唇に己のそれを近づける。
112ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 19:59:51.09 0
(うわ…!)
極限の緊張の中で神経は一点に研ぎ澄まされた。
柔らかい…
それだけ確認すると後はもう酩酊状態に近い眩みが訪れた。お酒なんて飲んだことはないけどきっとこういう状態になるんだろうな…とぼんやりとした意識の向こうで思う。
くらくらと目の前が明滅する中で視界がそれを捉えた。うっすらと目を開けた嶺亜は本高ににっこりと微笑む。まるで女神のように…
受け入れてくれてるのかもしれない、という期待が欲求を一気に肥大化させた。それはもう巨大な風船となって自分を覆ってしまったような気がする。気がつけば本高は嶺亜を押し倒していた。
「れ…嶺亜くん…あの…いいですか…?」
主語述語が滅茶苦茶であるが、嶺亜は理解してくれたのか小さく頷いた。
もう誰も僕を止められない。そう、僕自身でさえも。
不思議な確信と共に本高はアクセルを踏んだ。どこまでもどこまでも暴走してこのまま二人きりで世界の果てまで行こう。
本高の人格が満場一致でその結論に達したその時である。嶺亜が恥らいがちに指を唇に当てながらこう呟いた。
「いいけどぉ…でもぉ…皆が見てるよぉ?」
「え?」
そう言われて本高が顔をあげるとそこにはJrの面々がずらりと自分達を囲んでいた。
これは…これはどういう…さっきまで誰もいなかったし人が入ってくる気配すらしなかったのに?夢中になり過ぎて気がつかなかったというのだろうか。
それにしてもこの数は尋常じゃない。村木、琳寧、舜映、ヴァサイェガ光、松倉、松田…谷村までいる。彼らは無表情で自分を見おろしていて…
本高の頭は真っ白に更新された。ついでに視界も真っ白になった。何故かガクガクと地震のように足元が揺れ出し、そして…
113ユーは名無しネ:2014/05/30(金) 20:02:34.16 0
「おい本高、うるさいってば。とりあえず目覚ませよ」
聞きなれた声がすぐ耳元で鳴り響き、意識は急に方向を変える。けだるい体を起こして当たりを見回すと村木と松倉、松田が怪訝な表情でと自分を見つめていた。
「え!?…あれ…?」
ぎょっとしたが今自分の前には嶺亜はおらず、しかも楽屋の机に突っ伏して寝てしまっていたであろう痕跡があった。やりかけの問題集とノートが広げられていてそこには涎の跡がうっすらと滲んでいる。鏡にはぼさっとした自分が映っていた。
「お前さっきからさぁ訳分かんない寝言言ってたけど大丈夫?これ何本か言ってみ?」
村木が指を三本立てて茶化してくる。
「無理しすぎは良くないと思う。休憩時間はちゃんと休憩しなよ」
年下の松田がポカリを飲みながら諭してくる。
「嶺亜くんの夢でも見てたんじゃないのー?」
けらけら笑う松倉の冗談にようやく本高は繋がった。
夢だったのだ。
夢の中で僕は嶺亜くんとあんなことやこんなこと…思い出すとまた顔が熱を持つ。
「あ、赤くなったー。もしかして図星?」
さらにつついてくる松倉の指摘に必死で言い訳をしていると楽屋のドアがノックされ、それが開く。ひょい、と顔を出した人物を見て本高はひっくり返りそうになった。
「ねぇ誰かアイフォンの充電器持ってないぃ?充電やばくて困ってんだけどさぁ」
嶺亜がスマホ片手に入ってきた。そこで今しがたの夢の内容がフラッシュバックし、本高は穴があったら入りたいほどの羞恥心にみまわれる。
だが穴がないのでとりあえず楽屋の中にあったクロゼットの中に入ると周りから「勉強のしすぎでプッツンした」と暫く腫れものを触るかのように扱われたのであった。



END

>>104氏 あんなおどろどろした湿り気だらけの話を気にかけてくれる人がいたとは驚きです
長らく放置しましたが近日中に続きをあげられるよう尽力します
114ユーは名無しネ:2014/06/01(日) 20:57:26.53 0
>>104です!楽しみに待ってます!ありがとうございます!
それにしても蠱惑wタイムリーw
115ユーは名無しネ:2014/06/06(金) 20:54:15.48 0
本高www
谷村といいインテリ系の変態はみんなれあたんにいくんだな
116ユーは名無しネ:2014/06/06(金) 23:49:30.09 O
れいあはまったく蠱惑的だなぁ
117ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 17:02:53.18 0
日曜裏ドラマ劇場 「誰にも言っちゃダメ」


目が覚めると俺は嶺亜兄ちゃんのベッドにいた。
夢と現実が曖昧になっている半覚醒状態のままでゆっくりと身を起こす。隣には嶺亜兄ちゃんはいなくて、だけど温もりは残っていた。
時計を見るとまだ6時過ぎでカーテンの隙間から日差しが挿し込んでいる。今日もうだるような暑さであることを首の後ろの汗が示していた。
けだるい身体に鞭を打って立ち上がり、俺は嶺亜兄ちゃんの部屋を出る。そこで一気に覚醒が促された。
「あら龍一くん、どうしたの?嶺亜の部屋で寝てたの?」
洗濯ものを抱えた継母が嶺亜兄ちゃんの部屋から出て来た俺を見て目をぱちくりとさせた。
一気に血の気が引いた。
昨夜俺と嶺亜兄ちゃんがしていたことを知ったらどう思うかなんて考えなくても分かる。後ろめたさと怖さで眠気も何もかも吹き飛んでしまった。
「あの…」
声が上手く出せず狼狽していると、嶺亜兄ちゃんの声が前から響いた。
「昨日、龍一と部屋交換して寝てみたんだよ。たまには違うところで寝たいよねって二人で言っててさぁ」
にこにこと、無邪気な笑顔で嶺亜兄ちゃんは継母にそう告げた。うろたえる俺とは対照的に疑いなど微塵も抱かせないような清々しい表情で。
「あらそう。あ、もうこんな時間。お母さん今日も仕事夜までだから嶺亜、洗濯物取りこむのと夕飯はカレー作っておいたからそれ温めて龍一くんの分もちゃんと温めてあげてね」
ぱたぱたとせわしげに継母は抱えた洗濯物を持ってベランダに向かう。
ほっとしたのも束の間、嶺亜兄ちゃんはくるりと俺に背を向けて階下に降りて行く。
怒ってるのかな…
急に不安が訪れた。
正直な話、昨晩のことをよく覚えていない。自分が壊れてしまって無我夢中で嶺亜兄ちゃんを求めて…具体的に自分が何をしたのか、してしまったのかをはっきり思い出せずにいた。
ただ、燃え盛る炎のような熱さが自分を包んでいたように思う。そこだけは今も余韻のように残っている。
リビングに降りると嶺亜兄ちゃんはトーストにバターを塗っていた。朝のワイドショーを見ながら優雅に朝食をとっている。もちろん入ってきた俺には目もくれない。
受け入れられてるわけでも拒絶されているわけでもない。蛇の生殺し状態…
いつまでそれが続くのか。この先ずっとなのか、それとも…
自分の願望が「ずっと」を望んでいる…それを認識した時にはもう嶺亜兄ちゃんはトーストを食べ終わっていて、俺の真横をすり抜けて部屋を出ていった。


.
118ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 17:03:54.27 0
夏期講習を終えて帰宅するとカレーの匂いが鼻腔をくすぐる。リビングに入ると嶺亜兄ちゃんがキッチンの前に立っていた。
「ただいま」
返事はなかった。まるで誰もいないかのように嶺亜兄ちゃんは鍋の中のカレーを掻き交ぜている。分かっていたことだから俺は荷物を置こうと自分の部屋に向かおうとした。
「お継父さんがね」
ふいに、背後で嶺亜兄ちゃんの声が響いた。俺は反射的に立ち止まり、振り向く。嶺亜兄ちゃんはまだ背を向けたままだ。
「さっき電話してきて、仕事が早く終わったからお母さんが仕事終わるの迎えに行ってそのついでに家にも寄るから皆で外食しようってぇ」
まるで独り言のように嶺亜兄ちゃんは淡々と説明する。俺はそれを一生懸命脳にインプットしようとした。
だけど、外食するならなんでカレーを温めているのか…その疑問に達すると同時にカレーを皿に盛りつけながら嶺亜兄ちゃんは言った。
「でも僕は龍一とカレー食べるからって答えておいた」
振り向いた嶺亜兄ちゃんの顔は貼りついたような能面で、まったく表情が読み取れない。
にもかかわらず、俺は何故か泣きそうになる。
きっと自分でもその時の感情をどう露わしたらいいのか分からなくて、それが溢れ出たんだと思う。食卓に乗った二つのカレー皿を不思議な感慨と共に見つめている俺をよそに嶺亜兄ちゃんはカレーを食べ始めた。
小さな口に上品な仕草でスプーンを運び、ゆっくりと嶺亜兄ちゃんは食べる。俺は知っていた。嶺亜兄ちゃんは食べるのが遅い。それは少しずつ口に入れるからだ。
猫舌なのも知っている。熱いものは暫く冷ましてからでないと食べない。それに…トマトが大の苦手だ。その証拠に用意された野菜サラダにはトマトが入っていなくて、俺の分のサラダに不自然に沢山のトマトが入っている。
119ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 17:05:15.35 0
「…」
会話に乏しい食事だったが二人きりで向き合って食べていると不思議な充足感があった。時計の秒針を刻む音と、食器が擦れ合う音だけが谺する。考えてみればこの家に来て以来、嶺亜兄ちゃんと二人きりで食事をしたことはない。
そんなことをぼんやり思っていると、ふいに沈黙が破られた。
「昨日の夜のこと」
肩が震えた。一瞬で鼓動が速くなる。
「誰にも言っちゃダメだよ。分かってると思うけど」
睨みつけるような鋭い眼差しを向けながら嶺亜兄ちゃんはそう告げる。俺は黙って頷いた。
「バレるような言動もダメ。今朝僕がごまかさなかったらお母さんが勘付いてた可能性もあるんだから、ちゃんとして」
もう一度、俺は頷く。それだけ確かめると嶺亜兄ちゃんはあとは何も言わず黙々と食事を進める。俺の方が大分早く終わったが動けなかった。
嶺亜兄ちゃんがスプーンを口に運んでいるその仕草に、何故か下半身の血のめぐりが促進されてしまう。
淡い、薄い唇の動きに目が離せない。
時折覗く赤い舌にどうしようもなく脳髄が震えさせられる
飢えにも似た渇き…大波のように押し寄せる欲求が今にも溢れだしそうになる。
吸い寄せられるようにそこに魅入っていると、嶺亜兄ちゃんの眼が一瞬見開かれる。そこにはわずかな戸惑いが含まれていて、しかしそれはすぐに払拭されてしまった。
「なに?」
そこで俺はようやく自覚する。無意識に嶺亜兄ちゃんの頬に手を伸ばしていたことに。


.
120ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 17:06:40.29 0
勉強をしながら、俺の意識は全く違う方向に向いていた。
「…」
何をしていてもどうあがいてもずっと嶺亜兄ちゃんのことを考えてしまう。戻そうとしても戻そうとするほどにより強くこびりついて離れない。
時計はもう12時を過ぎていた。だけど眠気は全くない。クーラーをつけることすら意識から飛んでいたからじっとりと汗をかいていた。
喉の渇きを覚えてキッチンに向かうとリビングから灯りが漏れていて、話声が聞こえる。何故か俺はドアの前で立ち止まってしまった。
「…けど良かったよ。実を言うと心配で仕方がなかったんだ。思春期のこの時期に再婚だなんて子どもたちはどう思うのかって」
父の声だった。晩酌をしているのか継母の声も聞こえてくる。
「安心するのはまだ早いんじゃない?龍一くんが負担に感じていないはずがないでしょ。内部進学がかかった大事な時期に他人と暮らすことになって思うように成績が伸びなかったりしたら…。
まだまだ私達に心を開いてるとは言い難いし…私も努力してるんだけど、どうしてもよそよそしくなってしまって」
継母はわずかな不安を口にしていた。俺が一向に馴染む気配がないからだろう。
だが父はそれとは逆に楽観視しているようだ。
「龍一はああいう子だから気にしない方がいい。昔から人見知りが激しくて、誰にでもああなんだ。学校でも友達と呼べる存在もごくわずかでね、先生にもよく心配されていたよ」
カチャン、とコップが擦り合う音がして父はこう続ける。
「嶺亜が素直ないい子で良かった。正直、かなり救われてる。龍一のあの性格は同じような年ごろの子には多分うっとおしく思われるんじゃないかって心配だったんだけど、今日も家族皆で…と外食の誘いをしたら龍一と食べるから二人で楽しんでおいでって言われてね」
「あらそうなの。でもね…」
継母の声のトーンが急に下がる。
「あの子は素直には程遠い子よ」
121ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 17:10:28.00 0
断言するかのようだった。父の疑問を孕んだ声が続く。
「どういう意味かな?無理してるってことか?俺達の前では素直ないい子を演じてるっていう…」
「そうじゃないの。あの子は性格的には明るくて人懐っこい子だってのは母親の私もよく分かってる。昔から色んな人に可愛がられたし。だけどね…」
「だけど?」
「…父親を早くに亡くして、何かがあの子の心の中にぽっかり穴を開けてしまったんだと思う。あの子、普段は私のこと困らせたり心配させたりワガママも言わないんだけど…」
浅い溜息混じりに継母は語る。俺はいつの間には全神経を聴覚に集中させていた。拳にはじっとりと汗が滲んでいる。
「時々それが爆発するのかしら…ぎょっとするような形でそれを示すの。そんなことしなくても、素直に言えばいいのに…歪んだ表現で表そうとして…。
あの子の中で何か一定のラインがあって、そこを超えてしまったらどこまでもいびつな形になっていくような…上手く言えないけど」
酒が入っているからなのか、継母の様子がいつもと違うというのは分かる。父もきっと、普段見せない継母の顔を察しているのか冷静な口調で返す。
「どういうことだ?よく分からないんだが…」
「いつだったかしら…あの子が小学校低学年ぐらいの時…腕を骨折して帰ってきたことがあったの。学校の先生が職場に連絡してくれて…階段から転げ落ちたんだって本人が言ってて…って」
「それが?」
「それがね、運動会の直前のことで…。あの子、運動はそんなに得意じゃないけどそれでもクラスのリレーのメンバーに選ばれたんだって嬉しそうに言ってて。
でもその日、私はどうしても抜けられない仕事があってどうがんばっても運動会を見にはいけなくて、あの子はじゃあ仕方ないねってあっさりしてたから大丈夫だと思ったんだけど…
こんな形で本心を示したことに驚いてしまって結局休みをとって運動会の日はあの子も家にいたの」
「考えすぎじゃないか?どうしてそんな…」
「私も最初は偶然だと思った。だけど家にいて絵を描きながら嶺亜が『どっちみち僕の走ってるところは見れなかったよね』って呟いたのを聞いて、ああこれはあの子なりの反抗で、だだをこねた結果なんだって思った。しかも、その時描いていた絵はリレーの絵だった…」
母は溜息を洩らす。その深さがドアを隔てて伝わってくるようだった。
「今回のこの再婚も、話した時あの子は特に反対もせず、嬉しがることもなく淡々とそれに従ったけどどう思ってるのか私にはさっぱり…。今のところあなたとも龍一くんとも上手くやってるようだけど…」
背筋が冷たくなる。
もしかしたら、嶺亜兄ちゃんは…
そう思いかけた時、背後で音がした。反射的に俺は振り向く。
だけどそこには何もなく、誰もいなかった。澱んだ空気だけが静かに漂い流れている。
俺は足音をたてずに階段をあがった。


   to be continued…?
122ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 19:27:22.35 I
作者さん乙です!
たにれあシリーズ待ってました。
嶺亜くんの過去とか本心がだんだんわかってきましたね!

読んでいてワクワクします
これからも楽しみにしてます
123ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 21:01:48.41 0
作者さんお疲れさまです!まってました!続きも楽しみです!
124ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 21:43:21.42 0
リクエストした者です!感無量!
本当にありがとうございます!
続きも楽しみにしてます!
125ユーは名無しネ:2014/06/08(日) 23:32:08.35 0
作者さん乙です
たにれあたまらん
126ユーは名無しネ:2014/06/11(水) 23:14:26.10 I
神7で卓球

作者が卓球部に入ったので書いてみました

岸 優太
相変わらずの不憫発揮で球が顔面に直撃したり球を踏んで転倒→後頭部強打→アホにアホ呼ばわり

橋 颯
自身のヘッドスピンのようなキレキレの回転でメンバーを圧倒させる。
焦ると卓球台の上でヘッドスピンを始める

神宮寺 勇太
とりあえず面倒で早く終わらせようと試みるが負けず嫌いな性格を発揮して最後まで全力で戦う
審判が綺麗なお姉さんだと異常な強さを発揮させる

中村 嶺亜
「僕も点欲しいなぁ(はぁと)」と可愛く微笑みながらのスマッシュで点を稼ぐ
試合休み中はチアガールでメンバーを応援

羽生田 挙武
回転のかけ方や速さのコツを全て計算で割り出して優勝を狙う
ラケットは張り切って超一流品使用しかし全力を尽くすあまり破損

倉本 郁
自分なりに頑張ってみるものの空腹には勝てずに食パンをかじりながら試合をする
井上の声援を受けて異常なパワーを発揮

栗田 恵
ルールがわからないがアホ故の野生的カンでなんとかやり過ごす
運はいいので運だけで勝ちを狙う

谷茶浜 龍一
盛大に空振り→アホにアホ呼ばわり
127ユーは名無しネ:2014/06/12(木) 00:04:13.82 I
谷茶浜とか懐かしいw
ところで栗ちゃんはいったいどこにいってしまったのだろう……
辞めたみたいな噂はあったけど実際どうなの?
128ユーは名無しネ:2014/06/12(木) 20:33:35.80 I
126です
読んでくれた人ありがとう
携帯だから予測変換で谷茶浜って出たみたい。
指摘されて初めて気づきました
部活で疲れてたからかな…

ア…栗田はたとえやめてても神7は永久不滅のForeverだから問題ない!
129ユーは名無しネ:2014/06/14(土) 15:58:29.09 0
谷茶浜www
作者さん乙です! (わたしも卓球部です)www
しかしたにれあやばいなー作者さん頑張って!
130ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 03:52:07.66 I
神7イメージで作詞してみました


『Letts Go‼︎』


1、2、3、4、5、6、7、8!!

だから俺たちは走り続ける
傷だらけの過去は捨てて
振り返らず 前だけをみて
もう一人じゃないから
さあ Letts Go!!

何度も壁にぶつかりながらも
足跡(軌跡)刻みながら
歩いてきた道
でももうそれすらも薄れている

涙隠した 土砂降りの雨
まだやまないまま
心の中でずっと 降り続いてる
生きることとか諦めてない?

雲の切れ間から
まっすぐな光見えたら
今すぐにそう 行こう!

だから俺たちは走り続ける
過ちだらけのこの世界で
あの頃の夢叶えるため
怖くないから前だけを見て
俺たちは一人じゃないから
さあ Letts Go!!

消えかけた 地図 握り締めて
忘れてた物 探しながら
歩いてく道
でも気持ちは迷いかけてる

悔しさ隠した「どうでもいい」
まだ消えないまま
心の中でずっと繰り返されてる
あの頃の夢とか諦めてない?

闇の中から
希望が見えたら
今すぐにそう行こう!

だから俺たちは走り続ける
絶望だらけのこの世界で
あの時見た希望見つけるため
自分信じて このままじゃ駄目だから
俺たちはもう一人じゃないから
さあ Letts Go!!
131ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 03:53:43.20 I
なんか文字化け?になった
題名は『Letts Go!!』
です
132ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 08:20:56.99 0
作者さんすげー!
乙乙です!
133ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 11:22:29.20 I
谷茶浜がなんで予測変換で出たのかは不明です
もっといろいろ書きたいけどネタが思いつかないorz←使い方合ってる?
2ちゃん初心者だからわからない

ネタのリクエスト募集
134ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 20:02:34.58 0
日曜裏ドラマ劇場 「誰にも言っちゃダメ」


闇の中に一人、気配を殺すように嶺亜兄ちゃんは蒲団の中にうずくまっていた。
俺が入ってきたことに気付いていないはずがないが、微動だにしない。もちろん、声を発することもない。
ただ蚕のように静かにそこにいた。
「嶺亜兄ちゃん」
声をかけても、返事もない。一切の接触も持たないという意思が伝わってくるようで一瞬俺は怯んだ。
重い一歩を踏み出すとしかし見えない壁が立ち憚る。
「来ないで」
完全な拒絶を、その声は色濃く示している。昨日の夜とは全く違った声色だ。従う他に選択肢を与えない絶対的な強制力が働きかけてきて、俺は体が動かなくなった。
「出て行って、これからは勝手に入ってこないで。僕はもう寝るから」
「嶺亜兄ちゃん」
動けないが、声はまだ出せる。俺は嶺亜兄ちゃんの名を呼んだ。
「俺は…」
「駄目。お継父さんもお母さんもまだ起きてる。いつ二階に上がってくるか分からないから絶対駄目」
そうじゃないんだ、と俺は嶺亜兄ちゃんの声を遮った。
「嶺亜兄ちゃんは、父さんと継母さんの再婚に反対だったの?俺達と暮らすのが嫌だったの?」
空気が張り詰めている…そんな気がして俺は足が震えた。
だけど続けずにはいられなかった。
「だから俺とあんなことをしたの?継母さんに思い知らせようとして…」
俺と嶺亜兄ちゃんがしていたことがばれれば両親は穏やかでいられない。どちらも嫌悪するだろうし、このままではいられない。一気に家庭崩壊の危険をはらんでいる。
135ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 20:03:13.88 0
『こういうことでしか、表現できないんだよね』といつか嶺亜兄ちゃんは言った。俺の『どうしてこんなことをするの?』という問いに。
母親が再婚し、見ず知らずの他人と暮らすのが…あるいは母親が知らない男と一緒になるのが嫌だ、と言えないから…だからこうやって…
俺は継母の今さっきのぼやきからそう推測し、結論付けた。それなら全て辻褄が合うからだ。
だけど、それは全く見当はずれだということを、起き上がって暗闇の中でも薄ぼんやりと見てとれる嶺亜兄ちゃんの表情が示していた。
「何を言ってるの…?」
理解不能、という意志がそこには現れていた。てっきり俺は「そうだよ。だから…」と冷たく嶺亜兄ちゃんが言い放つのを予測していたからそれは予想外もいいところだった。
その嶺亜兄ちゃんの反応に面くらってしまって黙りこくっていると、嶺亜兄ちゃんの顔は能面のような無表情に戻って行く。そしてまた蒲団を被って俺をシャットアウトした。
「嶺亜兄ちゃん」
弾かれるようにしてどうにか動いた身体を近付かせると、いきなり目の前に何かが飛んでくる。
それは枕だった。軽い衝撃にうろたえていると、次に耳を刺すような大声が轟く。
「出て行けって言ってるだろぉ!!お前の顔なんか見たくもない!!さっさと出て行け!!出て行け!!」
いきなりの感情の爆発に俺が硬直している間にも嶺亜兄ちゃんは取り乱したように叫ぶ。その声を聞きつけた両親がやってきて部屋の灯りをつけた。
「どうしたんだ?龍一、嶺亜…一体何を…」
「嶺亜…?あなたどうしたっていうの…どうしてこんな…」
「龍一、説明しなさい!嶺亜、落ち着いて。この子が…龍一が何かしたのか?おい龍一!」
父の目は俺を責めている。継母は嶺亜兄ちゃんを落ち着かせようと必死で声をかけていたがそれでも嶺亜兄ちゃんは同じことを叫び続けていた。
俺は答えを間違ったんだ。
消えてしまいたいほどの自己嫌悪と否定の向こうで、ただそれだけが嫌にはっきりと脳に刻まれていた。


.
136ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 20:03:39.29 0
「昨日はごめんなさぁい」
次の日の朝食で、嶺亜兄ちゃんは家族全員にそう言って頭を下げた。
「龍一にゲームで負けたのが悔しくて、ついむきになっちゃった。もうあんなことしないから許してね、龍一ぃ」
いたずらっこが謝罪を求めるように、愛らしい仕草で嶺亜兄ちゃんは言う。
だけどその眼は俺には向けられていない。
その声は俺にかけられたものじゃない。
そんな気がして、俺は自分がどういう反応を示して、どう返事したのか分からなかったが父と継母はほっとしたような顔をした。
「そんな下らないことであんな子どもみたいに喚いて…お母さん恥ずかしい。嶺亜はいい子だってお父さんも言ってくれてたのに」
「だからごめんなさいって言ってるじゃん」
嶺亜兄ちゃんはむくれたように頬を膨らませた。
「いや、いいんだよ。もしかしたら龍一が嶺亜にひどいことをしたんじゃないかって昨日は心配でよく眠れなかったから安心した。そんな風に素直な感情を出してくれてむしろ嬉しいよ」
「パパは優しいなぁ。ママと大違いぃ」
無邪気に笑って、嶺亜兄ちゃんは父ににっこりと微笑む。
「龍一君ごめんね、この子たまにこういう子どもっぽいところ見せるから…懲りずにつきあってやって」
和やかな朝食だった。嶺亜兄ちゃんはきゃっきゃと終盤に差し掛かった夏休みの予定について話していたし父も継母もそれに答えている。ただ、俺だけが暗く沈んだ気分で味の分からない朝食を自動的に口に運んでいた。
137ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 20:05:50.95 0
「もうちょっとがんばらないとな…今から集中だぞ」
悪いことというのは集中して起こるもので、その日夏期講習で返還された模擬試験の結果は最悪だった。ちょうど、嶺亜兄ちゃんと初めて誰にも言えないことをした時に受けた試験だった。
これを父に見せたら怒られるどころでは済まないかもしれない…暗澹たる思いを引き摺りながら帰宅すると、リビングで嶺亜兄ちゃんが携帯電話片手にテレビを見ていた。
「…」
なんとなく顔を合わせ辛くて黙って通り過ぎる。嶺亜兄ちゃんもこちらに一切視線を向けることはなかった。無言の拒絶…いや、無関心が肌を突き刺してくる。
もし、俺がちゃんとした答えを導き出せていたら…
そうしたら、嶺亜兄ちゃんは俺のことを少しは受け入れてくれたのかな
そんな仮定が頭の中をぐるぐると回っていた。だけどそれはやはり仮定論でしかないのだろう。現に俺は選択を誤り、こうしていないものとして扱われている。
そう、嶺亜兄ちゃんにとって俺の存在はもうゴミ以下でしかない。
俺は嶺亜兄ちゃんに嫌われてるんだと思ってた…だけど今、嫌ってもくれない。あるのは果てしない無関心と拒絶のみ
それを認識した瞬間に視界が揺れる。叫びだしたいくらいの絶望が今になって俺を飲みこんでゆく。
蜃気楼のように揺れる影
閃光のように瞬く脳の奥の風景
それらはあっという間に俺の全てを支配した。まるで悪魔が乗り移ったかのように…
「何す…」
やけに近くに嶺亜兄ちゃんの声が聞こえた。
そうして目の前にある嶺亜兄ちゃんの顔は驚きと戸惑いに満ちていて…
俺は無意識のうちに嶺亜兄ちゃんを押し倒していた。


   to be continued…?
138ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 21:25:57.10 I
『谷茶浜凜』

かなり前に登場して、今では忘れかけていた谷村龍一、高橋凜のユニット、谷茶浜凜。

1stシングルは爆発的大ヒットを見せ、バラエティでも引っ張りだこの2人。
しかし2人のくらーい性格は変わらない。
相変わらず目が死んでると言われる。

そこでジャニーズ事務所の上層部、中年純情隊はまた密かに始動した…。

「うーん、谷茶浜凜は大人気だがやはり問題は2ndシングルだな…」
仲村が呟く。
「そうですなぁ…。あまり暗いとすぐに飽きられるリスクもありますし…」
羽生はうーんと考え込んでいる。
「明るさも少し取り入れたほうが…」
峰岸は溜息をついた。
覚えている人はいるのだろうか、中年純情隊。
久しぶりの登場だ。
このスレのPart2あたりでは準レギュラー化していた中年純情隊だが、だんだん忘れかけられていた。
139ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 21:26:49.33 I
この2人、谷茶浜凜は2012年デビュー以来、シングルを一
枚しか出していない。
「俺たち、ずっとシングル出してないよね…」
「やっぱ捨てられたのかな」
「もともと自滅用のユニットだからな、どうせ…」
「もういいや、静かに生きていこう…」
相変わらず聞いているこっちが頭痛を起こすような会話を繰り広げる2人。
作者は小学3年生のころから頭痛持ちだが、この2人が原因なのではと中学1年の今日までずっと疑っている。しかし優しい作者はいい加減2ndシングル出してやれよと可哀想になったので自分で出してやることにしたのだ。
感謝して欲しい。

〜上層部〜

AM10:20〜
「今回の曲のコンセプトは?」
「いやー、2人共普通にしていれば綺麗な顔立ちですから、明るい性格のように見えなくもないですからなぁ…。ギャップ萌え、と言ったところでしょう」
「2人は暗いイメージが根付いていますから、明るい曲で勝負ですかな…」
「ですね!」
「では早速作ってもらいましょう」
〜AM10:25
こうして5分で会議は修理した。

後日…

「谷茶浜凜さん、新曲です」
楽屋にスタッフが新曲の歌詞を持ってきた。

「ありがとうございます…」
2人で一枚の紙を覗き込んだ。
「お、『Twin Star ~星屑のなか~』だって。綺麗な曲名だね」
「そうだね」
2人は少しだけテンションが上がる。
140ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 22:06:43.15 I
『Twin Star~星屑のなか~』

輝く星屑のなか
僕は誰にも気づかれない
地味な星
名前も持たないこの僕は
他の星たちに 埋れている
僕は「主人公」にはなれない
個性 輝き 「人気」
そんなものなんて僕にはない
生まれてきた意味なんてあるのかな
生きる意味をずっと探してる…

輝く星屑のなか
僕は今生まれてきた
小さな星
何もない僕は いつも
他に星たちの引き立て役
僕はずっと「脇役」
華 輝き「軌跡」
そんなものなんて僕にはない
生きる意味なんてあるのかな
生まれた意味をずっと探してる…

自分だけのステージを
探し続ける
そんな時 キミと出会った
生きてる意味 生まれた意味
見つけた

Star Rush!!

そうさ僕らはTwin Star!
2人でいれば輝き放つ
怖いものなんて何もない
億兆の星屑のなかで
僕らは強く光り続ける
今までの劣等生な僕らはもういない
変わりたい
変わるんだ
Twin Star!2人なら
慌ただしく セカイは動き始めるよ
波に 呑まれても 人に流されても
夜空を見上げて
光り輝くTwin Star
見つけたなら
主役はキミさ
何千何億の中
キミと出会えたキセキがあれば
後悔しない 絶対

生きてる意味 生まれた意味
見つけたから

“Smile Again”
141ユーは名無しネ:2014/06/15(日) 22:08:55.24 I
「「…」」
谷茶浜凜は涙をボロボロこぼしていた。
「凜…」
「龍一…」
「俺、凜と出会って少しだけ明るくなれたんだ」
「龍一、俺もだよ。龍一がいなかったらきっと今の自分はいなかった」
「これは俺たちの歌だ…!」
「早く振りと音覚えよ!!」
「うん!」
2人の周りはキラキラと輝いている。
瞳はそれ以上に光が宿る。
龍一と凜は幼少期以来のはしゃぎっぷりだ。
そして…

「さあ始まりました。今夜のM○テ、ゲストは只今人気沸騰中、谷茶浜凜のお2人です!」
「こんばんは…」
「お久しぶりです…」
「今夜は谷茶浜凜の2ndシングル、『Twin Star~星屑のなか~』を歌っていただきます。谷茶浜凜のお2人、この曲の注目ポイントは?」
「はい、この曲は僕と凜のシンメのダンスや、パワーアップした歌も御注目して頂きたいです」
「そうですか、楽しみですね!ではスタンバイお願いします!」
「「はい!」」
142ユーは名無しネ:2014/06/16(月) 06:41:28.98 I
Twin Star~星屑のなか~』

龍:輝く星屑のなか
僕は誰にも気づかれない
地味な星
名前も持たないこの僕は
他の星たちに 埋れている
僕は「主人公」にはなれない
個性 輝き 「人気」
そんなものなんて僕にはない
生まれてきた意味なんてあるのかな

生きる意味をずっと探してる…

凜:輝く星屑のなか
僕は今生まれてきた
小さな星
何もない僕は いつも
他に星たちの引き立て役
僕はずっと「脇役」
華 輝き「軌跡」
そんなものなんて僕にはない
生きる意味なんてあるのかな

生まれた意味をずっと探してる…

龍凜:自分だけのステージを
探し続ける
そんな時 キミと出会った
生きてる意味 生まれた意味
見つけた
Star Rush!!
そうさ僕らはTwin Star!
2人でいれば輝き放つ
怖いものなんて何もない
億兆の星屑のなかで
僕らは強く光り続ける
今までの劣等生な僕らはもういない
変わりたい 変わるんだ
Twin Star!2人なら

慌ただしく セカイは動き始めるよ
波に 呑まれても 人に流されても
夜空を見上げて 光り輝くTwin Star

見つけたなら 主役はキミさ
何千何億の中
キミと出会えたキセキがあれば
後悔しない 絶対

龍:生きてる意味
凜:生まれた意味
龍凜:見つけたから
“Smile Again”
143ユーは名無しネ:2014/06/16(月) 17:50:19.36 I
この曲には全国が注目した。この曲の為に2人はボイストレーニング、振りの練習に全力で励んだ。しかし注目されたのはそこではなく…

“ジャニの新ユニ暗すぎワロタ”のスレを抜かし、勢いランキングで1位になった、“ジャニの新ユニの変わり方w”より…
「おいどうしたwwwニート臭しなくなったぞwww」
「目に光が宿ってるとか谷茶浜凜じゃねえwwwww」
「変わりすぎワロタwww」
などとレスがたつ。

でもやっぱりそこはTRQ。ちなみにお色気地帯のNewシングルではない。谷凜クオリティだ。CDは爆発的大ヒット、音楽ランキング1位制覇…

「やったね、凜…もう自滅とか思わずに堂々と生きられるね…」
「うん。今度は僕たちで作詞作曲して見たいね…」

頑張れ谷茶浜凜、作者は君たちを応援し続けるぞ!!


To Tanichahama rin


Congratulations

Tanichahama rin is “Forever”


From Author
144ユーは名無しネ:2014/06/16(月) 21:27:02.37 0
>>117
リクエストした者です
楽しみにしていました!
つづきが気になるけど、終わっちゃうのも嫌で複雑です
145ユーは名無しネ:2014/06/16(月) 21:30:10.78 0
>>144>>117はアンカミスで>>134
次回のたむれあに期待
146ユーは名無しネ:2014/06/22(日) 00:07:52.87 0
『おしおき』

「んっ...はぁっ...っはぁっ...はぁっ...」
室内に大人になりきっていない少年の乱れた吐息が響く。
その乱れた呼吸が落ち着くか落ち着かないかという頃に---
「ねぇ、あの子と僕と、どっちが良かった?」
この一言で、呼吸が止まった。どうやらこの甘ったるいセリフが心の中を読み取ったようだった。
「僕、分かってるよ。顕嵐だって本当は女の子の方がいいって」
「ち、ちがっ」
「あー、違うんだぁ」 甘ったるい言葉の主は、完全に相手の心をもてあそんでいるようだ。
「だったら、僕がキレイにしてあげる」
すぐに、また室内に卑猥な音が響く。お互いの唇を、首筋を貪るように口づけを繰り返す。
その合間にも「れいあ...嶺亜くん...」とささやく声がする。
しかし、相手の声は聞こえない。

わずかの時間で再び吐息に変わる。すぐに果ててしまったようだ。
何かを拭う音がすると、また甘ったるい声が聞こえた。
「やっぱり、体は素直じゃん」
147ユーは名無しネ:2014/06/22(日) 20:33:59.84 0
日曜裏ドラマ劇場 「誰にも言っちゃダメ」


「やめてよ…何のつもり?」
「嫌だ」
俺は知らず、そう口にしていた。手には嶺亜兄ちゃんの細い手首がある。そこに力をこめると嶺亜兄ちゃんの顔が苦痛に歪んだ。
耳の奥で轟音がなっている。まるで雷雨か濁流か瀑布か…とにかくそれは俺の理性を粉々に打ち砕き、滅茶苦茶にしてしまっている。それをもう一人の自分がひどく客観的に、冷静に見ていた。
受け入れてもらえないのなら
無関心を貫かれるぐらいなら
それならいっそ嶺亜兄ちゃんを傷つけて嫌ってもらいたい。憎悪でも嫌悪でもいい。俺に感情を抱いてほしい。
なんでもいいから、俺を見てほしい。
欲求が一点に絞られたことによって自分でも思ってもみなかった行動に俺は出ていた。
「やめ…」
抵抗しようとする嶺亜兄ちゃんを力づくで押さえつけると、次にその唇を塞いだ。
嶺亜兄ちゃんはもがきながら抵抗を続ける。だけど体格も腕力も遥かに俺の方が勝っているから全くと言っていいほどそれは意味をなさない。
むしろ、そうやって抵抗される程に爆発的な興奮が訪れ始める。いよいよもって危険な領域に達しようとしていたその時…
「…っ」
ふいに、肩に痛みが走る。
嶺亜兄ちゃんに噛みつかれたのだ。鈍い痛みがじんじんと神経の昂ぶりを抑制してくる。
「お前が僕を押し倒すなんて100年早いよ、龍一…」
息を乱し、震える声で嶺亜兄ちゃんはそう呟いた。そこに余裕は全く感じられなかった。
「こんなことして一体何がしたいの…もし今お母さんが帰ってきたりしたら…」
「誰にも言わない」
叫んだつもりだが、それはほとんど声になってくれなかった。
148ユーは名無しネ:2014/06/22(日) 20:34:55.46 0
「誰にも…父さんにも継母さんにも言わないから…絶対に誰にも言わないから…だから…」
そばにいさせて
俺のことを見て
そう続けることができなかった。声はどこかに吸い込まれてしまって響きとなることはなく…
声の代わりに俺を見上げる嶺亜兄ちゃんの頬を何かが濡らした。
それは涙だったように思う。
後から後から溢れ出て来るそれを、自分の意思で止めることができず嶺亜兄ちゃんの美しい白い肌が次々に濡れて行った。
見開かれた嶺亜兄ちゃんの眼が次の瞬間に警戒の色を湛えた。視線はリビングのドアに向く。玄関の開閉音が聞こえたのだ。
自分でも驚くほど素早く俺は嶺亜兄ちゃんから離れていた。リビングのドアが開く時にはもう距離があったが…
「ただいま…龍一君?どうしたの?」
買い物袋を両手に下げた継母が俺を驚きの表情で見ている。
涙を拭いきれてなかったからだろう。後ろで嶺亜兄ちゃんがすぐさま切り替える気配がした。
だけど俺は嶺亜兄ちゃんが口を開く前にこう答えた。
「…模試の結果が最悪で…父さんにきっと怒られるどころじゃすまないと思ったら怖くて…嶺亜兄ちゃんに相談してたんだ。自分が情けなくて涙が出てきて…」
嘘やごまかしは大の苦手だった。
勉強は得意だったが、咄嗟の言い訳や臨機応変な頭の回転はひどく鈍く、言葉はいつももつれてでてこない。なのに今、驚くほどつらつらと嘘と偽りが滑るように出てくる。
誰にも知られないために
それが自分に今までなかった力を与えてくれていた。
149ユーは名無しネ:2014/06/22(日) 20:35:54.95 0
「そうなの…。そんなに良くなかったの?龍一君の成績のことは私には良く分からないけど…きちんと話せばきっとあの人も怒るだけではないだろうし、まだ挽回はできるんでしょ?だからそんな…泣かないで」
心配そうな眼を継母は俺に向け、こう続けた。
「私達の再婚で色々気疲れして勉強が思うように進まなかったんでしょう?言ってみれば私達のせいでもあるんだから一緒に謝りましょう。ね、嶺亜?」
それまで呆然と見ていた嶺亜兄ちゃんは、継母にそう問われて意識を戻す。
いつもの仮面の顔に戻る。
「うん。僕もそう言ってたんだよ。大丈夫だって龍一ぃ。そんなことで泣くなよぉ」
にっこりと偽りの笑顔と優しいうわべだけの言葉を嶺亜兄ちゃんは俺に向ける。だけど俺は満足だった。
「今日はね、龍一君の好きなクリームシチューにしようと思って。フランスパンも買ってきたからそれでも食べて元気出して」
「ねぇママ、サラダにはトマト入れないでねぇ」
無邪気な嶺亜兄ちゃんのその声とは裏腹に、その瞳の奥に混乱が宿っているのを俺は見逃さなかった。



     僕は龍一に嫌われてるんだと思ってた。


僕はいざという時に素直になれない。
自分でもどうしてなのか分からない。小さい時からお父さんはいなかったけど、その記憶はないし欲しいと思ったことはあまりない。時々友達がお父さんに肩車してもらってるのを見てちょっぴり羨ましく思うくらいだった。
お母さんは仕事で忙しくしていたけど僕の話はよく聞いてくれた。保育園であったこと、小学校であったこと、多分くだらないであろうその話に仕事で疲れて帰って来た時も嫌がらずに聞いてくれていた。
愛想だけは良くて、大人の人には好かれた。いつも素直ないい子だって先生が褒めてくれた。
だけど僕は、いざという時素直になれなくて物凄くひん曲がった形でそれを示してしまうことがある。自分の中で何かラインがあって、そこを超えるとそれが発動する。普段眠っている僕の中のいびつな感情が爆発するんだ。
「ママ、僕ねぇリレーの選手に選ばれたのぉ。絶対観に来てねぇ」
小学校二年生の時、運動会のリレーの選手に選ばれた。運動は得意じゃなかったけど、たまたま僕のクラスには足の遅い子が多くて僕のタイムでも上位になれたから選ばれて、それが凄く嬉しかった。
だけど…
150ユーは名無しネ:2014/06/22(日) 20:37:46.34 0
「嶺亜ごめんなさい。お母さんね、その日どうしても出なくちゃいけない会議があるの。場所も遠いから間に合いそうになくて…本当にごめんね。そのお仕事が片付いたらお休みが取れるから嶺亜の行きたいところややりたいことさせてあげるからね。本当にごめんね」
なんで?僕はがんばったんだよ。来年はもうリレーの選手になれないかもしれない。今観に来てくれないともう僕が運動会で活躍してるところは観れないかもしれないのに。
それが声に出ることはなかった。僕じゃない誰かが「そっかぁじゃあ仕方ないねぇ。お弁当美味しいの作ってねぇトマトは入れちゃやだよぉ」って返事していた。
運動会の数日前、僕は昼休みに階段からわざと落ちた。鈍い痛みが左腕に走って骨折だと診断された。全治一カ月だった。
骨折した僕を家に放置できなかったのかお母さんはその日から休みを取った。運動会の日、僕は欠席をして家にいた。絵を描きながら僕はこんなことを呟く。
「どっちみち僕の走ってるところは観れなかったねぇ」
お母さんは驚いたような顔をしていた。
多分、僕がわざと骨折したこともその時分かったんだと思う。だけど叱られることはなかった。
快晴の青い空を見上げながら僕はどうして自分がこんなことをしてしまったのか考えた。でも答えは出なかった。
それから何度かそういうことがあったけど、中学生になった頃からあまりそれが発動することはなかった。成長するにつれ感情のコントロールもできるようになったしそう神経を揺さぶるような出来事もなかったからだと思う。
そう、お母さんの再婚が決まって龍一に会うまでは。
「よろしく嶺亜くん。これは息子の龍一で…中学三年生だから嶺亜くんより一つ年下かな。龍一、挨拶しなさい」
龍一、と呼ばれた子は緊張気味に頭を下げた。そしてほとんど聞きとれないくらいの小声で名前と挨拶をする。
美しい男の子だった。
年下だ、と言われなければ2,3歳年上だと錯覚してしまいそうなほどに大人びていて、憂いを帯びた瞳はくっきりとした二重でミステリアスな雰囲気を放っている。
整った顔立ちとは裏腹におどおどとしてぎこちない。なんだか不思議な生き物に出会ったというのが第一印象だったように思う。
「仲良くしてあげて。この子は人見知りが激しいからなかなか素直に感情が表に出せないんだ」
「うん。よろしくねぇ龍一君…あ、弟だから龍一でいいよねぇ?僕のことは嶺亜兄ちゃんでいいよぉ。ずっと弟か妹が欲しかったから嬉しいよぉ。あ、パパも嶺亜でいいからねぇ」
僕はその時違和感を感じた。
151ユーは名無しネ:2014/06/22(日) 20:39:26.12 0
また、僕じゃない誰かがしゃべっているような気がする…
だけどこれは本心に近いし、嘘を言ってるわけでもない。仲良くすることで両親も安心するし僕も今はなれなくて少し堅苦しい思いだけどお継父さんも優しそうだしすぐに打ち解けられる自身もある。何がなんでも嫌だってわけじゃない。お母さんの再婚には別に反対じゃない。
引っ越した先の家は新しくて広くて快適だし高校にも近い。何より、お母さんが仕事の量が大幅に減らせて毎日帰ってきたら温かいご飯ができているのが嬉しい。それまではできあいのものを買ったり、レトルトで済ますことが多かったからだ。僕にとってはいいことばかりだ。
嫌じゃない。なんにも嫌じゃない。それなのに、この胸のざわつきはなんだろう?
自問いする一方ですぐに僕は違和感の原因に気付く。
龍一だ。
お母さんやお継父さんがいる前では普通に龍一と話すことができるのに、誰もいない時…龍一と二人きりになるとそれができない。どうしてか、いないものとして扱ってしまって一切目を合わせることも会話をすることもできない。
幸いにも龍一の方から話しかけてくることはなかったからなんとかやりすごしていたのだけれど、ある日帰宅してリビングで携帯を見ていると龍一が話しかけてきた。
「嶺亜兄ちゃん、さっき母さんから電話があって…。宅急便が来たら受け取って判子を押してって言われたんだけど…。判子どこにあるか分かる?」
なんでもない内容だし、ある場所を告げれば済むだけだ。人見知りの龍一が少し無理をしてそう訊いてきたのが分かるから普通に答えるべきだった。
それなのに僕は黙って判子だけを置いて部屋を出てしまった。
背後で龍一の溜息が微かに聞こえる。
両親の前ではいい子を演じるのに、二人きりになると冷たい兄…龍一の中できっと僕はそんな位置づけなのだろう。自分でもこれは良くないと思っているのにどうしても素直になることができなかった。
素直に、龍一にことが好きだって認めることができなかった。
152ユーは名無しネ:2014/06/22(日) 20:41:21.18 0
自分でも気付いてしまっている…どう考えたって普通ではないこの感情を素直に受け入れることもできないし、龍一にいつか女の子の恋人ができてしまうということも認めたくなかった。
何より、龍一に知られるのが怖かった。
どうせ嫌われるのなら…
どうせ手に入らないのなら…
とことんまで嫌われよう。この感情を消去できるように。
そのタイミングで、両親が二日間家を空けることを伝えられた。
神様の悪戯か、悪魔の誘いか…僕の中で不穏な雲が充満して、それは巨大な手と化して背中を押す。
「行ってらっしゃい。気をつけてねぇ。お土産よろしくねぇ」
ドアが閉まった瞬間、僕の中に何かが降りてくる。
僕はすれ違いざまに龍一に言った。
「龍一、僕の部屋においで」
その日、僕は誰にも言えないことを龍一にした。


   to be continued…?
153ユーは名無しネ:2014/06/28(土) 21:54:30.57 I
作者さん乙です!!このお話大好き!
154ユーは名無しネ:2014/06/28(土) 22:13:16.88 0
お前は何と闘ってるの?w
あんちなんて許せな〜い!って無駄な正義感振りかざしてばかみたいw
155ユーは名無しネ:2014/07/01(火) 23:04:01.71 0
作者さん!リクエストした者です
いよいよ物語も佳境に入った様子ですね
続きを楽しみにしています
156ユーは名無しネ:2014/07/03(木) 21:59:42.93 0
だれかpart1のURL教えてください!
157ユーは名無しネ:2014/07/05(土) 14:45:38.80 0
更新感謝です!
「誰にも言っちゃ駄目」も素敵ですが、岸家のお話が好きぎて一気に全編読んでしましました…
是非また続きを書いていただきたいです!
楽しみにしています
158ユーは名無しネ:2014/07/05(土) 14:48:49.09 0
岸家は六男の受験の行方が気になります(笑)
是非とも続きを!
159ユーは名無しネ:2014/07/05(土) 14:59:41.45 0
龍一の受験の話は前スレでやってたよ。まとめサイトにはまだ載ってないのかな?
160ユーは名無しネ:2014/07/05(土) 15:42:11.36 0
158です
ごめんなさい、8から飛んできてすぐに書き込んだから六男の受験話があるの知りませんでした…
合格して良かった!ちょっととんでもないお友達ができちゃったけど!
これからも続き楽しみにしてます
長男不在の日にパパが風邪でぶったおれちゃって息子たちがあわわわわな話とかいいですよね(小声)
とか言ってみますが何でもいいから岸家の人々が読めれば私はこの上なく幸せなので全力で無視してください←
161ユーは名無しネ:2014/07/06(日) 13:38:48.87 0
160さん
それいいと思う!
作者様時間があったら作ってください!
なんて言ってみたりしてwww
162ユーは名無しネ:2014/07/09(水) 21:29:35.21 I
もっと【裏7】の作品が見たいです!
気が向いたらでいいのでいつか書いてくださると有難いです!
163ユーは名無しネ:2014/07/10(木) 14:43:16.30 0
夏休みにはまだ早いけど最近変なの沸き過ぎ
>>160-161辺りは流石にキモイから半年ロムれ

作者さんいつもありがとう
ガムシャラでれあたんがトマト食べてるのに何故か興奮してしまった
164ユーは名無しネ:2014/07/10(木) 15:07:41.56 0
まあまあ。リクエストぐらいはいいんじゃないかな。答えてもらえるかどうかは置いといて
165ユーは名無しネ:2014/07/13(日) 14:58:19.22 0
日曜裏ドラマ劇場 「誰にも言っちゃダメ」


僕が「誰にも言っちゃダメ」と言ったのを龍一は必死に守っているようだった。でもそれはいつどこで露呈してしまうか分からないくらい彼の隠し方は下手くそで、今にもばれてしまいそうなほどに拙い。元々隠し事なんてできない性格なんだろう。
それもそうだ。義理の兄にあんなことをされて平静を保てるはずがない。龍一の動揺にそのうちお母さんかお継父さんが勘付いてしまうかもしれない。でもそれでもいい、と僕は思っていた。
あの日を境に、僕は龍一と二人きりになると「誰にも言えないこと」を何度もした。そうしている時…自分が自分でなくなっているからこそ最も原始的な欲求を前面に出すことができる気がして僕は意識の向こうでとても満たされた気持ちになる。
驚いたのは、僕が寝ていると帰宅した龍一の方から手をだそうとしたことだ。
快楽に溺れて頭がぼうっとしている時…ふいの龍一の一言が僕に冷水を浴びせる。
「…なんで俺とこんなことするの?」
僕は一瞬だけ素の自分に戻される。泣きたくなるほどの後悔と羞恥心。だけどそれを別の人格が駆逐する。
そいつはこう答えた。
「こういうことでしか、表現できないんだよね」
だけどそれはほかならぬ僕の言葉であって、別の誰かではなかった。紛れもない正直な答えであり、本心だ。
そう、僕は素直になれないからこういった歪曲した形でしか自分の気持ちを龍一に表現することしかできない。
僕の気持ちはきっと報われることはないんだ。
そんな確信がその時僕の胸を突いたが、変化は徐々に訪れる。
166ユーは名無しネ:2014/07/13(日) 14:59:06.04 0
「一緒に寝たい」と言われた時…僕は動揺してしまった。それを龍一にも悟られたような気がして咄嗟に自分がなんて言ったのかよく覚えていないけどその日は龍一が隣にいて、一緒に寝て、なんだかとても満ち足りた気持ちになって眠っていた。
僕が目覚ましより先に目を覚ましたのは単なる偶然だったけど、その朝自分の横で眠る龍一の顔を暫くずっと見ていた。
綺麗な寝顔だった。
その寝顔を見ていると、抑えようとしてもどうしても抑えきれない感情が溢れ出て来てしまう。せきとめきれなくて決壊したダムのように気持ちが漏れていく。
僕は寝ている龍一の頬にキスをした。
どうしてなのか、泣きそうになる。胸が苦しくて苦しくて、僕の頭の中はおかしくなってしまったのかもしれない。
龍一が眠っているのではなく、死んでいたらいいのに…
僕はそう思ってしまった。そうしたら今みたいに素直になれるかもしれない。素直に、自分の気持ちを、心を曝け出すことができるのかもしれない。永遠に、目を閉じた龍一の側にいて…
ただ僕は、龍一のことが好きなだけなのに
こんなにどうしようもなくこんがらがってしまったのは何故だろう。だけど、自問いしても答えは出ない。
きっと、どこまでも果てしなくもつれてほどくことが不可能なくらい固結びになってしまうんだ。だったらもう…
そこに至ると僕は目覚まし時計を止めていた。


.
167ユーは名無しネ:2014/07/13(日) 14:59:46.24 0
僕が残したメモに忠実に龍一はその日の午前零時になると僕の部屋へ来た。
僕は戸惑う龍一に問う。
「僕としたいの?」
イエスとも、ノーとも龍一は答えない。僕がどうしてこんなことをするのか、ただただ不可解なだけだろう。
だけどこうして来たということは、どこかで龍一も…
そこまで考えて僕はその思考を遮断する。
動揺の抜けきらない龍一に、僕は暗闇の中でキスをした。
何かが弾けた音がした。
それが僕からなのか龍一からなのかは分からないけど、それを合図のようにして僕達は誰にも言えないことをする。吐息だけで会話をして、肌と肌で何かを探り合う。
確かな答えは出ないけれど、狂おしいまでの感情のやり場に辿り着いた気がして僕は不思議な安らぎを覚えた。
ただ、龍一の温もりだけを感じていたくて僕は一晩中彼を求めていた。不思議なことにそうしている最中は少しだけ素直な自分が出せる気がして、そこにどっぷりと浸かってこの身ごと委ねていた。
龍一はというと、相変わらず隠し事が下手だけど、僕が上手くフォローすれば大丈夫…だからもう少しはこういう爛れた関係でもどこかで満たされることができる。そう思っていた。
龍一が求めてくれば僕はいつでもそれに応じたいと思っていた。慎重にならざるを得ないから、両親がいる時はそうすることは避けた方がいい。でも、、いない時なら…。
素直に感情を出すことはできないけど、もしかしたらそのうちに龍一と心が通じ合って本当の自分を出せる日が来るかもしれない。そんな淡い期待がいつしか僕の中に生まれた。
だけど皮肉なことに、それはすぐに枯れてしまう。
「嶺亜兄ちゃんは、父さんと継母さんの再婚に反対だったの?俺達と暮らすのが嫌だったの?だから俺とあんなことをしたの?継母さんに思い知らせようとして…」
龍一の言っている意味が僕には全く分からなかった。
168ユーは名無しネ:2014/07/13(日) 15:00:27.90 0
だけど、僕には龍一が僕の本当の気持ちになんて永久に辿り着くことがないという事実を突きつけられた気がして、僕は半分錯乱状態で龍一に感情をぶつけてしまった。
何かが壊れて、希望も期待も抱く意味がないことをその時僕は悟った。所詮僕の気持ちなんてどこにも辿り着くことはなくて、彷徨う他にないということ。
心を殺して、龍一とはただの兄弟以外の接触をもたないこと。そう心に誓ったのに…
龍一はどこまでも僕の心を揺らし続ける。
「何す…」
リビングで携帯を見ていた僕に、龍一は覆いかぶさってきた。
僕には龍一の考えてることが分からなくて、ただそれを受け入れたい気持ちとまた自分の勘違いで傷つくことへの畏れが相反して頭の奥に閃光が瞬く。
「っつ…」
僕は覆いかぶさってきた龍一の肩に噛みつく。そして自分でも何を言っているのか分からないけど龍一が少し寂しそうな眼をしているのだけを認識する。
もうこれ以上僕の心をかき乱さないで
僕はそう叫ぼうとしたけどそれは掻き消されてしまう。頬にあたる温かい液体が何もかも僕の中から奪い去ってゆく。
龍一は泣いていた。
どうして龍一が泣くの?泣きたいのは僕の方だよ?だけどやっぱりそれも声になることはなかった。
ドアの開閉音を僕の耳は捉えた。咄嗟にどう取り繕っていいのか、躊躇している間にリビングのドアが開いてしまう。入ってきたお母さんは泣いている龍一を見て驚いているようだった。
混乱を一瞬で鎮めて、どうにかこの場をやり過ごすことのできる単語を僕は並べる。だけど僕は次の瞬間お母さん以上に驚いてしまって頭が真っ白になった。
「…模試の結果が最悪で…父さんにきっと怒られるどころじゃすまないと思ったら怖くて…嶺亜兄ちゃんに相談してたんだ。自分が情けなくて涙が出てきて…」
龍一がすらすらと嘘を並べた。動揺や戸惑いなど微塵も見せず、まるで今しがた僕が見ていたのは幻かと思うような、一点の疑いも抱くはずのない迫真の演技…
僕が龍一に抱いていた印象とそれは全く違った。ごまかしたり、取り繕ったりなんてできない性格のはずだったのに…
169ユーは名無しネ:2014/07/13(日) 15:01:01.52 0
お母さんは本気で心配しているようだった。成績が悪かったのは事実なのかもしれない。それでも僕は混乱する。
その場はなんとか乗り切って、夕飯になってお義父さんが帰ってくると少し緊張した食事になる。
「…確かにこれだと内部進学は厳しいな、龍一」
「ごめんなさい…」
龍一は暗く沈んだ表情で俯く。だけど僕にはそれは表向きの反省に見えた。龍一の眼は成績のことなんてどうでもいいといったぎらつきが宿っていた。
「そんなに叱らないであげて。この時期に再婚や引越しをしたんだから子ども達が混乱するのは分かってたことじゃない。龍一くん、落ち着いて勉強ができるよう配慮できることがあったらなんでもするから言ってね」
お母さんは懸命に龍一のフォローをする。僕もそれに乗って一言ふた言発するとお義父さんは軟化していく。
「まあ…これから危機感を持って頑張れば挽回も可能だから龍一、とにかくがんばりなさい」
「はい」
返事をして、龍一は食事に手をつけた。それを不思議な気持ちで僕は見る。
「嶺亜もがんばりなさいよ?宿題だけじゃだめだからね。あなたの場合大学受験がすぐそこに迫ってきてるんだから」
「はぁい。でも僕はまだ高校一年生だけどぉ」
「そんなこと言ってたらあっという間に三年生になるんだから。いつでも嶺亜はとっかかりが遅いから…高校受験の時だって…」
それからお母さんは僕の話に移した。これは龍一への気遣いだろうから僕はそれに適当に合わせた。
「嶺亜兄ちゃん」
ふいに、龍一が口を開く。僕は内心鼓動が早くなったけど何気ないふりを装った。
「なぁに?」
「あとで部屋に行っていい?こないだのゲームの続きがしたいんだ。今度は怒らせないようにするから」
自然な口調だった。お義父さんは「ゲームだなんて…」と顔をしかめたがお母さんの「こういう時は息抜きが必要よ」という言葉にしぶしぶそれを承知した。
龍一が僕の部屋に来たのはもう寝る前…両親も寝静まった頃だった。



   to be continued…?


.
170ユーは名無しネ:2014/07/15(火) 00:22:48.04 I
楽しみにしてました!
次回が気になります!
171ユーは名無しネ:2014/07/18(金) 18:21:36.62 0
WU裏ネタのれあたんかわいすぎた
あんまり先輩との絡みとか聞かないから余計
172ユーは名無しネ:2014/07/18(金) 23:08:39.56 I
本当に手越のこと好きなのが伝わってきて微笑ましいよ
173ユーは名無しネ:2014/07/20(日) 18:04:34.03 0
日曜裏ドラマ劇場 「誰にも言っちゃダメ」


嶺亜兄ちゃんの部屋のドアをノックしても返事はなかった。だけど俺はそのままドアを開ける。
きっと、嶺亜兄ちゃんは起きている。何故か不思議な確信があった。その予測どおり嶺亜兄ちゃんはベッドの上にちょこん、と座っていた。
それがまるで小さな子どものようで、急に愛おしくなる。状況は変わっていないしそう想うことすら許されない気もしたが抑える前にそれはもう踊り出てしまっていた。
色んな感情を抑えて、俺は嶺亜兄ちゃんに言う。
「ゲームしよう、嶺亜兄ちゃん」
携帯用ゲーム機を差し出すと、嶺亜兄ちゃんは驚いたように目を見開いた。混乱の色が濃くなってまるで不思議なものでも見るかのように俺を凝視した。
「…」
嶺亜兄ちゃんは無言でゲーム機を受け取った。偶然にも持っている機種とソフトが同じだったのを知ったのは少し前だ。もしかしたら嶺亜兄ちゃんもそれを知っていて前に言い訳に「ゲームをしていて喧嘩した」と使ったのかもしれない。
スイッチを入れ、対戦モードにする。少し前に流行ったカーレースのゲームだったが嶺亜兄ちゃんは上手かった。俺は息抜きで少しするぐらいだからあまり相手にならないかもしれない。
「…嶺亜兄ちゃん」
「…なに…?」
掠れた声で、嶺亜兄ちゃんは訊き返した。穏やかさが含まれている…というのは俺の希望的観測かもしれないけど、それによって円滑に言葉が導き出されたのは事実だった。
「昼はごめんなさい。取り乱してしまって、あんなことをして…あと、昨日のことも」
言わなくてはならないことを、ここに来るまで何百回と自分の頭の中で整理した。嶺亜兄ちゃんの本当の気持ちを知りたいから、あれこれ自分の中で憶測を立てるよりも正面から向き合って問うべきだという結論に俺は達していた。
嶺亜兄ちゃんがあそこまで怒った理由を、俺は知らなくてはならないと思った。きっとそれが嶺亜兄ちゃんの本心に触れているだろうから。
「…」
嶺亜兄ちゃんは無表情でキーを操作している。すでに俺の操縦するプレイヤーは周回遅れになっていた。
174ユーは名無しネ:2014/07/20(日) 18:05:18.33 0
「嶺亜兄ちゃんを怒らせてしまった理由が知りたい」
ゲームの画面から目を離して、俺は嶺亜兄ちゃんを見る。だけど彼は相変わらず自動的な手つきでゲームを操作していた。
「どうしてあんなに怒ったの?俺の言ったことが嶺亜兄ちゃんを傷つけたんだよね?」
人と話すことが苦手なはずなのに、何故か俺の中には躊躇いはなかった。何かが自分の中で変わったのか、それとも変えられたのか…
「教えて。俺は嶺亜兄ちゃんの本当の気持ちが知りたい」
偽りのない本心を声に乗せる。不思議と脳の奥はクリアだった。
ゲーム機から流れる無機質な音楽だけが小さく室内に響いていた。そうでなければ沈黙に支配されていただろう。その無言の数秒は俺にとって何時間にも感じていたかもしれない。部屋にはクーラーが効かせてあるのに背中に一筋汗が伝った。
「僕の本当の気持ちなんか知ってどうするの?」
冷たい声が返ってきて、俺は少し挫けそうになった。それでも退くことができなかったのはひとえに強い感情からだろう。
その感情に従って、俺はこう答えた。
「嶺亜兄ちゃんの気持ちを知った上で、俺の気持ちを知ってほしい」
「龍一の…気持ち…?」
嶺亜兄ちゃんはゲームの画面から目を離した。
目と目が合う。やっぱり嶺亜兄ちゃんの瞳には混乱が混じっていた。
「俺は…」
ゲーム機をプレイ中のまま床に置いて、俺は嶺亜兄ちゃんに近づく。
その瞳が間近にあった。そこに自分が映っているのが認識できるほどに。
俺は嶺亜兄ちゃんの両の腕にそっと触れる。
「俺は嶺亜兄ちゃんが好きなんだ」
自分でも驚くほどするりとその言葉が発される。それを認識した時にはもう…
「…」
俺の唇は嶺亜兄ちゃんのそれと重なっていた。


.
175ユーは名無しネ:2014/07/20(日) 18:06:05.49 0
僕の中に数えきれないほどの疑問符が激しく交錯している。明滅を繰り返して全ての機能を滅茶苦茶にしようとしていた。
「りゅ…」
龍一は僕に訊き返す隙を与えてくれなかった。キスをされながら押し倒され、衣服の中に龍一の手が侵入してくる。直接肌を撫で回されると、その疑問符達は次々に撃ち落とされて行った。
代わりに僕の中にやってきたのは「好きなんだ」という龍一の声だった。壊れたレコードのように何度も何度も繰り返しエコーする。
「好き…?」
ほとんど息だけで、僕はようやく龍一に問う。そうしている間にもあちこちに龍一の手が、指が、唇が這ってくる。ややもするとそこに溺れてしまいそうになって僕は少し焦った。
「ちょっと待ってよ龍一、こんなことする前に…」
それでも龍一は止まらない。荒くなった息遣いと共にこう断言する。
「嶺亜兄ちゃんが教えてくれるまで、俺はやめない。噛みつかれてもひっかかれてもやめない。だから教えてよ…!」
龍一の声からは悲痛な叫びが含まれているようだった。たった今まで抑えていたものが溢れだしたかのように動きがエスカレートしてくる。
このままだと、声が出てしまう。両親は多分寝てるだろうけど、もし何かの拍子にドアを開けられたら言い訳がきかない。僕はこんな状況においてもそっちに意識を傾けていたけど、龍一がまた僕の理性を揺さぶった。
「俺は嶺亜兄ちゃんが好きだから、嶺亜兄ちゃんの全てを知りたい」
どこかで声が聞こえる。何を躊躇ってるの?って。
望んでいたものがすぐそこにあるのに、まだ素直になれないのかって叱る声も聞こえる。
それは全部僕の声だった。僕の中の僕が、口々に声を揃えてシュプレヒコールを上げる。
素直になれ、と。
龍一に「誰にも言えないこと」をしている時だけ覗いていた本当の欲求を、今ここで言葉にするべきなんだってその声たちは諭していた。
誰にも言えない気持ちを、他ならぬ龍一に伝える。そんなことが許される時がくるなんて思っていなかった。
運動会をお母さんに観に来てもらうことは叶わなかったけど、龍一に僕の気持ちを受け入れてもらうことはもしかしたら叶うのかもしれない。
最後の希望が僕の中に灯って、それは僕の声になった。
176ユーは名無しネ:2014/07/20(日) 18:06:48.86 0
「僕も龍一のことが…好き…」
龍一の動きは止まる。
「龍一が好きだけど、そんなこと言えないからあんなことしたの。そうすれば嫌われても大丈夫だって。こんなことしたからしょうがないんだって思えると思ったんだ」
僕の中でどうしても言えなかったことが、決壊したダムの水のように流れ出る。放出は止まらない。とめどなく溢れる水のように思いが声となって流れた。
「だけど龍一は僕の言いつけを守って誰にも言わないからそれが僕の中で気持ちを表現できる唯一の方法になっちゃった…でも龍一は僕の気持ちなんて気付くこともなくて、それを再婚したお母さんへの当てつけだって誤解してるから、それが哀しかった。
勝手だとは思うけど僕にはどうしようもなく辛かったんだ。だって、龍一も僕のことが好きだなんて思わなかったから…」
龍一は黙って聞いていた。僕は彼の返事を待つ。だけど龍一からの返事はなかった。
言葉の代わりに、龍一は行動で僕に伝えてきた。何故か僕にはそんな確信があった。
放置されたゲーム機が相変わらずチープな音楽を奏でていて、僕達はそれを遠くで聞きながら無言でお互いの気持ちを確かめ合った。言葉はなくても、それ以上に確かなものが存在している気がして不思議な安心感に包まれる。
僕と龍一の関係は誰にも言っちゃダメだけど、二人でいる時だけはその例外なんだ。
そう、二人きりの時だけは…
秘密を抱えて生きることは苦しいって誰かが言っていたけど、僕達にとってこの秘密は安らぎすら与えてくれる。
だから誰にも言っちゃダメ。
お互いにそれを確認して、僕と龍一は一晩中誰にも言えないことをした。


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177ユーは名無しネ:2014/07/20(日) 18:07:50.09 0
目覚めるとそこにはすやすやと気持ち良さそうに眠る嶺亜兄ちゃんがいた。真っ白な肌がカーテンから漏れた光に照らされて光沢を放っている。眩しそうに寝がえりをうつとまた小さな寝息をたてていた。
目覚まし時計は7時すぎを指している。セットはされていない。
ずっと嶺亜兄ちゃんの寝顔を見ていたいけど、緊急事態が俺達を襲った。
「嶺亜、起きてる?お母さん今日も少しお仕事遅くなるから適当に…」
なんと継母が嶺亜兄ちゃんに話かけながらドアを開けた。中にいる俺を見てぎょっとした顔をする。それもそうだろう、俺は何も身に纏っていないし嶺亜兄ちゃんだってそうだ。もっとも、タオルケットで要所要所は隠れているが…
まずい。絶対にまずい。しかも嶺亜兄ちゃんはそんなことにも気付かす寝入っている。可及的速やかにこの状況を脱しなくては。俺の頭はまどろむことも許されずフル回転した。
「おはようお母さん…昨日ゲームをやりすぎて気付いたら嶺亜兄ちゃんの部屋で寝てしまって…」
「そうなの…こっちこそごめんなさいね、嶺亜一人かと思ってたから…あ、嶺亜が起きたら言っといてくれる?今日は帰りが遅くなるからって」
継母の眼はまだ戸惑いを示している。まさか一瞬で察知されたとも思えないがもう一言二言必要かもしれない。
「うん。あの、お母さん」
「何?」
「昨日はかばってくれてありがとう。父さんにもう怒られないよう勉強がんばります。嶺亜兄ちゃんも昨日ゲームにつきあってくれて色々励ましてくれたからもう大丈夫」
継母と会話らしい会話を交わすのはこれが初めてかもしれない。皮肉にも、こんな事態になってからではあるが…
継母の表情から戸惑いが消え、代わりに彼女は微笑んだ。それが少し嶺亜兄ちゃんに似ていた。
「そう言ってくれて嬉しいわ…少しは母親らしくなれたかしら、私」
俺は頷いて答える。継母は「ありがとう」と言って階下に降りて行った。
なんとか事なきを得てほっと浅い溜息をつくと…
「…ちょっとはごまかすの上手くなったじゃん」
小さな声がすぐ横で響いた。
178ユーは名無しネ:2014/07/20(日) 18:08:30.94 0
「起きてたの?」
俺が驚いて訊ねると嶺亜兄ちゃんはむくっと身を起こした。けだるそうに首を左右に動かしながら欠伸をする。
「あそこで僕まで起きたら余計にマズくなるでしょ?だから龍一に任せたの。ちゃんとごまかせるかどうかすんごい心配だったけどぉ」
「そりゃ…ごまかせなかったらもうおしまいだから…」
「だよねぇ。だからさぁ、ほどほどにして別々の部屋で寝ようって言ったじゃん。お母さんはね、僕の部屋には遠慮なしにずかずか入ってくるから危ないんだよ」
そう言えばそんなことを言ってた気がする。もっともその頃はもう理性がぶっ飛んでいたからそんなことができるはずもないと思っていたけど。
「でも俺が『ずっと一緒にいたい』って言ったら嶺亜兄ちゃんだって分かったって答えてたじゃない。継母さんが入ってくる危険があるならそれを言っといてくれた方が…」
「てなわけで次からこの部屋で一緒に寝るのはもうダメだねぇ。寝るなら龍一の部屋だね。さすがに龍一の部屋にお母さんが勝手に入ってくることはないしお継父さんは入ってきたりしないでしょぉ?」
俺の反論をばっさり切ってそう結論づけて、嶺亜兄ちゃんは伸びをする。真っ白な肌がシーツと同化しているようだ。その白さが眩しくて、気がついたらそこに手を伸ばしていた。
「ちょっとやめてよ、またお母さんが入ってきたらどうすんの?危機感足んないよぉ」
手厳しく払われ、なんだか期待していた展開と違うことに俺は愚痴が零れる。
「俺のこと好きなんじゃなかったの?昨日はだってあんなに…」
「だから絶対にバレるわけにいかないんじゃん。いい?絶対に誰にも言っちゃダメだよ?もう一回確認しとくからね」
俺には選択肢はなかった。二つ返事で首を縦にすると嶺亜兄ちゃんは「よろしい」と完全に上から目線で返す。なんだか力関係はもう決まってしまっているようだ。
179ユーは名無しネ:2014/07/20(日) 18:09:13.34 0
「早く着替えなきゃ。またお母さん来るかもしんないし」
自分のペースでいそいそと衣服を掴む嶺亜兄ちゃんに、俺はせめてもの反抗をする。
「嶺亜兄ちゃん」
「何?早くし…」
俺は振り向いた嶺亜兄ちゃんに不意打ちでキスをした。
嶺亜兄ちゃんは一瞬驚いて目を見開く。その反応だけで俺は充分だった。
「ちょっともぉほんとやめて。何度も言ってるけどいきなりドア開けられることだってあるんだからせめてお母さんが仕事行くまでは謹んでよね。そんなんじゃこの先すごい心配だよぉ。
まかり間違ってバレたりなんかしたらもう僕この家にいられなくなるからねぇそこんとこ分かってやってんの?頭いいはずのくせにこういうところは頭回らないよね龍一って。鈍感だしホント取り柄は顔と頭だけって感じあぁやだやだ」
一気に早口で辛辣な言葉を次々に嶺亜兄ちゃんは投げかけてくる。だけど俺には分かっていた。これは照れているんだ、と。
だから俺は言った。
「ホント、素直じゃないよね」
「なんか言った?いいからさっさと服着て出てってよ。シーツ、お母さんが仕事行った後にこっそり洗わないといけないんだから僕忙しいの。何回も遠慮なく人のシーツにかけてさ、ホント龍一ってば…」
「はい。分かりました分かりました。すぐ出て行きます」
笑いながら着替えて出て行こうとすると、枕を投げつけられた。「ばーか」という声も背後から聞こえる。振り向かなくても俺には嶺亜兄ちゃんがどんな表情をしているのか分かった。そして何が言いたいのかも
だから俺は言った。
「誰にも言わないよ、絶対に」



   to be continued…→next「epilogue」
180ユーは名無しネ:2014/07/22(火) 00:13:51.78 0
リクエストした者です
きゅんっとするような終わり方ですね
作者さんが書く文章が好きです
epilogue楽しみにしています!
181ユーは名無しネ
ホントきゅんとする!
幸せになってほしいな