紡ごう、物語を
(o’ω’o)けんとりん
(o´ω`o)ぷまたん
( ・ヮ・ )っΨしょりたん
ζ’_>’)Ich habe keinen festen Freund.
( ゚w゚ )まっつー
(´・v・`)くらもっちゃん
(´´ー`)あむあむ
(’ー‘・)/ふうくん
( −3・)−☆じぐじぐ
(;б;エ;б;)岸くん
(*’_’*)♥れあたん
おまけ
(;´=ш=`;)けんとりん疲労ver
(o´⊇`o)ぷまたんぱぱ
(´ω`)ほくにゃ
(・ ω ・)ゆーごりあん
(´・н・`)くらもっつぁん(おにく)
( ̄L ̄)羽生田さん
(・,ー,)ふうくんヘッドスピン
(^皿^)栗ちゃん
( /'_б)谷村
6 :
ユーは名無しネ:2012/09/12(水) 23:45:39.53 i
スレ立て乙!!
もうpart6か……感慨深いな……
スレ立て乙です!!
8 :
ユーは名無しネ:2012/09/13(木) 01:31:34.35 0
( ̄L ̄)羽生田さん ←これ最高だわww
(°ш°)井上くん
(´∂∪∂`)(´∂∩∂`)岩橋くん
(^皿^)栗ちゃん
( /'_б)谷なんとか
(o∵o)(´'▽'`)井上くんとはしもっちゃん
顔文字スレになっとるwww
スレ立て乙!感謝!
続いているね…感慨深い…
スレチだが唇前歯の顔文字可愛すぎない?w
あんな可愛い顔してたっけ、あれ
正直セクゾンの顔文字は狼のが似てると思うw
なにげ颯きゅんの顔文字が1番可愛くて似てるw
はげど
17 :
ユーは名無しネ:2012/09/13(木) 13:27:11.34 0
(’ー‘・)人(;б;エ;б;)もう6かぁ!このスレマジ神だぁ
感謝感激岸優太!
>13
唇が中学生だった頃から使われてるやつだからな
あの頃はこれくらい可愛かったし唇前歯は双子みたいだったから顔文字もそっくりなんだよ
谷やんの顔文字くそワロタ
(o´ω`o) プマタン
( ´・ш・)痛ポエム
( *‘ _ゝ‘)マリ
(o‘ D‘)佐藤
( ’w’) 聡ちゃん
顔文字スレかここはw
神7たち全員に顔文字できて感慨深いのう
>10
栗ちゃんは似てるね
はしもっちゃんのは鳶の山田君と同じだから他のがいいかも
かわいいなぁ
しずやくんいらっしゃい!
26 :
ユーは名無しネ:2012/09/13(木) 19:37:14.17 I
んんんんんんかみせぶんんんんんんん
んんんんんれあたんんんんんん
岸くんも栗ちゃんも谷村も挙武も君の虜さああああああ
冗談まじりって分かってるけど心配だよ谷村
イジメられたられあたんに話すんだよたにむらああああ
29 :
ユーは名無しネ:2012/09/13(木) 22:02:53.78 0
そして「保湿液だよぉ」とれあたんに髭剃りクリームを顔に塗られる谷村
れあたんが谷村のお顔ぺたぺたしてるとこ見てえええええええええ俺が谷村ならその時点で勃起してるわwwwww
谷れあ和むけどその髭剃りクリームは誰のだああああああああ
岸くんのだよねうんれあたんなわけないじゃないか
ホテルに常備してあるものでしょう
色々いたずらしてそうだよなJr達w
何だかんだいじられて仲間に入れてもらえてるようで何より
良かったね谷村
なんとか報われてほしいよたにむぅ
高橋はある決意を固めていた。
今日は、岸くんに冷たくするdayだ。
Jrに入って以来、そんな日はなかったけど、たまにはそういうのもいいかもしれない。
聞くところによると岸くんは生粋のドM体質というやつらしいし。
前夜にユーチューブで松岡○造の動画を見て気合いを入れた。(岸くんを)あきらめるな!(岸くんから)逃げちゃダメだ!…ってことだよな。
高橋は自分自身に暗示をかけた。
「俺は岸くんのことが大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大好き!大好き大好き大好き大好き大…って違う!!!
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い好き好き好きスキすぎてスキでスキだから…僕らの先にはラブラブストーリー…ってそんなのない!!
そりゃあせらず行ってゆっくり待ちたいけど…でも……」
ブツブツつぶやきながら着替えている高橋を周囲は若干引いた目で見ている。
「颯ここの動きなんだけどさーやっぱこうしたほうが…」
「いやっっっ!!!触んないで!!!!!」
肩を軽く叩いてきた岸くんの手を高橋は思いっきりはねのけた。
岸くんは入社したてのOLにセクハラを働いた勤続20年目の頭の薄い上司のような気分に、一瞬なった。
「あ……ごめんな」
岸くんはそう言って謝ったが、高橋は無表情で無視する。
内心では「もっと気軽に触っていいのに…ていうか是非触って下さいいいいいい」である。
休憩に入ると新陳代謝絶好調の岸くんは早くも胃の中が空っぽ状態のようだ。
「あー腹減った…はしもっちゃん、何かお菓子持ってない?」
「持っててもやんねーよ!!」
「あ、そー。じゃあくらもっちゃん、弁当分けてよ」
「てめー俺にケンカ売ってんのか?」
なんで小さい子から声をかけるんだろう、と高橋は思う。真っ先に僕に言ってくれたら、これ半分あげるのに…
そして神宮寺、中村、羽生田、栗田、谷村、岩橋と断られ続けた岸くんはようやく高橋に声をかけた。
ほい来た、と半分以上残してある弁当を差し出しそうになったが、今日の目標を思い出し、あわてて首を振る。
「…岸くんにはあげない…」
「そう…じゃあコンビニひとっ走りしてくっか」と岸くんはあきらめてスタジオを出ていった。
高橋は残りの弁当を食べたけど何だか味がしなかった。
ダンス中も高橋はぬかりなく岸くんに冷たく接した。
「なんか岸くんさぁ、汗かきすぎて匂うんだけど……」
実を言うと岸くんの汗の匂いは高橋の鼻腔に届くまでにフルーティフローラルの香りに変換されているので無問題なのだが
とりあえずそう言ってみる。
「マジか、匂う!?」
「うん、迷惑だよ。家の近所のドブ川の匂いがするし」
「そっかー…これから気をつけるよ」
岸くんはそう言って頭をかいた。「神宮寺と香水買いにいこっかな」
ヤバイ、逆効果だ…高橋はあせる。
レッスンが終わり、高橋がロッカー室に入ると、地べたに誰かのバッグが置いてあった。
邪魔だったので拾い上げてみると岸くんのだった。
高橋はそれを持って、神宮寺としゃべくり中の岸くんのもとへ向かう。
「きしくーん、これ落ちて………」
そこでハッと気づく。そうだ、まだ今日という日は終わっていない。
「……この汚らしいバッグ、岸くんの?ちゃんと肌身離さず持ち歩いてないとダメじゃん。
そこら辺に放っぽっといて盗まれたらどうすんだよ。俺そういうだらしのない人大っ嫌い」
高橋は岸くんの目を直視できず、斜め横を見ながら言った。
たまたまその方向にいた谷村が「え、俺?」と驚いている。
「これも買い換え時かなー気に入ってたんだけど」岸くんはバッグを持ちながら言った。
「…なんか、今日は颯に怒られてばっかりだな」
そのてへぺろな感じに表面上は無の境地だけど「か…かかか…可愛い」と内心胸キュンの高橋だった。
「あー疲れた……」
今日1日で限界だ、と高橋は心から思った。ヘッドスピンで100回回るよりもよっぽど疲れる。
帰り際、前方に谷村がいたので駆けよって聞いてみた。
「ああ、あれ…そういうことだったのか」
谷村はようやく理解した風にうなずく。
「で今日冷たくしてみたんだけど、あんな感じでいいのかな!?岸くんってドMっぽいの的な中らしいから
ああいう態度すれば内心そりゃあもう狂喜乱舞してるに決まってるんだよね!?」
谷村は哀れみを込めた表情で高橋を見た。
「…言い辛いんだけど、入社したてのおっちょこちょいなOLにいちいちケチをつけてるお局OLのようにしか
俺には見えなかったよ」
「え。………」
そんな俺の努力っていったい…と高橋は忘れ物を思い出し重い足取りでスタジオに引き返した。
ドアを開けると、長椅子に岸くんがデーンと寝っ転がっていた。
パグ犬そのものの寝顔でとろけそうなほど熟睡している。高橋は長椅子の横にしゃがみ込んでじーーーっとその寝顔を凝視した。
「…岸くんごめんね。あんなこと言っちゃったけど全部嘘だから。ドブ川の匂いなんてしないから。
岸くんのこと大大大大大大大大好きだけどあんまり言われるのもうざいかなと思って控えようかなって…」
「すー、すー、すー…ふご?」
「香水も神宮寺くんとじゃなくて俺と買いにいこ?なんならシンメでオソロにしちゃう?なーんてね」
「…んが。」
寝ているはずの岸くんはカクカクとうなずいた。
「きしくん…起きてるの?」
あまりのタイミングのよさに高橋は岸くんの腕をゆすってみたが、目を覚ます気配はない。
岸くんが実に気持ちよさそうに熟睡しているため、高橋は起こさないでそのまま帰った。
その結果、岸くんは終電を逃しスタジオに寝泊まりするはめになった。
「昨日さーなんかすっげーイイ夢見ちゃって。可愛い女子から熱烈にコクられてさー」
次の日、岸くんがニヤニヤしながら神宮寺に話していた。
「香水一緒に買いにいく約束しちゃった。あれはきっと正夢だね!よーし運命の彼女のためにもレッスン頑張るか!!」
「ふーん、よかったねー」とスマホで女体盛り画像を検索中の神宮寺は軽くスルーしている。
この話を聞いていた高橋は昨日の岸くんのようにてへぺろで済ませた。
終わり
おい、てことはれあたんとたにーは同室だったってことか!?
くうううううううううううううううたまらん
何そのパラダイス
岸颯のSM新芽たまらんな
颯キュン可愛い この頃颯キュンが可愛くてたまらない
早速作者さん乙!ありがとう!
岸くんに冷たくする日なんて嫌だよ颯きゅん
やっぱり岸颯シンメだけは国宝並に守るべきだから解体して欲しくないよおおおおおお
作者さん乙です!颯くん起こさないで帰ったとかひでえw
作者さん乙です〜
颯きゅん可愛すぎるううううううううううう
そして何やってもアッサリ対応な岸きゅん萌えすうううううううう
きしふうのテヘペロ見たすぎるw
くっそ可愛いだろうな
最近の颯くんの色気がやばいんすけどなんかあったんすか颯くん
乱交
彼女ができました
岸くんと一発かましました
いい加減岸颯の妄想は無理があると思う
まあここは妄想スレだけどなんか逆に悲しくなるわ
>49
逆じゃない?
神7シリーズでは「颯→岸の片思いの関係」が唯一現実とリンクしてる設定だと思うんだけど…
気を取り直して
作者さん乙!
頑張ってツンになる颯くん可愛いなあ
岸くんは相変わらずだが可愛いなあ
てへぺろ颯くん可愛すぎるだろ!
普通ならまぁしょせん妄想だしwと済ませられるところだが、岸颯はどうやらそれでは済ませられない何かがあるんだろうな…。
なんたる影響力…!
岸颯…恐ろしいシンメ…!
ここの颯くんは想いを伝えられなくて悩んでるけど実際の颯くんは満面の笑顔で体中で愛を表現して
「岸くんだいすきー!!!」
と叫んでるんだぞ?しかも何回も!妄想の斜め上を行き過ぎてるw
彼女にしたいJr.に迷いなく岸くん選んどきながらゲイ的な意味か問われたら
「そんなんじゃありません!尊敬してるんです!」と清々しい颯くん
可愛すぎるだろーw
颯きゅん健気すぎるw
メロンパンとヘッドスピン関連しかなかったサマリー自己紹介に突如「岸くん大好き!」が加わり暴走し始めたのは
颯が茂木さんに告白してしまったズニラン放送5日後のことでした
ネタのつもりでやってんだろ
面白くもないし岸のあからさまな嫌がりようにも気付かないからどんどん嫌われていくんだよ
普通はちょっと相手にも迷惑かなとか考えるけどそれすらもできないKY
岸も気の毒だな
岸くんは大人だからできるだけ顔や態度に出さないよう努力してるのは伝わってきた
だからこそ早いとこやめてあげてとは思う
あと岩橋の前歯推しも
前歯って他Jrに自分の名前を出されることがごくごく稀だからたまに呼ばれるとすごい食いついてくるのに全くだったってことは岩橋が本音で言ってないってことが分かってたんだろうね
岩橋くんは実は結構昔からポエム先輩ポエム先輩だお
にも関わらずスルーされてんのか…可哀想にw
岩橋にしても高橋にしてもあれだけ推してるのに本人達に響いてないってことはそれがポーズだって本人達に見抜かれてるからでしょ
お前普段別に俺のことそんなに慕ってないのにファンの前でだけ言うなよ、みたいな
Wゆうたみたくガチだったらそんな歪みも生じないと思うけどね。れあくりに関しては別に本人達全然アピールしてないしね
わざわざ空気ぶち壊しにきたの?
前から思ってたけど一人ものっすごい真剣なヤツいるよね大丈夫か
ここネタスレなんだけどw
そうあくまでネタスレ
妄想してなんぼ
ネタないしこういう討論もいいと思う
要はスレが回ればそれでいい
色んな見解が聞きたい
ムキになりすぎワロタw
お花畑は好きじゃないから辛口な見方も興味あるよ
実際の彼らとここのキャラの乖離っぷりも面白いし不思議にマッチしてるところもあるし妄想がどんな感じで現実にリンクしていってるのかも面白いし
金田谷村の撮影共演なんてここが原因で組まされたのではないかと思えるくらい
作品がない合間はこういうのもいーかと
確かに面白い
表に出てくる断片的なもので想像膨らましてキャラ作ってるだろうに後から現実が追いついてきて驚くわw
後輩が先輩に憧れるくらい普通にあることだし
ましてリアルにくっつかないのが悲しいやらそんなのどうだっていい
ここではリアルと擦るようで擦らない妄想を楽しんでればいいだけ
あくまでネタスレだよ
俺なんて最近はれあくりって実はお互いあんまり好きじゃないんじゃないかって思えてきたぜ
たまにここでいつも書いてる人って関係者じゃないかって疑う時もある
それくらい合致してる部分がある
>>73 ちょ、何の関係者だよ
さすがにそれじゃ彼らが可哀想すぎるだろーw
話作る人は観察眼が鋭いんだろうなぁって思ってる
ところで今自分の中でキテるのは岸れあなんでそういうの待ってるんだけど来ないな〜w
できれば嶺亜→岸が見てみたいんだけどれあくりジャスティスに反するからダメかな
すまん自分は谷れあだw
懐かしジャンルで神れあ
栗谷もいい
固定カプ以外駄目なイメージと思ってたけど
たまに色々な組合せもみたい
前スレの終了間際に出たれあむみたいなのな
岸くんの恋人(になりたい)の作者さんはお休みかね?
作者さんたちなかなか忙しいのいつもありがとう
滝翼のポスターかなんかの神7オールスターいいね!
これはwwwwww
Winkup編集部?@Winkup_henshubu
[10月号・ジャニーズJr.裏ネタ@]
撮影の合間、神宮寺がJr.から“じんぐう”と呼ばれているという話題になり…「あ!でも岸くんだけは“ゆうたん”って呼ぶんですよ」と衝撃告白!それを聞いた岸はすかさず「呼んでねーよ!」と猛反撃!(続く)
Winkup編集部?@Winkup_henshubu
[10月号・ジャニーズJr.裏ネタA]
(続き)しかしその直後「ねぇねぇ、ゆうたん〜」と普通に神宮寺のことを呼ぶ岸(笑)。事実が明らかとなり「やっぱ呼んでんじゃんっ(笑)!」とJr.から総ツッコミを受け、ちょいテレしていた岸でした(笑)。
83 :
ユーは名無しネ:2012/09/15(土) 23:23:01.55 i
82>>
ちょいテレ岸くんいーなーwww
岸神でもよいと思い始めた今日この頃……
みんな結局ナンデモアリだろw
なんか岸くんって年下と一緒にいるせいか幼稚だよなw
そこが可愛いんだけど
年下からは慕われ、年上からはイジられる
でも同い年の中に入るとどうだろう、前に樹とかとの対談みたいなやつみたけどすんごい卑屈だった印象がある
>>86 卑屈っていうか同い年なのに先輩だからお互いどうすればいいかわからないんだろうな
当の樹も年下の慎太郎相手に敬語だし
kwsk
89 :
ユーは名無しネ:2012/09/16(日) 00:12:07.53 0
【Wきし】
雑誌ではよくWゆうた、なんてくくられる岸優太にはもう一人名前かぶりしているメンバーがいる。岸孝良、ネット上では岸1なる人物だ。少し前に受験休みをとっていたがそれも暫くして復活し、今ではバリバリ第一線で活躍するJr.の一人である。
さて、自分と岸くんには接点がない。やはりこの広いようで狭いJr.の中で苗字が被ったのだから、少しでもお近づきになりたいものだが。
「ねぇ、はにゅーだ。岸くんにどうやったら近づけるかな?」
「身長でも分けて貰ったらどうだ」
「……………」
羽生田に聞いた自分が馬鹿だった。そりゃ方や180cm越えのスタイル抜群モデル体系、方や170cmに届かない目下成長期待ち望み中。年齢は二歳しか変わらないのになんだろうこの差は。
「少クラで毎週一緒になるじゃん」
「こないだのせくぞんのサマリーにもいたしぃ、ちょい前だけどJUMPのコンサートでも一緒じゃなかったけぇ?」
「うん、そうなんだけど……」
近くにいた神宮寺と嶺亜もソファに座ってちょっとした岸くん会議。
確かに現場で一緒になることは多くもないが少なくもない。少なくとも一ヶ月に一度は必ず会う、けれど。
「……でもさ、岸くんと俺って立ち位置とか出番とか全然違うじゃん」
「あー、確かに」
「今更何話せばいいか迷うっていうか、照れるっていうか、恥ずかしいっていうか」
「なにそれ、岸くんに恋しちゃってるみたいぃ」
ふふ、と嶺亜が笑った。それを慌てて訂正した、その瞬間いきなり颯が立ち上がった。
「そ、そそそそそれならさ!き、岸くんに会いに行けばいいじゃん、っ!」
「へ、」
「あ、いや、別に岸くんが気になる岸くんってどんな人なのかなとか参考にしようかなとか岸くん、いやなんか岸くん岸くんわけわかんない、……つまりそういうことっていうか!」
「あ、あぁ、つまり。機会がないならつくってみせようホトトギスってことだろう?颯」
「うん、そういうことっていうか!」
顔を真っ赤にした颯とそれを誤魔化すように颯の言葉を補う羽生田。その勢いに押されるように岸は頷いた。
「あ、えと明日少クラの収録あるから、そのときに……?」
名付けて『どきどき!?だぶる岸きゅんはじめて大作戦☆』が始まった瞬間だった。
「はーい、第一支局栗田!岸くん楽屋入りまであともうちょい、谷村と颯隊員確認お願いしまーす」
「はいはーい、こちら颯谷村支局ー岸くんの楽屋入り確認しましたー」
「中村隊員と岸隊員、スタンバイお願いしまーす…………なんで俺までこんなこと、明日テストなのに……」
「はいはい、こちら羽生田。安井くんまもなくそちらに向かいまーす」
「りょうかぁい。こちら中村、岸隊員とスタンバイ完了……じゃな、ちょっと時間稼ぎしてぇ」
「うっす、こちら神宮寺。倉本隊員と岩橋隊員が足止め中です」
「やば、岸くんとなに喋れば……」
「いや、このお菓子がめちゃ上手くて……」
「はやく、岸!……はい、スタンバイ完了でーす」
「了解。こちら岩橋、安井くん再びそちらに向かいましたー。谷村隊員と颯隊員もスタンバイお願いしまーす」
「……あれ、1876年と1867年どっちだっけ」
「谷村もさっさと立って、ほらきた!」
「……あー、いったーい、こけちゃったー!(……俺こんなキャラじゃないはずなのに、っていうかこの役やるの俺である必要なかったって)」
「あぁ!谷村ぁ大丈夫ぅ?」
皆してを小型携帯機片手に廊下をこそこそ。無理やり参加させられた谷村は棒読みもいいとこだがお仕置きが怖いので必死に可愛い子ぶりっこ。そして谷村がこけた瞬間、嶺亜と岸がタイミングよく飛び出す。
「あっれー、どうしたのー?」
よしきた、タイミングよく現れた安井に思わずガッツポーズをしたのは計画を練った羽生田である。
「お久しぶりですぅ、安井くーん」
「んー、ちょっと前にあったけどね。……で、どうしたの?」
「谷村がこけちゃってぇ、ドジっ子なんですぅ。ね?」
「誰が、……あ、いや、そうなんです」
「たまたまあったんだし、うちの楽屋寄ってく?」
「ほんとですかぁ?」
「…………後ろで隠れてる栗田くんと羽生田くんと神宮寺くんも倉本くんと岩橋くんも、よかったら一緒に?」
「げ、」
笑顔一つ変わらない安井くん。まるでいて当たり前かというような口ぶりに影に隠れていたメンバーが誰からともなく焦りの声が盛れる。
「あっれ、気付かれちゃいましたぁ?」
「ふふ、伊達に皆より年取ってないからねー。昨日ドラマの現場で神宮寺くんが何故か俺の現場入りの時間聞いてきたと思ったらこういうこと?」
「……さりげなく、といっただろう」
「ごめんって」
溜息をつきながらどこからともなく現れる羽生田とそれに軽く謝る神宮寺、他のメンバー。
「何企んでるのか知らないけど、楽しそうだからいいよ。寄ってきな」
もう一度にこりと笑った安井、……つかめそうでつかめない。俺やり損じゃね?と不満げな表情の谷村を軽く宥めるのは岩橋、しぶしぶ立ち上がる。
「ちはー、……あ、翔さんおはよ」
「おはよ。……なに、可愛い子達連れてんね」
「ふふ、途中で会ったからナンパしてきちゃった」
楽屋に入ってすぐいたのはGTOに出演していた高田翔。ドラマの役どころとは違ってにこりと笑って神7を迎える、慌てて神7も挨拶を返した。
「おぉ、こわ。……皆気をつけろよ、安井は可愛い顔してるけどただのおっさんだからな」
「えー、どういう意味」
「いや、顔だけで騙し「高田くん、そのくらいにしとかないと本番中に安井に嫌がらせされるよ」」
「まっすーまでどういうこと!」
笑い声が楽屋にあふれる。そうだ、楽屋とはこういうものだ、と常日頃楽屋内で虐げられている谷村は一人大きく頷いた。
「やっすー、髪の毛セットしてー」
「もー、萩ちゃん自分でやりなよー」
「だってやっすーがやった方が上手くいくし」
「しょうがないなぁ。……岸くん岸くん、」
「?」
「岸は畳のとこにいるから、頑張ってね?」
「なんでそれ、「やっすー早く!」」
「あー、はいはい」
耳元でこそりと囁かれる、颯の眉がぴくりと反応したがそれにすら気付かなかった。呆然とする岸の背中を嶺亜と神宮寺が面白半分にぐいと押す。
「ちょ、え!」
「俺岸くんのこと応援して、あ、半澤くんんんんんん、エロ本の神様!!!!」
「……………がんばろ」
いざ話しかけるとなると岸はなかなか踏ん切りがつかない。岸くんは雑誌に夢中で神7がぞろぞろ入ってきたことにも気付いていないようだ。
「…………あ、あの、!」
「へ、え、……は、い」
いきなり話しかけられたことに驚いたのか、その大声に驚いたのか、いつの間にか汗だくな岸自身に驚いたのか。びくりと体を震わせられたもののファーストコンタクト成功。
「あの、えっと!俺岸くんと仲良くなりたい、っていうか!」
「えっとありがとうございます……?」
妙に語尾が強い岸の様子に首を傾げながらもきちんと岸の話を聞いてくれる岸くんの様子に岸の心もだんだんと落ち着いてくる。
「……どうやったらそんなに身長伸びますか?」
「え、いや特になにも」
「めちゃくちゃうらやましいです」
「でも、俺猫背だから」
「それでも俺より身長高いじゃないですか!」
「えー、あー、そう?」
「そういえば………」
「……だから、……?」
「……つまり、…」
「……、…。」
なんだかんだいって盛り上がっているだぶるきしから少し離れたところで、
「あー、そりゃ岸くん鈍感だねー」
「そうですよね!……そういうとこが好きなんですけど」
「はは、あっつーい」
安井による颯の恋愛相談室が行われていたなんてことは、岸くんは知る由もなかった。
END
作者さん乙!
そういや岸1と岸きゅんとのお話はなかったな
実際は仲いいんだろうか?
ショタコン安井さんwwwwwww
94 :
ユーは名無しネ:2012/09/16(日) 06:32:06.66 0
作者さん乙!
だぶる岸なんでいままでなかったのか……
安井さんwwwwww
作者さん乙!
W岸の夢のコラボ!
会話噛み合ってなさそうだが微笑ましい!
童顔なのになんでもお見通しの安井先輩いい味出してるわ〜
颯くん相変わらずかわええ
楽屋でひとり頷く谷村www
しかし神7が隊員ごっこやってるの似合いすぎ可愛すぎ!
JJLでぜひやってほしい!
あむあむは私物のモデルガンやユニフォーム持ってきてイキイキしてそう
作者さん乙!
安井w可愛い顔したオッサンw
神セブンの隊員ごっこが可愛すぎるwww
是非短編実写化してほしい!
可愛い顔したおっさんな安井先輩さんがおいしいね
ここ見てると全員が大好きなるw
作者さん乙です
ずっと前から、好きでした
「ずっと前から、好きでした」
「これね〜いつも楽屋で言ってるんですよ〜」
「言ってない!言ってない!」
収録は終わる。スタッフが「お疲れ様でした〜」と笑顔で声をかけてくれ、それにお礼を言いながら楽屋に戻った。
「あーお腹減った!なんかないかな〜」
岸くんは楽屋に戻るなりきょろきょろと室内を見渡す。が、何もない。だから中村は言った。
「さっきあっちの楽屋にピザ届いてたよぉ岸」
「まじで!いただきまーす!」
岸くんはぴょんぴょん跳ねながら楽屋を出て行った。しかしややあって苦虫を噛み潰したような顔で戻ってくる。
「まーただまされた。なんもないじゃん!」
「ごめーん。もう嘘つかないからぁ」
舌を出して形だけの謝罪をすると岸くんは目を細めた。
「それなんべんも聞いた。あーもう次こそは騙されないから!」
岸くんはそう宣言してごろんと横になる。まだ収録は残っていた。だが少し時間が空いている。
「ねー時間になったら起こして。ちょっと寝るから」
「えー自分でケータイの目覚ましで起きなよ。僕遊びたいしぃ」
「それもセットするから。自分で起きれる自信ないんだよ。お願いね」
中村の返事を聞く前に岸くんは就寝体制に入った。浅い溜息をついて中村は楽屋の時計を見る。あと一時間とちょっと。仕方がないから自分の携帯電話にもアラームをセットした。
「…」
岸くんはもう眠りに堕ちたようだった。静かな部屋の中に寝息だけが微かに響く。
中村は本を読んでいたがふと岸くんの顔を盗み見た。
あどけない寝顔、無防備で子どものように無垢な…
複雑な気持ちがかけめぐった。さっきの収録でノリで言わされたセリフが今更頭の奥にエコーする。
『ずっと前から、好きでした』
岸くんは冗談っぽく処理してくれた。だから中村は内心ホっとした。あそこでおかしな雰囲気になってしまったら今きっとどうやって過ごしていいか困っただろう。自分の内面に深くかかわりすぎているセリフはもう言うべきではない。例え、冗談混じりでも…
好きだなんて言えるわけがない。言おうとも思わない。何故なら岸くんにとって自分はJrの友達である以外の何ものでもないことは毎日一緒にいて痛いほどに分かりきっているからだ。
打ち明けたところで望むような結果にはならないだろう。それどころか、今の良好な友達関係にひびが入りかねない。ハイリスクでノーメリットであることは明らかだ。
でもたまに思う。
岸と手を繋げたら…
岸が自分だけを見ていてくれたら…
「今も充分太陽ですよ」と言われた時、嬉しくて仕方がなかったのは事実だ。すぐに高橋が別の質問をしてくれたから変にそれ以上感情が表に出なくてすんだ。そういう意味で今日は何度も幸運に救われていると言える。
嘘ばっかりつくのはかまってほしいから。
いたずらをするのは自分に振り向いてほしいから
嘘をついて、いたずらをして、岸くんが怒っている時は自分だけを見てくれている。いつしかそれに気付き、歪んだ愛情表現になっていった。
岸くんがこの気持ちに気付いて自分の方を振り向いてくれた時、この困った癖は治るかもしれない。
だけどそれは未来永劫ありえないことのように思えた。だからこれからも嘘はつく。つき続ける。
そう、側にいることができる限りは。
それはしかし、とても幸せなことのように思えた。岸くんの側にいて、嘘をついて、彼にかまってもらって、笑って、満たされて…もしかしたらそれは何よりの幸福ではないだろうか。
中村がそんな思考に陥りかけていると、ふいにけたたましいアラームの音が同時に二つの機体から鳴り響いた。
時計を見る。時間だ。中村は眠っている岸くんの体を揺さぶり、声をかけた。
「岸起きてぇ。時間だよ、収録行かなきゃぁ」
しかし岸くんは呻いているだけで起きる気配はない。だから声のトーンを上げた。
「岸、時間!早く起きてぇ!」
「うるっさいなもう…言われなくても分かってるからほっとけよ!ちゃんと起きるから!」
岸くんは声を荒げる。いつものこととはいえ呆れた。寝起きが悪いくせにこうして人に起こしてくれと言う。折角起こしてやっているのにこんな態度をとられてはたまらない。分かっていたこととはいえ少し腹がたった。
「よぉし…」
中村は深呼吸をした。そして…
「…」
再び寝入ろうとする岸くんの顔を覗きこむ。
一瞬の躊躇いの後、中村は岸くんの唇にそっと自分の唇を重ねた。
岸くんは起きない。もう眠りに再度堕ちていたから何をされたかなんて夢にも思わないだろう。
少し卑怯な気もしたが、こう呟いてそれを正当化した。
「起こしてって言ったくせに起きないからだよぉ」
そして次は何をしてやろうと考える。
岸くんが涙目になるような、とびっきりのいたずらを考えながら中村は残りの収録に挑んだ。
END
作者さん乙乙乙乙!
岸くん罪な男すぎる…!
れあたんの密かな想いにきゅんきゅんっぽい中の届かない気持ちにちょっと切なくなってホロっときた…
んんんんんれあたんんんん
んんんんんんんんんんんん切ないいいいいいいい
作者さんごちそうさま!
岸れあ‥なんて俺得
うわぁあ岸れあぁああああああああ
言ってみるもんだな〜〜〜待ってたかいがあったぁ〜〜〜作者さんありがとう!
れあたんキュンキュンするおおおおおおお
104 :
ユーは名無しネ:2012/09/16(日) 16:41:48.97 0
んんんんんんれあたんんんんん
んんんんんん最高!!!
岸くんの恋人(になりたい)不足で
106 :
ユーは名無しネ:2012/09/16(日) 21:10:41.27 0
ブサイクのくせに岸くんめ
107 :
ユーは名無しネ:2012/09/16(日) 22:59:38.88 i
作者さん乙!!
んんんんんれあたんんんんんwww
岸……罪なオトコ……
続編を希望する。
108 :
ユーは名無しネ:2012/09/16(日) 23:47:19.68 0
もはやトラジャだけどれあらんのお話お願いします!!
神7VSトラビス弟組2回戦がいいな
作者さん乙
きしれあキュンキュンする
甘酢っぱいお
112 :
ユーは名無しネ:2012/09/17(月) 02:08:14.69 0
岸くん許さん
僕は小さい頃から紳士だった。
すべり台で並んでいても、後から来た子に譲ったり、おもちゃを取られても「まあいいか」と別のおもちゃで遊んだり、サッカーをしていてもボールを譲る。弟の我儘だっていつも嫌がらずにきいてあげた。とにかく、人に優しく親切にというのが自分の中に自然に育っていた。
それで損をすることもあるけれど、それでも僕はよかった。誰かをだしぬいたり、大事なものを奪ってしまったり、我を貫き通そうとすることがとても恥ずかしいことだって思っていたからそういうことをするよりは何百倍もいい。
そう思うと不思議と悔しいという気持ちは消えていった。
「じゃあ顕嵐くん、観覧車には茂木アナウンサーと梶山くん、宮近くんと乗ってもらうから。スタンバイお願いします」
「あ…ハイ」
あ…と一瞬返事を躊躇ってしまったのはあてが外れたからだ。僕はそれを横目で見る。
「じゃあせっかくだし嶺亜くんと閑也くんも乗ろうか。顕嵐くん達のゴンドラの次ね」
「ほんとですか?やったぁ」
観覧車に乗れることにはしゃぐその姿はまるで無邪気な子どものようで、ふと目を奪われる。嶺亜くんは閑也くんと二人で何か話している。なんだか楽しそうでふと胸に小さな疼きが生じた。
「顕嵐、心配しなくても俺がお前のビビってる姿、ちゃーんと撮ってやるからな!」
ぼん、と背中を叩かれて意識が引き戻される。宮近の軽口に適当に返事をしながらその疼きを無理矢理押し殺して僕は観覧車に乗った。
「怖い時は、誰かに手を繋いでいてもらうといいんだって」
そのアンサーに反応して嶺亜くんが僕に手を差し伸べてくれた時、僕は舞い上がってしまいそうになった。でも宮近が間に入ったおかげで笑いに変わる。ほっとしたような、がっかりしたような…。
ただ、小さな手の温もりと感触はじぃん…とこの手にまだ残っていた。
観覧車は上昇し続ける。後に乗った嶺亜くんが気になってそこに視線を合わせようとするけど収録中だし、前に座る梶山が邪魔で良く見えなかった。
そうしているうちに今度は高度が増してきてそれどころではなくなった。僕は必死に笑う膝に力をこめながらその恐怖に耐えた。そして収録は無事終わる。
「じゃあね、ジェットコースター乗ってもいいよ」
スタッフがそう言ってくれた時、嶺亜くんは跳びはねて喜んでいた。そして隣の閑也くんは顔を歪ませていた。
「閑也くん、絶叫系はダメなのぉ?」嶺亜くんが問う
「俺絶叫系はちょっとね…」閑也くんが溜息混じりに返す
「じゃあさっきのアンサー実行すればいいじゃん。誰かに手、繋いでてもらったら怖くなくなるかもよぉ」
「んじゃ嶺亜、繋いでてくれる?」
閑也くんのどこか何かを期待した嬉しそうな表情に、僕の中で何かが芽生えた。
それは、小さな火種だったように思う。ほんの少しの風で燻って消え入りそうなくらい弱弱しい…
だけどその火種が消えなかったのは、僕が行動に出ていたからだ。
「じゃあ閑也くん、茂木さんに繋いでもらえばいいんだよ、大人の人と手を繋いだら頼もしいでしょ?」
「ん〜まあ…それも一理ある…茂木さんじゃあお願いします」
閑也くんが茂木さんにそう願い出ると、茂木さんは困り顔で
「いやおじさんは絶叫はいいよ。若者達だけで乗ってきな!」
と即答で断った。僕はこの時、自分でも驚くほど頭の回線が早く繋がってそれが言語中枢に達するのを感じた。そしてすかさずこう口にしてた。
「嶺亜くん、一緒に乗ろう」
再び閑也くんが嶺亜くんに願い出ることのないよう、僕は迅速に彼を誘っていた。そう、自分でも意外な程に…
「いいよぉ。でも観覧車が怖いのに絶叫は大丈夫ってなんか変わってるねぇ顕嵐ってぇ」
ふんわりと柔らかい笑顔は見ていて和む。でも今はもう和むよりそれ以上に強い感情が僕の中にあった。
「あ、顕嵐、あっちにポップコーンのお店あったよぉさっき食べたいって言ってたじゃん」
「え、ホント!おい宮近、後でポップコーン食べに行こ!」
嶺亜くんの苦笑いを見て、これは嘘なんだと気付く。だけど僕は騙されたフリをする。そうしたら嶺亜くんは少し困るだろう。
だけどそれが嬉しかった。なんでもいいから僕に向かって発信してくれることが僕にとってはかけがえのない喜びだった。嘘でも冗談でも…嶺亜くんにされるのならなんだっていい。
だから「それ嘘でしょ」なんて言わない。言ったらもしかしたらもう言ってくれなくなるかもしれないから。
「嘘つけ〜。俺さっき見てきたけどそんな店なかったぞ」
だけど宮近がすぐにその嘘を見破ってそう指摘した。嶺亜くんはちょっと安心したように舌を出した。そして宮近になだれかかる。
「ばれたぁ」
「バレバレ。嶺亜の言うことはどーせいい加減な冗談か嘘でしょ」
二人はじゃれ合う。「嘘つけ」と即答しても、結果的に嶺亜くんはこんな風に僕にも接してきてくれるだろうか…
もしかしたら、嘘や冗談に騙されない方が、騙されたフリをしない方がいいのかも…なんて迷いが生じてくる。楽しそうにじゃれ合う二人を見ていると、どっちがいいか分からなくなってきた。そして焦燥感に襲われる。
「ちょっとくらい信じてくれてもいいじゃん。でも顕嵐は宮近と違って優しいからぁ」
嶺亜くんは僕の方を見てにこっと笑った。
やっぱり、騙されたフリをする方がいい。天秤は簡単にそっちに傾いた。
嶺亜くんが笑ってくれるなら
嶺亜くんが褒めてくれるなら
僕はどんな嘘や冗談でも真剣に受けとめて騙されたフリをする。そうできる自信があった。
「着いたよ。早く乗ろ」
僕がジェットコースターを指差すと、宮近が言った。
「俺梶山と乗るの嫌だよー。大声で歌いまくるからうるさいんだもん。嶺亜か顕嵐一緒に乗ろうぜー」
「いいじゃん、うるさい同士賑やかに乗ればいいんだよ。それか閑也くんと手を繋いで乗るか」
僕の返しが不満だったのか、宮近は嶺亜くんの方を向いた。
「え〜。どっちもやだよ。嶺亜乗ろうよ俺と」
「ダメ。嶺亜くんは俺と乗るってさっき約束したもん」
僕が言うと、宮近はぶつぶつ文句を言っていたが聞こえないふりをして嶺亜くんと階段を登った。
「顕嵐、僕そっち側がいいなぁ」
「うんいいよ。どうぞ」
スマートな動作で、僕は嶺亜くんに外側の席を譲る。
僕は小さい頃から紳士だった。
だけど僕は絶対に譲れないものが一つだけあった。
「行ってきま〜す!!」
ジェットコースターはゆっくりと走り始める。隣には嶺亜くんがいる。わくわくしながら目を輝かせていた。
そう、どうしても譲れないんだ。
例え相手が泣いても、わめいても、皆が僕を非難したとしても…。恥ずかしくてみっともない主張だとしても。
嶺亜くんの隣だけは、絶対に譲れない。
揺るがない決意を抱きながら僕は思う。
それを貫き通そうとする時の僕はきっと紳士からは一番遠い人間なんだろうな。
END
作者さん連日乙です!
あらんらんとれあたんのコンビもいいねー
あらんらんの一途さにグッときた!
118 :
ユーは名無しネ:2012/09/17(月) 19:06:58.55 O
作者さんきゃわわなれあらんありがとう
れあらんのふわふわ甘酸っぱい感じイイヨイイヨー
作者さん乙です!
れあらん大好き癒されるー
1番胸キュンするカップルかも
120 :
ユーは名無しネ:2012/09/17(月) 23:10:18.05 0
うおおおおおおおおおおお作者さんリクエスト答えてくれてありがとうううううう!!あらんらん紳士すぎて純粋すぎて
なんだかもう大好きだよおおおおおおおおおおお
んんんんんんんんあらんんんんんんんんn
乙ですううう
控えめなあらんが頑張ったんですね…
んんんんんんれあらんたまりませんなぁ
岸くんの恋人(になりたい)
「颯、髪伸びたな〜。」
「うん。小さくなってから切ってないから…」
「しょうがない。俺が切ってやるか!」
「え〜、岸くん切れるの?」
「なんだよ、その目は…まぁ任せとけって。」
そう言って岸くんは部屋を出て行った。
30分後、ビニール袋をぶら下げて帰ってくる。
中には小さなはさみと人形が入っていた。
「このはさみって…」
「うん、鼻毛切りだよ。」
「え〜、鼻毛切り〜?」
「新品だから大丈夫!先っちょが丸くなってるから安全だし。」
「岸くん、買ってるところ誰かに見られてない?ちょ、岸鼻毛切り買ってるなうwwwとか書かれてない?」
「えっ、そっちの心配?」
岸くんは人形の髪の毛で練習を始めた。
その姿が意外と様になっていて颯は見とれる。
「よし、出来たっ!」
しかし、出来上がった人形の頭は見るも無惨な有り様だった。
「やだ〜〜〜!はにうだにやって貰う〜。」
「ダメダメ!あいつ器用そうに見えて、袋とじもまともに開けられないやつなんだからな。耳ちょん切られるぞ〜。」
「お願いします。」
「よしよし。ま、いざとなったら坊主でいいじゃん。聖くんとか戸塚くんとか坊主でもかっこよ…ブフォッ」
「今笑ったよね?オレの坊主想像して笑ったよね?もう!その時は岸くんも坊主だからね!」
「分かった、分かった。(ニヤニヤ)じゃあ、切るぞ。」
「はい、出来上がり。うん、我ながらいい感じ!前髪の長さもちょうどいいだろ?」
「前髪はいいけど…なんかヘルメットみたいじゃない?でもまぁ、岸くんが坊主になってJr.クビになったら困るからこれでいいよ!」
「なんだよ、それwww
ヘルメットねぇ。ヘルメットっていうか…これは……ペンギン!ペンギンみたい!よく見たら颯、ペンギンに似てるなぁ。」
「ペンギン…」
岸くんは手のひらの上に颯を座らせる。
「フフフ…赤ちゃんのペンギンだ。あ、ちょっと待ってて。」
岸くんは再び部屋を出て行き、今度はコンビニ袋を持って帰ってきた。
「はい、今日のおやつはおっとっとだよ。」
岸くんは颯に魚の形のおっとっとを持たせ、撮影会を始めた。
「ねぇ。フリフリエプロン着させたり、くま耳つけたり、おっとっと持たせて写メ撮りまくるって、岸くん本当に変態なんじゃないの?」
「そんなこと言ってるおまえもノリノリじゃん。見てみ、これ口とんがってる。」
「カリカリカリ。あ〜、からいからい。おっとっとは塩辛いなぁ…」
つづく
作者さん二人とも乙!乙!
れあくり&あらちかジャスティスビリーバーの自分も胸がキュンキュンしましたぜ…!
甘酸っぱいよ切ないよ一途さが愛おしいよあらんらんんんん
れあたんったらいたずらっ子の小悪魔ちゃんだなれあたんんんん
岸くんの恋人(になりたい)キター!
待ってた!
いっつもこの二人のやりとりが可愛くて面白くてツボw
癒される!
恋人作者さん乙!
おっとっと颯くん可愛いよ〜
このシンメの空気感やっぱり癒される!
127 :
ユーは名無しネ:2012/09/18(火) 16:48:09.94 0
作者さん乙です!控えめで一途なあらんらんと嘘つき
小悪魔れあたんにほっこりしたー
恋人は岸颯のかけあいが毎回面白すぎる!颯ペンネタw
魚の形のおっとっと持ってるちび颯絶対可愛い☆
作者さん乙です
岸くんの恋人になりたいを実写で見たい…
変態チックな岸くんと辛口な颯きゅんがたまらんです
んんんんんんんんんんんん颯ぺんんんんんんn
作者さんたち乙です。
あらんが主人公だと何かマジメな恋って感じになるんだなw
ほのぼの岸颯もいいすなあ
あかん、新芽で坊主頭になってる図が浮かんできたwいやああああ
颯きゅんがかわいすぎて辛い
「やだ〜〜〜!はにうだにやって貰う〜。」 ←かわいい
神7楽屋劇場 番外編 「我らTravis Japan プレゾンは終わったが神7に再戦を申し込む!」
「結局前回はワイルドなこの俺しか勝利しなかったってことだな」
楽屋で梶山が溜息混じりに、きこえよがしにそう呟いた。宮近、阿部、吉澤、中村(海)の4人はあーはいはいと耳をほじりながら流していた。
「このままじゃいけねえ…。ワイルドな俺がもう一度神7にタイマンを申し込んでくる。貴様らはそこで俺のワイルドな勝利を見届けるがいい」
「どうでもいいけどお前Tシャツ後ろ前反対だぞ」
吉澤が半目でツッコむ。梶山はしまった、と思いながらも「後ろ前反対に着るのがワイルドなんだよ!」と負け惜しみを言った。
「俺はれあた…中村以外なら2秒でKOできるよ。前回は相手が悪かっただけ」吉澤は携帯を覗きながら言った。
「俺もれいあ君に野蛮なことはできないよ…生まれながらの紳士だし」阿部はあべかわ餅を口にしながら呟く。
「俺だって負けたわけじゃないもんね!なんか知らんけど高橋が発狂しただけだし」宮近は変顔メドレーをする。阿部はそれを見て餅を喉に詰まらせかけてむせた。
「そういえば前行った寿司バイキングの店、凄く良かったのにこないだ行ったらモータープールになってた…」海人は残念そうにカールの袋を開けた。
「要は対戦相手との相性にもよるだろ」
吉澤の指摘に皆うんうんと頷く。そこで対戦カードの検討が行われた。
「俺と顕嵐はれあた…中村以外なら誰でもいーわ。れあた…中村は誰が行く?」
吉澤は皆の顔を見比べる。だが皆は思う。「もういいから潔くれあたんって呼べよ」と。
「ふむ。お前ら二人は頼りないからな。ここは一つワイルドな俺が行ってやろう。言っとくが俺はお前らと違ってあんなワイルドさのカケラもない乙女男子にたらしこまれることなど決してないからな!」
梶山は自信満々だった。確かに、人類分類学上対極にいそうな二人ではある。
「ついでに栗田も一緒にいるだろうから俺が引き受けてやる。バスケ対決であいつの弱点は検証済みだ」
「んじゃ俺は…同い年だし岸くんいっとくか。ついでに高橋も」
吉澤と岸くんって同い年だったんだ…とトラビス達はどこか違和感を感じた。そして阿部はようやく詰まった餅を飲みこむことができた。。
「げほ…じゃあ俺も同い年で…神宮寺かはにうだでいいかな。どっちか宮近お願い」
「まあいっか。俺はどっちにも負ける気はしないし」
「僕は結局またあのお相撲さんみたいな子?今度は何食べに行こうかなあ…」海人は涎を拭いた。
「よしこれで対戦カードは決まったな…ん?全員当たってるよな?なーんか忘れてるような…」
梶山は視線を上に向けて考え込む。指を折りながら人数を数えていった。
「1,2,3…誰かもう一人いたような…」
「神7は7人だろ。だから神7なんだよ。これで全員だ。よしじゃあ皆健闘を祈る!」
最後は最年長らしく吉澤がしめてそれぞれの相手の元へと向かった。
「うらあ!中村!ワイルドな俺がタイマンはりにきたぞ!」
勢いよく楽屋のドアを開けると中村がきょとん、とした表情を見せる。栗田の姿はない。
「タイマンってぇ?」
「サシで勝負だ!せめてもの情け…何で対戦するかはお前が選べ」
梶山はふっとニヒルな笑いを浮かべて見せた。あえてのこのハンディ。さすがワイルド梶山だと自己陶酔に浸っていると中村が答えた。
「じゃあスケボーでぇ」
「あ、すいませんそれ無理」
梶山はスケボーはやったことがない。いくらワイルドでも無理だ。
「じゃあ油絵ぇ」
「あ、すいませんそれも無理」
梶山の絵は幼稚園の頃から大して進化していない。それもノーサンキューだ。
「無理無理ばっかり言ってぇ…じゃあ自分で決めてよぉめんどくさいぃ」中村はうんざりした顔を見せる。そこで梶山は考えた。
「そうだな…じゃあ腕相撲なんかはどうだ?ガチリンピックでは結局お前とは対戦しなかったしな。しかし俺は吉澤みたくお前を「かわいいなぁ」なんて言わないし顕嵐みたく紳士でもないから覚悟しとくんだな」
「いいよぉ僕高橋に勝ったことあるしぃ」
中村は自信ありげに言った。高橋だと…?
確かヤツは俺と同い年だったはず。あのバッキバキに割れた腹筋は何気にワイルドなこの俺も一目置いている。その高橋にこんなワイルドさの欠片もないふんわりふわふわ乙女ちっく色白女童が勝った…だと…?
いや落ち着け梶山朝日。そんなわけがない。俺がこんな性別不詳異次元フェロモンに負けるはずなど…
梶山は自分を奮い立たせる意味でポケットに忍ばせた、海人のお弁当袋からこっそり持ち出したアレを拳のなかにおさめた。
「俺の握力を見るがいい!泣いても知らないからな!」
そして中村に拳を突き出して中のものを握力で粉砕した。
「…」
それは見事に潰れ、その汁と果肉が派手に飛び散った。とりあえず後で掃除しとけばおとがめはないだろう…
とそこで梶山は目が点になる。
「てめえ…」
中村の目は座っていた。絶対零度。そんな四文字熟語が脳裏をよぎる。
「はい?」
「俺にトマト食わそうとしたな…」
さっきまでの鼻にかかった柔らかボイスではなく地獄の底から響いてくるようなバリトンだった。
さらには語尾が伸びる乙女口調ではなく完全早口になっている。梶山は我が目と耳の両方を疑った。あれ…?ぶりっこ天使れあたんはどこへ…?
「正座」
「はい!」
梶山は条件反射で正座をしてしまった。何故だ?俺はワイルドであって誰かさんみたくドMではない。かといってSでもない。あえて言うならワイルドのW…
梶山の混乱をよそに女王様は飛び散ったトマトを目を細めながら睨んだ。
「このクソいまいましい物体ちゃんと処理しとけ…それとお前、静物画と風景画どっちがいい?」
顎を人差し指でちょん、と持ち上げられ、その絶対零度が眼前に迫る。梶山は金縛りにあったように動けない。
「せ…静物画で…」
「よしんじゃ明日までに100枚。それおしおき」
「はい…?」
なんだかどっかで聞いたような話ではある。同い年の谷なんとかって奴がよくおんなじ目に遭っているようないないような…。そう思い至ると同時に楽屋のドアが開く。
「あり?れいあ何やってんの?」
「あ。栗ちゃん」
女王様が天使に早変わりした。梶山は再び目が点になる。
「誰こいつ?あ、でもこないだジュニランの撮影にいたよーな」
「栗ちゃんこの子ひどいんだよぉほら見てぇ楽屋にトマトぶちまけたのぉ絶対許せないぃ」
「まじで?れいあ大丈夫だった?俺がついてるからもう大丈夫だかんな!」
アホと乙女はいきなりキスを始めた。そして梶山がいるのにもおかまいなしにどんどん行為がエスカレートしていく。唖然としつつも梶山はしかしその一部始終をしかと見届けていた。
「考えてみたらなんでタイマンをする必要があるんだ?でもまあ仕方がない。閑だしな」
吉澤はぼやきつつ岸くんと高橋の行方を捜した。二人セットでいる可能性は低いだろうが…
「お。いた」
ちょうど階段の踊り場で一人ダンスの自主レッスンに精を出す岸くんが見えた。普段はぼや〜っとしていて不憫オーラ全開だがこういう努力家な一面があるとはなかなか感心である。
悪い奴ではないが俺も一応はグループの最年長だ。ここで引き下がっては年下にしめしがつかない、と吉澤は心を鬼にして岸くんにタイマンを挑もうとした。
「あ」
とそこで階段を踏み外してしまい、大きくバランスが崩れた。踊っている岸くんに思いっきりぶつかり、折り重なった。
「いたた…なになに一体…」岸くんは呻く
「いって…すまん、足元が…」
謝ろうとした時、踊り場に絶叫が轟いた。
「ききききききき岸くん、いいいいいいいい一体これは…!!!!!」
振り向くとそこにはこの世のものとは思えぬほど悲壮な表情をした高橋が立っていた。彼はぶるぶると震えながらまくしたてるように叫ぶ。
「ままままままさか吉澤くんとそそそそそそんな…年上からはいじられて、年下からも慕われるけどやっぱり本命は同い年でいたいのって奴の中の中のintoのそんな類人猿でいいのならぼぼぼぼ僕だって…ああああああああああ!!!!!」
訳の分からないことをのたまいながら高橋は高速ヘッドスピンを始めた。ヘッドスピンは日々進化する。回ったまま階段を降りてきた。エクソシストディレクターズカット版も真っ青である。
「ちょ…高橋落ち着け!」岸くんは叫ぶ
「おい岸くんこれどうにかしろお前んとこのメンバーだろ!」吉澤も叫ぶ
「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
スピントルネードは非常に強い台風16号ばりのエネルギーで差し迫ってくる。だがしかし腕力なら自信がある。岸くんもいるし二人がかりなら止めれないこともない。吉澤は身構えた。
そう、吉澤と岸くんだけなら問題はなかった。
「何これ?」
何故かそこにちのりんこと千野葵が通りかかる。小学生Jrの中でも指折りのちびっこである彼はきょとんとしながら階段を登ってきた。が、そこでヘッドスピンの足が派手に当たって泣きだした。
「うわああああああああああああん!!痛い!痛いいいいいいいいい!!!!」
ハスキーな泣き声と高橋の絶叫でギャラリーが集まってくる。そしてふと吉澤が横をみやると岸くんは蒼ざめ始めた。
「この展開は…ああああああああ!!!!奴が来る!!!!!」
岸くんが叫んだと同時にそれはおでましだった。泣く子も余計に泣き叫ぶ鬼ヤクザ。振付師の登場である。
「てめえら何やってんだゴルア!!!!!!!おい千野はなんで泣いてんだ!!高橋はなんで回ってんだ!!!おいこら岸、吉澤!てめえら何やらかしたあ!!!!!!!!!!」
「え、ちょっと俺は関係な…」
しかし何を言っても無駄だった。吉澤は岸くんの不憫の巻き添えをくらい、タイマンどころではなくなったのだった。
「なんか騒がしいな…」
どこかで誰かの絶叫が聞こえた気もするが阿部は神7の楽屋を求めて探し回る。ようやく探し当てたと思ったらお約束の神宮寺オ○ニーの最中である。
「おい阿部開ける時はノックくらいしろよ」
「失礼…」
阿部は一応ノックした。コトの最中だし待ってみた方がいいかな、なんて思ったが他人のオ○ニーを見せられるなんてまっぴらごめんだ。阿部は「あのう…」と神宮寺に声をかけた。
「なんだよ俺忙しーんだよ。それともナニか?お前も一緒にオ○るか?」
「いや俺は遠慮します」
以前ホテルでスカ○ロを見せられて以来阿部は神宮寺のエロコレクションは警戒している。それに今日の晩ごはんは昨日の残りのカレーだろうから…。
しかし阿部が遠慮すると神宮寺はニヤリと笑って、
「お前はこっちの方がいいか?」とスマホを動かしだした。
「え、何…?」
訊ねると、神宮寺からとんでもない返事が返ってきた。
「こないだの遠征の時に、中村の風呂、盗撮したんだよーん。もちろんうみんちゅじゃなくてれあたんの方な」
「なんだって!!」
阿部は叫んだ。そんなこと許せない。紳士な阿部にとってそんな破廉恥で卑怯な行為はもっての他だ。うみんちゅならいくらでもどうにでも撮ってくれてかまわないがれあたんは許せん。激しい怒りがこみあげてくる。
「やめろよ!今すぐ消せ!」
「あ、見たくない?んじゃいーや」神宮寺はスマホをしまおうとする。
「いや、見たくないとかそういう意味じゃ…。えっと…俺は神宮寺が心配で…そんなの栗田に知られたらスマホごと東京湾に沈められるんじゃないかって」
「フッ…心配ご無用。俺のスマホは湖の底から蘇った不死鳥…その名もフェニックスマホだから大丈夫だ!それにこいつを守るためになら俺はバラモスより強くなれるぜ!」
スマホを掲げながら神宮寺は高らかに宣言した。前向き発言はけっこうだが結局下ネタがからんでいる。中村が残念がるわけだ。
「てなわけで視聴開始、と」
神宮寺は頼んでもいないのにスマホを動かし問題の動画ファイルを開けた。建前とは裏腹に、阿部は前かがみになってその画面に唾を飲みながら魅入った。
だが…
「…これってドアの前がえんえん映ってるだけじゃん…シャワーの音しか聞こえないし…」
期待していたものと全く違うことに阿部は落胆した。こんなの、盗撮でもなんでもない…
しかしこのエロエンペラーの偉大さたる所以はここからにあった。
「甘いな…。お前想像してみろよ。この向こうで中村が一糸まとわぬ姿でシャワー浴びてんだぞ。まずどこから洗うのか…すべすべのお肌が水を弾いてほんのりサクラ色に染まって…大事な部分はどうなっちゃってんだろうな…とかな。
お風呂で泡泡プレイとか想像してみろ。『あらんくすぐったいよぉ』とか言われちゃってあんなことこんなこと…」
不思議とイマジネーションが膨らんでくる。想像はまるで具現化されそうなほどにリアリティを増してきた。まるであたかもそこに全裸の中村がいるかのような…
阿部はこうして神宮寺というエロ船渡しによりお花畑のユートピアにいざなわれていった。
「わったしっのわったしっの彼〜はあ〜ひっだりきっきい〜」
懐メロを口ずさみつつ適当な楽屋を開けると羽生田が肘掛椅子に座ってグラス方手に読書中だった。楽屋をまるで社長室か何かのように勝手にコーディネートしている。
「お、はにうだちょうど良かった。俺とタイマンを!」
「うるさいな今読書中なんだ静かにしてくれるか?」
羽生田は「ミナミの帝王」から目を離さずそう言い放った。金融経済の勉強中らしい。
だがミナミの帝王は目下116巻を超える超絶長編連載である。羽生田はどうやら大人買いをしたらしくその全てが楽屋の机に積み上げられていた。そして彼が手にしているのはまだ5巻だった。
全部読むのを待っていたら日が暮れてしまう。宮近は今夜7時には帰って黄金伝説を見たい。時間がなかった。
そこで考える。
「いいからちょっとだけ相手しろって。でないとこのあんまん食っちゃうぞー」
そばにあったコンビニの袋を掲げると羽生田はやれやれといった様子で肘掛チェアーから降りた。
「なんなんだよもう…僕は忙しいんだ。アイドルやりながら経営や経済の勉強もしなきゃいけないし新作のモノマネも考えないといけないし時間がいくらあっても足りないんだよ。分かるか?君にこの苦悩が…」
「それだ!そのモノマネで俺とタイマンだ!いいな!爆笑した方が負けだ!負けたら金輪際お前はモノマネを封印してもらうぞ!」
「僕が君に負けるとでも?寝言は寝てから言うんだな」
「俺はJrが選ぶJr大賞でお笑い部門2つランクインした!お前は何部門だ?言ってみろ!」
痛い部分を突かれたのか羽生田は目を妖しく光らせた。そう、ヘッドライトのように…
「こしゃくな…うけてたとう」
「そうこなくちゃな」
物真似バトルが人知れず始まる。二人は獅子とライオンのごとく睨み合った。
「俺には時間がない…いきなり勝負を終わらせてやる!」
宮近はそう宣言すると、とっておきのコロ○ケの物真似を披露した。トランプの大富豪でいうエースをいきなり出すようなものであった。
「何を…とくと見るがいい!キスマイビーナス!!」
羽生田は藤ヶ谷の物真似で対抗してきた。なかなかにクオリティが高い。
だが俺もお笑いJrで名を馳せようとしている男…こんなところで躓くわけにはいかない。今度は自虐ネタだ。
「見ろ!うしおととらに出てくる衾(ふすま)だ!」
「ちょこざいな…ならばクチビルゲ…じゃなくて風磨くんの注意欠陥多動ダンス!!」
「ならばこっちは…」
物真似バトルの決着はなかなかつかなかった。
「お腹すいたな〜」
食糧袋を置いてきたのは失敗だった。海人がとぼとぼ廊下を進んでいくと何やら端っこにきのこのようなものが生えていた。腹が減っていたのもあり海人はきのこに近づくがそれはきのこではなく人だった。じめっと佇んでいるから粘菌類に見えてしまった。
「君なにやってんの?」
海人が話しかけるとその粘菌少年はゆらりと振り返る。目にくまができている。こんな濃いくまは高橋実靖以来だ。
「デッサンが終わらなくて…また振り間違いしちゃって…JJLのPPCで調子のって「可愛い顔」リクエストしたら「がんばってやったんだから笑うな」って怒られておしおきを…」
ぶつぶつとよく分からないことを呟いていた。それにちょっと聞きとりにくい。
「よく分かんないけど何かおいしいもの食べて寝たら元気出るんじゃない?あ、そうそう僕ね、人を探してるんだよ。お相撲ちゃん…じゃなかったえっとあの神7のぽっちゃりした子…」
「倉本?」
「そうそう、その子探してるんだけどね。前に寿司バイキング行ったんだけど決着つかなくてね。店なくなっちゃってたし今日は焼き肉バイキングなんかどうかと思って。良かったら一緒に来ない?判定員として」
「お…俺を誘ってくれるの…?」
何故かきのこ少年は震えだし涙を目に浮かばせた。
「え?あ、まあその焼き肉嫌いじゃなかったら…ところで倉本くんはどこに?」
海人がきのこ少年…もとい谷村の尋常ならざる反応に若干引きつつあたりを見渡すと甲高い喚き声が近づいてくる。
見るとちょうど倉本がやってきた。しかし彼はぎゃあぎゃあと一緒にいる井上と言い合いをしていた。
「だから食っちまったもんは仕方がないだろ!」
「いっつもそんなこと言ってごまかすじゃん!俺がソーセージ一週間に一本しか食べられないの知ってて!ひどいよくらもっちゃん!」
「だからこの野菜スティックやるっつってんだろ!この俺がだぞ!」
「野菜なんかいらないよ!ソーセージがいい!ソーセージ!」
「倉本、井上、落ち着いて…あ、倉本この人が君を探して…」谷村が止めに入るがしかし倉本は全く聞く耳を持たない。
「うるせーたにー!てめーはきのこでも拝んでろ!あとまだデッサン残ってんだろ!」
「うちゅうじ…たにー君からも言ってよ!俺のソーセージ返せって!」
谷村はおろおろし始めた。この幼稚なやりとりと谷村の挙動不審っぷりはしかし海人にはなかなか新鮮だった。トラビスではあまり見ない光景である。
「お前は将来の俺の嫁なんだからこれくらいでうじうじ言うなよ!結婚生活あと何年あると思ってんだ!?」
「わけわかんない理屈でごまかすのやめなって!いいから早く返してよ!俺もう腹減って死にそうなの。朝ご飯にぼしとお粥だったんだから!」
「二人とも…とりあえず冷静に…穏便に…平和的に…」
「うっせーつってんだろたにー!そんなだからてめーはいつまでたってもおしおきくらうんだよ!ドMにもほどがあんだろ!変なおじさんはモノマネだけで十分なんだよ!」
「そうだよ!いい加減要領覚えなよ!そんなだから金田にいつまでたっても泣かれるんだよ!一体何プレイのつもり!?」
「ひどい…」
谷村が小学生二人にけちょんけちょんに貶されてるのを見て気の毒に思ったのと、井上がにぼしとお粥しか食べていない上にソーセージを取られたことに心を痛めたのと、倉本との決着をつけたいのと、単純に空腹が限界付近に達したのとで海人は一本しめた。
「みんな!焼き肉食べに行こう!食べりゃ嫌なこともイライラもみんなおさまる!そうだ!食べることは生きることって誰かが言ってなかった?」
そして海人は倉本と井上と谷村を連れて焼き肉バイキングへ行った。
家では11歳年上の兄と両親で甘やかされて育った彼にとって年下との触れ合いはなかなかに新鮮だった。今日は新鮮づくしだ。新鮮といえばお刺身だ。寿司だ。焼き肉もいいがやっぱり寿司が一番。
海人がそんな結論に達していた頃、宮近と羽生田の物真似対決はまだ続いていた。
さすがに二人ともネタが尽きてきて第165戦「小田急ロマンスカー対マゼランペンギン」はまたしてもドローに終わったという。
END
いつもの作者さん乙!
神7とトラビスの絡み好きだw
まさかあの梶山までおしおき対象になろうとはw
そういえば梶山れあたんよりひとつ年下だったな…
しずやも岸くんと同い年…
阿部だからあべかわ餅www
吹いたwww
しずやとあらんはもうすっかりれあたんの虜だなw
あらんはあんなに宮近に愛を注がれてるというのにれあたんに夢中とはまったくれあたん並みに小悪魔ちゃんだぜ
どの雑誌でもいいので社長室の肘掛椅子のあむ様を次のグラビアにして下さい…!
あむvs宮近が一番タイマンらしい
宮近は笑いにこだわる関西の皆様をしのいで一位と二位ランクインでコメントで対抗心むきだしにされててワロタ
小田急ロマンスカーvsマゼランペンギン腹抱え声出して笑ったwwwww
…観たすぎる…!
この二人ならハイレベルな戦いがみられそうだ…!
うみんちゅいいやつすぎ食い気ばっかりすぎwwwww
しかもみずき谷茶浜とも夢のコラボwwwww
そしてまた今日もどこかの寿司屋がモータープールに…
颯くん最強すぎてwww
ヘッドスピンで階段とか本当ホラーwwwww
うみんちゅが可愛くて平和の象徴だね
ぜひジュニランに出てキャラ披露希望
142 :
ユーは名無しネ:2012/09/19(水) 23:25:08.95 0
作者さん乙です!!
相変わらずれあたん強いなw
そういえば前に岸くんの恋人(になりたい)でたにーが写メった颯くんがきのこの山ペロペロしてる卑猥画ってどうなったんだろう?w
作者さんめちゃめちゃ乙!
あむあむと宮近のモノマネ対決が面白すぎワロタwww
まさか神宮寺はあらんらんをれあたんの動画で誘惑するとは…w
それにしても岸颯のコンビネーション強すぎる!しかも颯くんのヘッドスピンがまさか鬼ヤクザまで登場させるとは…w
作者さんおつです
ヘッドスピンで階段降りるとこで飲んでた茶吹いたwww
颯くんの携帯マナーモードのホラーじみた動きを思い出した…
みやちかとはにー何だか楽しそうwうみんちゅはいいパパだなw
>144
いつも思うけど宮近さんは心底嬉しそうにあらんに絡むね〜
146 :
ユーは名無しネ:2012/09/21(金) 18:36:23.35 0
>144
それってファンの方が撮ったやつなんですか?
超プライベートwww
てか宮近はほんとあらんらんのこと好きだな
147 :
ユーは名無しネ:2012/09/22(土) 00:15:40.65 0
神7以外の三流メンバーはいらない
じんたんの話もっとやればいいのに
お前が書けよ
来週は我らが岸くんのお楽しみ日
神宮寺の話といえばいつぞやの神谷が見たいな。
>>149 宮近あらんらんにデレデレすぎるwww
れあたんが神宮寺に甘える話が見たいです><
実験で颯れあが見てみたいw
谷栗、谷岸、颯神あたりはどうだろう
というかれあたんってどの組合せでもイケるのかw
AA候補
岩橋
(´∂∪∂`)
(´・ヮ・`)
谷村
( /'_б)
(6_6 )
宮近
(´=┴=)
( ´┴`)
( =_J=)
あらん
(゚◇゚)(>◇<)
しずや
[V_V]
羽場
('e')
松倉
(⌒ ー ⌒)
12歳。一つ大人になった君へ
「よーし、これでカウントダウン開始だな…!」
今日も部屋のカレンダーの数字を塗りつぶす。花丸がつけられた日まで残り10日をきった。倉本はご機嫌にマジックのキャップを閉めた。
花丸は9月23日につけられている。倉本郁12歳のバースデーだ。
「俺ももう12歳か…大人になったな…」
感慨に耽っているとドアがノックされる。ややあって母親が入ってきた。
「かおる、お誕生日のご飯どこで食べたい?」
プレゼントはもう決まっていて前倒しでもらっていた。二人の姉からはまだもらっていないがリクエストはしてある。
そして誕生日に好きなものを好きなだけ食べられるというのはこれまでの倉本にとってはこの上なく魅力的なものだったが今は違う。もう俺も12歳になるんだ。いつまでも食べ物で喜ぶような子どもじゃない。
そう、食いものよりも大事な奴がいるんだ。
倉本は母親に言った。
「多分さー、その日友達と食べるからいいよ」
「え?」
母親は目を丸くする。ひどく意外だ、とでも言いたげに口をぱくぱくさせていた。
「友達と食べるって…その日はコンサートじゃないでしょ、ちゃんと家に帰ってこれるんでしょ?」
「それがさー、一年に一度の俺の誕生日だからどうしても一緒に過ごしたいって奴がいるんだよねー。あ、Jrの友達なんだけど」
「そんなこと言ったって…あんまり帰りが遅くなるのは…」
「分かってるって。そんなに遅くにはなんないようにするから。あ、宿題やるからもういいでしょ」
母親を軽くあしらって倉本は考え始めた。あいつは確か俺と同じで肉が好きだったからやっぱりファミレスでハンバーグかな、それとも唐揚げセットかな…と構想をめぐらせる。
俺の誕生日だからって無理して奢るなんて言うんじゃねーぞ、ちゃんとワリカンにしてやるからよ。まあ、俺も親が心配するからあんまり遅くまで付き合えないけどできるだけいてやるからあんま拗ねんなよみずき…
楽しい妄想を膨らませながら倉本は眠りにつく。12歳の誕生日が俺とお前の記念日だぞみずき…そんなことを夢に描きながら次のレッスン日を迎えた。
「おっはよー!くらもっちゃん!」
ダイヤモンドのような目を輝かせながら井上が後ろから肩を叩いてきた。こころなしか声がいつもより張っていて輝きも1・5倍増しの上機嫌だ。若干頬も紅潮させている。めずらしく井上はハイテンションだった。
その理由を倉本はこう解釈した。
「おいおいそんなはりきんなよみずき。まだあと一週間もあんだからよ…ったくせっかちだなそんなに楽しみなのかよ」
一週間後の自分の誕生日に二人きりで初めて出かけるというW記念日に心を弾ませているに違いない。倉本は半ば確信した。
「え、くらもっちゃんなんで知ってんの?俺話したっけ?」
井上は目をぱちくりとさせる。倉本は分からいでか、と井上の頭をぽんぽんと叩く。
「話さなくても俺にはちゃんと分かるって。俺達の仲だろ?」
「すっげーくらもっちゃん、エスパーじゃね?」
井上は目を丸くして感心した。倉本はふっと照れながら
「んな凄いことでもねえって。まあそんだけお前が楽しみにしてることぐらい俺は百も承知だ。夏休みはお互いレッスンやらコンサートやらで忙しかったしな。やっと…」
倉本の言葉を遮って、井上は興奮気味に話した。
しかしそれは倉本にとっては寝耳に水どころか寝耳に亜硫酸くらいの衝撃を与えた。
「そうなんだよ夏休み忙しすぎて全然行けなくって、やっと家族でバイキング行けることになってさ!バイキングとか一年ぶりくらいだから俺もー楽しみで楽しみで!絶対最後にチョコレートケーキは食べないと!」
倉本には井上が何を言ってるのか瞬時に理解ができなかった。だが、頭の回転の速い倉本は超高速でこう結論づけた。
「あ、ああ、22日のことか?まあ連続で外食になるけど別にかまやしねーだろ。むしろ嬉しいんじゃね?」
土曜日は家族で外食、そして日曜日の自分の誕生日は一緒に過ごす、こういうことだろう。確かに井上にとってはワクワク2Daysだ。うん、そうに違いない。倉本は自我を保った。
だがそうではなかった。
「え?土曜日は遅くまでレッスンあるし無理だから日曜だよ。日曜はちょっと早めに終わるじゃん?だからそのまま店に向かうんだけど」
「おいおい何言ってんだみずき。あ、10月のこと?えらく先の話だなオイ」
「違うよ来週の日曜日。9月23日。秋分の日だよ。あ、今年は22日らしいけど」
倉本は自分の誕生日が秋分の日であることなど知らなかったがこれは俄かには信じ難い展開である。もしかして井上は自分の誕生日を忘れているのでは…?
倉本はおそるおそる訊いた。
「おいみずき、9月23日は秋分の日以外にもひとつ重要な、超重要な日だってこと忘れてやしないか?」
「超重要な日?えー…?平成ジャンプの京セラドームコンサートがあるって誰か言ってたような…関西合唱コンクールの日だったような…」
からかう様子もなく真面目に分かっていなさそうな井上を見て倉本は必死に自分を落ち着かせながら考えた。
いや…落ち着け倉本郁。そうだ、みずきはちょっとうっかりやで忘れんぼなとこがあるんだ。
それに誕生日なんて常日頃口に出すようなもんでもないしちょこっとその詳しい日程が外れてしまっているだけだ。だからちゃんと言えばその重要性に気付くはず…
「ちっげーよ!俺の誕生日だよ!倉本郁12歳の誕生日だ!」
「え?あ、そーか、そうだったそうだったおめでとーくらもっちゃん!おおきくなったねー!」
拍手をしながら井上は笑う。可愛らしいマシュマロのような笑顔だ。それに溶けながら倉本は続けた。
「というわけでだ、外食はまた今度にしてその日は俺と飯食いに行くぞ。あ、別にケーキだのプレゼントだのはいらねえよお前の笑顔があれば…」
「え、それ無理」
きっぱりと井上は断言した。
「だってバイキングの割引クーポン23日までだもん。20日が親の給料日だって言ってたしその日以外ダメだから」
「何言ってんだよそんなもんその次の週とかでもいいだろ割引ったって大したもんじゃあるまいし」
「大したことあるよ!いつも小学生1300円のところが1000円になるんだよ!俺と弟合わせたら合計600円も違ってくるんだよ!600円ってカール何袋買えると思ってんの!?」
井上は力説する。が、そうすればするほど倉本はむきになった。
「アホかどっちが重要か考えたら分かんだろ!俺の誕生日だぞ!家族と俺とどっちが大事なんだよ!」
「弟だって超楽しみにしてるし俺が行けなかったらもう来年までいけないし泣くじゃん!」
「知るかよそんなの!とにかく23日は俺と一緒だ!いいな!?」
「だから無理だって言ってんじゃん!」
井上と倉本の甲高い叫び合いのケンカにギャラリーが集まる。そして事情を知った神7メンバーは井上派と倉本派に分かれた。
「約束してたわけじゃないんだろ?だったら倉本の我儘じゃん。しゃーねーし諦めろよ」
神宮寺はスマホ方手に井上を擁護した。その隣で岸くんも頷く。
「一年ぶりの家族での外食ったら相当楽しみにしてたんでしょ?今更やめろってのも可哀想だし…」
「この場合完全に倉本の一人相撲だからな…おっと太っていることとかけたんじゃないぞ。とにかく正当性がないし井上は悪くないと思う」
羽生田も井上派である。そして地味に端っこで谷村もそれに頷いていた。だが…
「約束はしてなかったかもしんないけどぉ誕生日に好きな人と一緒にいたいっていう想いは大切にしてあげたいしぃ井上だってそこんとこ分かってると思うんだけどぉ」
中村は倉本に肩入れをしている。その隣で栗田は
「れいあの言う通りー。俺なんか9階のベランダ渡ってれいあに会いにいったしー」と得意げだ。
そして高橋は…
「倉本は僕の純情片想い連盟の仲間だから気持ちは痛いほどよく分かる。ぼ、僕も約束しっぱなしの大事な約束があるし…」
と岸くんを横目に見たが岸くんは神宮寺のスマホのエロ動画の画面を盗み見していた。
「二人ともガキだしどっちか我慢しろっつっても無理だろ」神宮寺は言う
「じゃんけんで決めたらどうよ?」栗田の頭ではこれが限界である
「民主主義にのっとって多数決は?」羽生田の意見は栗田と大差なかった
「どっちもが納得できる方法考えてあげようよぉ」中村は頬を膨らませる
「そんなこと言ってもあちらを立てればこちらが立たずになるし…」岸くんは頼りない
「あ…あみだくじは…?」谷村の意見は流されてしまった
「僕は井上に倉本の気持ちを無下にしてほしくないけど…」高橋は視線を落とした
神7メンバーが意見をぶつけ合う中、レッスンは進んでいく。しかしながら、やはりというか倉本の精神的打撃は大きく彼は集中を欠いてミスを繰り返し鬼ヤクザの血管を浮きだたせた。
「ゴルア!!倉本!!てめぇやる気あんのかチャーシューにしてラーメンの中につっこむぞ!!」
しかし倉本は鬼ヤクザの怒号にふてぶてしい顔で返す。今の彼にはおそらくトマトプッツン中村ぐらいしか太刀打ちできない。それほどまでに暗黒のブラックホールは巨大な渦となっていた。
休憩時間になると倉本は持ってきたお菓子にもパンにもおにぎりにも弁当にも手をつけず、一人スタジオの外でふてくされた。
(くそ…そりゃあよ…約束とかはしてなかったけど…)
期待していただけに、落胆は大きかった。「仕方がない」と割り切るにはまだ幼すぎて自分の想いと主張が現実とぶつかり合う。それは涙という化学反応を呼び起こした。
「くそ…!」
服の袖で拭ったが困ったことに止まってくれない。それどころかどんどん溢れ出て来て手に負えなくなった。
倉本は自分がすぐ泣いてしまうことを自覚していたが他人に見られるのはやはり嫌だ。休憩時間中に止めなければ…
しかしそう思えば思うほど抑制はきかなくなっていく。頭が割れそうに痛いし、何よりもう何も考えたくないと倉本は一切の思考を放棄した。ただ袖が濡れていくのをぼんやり感じていた。
そうしてどのくらい時間が過ぎたのか倉本には考える力もなくなった頃、後ろから声がかかる。
「何やってんの倉本?」「え…もしかして号泣中?」
「あんぱん食われたの?」「おいおい橋本じゃあるまいし…ってこいつ橋本より食い意地はってたっけ…」
それはロクネンジャー達だった。歌舞伎も終わって久しいが相変わらず彼らは彼らで行動している。
橋本のおちょくるような顔も羽場の深く考えなさそうな能天気面も林のこまっしゃくれた上から目線も金田のクソ真面目そうな顔も今は全てが気に障る。倉本は叫んだ。
「うるせええええええ!!!お前らまとめて塩かけて食うぞコラアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「うわ、食われる!退散だ退散!!」
ロクネンジャー達は速やかに戦略的撤退をしていった。
その頃、井上は…
「気にすんなよ。あいつが勝手に思い込んでだだこねてるだけだし、まー俺らが適当に言い聞かせとくからよ」
神宮寺は軽い感じでそう言ってくれたがそう簡単にはいきそうにないことは感じていた。倉本が休憩中に何も食べずにどこかへ消えるなど未曾有の出来事である。
「俺どうすればいいのかな…」
独り言をつぶやきながら廊下を歩くと前方から何やら騒がしい団体が走ってくる。あやうくぶつかりそうになった。
「危ないな。こんなとこで鬼ごっこしたら鬼ヤクザにしばかれるよ何やってんの」
前方から駆けてきた連中…ロクネンジャーに井上は注意した。まったく彼らときたら気楽でいいよな…と溜息をつく。
「違うよ、あやうくブラックホールの栄養にされるとこだったんだよ危機一髪ってヤツ?」
橋本が息を弾ませながら説明した。ブラックホールと聞いて井上はピンとくる。倉本だ。
「くらもっちゃんどこで何してんの?」
訊ねると、林と羽場が答えた。
「なんか知んないけどスタジオの外で号泣してた。ありゃ相当こたえてんな。何があったか知らんけど」
「ドロケイしようとしたらなんかすごい呻き声が聞こえてさー。行ったら倉本が嗚咽してた」
「号泣…嗚咽…」
倉本はわりとすぐ泣くことは知っていたがそれでもその号泣と嗚咽の理由が自分にあることがなんだか心苦しかった。井上がそれを顔に出すとロクネンジャー達はそれとなく気付く。
「あれ?もしかしてお前らケンカでもしたの?」羽場が尋ねる。
「痴話ゲンカってやつか…」金田が頷く。
井上は行き詰まっていたこともあり彼らに話してみた。神7達は頼りにならないし自分でもどうしたらいいか分からない。まあこいつらに話したところで適当にあしらわれておしまいかもしれないけど…。
「はーなるほどねー」
聞き終わると、4人は頷き合った。そしてあっさりこう言い放つ。
「ダブルブッキングの解決方法は一つしかねーよ。この場合…」
ロクネンジャー達の助言を聞くと、井上はスタジオの外に向かった。
「いつまでもめそめそすんなって。この反省を活かして来年は予め予約しときゃいいだろ。ほれ、涙拭けって」
倉本の嗚咽を聞いて神7達はスタジオ外へと集結していた。神宮寺が羽生田の持っていたハンカチを倉本に差し出す。
「井上の誕生日は予め予約しときなよ。それで穴埋めは十分できる」羽生田は言った。
「うるせええええ。お前らに俺の気持ちが分かるがああああうわあああああん」
しかし倉本は依然として泣きじゃくっている。岸くんがおろおろしながら倉本の肩を叩いた。
「落ち込んだ時は食べるに限る!ほらほら倉本の鞄持ってきてやったからなんか食べて気を紛らわせろよ」
「そうだよ。食べることは生きることだし」
高橋も岸くんと一緒に倉本を励ました。だが倉本は食べ物に手をつけようとしない。
「かおるぅ。も一回井上に頼んでみようよぉ。晩ご飯は無理かもしんないけどぉちょっとぐらいなら二人きりになれるかもしんないしぃ」
「そーだよれいあの言う通り。俺だったらこれぐらいで引き下がんねえよ。お前はガッツが足りねえ。俺を見習え」
栗田は誇らしげに胸を叩いたが倉本はそれでも泣き続ける。
「お前らと俺では状況が違うだろおおおおお前らはいいよなとっくに両想いなんだしいいい。どうせ俺なんかみずきに相手にされてねえんだよ誕生日も忘れられてるし雑誌でもいつもスルーだしな!!」
倉本は自虐的になり始めた。いよいよもって危険な状態である。これはいかん…と使命感に燃えたのは谷村だ。
エリートたるもの、年下がこんなに悩んで苦しんでいると言うのに黙って見過ごすことなどできない。なんとかしてやらねば…
谷村は倉本の手を取り、いつものぼそぼそ声をほんの少し張らせてこう言った。もちろん変なおじさん声ではない。
「倉本、こういう時はこうやって立ち直るんだ!」
そして谷村は親指と人差し指の魔法を倉本に伝授しようとした。
一生懸命な思いが通じたのか倉本はぴたりと泣きやみ、谷村の指を凝視した。
よし、いいぞ。谷村龍一。エリートで美形であること以外何の取り柄もない俺だがこうして誰かを慰めることができるんだ。自分に自信を持て谷村龍一。もうお前は不憫2なんかじゃない、ドMでもない…
谷村が自己満足の悦に浸りかけた時、倉本の表情が変わった。
「ふざけてんじゃねええええええ!!!俺は大真面目に落ち込んでんだこんな時変な冗談ぬかすなあああああああああああああ!!!!!!!」
激昂した倉本は谷村の指に噛みついた。谷村は絶叫する。そればかりか「アホは黙ってろ」と栗田からボディタッチ、「谷村無神経すぎ、あとでおしおきぃ」と中村に絶対零度の視線をくらった。
俺はただ、倉本を慰めようとしただけなのに…。涙目になりながら谷村は血の滴る指でひたすらフィンガーセラピーでアイデンティティを保とうと努めた。
「こりゃあ手のつけようがないな…」
岸くんの呟きに、皆頷く。なんとかしてやれるのは、やはり…
そう思いかけた時、誰かが駆けてくる音がした。
神7達が振り向くとそこには井上がいた。
「くらもっちゃん、あのさ…」
迎えた9月23日、レッスンを終えて井上と倉本はとある場所に向かっていた。
「みずき、ほんとにいいのかよ。俺自分の分くらい自分で払うぞ」
「いいって。親にももうOKもらってるし誕生日プレゼントということで」
着いたところは井上の地元のファミレスのバイキング。店の前には井上の親と弟が待っていた。倉本は何度か会ったことはあるが大抵レッスンの終わりとかコンサート会場の送り迎えとかであまりまともに話したことはない。
「何遠慮してんの。くらもっちゃんらしくないよ。いつものふてぶてしい態度でいいんだよ。あ、でも弟人見知りするからお手柔らかにね」
井上の言ったとおり、井上の弟は母親の陰から倉本を覗き見ていた。家でも神7でも末っ子の倉本は年下との接し方がいまいち分からず、ひきつった笑顔しかできなかった。井上の弟は母親の後ろに隠れた。
井上は、倉本を家族での外食に一緒においでと誘ってくれたのである。
それがどっちもが我慢せず、且つ納得できる唯一の方法だと皆は感心していた。そして、倉本もそれが嬉しかった。「二人きり」ではないが、こうして一緒に過ごすことができて祝ってもらえる。それは何よりのプレゼントだった。
「いただきまーす!!」
食事が始まると、倉本はいつもの倉本になった。あまりの食べっぷりに井上の家族は目を丸くし、弟は軽く怯えていた。だが井上も倉本ほどではないにしろ食べ盛りを遺憾なく発揮した。
店側が「早く帰ってくれ…」という祈りを捧げ始めた頃、ようやく満腹になった倉本は井上家にお礼を言って駅へと向かう。井上が付いてきてくれたが、彼は駅の手前で突然足を止めた。
「どうしたんだよみずき?」
井上は腕を組んで何かを考えている。そしてややあってこう言った。
「くらもっちゃん、もうちょっと時間ある?」
「え?」
腕時計を見ると9時前だった。ここから家へ帰りつくと10時頃になる。家には承諾をもらってはいるが…
「ちょっとさ、行きたいとこあって」
井上に導かれるまま、倉本は付いて行った。当然ながら陽はとっぷりと暮れており、街灯を離れれば真っ暗だ。井上は小高い丘のある公園を進む。そしてその中の暗がりの林へと足を入れた。
「おい、みずき、こんな暗闇危ねえだろ。一体なん…わっ」
暗がりでよく見えず、何かにつまずいてこけかけた。すると井上が手を持ってくれた。
「危ないから俺のすぐ後付いてきて。あ、俺は大丈夫。ここは目瞑ってても進めるから」
井上の手の感触は温かかった。倉本は自分の心臓が早足になっていることに気付く。それは暗闇で足元がおぼつかない怖さとは全く違った原因でだ。
「みずき、何があるんだよこんなとこ…」
倉本がそう言いかけると突然視界が開けた。茂みから抜けて、大きな木の根元に辿り着いた。
茂みを歩いているときは真っ暗だったがそこは適度な灯りが届いていた。近くのゴルフ練習場の灯りが照らしてくれている。ここの営業時間が終わると真っ暗になる、と井上は説明した後でよいしょと木の枝に足をかけた。
「くらもっちゃん俺よりでかいから楽勝でしょ?」
そうは言われたものの、木登りなんてしなくなって久しい倉本にとってそれはなかなかハードルが高かった。井上はいとも簡単にするすると登って行くが倉本が息を乱しながらやっとのことで登りきるとそれは目に飛び込んできた。
「うわ…」
小高い丘の、そのまた傾斜を登った林の高い木から見下ろす街の夜景はまるでコンサート会場のペンライトの群のように煌めいていた。海が近いこともあり、光の群はそこに吸い込まれていくかのようだ。
「綺麗でしょ。明るかったらさ、海がよく見えるんだよ。それも凄く綺麗なんだよ」
井上は大きな目で夜景を見ながら言った。その瞳に無数の光が散りばめられている。倉本は思わずみとれた。
「これ、俺に見せたかったのか?」
倉本は訊いた。井上はうーんと首を捻る。
「そのつもりはなかったんだけど、なんか急に思い出して」
そう答えた後で、井上はこう続けた。
「木登り好きでさ、この下の公園の木とか学校の木とかよく登って遊んでたんだけど、ここが一番見晴らし良くって好きなんだ。
幼稚園の頃に発見して、小学3年の時にやっとここまで登れたの。誰にも知られてないし、自分だけの秘密基地っぽくてお気に入りでさ。だから誰にも教えたくなかったんだけど…」
井上は笑った。そして倉本の方を見る。
「なんでか分かんないけど、くらもっちゃんにならまあ教えてもいいかなって」
嬉しい、の更に上を表現する言葉があれば、今すぐ教えてほしいと倉本は思った。
「自分にだけ」という最上級の「特別」が倉本にとって涙が出るくらいに心に響いていた。そして実際泣いてしまっていることに気付く。
「あーまた泣いてる。ほんとくらもっちゃん泣き虫だよね」
「うるせーよ。お前が泣かしたんだろ、責任とれよ!」
腕で涙を拭いながら精いっぱいの強がりを倉本は言った。素直に「嬉しい」と言えばいいのに何故かそれは喉にひっかかって出てこない。
「責任って…。どうやってとればいいの」
井上は苦笑いをする。倉本はだから言った。いつか雑誌の取材でも公言したことを…
「責任とって、俺のお嫁さんになれ!いいな!」
「えー!!」
井上は木から落ちそうになる。しかし倉本は真剣だった。幼い彼にはまだ本気でそうなれるという信心が残っているのである。そしてそれは、確かに不可能なことではないのだ。
だがその一方でまた幼い井上にとってその深い意味が完全には伝わらないのである。
「まーたそういうこと言う。女装が似合いそうJrに選ばれたのはれいあ君でしょ。俺は兄弟部門で十分だって」
「ちげーよ。そういう意味じゃねーよ。だいたいお前大人の階段強制登城させられてんのになんで分かんねーんだよ」
「俺は登りたくて登ってるわけじゃないし!登るのは木だけで十分なんだからね!もう神宮寺に感化されて変な小瓶持ってくるとかやめてよね絶対!」
「するかよ!だから俺のお嫁さんになれ!」
「何その昭和初期のフォークソングタイトルみたいなセリフ。あ、やば!そろそろゴルフ場の灯り消える時間だ。急いで降りないと落下するよくらもっちゃん!」
あたふたと、二人は木から降りる。倉本は降りそこなって打撲と擦り傷を作ったがそれでも不思議な喜びに包まれていた。
駅まで来ると、井上は
「んじゃまた次のレッスンね、くらもっちゃん」
と笑って手を振った。いつもレッスンの帰りに見せる笑顔と同じだ。
いつもと同じ…
何故か、嬉しいはずの感情がひどくもつれた。こんがらがって、絡み合って、わけが分からない。
だけど、自分の手が歩き去ろうとする井上の手を掴んでいたことに倉本は気付いた。
「くらもっちゃん?どしたの?」
井上はきょとん、としている。大きな瞳が瞬きを繰り返した。
倉本は言葉に詰まった。感情ははっきりしてるのに、今なんて言ったらこの想いが100%井上に伝わるかが出てこない。それがひどくもどかしくて、また泣きそうになる。
倉本が、自分の中の葛藤と闘っているとしかし井上は浅く溜息をついてやれやれといった顔をした。
「そんな顔しなくてもさ、レッスンまた明後日あるじゃん。次は鬼ヤクザに叱られないようにしないと。一か月ちょいだけど今は俺よりいっこ年上なんだからしっかりしなよ、くらもっちゃん!」
井上には、倉本が黙ってしまっている本当の理由は伝わっていないだろう。倉本もそれは分かっていた。
それでいいような気がした。
何故かは分からない。倉本の中に確かなものといえば井上のことが誰よりも好きだということただ一つだ。相手にも同じものを求めるのは当然といえば当然で、倉本はそれを信じて疑わなかった。
それを再確認すると、こみあげていたもどかしさはスーっと消えてゆく。
「おいみずき、来月の31日はちゃんとあけとけよ」
「来月の31日…?あ、俺の誕生日じゃん」
井上はきょとん、とする。
「ダブルブッキングはもうごめんだからな!俺が一番先に予約したんだからもうなんも予定入れんじゃねえぞ。家族と晩ご飯もダメだぞ。別の日にしとけよ」
「えー…そんなの先すぎてまだ分かんないよ」
「分かんないじゃねえ、とにかくちゃんと俺は予約したからな!」
回りの通行人が一瞥していくくらいの大声で倉本は言った。大きな声で宣言した方が実現できるという単純な発想だった。
そして倉本は叫んだ。
「俺がその日をお前の人生で最高の誕生日にしてやるからな!」
そう、今日が倉本の12年の人生の中で最高の誕生日だったように。
倉本は井上の返事を聞かず、そのまま改札を抜けて電車に飛び乗った。まだ心臓は爆音を奏でていた。
暴れる鼓動を抑えながら倉本は未来を、夢を思い描く。
いつか井上と気持ちが通じ合って、お嫁さんにもらうことができたら、2012年9月23日と2012年10月31日はそれぞれの記念日になる。そして二人で語り合うんだ。
あの時はお互いまだ子どもだったんだね、と。
大人になった自分と井上はきっとそれを笑いながら話しているだろう。その時、手を繋いで…あるいは肩を抱いて…もしかしたら自分たちのコンサート会場でそれを話しているかもしれない。
数えきれないくらいの煌めく希望が、倉本の中から泉のように湧き出でていた。文字通り夢心地で家に帰りつくと、あ、と倉本は気付いて舌打ちをした。
「しまった…記念写真撮るの忘れてた…」
今からでも戻って撮りたかったが親に「もう遅いからだめだ」と反対されてしまい、倉本はぶーたれた。
でもまあいいさ、と思い直す。
(13歳の誕生日に撮ればいいんだ。俺とみずきは長生きするだろうから誕生日だけでも100枚くらい撮れるだろうしな…。一枚撮り損ねたからってどうってこたあねー)
倉本は、愛しい井上の顔を思い浮かべながら眠りにつく。そうして二人で結婚式を挙げる夢を見た。白樺林の中に建つステンドグラスの綺麗な教会で、神7メンバーからの祝福を受けて…
もちろん、ウェデイングドレスを着ていたのは…
END
おにくおめでとう。作者さん素敵なお話ありがとう
作者さん乙です!そしてくらもっさんおめでとう
次は岸くんの誕生日か〜頑張れ純情片思い連盟w
作者さん乙!
くらもっちゃんおめでとう!
普段ふてぶてしいのにみずきのことになるとピュアで健気なくらもっちゃんが可愛すぎる…!
みずきとずっと一緒にいられるといいね!
ほのぼの話をありがとう!
谷茶浜はこんなときにも安定の不憫www
168 :
俺だけの嶺亜:2012/09/23(日) 11:45:00.34 0
思ったんたけどさ、岸颯ってさ
ふまけんみたいに兄組であとから新人入れて
デビューしそうじゃない?
岸颯れいあ岩橋神宮寺が固まってないと落ち着かない
いい話だった
二人とも結ばれればいいな
作者さんありがとう
>>168 そんな予感はする
「颯くんのダンスすごく上手くて…かっこよくて…憧れの先輩です(はぁと)」みたいな可愛い後輩と組まされドキマギする岸颯もみてみたい…
かと思えば今日関東で放送したヤンヤンみたら脇山あたりと一緒だったからこのラインも試してるのか?
だがしかし、やっぱり神7揃ってないと落ち着かないいいいい!
こんだけファンの間で定着してるんだから安定させようぜ事務所さんよおおおあああ
172 :
ユーは名無しネ:2012/09/23(日) 13:33:28.55 0
色んな経験させて最終的には神7でデビュー
くらもっちゃんおめ!
これからも変態なお兄ちゃん達に囲まれながら
すくすく育ってねくらもっちゃんんんんん
ジャニーズJr.の真実(仮) 9月30日放送
◆仲間!?それともライバル!?
SUMMARYの名物となりつつあるのが100人のジュニアたちが
一人ずつ部屋に入り踊る”マンション”と呼ばれる巨大セット
マンションのなかでも最も名誉があるとされるセンターの位置。
いったい、今年は誰がセンターを獲得するのか!?
そこには現代の学校教育とは正反対にある激しい競争社会がありました。
神7の熾烈なセンター争いが…
で、れあたん神宮寺岩橋阿部がセンターか
くらっもっちゃんオメ!&作者さん乙
れあたんのかおる呼びにグッときた
今週は誕生日2人いるのか
HEY×3バック13人いるって噂になってるけど、神7(岩橋込み)で残りの四人誰だ?
HEY×3バック13人いるって噂になってるけど、神7(岩橋込み)で残りの四人誰だ?
っていうか、滝翼にもバックついてたな
あと、岩橋のネクタイが水玉ついてた気がするんだけどFNSのときは岸颯だけだったよね?
>>180 +松倉・松田・村木・木高だった(らしい)ね
村木木高誰だ
本高だぞ!顔は知らんが
栗ちゃんってダンスあんなに下手だったっけ……?
岩橋たにーのほうが上手いくらいだったぞ、どうした
栗田は手抜きする時あるからな
昨日でかなり好感度上がったのにもったいない
村木はJrランド出てる本高はヤンヤンのジャンケン出たしJrマンションも良い位置だし期待されてる新人だね
二人とも中2だったかな
村木ピンクチームの演技の時笑ってたのが
馬鹿にしていた様にみえたので感じ悪い
村木くんから昭和を感じる
梶山あれで13かw
NMB48「神宮寺勇太」
あれが神宮寺勇太だ
君はそっと呟いて
つまり神宮寺勇太だ
そして僕はわかったよ
今の君が綺麗なのは
彼のおかげ
(’ー‘・)ぎじぐん…
僕のシェルター
目を覚ますと、異様な感覚があった。
またか…と朝っぱらから虚脱感に襲われる。
このところ、毎朝、こうだ。
ベッドを出て家族に見つからないように羽生田は忍び足でバスルームへ向かう。
夢○自体は、べつにいい。
己の身体が男子として正常な成長を遂げている証拠でもあるし。
赤飯と尾頭付きの鯛で言祝いで下さいお母様といった感じだ。もちろんそんな要求はしないけれど。
羽生田はさきほどの経緯を反芻した。
夢の中の相手はいつも同じような気がするが、なんだか全体的に薄ぼんやりと影に覆われていて
顔の辺りが黒いクレヨンで塗りつぶされたみたいになっている。ヤッといて何だけど性別すらはっきりしない。
せめてアイドルとか女優とかわかりやすければまだ救われるのに、相手がのっぺらぼうというのは不気味きわまりない。
これでは、マネキン相手にしか欲情しない特殊性癖の持ち主みたいに
影人間しか相手にできない、マトモな顔して実は誰よりもド変態野郎ということになってしまう。
最近、目の前のことに今ひとつ集中できない理由がこれじゃどうしようもない…
朝イチでHPを1/2まで削られた羽生田だったが、真面目に学校へ行き、その後はレッスンに向かった。
休憩の時、考え事をしながら廊下を歩いていると曲がり角で誰かにぶち当たった。
「何ボーッとしてんだよ」落としたスマホを拾いながら神宮寺がつぶやく。
「してないさ。たまたま前方不注意だっただけで」
「それがボーッとしてるってことじゃん。ここんとこ何かヘンじゃね?妙にギラついたオーラ出てんぞ」
オーラがどうとかお前は美輪さんですか、と言いたいが、たまにこういう鋭い時があるのが嫌だ。
ただのエロエンペラー及びチャラ宮寺でいいのに…
神宮寺に本当のことを打ち明けてみようか。そしたらどんな反応が返ってくるだろうか。
きっと強制的に○精談義に参加させられるに違いないが。
彼のスマホにはいったい何が映し出されているんだろう。謎のあえぎ声は聞こえるが、画面が黒一色だったら面白い。
しかし、のぞき込むと、ちゃんと顔のある裸体が映っていたので羽生田はガッカリする。
「なーなー、この3Pプレイ、どっちの女の子がいい?俺はこっちのキンパ」
「…いや、べつに、どっちでも…」
何の感慨もなく画面を眺める羽生田に、神宮寺は興味を失ったようで、スマホを見ながらさっさと歩き出した。
レッスン場に戻ると、いきなり中村に声をかけられた。
「ねぇ羽生田ぁ、ここの振りなんだけどぉ、こうこうこういう感じでいいんだよねぇ?」
そう言われても、「おそらく」としか答えられない。なぜならレッスンの前半、ほとんど上の空だったから。
でも中村につき合って振りを合わせていると、だんだん感覚が戻ってきた。
「羽生田、ここの所上手ぅ」中村が肩に手を置いてほめてくる。そして頬を軽くつつかれた。
「でもぉ、何か肌荒れしてるみたい。どうかしたのぉ?」
「肌荒れ…?」そういう影響もあるのか、と羽生田は思った。さすが神7の美白大臣…
中村を間近で見ていると、そのもちもちした白い頬に思わず触れたくなったりする羽生田だった。
けれどもレッスン場のどこからか尋常ではない殺気が蠢いたのを察知し、しぶしぶ中村から離れる。
夢の中の相手は中村だったりするんじゃないか、とも思うけれど、確信は持てない。
どうでもいいが、さっきから霧雨のような飛沫が飛んできて目に入る。
横を見ると、熱心にダンシン中の岸くんがいた。
どちらかといえば潔癖症な羽生田は、人間スプリンクラーと化した岸くんから距離をとった。
どういうポリシーなのか、岸くんは時々でかい手や腕で汗をぬぐうだけである。
タオルで拭いている時間も惜しいほど集中しているのかもしれないし、あまり文句を言うのも可哀想だが。
「岸くん、ここの振りってこうこうこういう感じでいいのかな?それとも…」
無謀にも高橋は岸くんに近づいて話しかけている。
「あーここはこうしたほうがいいんじゃない?このタイミングで…」
岸くんが動くたび、周囲には汗がサークル状に飛散しているが、それを浴びても高橋は平然としている。
いや、むしろ喜んでいるのかもしれない。
まさか、夢の中のアレが岸くんなんてことは…羽生田は最悪の想像をしてしまい、すぐさま打ち消す。
しかし颯は凄いな、と羽生田は感心というかため息をつきたくなる。
「くぉおおおおらららららああぁ!!!はにゅーどわあぁぁああ!!!!!ちゃんと周り見てみろやあああああ!!!!!!
てめーだけカウントズレてんだよゴルアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
数日後、鬼ヤクザから窓ガラスが割れそうな最大音量でどやされた。
そろそろ洒落にならなくなってきた…
近頃、夢の中の影人間のあいつは、2回以上しないと寝かせてあげない、などと図に乗りだし
羽生田は朝起きた時点ですでにHPがマイナス状態だった。
「実は○精のしすぎで、疲れてるんです…」
これを公言したあかつきには、夢○くんとかいうあだ名で呼ばれるのだろう。そのまんまじゃないか。
休憩中もHP回復のため、横になってひたすらじっとしていた。
何をやってるんだ僕は……とさすがに自己嫌悪に陥っていたが、首に冷たい何かが当たり、びっくりして目を開けると
高橋もまたびっくりした表情でこっちを見ている。
「うわ……なんか目の下のクマ、歌舞伎の人みたいだよ」
「颯だってクマすごいじゃないか」
「俺のは自分で作ってるんだもん。はにうだのは自然発生でしょ」
ほい、とゼリー状のドリンクを手渡される。食欲はほとんどなかったが、これはレモン味で飲みやすい。
「どっか身体の調子悪いの?」と高橋が聞いてくる。
「どこも悪くないよ。いたって健康体だ」と羽生田は答えた。強いて言えば脳内が悪くなっているのだろうが…
「えー…でも、すごいやつれて見えるんだけど」
高橋の疑わしそうな視線が、突き刺さる。
いっそ眠らなければいいことに遅ればせながら気づき、夜明けまで起きているようにした。
それでも、結局1、2時間は寝てしまうのだけど。
そんな短時間では影人間のあいつが登場するヒマもない。
勝った、と羽生田は思ったが、睡眠時間が短いというのもかなりキツいものがある。
この間になぜか神宮寺からは高麗人参エキス、中村からはすっぽんエキス、収録で一緒になった松島からはうなぎパイを頂戴した。
これで精力つけて夢の中のあいつと戦えというのか?羽生田は深読みしかけて思わず苦笑した。
それだけ疲労困憊して見えるということだろう…
「はにうだー、コンビニ寄ってこ」
高橋はいつもとそんなに変わらなかった。
そういえばコンビニの新商品チェックも最近怠っている。結構体力を使うことをしていたものだと思う。
今は、棚の前にずっと立っていたらぶっ倒れてしまいかねない。
聞いたことのない鼻歌を歌いながら高橋は商品を選んでいる。羽生田は「外のベンチで待ってるから」と言い残して店を出た。
昨夜、うっかり5時間ほど睡眠を取ってしまい、久しぶりに影人間が現れた。
「…まだまだ、全っ然、足りないよ」
全っ然、と強調されて、さすがに羽生田は腹が立った。影人間のくせに、なんだその言い草は。欲深い女(男)め。
「ねー……まだ、本気見せてないよね…?」
そう言って首に手を回して抱きついてくる。耳をくすぐる熱い吐息。いや、あれが本気のMAXなんですけど…
「見せてよ。はにうだの本気ってどんなの?…見たいなあ……」
「お前からはにうだ呼びされる筋合いなどございません」
羽生田は影人間をこれ以上増長させないように、相変わらず黒いクレヨンで塗りつぶされたような顔の下半分辺りに唇を寄せてみた。
顔を傾けて、口がありそうな位置を推定して吸ってみる。影人間は黙った。
舌でこじ開けてやると相手にもちゃんと舌がある。なんといういい加減な安心設計、さすがは夢の中クオリティ。
「…なんだ、まだ全然イケるね!はい、じゃあもう1回ー」
もうこいつとつき合ってしまおうかな…と羽生田は思った。
ちょっと何言ってるのかわからないところや甘え上手なところは高橋と中村を足して2で割ったみたいで結構面白そうじゃないか。
夢の中でしか逢えないし、顔は真っ黒、身体は影状、性別すら不明だけど、性格は悪くなさそうだし。
かなりのレア度だ。レアすぎて泣けてくる。
…いやいやいやちょっと待て羽生田拳武。一時の快楽に負けて何か大事なことを忘れていないか?
高橋が店から出て来た。
コンビニ袋から棒アイスを2本取り出して1本くれる。羽生田は礼を言って受け取った。
「べつにいいって。ガリガリ君だし」
セレブなのに最近人から施しを受けてばかりいることを反省する羽生田だった。
ふたりはしばらく無言でアイスをかじり続けることに専念した。
アイスを食べ終えた頃、羽生田は意を決してベンチから立ち上がり、高橋に告げた。
「…颯。頼みがあるんだが……」
「んー、何?」
「僕を抱きしめてくれ」
高橋はいきなり立ち上がってご丁寧に振り付きで歌い出す。
「♪おれをだきしめて〜くれーそーしたらきっと〜なんどで〜もたーちあがれるさーあ〜いどわなみすゆーらぶいずざしぇるたー…」
「違う。…歌じゃなくて……本当に頼んでるんだ」
「ねぇ…なんかさぁ、出家でもすんの?あむあむ変だよ?」
「君に言われたくない…」
そりゃそうさ。いつものように理屈で割り切れない窮地に立たされているんだから、変にもなるさ。
高橋は羽生田をのぞき込むように見ていたが、軽い調子で言った。「抱きしめりゃいいんだね。はいはい」
これがもし岸くんから言われたとしたら
「ええぇっ抱きしめるって…えーそんなちょ待って待ってどっちの腕から出せばいいっぽいのうわ大変だこりゃどうしようううう」
と大混乱に陥ったりするんだろう。
高橋は羽生田に近づくと、無造作に背中に腕を回してきた。
いきなり腕に力を込められて、強く引き寄せられる。体と体が隙間なく密着し、心臓のリズムがあり得ないほど狂い出す。
「これでいい?」
優しく響く高橋の声。
羽生田は驚いていた。「あぁ。……」としか言えない自分の不甲斐ない声に。
高橋の腰の辺りに自然と手を回している自分にも。
この感じは何なんだろう…
凍結されていた身体が、太陽の熱い光で温められて徐々に溶かされていくような…
溶かされすぎて色々と何かが溢れだしてきそうになって、困る。
この温かさ、この感触を忘れないでおこう、と思う。
それはもちろん、夢の中の影人間と比較するためだ、と己に言い聞かせながら。
羽生田は考え方を改めることにした。
これはいわば、毎晩タダでAVを観てるようなものだ。神宮寺に教えてやったらハンカチを噛んでうらやましがるに違いない。
そう考えれば影人間のあいつはAV女優とか男優みたいなもので、そんな無理に正体を探る必要もない気がする。
自分なりに納得がいくと、血流が全身に流れ出してようやく普段通りに戻ることができた。
それからは夢○がパッタリと途絶え、何だか物足りなさすら感じる羽生田だった。
結局、あれは何だったんだ……
でも、高橋との熱い抱擁で自分の何かが溶け出したのだとしたら、やはりここは感謝せねばなるまい。
羽生田は学校帰りにデパ地下のグレード高めなパン屋や洋菓子店などで色々と買い漁った。
レッスン終了後、高橋にプレゼントフォーユーする。さすがに高橋も驚いたようで目を丸くしていた。
「わー何これ!!?すごいこんなの初めて見る…あっメロンパンもある!どれもおいしそー!!とりあえず賞味期限の早そうなやつから…
…あ、岸くんにもあげていい?」
あげなくていい、と羽生田は思ったけれど、飢え死に寸前の顔で椅子の脇にへたり込みながら
パンとスイーツの山をもの欲しげに眺めている岸くんを見ると何も言えなくなった。
「それは全部颯のだから。…岸くん、そんな鬼気迫る目で見なくても、もちろん皆の分も用意しているに決まっている」
実は久しぶりにデパ地下めぐりをしているうちに自分でもよくわからないアゲアゲな状態になってしまい、つい買いすぎてしまったのだ。
鬼ヤクザの地獄の猛特訓によりHPを帰宅不可能な状態にまで消費した飢えた狼たちは
羽生田セレクトのパンやスイーツの山にわらわらと群がり、あっという間に食い尽くしていく。
こうして再び日常に復帰して、影人間のことなどすっかり忘れた………はずなのだが。
けれども時々、何かの拍子にふと、羽生田の耳の奥からあのいまいましい声が甦ってくる。
「ねー……まだ、本気見せてないよね…?」
終わり
あむふううううううううううううううううううううう
あむあむ本気だせ! わかってるよね?
すばらしい!!!
作者さん乙乙!
相変わらずクオリティたけえええええ
作者さん乙!
あむあむキター!!
もう…そこまでしてなぜ正体わからないんだ…!
秀才のくせに自分の感情に鈍感なあむあむ可愛いよあむあむ
いい作品をありがとう
201 :
ユーは名無しネ:2012/09/26(水) 01:00:19.16 0
ぬけてるだけなのかわざと気づかないふりしてるのか
気付いたらまとめサイト更新してくれてる〜。ありがとう
まとめサイト見てるよ!
助かる
204 :
ユーは名無しネ:2012/09/28(金) 01:05:32.64 0
れいあはここのキャラと実際のキャラのギャップがどんどん大きくなってくるな
そうでもない
しっかり者!
あと、9時間…デート実現するかな?ドキドキ
全然おっとりしてないよね別キャラすぎる
ここのれあたんも語尾伸ばし口調なだけで必ずしもおっとりキャラではない気が
てか週末と来週は大変だー
同じ日に生まれた偶然に感謝しながら、愛すべき不憫へと捧ぐ
強い日射しを和らげる涼風が吹き抜ける。虫の音の協奏曲が耳に心地いいこの季節は岸くんが大好きな季節だ。
夏が手を振りながら秋を招き入れるその移り変わりに自分の心もなんとなく弾む。日に焼けた腕をさすりながら、軽い足取りで今日も岸くんはレッスンスタジオへと向かった。
「ぅおっはよー!」
思い切り元気よくレッスンスタジオの中へと入って行くと神7メンバー達が談笑していた。いつもの風景だ。
「うらあ!レッスン始めるぞ!てめえら気合い入れろよ!」
鬼ヤクザ振付師とももう三年半の付き合いだ。Jrになって三年半。幾つもの死線を越える中でかけがえのない仲間ができたし自分に自信もついてきた。Jrの活動はやりがいがあるし励みになる。毎日が充実していて楽しい。
「岸くんこれ新作のSMモノ!すっげーだろほらほら!」神宮寺とはWゆうたとして日々コンビ愛が増している。
「セブ○イレブンの新作まんだ。岸くんも食べるか?」はにうだはなんだかんだ気前がいいし物真似の精度が日々磨かれていて飽きさせない。
「おい岸ここの振り付けどうやるんだっけ」倉本は生意気なところもあるがこうして頼ってくることもあるし可愛い最年少メンバーだ。
「あ、岸ぃ食べカスついてる赤ちゃんみたいぃ。もうしょうがないなぁ」中村はとにかく可愛い。口には出せないがたまにオカズにさせてもらっちゃっている。
「れいあダメ!岸食べカスくらい自分で拭け!」栗田はアホだが帰る方向が一緒だしまあ面白いし憎めない奴だ。
「変なお〜じさん…」谷林はタイミングが悪い時もあるしイマイチ存在感がつかめないが不憫を二分してくれる貴重な仲間だ。
そして…
「岸くんこの時の立ち位置なんだけど…」
高橋とはシンメを組んでもう一年になる。3つも年下だがそんなことを微塵も感じさせないくらいダンスに関してはストイックで見習うべき点が多い。信頼関係も築けてきてるしたまに見せる奇妙奇天烈な言動が中学生らしくて面白い。砂糖おにぎりは遠慮願いたいけど…
このメンバーでデビューして、更なる飛躍ができたら…岸くんはいつの頃からそんな夢を思い描いていた。
「おんどりゃあ!気合い入れんかい!東京湾の魚の餌として売られたいか貴様らぁ!!」
しかし夢に浸るより今は現実だ。目の前の試練を一つ一つこなしていかなくてはならない。
岸くんは気を引き締めレッスンに挑んだ。
9月28日、高橋は迷っていた。
「誘う」「見送る」この二択をさっきから花びら占いで決めようとしたのだが気が付けば周りは花びらだらけになっていて通行人が不審げに一瞥して通り過ぎて行く。早く決めないと遅刻してしまう。
「誘うが20…見送るが20…」
すでに40本もの花を無駄にしてしまっている。植物愛護団体から説教を喰らいそうだ。
「よし…最後の一本。この一本で決める!」
自分にそう言い聞かせ、震える手で高橋は花びらに指を当てた。
「誘う…見送る…誘う…見送る…誘う…見送る…」
白い花びらが高橋の呟きと共に地面に散って行く。そして…
「誘う…」
41回目は「誘う」になった。やはりこれは神様が背中を押している…そういうことかもしれない。高橋はほんの少しだけ勇気が湧いてきた。
今から約5カ月前…自身の誕生日にとりつけた岸くんと二人きりで出かけるという約束を、高橋はまだ果たしていなかった。
一度日程が決まって、行くところもだいたい決まったのだがその日に急遽リハーサルが入り、流れてしまった。それからはなかなか都合が合わず夏も忙しくてそのままになっている。そうこうしているうちに岸くんの誕生日が近付いてきた。
9月29日…もう明日に迫っている…高橋は密かに自宅の部屋のカレンダーのその日をマーキングしていた。
その日は土曜日でレッスンが午前中にある。だが午後からはフリーだからもしかしたらその日に二人で過ごせるかもしれない。そう考えるとテンションが上がった。誕生日プレゼントも用意してある。そこで渡せて喜んでくれたら最高だ。
「よし!」
自分の顔をパン、と両手で叩き喝を入れる。勇気を出してもう一度誘おう。でないときっと後悔する。
高橋は確かな想いとわずかな勇気を刻み、レッスンに挑んだ。
「あーノド渇いた〜」
休憩中、岸くんは飲み物を買いに行くと言ってロビーへと向かった。
チャンスだ。高橋もその後を追った。
「あ、岸くん…」
ポカリスエットを自販機の取り出し口から出す岸くんに高橋は声をかけた。もうすでに心臓の鼓動はえらいことになっている。顔が真っ赤になってやしないか、声が震えていないか、白目を剥いていないか心配になりながら高橋は言った。
「あの…明日とかレッスンの後どっかいかない?」
「え?」
高橋は緊張のあまり小声になっていた。ロビーがうるさかったこともあり岸くんの耳には正確に届いていない。岸くんは目を見開きながらポカリスエットを口にした。高橋はもう一度勇気を振り絞る。
「あの…明日…遊びに行くのどうかなって…」
「ごめん。明日さ、俺誕生日なんだよね。家族で食べに行くことになってて…ちょっと早めに帰ってこいって言われててさ」
申し訳なさそうに両手を合わせながら岸くんはそう答えた。いきなり出鼻をくじかれたがこれは想定の範囲内だ。誕生日なんてこれぐらいの年頃は家族で祝うのが定石だ。だから高橋は落胆を抑えてこう続けた。
「あ、じゃあ日曜日は…?この日も収録があるだけだし…」
「うん。いいよー」
二つ返事が返ってきて高橋は天にも昇る心地だった。苦節5ヶ月。ようやく岸くんと二人きりで出かけることができる。今度は収録もレッスンも急に入ったりしないよう今日から100ヘッドスピン参りで願をかけなくては…
高橋が有頂天に達したその時、タイミングの悪魔が通り過ぎた。
「あれ、何なに?何の話?」
神宮寺と羽生田が通りかかる。そして次の瞬間、岸くんの口からこんな言葉が発せられた。
「あ、そだ。神宮寺とはにうだも日曜日暇でしょ?みんなで遊びに行こーよ」
「おーいーね。カラオケとかボーリングとかいいなー俺」
「まあ異議はないよ」
神宮寺と羽生田はあっさり快諾した。だが…
「どうした?高橋?」
羽生田の問いがやけに遠くに感じた。高橋は自分の体温が急激に下がっていくのを感じる。
ひらたく言えば、ショックだったのだ。
高橋は岸くんと「二人で」遊びたかった。この5ヶ月間ずっとそれを励みにしてきた。これが終わったら…この舞台を終えて時間ができたら…そう自分に言い聞かせてようやくその機会が巡ってきたのに…
それが他でもない岸くんの口からぶち壊しになってしまった。
「中村と栗田は暇かな?あいつら二人だけでどっか行くかなあ…倉本と谷縞も一応誘ってみる?神7みんなでまたはにうだ観光でどっか行くのも良くない?」
高橋の渦巻く思考の波に全く気付く様子もない岸くんのうきうきとしたテンションが高橋の精神に追い打ちをかけた。
岸くんは高橋の気持ちに気付いていない。だから悪気なんて全くない。ただ、遊ぶ約束をして、他の友達も誘った。なんでもないことだ。仕方がないといえば仕方がないことだし、これも予想されたうちの一つには違いない。
だけど…
「な、高橋はどう思う?」
邪気の無い瞳で問いかけられると、余計に神経は揺さぶられた。
「あれ?高橋?」
岸くんの声を背に、高橋はその場から走り去った。どうしていいのか分からず、ただショックだけを引き摺ってとにかくその場から離れた。そうせずにはいられなかったのだ。
「わっ」
曲がり角で誰かにぶつかった。相手は高橋の勢いに尻もちをついた。
「あ…ごめん、中村くん!」
中村だった。彼は「んーん」と首を振って立ち上がる。
「あれ、高橋ぃ…」
中村は顔を覗きこんできた。目をぱちくりとさせた後、こう訊ねてくる。
「なんかあったぁ?泣きそうな顔してるぅ」
「え…いや…なんにもないよ…」
高橋が内心の動揺を抑えてそう言ったが恋愛教祖はすぐに気付いたらしく、「岸となんかあったぁ?」と訊いてくる。ここで適当にごまかすことも嘘をつくことも今の高橋にはできなかった。自分の気持ちを中村に聞いてもらうと彼は頬を膨らませた。
「もぉまた岸そんな無神経なことしたのぉ。いくらなんでも鈍すぎだよぉ僕言ってくる!」
「あ、い、いいよそんな…またの機会にすればいいだけだし…」
「良くない。ちゃんとはっきり「二人で行きたい」って言わないとぉ岸絶対またおんなじことするよぉそれでいいの高橋はぁ」
「で、でも…」
高橋がためらっていると中村は走りだした。止めようにも高橋はまだ気持ちの整理がつかず体が動かなかった。
高橋がいきなり走って行ってしまったのを見て神宮寺と羽生田が「あちゃあ…」という表情になったのを岸くんは不思議に思いながら呟いた。
「どうしたんだろ高橋…?」
「岸くんまさかとは思うけどさあ…高橋に遊びに誘われてついでに俺ら誘っちゃった…とか?」神宮寺が苦笑した。
「え、そうだけど?」答えると、羽生田が顔に手を当てる。
「なんというタイミングの悪さ…さすが元祖不憫」
「え?何?なんか俺やらかした?」
岸くんはわけが分からない。だが二人は岸くんをちくちくと責め始めた。
「にっぶいなぁ。まあ高橋の奴もはっきり言わないからだけど…なーんかほんと間が悪いって言うか…高橋も御苦労さんって感じだなー」
「また僕らがフォローに走るのか?いい加減ちゃんと人の気持ちに敏感になった方がいいぞ岸くん。僕らも世話しきれない」
さんざんな言われようだ。なんでこんなに非難されるのか岸くんには分からない。ただみんなを遊びに誘っただけなのに…だんだん腹が立ってきた。
「ちょっと待てよ。俺何やらかしたの?そんな責められるようなこと?」
詰め寄ったが、神宮寺と羽生田はやれやれと溜息をつくだけで何も教えてくれない。
高橋が走って行った理由は自分にある。そう言われているのは分かる。だが自分の言動のどこにそんな理由があったのかが分からない。
高橋をもしかしたら傷つけてしまったのだろうか…そこに思い至るとどうしようもなく胸にざわめきが生じた。
「まーいい機会だから自分で考えなよ岸くん」神宮寺は冷たく言ってスマホをいじり始めた。
「その通りだな。脳トレの一つだと思って」羽生田もそう言って神宮寺と二人で去って行った。
「おい…」
なんだ。なんなんだ。一体俺が何をしたっていうんだ…?
岸くんに不安と焦りが生じた。それは静かな水面に一滴の疑問が大きく波紋を呼んだように…
自分の言動が高橋を傷つけた。そしてそれはこれが初めてではないかのような彼らの口ぶり。そこに大きな動揺がやってくる。
俺は、知らないうちに何度も高橋を傷つけていた…?
その可能性が浮上すると、岸くんは怖くなる。今すぐにでも高橋を追うべきかもしれない。岸くんがそこに到達して身を翻すと険しい表情の中村が立っていた。
「中村?」
「岸また高橋傷つけたでしょぉもういい加減にしなよぉ」
中村が何故知っているのか…その疑問が生じる前に彼は岸くんを責める。
「もうダメだよぉ無神経すぎぃ。高橋可哀想だよぉ。そんなだから…」
「じゃあ俺はどうすればいいんだよ!!」
岸くんは、自分に余裕がなくなっていくのを自覚していた。が、それが暴走という形に変化していくことまでは抑えることができなかった。完全に冷静さを欠いてしまい、それが中村の非難によって爆発してしまった。
そう、タイミングが悪かった。
バッドタイミングは谷村の専売特許だがこの時ばかりは中村がそれを引き当ててしまった。寝起きならともかく普段の岸くんなら中村に声を荒げるなんてことは絶対にあり得ないことである。
だがその絶対にあり得ないことを引き起こしたのはそれだけ岸くんが動揺していることの証とも言えた。
「俺が何したのかじゃあ言えよ!!んなこと言われたって分かんないもんは分かんないんだよ!!なんなんだよみんなして!!」
中村の胸倉を掴み、岸くんは叫んだ。
ありったけの声で不安と焦りとその他生じたマイナス感情を吐き出したが、次の瞬間猛烈な後悔が押し寄せた。
「あ…」
中村の目が、怯えを見せる。それを認識すると爆発的な感情は一気に吹き飛んだ。慌てて掴んだ手を離し、中村に謝ろうとした。
だがそれはできなかった。中村は一歩後ずさると身を翻してそのまま走り去る。岸くんは動けなかった。
「岸巻くん…」
ふいに、背後でぼそっとした声が響いた。振り向くとそこには谷村が立っていて、彼は眉間の皺をいつもより深くしていた。
「今の何…?なんで中村にあんな言い方したの?」
「…」
岸くんは答えることができない。とんでもないことをしてしまったという後悔と動揺とで、頭が混乱してしまって言葉が出てこなかった。谷村はそれを見て悲痛な表情になる。
「岸巻くんは、頼りないけど皆に優しいと思ってた。何があったのか知らないけどあんな言い方はないよ…」
岸くんは返す言葉がなく、その場に立ち尽くした。
休憩時間がそのまま終わり、レッスンの続きに入ったが高橋と中村の姿がない。鬼ヤクザは血管を浮きだたせていたがそのままレッスンは再開される。
その途中で彼ら二人は戻ってきたが明らかに様子がおかしいことは神7以外のJrメンバーにも明らかで、その理由を岸くんは痛いほどに感じていた。それがレッスンにも影響し始める。
「おいこら何やってんだ!!お前らたるんでたら東京湾に沈めんぞコラア!!」
神7はガタガタだった。フォーメーション移動も、振りの覚えも最悪である。どうやっても8人がうまく噛み合わずミスがミスを生み、とてもではないが満足なパフォーマンスができない。そこで久々に鬼ヤクザのマジギレが放たれる。
「もういい!!全員ひっこめ!!ここは神7じゃなくてロクネンジャーとチュウガクイチネンジャーでいく!!てめえらは舞台脇で見てろ!!」
神7は鬼ヤクザからそう告げられ、レッスン室で立ち尽くす。その間にもどんどんレッスンは進行していった。
「どーすんだよ!!マジでやべえって!出番なくされるとかマジ勘弁だよおいマジメにやろうぜ」
楽屋で神宮寺が喚く。その横で羽生田も頷いた。
「色々思うことはあってもそれを舞台に出しちゃダメだ。とにかく集中だ。もう一度鬼ヤクザに頼みに行こう」
羽生田の意見はもっともだった。だが…
「んな状態でやったってまた失敗して怒られるだけだろー。まず根本的な問題を解決してからじゃないとダメなんじゃね?」
鋭い意見を出したのは最年少の倉本だった。彼の建設的な意見はしかし栗田の怒号によって掻き消される。
「岸てめえがれいあ泣かしたんだろ!!てめえが死ねば解決だよ!俺ぜってー許さねえからな!!」
栗田は岸くんに掴みかかった。だが中村がそれを止めた。栗田の腕にしがみつきながら、必死に首を横に振っている。声は出ないようで、しゃくりあげている。
「泣かしたって…中村が余計なことするからだろ。高橋と岸くんの問題なんだから放っておけばいいのに」
神宮寺がそう言うと、栗田は今度は彼に掴みかかる。
「んだとコラ!れいあは高橋のためにやったんだぞ!んな言い方ねえだろ!」
「だからそれが余計なお世話だっつってんだよ!」
「おいやめろ二人とも!そんなことより今は…」
羽生田が栗田と神宮寺の仲裁に入ると、それまでうつむいていた高橋は楽屋を出て行ってしまった。それを谷村が追おうとしてドアの前に立ち尽くす。そして一言、ぼそっと呟いた。
「このままじゃダメだ…」
そう、このままではいけない。それは皆感じていた。
だが狂った歯車はそう簡単には元に戻らない。高橋はいなくなってしまったし神宮寺は栗田と険悪になり始め、羽生田も全てに呆れ顔だ。
谷村はどうしていいか分からずおろおろしているし倉本は年上メンバーのいざこざによるとばっちりを迷惑がっている。そして中村は岸くんと目を合わせようとせずずっと視線を落としていた。
楽屋は、お通夜のようになっていた。
岸くんは目の前が真っ暗になっていく。こんな事態を招いたのは自分だ。最年長である自分がチームを乱してしまっている。それが情けなくて悔しくて泣きそうになる。だけど泣いたってなんの解決にもならない。それは分かっていた。
なのに、解決の方法が分からない。何をどうすれば以前のように笑い合うことができるのか…
岸くんは目を閉じた。逃避ではなく、集中だ。ダンスの時と同じように、集中すればもしかしたら道標が見えるかもしれない。舞台の上でいつもそうしているように精神を研ぎ澄ませる。
脳裏の奥に何かがぼんやりと浮かんだ。それは…
岸くんは楽屋を出て走りだした。そしてその名を呼ぶ。呼ぶ、というより叫んでいた。そしてそれは階段の踊り場でうずくまっていた。
「高橋…」
ふいに名を呼ばれて、高橋は顔を上げた。そこには岸くんが立っていた。
だけど高橋は再び顔を伏せた。今、岸くんにどんな顔を向けていいのか分からない。
勝手に傷ついて、それをレッスンに影響させてしまってみんなの和を乱してしまっていることが恥ずかしかったし合わせる顔もなかった。こんな自分が嫌で仕方がないけどどうしても向き合うことができなかった。
「高橋、ごめん…」
岸くんは囁くような力のない声でそう呟いた。
「俺が高橋をそんなにしてしまってんだよね?情けないけど俺にはその理由が分かんなくて…。もしかしたらしょっちゅうそんな思いさせちゃってるのかもしれないと思って…」
岸くんの声は、少し震えていた。そこから彼の心理状態が否がおうにも高橋には伝わってくる。たまらず、高橋は「違う」と否定した。
「そんなことないよ。ちょっと他に考え事あって…急に出て行っちゃってごめん。なんでもないから…」
ありったけの力で嘘をついた。だが、今の岸くんにその嘘は通じなかった。
「その考え事って、俺のことだよね?」
高橋は大きく動揺した。他でもない岸くんに見抜かれてしまっている。それまで高橋を支配していた悲観や悲しみは動揺という形に塗りかえられた。
「みんなに責められた。そのせいで俺、中村に八つ当たりしちゃった。それで今神7がバラバラになってしまってる。全部俺のせいだ。俺が高橋を傷つけたから…そうなんだよね?」
岸くんの眼に不安の色が宿る。いつも眩しくて、キラキラしていた瞳に翳ができていた。一生懸命考えてくれているけど正解にたどりつけないもどかしさと悔しさ、そして…
「高橋の正直な気持ちを聞きたい」
強い意志が垣間見えた。
ごまかすことは不可能のように思えた。ここでごまかしたり嘘をつけばもう自分は神7にはいることはできない。そんな極論すら頭を掠めた。
正直な気持ち…
それはすぐに出た。何故か、躊躇いはない。
「僕は岸くんと二人で遊びたかったんだ…!」
ためらいなく口にしたはずなのに、どうしてなのか涙がこみ上げてくる。これをちゃんと言えていたら、皆を混乱させなくてすんだのに、どうしてこんなことにならないと言えないのだろう…
高橋が自分の弱さと臆病な性格に辟易していると、岸くんは言った。
「うん」
高橋は顔を上げた。
「分かった。二人で行こう。ごめんな、気付いてやれなくて」
岸くんの眼にも涙が浮かんでいるのを高橋は見た。いつもの涙目ではない、うっすらと感情の入った涙がそこにあった。
「てめーら気ぃ抜いてっと舞台にゃ出さねえからな!次あんなたるんだダンス見せてみろ!問答無用で下げるから覚悟しとけ!」
神7は鬼ヤクザに直訴してもう一度チャンスを与えてもらった。皆、まだ精神的に立ち直ったとは言えない状態ではあったがそれを必死に抑えてレッスンに集中する。ようやく許しをもらったところで今日のレッスンは終了になった。
岸くんは中村の姿を探した。高橋とのことは解決したが中村にはまだ声をかけられていない。あんな言い方をしてしまって泣かしてしまったのだから当然謝っておくべきだ。今更になってしまったがどうしてもそれはしておかなくてはいけない。
だが中村の姿はない。みんなそれぞれ帰路についているし、栗田の姿もなかったから出てしまったのかもしれない。何人かに所在を訊いてみたがみんな知らないようだった。
溜息をついて岸くんは帰路につく。メールか電話をしようか、とも思ったが出てくれる保証もないしやっぱりこれは面と向かってきちんと謝るべきだと判断した。
「おかえり」
家族がいつもと変わらぬ顔で出迎えてくれることに岸くんはほんの少しほっとした。
「何その顔。明日で17歳なんだからもうちょっとシャキっとしなさい」
「うん…」
明日が誕生日だなんて、すっかり忘れていた。17歳。どこかの国ではもう立派な成人として扱われる年齢だ。しっかりしなくては…。
部屋に入ると荷物を投げて、倒れこむように岸くんはベッドに横たわる。食事をしたり風呂に入ったり宿題をしたりとやらなくてはならないことは沢山あったがそのどれも今は放棄した。
色んなことを考えた。
レッスンのこと、学校のこと、家族のこと…そして、神7のこと…
そうしているうちにいつしかうとうとと眠りに堕ち始める
「…?」
ふいに、何かの音で意識が呼び戻される。岸くんはうっすら目を開けた。
メールの着信音だ。
だるい体を起こして携帯電話を手に取る。時計は0時を示していた。いつの間にかそんなに寝てしまっていたらしい。
メールは高橋からだった。岸くんはそれを読む。
『送信者:高橋颯 本文:誕生日おめでとう岸くん。今日は色々迷惑かけてごめんなさい。岸くんみたいに僕も強くなって、みんなに迷惑かけないよう成長していきます。明日のレッスンも全力でがんばる。岸くんみたいに踊れるようになるのが今の僕の目標です。
ずっと岸くんとシンメで踊っていたいです!それではまた明日』
「高橋…」
岸くんは嬉しかった。その喜びに浸ろうとすると次々にメールが入ってくる。
『送信者:神宮寺勇太 本文:おつかれー。今日はまあなんていうかちょっとKYでごめん!ユルシテ!てか俺らちょっと岸くんに対して無神経になってること多かったかなって反省した。まーでも明日には全部水に流してちょ。
あ、誕生日おめっとさん。18歳になったら俺のためにAV借りてね!これからもWゆうたは永遠だぜ!』
「神宮寺…」
岸くんがしんみりしているとまたメールが入る。
『送信者:羽生田挙武 本文:岸くん誕生日おめでとう。17歳といったらもう立派な大人だな。和を乱すようなきっかけを作ってしまったのは僕らだったと神宮寺や中村とも話し合って反省した。ごめん。僕らももうちょっと大人にならなくてはいけないな。これからもよろしく』
「はにうだ…」
岸くんは目が熱くなり始める。また着信が鳴った。
『送信者:倉本郁 本文:今日誕生日だって?さっきみずきと電話してて知った。何歳になったか知らないけど年上なんだからあんま俺達に迷惑かけんなよな。まーでも鬼ヤクザが許してくれて良かったよ。んじゃまた明日』
「倉本…」
倉本らしい内容にちょっぴりほっこりする。そして…
『送信者:栗田恵 本文:俺まだ怒ってるけど一応誕生日みてーだから祝っとくわ。てかれいあから聞いたけどまさか岸も本気でれいあのこと怒ってるわけじゃないよな?明日れいあの話ちゃんと聞いてやってくれよな。んじゃな』
「栗田…」
栗田なりに自分と中村のことを考えているのが短い文面から伝わってきた。岸くんは再び目頭が熱を持つ。
『送信者:谷なんとか 本文:誕生日おめでとう』
谷村と番号交換をした記憶があまりなかったがそれでもシンプルに祝おうとするのが彼らしくて岸くんは苦笑した。あいつの誕生日っていつだっけ…もう過ぎちゃったかな…なんてことを考えていると最後にそれは届いた。
「あ…」
『送信者:中村嶺亜 本文:今日はごめんなさい。メールじゃなくて直接謝らないといけないと思うけど、まだちゃんと岸の顔を見て言える勇気がなかったの。岸に対してすごくやな言い方してしまって…。
無意識のうちに岸ならこれくらい許してくれるって思いこんでた。でもやっぱりあんな言い方しちゃいけないんだって反省してる。
明日またレッスンでちゃんと謝るから聞いてね。最後になっちゃったけどお誕生日おめでとう。明日は岸に嫌な思い絶対させないからね。それじゃ、おやすみなさい。また明日』
「うぇ…」
岸くんは泣いた。せきとめていたものが、中村からのメールで一気に放出され声をあげて子どものようにわんわん泣いた。その声を聞きつけて家族が何事だと部屋に来たがそれでも泣いていた。
それぞれの気持ちが嬉しいのと、自分がちょっぴり情けなくもあり、それでもみんなが慕ってくれてるのを再確認して安心したのとでもうぐしゃぐしゃになった。
「もう優太…ほんとしっかりしろお前…もう17だぞ」
兄が呆れ気味に諭していたがそれでも岸くんは泣き続けた。
翌朝、岸くんは日の出とともに起床した。寝起きが悪いなどと言っていられない。泣きながら寝たから目がはれぼったくてひどい顔だったがかまわない。
とにかく今日は一番に楽屋に入って、みんなに謝って、お礼を言おう。そう決意していた。
スタジオは早くから開いている。岸くんはまだほとんどひと気のないスタジオをすいすいと進む。そして楽屋を目指した。
とりあえずどうやって待とう…いつ誰が入って来てもいいように正座かな…それとも何気なくさりげなく椅子に座っとくとかの方がいいかな…頭を働かせながら岸くんは楽屋のドアノブを回し、それを引いた。
「!!!」
まったくの不意打ちだった。予想だにしない展開が岸くんを包む。
破裂音、そして目の前を色とりどりの紙テープとキラキラが飛び、ちょっぴり火薬の匂いが鼻腔をくすぐる。
「え…!?」
「岸くん、おめでとー!!!」
高橋の、絶叫に近い大声が耳をつんざく。その後で拍手が起こる。
岸くんは目を見開いて立ち尽くした。
楽屋にはもうみんなが来ていた。彼らが手に持っているのはクラッカーで、その真ん中のテーブルには…
「みんなでお金出し合って買ったんだから味わって食えよ!」
倉本がケーキに蝋燭を立てながら言った。
「大成功じゃないか?この顔が見たかったんだ」
羽生田は満足そうに高橋と目を合わせた。岸くんはまだ事態に付いていけない。
「高橋が提案して、中村がケーキを調達してきたんだ。んでクラッカーは俺な」
神宮寺は得意げに言った。
「ギャハハハハ、岸のあのアホ面!」
栗田が指を差して笑い、谷村も口元を押さえながらクックックと肩を揺らした。
「岸、お誕生日おめでとぉ」
中村がそう口にしながら前に出る。
岸くんはようやく思考回路が通常状態に戻る。
「みんな…もしかして俺を驚かすために…?」
早起きをした岸くんよりも早く起きて、みんなが先回りをして岸くんにバースデーサプライズをしてくれた。
昨日あんなことがあってそれどころじゃなかっただろうに…
岸くんは感激のあまり鼻の奥がツン…と痛んだ。涙をこらえるとよく出る現象だ。
「やっと気付いたー?てか今日俺5時起きだったんだからほんとこんな時間に起きるなんて超久々だよ」
神宮寺が伸びをする。
「寝ようと思ったら高橋から電話が来て…正直睡眠時間5時間はきついな」羽生田も欠伸をした。高橋は照れながら笑う。
「みんながのってくれなかったら僕は一人でもしてたよ」高橋は真面目な顔をして言った。
「俺なんて寝てるとこ電話で起こされたし」倉本は腕を組む。
「俺はれいあからの電話で目覚ました」栗田は得意げに言う。どうやら着メロが中村からのものだけ違うらしい。
「俺はデッサンしてたから起きてたけど…」谷村は横の中村を見やる。
そして中村は少ししんみりした表情を向けながら、
「昨日はごめんなさい。反省したしぃもうあんな言い方しないからぁ…これからも友達でいてくれる?」
中村の上目遣いに、岸くんはまた涙腺が崩壊してしまった。
「俺の方こそごめんんんんんもうぜっだいあんないいがだじないよおおおおおおほんどにごめんねえええええ」
もう無我夢中で泣き濡れながら岸くんは中村に抱きついた。
それを見て神7達は「良かったなぁ…」というよりも皆ぎょっとしながら一斉に栗田の方を見た。岸くんの誕生日が命日になるんじゃないかという懸念と共に。
「…」
栗田は下唇を噛みながら小刻みに震えている。が、耐えている。額には汗が浮かんでいたし、しゅ〜しゅ〜という息漏れも聞こえてくる。
そしてややあってガスガス声で呟いた。
「今日だけだぞ…れいあの気持ちもあるし誕生日だし今日だけ許す…でも明日やったら殺す…!」
恐らくは栗田の15年の人生の中で今が一番忍耐との闘いだろう。そして人生最大の譲歩だ。
しかしながらいつプッツンしてしまうか分からない。皆気が気ではなかった。
「もう岸そんな泣かないでよぉ…17歳でしょぉ」
中村も少し涙ぐみながらハンカチで岸くんの涙を優しく拭いた。そこで栗田は限界に達する。
「れいあもういいでしょ!おい高橋、お前代わりに拭け!!」
栗田は中村からハンカチを奪って高橋に押し付けた。
「え、ぼ、僕が…?」
高橋はどぎまぎしながらハンカチを受け取る。そして震える手で岸くんの涙を拭いた。
「うわあああああありがどおおおだがばじいいいいいいいい」
岸くんはもうぐしゃぐしゃになりながら高橋の手を握った。
「き、岸くん…!」
高橋は耳まで真っ赤になって白目を剥きかけたがなんとかこらえた。皆がそれを見ながら笑う。
「さーとりあえず蝋燭に火つけてそれ消してもらおうぜ。その後みんなでケーキ分けっこな!」
倉本が涎を押さえながら着火マンを手に取った。ケーキの上に無造作に立てられた17本の蝋燭に火を点けていく。
全部点け終わると羽生田が室内の電気を消した。それなりに薄暗くなり、蝋燭の火が綺麗にゆらめいている。
「さ、岸くん」
高橋が岸くんに促した。
「17歳なんだからもうちょっと頼りがいのあるリーダーになってくれよな!」神宮寺は腰に手を当てた
「まあ17歳でも岸くんは岸くんだろうな」羽生田は腕を組む
「早くケーキ食おうぜ!」倉本の意識はもうケーキ一色だ
「岸おめでとぉ」中村は上品に拍手をする
「一発で全部消せよ岸!」栗田は無茶ぶりをする
「俺の誕生日は12月21日だからね…」谷村はさりげなくアピールするが岸くんはおろか誰も聞いていなかった。
みんなに祝福されて、岸くんは息を吸い込んだ。肺活量の限界にまで挑む。
そして…
「HAPPY BIRTHDAY!!岸くん!!」
みんなの掛け声と共に、岸くんは蝋燭の火に息を吹きかけた。
火は1本を残してみんな消えた。
残った一本を囲みながら、今度はみんなで息を吹きかけてそれを消した。
END
218 :
209 :2012/09/29(土) 02:54:19.48 O
皮肉にも10日前から規制に巻き込まれ、くらもっさん編同様携帯からの投稿とあいなりました
神宮寺のBDまでには規制が解除されていることを祈りつつ岸くんおめでとう
同じ歩幅で年輪を重ねることができることを嬉しく思います
いつもの作者さん乙です!
鬼ヤクザの怒鳴り声とか神7の喧嘩とか実際にありそうでハラハラしたよ
岸くんオメ!
不憫1な岸くんおめでとう
いつもの作者さんありがとう。そしてお誕生日おめでとう!
岸くんと同じお誕生日だなんてこの幸せもの!!
なんだかんだ言って愛されてる岸くん。17歳の岸くんに幸多かれ
いつもの作者さんありがとう!
岸くんおめでとうううう!
えっ作者さんも?おめでとうううう!
こうやって少しずつシンメ同士分かりあっていけるようになるといいね…
いざという時こういう支え合いある神7でありますように!
岸くん!素敵な17才になりますように…!
これぞ本当の涙サプライズだw
岸くんおめでとう!17歳の一年間薔薇色になりますように
そしていつもの作者さん素敵な作品ありがとう
岸くん幸せ者だなあ!おめでとう!
225 :
ユーは名無しネ:2012/09/29(土) 08:55:35.08 0
作者さん素敵な作品をありがとう!
岸君誕生日おめでとうメールたくさん来たのかな?
誕生日エピが楽しみだ!岸君人気だねw
ちゃんとたにむもお祝いするからね!
岸君17歳おめでとう!これからも颯君をよろしくw
作者さんお誕生日おめでとう
ここがずっと続いてるのは作者さんたちのおかげです
ますます神7が好きになるよ!
作者さんいつもありがとう
感謝してます&誕生日おめでとー
岸くん17歳おめでとー!
作者さん乙です!
岸くん17歳おめでとう!
岸くんのせいでまたジャニに興味を持ってしまったわけですが
こんなにダンス見て興奮できるのは君だけだ!
神7最高!
Jr.ランド新コーナーの詳細
■ユナイデット・アドベンチャー
これまでのメインパビリオン「スーパーバトオルコロッセオ」を大幅にリニューアル!
チームバトル形式ではなく、Jr.たちが「結束(ユナイテッド)」して様々な企画に
チャレンジする、リアルな「冒険(アドベンチャー)」を完全密着ドキュメント!
ジャニーズJr.が一丸となって挑む、バラティー豊かなミッションの数々。必見です!
■Jr.フォーカスロック・ギャラリー
番組MC・茂木淳一が撮影する、Jr.のフォトギャラリーをパビリオン(コーナー)化!
これまでに以上に様々なシチュエーションで、Jr.の素顔をたっぷりと撮影・紹介します。
ときには、Jr.がカメラマンとなった、Jr.ならではのスペシャルフォトのお披露目も!?
■Jr.ジャック・イン・ザ・ボックス
毎回順番に、Jr.の誰かがコーナーMCを担当!
何が飛び出すかわからない、その名の通り「びっくり箱」のように
ワクワクするパビリオン(コーナー)。
他では見ることできない、Jr.たちのキュートな仕草や無邪気な笑顔をお届けします。
作者さん乙です!
誕生日おめでとう岸くん&作者さん
ラスト最高です。久々に号泣した。
来年もこのメンバーで誕生日を迎えられたらいいね・・・
作者さん乙&オメです!ケンカからの仲直りハピバ、圧巻ですね
岸くん17歳おめでとー!
彼らにとって本当にこの1年1年が大事なんだなと思いました
たにーのバースデーはクリスマスとごっちゃになって忘れられそうな悪寒…
岸くんおめでと〜
作者さんもおめでと〜そしていつもありがとう
岸くん、明日こそ2人きりで遊びに行ってあげてね
岸くんの恋人(になりたい)
今日は岸くんの誕生日。
小さくなってしまった颯には何も特別なことは出来ないけれど、自分より大きな鉛筆を抱え、何日もかけてコッソリ手紙と似顔絵を書いていた。
(後で誕生日おめでとうって言って渡すんだ。)
そう思っていたのだが…
その日、歌番組の収録で岸くんは大きなミスをした。
収録だったので取り直して済んだのだが、一歩間違えれば誰かにケガをさせていたかもしれなかった。
鬼ヤクザに死ぬ程怒鳴られたが、それより自分が許せなくて岸くんはふさぎ込んだ。
「ごめん、颯。今日は颯の夜ごはん用意してあげられそうにないからメロンパン食べてて…」
「うん。メロンパンならしばらく続いても大丈夫だよ。」
食い意地のは…食欲旺盛な岸くんが夜ごはんも食べずに寝てしまうなんて…そしてそんな状態でも、自分のためにコンビニに寄ってメロンパンを買って帰ってくれるなんて…颯の小さい胸もズキズキ痛んだ。
岸くんがちぎっておいてくれたメロンパンをモキュモキュ食べながら颯は祈る。
「メロンパンの神様。今日だけ、いいえ1時間だけでいいです。オレを元の大きさに戻してください!出来たら可愛くて巨乳の女の子でお願いします。叶えていただけるなら、オレは一生このままの大きさでいいです。神様…」
その日、岸くんは夢を見た。
夢の中で可愛い、いや顔はハッキリしないのだがなぜか可愛いと認識している女の子に告白された。
その女の子に抱きしめられ、胸に顔をうずめる。柔らかい。
女の子が頭を撫でている…
翌朝、颯が目覚めると、岸くんは昨夜颯がひとかけ食べたメロンパンをかじっていた。
「おはよう、颯。メロンパン食べる?」
「うん!食べる!」
岸くんはいつも通りとはいかないが、随分元気を取り戻していた。
「いつまでもクヨクヨしてても迷惑かけるだけだしね。パフォーマンスでの失敗はパフォーマンスで取り返す!」
(よかった…)
一安心して顔をほころばせた颯のほくろを岸くんがそっと撫でた。
「プッ…メロンパンの砂糖まみれ…………ありがとうな、颯…」
「ん、何が?あ、1日遅れちゃったけど…お誕生日おめでとう!岸くん。今日も大好き」
つづく
んんんんんんんんんんんんんモキュモキュ颯きゅんんんんんんんんんn
誕生日記念に何か書きたかったけど、眠気と戦いながら書いてたら微妙に間に合わないし、グダグダだし…スマン
岸くんの恋人キター
颯きゅん、いちいち可愛いくて困るぅうううう
作者さん乙ー!
メロンパンの神様って存在するんだね!
そしたら颯くんはずっとそのままなのかい?
でも、岸くん一緒だからいいのか!
モキュモキュ颯くんきゃわああああああああああ
239 :
ユーは名無しネ:2012/09/30(日) 18:52:36.01 0
送信者:谷なんとか
ひでえええwww
密着ぅうううううぅう!
はにーと岩橋なにあれ、抱きしめてえええええ!!!
あと、栗ちゃんはいいこダンスやる気ないけど
たにーいた?
岩橋くんに泣いた
あと岸くんの適当人間っぷりにも泣いた
神7最高
谷茶浜空気すぎて自我修復なう
岩橋はほんとは怪我じゃなくてイジメで野球辞めたのかな
だから平日の昼間っから知恵袋ですか……
岸颯はそろって頭たりないw可愛いwww
やっぱりれあたんが可愛い
岸颯脳タリンすぎてクソワロタよ岸颯
谷やんいたのけ?
245 :
ユーは名無しネ:2012/10/01(月) 01:25:37.06 0
嶺亜しっかりしてる子だね
セクサマPV見た人〜?
2012年ジャニーズ売り上げランキング(12.09.03付け)
*1位 *64.8万枚 … 嵐「ワイルド アット ハート」
*2位 *31.9万枚 … 関ジャニ∞ 「愛でした。」
*3位 *31.5万枚 … Kis-My-Ft2 「WANNA BEEEE!!!/Shake It Up」
*4位 *29.1万枚 … NEWS 「チャンカパーナ」
*5位 *29.1万枚 … Hey!Say!JUMP 「SUPER DELICATE」
*6位 *18.1万枚 … SMAP 「さかさまの空」
*7位 *17.0万枚 … KAT-TUN 「TO THE LIMIT」
*8位 *16.8万枚 … 山下智久 「愛、テキサス」
09位 *15.2万枚 … Sexy Zone 「Lady ダイヤモンド」
10位 *14.8万枚 … KinKi Kids 「変わったかたちの石」
11位 *11.4万枚 … NYC 「ハイナ!」
12位 **6.1万枚 … V6 「kEEP oN.」
13位 **4.8万枚 … タッキー&翼 「Heartful Voice」
14位 **3.0万枚 … TOKIO 「羽田空港の奇跡」
セクサマメイキングおいしい順
大西→角田→西畑→永瀬→岸→神宮寺→サンチェ→あむ→谷村
岩橋颯松倉栗田倉本瑞稀空気
サンチェ嘘じゃなくて?wwwww
え、れあたんいないの?
サンチェワロタwwww
谷村の白スーツ似合い具合異常
ゆうぞうきたーーーーー
>248れあたんはどこにいったの?
れあたんいなかったら返品するけどそこんとこどーなんスか?
嶺亜書くの忘れてた
まぁちょいちょいは映るけど見せ場は0
谷村の秋の衣装が好きすぎる
谷村スーツ似合うねw
白衣装で皆で集まってた時颯くんいた?
楽屋の奥で後ろ向いてうつむいてるの颯くんじゃない?
今日はセクサマフラゲの日ですね
私立神七田高校
「おい大変だ!俺らの学校、今度女子高と合併するらしいぜ!!」
いつもの溜まり場に、情報通の拳武が転がり込んできて言った。
「合併だと!?」
神七田のトップ、頭である勇也が早速立ち上がって反応する。
「そりゃめでてーじゃねえか!!俺はなぁ、こういう日が来るのを待ってたんだよ!!!」
「今さら共学になってもなぁ…」と隣にいるナンバー2の颯也はあまり興味がなさそうだ。
「本物の女子が校内を歩いてるってことだぞ!最高じゃん!なあ、優平さん?」
2歳年上だがなぜか勇也たちと同じクラスの優平は熟読中のエロ本から顔を上げた。
「あー、まあね、クラスに女子かあ……いいんじゃない?エヘヘ」
「だよなあ!?楽しみだよな!あー早く合併する日がこねーかなあああ」
勇也はソファーに寝そべってあれこれとエロ妄想にふけりだした。その横で颯也が冷たい目で勇也を見ながらメロンパンを食べ出す。
「おい大変だ!龍一と玄樹が他校の不良どもにカツアゲされてボコられたってよ!!」
今度は駄菓子の入った袋を持ちながらキャップをかぶったカオルが飛び込んできた。
「またあいつらかよー…もう放っとくか」勇也は面倒くさそうに頭をボリボリとかいた。
「そんなワケにいかねーだろ。神七田がナメられてもいいのか?」颯也はメロンパンを急いで口に詰め込み立ち上がる。
勇也たちは龍一と玄樹がいる教室に直行した。
「…おまえらさあ、不良に因縁つけられたり絡まれんの、今月で5回目だろ!?もうちょい何とかしてくれよー」
「だって、俺らケンカ弱いんだもん、…ねぇ?」
「野球ならもうちょっと何とかなると思うんだけど…」
龍一と玄樹は血とアザだらけの顔を見合わせてうなずき合っている。
コイツらなんで喧嘩上等最凶ヤンキー校の神七田に入ってきたんだ…と勇也は頭を抱えた。
「じゃあ、これから龍一は毒キノコ、玄樹は硬球を最低3個は持ち歩け!!いいな!」優平が横からフォローする。
「この2人の話によると絡んできた連中は青いガクランだったらしいよ」なぜか頭にターバンを巻いた嶺耶が説明する。
「ふーん、このへんのガッコじゃなさそうだな」と颯也は首をかしげた。
「そういう変な制服、俺見たことあっかも!」とお調子者の恵がすっとんきょうな声を上げた。
「なんつったっけなーあのガッコ…えっと、思い出せねー」
「まあいーや、そのうち思い出したら言えよ」勇也が頭らしくシメた。
ある日の放課後、ゾロゾロと下校中の彼らの前にいきなり複数の男たちが立ちはだかった。
「てめーらが神七田のトップとその仲間たちか!!!なーんか、揃いも揃って弱そうだな、おい」
青いガクランを着たゴリラっぽい顔の男とゴリラっぽい体格の男が顔を見合わせてニヤニヤ笑っている。
「青いガクランって…コイツらのことじゃないか?」
「ゴリラが2人もいるぜ…結構手強いかもな」
颯也と勇也はヒソヒソとささやき合った。三度の飯よりケンカが好きな連中なのでもちろん売られたケンカは買う。
どこかの空き地に移動して、早速戦闘開始である。
「なんですぐケンカになるんだよおおぉ…もう、みんな血気盛んなんだから…あー怖ええ」
優平はこそこそと近くにあった土管の中にもぐり込んだ。ケンカが終わるまでここで待機、と思っていたのに
体格はいいが妙にのんびりした雰囲気の相手側の不良に見つかってしまい、引きずり出され殴りかかられた。
そこへやって来た颯也がヘッドスピンを繰り出し、相手を吹き飛ばした。
「あ…ありがとう。颯也ああー」
「べっ…べつに優平さんを助けるためにやったわけじゃないんだからねっ!!」
颯也は顔を赤くして次の相手を探しに行ってしまった。
助かった優平はダンボールの空き箱を見つけ、それをかぶって風景と同化しようと試みた。
「神七田の現トップはお前か!…俺がその看板を頂戴してやるぜあああ!!!」
ゴリラっぽい顔をした色黒の男がいきなり勇也に殴りかかってきた。
「危ねーな!いきなり殴るんじゃねーよ!!せっかくキマった髪のセットが乱れんだろおおおああ!!!」
勇也は実は三度の飯よりもケンカよりもエロ妄想と女とオシャレが好きなチャラ男だったので、怒りのあまり通常よりも50%ほど攻撃力がアップした。
「神七田のトップは頭髪の量の多さで決められたっつーのはガセじゃなさそうだな…」とゴリラは呆れたように笑う。
しばらく2人はガチで殴り合った。
その横では色白なゴリラっぽい男が目をランランと輝かせてターバンの嶺耶に話しかけていた。
「あれ、女の子がいる…ねえキミ、不良とかやってんのもったいなくね?」
「はぁ…?」嶺耶の頬がピクピクとひきつった。
「あーあ、禁句言っちゃった」それを見ていた拳武とカオルが思わず合掌する。
「誰が女だってええーーー!!??女女言うなあああああボケエエエエエ!!!!!」
「一回しか言ってねーじゃん!」
嶺耶に頭突きをくらってボコられても白ゴリラはなんだか楽しそうだった。
「俺は強ええええぇぇぇーーーー!!!!って、てめーコラどこ見てんだ!?」
のど付近にホクロのある男に、恵はパンチを繰り出した。
その男はパンチが顔に命中しても、嶺耶と白ゴリラの対決に気をとられていてやり返してこない。
「いや、なんか…向こうは楽しそうだなって思って」
「あー、うちの嶺耶は女って禁句を言われるとブチギレちゃうんだわ」
「れ…れいやっていうんだ。あの子」
「ん?ちなみに俺とこっそりつき合っているからてめーが妙な気を起こしてもムダなんで」
「お前と!?…マジかよ」
相手がショックを受けているらしい隙をついて、恵は蹴りを入れた。今度は相手も負けずにやり返してくる。
2人は私怨も多少交えてボコボコに殴り合った。
拳武とカオルはニコイチな関係でコンビネーション技を得意としている。
しかし今回の相手は小さいけど動きが素早くてリズム感がよく、なんだかつかみどころがなかった。
「なんか疲れたー…あむーあとはまかせた…」
「おいおい、ふたり揃って最強だろ!?しっかりしなさい!」
しょうがないので拳武は近くのコンビニでアイスを買ってきてカオルに食べさせた。
その様子を二重のくっきりした目が印象的なケンカ相手が変顔をしながら見ている。
拳武は妙にライバル心が刺激され、とっておきの変顔で迎え撃った。
なぜか変顔対決に突入している隙をつき、食欲が満たされて復活したカオルが二重くっきり男にタックルし
拳武が腹パンチを決め相手を地べたに沈めた。
「て、てめーら、卑怯だぞ…!」
「すまん、それは認める」と拳武が代表して謝罪し、2人は走り去った。
そろそろケンカ終わったかなー、と優平はダンボールから顔を出してキョロキョロと周りを見渡す。
そこへ嶺耶に撃退された白ゴリラが運悪く通りかかった。
「ターバンの子めっちゃ強いじゃん…お前なら勝てっかな」ゴリラに胸倉をつかまれ、優平は窮地に陥った。
頭同士の対決はなかなか決着がつかなかった。
「おい、勇也大丈夫か!?」そこへ颯也が駆けつけた。助かったと思ったら、また急いで引き返してしまう。
「颯也!てめー助けに来たんじゃねーのかよ!?」思わず勇也はツッコむ。
「だって、優平さんが…!!」
「もー何なんだよあいつは……なあ、もうジャンケンで決着つけねーか?」
「そうだな…」黒ゴリラもさすがに疲れたようだった。
優平の顔に殴られた痕を見つけた颯也は怒りのヘッドスピンで相手に立ち向かう。
しかし敵もさすがの馬鹿力…というか手技対足技の対決になり、なんだか噛み合わなかった。
「こうなったらあれだ、アームレスリングで決着つけよう」
「何でもいいよ。優平さんの顔に傷をつけた借りは返してもらう…」
嶺耶ともやり合った疲れが出て来たのか、相手はあっさり負けた。
「優平さん大丈夫!?」颯也はすぐさま優平に駆けよった。
「ああ…2回も助けてもらって、情けねーな俺」
「そんなことないって!んもー、優平さんったら俺の側を離れちゃダメ!!!」
「颯也…お前そんなキャラだったっけ?」
颯也と優平は勇也の元へ向かった。どうやらジャンケンで黒ゴリラに勝ったらしい。
「それにしても、颯也…てめーにはガッカリだぜ!勝てたからいいけどよー」
「しょうがないだろ。前にタイマン勝負に割り込んだら許さねーとか言ってなかったか!?」
「時と場合によるだろーがよ!!!もうちょっとで神七田の看板持ってかれるとこだったんだぞコラ!!!!!」
「勇也…お前との友情はもちろん大事だけど、優平さんとの愛…友情も深めたいんだ!」
「あぁ!?何言ってんだてめー!優平さんは2年ダブってっけど、俺の大事なダチなんだぞ!!エロ本も見せてくれるし!!!」
お互いの胸倉をつかんでにらみ合う勇也と颯也に、優平はあわてて意味不明な仲裁をした。
「あ、あのさ…ケンカするのはやめて、楽しくケンカしよっ?」
「つーか、アンタがハッキリしねーから悪いんだろ!?俺と颯也どっち取るんだよ!!!」
「そうだよ!優平さんっ友だちから始めて下さい!!!」
「えぇぇー!?なんでそんな話に…俺さっきまでダンボールに頭つっこんでたんだぜ?」
神七田の2トップが、2年留年というのもうなずける法令線の深い男を取り合って仲間割れしている…
その光景に青ガクラン集団は戦闘意欲を急速に失った。
「べつに神七田の看板とかいらねーわ…」
黒ゴリラが吐き捨てるように言うと、白ゴリラはポケットに手をつっこんでうなずく。「おい、帰ろーぜ…」
「何だよ…お前ら、もういいのか?今日はこれくらいにしといてやるぜ、とか言わねーのか。神七田魂見たくねーのか、おーい」
勇也が呼び止めても青ガクラン集団は完全無視でその場を立ち去った。
ところで、さっきの光景にドン引きしたのは敵だけではなかった。拳武とカオルはお互いの目に浮かんだ失望の色を確認し合う。
「おい!!合併の話はどーなったんだよ!!!早く神レア高校にしろやああああああーーー!!!!」
1週間後、溜まり場にて勇也は絶叫していた。
「あー、残念だけどその話なくなったって」心なしか嬉しそうに颯也が言った。
「はあぁーー!?マジかよそんなんありえねー!!!もうトップ辞めて生徒会長になって絶対女子校と合併するうーーー!!!」
勇也はソファーの上であお向けになって手足をジタバタさせた。
「でもさー女子が入ってきたら色々と気使うし、エロ本も隠さないとだし、このままでもよくね?」
優平が漫画誌の水着グラビアをめくりながら言うと、寄りそってソファーに座っている恵と嶺耶も同意した。
「面倒くせーよな!このままでも全然オッケー」「俺もー。恵がいればそれでいいや」
これさえなきゃまだいいんだけどな…と拳武はカオルにテレパシーで話しかけた。
でも、もう俺こんな2トップについてけねーよ…とカオルもテレパシーで返す。
自分たちは近いうちに彼らを裏切るだろう…そんな予感がした。
終わり
作者さん乙!
うまく本家のキャラとマッチしててすごい!
ひたすら優平さんワロタwww
そして喧嘩の相手は毎度のト○ビス乙!w
作者さん乙!
神七田いいなw
優平さんダメすぎるのに颯也さんは安定の大好きモードに安定のれあくりw
名前出してないのにわかるト○ビスワロタwww
作者さん乙!谷村岩橋は不良に絡まれるの似合うなw
関係ないけど今日はれあたんの入所日か、四年目も頑張れれあたん
おお!れあたんおめ!これからも神7の紅一点でいてね
神7
1stシングル ブレザー
2ndシングル ネコ耳+しっぽ
3rdシングル 体操服
4thシングル サンタさん
5thシングル 執事(一部メイド)
6thシングル 水着
ここまで決定したけど
神7楽屋劇場「男だろ!!」
「おお…これは…」
神宮寺の眼の奥が妖しく光る。今日も楽しくエロ動画検索。暇があればこれ。一日の日課がこれ。一服の清涼剤がこれ。エロ動画検索なくして神宮寺を語るなかれ。
今日一番の当たりを見つけ、えもいわれぬ達成感がこみあげる。早速保存だ…神宮寺はスマホを素早く操作する。
「これでまたコレクションが一つ増えるな…」
誰もいない空間で格好つけながらカフェオレを飲む。ほどよい甘さが脳に快感を与えた。いい気分になってきたところでいっちょオ○るか!と今日もまた人知れず条例違反を犯し始める神宮寺だったが…
「あ、神宮寺ぃ」
中村が楽屋に入ってきた。ちょうどズボンをおろしたところである。かまわず続けようとすると中村は頬を膨らませた。
「もう人がいるのにそういうことしないでよぉやるんだったらトイレかどっかでやってきてぇ」
「いいじゃんよ減るもんじゃなし」神宮寺は聞く耳を持たない。
「見せられる方の身にもなってぇせっかくの休憩なのにそんなの見たくないぃ」
見せる見たくないの発言に神宮寺はなんとなく興奮した。嫌がる乙女男子に見せつけながらするのもなんだか新しい世界が開けそうだ。いや、むしろ一緒に…
それをもちかけると中村は絶対零度の視線を向けた。
「そんなこと言ってこないだ栗ちゃん巻きこもうとしたでしょぉほんとやめてよねぇ。神宮寺せっかくかっこいい前向き発言とかしても全部それで台無しぃ」
谷村ならここで絶対零度を浴びれば大悦びなのだろうが神宮寺は反論できるくらいの冷静さは残されていた。
「お前だって一応男って今は分類されてんだからオ○ニーくらいしたことあんだろうがよ。それともやっぱ女だったのかよ。いや、女だってするぞ!俺の特選動画にもわんさかあるしな!」
「そういう問題じゃないぃ。神宮寺こそぉまだ中学生なんだからそういういかがわしいのはほどほどにしとくべきぃ」
「お前らこそいかがわしいことやりまくりじゃんかよ。ところかまわず年中発情期で目撃談もわんさかあんだぞ。たまにそれでヌいて…じゃなくて一回でいいから俺にもやらせろよ」
「いかがわしくないもん。栗ちゃんとだったらちゃんとした純愛だもん」
チャラエロ男子と乙女男子は根本から考え方が違うのか平行線である。しかも経験では乙女の方に圧倒的軍配が上がる。チェリーな神宮寺にはスマホでのエロ動画検索とオ○ニーを取りあげられたら何も残らないので必死だ。
「オ○ニーは男のたしなみなんだよ!飯を食うのと夜寝るのと歯磨きするのと一緒なんだよ!男だったら分かんだろ?」
「分かんないぃ。そういうの僕お断りぃ。栗ちゃんにもやめてよねぇ岸と二人でやっててよぉ」
「ていうかお前だってこういうの見たら反応するだろ!ほれほれ」
神宮寺はスマホを起動させ神宮寺特選エロ動画を中村に見せようとする。ここで栗田が入ってきたらじんたん東京湾のお魚の餌決定だおだが生憎栗田は別撮りであと1時間は戻ってこないことは確認済みだ。
むしろちょっとセクハラなんかしちゃっても大丈夫かも…なんて不埒な考えがよぎる。
「れあたんも男なんだってみんなに教えてやれよ。俺と一緒にレッツオ○ニーだ!」
「やだってばぁ」
「ていうかいい機会だからちゃんとついてるかどうか確かめさせろ。神宮寺七大不思議の一つ「中村には本当にアレがついているのか」が今ここに明かされる!」
「もうちょっとやめてよぉ神宮寺ぃ」
嫌がる中村に神宮寺はセクハラ親父のようにからみだす。酒を飲んでもいないのに飲んだくれ親父のようにしつこい。
「純情ぶんなよとっくにすごいこと経験してるくせによー俺だって初体験してえよ」
神宮寺が笑いながら言って動画を見せようとした時である。しつこいセクハラに耐えかねた中村は
「もぉ〜!!」
と普段の倍増しの声でさけんだ後、神宮寺の顔を両手で挟むと低い声でこう呟いた。
「そんなに初体験したかったら俺が犯してやろうか?」
中村は完全に男の顔になっていた。
神宮寺は全ての機能が一時停止する。
ふんわり乙女天使のごくごくごく稀に見せる♂の一面にすっかり戦意喪失…
するはずだった。
「ぜ…」
神宮寺は唇を震わせた。そして叫ぶ。
「ぜひお願いします!!!!!」
中村の誤算はこの節操もへったくれもない稀代の変態エロエロエンペラー歩く条例違反セクハラ大魔王が想像の斜め上を行っていたことである
こうでも言えば大人しくなると思ったのは考えが浅かった。眼の色を変えて嬉々として自身の貞操を差しだそうとする神宮寺に中村は慌てて前言撤回をする。
「やだぁ冗談だってばぁ神宮寺ぃ。あ、ポッキー食べよぉプリン味が出たんだよぉ」
ぶりっこスマイルでごまかそうとしたが今の神宮寺には全く効果がなかった。
「男だろ!!一度言ったことは責任もってちゃんと実行しろよな!!さあ俺の処女を奪うがいい!優しくしてね!」
「いやだぁ栗ちゃん助けてぇ」
こうして小一時間の格闘の末撮影を終えて栗田が戻ってきたが栗田鬼武者モードと神宮寺のエロパワーはなかなかの互角の戦いを繰り広げ、最終的に鬼ヤクザによる「ゴルア!!なんの騒ぎだぁ!!!!!」の恫喝によってようやく終結を迎えたという。
ちなみに最初に止めようとした岸くんは栗田の地球破壊パンチと神宮寺のメガトン正拳突きを同時に喰らって生死の境を無駄にさまよっていた。
END
んんんんんんんんんんんんれあじぐhshs
作者さん乙!
れあたんかっこいいな…。
神宮寺でなくてもそうなるわw
楽屋わちゃわちゃいいよいいよ!
しかし神宮寺は変態だな
やっぱり岸くん不備ですね
神7楽屋劇場「学校では教えてくれないこと」
岸くんと谷村は同時に楽屋のドアの前に着いた。
「…」
「…」
お互い微妙な空気が流れる。毎度おなじみ不憫乙の二人だがさして話が弾むわけではない。だがかといって仮眠をするには時間が足りない。他のメンバーが戻ってくるにはもうちょっと時間があった。
どうしよう…と思いつつ岸くんがドアを開けると中には倉本がいた。若干ほっとしながら岸くんと谷村は中に入ったがどうも倉本の様子がおかしい。
「…どうした?倉本?」
食いしん坊万歳の倉本が何も食べず、食べた形跡もなく楽屋の真ん中であぐらをかいて腕を組んで眉間に皺を寄せている。眉間に皺は谷村の得意技の一つだったが今は倉本がそれを引き継いでいる。似合わないことこの上なし。
岸くんの問いに倉本は顔を上げた。そして岸くんと谷村を交互に見据え溜息をつく。
「お前らに言ってもなぁ…」
これは聞き捨てならない。岸くんは思った。はばかりながら神7の最年長。最年少が何か悩んでいるというのにスルーなどできるわけがない。
それは谷村にしても同じだった。神7の中でたった一人の年下メンバーである倉本の相談にものれなくて何がエリートか。谷村も岸くん同様に聞き入れ態勢に入った。
「そんなこと言わないで言うだけ言ってみなよ。なあ谷虫?」
「そうだよ岸脇くんの言う通りだ」
お互いにお互いの名前をきちんと言えていないがこの際つっこむ者もいない。
「…」
倉本は岸くんと谷村の顔を見比べる。どんぐりまなこが左右に動き、二人の不憫を映した。
そして倉本は若干間を空けた後、こう呟いた。
「オ○ニーってどうやんの?」
…
テンテンテン…
岸くんと谷村は二人同時にその大きな目を点にした。あんぐりと口まで開けている。
予想外もいいところである。今目の前にいるのは確かに倉本であって神宮寺ではない。二人とも目をこすって確認した。ぽっちゃりまるまる倉本郁だ。間違いない。
二人が絶句してると首を捻りながら倉本は続けた。
「みずきがさあ…神宮寺のことお兄ちゃんにしたいなんて言ってるみたいでさあ…俺としちゃ悔しいじゃん?みずきは俺の妹になるべきであって将来の嫁でもあるだろ?なのに神宮寺って…。
んで俺考えたんだよ。神宮寺のどういうとこに憧れてんのかって。チャラいところとかエロいところじゃなくてもしかしてオ○ニーってやつじゃないかって。でも学校で習ってないし…」
倉本の表情は真剣だった。
ここで例えば羽生田なら「オ○ニーっていうのは通称であって正式名称はうんぬんかんぬん…」と理論で入るだろうし高橋は赤面して「そそそそそそんなこと僕の口から言えるわけないじゃないかああああああ」とマナーモードに入る。
中村は恐らくコウノトリが赤ちゃんを運んでくるという迷信ばりのごまかし方をするだろうし栗田はその場で実践して見せるだろう。
しかしながら岸くんと谷村にはそんな器用な扱いはできなかった。
「いや、倉本…いや、落ち着け…」
岸くんは汗が滝のように流れている。
「倉本…えっと…えっとだね…」
谷村は目が泳いでいる。
岸くんと谷村は金魚のように口をぱくぱくさせる。それを見て倉本は再び溜息をついた。
「やっぱお前らに言っても分かんねえか…神宮寺に直接訊くしかないのかなー。でもシャクだなー」
「ちょ…ちょっと待て倉本。神宮寺に訊くのは待とう」岸くんが止めに入る。
「なんでだよー。お前らだって知らねえんだろ?だったら…」
「いや、知っている。知っているんだけど…」谷村は岸くんと目を合わせた。岸くんは頷く。
「もう少し大きくなったら自然と分かる。何もそう急がなくても…」
「あ?なんだよそれ。俺は一刻も早くみずきにとっての「お兄ちゃんにしたいJr」にならなきゃなんねえんだよ時間ねえし。ちゃんとオ○ニーできるようになってみずきに俺の良さを再確認してもらわねえと」
岸くんは考える。本当のことを教えるのはたやすい。たやすいが一歩間違えれば神7の猥褻班がもう一人増えることになる。それは(自称)リーダーとして避けたい。やはり未成年のグループなのだから清潔感が大事だ。
そして谷村も思う。倉本の凄まじい食欲が性欲に変わったらもうどえらいことになるんじゃなかろうか。下手をすればロクネンジャーにも伝染し悪影響が…。
金田くんを守らなくてはならない。あの清楚な笑顔が神宮寺のようなチャラエロ笑いに変わるなど言語道断。断固阻止だ。
「分かった…。倉本、じゃあ説明しよう。オ○ニーのやり方とは…」
岸くんは神妙な面持ちで語り始めた。
「まず呼吸法からだ。足はこう…肩幅ぐらいに開いて背筋を伸ばす。そして深くゆっくりと吸い込み一度ピタっと止める。そしてまたゆっくり吐く…」
倉本は言われた通りにしている。真剣な表情だ。だが岸くんは焦る。とりあえず呼吸法でごまかしたものの続きが思いつかない。
そこで谷村にバトンタッチした。谷村は無茶ぶりに頭を悩ましたがこれも金田くんを守るため、と必死に回転数を上げる。
「それから…えっと…小刻みに二回吸って三回目に吐きだすんだよ。ヒッヒッフー…みたいな。吐きだす時は少し長く…それを5分間」
それはラマーズ法じゃね?と岸くんは思ったがこの際つっこみはなしだ。
「なんかめんどくせーなー。こんなこと本当に神宮寺がやってんのかよ?」
「いや…神宮寺はああ見えて真面目な部分もあるから。そこを井上は見てるんじゃないかな…」
岸くんが適当な答えをか返すと倉本は悔しそうに呟いた。
「くそ〜神宮寺め〜俺のみずきなのに…」
さてこの先はどうしよう…いくらなんでも呼吸法だけでは限界がある。嘘でなくかつ曲がった方向にいかないためにはどう言ったらいいのか…岸くんと谷村は悩んだ。
「両手をこう…天に向かってかざして念じるんだ。『地球のみんな、オラに玄樹…じゃなくて元気を分けてくれ』って」岸くんはヤケクソだ。
「そしたらほら…腕がゴムみたいになって伸びるイメージで覇王色の覇気が湧いてきて…」谷村も適当になっている。
だが倉本は真面目に二人の言った通り実行する。これも井上のため…純粋な恋心の成せる業だった。でなければ倉本が岸くんや谷村の言うことを素直に信じるはずがない。
みずき、待ってろよ…俺はオ○ニーを体得してお前に更に熱い想いを抱かれるような立派な男になるからな…
小学6年生のピュアピュアクリスタルハートが一等星の輝きを放とうとしているその時、楽屋のドアが開いた。
「くらもっちゃん悪いんだけどさーこないだ貸した漫画、橋本が読みたいっていうからそろそろ返してくんない?もう一週間経ってるしいい加減読んだでしょ…って何してんの?」
楽屋には井上を始め橋本、羽場、林、金田の毎度おなじみロクネンジャーがどかどかと入ってくる。
「おお、みずき。見ろ、俺は今オ○ニーの体得中だ!岸とたにーに教えてもらってんだ。お前のために!」
自信満々、意気揚々と高らかに倉本がそう宣言をした。しかし次の瞬間井上は顔をひきつらせ、ロクネンジャー達は爆笑し始めた。倉本はわけが分からない。分からないが何かが違うことを井上の顔から察知し始めた。
「いや、井上、誤解してもらっちゃ困る。俺達は倉本のためを思ってあえてこういう方法を…。てか最初から説明させてもらってもよろしいでしょうか?」
岸くんは汗だくで言い訳を始めるがロクネンジャーの爆笑の渦にその声が飲みこまれてしまう。そして谷村は…
「金田くん、これはだね…」
谷村が金田にのみ誤解を解こうと近づくとそれまで腹を抱えて笑っていた金田は途端に恐怖に顔を歪ませる。ゆらりと近寄ってくる宇宙人にまたしても超音波スイッチが入り、楽屋から逃亡を試みる。
が、谷村はそれを自動的に追った。そして館内に超音波が響き渡る。
一時間後、神7会議が設けられ岸くんは皆に責められ続けた。そして谷村は金田を恐怖に陥れたおしおきを中村からすでに喰らっていた。倉本の人間不信は一週間ほど続いたという。
END
作者さん乙!
くらもっさん外見は中学生並なのにまだまだ可愛いなー
でも訊く相手を完全に間違えたよねwれあくりの方がよかったかもw
神宮寺、髪長すぎ〜
てか、岩橋inは確定だよね?
谷村本気でかっこいい
作者さん乙!
くらもっちゃん普段ふてぶてしいのにみずきのことになると途端に可愛すぎw
いいよいいよくらもっちゃん!
不憫二人揃ってまったくw
これを颯くんが知ったらまた白目むいてマナーモードだな
しかし
>>280みんなかっこいいな
みんなオレのじんたんをなんだと思ってるんだよ
じんたん=オナニーになってるじゃないかよ
作者さん乙!
栗田なら実践するだろうのくだりツボにきたw
>280
谷村が端っこじゃない!感動w
286 :
ユーは名無しネ:2012/10/05(金) 19:06:43.75 0
いつかはこのメンバーも散り散りになっちゃうんだよなあ
Mステわらわらいすぎ、どうした
安定のセンター岩橋、途中でいなくなったと思ったら手前にいた岸颯、センポジ獲得はにーじぐ、どこ行った谷茶浜、の割には良く映るシンメ栗田、いつも通りれあたん倉本
衣装チェンジした谷栗がどこにいるか全然わかんかったけど5回リピってようやく見つけた……
オレンジの手前左右端にいたんですね、ちょっとすみっこすぎやしませんか
谷栗は最後の白衣装で集合の立ち位置が酷すぎ、見切れェ……
オレンジは川崎の全力スマイルしか覚えてねーよ
岩橋あむじぐの見つけやすいこと見つけやすいこと、
谷栗は最初がっつり映り込みしてたから
最後で見切りでバランス取ったんだよ
今日はあらちかまでいたので大満足
『裏7U・1』
「腰、いったぁ……」
楽屋までの階段、最後の段で踏み外し鈍痛が今だ響く腰を押さえながら岩橋は楽屋の扉に手をかけた。
何故腰が痛むのか……なんて、決まってる。
(目を閉じればすぐにも思い出す、荒い息遣い、投げつけられる侮蔑の言葉、掻き回される思考、乱されただ穢されるだけの体、)
見えそうで見えないギリギリのラインにつけられた情欲の証が汚らしく覚えて無意識に引っかく。怠惰で伸ばした爪がひっかかって思ったよりも痛みが走った。
『も、っ無理ぃ……』
ふるふると首をふって拒否する自分の隣で、所謂騎乗位とかいう体位でノリノリの嶺亜の姿が目に入る。(どうして、笑っているの)……気を失う寸前に聞こえた嶺亜の笑い声、
(それは、幻聴?)
はぁ、と息を吐いてがちゃりとドアノブをまわし部屋に入る。中にいたのは意外にも栗田一人だった。
「おはよ」
「…………」
「……栗田、?」
来る途中で買ってきた何冊ものの問題集でやけに重たい鞄を下ろしながら軽く挨拶をする。普段ならすぐさま軽快に返ってくる「おはよー」の声が、ない。
「栗田、ってば」
どさっとソファに乱雑においた鞄もそのままに栗田に一歩二歩近づく。俯かれた頭、ぺったんこの髪の毛がぱさりと一房音を立てて重力に従う。その薄い肩に触れる、その、一秒前、
「っ、……何の…つもり?」
その手首を逆に絡め取られて何故か押し倒された。
「……岩橋さぁ、」
「は?」
「いじめられてたってさ、……こーゆーこと、されてたんじゃねぇの」
「っ、!」
思わず押し倒してきた体を突き飛ばしそうになった。けれどその腕は、栗田に掴まれて阻まれる。
「こんな白い肌でなよっとしてりゃぁ、な?……満更でもなかったんだろ」
「ふ、ざけ」
「暴れんな、犯すぞ」
「っ、あ…………」
(やだやめてやめてやめて俺の中に入ってこないで、)
「いや、やめてっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ!!」
『岩橋ってさぁ、可愛い顔してるよな』
『え、そうですか?』
『ちょっとっさぁ、……ムラムラする』
『や、っだなにすんの』
『は、誘ったのはそっちだろ?』
俺がなにしたっていうの。俺がこんな顔してるのは俺のせいだとでもいうの。女じゃないから面倒じゃないだなんて本気でいってるの。俺の心はどうだっていいの。
「…………助けて、よぉ……」
「……岩橋、ぃ?」
「いや、なのに、存在意義を確かめてないと急に怖くなるの、」
「…………」
「俺、はいらない子なんかじゃない、よね……?」
「そ、んなの」
「……嶺亜もきっと、……ううん、もっとなにか、きっと、」
『栗ちゃんが笑ってくれれば、それだけでいいと思ってたのにねぇ……』
(月の灯はいつだって気まぐれ、)そういった嶺亜の顔がどんな表情だったのか、すら。
(汚されきった体と穢しまくった体)(どれだけ洗っても綺麗に落ちない)
上手く呼吸ができずぼやけてきた視界の中でたった一人うつる栗田の顔がなんだか泣きそうで、こんなことされてるくせに急に愛しくなるなんて、(そんなの嘘に決まってる)
END
作者さん乙です裏7キター!!!!!
げんたんの喋り方が色っぽくてすごい可愛いたまらない
げんたんんんんんんんんんんんんんんんんn
295 :
ユーは名無しネ:2012/10/06(土) 15:30:58.11 0
作者さん乙です!
久々のロクネンジャーに萌えた
谷村金田コンビが好きだー
296 :
ユーは名無しネ:2012/10/06(土) 18:56:50.84 0
作者さん乙です!闇7久々の投下ありがとうございます!谷茶浜凜DVの続編も待ってます!
297 :
ユーは名無しネ:2012/10/06(土) 19:13:28.45 0
不快!駄作!
久々のアンチか
いじめ関連はデリケートだから評価分かれると思う
申し訳ないが自分もイマイチ裏7の良さがわからない
なら読むなって話だな…スマソ
別に批判するなとはいわないけどさ
じゃあ読まなきゃいい、って分かってるんだったらいちいち書くなよ
うざったいわ
前も書いてもらってる途中でgdgdいう奴がいて連載とまったの忘れたのかよ
批判するだけしといてとまったらとまったでまた色々いうとか勝手すぎ
自分もちょっと……って思う作品あったことくらいあるけど、なんにもいわずにスルーしてるよ
303 :
ユーは名無しネ:2012/10/06(土) 23:16:51.74 0
自分は裏7好きですよれあたんんんんんんんんんん
JJLのジュニランアワードでガチリンピックの岩橋ピッチャー、キシ君バッターの場面で
拾われてるベンチのレアクリ会話!前の放送の時は気が付かなかったけど
れ:んっめぇっ?あんなに曲げるんだね 膝
く:人によるね
れ:かまえがさ なんかかわいい フフッ(高め)
く:フフフフ(低め)
初めは岩橋君のことかと思ったんだけど
キシ君のことだよね? 小悪魔たちめ〜って感じでした!
低めの栗ちゃんこっええええええwwwww
脳内ではどう思ってるんだろうか……
『裏7U・2』
霧吹きで吹きかけられているような雨の中、栗田はたった一人で繁華街を歩いていた。雨にギラギラとしたネオンがにじんで余計うざったく、寝不足もあいまって目に痛い。
「……なんで、こんなとこ…………」
栗田のすぐ隣を胸を露出した女性がすれ違っていく、男にしだれかかるそのみっともなさに思わず顔が歪む。あからさまなその態度にさえ不快感を覚えるような栗田が何故こんな繁華街を歩いているのか。
(そんなの俺が聞きたいよ)
『……れー、あ……と、い、わはし?』
たまたま廊下で見かけた二人を、いつもなら普通に話しかけにいけたんだろうけど何故かそれができなかった。そこにいる嶺亜が嶺亜じゃないようで……、(岩橋のことは全然覚えてないけれど、)
二人して白い肌をすり寄せて、手を繋ぎ合って、その手が震えていたように見えたのは気のせい?
『…………どこ、行くんだ?』
普段より割り増しに擦れた声を廊下に響かせる。それから数分、いや数秒かもしれないけれど暫くたって背後に軽い笑い声が聞こえ我に返った。考えをまとめるのもそこそこに、無意識に走り出していた。
ホストが客を呼び込む声が大きくなってきた。中学生の自分がここを歩いているのはそろそろマズいかもしれない、傘で自分を守るのもそこそこに栗田は足を急がせた。
急がせるといっても行く宛があるわけでもない。そもそも二人が何処にいったのかも分からないのだから。けれど、…………。
また一人男に媚びる女が、いや女に媚びる男か?その媚びる輩が何故か嶺亜に見えて、……いけない、首をふる。
(違う違う違う、嶺亜はそんなことしない)(でも、でも)
(じゃぁどうして、って)
(そうとしか考えられない、……なんで、なんでなんで)
「……なんだ、ってんだよ」
誕生日にやったキーホルダーをもって幸せそうな微笑み、見覚えのない赤い痕を無表情でさらけ出す体、どしゃぶりの中傘もささずに何故か駆けていった後姿、次の休日の予定を楽しそうに提案する口、鏡の前で自嘲するような笑顔、……どれが本当なのか。
よくアホだバカだと揶揄されるほどの低スペックな頭で自分に都合のいい言い訳が浮かぶはずもなく、頬を一筋の雨が滑り落ちていく。
『栗、ちゃん……』
『んー?』
『俺、頑張るから。ね?』
『ん?』
そうだ、覚えてる。セクゾンのバックレギュラーの嶺亜に、一歩も二歩も遅れをとっていたあの頃。かといって別段焦りは感じていなかった、いや、嶺亜と一緒にいれないことには寂しさを感じていたのだけれど。
ただ嶺亜は。…………嶺亜は、?
その時どう思っていた?
かつていつでも一緒にいた自分がいないことにどう?
けれどそれから自分とシンメの谷村の扱いが底上げされてきて、それで、。
(もしかして、とかそんなの)
気付いたら押し倒していた。
「なっ、にすんだよ栗田ぁ……!」
自分の腕の中で暴れる岩橋の言葉は左から右へ。睨むその瞳、歪んだ唇がどう作用したのか何故かくぼむえくぼ。きっとそれは可愛らしいものなんだけれど、申し訳ないがその顔に興味はわかない。
じゃぁどうして押し倒してるのか?
(同じ白い肌、赤い痕)
それが嶺亜にリンクして、どうしようもなく抑えきれないデジャヴ。(同じところに、痕があった、そうだ……そうだ、)
「っ、なに……?」
岩橋の目がバチリと瞬く、……水滴?涙?…………泣いてるのは、誰、?
「なにやってんだっ」
急に響いた第三者の声、虚ろな瞳の岩橋、……引き離される自分の体。
「岩橋、大丈夫かっ、?」
その状態にしたのはきっと自分、なのに他人事にしか思えなかった。
(ただ、その赤い痕が頭から離れなくて)
END
作者さん乙!!!
わちゃわちゃも好きだけど、このひりひりする感じ好きだwww
作者さん乙!
裏7きた!
自分もこのヒリヒリする感じ好きだ!
斬新でいい作品ほど賛否両論になりやすいからめげずにどんどん書いてね
いつもありがとう!
久々にきたら裏7降臨してるwww
期待期待続き期待!
作者さん乙です
いや〜な展開を期待してしまうw
作者さん乙です!
自分は裏7好きなので書いて下さり嬉しいです。
『裏7U・3』
右手に持ったビニール袋ががさごそと音をたてる。中身は油分と糖分たっぷりのお菓子ばかり、倉本郁は自分の持ち物ながら溜め息をついてそれを見下ろす。
「……別に、買うつもりなかったのに」
重たい溜め息、最近の口内の肉が増えて噛むことが多くなった気がする。気のせい?だといいのだけれど……。
ぺたりぺたり、自分一人の靴音がやけに廊下に響く。楽屋までの数メートル、自分が孤独を感じてしまうちょっとした数分間。
別に楽屋にいけば年上だけれどがっつり絡んでくれるメンバーはたくさんいる、暇になったら同年代のところにいけばいいしそれを咎める人間がいるわけでもない。なのに何故か消えない小さな心の隙間。
不安を感じているのか、いやまさか自分が?
…………何に対して?
自分の立ち位置はそこそこ恵まれている。それくらいわかっているつもりだったのだけれど。
贅沢?じゃぁ自分の持ってる悩みは何処に捨てれば隠せば吐き出せばいいの?
受け止めてくれる人は、何処、
(知ってた?自分まだ小学生なんだぜ、)
「お腹減った」
(嘘つき)
「何から食べようかな……」
(嘘つき嘘つき嘘つき)
誰も聞いてないのに独り言、誰も聞いてないから独り言なのか、
お腹が減ってるんじゃないの、(心が虚しいからそれを埋めようと足掻いているの)
「った、……」
また、噛んだ。右の内側の頬肉から微かに流れる赤い血とそれに伴う鉄の味。生きている証が欲しい、なんてリストカットをする輩がよくいうけれど自分は別にヴァイオレンスな考えの持ち主ではないからただ気持ち悪いだけ。
切れた唇に塗るように、口内に塗るリップスティックがあったらいいのに。(あぁ、溶けるだけか)
「……あ、れ」
楽屋まであともう少し、ビニール袋から視線を外し顔を上げると多分楽屋と思われる部屋の前につったっている人影が見えた。
「嶺亜?……おーい……なにやってんの、」
「……っ、!」
ばたばたとすっかり肉付きのよくなった足を前に前に駆け出して。するとそれは嶺亜で、切れそうになる息を抑えながら呼びかけた。けれど嶺亜は普段の人当たりのよい笑みなんてチラリとも見せずに体をビクリと反応させただけだった。
「嶺亜?ってば」
「う、……あ、……っ、」
「どうした……へ、…?」
嶺亜はこちらを全く見ずに走り出していってしまった。(何故?)再び訪れる沈黙、……いや違う、楽屋からかすかな声。
「……中村が全速力で走っていったがどうかしたのか?」
「っ、……はにゅーだか、……こっちが知りたい」
楽屋の扉のドアノブに手をかけた瞬間、背後からかけられる声。今度はこちらがビクリ体を震わせてしまった。
「なんか楽屋の前で突っ立ってて声かけたら、急に、「……栗田は?」……?知らないけど、」
羽生田の顔色が何故か一瞬にして変わる。ドアノブにかけていた手を振り払われて、何故かその上には羽生田の手が。なに?と問いかける暇もなく開く扉、
「なにやってんだっ!」
(どう、……なってるの)
ソファの上に押し倒されている岩橋、その上にのしかかる栗田(、そしてさっき駆けていった嶺亜)
「……っ、あ……」
あともう一つ、(気付いてしまったこと、)
「……はにゅーだの持ってる携帯、…………颯の、だよ、な?」
零れた疑問。でも、それに答える人は何処?
END
神7楽屋劇場「Jealousy」
「岸てめえまたれいあと撮影の時手ぇ変なとこ持っていきやがったな!」
「違うって!あれはたまたま…やましいことなんか何もいやああああああああ!!!!」
楽屋に戻ってきた岸くんは栗田のやきもちによってまた今日も無駄に不憫を重ねている。高橋は助けたかったがこの状態の栗田には手も足も出ないことは嫌というほど身に染みている。
何もできないもどかしさと闘いながら砂糖をまぶしたお手製おにぎりをかじった。甘く切ない味だ。それを烏龍茶で流し込む。
「誰か助けてええええええええ!!!!!」
岸くんは楽屋から逃亡を試みる。それを栗田が追い楽屋には静けさが戻った。高橋にできることと言えば岸くんができるだけ軽傷ですむよう祈ることだけだ。高橋は人知れず十字を切った。
「おやまたその罰あたりなおにぎりを食べてるのか?」
羽生田が楽屋に入るなり高橋のおにぎりを指差して眼を細めた。高橋が米の甘みと砂糖の甘みとの絶妙なハーモニーについて語ろうとするとまた楽屋のドアが開く。栗田が顔を歪ませながら戻ってきた。
「ちくしょー岸の奴逃げ足だけははえーんだよな。ガチリンピックで俺100M最下位だったし岸金メダルだったから逃げ足だけはかなわねー。くそっ」
栗田は楽屋の椅子を蹴った。それを見てやれやれと羽生田が肩をすくめる。
「まーた下らないやきもちか?いい加減少し大人になれ。第一中村の気持ちはちゃんと栗田に向いてるだろ?何をそんなにカリカリする必要がある?」
「んじゃよはにうだ、おめーが弁当の豚肉とかメロンとか食われたら笑って許せんのかよ?」栗田は反論する
「馬鹿を言うな。そんなもん八つ裂きにして未来永劫地獄の苦しみを味わわせるに決まっているじゃないか」羽生田は即答だった。眼がマジだ。
「だろ?それと一緒だっつーの!あーくそ!思いだしたらまた腹がたってきた!」
栗田は不貞腐れてごろ寝をした。苛々しながら絨毯をむしっている。
こんな風に恥ずかしがらずにやきもちがやけるのがうらやましくて高橋も最近はけっこう表に出しているつもりだ。
サマリーではがんばったと自分でも思う。やっているうちにどんどん暴走機関車トーマスになっていって唇先輩がヒクくらい狂態じみてしまって反省点がないといえば嘘になるがもうやってしまったもんはしょうがない。
当の岸くんが笑いで済ませたことが救いのようなそうでないような…
そんな高橋はふと思う。
「中村くんってさ…栗田くんみたいにやきもちやいたりしないの?」
「あ?」
栗田は起き上がる。羽生田も顎に手を当てて考える仕草をした。
「そういえばそういうの…見たことないな僕も」
「だよね?中村くんが栗田くんのこと大好きなのは皆周知の事実だけど…やきもちやいてるとこって見たことないよね?専ら栗田くんが嫉妬に狂ってるだけだし…」
高橋が羽生田とそう議論を始めようとすると「誰が狂ってるって?」と首をシメられかけて高橋は慌てて訂正せざるをえなくなった。
「しかし興味あるな。中村はトマトのことがなければいつも穏やかな甘えん坊さんだし、どんな風にやきもちやくのか見てみたくないか?栗田?」
羽生田がもちかけると栗田は腕を組んでう〜んと唸る。
「なんか良く分かんね。俺もれいあのそういうとこあんま見たことないしー」
鼻をほじる栗田を見てまあそりゃそうだろうな…と高橋と羽生田は思う。これに手を出そうとしたり誤解されるような行動をおこす奴もいないだろう。大抵は常識破りのアホっぷりにドン引きに引いて去って行くだろうし…。
だが悪ふざけBABYのスイッチが入ってしまったらしく羽生田はにやりと笑って、
「中村の気持ちの深さを確かめてみたくないか?やきもちをやくのではなくやかれるのもたまにはいいもんだ。その後で愛を確かめ合っていちゃいちゃモードにまた入ればいい」
「う〜ん。でもどうやんだ?」栗田は今一つ乗り気じゃない。
高橋は時計を見る。
「そろそろ中村くんも戻ってくる頃だよ?」
「よし。じゃあ…」
羽生田は栗田に耳打ちをした。そして10分後、中村が楽屋に戻ってくる。
「あれぇ?」
きょとん、と中村は目を見開いた。
「あ、中村…いやぁこりゃまいったな…」
「れいあお帰りー。あ、なんでもないしー」
羽生田と栗田は抱きあって慌てて離れる振りをする。まるであたかも今までいいムードだった、とでも言うように。
「何してんのぉ栗ちゃんとはにうだぁ?」
中村は問う。まだ表情は穏やかだ。高橋はさりげなく何気なく携帯を見てるフリをして観察した。
「いやなんでも…なあ栗田?」
「そうそう。なんでもないし。なあはにうだ?」
二人は意味ありげに目配せをする。怪しいことこの上なし。さあどうなる…
高橋が固唾を飲み、羽生田がどうだと身構え、栗田が空っぽの頭で中村の反応を待つ。そして…
「変なのぉ二人ともぉ。あ、この烏龍茶空っぽぉ?僕ジュース買ってくるぅ」
素っ気なく言って中村は背中を向けた。特に反応はなかった。肩すかしをくらって三人は浅い溜息をつく。
「なんだ、別に反応なしか。まあ僕とじゃなんにもないと判断されたのかもな」羽生田はつまらなさそうに頭を掻いた。
「中村くんは大人なだけじゃあ…」高橋はさすが恋愛教祖はブレないなあと感心しきりだ。
「そんだけ俺のこと好きってことだしー」栗田は単細胞万歳思考だ。
そうして若干しらけムードが漂い始めた時、高橋はそれを発見した。
「あれ…?この缶…」
高橋はそれを拾う。さっき砂糖おにぎりを食べた時に一緒に飲んでいた烏龍茶の缶だ。それがまるで紙クズのようにぺしゃんこにされて楽屋の入口に転がっていた。
アルミ缶ではなくスチール缶をこんなにできるのはブルドーザーぐらいのものだが…
「それさっき中村が触ってなかったか…?」
羽生田が真顔になって指摘する。そういえば…
「あり…?でもれいあの握力って20そこそこなんだけど…俺もそれぐらいしかねーけど…」
試しに羽生田がさっきまで飲んでいた杜仲茶のスチール缶に力をこめてみる。ぺしゃんこどころかへこみすらしない。
「…」
「…」
「…」
握力女子並みの中村がスチール缶を紙クズのようにぺしゃんこにした…
それはつまり…
ポクポクポク…チーン、と一休さんのとんちばりに三人の頭が弾きだす。
羽生田と栗田は顔を見合わせた。高橋も蒼ざめ始める。
「待ってええええええええええええええれいああああああああああああ冗談だよおおおおおおおお俺ははにうだとはなんにもないよおおおおおおおおおおおおお」
「待て待て待て中村!!!!ほんのちょっとした悪ふざけBABYHONEYだ!!!!!ジャストジョークだ!!スクラップだけはご勘弁だ!!君なら分かるだろおおおおおおおおおお!!!!!!!」
二人は音速ジェットばりのスピードで中村を追って行った。
「…」
楽屋に一人残った高橋は岸くんの他に栗田と羽生田の無事も祈らなくてはならず祈りのヘッドスピンをえんえん繰り返していたという。
END
裏7作者さんもいつもの作者さんも乙!乙!
ありがとう!
裏7…続きが気になる…!
やきもちれあたんきゃわあああああああああああ
みんなの無事を祈る颯くんもきゃわあああああああああああ
作者さん乙!
どっちのれあたんも可愛いいいいいいいい!!!!
裏7の少しずつ謎解きされてく感じがぞくぞくwwww
作者さん乙乙!!!
最近よく一緒に踊ってる松田元太きゅんの憧れの先輩は谷茶浜らしい
「谷村くんすごく優しいの。だから、谷村くんのアドバイスも参考にしながらがんばってるんだ!」
……誰か止めてやれよwww
作者さん達乙!
裏7は続きをはよ〜
はにー自分で悪ふざけBABYHONEY言うなしw
谷茶が松田くんにアドバイス…?w
松田くんが喋ってる所って最近のJJLやこないだの密着番組くらいでしか見たことないけど
すごく落ち着きのある常識人っぽくて神7の中に入ったら苦労しそうだなと思ったw
323 :
ユーは名無しネ:2012/10/10(水) 01:12:23.42 0
かわいそうに
これで不憫キャラまっしぐらだなw
あんなにキラキラしてるのに、ここのおかげで競馬新聞片手に演歌の玄さんでインプットされてるよ
変換間違えた。元さんだ。
>>324 自分もだw
まさか谷茶浜を尊敬するようになろうとはwww
元太きゅんが不憫の巻き添えだなんてそんなwww
JJLの谷茶浜のネガティブキャラ全開のときめちゃくちゃ笑ってたから本当に好きなんだろうな…
ついで拾ったJr.の谷茶浜へのリアクション集
http://imepic.jp/20121010/351410 「こわいこわいこわいよ」と連呼し怪訝な表情してたあらんがツボすぎるwww
リアルでの対峙をみたいw
ちょっと待て
岡ぴーの表情wwwwwwww
タニムランドってところが地味にすごいな
梶山もリバーダンスのときけっこう仲良さそうに見えた
ちょっと意外ww
>>327 あww
岡ぴーもwww
あらんと岡ぴーに生の谷茶浜の自我修復みせてリアクションみたいwww
梶山は同い年だからな…98年組ほんと老け顔揃いw
梶山とたにーはサマリーでも二人で笑いあってたよ
梶山の方からコンタクトとってたかな
谷茶浜…げんげんや梶山に構ってもらえるようになるとはよかったよ…
りんりんも谷茶浜のVTR観ながら優しく微笑んだりバカ受けしてたし相変わらず仲はいいのかな
岡ぴードン引きやんwwwww
岡ぴー顔色まで悪くなってないかwwwwwww
谷茶浜恐るべしwwwwwww
岡ぴは基本無表情じゃないの?
>>335 このJJLのときワイプにわりと映り込んでたけど谷茶浜以外は結構笑ってたのにまさか谷茶浜www
神7新婚さん劇場 〜岸優太&高橋颯編〜
午前6時30分。目覚まし時計が鳴る。
それよりも一時間早く起きて朝ご飯やらお弁当やらの支度をしていた高橋はいそいそと寝室に向かった。
「岸くん…起きて。会社に遅れちゃうよ」
「ん〜…あと10分だけ…」岸くんは蒲団の中で呻く
「そんなこと言って昨日も寝すぎて遅刻したじゃん。今日は遅刻できないって昨日言ってたでしょ。さ、起きて」
高橋は控えめに言って蒲団をはごうとしたが寝起きの悪い岸くんはついに暴言を吐き始めた。
「だからあと10分で起きるって言ってんじゃん!しつこい!いいから10分後に起こしに来て!!」
いつものことながら寝起きの悪い岸くんを起こすのには骨が折れる。しかしこれも新婚生活ならでは…と高橋は悦に浸る。浸っていると何やら香ばしい匂いが鼻をつついた。
「しまった!卵焼き火にかけっばなしだった!」
慌ててキッチンに戻ったが時すでに遅し。卵は消し炭になっていて無残な姿をさらしていた。
「あ〜あ…」
がっくりと肩を落とす。今日もまた、岸くんにはおにぎり弁当で我慢してもらわないといけない…。
それならそれでとびっきりおいしいおにぎりを作らなくては。高橋は気を取り直し、腕まくりをしておにぎりの調理に勤しんだ。
愛する人に口にしてもらうため…高橋は愛情こめ、精根こめて高橋SPおにぎりを作った。岸くんはよく食べるから大きいのを…なんて思っていたらサッカーボール大ぐらいになっていた。まあいいだろう。風呂敷か何かで包めば。
食べながら僕のことを思い出してくれるかな…なんてドリームに浸りかけていると岸くんの絶叫が寝室から聞こえてきた。彼は大慌てでキッチンに姿を現した。
「やばいやばいやばい!!また遅刻だ!!高橋なんで起こしてくんなかったの!?」
「え…僕はちゃんと起こしたよ。でも岸くんが『あと10分』って言うから…」
しかし高橋が時計を見ると10分どころか30分以上経っていた。
「ああああああまた鬼ヤクザ係長に怒鳴られる!東京湾に沈められる!始末書書かされるううううう!!!」
岸くんは涙目でネクタイをしめるのもままならず玄関で靴をはき始めた。
「あ。岸くん待って。お弁当!」高橋は風呂敷包みを渡そうとした。
「お弁当…?このサイズが…?」岸くんは怪訝な目で風呂敷包を眺める。
「そう。おにぎり作ったんだよ。高橋SPシュガーおにぎり!」
「ちょっと待って。満員電車にそんなでかい荷物持って乗れないよ!もうコンビニで弁当買うから!」
「ええ…でもせっかく作ったのに…」
「じゃあ帰ってきてから食べるから。あ、夕飯はオムライスと山いもの千切りでお願い!」
岸くんはそれだけ言うとダッシュで玄関を後にした。高橋はその後ろ姿を見守る。
「岸くんお仕事がんばって…とびっきりおいしいオムライス作るから…」
その直後、階段を踏み外して転げ落ちた岸くんの絶叫が団地中に轟いた。
END
神7新婚さん劇場 〜神宮寺勇太&羽生田挙武編〜
「僕は紅茶派だと何度言ったら分かるんだ?」
キッチンに入ってくるなりパジャマ姿の羽生田は目を細めた。神宮寺は目玉焼きを返しながら、
「うるせ。俺はカフェオレ派なんだよ。黙って飲め」
「断る。紅茶を。レモンティーで砂糖は二杯」
厳然と言い放つと羽生田は日本経済新聞を読み始めた。
「おいメシ中に新聞はやめろっていつも言ってんだろ」
「電車で座れれば僕だって電車で読む。でも朝のラッシュ時の山手線で座るなんて無理ゲーだ。だから今しかないんだ」
トーストをむしゃむしゃやりながら、羽生田は株価の動きに注意を払い始める。
「だいたいなんで俺が家事なんかやらされなきゃなんねえんだよ、共働きだろうが」
神宮寺は目玉焼きを盛りつけながらぼやいた。羽生田は目玉焼きにソースをかけながら返す。
「稼ぎの違いだよ。それに神宮寺の方が帰りが早いだろ。こっちは連日激務なんでね」
「おい目玉焼きには醤油だろうが常識ねーのかよ」
「そっちこそ醤油なんて常識を疑う。目玉焼きにはソースだ。これは譲れない」
「おめー食いもんの好みうるさすぎんだよ。昨日だって俺がせっかく買ってきてやったメロンにいちゃもんつけやがって。メロン好きなんじゃなかったのかよ!」神宮寺は怒りをあらわにしつつ、カフォオレに口をつけた。
「そっちこそ何度言ったら覚えてくれるんだ。スーパーで売ってるカットメロンは水分もなくてまずいから買うなら最低でも一個千円はする玉にしてくれ。それ以下は認めない」
「贅沢すぎんだろお前うちのエンゲル係数どえらいことになってんだぞ」
「その分稼いでるつもりだ」
羽生田は紅茶をすする。神宮寺は話題を変えることにした。
「それはそーとよ。昨日検索してたらこんなプレイが見つかってだな…」
「おいいい加減にしてくれよ毎晩じゃこっちも体がもたない。今度スカ○ロプレイを要求したら即、離婚だからな」
「いーじゃんよ!夫婦生活の充実は人生の充実だろ!食わず嫌いしてんじゃねーよ」
羽生田が食べ物に関して譲らないように神宮寺はエロに関して譲らない。双方言い合っているうちに羽生田の出社時間が迫った。
「とりあえず話は帰ってからだ…あ、今日の晩は豚しゃぶで頼む」
「おいネクタイ曲がってんぞ」
神宮寺は羽生田のネクタイをしめてあげた。そして玄関まで見送るとこう言った。
「外にあるゴミ袋出しとけよ」
END
神7新婚さん劇場 〜中村嶺亜&栗田恵編〜
「栗ちゃんごはんできたよぉ」
中村が呼ぶと栗田はオンラインゲームの手を止めてキッチンにやってきた。食卓の上にはパンとコーンスープとサラダが並べられている。もちろんサラダにトマトは入っていない。グリーンサラダだ。
「れいあ食べさせてー」
「はい。あーん」
中村と栗田の朝は早い。いちゃいちゃしているとあっという間に時間が経つからだ。時間が足りないのならば早く起きればいい。
どっちみち中村はお肌のために早寝をするから睡眠時間は二人とも9時間をキープしている。
「れいあー、今度裸エプロンプレイも良くね?」栗田が中村の身につけているエプロンをひっぱりながら言う。
「いいけどぉこれからちょっと寒くなってくるから風邪ひかないようにしないとぉ」
「それからー、○▲□の§★×でΩΘ¢を÷●〒してШ※$もしてーなー」
「もぉ栗ちゃんたらぁ」
中村は栗田の口の周りについた食べカスを優しく拭く。
「なーれいあー」栗田は急に真剣な表情になる。
「なぁに?栗ちゃん」
「そろそろ子ども作ろー」
「もう栗ちゃんたらぁ男の子同士じゃ赤ちゃんはできないよって昨日も言ったじゃん」
「でもよー、『成せば成る。成せねば成らぬ何事も』って諺もあるしよー。やってみればできんじゃね?」
「栗ちゃん難しい諺知ってるんだねぇ。でもぉ…生物学的にちょっと無理かなぁ」
しかしまんざらでもない中村に栗田は朝から1ラウンド要求した。時間を気にしつつプレイを終えるとちょうど栗田の出社時間だ。中村は栗田のネクタイを締めてあげる。
「栗ちゃん寄り道しないで早く帰ってきてねぇ」
「もちろんだし。残業なんか1分だってしねえし。定時で即アガリで帰ってくるかんな。れいあこそ怪しげなセールスマン家に入れちゃダメだよ!
あと隣の阿部が来ても中入れちゃダメだからね、下の吉澤も!萩谷が来たら居留守つかってよ絶対!」
「もう栗ちゃん心配症だねぇ」
「心配するし!あいつら油断も隙もねえ。れいあは俺だけのもんだかんな!」
「もう栗ちゃんやきもちやきだねぇ」
栗田がやきもちをやいてくれるのが嬉しくて、中村が甘えながらキスをすると栗田が再燃焼し始めた。
「あっ…栗ちゃんダメだよぉもう電車乗り遅れちゃうよぉ」
「だって我慢できねえし。遅刻してもギャハハハハハって笑ってごまかせばいいし!もう一回しよーれいあ」
「もう栗ちゃんえっちだねぇ」
そうしていちゃいちゃいちゃいちゃし続け、栗田は結局昼過ぎに出社した。
END
神7新婚さん劇場 〜中村嶺亜&谷村龍一編〜
「谷村起きなさいぃもう朝だよぉ」
中村に起こされて、半覚醒状態で谷村はふらふらと立ち上がる。が、まだ完全に目が覚めていない。
「そのゲームって通信できるの…?」
またわけのわからない寝言を壁に向かって呟いている。中村が呆れながら朝ごはんの支度をしているとようやく谷村はキッチンに現れた。が、まだ眠そうな顔である。
「谷村さっさと食べてぇ時間ないよぉ」
「いただきます」谷村は手を合わせた。
「残したらおしおきだからねぇ」
テーブルの上には朝ご飯とは思えない量の食べ物が並べられている。目玉焼き、卵焼き、焼き魚、野菜サラダetc…好き嫌いの多い谷村は目眩を覚える。
これを全部…谷村は食べる前から胸やけがした。が、残すともう作ってくれなくなる上におしおきが待っているから必死だ。
「もっとよく噛んで食べてぇ。体に悪いよぉ」
「はい…」
中村は小さな口でマイペースに食べている。彼は小食なのであとは全部自分がたいらげないといけない。毎朝必死だ。
ようやく8割がた食べ終えて終わりが見えてくる。ほっとするとそれまで朝のワイドショーを機嫌よく見ていた中村が冷たい声で言った。
「昨日Yシャツに口紅ついてたけどあれ何ぃ?」
「えっ…?」
身に覚えがない。あるわけがない。だがこの怒りようからして本当についていたのだろう。
「ま…満員電車でついたのかも…」
「浮気したら離婚だからねぇ。もう口きかないからねぇ。分かってるぅ?」中村は絶対零度を浴びせてくる。谷村は鳥肌が立つ。もちろん恐怖と快感の両方だ。
「も…もちろん…めっそうもない…」
「あと今度寝言で「トマト」って言ったらもう二度と一緒に寝ないから。トイレで寝てもらうからねぇ」
「はい…」
こんな調子で尻にひかれまくりで谷村には全く権限はなかった。
会社では自分よりアホの上司に毎度叱責とボディタッチをくらうし、俺の人生って…と谷村が振り返っていると出社時間が迫ってくる。支度をして玄関に向かった。
「谷村これ今日の買い物リスト。ちゃんと買ってきてねぇ」
「はい…」
メモにはびっちりとリストが記されている。銘柄やメーカー名までこと細かに指名されていて、一つでも間違ったらおしおきである。ある意味仕事よりハードだった。
「じゃ、行ってきます…」
ドアを開けようとすると、袖をひっぱられた。
「忘れ物ぉ」中村はじろりと谷村を睨みつけた。
「え?忘れ物って…」鞄やポケットをさぐってみたがちゃんと必要なものは揃っている。だが中村のこの様子では何か大事なものを忘れているということか。ちゃんと思い出さないとまたおしおきが…
谷村が焦っていると、中村は顔を近づけてきた。そして…
「行ってきますのキス忘れてるぅ」
と唇を重ねた後に頬をふくらませる。
「はい…すいませんでした…」
谷村は今日も一日がんばれる、と張り切って出社した。
だが駅に着くとJ○がお約束の人身事故で大幅に遅れ、結局遅刻をして上司に罵声とボディタッチを喰らったのだった。
END
作者さん乙!
じんぐ&あむのケンカっぷる萌えるぅぅ!
そしてれあたん可愛いいい!
れあたん かあいいぃ〜
ガンバレ谷無ぅ!
作者さん乙!
新婚シリーズいいね!
颯くんよかったね…!
岸くんは相変わらず寝起き悪くて不憫w
でも会社で「もう〜うちの奥さんたらサッカーボールみたいなおにぎり作るから持ってこられなかったんですよ〜」って幸せそうにぼやくんだろうな…
じんあむのケンカップルまさかの萌え!
日経似合うあむあむ
神宮寺なにを要求してやがるw
ケンカしながらもネクタイ直してあげるの萌ええええ
れあくり通常運転w
生物学なんて無視する栗ちゃんさすがっす
れあ谷ワロタwww
どんよりしながら言うこときく谷茶浜www
不憫だけど笑わせてくれるwww
よかった!
全部良いけど何気に一番萌えたのはじんあむ
この夫婦(?)もっと見たいわw
あと颯きゅんが幸せそうでホント良かったねえええええええええって言いたくなる
読んでて楽しかったおー!
夜バージョンも見たいおw
作者さん乙!
れあたんのいってきますのキスで頑張れる谷村ドMすぎさすがw
れあくり新婚宅はトラビスに囲まれてるのかwww
栗ちゃんおはぎさんの警戒のしかたハンパないwww
348 :
ユーは名無しネ:2012/10/12(金) 02:26:59.63 0
あむたんじんたん新鮮w
神7新婚さん劇場 〜倉本郁&井上瑞稀編〜
「くらもっちゃんまた俺の分のパン勝手に食ったでしょ!」
井上の悲鳴が轟く。朝ごはんの支度をしようと井上がキッチンに立ったがあるはずの食糧がほとんどなかった。その悲鳴を受けて倉本が欠伸をしながら起きてきた。
「なんだよみずき…朝っぱらから大声出すなよ…」
「大声も出すよ!俺のパン食ったでしょ!楽しみにとっといたのに!」
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃねーか」
「マリーアントワネット乙!…じゃなくてお菓子もないしパンもないし今からご飯炊いたら会社に間に合わないじゃん!どーすんの!」
「んじゃコンビニで適当に弁当でも買えばいいだろ。おっと、最後のバナナいただき」
倉本は全く反省の色なく食卓の上のバナナに手をつけ始めた。井上はそうはさせまいと素早くバナナをもぎとる。
「半分こだよ!これしかないんだから今日の朝ご飯」
井上はバナナをまな板の上に持っていき半分に切った。バナナ半分とはなんともわびしい朝食だ。
「みずき困るぞ。食料のストックは嫁の仕事だろ」
倉本が新聞を広げながらやれやれと肩をすくめる。井上はすかさず反論した。
「買っても買ってもかたっぱしからくらもっちゃんが食っちゃうじゃん!うちのエンゲル係数家賃より高いんだよどういうこと?」
「食べることは生きることだろ。誰かが言ってなかったか?俺達は育ちざかりなんだから食うのが仕事」
「だから食ってんのは専らくらもっちゃんじゃん。俺ちっとも食べてないし」
「お前はあんまでかくなんない方がいいんだよ。その方が可愛いし」
倉本は愛おしげに井上の頭を撫でたが井上は納得がいかない。
「だからって自分だけどんどん巨大化してどーすんの。同い年の林と体積二倍近くの差がでてきそうじゃん」
「みずき俺今日の夕メシ肉がいいな。おにく〜」
倉本は全く井上の話を聞いていなかった。井上が溜息をつきながらスーパーの安売りのチラシをチェックする。丁度鶏肉2割引セールの日だった。
その他に安売りしているものはないか大きな目を皿のようにしてチラシを見比べていると倉本が肩を叩いてくる。
「おいみずき、俺もう行くぞ」
「ああうん。行ってらっしゃい」
チラシから目を離さず素っ気なく返すと倉本はどしんどしんと地団太を踏み始めた。階下の住人に大迷惑である。
「おいこういう時はお約束の行ってらっしゃいのちゅーだろ!お前俺の嫁の自覚が足りないぞ!」
「お隣のれあくりじゃあるまいし、いちいちそんなことしないよ。あと今日燃えないゴミの日だからよろしく。あ、卵も安い…親子丼にしようかな。チキンライス入りオムライスでもいいなあ…」
井上はチラシに夢中になり、倉本は不貞腐れながらゴミ袋を抱えて出て行った。
END
神7新婚さん劇場 〜中村嶺亜&阿部顕嵐編〜
目覚まし時計の音に目を覚まし、顕嵐はのびをして目を瞬かせた。ようやく視界がはっきりしてくると横ですやすやと眠っている新妻…中村の寝顔をしばし堪能する。天使のような寝顔にうっとりと魅入った。
キッチンに向かい、紅茶を淹れる。トーストとスクランブルエッグの簡単な朝食を作っていると中村が目をこすりながらキッチンに姿を現した。
「おはよぉ…顕嵐…」
まだ少し眠たいようで、声が掠れていた。顕嵐は「おはよう、嶺亜くん」と返しながら中村の分の紅茶も淹れた。
「ご飯作ってくれたのぉ…ありがとぉ」中村はにっこり笑った
「簡単なものだけど…」
顕嵐は照れる。二人でもくもくと朝食を食べるこの一時が顕嵐にとっての最高の時間だ。ゆっくり流れる時の中に愛しい人と二人きり…これ以上の幸せはない。
「ねえ今度の休みどっかいかない?」
「うんいいよぉ。遊園地行きたいなぁ」
「いいよ。…あ、観覧車はナシね」
顕嵐は未だ高所恐怖症を克服できていなかった。絶叫マシンが上がって行くのは平気なのに…
「ダメだよぉ僕観覧車乗りたいぃ」中村は頬を膨らませた。顕嵐は困った。だが中村はふふっと笑って
「怖かったら手、繋いでてあげるからぁ」
と言ってくれた。顕嵐は幸せとトーストを噛みしめる。
食器を二人で洗いながら、顕嵐は今日の帰り時間を計算する。
「今日多分残業ないと思うから早く帰れるよ。帰りに何か買ってこようか?」
「うん待ってるぅ。じゃあホッケ買ってきてぇ」
午前8時。いつものように支度をして、玄関に立つ。忘れ物がないかチェックをしつつ顕嵐は中村に言った。
「じゃあ、行ってきます。あ、今日燃えないゴミの日だったよね」
「うん。外に出してあるぅ。お願いねぇ。行ってらっしゃいぃ」
行ってらっしゃいのキスをしてもらい、可愛い新妻に見送られ顕嵐はスキップで出社した。しかし会社に着くと恐るべき貧乏籤が彼を待っていた。
「…うそでしょ…」
何故か高層ビルの屋上現場視察に駆り出され高度120メートル恐怖のキョーちゃんSPが顕嵐を襲う。
怖くて仕方がないのに物真似の得意な同僚が横でさんざんギャグを言ってきて仕事にならなかった。当然、定時になっても仕事は終わるはずもない。
顕嵐がサービス残業に追われているその頃、中村は頬を膨らませながら冷めた晩ご飯を横にミュージックス○ーションを見ていた。
「顕嵐の嘘つきぃ…。早く帰るって言ったのにぃ。もう観覧車で手、繋いであげないからぁ」
END
れあらん
世界一紳士淑女な二人で幸せ〜 と思ってたら!
ミヤチカめ〜!?
新婚シリーズ なごむぅ〜!
作者さん乙ですーどの新婚さんも楽しそう〜
何気に倉本井上家の家計が心配だw
じぐあむ家はケンカしつつも仲よさそうで何より
れあたん重婚かwたにむ相手だと鬼嫁すぐるw
作者さん乙!
れあらん夫妻一番平和と思いきやwww
れあたんゲットしたぶん貧乏籤に拍車がかかり宮近には夫婦の時間を減らされるとwww
くらもっさん…あむあむ並みに稼がないとエンゲル係数がwww
354 :
ユーは名無しネ:2012/10/13(土) 12:52:03.30 0
このシリーズいいねもっといろんな組み合わせ見たい
仲のいいWゆうたに忍び寄るストーカーとかw
355 :
ユーは名無しネ:2012/10/13(土) 13:39:20.04 P
れあたん子育て上手そう!
栗ちゃん似の子だったりたにむぅ似の子だったりしっかり教育しそう!
あらん似だったら手がかからなそうだけど
人生には思わぬ落とし穴があるってことを教え込みそう!
357 :
ユーは名無しネ:2012/10/13(土) 23:10:01.39 0
今は男の細胞から卵細胞が作れるようになったから、男同士で子供が作れるらしいよ!
生物学をも超越する栗ちゃんの愛に涙
359 :
ユーは名無しネ:2012/10/14(日) 00:03:41.03 0
れいあは自分大好きだから子供にも容赦ないだろうな
れあたんは子供好きだろ
よかったね栗ちゃん…!
れあくりで愛の結晶作れるよ!
二人の子供は凄まじい美少年もしくは美少女だろうな
口調はれあたんだけど声質は栗ちゃんなれあくりJr.想像したら吹いた
双子でその反対バージョンもあるとなお面白そう
364 :
ユーは名無しネ:2012/10/14(日) 16:22:02.90 P
∧_∧
( ’ー‘・)')
∧_∧ ( つ /
(;б;エ;б;)っ ∧_∧ | (~~)
(つ; ; ; ; / c(´・ヮ・`) し'"´
| ; ;(⌒) ヽ と )
じ⌒ ('~) l
`J
高橋がスタジオに入ると、神宮寺がスマホ片手に何か見ていた。
その光景はもう百回近く目にしているので、高橋も今さら何とも思わない。
「…まーた、そんなの見てる…」と少し呆れたようにつぶやいて横を通り過ぎると、神宮寺が腕をつかんできた。
「なあ、颯。面白いの見つけちった。これ見てみ?」
「面白いって、どーせ回転寿司のレーンに裸の女の人が流れてくるとかそういうのでしょ?あんま興味ないし…」
神宮寺が目の前にスマホを押しつけてくるので、否が応でも視界に入る。
しかたなく視点を合わせると、やっぱりというか、いつものエロ動画である。
高橋はぼーっと薄目で見ていたが、ふとあることに気づき叫びそうになった。
「き…、きしく…ん!?ええええええ!!!??!!!何でこんなとこに!!??!」
高橋は思わずスマホを奪い取って、自ら画面に近づいてガン見した。
「な?びっくりしただろ。この人岸くんそっくりだよなー本人にも見せたんだけどよ、俺の生き別れの姉ちゃん!とか言ってたぜ」
「岸くんって生き別れの姉さんがいたんだ……知らなかった…」
「いねーだろ、マジに取んなよ。岸くんが金に困って女装して出たワケでもねーぞ?ちゃんとオパーイついてっし」
「岸くんってそんな金に困ってたの…?」
「だから、違ーうーって!岸くんわりと女顔っつーかオバチャン顔だからなあ…こういうこともあんだな」
神宮寺は高橋をびっくりさせたことで満足し、スマホを取り返して新たな動画を検索している。
けれども、そんなのを見せられた高橋のほうはたまったものではなかった。
ダンスレッスンが始まっても、さっきの動画の残像が目の前にちらついて、集中どころじゃない。
高橋は早くものどがカラカラだった。まだ15分くらいしか経ってないのに…
ダンスが原因ではない、大量の発汗とか火照りとか壊れ気味の心臓音とかに一気に襲われて気分が悪くなりかける。
鬼ヤクザの注意も聞こえてはいるけど、ただの音で内容がまったくわからない。
こんなの初めてだ……どうしよう。この状態でヘッドスピンなどしたら大惨事になりかねない。
胸のあたりから何かがこみ上げてきそうになり、高橋はあわててレッスンの列を抜けた。
高橋は廊下に出て、少し離れたところでしゃがみこむ。
胸のあたりをさすって深呼吸をくり返すと、謎の吐き気はなんとか収まった。
水を飲めば治るかもしれない、と思い自販機に向かうが、お金を持ってないことに気づく。
自販機の前の椅子に座り、頭を押さえてさっきの残像を消そうとした。
「ヤバイ…どうにかしないと……レッスンに戻れないよ」
ついでに言えば下半身にも影響が出ている。岸くんのお姉さん(?)はなんというか、ものすごい激しかった。
高橋は動画を見せてきた神宮寺を恨んだ。メロンパン10個積まれても許せない…
トイレに行こうと思い立ち、ふらふらと歩きはじめると後ろから声がした。
「おーい、颯ー、大丈夫か…?」
名前の通り優しい声で、本当に大好きだけど、今一番逢いたくない人だ。
高橋は振り向かずに廊下を歩く。声の主は軽いフットワークで先回りしてくる。
「何か顔色悪いじゃん。給食で悪いもんでも食った?」
高橋は反射的にレッスン着のすそを伸ばした。これがバレたら、もうここには居られない。
岸くんは心配そうに顔をのぞき込んでくる。その上目遣いなアングルがさっきの動画と重なり、またも体の変調をきたす高橋だった。
「…オエッ…」
「え、おい、マジで気分悪いの!?吐きそう?」
「う、うん…ていうか、ごめんちょっと…」高橋はダッシュでトイレに駆け込んだ。
個室に入って便器に顔を伏せた。幸いにも何回かえずいただけで何も出てこなかった。
それはいいけど今度は下がヤバい。どうしよう、と混乱中の高橋の耳に、扉をドンドン叩く音が響く。
「なー、食中毒とかかー?…背中さすってやろうか?」
「だ…大丈夫だから!」
さっき本人の顔を見たせいで、男の岸くんと女の岸くんが高橋の目の前を行ったり来たりしている。
もう、早く済ませてさっさとレッスンに戻りたい。岸くんや他のメンバーやJrたちや鬼ヤクザにも迷惑かけてしまう…
高橋は急いで下半身に手を伸ばした。
「…は…ぁ…」
「ん?何か言ったー?」岸くんはまだ扉の向こうにいるらしい。
「何でもないから…お願い、岸くんあっち行ってて……」
「…わかった。なんかあったら言えよ?」
岸くんがドアを開けて外に出て行く音がした。高橋はようやく安心しつつも、下半身の処理に追われた。
日頃健康を絵に描いたような自分がこんなことになってるから心配してくれてるんだろうけど。
だって、岸くんその大きな手で俺のこの状態どうにかして、って言ったらしてくれる?してくれないでしょ?
してくれたとしても、たぶん気まずくなって目を合わせられなくなって、それはそれで困るんだけど…
高橋はこの時初めて、ほんのちょっとだけ岸くんを憎んだ。
「…うぅ……ぎじぐんのバガー……グスッ…」
ひとりでに涙がじんわりとにじんできて、何滴か落ちた。八つ当たり以外の何物でもないのはわかっている。
高橋は個室から出て洗面台で顔を洗った。水をすくって飲むと、だいぶ気分が落ち着いてきた。
早くスタジオに戻らなきゃ、と気合いを入れるため顔をパンパン叩いていると、鏡に誰かの影が映った。
「え、誰…!?」と振り向く。それはなんと、一番端の個室から出て来た前歯先輩の姿だった。
「…けんと…くん……」高橋は呆然として、自分たちがバックを務め何かと世話になっている先輩を見た。
「ごめん。何か出づらくって…地とメールしてたんだけどさ…」
「…あの、もしかして、今のぜんぶ…」
「うん、まあね。颯がオエオエやってるところから、今までの全部」
「おねがいしますきしくんにはなにもいわないでええええええ」
「そんなの言わねーって。思春期にはよくあることだよ!気にすんなって!」
前歯先輩は前歯全開の明るいアイドルスマイルで、高橋の肩を励ますようにぽんぽん叩いた。
「違うんです。あの、元はといえば神宮寺くんが岸くんの生き別れのお姉さんの動画を見つけ出して…」
「へぇ。岸ってお姉さんいるのか。でも岸そっくりだったらべつに見たくないなぁ」
前歯先輩は相談があるんなら聞いてあげてもいいよ的なオーラを出している。
「何、ケンカでもしたの?シンメ同士のケンカは面倒くせーぞ。ステージに響くからな。夏のMCでやりすぎだって怒られちゃったとか?」
「いえ、岸くんは背は小さいけど器が大きいので、そういうのはないですけど…」
「ふーん、うちの風磨なら口聞いてくれなくなっちゃうかもな。年下と年上の違いかねー」
ラブホリ先輩の異名を持つだけあって、こういう話題にも乗ってくるところがさすがである。
「岸くんは器は大きいんだけど、底が抜けてるかもしれないんです。俺のアピールもすべて落っことしてるような…」
「そう。岸って普段どんなキャラなの?俺ら先輩の前とJrの前じゃやっぱ違うよな」
「汗かき、パグ犬、不憫、ドM、ダンスしゃかりき、人のものを勝手に食べる、とか…いっぱい素敵なキャラ持ってます」
「なんか1つを抜かしてどれもロクでもねーのばっかだな…」
前歯先輩は人さし指を口に当てて何か考えている様子だ。
「まあ、その気持わかるよ。颯のとは少し違うかもしれないけど。
Jrの頃、自分のうちわ見つけて嬉しいのはもちろんだけど、風磨のうちわにもついついファンサしてたしなぁ…
俺のシンメ応援してくれてありがとう。うちのシンメが素晴らしくてごめんなさいね!申し訳ない!って仲間意識が芽生えるっていうのかな」
「健人くん、よくわかってますね」
「その逆はないんだけどね…でもそれでいいんだ。あいつツンデレキャラだからな。前はあんなんじゃなかったのに…」
「へー…想像つかないなぁ」
「ま、自分のシンメが大好きなのは悪いことじゃないよ。お互い嫌い合って口も聞かないほうがいいとか
暴力沙汰が日常茶飯事なほうが萌えるっていうマニアなファンもいるかもしれないけど」
後者の例で何となく栗田と谷村を思い出す高橋だった。あれは一方的に谷村がやられているようだが。
「よかった。俺だけじゃなかったんですね…」こんな意外なところに理解者がいたとは…高橋は胸に手をあてて安心した。
「でも、どうして岩橋くんのアピには答えてあげないんですか?」
「だって俺にはふまたんがいるし。……よし、じゃあ一緒に叫ぼう!俺はシンメがだいすきーーーーーー!!!!セイ!!!」
「俺はシンメがだいすきーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
高橋と前歯先輩は腰に手を当てながらトイレの壁に向かって叫んだ。たまたま入ってきたJrが驚いている。
レッスンに戻る途中、廊下の窓を見ると、外はもうすっかり暗くなっていた。
さっきの前歯先輩の言葉には唇先輩と2人で歩んできた重みのようなものが感じられた。
岸くんと俺もいつかはそのスタートラインに立てる日が来るのかな…
前歯先輩を見習って岸くんへの想いをポエムにして冬コンのJr紹介かいつか出るかもしれない少クラのお手紙交換で発表しようかな。
いやそれなら俳句のほうが字数も少ないし…
高橋はそんなことを考えながら夜空の向こう側を見上げていた。
終わり
作者さん乙です!
岸颯神宮寺のハワイでの写真の岸くんが二人の母親みたいだったの思い出したw
あと颯くん心配する岸くんに萌えた
369 :
ユーは名無しネ:2012/10/15(月) 14:59:27.16 P
颯の下半身処理についてもう少し詳しく
不意打ちの前歯先輩ww
心配してくれる岸くんたまらん…
作者さん乙です!
ラブホリ先輩のうちのシンメが素晴らしくてごめんなさいね!申し訳ない!
に吹いたwwwww
ところでJJL#52のフリースローで誰かが「あらんらん」って言ってる件について←
岸くんの女装姿ではさすがに勃たんわ
優子にぶっかけたい
神7楽屋劇場 「不思議な玉」
いつもの楽屋、いつもの和やかな雰囲気。高橋はヘッドスピンの練習に余念がなく、神宮寺はスマホでエロ動画鑑賞、中村栗田はいちゃいちゃ、そんな日常風景にふと挿し込まれた一つの非日常…
「あいたっ!」
調子良く回っていた高橋は何かにぶつかって回転が止まる。楽屋に置いてあった古いダンボールだ。そこからビー玉大のガラス球体が4つ転がる。
「何これ。きれぇ…」
中村がガラス玉を手に取る。見る角度によって赤にも黄にも緑にも…七色にも見える。幻想的な色合いだ。
「ほんとだ綺麗だね。なんに使うんだろ。撮影かな」
高橋も一つ手に取りその不思議な光沢を眺めた。
「占いに使うアレみたいじゃね?ちょっとちいせーけど」
栗田もつまんで珍しそうに覗きこむ。その会話にそれまでスマホを見ていた神宮寺も興味をそそられて見に来る。
「ビー玉プレイとか面白そうだな」
4人がそうして球体を掌に乗せると、ぼんやりとそれは光り出す。その輝きは見る間に巨大になり4人を飲みこんでいった。
「あーつっかれたー!!お腹すいたー!!」
岸くんが勢い良く楽屋のドアを開けると、予想だにしない光景が目に飛び込んできた。
「え…?」
楽屋の中に、神宮寺、高橋、中村、栗田が倒れていた。寝ているわけではないのはその姿勢で分かる。岸くんは一瞬、時が止まる。
「え、ちょ…何これ…」
事態が飲みこめずおろおろとしていると倉本、羽生田、谷村も戻ってくる。彼らもまた岸くんと似たようなリアクションを示した。
「これは一体なにごとだ!?」羽生田の目はヘッドライトのように見開かれている。
「なんかやばくね?息してんのこいつら?」倉本もいつになく真剣な表情だ
「救急車…!」谷村が意外にも機転を利かせたその時である。
「う…」
呻き声とともに、4人の体が動き出す。緩慢な動きと共に次々にその身を起こし始めた。
「高橋!大丈夫か!?」岸くんが高橋に駆け寄る
「おい神宮寺、気は確かか?」羽生田は神宮寺の肩を揺さぶった
「これ何本?」倉本は栗田の目の前に人差し指を立てた
「あの…大丈夫…?」谷村は恐る恐る中村の顔を覗きこむ。
次の瞬間、岸くん、羽生田、倉本、谷村は目が点になった。
「君、誰?」
高橋は怪訝な表情で岸くんを見る。悪い冗談かと思ったがそんなことをするような子ではない。だから岸くんは真面目に答えた。
「誰って岸優太だよ。神7の。高橋寝ぼけてる?」
ちょっと笑って見せたが高橋の表情は変わらない。
「岸…?覚えがないな…神7って何…?」
「え、おいちょっと…」
岸くんが言葉を失っているとその横で羽生田もまた同じような反応に遭っていた。
「誰だお前?てかここどこ?俺…あれ、俺なんて名前だっけ…?」
「おい神宮寺しっかりしろよ。エロ動画の見すぎでおかしくなったのか?それとも記憶喪失プレイの動画でも見たのか?なんにせよくだらない冗談に…」
羽生田が肩をすくめると神宮寺はなんと汚物を見るような眼で羽生田を睨みだした。
「何言ってるんだよお前…エロ動画とか卑猥な冗談はよせよ」
「は?」
羽生田がなおも目を見開かせているその横には栗田のセリフにあんぱんを落としかける倉本がいた。
「なあ君…俺の名前分かる?なんか記憶がはっきりしないんだ。声も変だし…」
「気持ち悪いしゃべり方すんなよ!その声はもともとだしお前アホでナンボの栗田だろ!何を今更…」
「おい人に向かってアホはないだろう。…まあ小さい子にムキになるのは大人げないか」
倉本は絶句する。声はガスガス酒ヤケ声のまんまなのに話し方がとてもアホではなくむしろ堅実なサラリーマンみたいになっている。アテレコかと思えるほどだ。
そして谷村は頭の回線がぶっ飛んでいる最中だった。
「超かっこいい……」
うっとりと谷村に魅入る中村は、手を握りながら谷村を見つめる。
「…!!?」
あり得ない。蟻が象とフォークダンスするくらいあり得ない。
いつも斜め上から絶対零度を浴びせられたことしかないのに上目遣いのぶりっこモードで中村が谷村を見つめている。天地がひっくり返ってもあり得ない現象である。
「これってもしかして記憶喪失…?」
岸くんが呟くと、羽生田、倉本、谷村もその可能性を強く感じ始めた。
「4人揃ってか…?一体何が起こったんだ…?」
羽生田が息を飲む。倉本もあんぱんをかじるのを止めて頭を掻き毟った。
「高橋は岸のこと忘れちゃってるし神宮寺はエロのエの字もなくなっちゃってるし栗田はアホじゃなくなってるしれいあ君はたにーに一目惚れしちゃってるしどれもこれもアンビリーバブルすぎだろ!どうなってんだよ一体!」
「ちょ…あの…あああ…」
谷村は震え始めた。中村が抱きついてきたからである。耳まで真っ赤になっていた。
不思議な球体は高橋・神宮寺・中村・栗田を最も自身から遠い世界へといざなった。それに巻き込まれる岸くん・羽生田・倉本・谷村の今後やいかに…
Case1 谷村龍一・中村嶺亜
「と…ととととりあえずおおおお落ち着いてくらはい…」
二人きりになった楽屋で谷村は自分に言い聞かせながら中村の体をゆっくりと離す。これ以上密着していると回線がパンクしてしまう。まず自分が冷静さを取り戻すのが先だ。
だが中村はまるで夢見る乙女のように谷村ににっこり微笑んだ。
「ねえ…名前教えてぇ」
「あの…中村…」
「中村くんっていうのぉ?下の名前はぁ?」
「いや、中村って言うのは君の名前で…俺は谷村龍一…」
落ち着け落ち着け谷村龍一。中村は記憶を失っている。だから自分に対してこんな小羊のようないたいけな従順な瞳でふんわりモードで話しかけてくるのだ。記憶が戻ればすぐに冷たい上から目線が…
「龍一くんっていうのぉ名前もかっこいい〜」
感心したように呟いた後で、中村のマイルドソフトボイスがこう谷村の耳をくすぐった。
「龍一、って呼んでいい?」
「りゅ…!!!!!?」
「ねえ、龍一ぃ」
「んが…」
間抜けな音が喉から鳴る。人はあまりにも信じ難い事態に陥ると言葉を失うものかもしれない。谷村の頭のネジはもうすべてグラグラのユルユルだった。全身に力が入らない。
「僕は…あ、ねぇ僕の名前はぁ?それも覚えてないんだよねぇ龍一知ってるでしょぉ?教えてぇ」
「な…なかむられいあさんでふ…」
「なかむられいあ…なんか変わった名前ぇ…でもいいやぁ。じゃあ龍一もれいあって呼んでねぇ」
「れ…!!!!」
谷村の口はリンゴが5つは入るであろうくらい開かれた。橋本の江頭の物真似に気付いた時以上に。
その谷村の動揺をよそに中村は真っ直ぐにスキスキビーム、ラブラブオーラを全開に出してくる。ありえないことの連続で谷村の神経はほぼ限界に達していた。
駄目だ。もう無理だ。これ以上ここにいたら心臓麻痺で死んでしまう。生命の危険を察知し、谷村は頭と体を冷やすべく一旦退却しようと試みた。勿体ない気もするが死ぬよりマシだ。
「ちょ…ちょっとトイレに…」
「あ、待ってぇ一人にしないでぇ」
中村はすがってくる。ぎゅっと両の手で谷村の右手を握りしめた。そして小羊の瞳…
「色んなこと忘れちゃって不安だよぉ側にいてぇ」
「はひ…」
谷村はその場にへたり込んだ。もう死ぬしかないのかもしれない。そんな諦めの境地がやってくる。そしてどうせ死ぬならその前にせめて楽しい思い出を作った方がいいのかも…
「と、とりあえず弁当でも食べて落ち着きましぇんか…?」
まだ上手く呂律が回らないが、谷村は楽屋に用意された弁当を中村に手渡した。
そうだ、食べることは生きること。空腹だからなんだか精神的にも不安定になるんだ。食べるもんしっかり食べて毅然とした態度で臨まなくては…。
「あ、じゃあお茶淹れるぅ」
かいがいしく新妻のように中村は二人分のお茶を淹れ始める。中村が自分のためにお茶を淹れる日がくるなど想像したこともない谷村はまた精神が揺さぶられ始める。
「いただきまぁす」
手を合わせると、中村は上品な仕草で食べ始める。しかし弁当の中にとんでもないものを谷村は発見した。
トマトだ。
それもプチトマトではない。しっかりした大きさの8分の1大のものがごろんと乗っかっている。
谷村は知っている。ロケ弁や差し入れの弁当はまず栗田が中村より先に開ける。そしてトマトが入っていたら予めそれを避けて彼に手渡すのだ。いつも栗田が側にいたから谷村にはその習慣がない。大失敗だ。
「…?」
だがしかし中村は顔色一つ変えず、涼しい顔で弁当を食していた。そしてその箸がトマトを捕まえる。
「…!!」
中村はトマトを一口でいった。至って普通の表情で、普通に食している。これもまた、信じられない現象である。
「どうしたのぉ、龍一食べないのぉ?」
「あ…いや…」谷村は慌てて箸を動かした。
「ねぇ龍一このトマトちょうだいぃこっちのハンバーグあげるからぁ」
「う、うん…」
「龍一、優しいねぇ。かっこいいし優しいし多分僕記憶失う前も龍一のこと大好きだったんだろぉなぁ」
記憶を失う前のアナタはボクに対して一切甘えもぶりっこもしないしドS全開絶対零度の視線と女王様の鞭(デッサン)でおしおき三昧だったのですが…なんて言えるはずもない。
「龍一は僕のことどう思ってるぅ?」
期待を込めた瞳で問われ、谷村はしかし言葉に詰まった。
どう思ってる…かは自分でも良く分からないからだ。
おしおきは辛いし冷たい態度をとられるとそれなりに自我の修復も必要だし、だけど頭のどっかでは絶対零度を浴びたがっていたりもするしでも顔は可愛いし肌は柔らかそうだし抱きしめたら気持ち良さそうだしいい匂いしそうだし…
なんだかもうわけがわからない。谷村は自動音声のように口にした。
「す、好きでふ…」
「ほんとにぃ!?嬉しい!」
中村はぴょんぴょん飛びあがって喜びを露わにした後、真剣な眼差しを谷村に向けた。そして…
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
なんとそっと目を閉じ、所謂「キスして顔」を向けた。
谷村は岸くん以上の涙目になる。哀しいからではない。もう感情が付いていかなくてどうしていいか分からなくて混乱して興奮して…その昂りが涙腺を刺激しているのである。
頭の中は完全にオーバーヒートした。ぷしゅーと何か気体が漏れる音が聞こえる。もしかしたらそれは魂かもしれない。
論理的な思考は完全に彼方の方角に飛んでいった。中村は記憶を失っているからこんなことをするのは卑怯な気もするし栗田に知られたらそれこそ人生が終わるしでもその栗田も記憶喪失だし…
それら幾重にも折り重なる思考はしかし何の意味も成さなかった。気がつけば谷村は中村の両の肩に手を置き、彼の望むよう唇を重ねた。
柔らかい唇の感触に頭の奥が痺れ出した時…
「あれ?」
ドアの開閉音と数人の足音と気配、それを五感がキャッチし振り向くとそこには井上、橋本、羽場、林、金田の毎度お馴染みロクネンジャーがいた。みんなあんぐりと口を開けている。
「宇宙人と…」井上が大きな目を更に見開きこぼれんばかりの目玉焼きのようになる
「中村が…」橋本の声は掠れた
「ちゅー…」羽場の開いた口から涎が一筋伝う
「うっそ…」林は円らな瞳を精いっぱい見開いている
「これも地球侵略の一環…?」金田の顔は青ざめ始める。
ロクネンジャー達は目の前の信じ難い光景に皆ざわめき始める。彼らはまだ、中村が記憶を失っていることを知らない。
「おいこれ超やべーんじゃね?所謂一つの浮気、略奪愛、横恋慕、三角関係ってヤツ?」橋本が囁いた
「え、でもありえないよ。だって中村って栗田のこと超好きじゃん。いつでもどこでもヒクくらいラブラブじゃん。ところかまわずお戯れじゃん。それがなんでよりによって宇宙人?」井上は混乱の中にも冷静さを失わず分析する。
「てゆーか宇宙人って金田のこと追いかけてたんじゃないの?宇宙人のくせに二股?」羽場が金田を見やる。金田は蒼ざめたまま
「もしかしたらターゲットが中村に変わったのかも…」と呟く
「れいあ君が宇宙人に攫われるのは嫌だ…」いつも強気の林は涙目になった。可愛がってくれた思い出が走馬灯のようにかけめぐる。
「いずれにせよ栗田がこれ知ったら湾岸が焦土と化すぞ…」
橋本の呟きにロクネンジャー5人は唾を飲んだ。
これに焦ったのは谷村だ。と言っても谷村の視界には金田しかいないのだが。
「か、金田くん、違うんだこれは…」
誤解を解こうと近づくと金田はまたしても超音波を発した。
「うわ、まだ金田のことも狙ってるぞ!とりあえず退散!!」
ロクネンジャー達は蜘蛛の子を散らすように去って行った。楽屋に静けさが戻る。
「…どうしよう…」
金田くんに誤解されてしまった。いや誤解ではなく事実してしまってたのだから言い訳のしようが…だがしかし通常状態ではないしこれは致し方ない不可抗力であって…
谷村が頭の中で言い訳を並べていると、頬を膨らませた中村の顔がすぐ側にあった。
「金田くんって?」
「え?」
「あの中にいた金田くんって龍一の何?なんでその金田くんって子にだけ言い訳しようとしたのぉ?」
「え、いや、それは…」
どう説明したもんか焦っていると、中村はぴったりとくっついてくる。そして甘えるように呟く。
「ダメだよぉ。龍一は僕のだしぃ。誰にも渡さないもん…」
谷村はこの時、栗田を少しだけ尊敬した。普段ならこれは栗田の専売特許なのだろうが谷村は小一時間で心臓が悲鳴をあげている。それを「ギャハハハハハハハ!」で若干の照れ笑いというか当然だろみたいに振る舞っていられるその精神力たるや尋常ではない。
仮に…そう、岸くんあたりがこうされても今頃下半身がメルトダウンを起こしているだろう…。
谷村がそんなことをぼんやりと思っていると事態はさらに風雲急を告げる。
「え…!?」
中村は、谷村のズボンのベルトを外し始めた。咄嗟に谷村は中村の手を掴む。今、そこを探られると非常にまずい。
「な、何を…?」
「なんかよく分かんないけど…体が覚えちゃってるみたいぃ…こうしたら喜んでくれるんだろうなってぇ」
潤んだ瞳の中村は、谷村が全身に力が入らくなったこともありそのままベルトを外してズボンと下着をずらし始めた。谷村はもう泣きそうになった。
この後の展開はなんだろう…やっぱりこれは白昼夢で、また入院しておしおきされて徹夜続きでデッサンに明け暮れる日々が訪れるのか…?
ていうか最近家族にも美大を目指してると勘違いされがちなくらいスケッチブックが溜まってきているし画材屋の店員にも覚えられだした。もちろん半年前に買ったゲームのパッケージは未だ未開封である。
それとも記憶を取り戻した栗田登場でやっぱり半殺しで東京湾の魚の餌になるか外科病棟に入院…?いずれにせよ病院は避けられないということか…
「龍一、大好きぃ…」
いたいけな小羊の瞳ののち、信じられないくらいの妖艶な目つきで中村は谷村を見つめる。そして吐息混じりにこう囁いた。
「上のお口と下のお口、どっちに出したいぃ…?」
谷村は全面降伏をした。両手で白旗を上げる。
どうせ不憫2なら踊らにゃソンソン…じゃなくて一時の快楽に身を委ねて死んでいくのもまた人生…。なるようになれ。あとは野となれ山となれ。
谷村は目を閉じ、されるがままに身を委ねた。神宮寺ではないが、こう祈る。お父さんお母さんお姉ちゃん今日龍一は大人になります。
わずか13歳で失ってしまうなんてふしだらかと思われるでしょうが後悔はありません。多分優しくしてくれるはずです。ていうか俺がしなきゃなんないのか?えっと男同士ってどうやるんだっけ…あ、でも中村ってどっちでもできるんだっけ…
瞳の奥に何やら眩い光が満ちていた。これは悟りの境地か何かか…。
ブッダよろしく谷村が無我の境地にいるとしかしいつまでたっても待っているものが来ない。不思議に思い谷村は薄眼を開けた。
「え?」
中村は倒れていた。
「ちょ…中…れいあ!?れいあ!?」
名前を叫んで肩を揺さぶると、中村の眉間に薄い皺が寄る。やがて彼は薄眼を開けた。
「あれぇ…」
何回か目を瞬かせたあと、中村は首をゆっくり振りながら室内を見渡す。そして目の前の谷村を怪訝な表情で見る。
「谷村ぁ…どうしたのぉ?あれ、僕寝てたぁ?」
「え…?」
谷村呼びに戻っている。
そしてなんだか表情がいつもの中村に戻っている…気がする。これはもしかしてひょっとして記憶が突然戻ったという奴か…?
谷村が事態を整理しようとしていると、中村のポケットから何かが転がった。綺麗な色のビー玉だ。それを中村は不思議そうに眺めた。
「さっき栗ちゃんとぉ高橋と神宮寺とこのビー玉見てたはずなのにぃ。なんで谷村しかいないのぉ?」
「えっと…それは・・」
どう説明したものか。谷村が迷っていると中村は冷たい視線を向けて、
「なんで谷村お○んちん出してんのぉ?」
と訊いてくる。そこで谷村は慌ててそれを収めた。さらに絶対零度が降り注ぐ。
「なんか変なことしようとしてたぁ?絶対許さないからねぇそういうのぉ」
いつもの中村だ。
谷村は安堵をする、と同時になんだか勿体ない気持ちも湧いてくる。どうせだったらもう少し堪能しても良かったかなと。そう、一応やることはやった後で記憶を取り戻してもらったら…。
そんなことを考えていると中村はいつもの冷めた口調で谷村に言った。
「さっきまた移動間違えたでしょぉ本番でやったらおしおきだからねぇ。昨日の分のデッサンもまだ残ってるしぃ」
「あ、ハイ…」
だが何故か落ち着いている自分がいることに谷村は気付いた。ドMじゃないのに…決してドMなんかでは…にゃんにゃん甘えてくる中村よりやっぱ女王様で絶対零度振りおろしてほしいだなんて断じて思ってない…
「それにしても栗ちゃんどこ行っちゃったんだろぉ龍一知ってるぅ?」
「さあ…」
栗田は…栗田の記憶は戻ったのだろうか?今更ながらにそんな懸念がよぎる。栗田が自分のことを忘れてしまっていたら中村はショックだろう。話すべきか、様子を見るべきか…
「って、え?」
谷村は今更気が付いた。
今…
今、「龍一」って言わなかったか?
谷村がたった今の記憶を掘り起こそうとしていると、同じように驚いた顔の中村が視界に映る。口元を押さえて首を傾げている。どうやら、彼自身も何故谷村のことを「龍一」と呼んだのか分からないようだ。
さっきまでの記憶の混同?それとも潜在意識?単なる言い間違い?いずれにせよ「通常状態」の中村が谷村を「龍一」と呼んだことには違いない。
何故かその結論に行きつくと、谷村は顔が緩んでいく。おかしいわけじゃない、嬉しいのとも少し種類が違う。
だがしかし、胸は躍っていた。
「ちょっと…何笑ってんのぉ?」
中村は明らかに動揺していた。真っ白な頬がほんの少しだけ染まっている…気がする。
「違うよ、幼稚園の時にそういう名前の子が多分いて、なんか急に思い出しちゃっただけで、別に谷村のことじゃないからね!?笑うなよ!あ、もう信じらんない後でおしおきぃ!」
中村はいつもの乙女口調ではなく、焦った早口になっていた。困ったことにそれが余計に谷村の精神をくすぐった。
そうすると笑いが止まらなくなって、怒った中村に谷村は何かを投げ付けられ、彼は勢い良くドアを閉めて出て行った。
額にあたったそれはコロコロと楽屋の隅へと転がって行く。綺麗なビー玉が七色の光沢を放って静かに佇んでいた。
谷村はそれをそっとポケットの中にしまった。
NEXT→Case2
谷村とれあたんとか大好きです
笑うなよ!って照れるれあたんきゃわわ
にゃんにゃんれあたんきゃわいいいいいいいいいいいいいいいい
谷村うらやましすぎ
作者さんおつです
やっぱりたにむは根っからのMだったのか…
岸くんを忘れた颯くん、頭脳明晰な栗ちゃん、潔癖なじんぐじ…楽しみw
最近たにむが羨ましい…
不憫キャラは変わらないのに…
谷むぅビー玉ポケットに入れちゃった・・ってことは?!
Case2 神宮寺勇太・羽生田挙武
「ほれ。これが神宮寺、君のスマホだ。とくと見るがいい」
羽生田は神宮寺のスマホを彼に手渡した。怪訝な表情でそれを操作していた神宮寺の表情がひきつっていく。
「なんだこれは…!?」
口を押さえて嫌悪感を露わにし、神宮寺はスマホの電源を切った。そして吐き捨てるように叫ぶ。
「こんな…こんな下劣極まりない動画をこんなに沢山保存するなんてまともな人間のすることじゃねえよ!一体なんだってこんな…もしや精神病の一種じゃねえのか!?あり得ねえ!!」
「自分を卑下するのはそのへんにしとけよ。これが神宮寺勇太だ。君の全てはエロでできている。エロなくして神宮寺勇太を語るなかれってのが座右の銘だろう?」
少々面倒くさくなりながらも、羽生田は説明する。まあ記憶喪失というのもいい機転かもしれない。このまま品行方正な人間に育てば万万歳ではなかろうか。
「こんなもの…!!」
激昂した神宮寺はスマホを壁に投げつけた。羽生田はぎょっとする。
「おい、命より大事なスマホなんだろうそんな乱暴に扱っていいのか。また妖精が蘇らせてくれるとは限らないんだぞ」
「うるせえ!!こんな汚らわしいもん俺のじゃねえ!!えっと…お前なんつうんだっけ…お前が処分してくれ!!」
「羽生田挙武だ。武士のように手を挙げて堂々と意見が言えるようにとの願いがこめられたエリートでセレブでブルジョワジーな中学三年生だ。
好物はメロンと鴨せいろだから覚えておくように。それより、そのスマホは紛れもなく神宮寺のものなんだから僕がどうこうするのはちょっとな」
「くそっ…!!」
神宮寺はなおもいらつきながらスマホを操作し始める。
「何をする気だ?」
「とりあえずこの忌々しい動画の山を削除することから始める。これが俺のスマホだって誰に対しても胸張って言えるようにすんだよ!」
それはそれは…と羽生田は感心したが、待てよと考える。
「待てよ。君は今記憶を失っているからそれがゴミクズ以下に思えるけど記憶を失う前の神宮寺とっては我が子と同じくらい慈しみ大切にしているものなんだ。いくら本人でもそれを勝手に消すのはどうかと」
「るっせえ!!俺のなんだから俺がどうしようが勝手だろうが!!」
「落ちつけよ。とりあえず記憶を失った原因が何かを考えるのが先じゃないか?このまま記憶を失ったままだと今後のレッスンや収録にも多大な影響が生じるしな」
羽生田の冷静な説得に神宮寺は少し落ち着きを取り戻したようだった。
「…お前の言うことももっともだ。俺はなんも覚えちゃいねえ。自分が神宮寺勇太だってことも、そこいらにいるやたら顔のいい連中のことも…俺は一体なんなんだ?」
羽生田は時計を見る。まだ少し時間があるな…そう理解すると一つ一つ丁寧に説明を始めた。
だいたいを聞き終えた神宮寺はまた頭を抱えた。
「…恥ずかしすぎる…そんなチャラチャラした紙よりうすっぺらくて綿より軽いエロエロエッサイムが自分だったなんて絶望的すぎんだろ。なんだよ腰フリからのジャケットバサーって。自分のこととはいえタコ殴りにしてやりてえ…」
「そう言ってやるなよ。そんな神宮寺が好きだっていうファンの子も大勢いるんだから」
羽生田は何故か楽屋にあったアームチェアーに揺られながら答えた。
「で、俺とお前…はにうだがシンメで踊ってるって?」
「そうだ。この後もまだ収録が残っている…っておい!ちゃんと振り付けの記憶はあるんだろうな!!」
羽生田はアームチェアーから飛び降りた。肝心なことを忘れていた。振り付けまで忘れていたらシャレにならない。鬼ヤクザマジギレからの連帯責任からの全員東京湾の魚の餌だ。冗談じゃない。
「振り付け…?なんの…?」
神宮寺は全く覚えていないようだった。羽生田は全身から血の気が引いていく。
「おいこうしている場合じゃないぞ!せめて今日の分の振り付けくらいは思い出してもらわないと!こうしちゃいられない。レッスン開始だ!」
そうして小一時間ほど今日の分の振り付けを合わせてみたものの、神宮寺は全て忘れていてゼロからの出発だった。しかしというか、やはり二年間培ったものが根こそぎ奪われているというのは想像以上にゆゆしき状態で神宮寺は全く踊れなかった。
「…どうしよう…このままではみんなして不憫に…」
ていうか中村も高橋も栗田も記憶を失っているから神7は戦力半減だ。むしろ影響を考えるとそれ以上かもしれない。これはまずい。まずすぎる。しかし真実を話したところで鬼ヤクザが許してくれるかどうか…
羽生田が来る恐怖に慄いていると、神宮寺は大きな溜息をつき、力なく言った。
「もういいよ。ありがとう。お前らに迷惑かけるわけにいかねえからな。俺一人逃亡したってことで片付けといてくれ。いつの間にかいなくなってたとでも言ってくれ」
「そういう問題じゃない。そうすると今度は岸くんのリーダー(暫定)としての管理不行き届きになって岸くんが毎度お馴染みの不憫さんいらっしゃ〜いだ。岸くんに迷惑がかかるぞ」
「じゃあ…俺がその鬼ヤクザとやらに直接言う。『こんな馬鹿げたことやってられっか!』って。俺が沈められるだけで済むよな?」
「ほんとにそのバカさだけは記憶を失っても変わらないな!神7はな、一人欠けてもダメなんだ。8人揃ってなきゃ意味がないんだよ。
それこそ岸くんだけでなく僕ら全員に迷惑以上のものが降りかかってくる。だからそんな弱音を吐いているくらいならもう一度振りを合わせてなんとしてでも本番までに覚えてもらった方が僕としては有り難いんだよ!」
追い詰められていることもあり、つい語気が荒くなってしまい羽生田は反省した。記憶を失ったのは彼らの意志ではなく不慮の事故だ。なのにこんな風に責めるのはちと大人げない。
「…いや、すまん。焦っているのは神宮寺とて一緒なのにな。それに記憶を失ってもどかしいのは本人達だし」
呟くと、羽生田の肩に手が乗った。
「ありがとう。いい奴だなお前」
神宮寺とは思えない真剣な眼差しでそう言った。羽生田は神宮寺の真面目な表情を入所してから2〜3回くらいしか見ていない。だから一瞬戸惑った。記憶を失っているとはいえなんだか背中が痒くなる。
「俺のために振り付け教えてくれたり、記憶を失う前のこと教えてくれたり、スマホ壊そうとするの止めてくれたり…俺が記憶取り戻した時に傷つかないように考えてくれたり…」
「はい?」
「お前みたいな奴の側にずっといれた俺って幸せ者なんだな。記憶失う前の俺、お前のこと好きだったんだろうなきっと」
ちょっと待て。おいおいちょっと待て。
なんだこの展開は。ちょっと何言ってるのか分からないですけどもby若林だ。
しかし羽生田の混乱をよそに神宮寺は熱い視線を向けてくる。
「記憶を失う前の俺がどんな奴だったかなんて今はもうどうでもいい。なんか俺、お前とずっと一緒にいたいよ…」
「おいちょっと落ち着け神宮寺。いいから落ち着け。ていうかちょっと離れろ。目がイってるぞ!そうだ、お菓子でも食べて落ち着こう。糖分を摂れば落ち着きも戻ってくる!!」
羽生田は後ずさった。
「はにうだ…。俺の気持ち分かってくれるだろ?俺にはお前しか頼れる奴いないんだよ」
「そんなことはない!Wゆうたというのを覚えていないのか!?岸くんと君はJrが選ぶJr大賞でナイスコンビ第三位だ!僕なんかよりよっぽど強い信頼関係で結ばれている。
お揃いのアクセサリーや観劇やゆーたんゆーたんってオイ!来るな!いいから止まれ!フリーズ!」
しかし神宮寺はなおも燃える瞳で迫ってくる。羽生田は壁際に追いやられた。
「はにうだ…」
神宮寺は壁に手をついた。その顔が数センチの距離にまで近づく。なんか知らんが目が潤んでいる。いよいよもって危険な領域だ。
「だから待てと言っているだろうが!!じんあむとか誰得だ!?そんなジャンル求めてる奴がこの日本にどれくらいいる!?少なくとも僕は求めていないぞ!!断固拒否だ!!!!
作者だって「じんあむ…だと…?」って書こうとはしたものの2〜3時間PCの前に座ったけど結局頓挫したほどの難産っぷりだ!!れあむは一瞬で書きあげたのに、だ!新婚さん劇場が限界だ!!所詮は無理ゲーなんだ!
いいかよく聞け!!僕にだって相手を選ぶ権利はあるんだよ!!僕のビジョンは…」
しかし続きを訴えることはできなかった。
唇を塞がれた。神宮寺ご自慢の唇で。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
羽生田の全身は硬直した。
お口の童貞をこんな形で失ってしまったことの衝撃と怒りがこみあげる。だがしかしご自慢の唇はなんとも柔らかい…
しかし冗談じゃない。この僕が神宮寺のキスで気持ち良くなるなどとあってはならない。ていうかプライドが許さない。
だがなかなかにこいつは凄い。恐らく僕と一緒で経験はないはずなのに情熱だけでこんなとろけるような接吻ができるものなのか?いやとろけてなどいない。断じていないないないないない…
羽生田が気を遠くに飛ばしていると突然何かが光った。思わず目をきつく閉じた。
「…?」
神宮寺は倒れていた。
「…おい神宮寺、神宮寺?」
もしや自分の拒絶反応が無意識に急所でも蹴りあげてしまっていたのだろうか。それともそんな念能力でも手に入れたのだろうか。しばし怒りをしまいこんで羽生田は神宮寺の背中を叩いて名前を呼んだ。
「う…」
ややあって、神宮寺は呻き声を漏らしながら起き上がる。顔を歪ませて後ろ首のあたりを押さえていた。
「…」
首を振り、神宮寺は目を開ける。だがすぐに状況がつかめないらしく、訝しげな表情を見せた。
「あれ俺こんなとこで寝てたっけ…?今何時だ?はにうだおいみんなは?確か俺高橋と栗田と中村といたはずだけど…」
「神宮寺?記憶が戻った…のか…?」
羽生田はおそるおそる聞いた。
「あ?記憶?記憶ってなんのことだよ。お、まだ休憩時間あと10分はあるな。よしギリギリまで動画検索といくか!おいはにうだ、なんでもいいから検索ワード言ってみてくれ!探してみるからよ!」
羽生田は確信した。記憶は完全に戻っている。記憶喪失なんてどこへやらとルンルンでエロ動画検索堪能中だ。たった今まで羽生田にお目目うるうるで迫っていたことなど夢にも思わないだろう。
ましてやお互いのファーストキッスを済ましてしまったなどとは未来永劫に行きつくはずもない。一人だけ忘れてケロっとしてやがる。
安堵もあったがやはり腹の底からこみあげる怒り。猛烈な憤り。この僕のファーストキッスがこんなチャラエロ腰ふりジャケバサボンバーヘッドに奪われたなどと認めることができようか、いやできない(反語)
かくなる上はこの罪深き悪党に天誅を…
羽生田は息を吸い込み、叫んだ。そして「うおおシーメール萌えー!!」とか叫んでるにっくきヤツの頭めがけて飛びあがる。
「死ぬぇええええええええええええええ神宮寺ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」
羽生田は心ゆくまで神宮寺をボコボコにした。
NEXT→Case3
あむあむワロタwwwww
乙です!
自分にとってはじんあむ需要ありすぎるwwww
今月のM誌に神7あたりから誰も載らないんだな…ショック
じんあむ明るくて可愛い
作者さん乙です
じんあむ面白すぎる!
需要あるから難産でもたまによろしく〜
394 :
ユーは名無しネ:2012/10/17(水) 20:55:01.31 0
難産だけあって素晴らしい作品です
続き待ってます
作者さん乙!面白かった〜
神宮寺の以前の自己否定っぷりがw
じんあむ最近身長差が出てきてなんか萌えるぞw
後はふうきゅんと岸くんと栗田とおにくかあ〜
楽しみすぎて禿げそうw
Case3 栗田恵・倉本郁
「おい、いいのかよ、なんかれいあ君たにーに夢中だったぞ。よくそんな平気な顔してられんな!」
倉本が珍しく食べるのを中断してまで栗田に言ったがしかし栗田は全く意に介してない。
「れいあ君ってあの色の白い女の子みたいな子のことか…?男のくせにナヨナヨしてああいうタイプは好きじゃないな。あっちのたにー君?だっけ?も戸惑ってたじゃないか」
「おい正気かよお前、あんなにれいあーれいあー言ってたじゃねーかまじで記憶ブっ飛んじまってんのか!?」
栗田が中村を悪し様に言うなんて信じられない。他のJrがちょっとでも中村のことをカマくせえとかぶりっことか言っただけで全面戦争勃発させるくらいなのに…
「言葉遣いが悪いな…。まだ小学生なんだろ?今のうちに直しとかないと」
「…」
倉本は二の句が繋げない。栗田に言葉遣いで注意を受けるなどなんたる屈辱か。アホにアホと言われることほどハラワタが煮えくりかえるものはない。
しかし倉本の腹の底の怒りなどまるでおかまいなしに記憶喪失のアホは自分の鞄を探りながら顔をしかめた。
「なんだこれは…ゲームに携帯にわけのわからんおもちゃに…しかも全く整理されてない。これは本当に俺の鞄かよ?」
栗田は鞄から何かを取りだした。電動こけしみたいなものがスイッチイオンでウィーン…と音を立て振動した。
「こんなもん何に使うんだ一体…」
さらに栗田は一冊のミニアルバムのようなものをめくって絶句し始めた。
「なんだこりゃさっきの男女の写真ばっかじゃないか。しかもなんか卑猥なヤツまで…俺は一体記憶を失う前あの子と何をしてたんだ!?」
「何って…お前ら恋人同士だったじゃん。もう最後まで行ってるってJrの中じゃ周知の事実だし。やれナントカプレイだの公衆の面前でちゅーだのそりゃもういつでもどこでもやりまくりだったんだし」
倉本はアホらしくなって再び食事を再開した。忘れてんならちょうどいいや。こいつのアホ発言にいらつかされることもなくなるだろうと発想を切り替えた。
「バカなこと言ってんじゃねえ!!なんで俺が…悪い冗談はよせ!」
「冗談とかじゃねーし。でもまーいーんじゃね?れいあ君たにーに心変わりしたみたいだしお前記憶失ってなきゃそんなん生き地獄だろうからちょうどいいよ。これから東大目指せよー」
倉本が投げやりに言うと、栗田は頭を抱えてぶつぶついい始めた。それを無視して食事を続けていると楽屋のドアが開く。
「あ、くらもっちゃんあのさーポケットティッシュ持ってない?補充するの忘れちゃって」
井上が入ってくる。全く…頼れるのは俺しかいないってかしょうがねーなー…と倉本はうきうきで自分の鞄からありったけのポケットティッシュ3つを差し出した。
「サンキューくらもっちゃん」
「あ、おい待てよ。お礼のちゅーはなしかよ」
「は?何冗談言ってんの。俺ちょっと時間ないからまたあとでね。助かった〜」
井上はさっさと楽屋を出て行った。ちっ照れ屋さんめ…と倉本が思っていると栗田が冷めた口調でこう話しかけてきた。
「倉本…だったっけ?お前、さっき入ってきたあの子のこと好きなのか?」
「あ?なんだよ、それが何か?」
カールを頬張りながら訊ねると至って冷淡な返しが来る。
「俺と俺を取り巻く人たちがどんなものかと思ってそこの雑誌のバックナンバーずっと読んでたんだけど全く相手にされてないみたいだな。
早いとこ諦めた方がいいしちゃんと女の子を好きになった方がいいぜ。男同士なんて非生産的だし不毛だし何より親兄弟が哀しむ。お前、待望の男の子なんだろ?」
そこで倉本はキレた。
じんあむクソワロタwww
今までアホだけどこいつの中村への一途な思いというか、なりふり構わず独占欲を貫き通す姿にほんの少し尊敬とか見習いたいという気持ちがあった。
そして俺だってみずきのことそれぐらい想ってるしといういい意味での競争意識みたいなものを保ち続けてられてられたことへの無意識の感謝が全て弾け飛ぶ。
いくら記憶喪失とはいえあまりにもふがいない情けない…俺はこんな奴のことを尊敬しかけてたんだと思うと怒りが爆発する。
「てんっめえええええええええええ!!!!記憶喪失だがアホが一周回ったのか知らんがたいがいにせいやコラアアアアアアアアアアアアアア!!!
てめえこそ男相手に鼻の下も下半身も伸ばしまくって不純同性交遊やりまくりだったじゃねえかしかも兄弟構成も俺と一緒だろうがああああ!
だったらてめえこそ両親姉二人が揃って練炭自殺するレベルの親兄弟不幸者じゃねえか!!!!男の恋人のために嫉妬で一体何回岸やらたにーやら半殺しにしたか分かってんのか!!!!!」
叫びながら襲いかかると栗田はしかし応戦してきた。
「それは今までの俺だろ!!俺は生まれ変わったんだよ!このれいあとかいう奴のことはもう今なんとも思ってないしこんな写真も焼き捨てる!俺はまっとうな人生を歩む!ちゃんとした高校に入って勉学に励んで可愛い女の子のお嫁さんをもらうんだよ!!」
倉本が栗田ととっくみあいのケンカをしてるとバン!と楽屋のドアが開いた。
「栗ちゃん!聞いて谷村がねぇ」
中村が駆けこんできた。栗田の名前を呼んだってことは中村の方は記憶が回復したのか?と頭の回転の速い倉本は気付く。そこで援護射撃を要請した。
「れいあ君このアホにさっさとちゅーでもなんでもして記憶取り戻させて俺に土下座させてよ!このアホは俺の純情な恋心に土足で踏み込んでぐりぐりに踏んづけて泥だらけにしたんだうわああああああああん!!!!」
倉本の訴えを受けてかどうかは分からないが中村は栗田の顔をじっと見つめ、首を傾げる。
「なんかいつもの栗ちゃんと感じが少し違うぅ」
「だから記憶喪失だって!さっきまでれいあ君もそうだったんだよ!たにーのこと超かっこいいとか言ってスキスキ光線発してたんだってば!」
「よく分かんないけどぉ…栗ちゃん?」
中村は栗田の手を握る。だが栗田はそれをうっとおしそうに振り払った。
「気持ち悪いな。触らないでくれる?」
「…」
中村は顔面蒼白になる。元々白いがさらに色素が抜けていく。だがしかしそれでも彼はまた栗田の手を握り返した。
「栗ちゃん、本当に僕のこと忘れちゃったのぉ?どうしてぇ?」
「どうしてかなんて知る由もないけどこれでいいんだよ。そこの倉本もそうだけど男が男を好きなんて気持ち悪い。俺はお前みたいなタイプ一番嫌いなんだよ。俺のことは忘れろ。この写真もちゃんと処分するよ」
栗田は吐き捨てるように言ってミニアルバムを手に取った。
「ダメだよぉそれ二人の大切な思い出じゃん。スノプリの時からのもあるしぃ栗ちゃんこれだけは何が何でも守るってぇ…」
「俺にとっては忘れたい過去だ。こんな忌々しくて猥褻な写真残しておいたら俺の今後の人生が滅茶苦茶になる。あとで焼き捨てる!」
「うそぉ…」
中村は今にも泣き出しそうになっていた。自分が貶されたこともあり倉本は中村の援護射撃に回る。
「おいそんな言い方ねえだろ!てか記憶取り戻せばいいんだよ!漫画とかではもう一回ショックを与えりゃ思い出すって…バットかなんかでどつけばいいんじゃね?それに記憶云々ぬきにして思いっきりどつき回してえ!」
「栗ちゃんにそんなことできないよぉかおるぅ」
「でもやんなきゃ栗田がこのままだよ!れいあ君それでもいいのかよ!」
「それは…嫌だけどぉ…」
二人で進まない会話をしていると栗田が溜息をつきながら部屋を出て行こうとする。それを慌てて中村が止めた。
「待ってよぉ栗ちゃんどこ行くのぉ?」
「ここにいたら勉強できないしお前のいないとこに行くよ。悪いけど顔、見たくないんでね」
冷たく栗田が言い放った時である。
超音波が鳴り響いた。
それは金田のアレではなく中村から放たれたものだった。
高橋をもってして「電車の下をトンネルが通るぐらいの」と表現をされるそのトーンクラスターは鼓膜が破壊されてしまうほどの音量を持ち、そしてその凄まじい感情の爆発から放たれるエネルギーは核融合に匹敵したかもしれないと倉本は後になって思ったほどだった。
「栗ちゃんのばかああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
この世のものとは思えぬ断末魔が轟く。壁に亀裂が走った。
一時的に聴覚を始めとする他の五感までイカれた栗田は目を回してふらふらとよろめいた。そこを中村が無理矢理押し倒し、上に乗りながらドスのきいた声で呟く。
「言っても分かんねえならじゃあ体で思い出させてやる…」
中村は着ているシャツのボタンを外した。倉本は回る視界と共に生唾を飲みながら佇むことしかできなかった。
が、そこで異変が起きた。
「うわ!」
今度は視界が真っ白になる。目の前でストロボをたかれたみたいに強烈な虹彩が襲った。倉本がたまらず目を閉じると少しあって中村が元のれあたんボイスに戻って栗田の名を呼んでいた。
「栗ちゃん、栗ちゃん、しっかりしてぇ!」
「う…」
栗田は呻く。その栗田の側に何か光る球体が転がっていたのを倉本が発見した。
栗田は薄眼を開けると「れいあ…?」と呟いた。
「栗ちゃん!?僕のこと思い出したぁ!?」
「あり…?俺こんなとこで何してんの…?れいあどうしたのー?さっきまで二人でなんか変な玉見てたよなー…ってれいあ!?どしたの!?」
栗田はぎょっとする。倉本も同様の反応を示した。中村が泣いていたからである。
「れいあ!れいあ!どしたんだよ!なんかあったのかおい!なんで泣いてんだよおい倉本!どうしたってんだよれいあは!?」
「どうしたもこうしたもねえよ。お前が触るなだの二度と顔見せるなだの嫌いだの言ったんじゃねーか」
「はああ!!?おまえアホなこと言ってんじゃねえ俺がれいあにそんなこと言うわけないだろ!例えドラマのセリフでも言わねーよ!!ぜってーに!」
「そのぜってーに言わねえことを言ってのけたからこうして泣いてんだろ。まーでも回復するのがれいあ君の方が先で良かったなお前。でないと想像を絶する生き地獄が待ってたところだからな」
栗田には倉本が言っていることが分からず、とりあえずとび蹴りを一発くらわしておいた。
「うえぇ…うえぇ…」
中村は顔を覆いながら嗚咽している。栗田はというともう最大限にまで焦りが生じていた。アホの子みたく涙目でおろおろと中村の肩を揺さぶるしかできない。
「れいあ、れいあ、頼むから泣きやんでよー!俺どうしていいか分かんねえよー!」
「うえぇもう今日はさんざんだよぉ谷村にバカにされるしぃ栗ちゃんに嫌いだって言われるしぃもう最悪ぅ」
また楽屋のドアが開く。入ってきたのはこれまた毎度お馴染みトラビス・ジャパンの面々である。
「お!?これは一体何事だ?」軽い物真似を交えながら宮近が目を丸くした。
「れいあ君!?なんで泣いてるの!?」阿部は大きな目を更に見開かせる。
「泣いてても可愛いなぁ…じゃなくて俺のれあた…中村を泣かしたのはどこのどいつだ!?」吉澤は拳を鳴らした。
「あ、お相撲…じゃなかった倉本くんこれ一体どうしちゃったの?」海人がポッキーを食べながら呑気に訊ねる。
「おいおい男が泣くなんて情けねえな。ワイルドなこの俺を見習…」しかし梶山のセリフは阿部と吉澤の鉄拳によって遮られた。
「れいあ君、涙拭いて…」
阿部が紳士的にハンカチを差し出すと栗田が蹴りを入れた。
「てめー俺のれいあに触んな!」
「俺はただ泣いてるれいあ君を放っておけないだけで…」
「るせー!!れいあは俺んだ!てめーはそこのモノマネ職人とあらちかあらちかやってろ!」
その隙に今度は吉澤が中村の肩に手を回した。
「れあた…中村、落ち着いて。この俺の厚い胸板の中で思う存分泣いてもいいんだぞ…可愛いなぁ」
「白ゴリてめーもれいあに触んな!!類人猿は大人しくバナナでも食ってろ!そこの黒ゴリラと一緒に!」
栗田は梶山を指差した。梶山はゴリラの物真似をして応戦する。
「あ〜バナナ食べたくなってきちゃったあ〜」海人が腹を押さえる。
「そんなバナナ!」宮近のギャグはスルーされた。
「うえええん…うええええん…」中村はまだ泣き続けている。
「れいあ…」
栗田は嫉妬もどこへやら、焦る。焦りまくる。なんとなくだが中村が泣いている原因は自分にもあるかのような気がしてどうにもこうにも岸くんばりの滝汗と涙目が訪れる。
この世界中で中村を笑顔にできるのは自分だけ。なのに嬉し涙以外で泣かすなどもってのほか。栗田ジャスティスに最も反する愚行である。
そして追い詰められた栗田の記憶の糸はある一つのキーワードを拾い上げた。
「分かったれいあ!谷村だな!バカにされたって言ってたよな今!谷村が全てわりーんだ!!あんにゃろう東京湾の魚の餌にしてくるからもう泣くなよ!!な!!俺がカタキとってやる!!それで万事解決だ!」
栗田はそう結論付けた。そしてビー玉を握りしめて幸せ気分に浸っていた谷村が栗田の強烈ボディータッチによって再び地獄に叩き落とされたのは言うまでもない。
NEXT→Case4
たにむ不憫な子…
403 :
ユーは名無しネ:2012/10/18(木) 13:40:53.58 0
谷茶漬安定の不憫乙です。あとは岸颯か、楽しみ
『裏7U・4』
(別に、本気で岸くんとどうこうなれるとか、思っちゃいないけどさ)
こう何度も何度も無邪気に無自覚に、こっちの心の柔らかい所をぐちゃりと潰されるといくら好きな人とはいえ嫌になるというもの。(じゃぁ、嫌いになったらいいのにさ)
女の子に告白されたい?モテたい?可愛い彼女が欲しい?……じゃぁ、アイドルなんてやめちゃえば?なんて。
自分でもしまった、と思った。言い過ぎたと。でも吐き出した言葉が取り消せるはずもなく、……しかも当の岸くんは全く気にした様子なくそれもそうだなと笑い飛ばしている、なんて。
「颯は彼女とか、欲しくないの?」
「…………っ、…」
はぁ?とまた冷たく返しそうになった声を慌てて飲み込む。……なんだか今日はいつもの自分になれない気分。ごめん、電話なんて付け焼刃な嘘で岸くんの視線から逃れた。
_
「は・にゅ・う・だー」
「……どうした、また"岸くん"か、?」
「あは、そんなとこー?」
「別に無理して笑わなくていい」
羽生田は何も聞かない。自分はその羽生田の気持ちと優しさに甘えて、付け込んで、(いや、羽生田がいくらでも甘えてくれて構わないっていったんだけどさ)
「俺さー、ぶっちゃけちょー性格悪いよねー」
「……その喋り方、神宮寺みたいで馬鹿っぽいからやめておけ」
羽生田は確信的に、どろっとした汚い部分には触れてこない。自分も掻き回されたくはないし、聞いた割には答えはもう自分の心の中
、なーんてザラだからそのくらいが丁度いい。
「どうしたらいいのかな」
「だから、俺にしておけ」
「……ふは、」
羽生田は時々こういって反応に困る冗談……(いや、多分本気だけど冗談ってことにしておいて、)をいう。笑って誤魔化す、そんなそんなもう決まりきったベタな反応にはもう飽き飽きしていた、ところ。
じゃぁ、どうしろと?
「……岸くんはいつまで"岸くん"でいてくれるのかな」
「どういう意味だ?」
「だってもう高2も終わるんだよね、……森本龍太郎くん、松村北斗くん、田中樹くん、森田美勇人くん、七五三掛龍也くん、小林瑞生くん、吉澤閑也くん、そして岸くん。
岸くんと同い年の仲間はたーくさんいるのに、誰一人として進路がはっきり決まってるメンバーはいない。……じゃぁ、岸くんは?これからどうするの?」
「なるようになる、……じゃぁ納得できないか?」
「まぁ俺が心配することじゃないけどね。……正直他のメンバーがどうなろうとあんまり興味ないし」
「さっきね、岸くんに"ばいばい"って送ったの」
「、は」
「だって俺ばっか好きで、馬鹿みたいじゃない。俺は急に暴走して訳わかんなくなるだけの"颯"じゃないし岸くんはへたれでどうしようもないだけの"岸くん"じゃない。……だからなに?ふふ、羽生田にはわからないかな、」
ちぐはぐな言葉を並べれば並べるほど俺の心もちぐはぐになっていくようで、(じゃぁその縫い目を解くのは誰?)(縫い合わせてくれるのは、……誰?)
「まぁ、返信来ないんだけどね、ははは、…………あ、?」
一秒、(鳴り響く手の中の携帯)
二秒、(ディスプレイにうつる"岸くん")
三秒、(滑って上手くメール画面を開けない指先)
四秒、(軽い握力の中から圧倒的な力で奪い去る第三の手)
五秒、(絡み合う視線)
六秒、(何故か彼の手の内にある小さな箱)
「…………なんのつもり、」
やっと吐き出せた声は震えていた。
「颯のその"ばいばい"が自殺を意味しているのかこの事務所を辞めることを意味しているのか距離的に離れることを意味しているのかは知らない、けれど、……その直線状に僕との別れも含まれているのではないか?」
「っ、」
「だからこの携帯は預からせてもらう。……"岸くん"が大事なら明日もレッスンに来い、これは脅しでも脅迫でも恐喝でもない、…………惨めな懇願だ」
END
Case4 岸優太・高橋颯
「…でね、高橋はヘッドスピンが得意でそりゃもうしょっちゅう回ってて回るのが生きがいっていうかこんなに回るのは独楽か高橋か染之介染太郎かっていうぐらいで…」
岸くんが汗だくになりながら高橋の人となりを高橋本人に説明するが彼はピンとこないようだ。不思議そうに首を傾げている。
「そのヘッドスピンってどんなの?やってみてくれる?」
「え?いや、俺はそんなのできないし…てか高橋しかできないし…」
「どういう風にやるの?」
高橋に問われ、なんとも奇妙な気分で岸くんはヘッドスピンの説明をする。高橋は言われた通りにやってみようとするもすぐに崩れ落ちた。
「げほ…こんなの無理だよ、首の骨がイカれちゃう。人間技じゃないよこれで階段まで降りたって最早モンスターでしょ…」
首をさすりながら高橋は呟いた。本当に忘れてしまっているようだ。
「何か思い出せることない?ほら、家族のこととか学校の友達とか…」岸くんは切り口を変えた。
「それも全く…僕はどこに住んでてどういう家族がいたのかすらも…当然君達のことも分からないし…」
高橋は首を振る。高橋に「君達」と呼ばれることに何か凄い違和感を感じる岸くんだった。
「困ったな…他に中村も神宮寺も栗田も記憶失っちゃってるみたいだし、この後の収録が…」
そう、休憩後には収録が残っている。そしてその休憩ももうすぐ終わる。このままでは非常にまずい。
岸くんがいよいよ滝のような汗を流して心配をしていると楽屋のドアが開く。
「あ、こんなとこにいた。おい岸くんどーよ、高橋は?」
神宮寺に続き、神7達がぞろぞろと入ってくる。どうやら高橋以外は皆記憶が回復したようだ。
ただ、ひと悶着あったのか中村は目が少し腫れていたし、栗田はいつも以上に中村を気遣っていた。羽生田は何やら落ち込んでいて神宮寺はあちこち痛そうにさすっている。谷村に至っては満身創痍状態である。ケロっとしているのは倉本ただ一人だ。
「神宮寺達はもう大丈夫なのか?…あとは高橋だけか…」
「じゃあ高橋はまだ忘れたままか…」羽生田が呟く。
「つーかよ、俺ら楽屋で綺麗なビー玉見ててそっからの記憶ねーんだよ。何が原因か俺らも分かんねー」
栗田が両手を広げながら言う。そして時は無情にも過ぎていく。本番の時間になってしまった。
当然ながら振りどころか全てが抜け落ちてしまってる高橋はどうすることもできずおろおろと立っていることしかできなかった。
「ゴルア!!!!!高橋はなんで振りが入ってねえんだあ!!!おい岸い!!!」
「は…はひっ!?」
なんでまた俺…と慄きつつ岸くんは鬼ヤクザの前に行く。
「高橋はどうしちまったんだあ!!さっきのリハではちゃんとできてただろうがああああ!!!!!!」
だからなんで俺に訊くの…と岸くんは涙目になったが一応報告だけはしておく。
「それがですね…その…高橋さっき頭打っちゃってちょっと…その…記憶がですね…」
「ああ!?貴様がついていながらどういうことだあ!?深海に沈んでシーラカンスになりてえかあ!?」
シーラカンスになりたいのは俺じゃなくて中村です…などとは口が裂けても言えない。結局岸くんは無駄に不憫な怒られ方をし、本番は高橋抜きで収録され終了してしまった。
「…」
高橋は魂が抜けてしまったかのように立ち尽くしていた。
楽屋に戻って帰り支度をしなければならなかったが神7達は溜息をついて座り込む。
「どーするよ…明日も明後日も収録あるしリハもあるし…このまま高橋抜きじゃどうしようもねー…」
神宮寺が呟いた。
「何か思い出すきっかけがあれば…。岸くんがちゅーとかしてみるのはどうだろう?」
羽生田は岸くんがトイレで席を外している隙にそう投げかけた。
「お、それいいんじゃね?俺もれいあの絶叫で記憶回復したし」栗田が指を鳴らした。だがその横で中村が首を横に振る。
「それじゃ高橋が可哀想だよぉ。記憶取り戻した後、そんなことがあったなんて知ったらあの子ヘッドスピンで地球の裏側まで穴開けてもうそっからでてこなくなるよぉ」
「穴があったら入りたいの究極バージョンか…」羽生田がさもありなんと頷く。
「あの…やっぱ病院に行って診てもらうのが一番なんじゃ…俺も外科行くし一緒に連れて行ってもいいけど…」顔以外に無数の傷をつけた谷村が提案した。そこで岸くんが戻ってくる。高橋の側に行くと肩に手を置いた。
「気にすんなって。そのうち思い出すから。それまでは何も考えずいつも通り振る舞うのが一番だよ」
「でもなんだか皆に迷惑がかかってる気がするよ。あの怖いヤクザみたいな人も許してくれなさそうだし」
高橋はそう呟く。だが岸くんはドンマイドンマイと力づける。
記憶を失う前の高橋なら岸くんに元気づけられるともうそれだけでロッキーばりに気力に満ち溢れるのだろうが今の彼はそうではない。あんなに憧れていていつでもどこでも岸くん岸くんの「岸くんTO(トップオタ)」だったのにその影もない。
「そういう気休めはやめてくれる?僕は早く思い出して日常を取り戻したいんだ」
「いや…でも焦ってもしょうがないし…」
「そういう能天気な顔で言われると余計に焦るよ!人の気持ちに鈍感すぎるよ君は!」
これには神7一同ぎょっとする。高橋が岸くんに対して声を荒げるなど今世紀中には見ることがないだろうというくらいあり得ない出来事だ。だがしかし記憶回復組以外は今日はあり得ないことの連続だしその感覚が若干麻痺していた。
「ううむ…岸くんのことを全く慕っていない高橋か…ビックリマンシールのヘッドロココ三連発よりレアだな…」羽生田は唸る。
「岸颯ジャスティス悪夢の光景だなこれ」倉本がカトルカールケーキを頬張りながら呟く
「さっきの栗ちゃんと同じくらいあり得なぁい…」中村は絶句している。
「さっきの中村と…」谷村は何かを言いかけてうずくまりだした。
「やっぱちゅーしかないんじゃね?」栗田は腕を組む。
「でもよ、岸くんのことはともかく振り付けくらいは思い出してもらわないとまずすぎるぞ。ヘッドスピンは首痛めましたって言やあなんとかなんだろ。とりあえず振りの練習だ」
珍しく神宮寺がもっともな意見を出した。そして神7全員で高橋に振り指導をする。なんとも奇妙な感じである。
「…本当にこんなことやってたのか僕は…」
高橋は疲労感いっぱいの表情で呟く。ゼロからの出発で思うように進行はしなかった。徐々に疲労感が苛立ちに変わっていく。
「ごめん…ちょっと一人になりたい」
高橋は楽屋を出て行った。後には深いため息が残る。
岸くん以外の神7は疲弊しきっていた。中村は泣きすぎて頭が痛かったし栗田も中村を泣かした原因が自分にあることをなんとなく察して神経をすり減らしていたし羽生田はお口の童貞を失って精神的ダメージが大きすぎた。
神宮寺と谷村は体中が痛いし倉本はレッスンや収録の後は消費したカロリーを摂取するのに必死である。とてもではないが高橋をなんとかできる状態ではなかった。
「なんとかできるのはやはり岸くんしかいない、行け、岸くん!」
羽生田が背中を押したが岸くんはおよび腰だ。
「いや、でも俺どうしたらいいか…なんか高橋じゃないみたいだしどう接していいのか分かんないしさ…」
「そんなことないよぉ高橋を救えるのは岸だけぇ」中村が何故かすがるような眼を見せてくる。岸くんは若干その気になる。
「おめーアホだけど最年長だろ!高橋ともシンメだしおめーしかいねーよ!」何故か栗田まで岸くんを頼りにしている。岸くんはなんだかくすぐったい。
「Wゆうたの片割れとして岸くんに託す!」神宮寺は適当な気もしたが背中を叩かれ岸くんはまたやる気が出てくる。
「こういう時は岸くんしかいない。ていうか僕の方はもう神宮寺で沢山だ…」最後が少し聞きとれなかったが羽生田までもが岸くんに頼り始めた。
「岸頼んだぞー」倉本はスイートポテトを頬張りながら言ったので次の瞬間喉に詰まらせた。
「無理だったら俺が一緒に病院連れて行くから…」谷村の怪我の理由を岸くんは知らないがなんだか彼も岸くんに頼っている…気がする。
「よ…よし。なんとかしてくる!高橋がこのままだと困るしな。みんなの気持ちは分かった!!」
岸くんは立ち上がった。皆が岸くんに期待の目を向けて頼ってくるなんて年に一回あるかないかだ。なんだかガッツが出てくる。皆のために、高橋のために、岸くんは高橋を追った。
高橋は悩んだ時よく階段の踊り場にいることを岸くんは記憶していた。そしてそれは高橋の記憶が失われていても変わっていなかった。潜在意識の賜だろう。
「高橋!」
後ろから声をかけると高橋はゆっくり振り返る。だがすぐに背を向けた。
「待って高橋、俺達が焦りすぎた。もうちょっとゆっくり少しずつ色んなことを思い出してから…」
「もういいよ。僕には無理だよあんなこと」
高橋は投げやりだった。岸くんはなんだかいたたまれない気持ちになる。あんなにダンスに対してストイックでポジティブだった高橋が記憶を失ったとはいえその情熱の欠片も感じられないのはひどくもどかしい。
「何言ってんの。高橋は神7の中でブレイクダンス担当ってくらい凄かったんだぞ。カンを取り戻せばきっとすらすら踊れるようになるって。俺らもその手伝いをするからさ」
「だからもういいって。記憶を失う前がどんな人だったか知らないけど今の僕にはダンスなんて面白く思えないし、みんなの迷惑になってるってことも辛いよ。だからそっとしておいてほしい」
全く目に生気がなかった。これもまた、岸くんには違和感を覚えて仕方のないことだ。
高橋のあの奇怪な言動もちょっとKYな発言も意味不明なシャウトも指パッチンもそれら全てはその眼に宿る並々ならぬ輝きがあってこそ笑って許せてその後でほっとできるものなのだ。それは高橋だけに許された特権だ。
だが今の高橋にはそれら全てが削ぎ落されていた。
「高橋、ちょっと待てって」
岸くんは高橋の腕を掴む。が、高橋はそれを振りほどく。
「いいからほっといてってば。ダンスなんてやる気しないよ!僕には無理!無理無理無理無理カタツムリ!!」
「何言ってんの!?お前の目玉はどこにある?つのだせやりだせ目玉出せってカタツムリはどうでもいいんだよ!」
高橋が子どものように喚くと、岸くんもまた幼児がえりした。岸くんには論理的な説得はこのあたりが限界なのだった。
「やってみなけりゃわかんないじゃん!『諦めるな!』って松岡修造のモノマネしてたのも忘れたの!?」
「誰松岡修造って…。とにかくこんなことやってらんないよ!一人にしてよ!」
「ばか言うなよ!!高橋お前がダンス無理なんて例え記憶失っててもそんなセリフ俺聞きたくないよ!!俺は…俺はなあ…」
岸くんは興奮状態にあった。体中の血液が沸騰して発汗作用はいつもの倍増しになった。すでに額には玉のような汗が浮き出ていた。
「俺は奇妙奇天烈で訳わかんないことばっか言って理解不能な言動ばっかしていつでもどこでも回ってて時には白目剥いてマナーモードになる…そんな高橋が好きなんだよ!!今のお前は高橋じゃない!!高橋を返せよ!!」
ありったけの声でそう叫び、勢いに任せて岸くんは高橋の体を押した。
そこで時が止まった。
「あれ」
高橋は階段を降りる最中だった。そこを岸くんのバカ力で押されたためにバランスを崩した。そしてまっさかさまに階下に転げ落ちる。
「あああああああああああああああああしまったああああああああああああああああああああああああ!!」
岸くんが我に返って絶叫した時には高橋はもう階段の下でのびていた。
「なんだ今の声…あ、岸くんどうした!?」
神7達がどしどしと集まってくる。彼らは疲弊しきって岸くんに押し付けたものの心配になり様子を見に来たのである。そうしたら岸くんは絶叫していて高橋は階下でのびている。これは一体なに事だ…
「うわああああああああああ高橋いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
岸くんは物凄い勢いで階段を駆け降り、高橋を抱きあげる。が、彼は白目を剥いている。だがしかしマナーモードではなく電源を落としたみたいに微動だにしない。
「高橋!!!!高橋死ぬなああああああああ!!!!俺が悪かったもうダンスやれとか言わないから死なないで!!!死なないでったら死なないでええええええええええええ」
岸くんは涙と鼻水と汗でもう全身すごいことになっていた。その涙と汗と鼻水が気絶した高橋の顔にぽたぽたと降りかかる。一見して神7達はちょっと高橋が気の毒になった。
しかしそこで変化がおきる。
岸くんの何粒目かの涙が何かに当たった。
それは高橋のポケットから転がった綺麗なビー玉である。涙と玉の光が融合しそれはたちまち凄まじいフラッシュをたいた。全員たまらず目を閉じる。
「う…」
誰かの呻き声が聞こえた。
「岸くん…?」
か細い高橋の声が岸くんを呼ぶ。岸くんが目を開けるとそこには薄眼を開けた高橋がいた。
「岸くん…?みんなも…いたた、僕どうして…」
「高橋…?」
岸くんはわなわなと震えた。どういうわけか、涙が止まらない。
高橋が生きていたことへの安堵、記憶が回復したことへの歓喜、それらが螺旋状にからまっていって巨大な渦を作っていた。
「僕確か楽屋にいたはず…なんでこんなところで…って岸くん!?一体何が!?」
驚く高橋の顔を岸くんは涙で滲ませて見る。もう頭の中はぐしゃぐしゃだ。
「うわあああああああああああああだがばじいいいいいいいよがっだああああああああああああああああああ」
「え、き、岸くん!?」
訳が分からない高橋は岸くんが泣き濡れながら自分にしかと抱きついてくることで頭の回線がパン!と弾け飛ぶ。
「あああああああ岸くんそんな皆が見てるああああああでもあああああ岸くん力強い抱擁うううううういいいいあああああ!!!!!!!!!」
「うびぇえええええええええええええあぎゃぃあああああああああああ!!!!!!!!!」
高橋のマナーモードが抱きついている岸くんにも共振し二人してこの世のものとは思えない振動音を奏でていた。その光景たるやまさに21世紀の奇跡とも珍景とも言えよう。
「なんか…なんとも言えない光景だな…」神宮寺が唾を飲む
「一秒間に何回振動しているんだこれは。ギネスに載れるんじゃないか…?」羽生田はそのエネルギーの凄まじさに戦慄する。
「岸も高橋もなんか残像出てきたよぉ」中村は目を見開いている
「ビックリ人間に出れそうだなオイ」倉本はかりんとうをかじりながら感心している
「誰か記念に動画撮れよ」栗田は鼻をほじった
「やっぱり病院に…」谷村は痛む体をさすった。
神7達は若干引きながらそれを最後まで見守った。かくして全員の記憶は無事に回復した。そして神7達は楽屋に集まる。
「…で、みんなでこのビー玉を見ていたところまでしか記憶がないわけだな」
4つのビー玉を見据えながら神7達は腕を組んで唸る。
「そぉだよぉなんか気が付いたら谷村がいてぇおち○ちん出しててぇ」
中村の発言に谷村はまた栗田からボディタッチをくらう。順序立てて話す余裕は与えてもらえなかった。
「俺もよ、気付いたらはにうだがいてコイツ殴る蹴るの暴行を俺にしてきやがんだよ一体俺が何したってんだ」
神宮寺のぼやきに羽生田は「黙れ」と声を震わせていた。
「俺記憶失くしてれいあにひでーこといっぱい言っちゃったみてーでさぁ…」
珍しく栗田はしゅんとしている。その横で倉本がシブルケーキを口に入れながら沈痛な面持ちで頷く。
「で、僕はヘッドスピンもできなくなってダンスに対する情熱もなくなっちゃってて岸くんにも冷たかったってことか…」
溜息をついた後でしかし、高橋は首を捻った。
「でもなんかうすぼんやりと…とてつもなく嬉しいことを言われたような言われないような…そんなおぼろげな記憶がこのへんに滲んでるんだけど…気のせいかなあ…ああでも岸くんに抱擁ごにょごにょ…」
ビー玉は静かに光沢を放ち、囲む8人の顔を歪んで映し出していた。
「この玉が光ってみんなの記憶が元に戻った…と考えていいのかな」
岸くんは不思議そうに4つのビー玉を掌に乗せて見る。ビー玉はおとなしく虹色の穏やかな輝きをたたえていた。
「これのせいで4人がありえねー自分になったってことは俺達にもその可能性があるかもしんないってことかあ?」
倉本が言った。もしかしたらそうなのかもしれない。あまりに非科学的の非現実的な解釈ではあったが現に目にした後だと不思議な納得がいく。
「てことはぁ…はにうだが全然エリートじゃなくなってメロンも豚肉も鴨せいろも嫌いになってぇ激辛料理ばっか食べたりぃかおるが超小食でみずきのこと嫌いになっちゃったりぃ
谷村が振り間違いしなくなって超能天気な明るい子になったりぃ岸が不憫じゃなくなってぇ汗も一切かかなくなっちゃうかもってことぉ?」
中村の仮説に皆背筋に冷たいものを走らせる。見たいような怖いような…
「だ…だめだよそんな…汗をかかない岸くんなんて!」高橋がぶんぶんと首を振った
「激辛ばっか食べられたらこっちも胸やけするね」神宮寺がスマホをいじりながら言う
「俺がみずき嫌いになるとかありえねーけどあの栗田見た後じゃなんとも言えねー」倉本の表情は硬くなっていく
「谷村が振り間違いしなくなるのは大歓迎だけどよ、こいつにべらべらしゃべられるとなんか超うっとおしそうだから勘弁だなー」栗田はあぐらをかいて呟いた。
「こんなものない方がいいな…」
8人は満場一致でビー玉を再びダンボール箱に封印した。しかしそれはガムテープで蓋をしただけのお粗末なものだった。近い将来、もしかしたら封印は解かれてしまうかもしれない。
その時玉を手にするのは誰か…
END
いつもの作者さんも裏7の作者さんも乙乙乙乙乙乙乙!
ビー玉記憶喪失シリーズよかった!
谷茶浜も不憫だがあむあむが一番不憫www
ダンボールはきっとトラビスあたりが開けちゃってまた神7にひと騒動もたらすんだろうな…
裏7今までのなかで一番好きだ!
颯くんもあむあむも切なくて胸がキュッとなる…!
作者さんCase4まで乙!
くらもっさんケ-キ食い過ぎワロタw
たにれあプチエロもじんあむお口のヴァ-ジンも泣いてるれあたんも共鳴岸颯も何もかもすべて最高でした!
いつもの作者さん&裏7の作者さん乙です!
記憶喪失シリーズ面白かったです!
じんあむ、難産でしょうが、これからも書いてくれると嬉しいです。
裏7は毎回本当に大好きなシリーズです。
颯k、あむあむの気持ちに気づいていながら・・・切ない・・・
ダンボールはちび8あたりがかくれんぼやら遊んでいて
開けちゃいましたwとかでありそう
作者さんいつも素敵な作品乙です
段ボール、井上くんに開けてもらって、倉っちゃんにデレデレしてほしいな
金田kが谷茶のことをめちゃめちゃ慕うとか・・・?
金田くんとりんりんで谷茶浜争奪戦に発展とか…?
418 :
勘弁してよ〜いわはしいんき〜:2012/10/20(土) 10:55:40.38 0
明星?@Myojo_henshu
【MYOJO12月号】●Sexy Boyz ☆秋の夜長のパジャマ3変化パーティ♪
セクボ4人がエリートコースへ
きしふうまたまた載らず・・・
「岩橋と組まされてからきしふうは運気が落ちた」 byあつぽん
ぽんあつって関西はさっぱりだけど関東は当てるね
419 :
ユーは名無しネ:2012/10/20(土) 16:02:42.49 0
作者さん乙です!記憶喪失シリーズも面白い!
ビー玉の箱をちび8が開けちゃうシリーズも読みたい。
金田くんたにむぅの膝の上でドレミの歌うたってくれー
420 :
ユーは名無しネ:2012/10/20(土) 16:25:07.99 P
10/22(日)後10:00〜放送のジャニーズJr.ランドは、みなさんのご要望にお答えして、出演メンバー全員が「猫耳+制服姿」で登場!
岸優太くん&高橋颯くんのデート企画に、羽生田挙武くんの自宅公開ロケなど新コーナーも盛りだくさん!Travis Japanの楽屋にも潜入しちゃうかも!?
豪華メンバーによるスペシャルLIVEもお楽しみに☆
神7新婚さん劇場 〜高橋颯・羽生田挙武編〜
午後10時。激務を終えて帰宅した羽生田は玄関のドアを開けて鼻をひくつかせ顔を歪めた。
「…今日はなんのまじないをしてるんだ…?」
キッチンに入ると異臭はさらにひどくなる。高橋がエプロンをつけて腕まくりしながらはりきって料理をしていた。
「あ、おかえり。まじないって?今日はカレーライスだよはにうだ!」
カレーライスというものは人参玉ねぎじゃがいも牛肉を煮込んでカレールーを入れるだけの簡単お手軽料理のはずだ。羽生田も小学生の頃野外活動で作ってそれなりにおいしくできた覚えがある。
だが鍋でふつふつと煮られている液体はとてもカレーには見えなかった。なんだか黒ずんでいる。
「これを僕に食えと?10時間近く労働をしてきた僕に?」
「今日のは自信ある!隠し味にイカスミを入れてみたんだよ!あとマヨネーズも!」
「隠し味っていうのは隠されてるからこそだろう。メインになっちゃってるじゃないか」
なるほどこの黒ずみはイカスミか…と納得しながら口にしたがしかし次の瞬間羽生田はリバースをこらえられなくなった。激辛料理でもないのだが…
「あ、ちょっとはにうだ行儀悪いよ!もっと落ち着いて食べないからそんなことになるんだよ」
「げほ…なんだこれは、なんだこれは…!!!」
羽生田は涙混じりに叫ぶ。イカスミの味は全くしない。何かが焦げている。炭素の味しかしない。あとほんのりマヨネーズ。
「野菜炒めてたらちょっと焦がしちゃって…。勿体ないから入れたんだけど」
羽生田が最も不可解なのは高橋自身はこのグロテスクな物体を全く涼しい顔をして口に入れていることだ。フグが自分の毒で死なないのと同じ原理だろうか…。
「いい加減もっとまともなもの作ってもらえないだろうか。毎日こんなじゃ僕はきっと早死にしてしまう。あともう結婚してけっこう経つんだからこの部屋中の岸くんのポスターははずしてくれ」
羽生田・高橋家の新婚宅の部屋という部屋には岸くんの引き伸ばしポスターが貼られている。もちろん高橋の仕業だ。
「だって岸くんに見られてると家事がんばろうってファイトが湧いてくるんだもん」
「僕は落ち着かない。何をしていても汗だく涙目で見られてるような気がして非常に微妙な気分になるんだ。…特に夜は」
羽生田の直訴はしかし高橋の話題転換によってぽっきり折られた。
「はにうだまたYシャツに口紅が付いてたよ!あと香水の匂いもする。まさか…まさか浮気じゃ…」
高橋はマナーモードのように震え始めた。毎度のこととはいえ面倒くさい。羽生田は呆れながら返答した。
「口紅は山の手線の朝の地獄の通勤ラッシュでは回避できない。香水は取引先の商談の時に女社長がつけてた。浮気を疑う暇があったらもっと料理の勉強をしてくれ。ていうかレシピどおりに作ってくれ」
「そんなこと言ってごまかしてえええええええきいいいいいいいいいいいい」
激昂した高橋は食卓の上でヘッドスピンを始めた。もう羽生田は心が折れそうになる。ポスターの岸くんに向かってぼそっとこう呟いた。
「そこから出て来てこれを引き取ってもらえないだろうか…。僕は少々疲れた…」
END
神7新婚さん劇場 〜岸優太・中村嶺亜編〜
午後8時。岸くんが労働を終えて空腹に耐えながら玄関のドアを開ける。今日の晩ご飯はなんだろうとうきうきしながら足を踏み入れると…
「うわち!!」
すってんころりんと転んで尻もちをついた。玄関にはバナナの皮があった。こんなお約束のこけ方は逆にレアだ。
「いてて…またか…」
尻を擦りながら靴を脱いでリビングに向かうとまた滑る。フローリングの床がつるっつるになっていてまともに歩くことができない。這いつくばりながらリビングに入ると中村が笑っていた。
「お帰りぃ岸ぃ」
「…ただいま。…今日はまたえらく手がこんでるね。廊下が氷の上のようにつるつるで…」
「そうなのぉ一生懸命ワックス塗ったんだよぉ岸驚かせようと思ってぇ」
「あのさ、俺は仕事して帰ってきてるんだからイタズラはほどほどにしてくんない?」
「ご飯食べよぉお腹すいたでしょぉ」
小悪魔な笑みをたたえて中村は岸くんの訴えを無視して食卓に座る。だがしかしおいしそうなオムライスを目にすると岸くんはまあいいかと妥協し座った。
「いただきまーす!」
手を合わせてまずは水分補給、と水を口にした。
「ぶふぉ!!」
岸くんは吹いた。水がすっぱい。とんでもなくすっぱい。尋常じゃなくすっぱい。
「あぁもう岸お行儀わるいぃ」中村はくすくす笑ってる
「またお酢入れたね!今日は更に濃度が…」
「オムライス食べてぇ。岸の為に一生懸命作ったんだよぉ」
可愛い顔でシナを作られるとそれ以上なにも言えなくなってくる。岸くんはオムライスを口にする。
「がはあ!!」
口から火を吹きそうになる。そして激痛。痛い。口の中が痛い。むっちゃ痛い。ごっつう痛い。
「今日はケチャップじゃなくてこれで味付けしてみたよぉ」
中村はタバスコの瓶を掲げた。岸くんはむせるわ涙が出てくるわ発汗するわでもう凄いことになっていた。
「いい加減にして!俺は疲れて帰ってきてんだからせめて飯くらいはイタズラせずに食べさせてよ!」
「ごめんなさぁい。もうしないからぁ」
中村は舌を出す。この「ごめんなさい」は毎日の通過儀礼だった。岸くんはお酢の入っていない水を飲みながらやっと出てきたまともなオムライスを食べようやく落ち着く。落ち着いたところで本題に入った。
「今日ぐらいそろそろ…3日してないし…」
「やだぁ。岸すぐ汗びしょびしょになるんだもん。またお風呂入るのめんどくさいぃ」
「じゃあ、お風呂で…」
「それもやだぁ。お風呂狭いもん。ちゃんと入らないと疲れとれないもん」
「背中流してあげるから…」
「岸やらしぃ。僕お肌が荒れるから早く寝たい。てなわけで今日は早く寝ようねぇ」
軽くあしらわれて岸くんは今日もおあずけをくらって涙目でベッドに入ったのだった。
END
『もう1つのとらびすじゃぱん』
「"弟達が随分お世話になってますね、近々そちらにお邪魔しますのでその際はどうぞよろしく"……って、なんだこれ」
神7最年長である岸優太が楽屋に入ると普段楽屋にはない、色とりどりの花の鉢植えが目に入った。
誰から?っていうかなんのために?と首を傾げながら鉢植えに近づく。花の香りに包まれたその中に一枚のメッセージカード、ますます首を傾げて読み上げる。
弟達……、兄弟?神7に関わりある兄弟なんていたか?
「……どうかしたの?」
「っひ、…………なんだ谷内か」
「いや、谷内じゃな……まぁいい。それ誰から?」
「さぁ、宛名書いてないんだよな……」
「"お世話になってますね"……って、あれだな。"随分かわいがってくれてんじゃねーか。上等だコラ、弟達の分の借り返さしてもらうからな"って意味っぽくね?」
いつの間に来ていたのか楽屋にはメンバーが増えていた。その一人の神宮寺がメッセージカードを覗き込んで呟く。
「神宮寺はB級映画見すぎぃ。でも、いわれてみるとそんな気がしてきちゃった」
そういえば昨日神宮寺はヤクザ物のAVを見ていたような気がしないこともない。……B級映画とかちょっと違うが。
「だけど俺、恨みかわれるようなことしてねーべ?」
「それもそうだな」
栗田の反論に羽生田が頷くが、羽生田はともかく栗田。お前は結構ヤラかしてるだろ、という空気がちらほら流れる。が、隣に立つ嶺亜が恐ろしく実際に口にするメンバーはいない。
「っていうか、颯遅くない?」
「あ、俺さっきトイレの近くにいたの見たけど」
肉まんを頬張りながら口を開いた倉本に周りが、そういえば……と辺りを見渡す。
はい、と手をあげて発言した岩橋に注目が集まるがトイレだとしても遅い。岩橋は今から五分前には来ているのだ、女子でもないのにそんなにトイレに時間がかかるはずもないだろう。
「でも、トイレしにいった感じじゃなかったみたい」
「どういうことぉ?」
「だって一人じゃなかったし、あれは、」
誰と一緒だったの、と聞かれる前に岩橋が名前を口にしようとする、が、それは扉のバタンという激しい音に邪魔されて言葉にはならなかった。
「颯!?え、どうしたの!」
「落ち着け、岸。……颯、どうかしたのか」
「……やられた、…………」
扉から現れたのは颯の姿。特に外傷もないが何故か酷く疲労している、それに慌てて岸と羽生田が駆け寄った。
「誰に、「はいはいはい!!!神7の皆さんこんにちはー!」」
突如楽屋に響きわたる声。
え、誰?
メンバーの頭の中には何故かアクロバティックボーイズクラブの某金髪さんの顔が浮かぶ。彼のテンションはその某先輩と酷似していた。
「お前らなぁ、TravisJapanTravisJapanいってるけど大事なもん忘れてねーか?」
凄みながら言い放ったのは高身長の茶髪イケメン、髪の毛の面積が少々広いが。
「TravisJapanはぁ、」「はい、せーの」
「「「「9人グループですっ!!!」」」」
「え、そうだったっけ……?」
「おい、そこ聞こえてんぞ」
岸の呟きに反応したのはしっかりしてそうに見えて何処かぼんやりした印象を受ける少年。
「じゃぁ、とりあえず自己紹介ね!はい、俺から!特技はアクロバティック、塚田くんは誰にも譲りません。川島如恵留です!!」
「の、のえる……」
「高2にして入所8年目、髪の毛の量は愛の量。森田美勇人」
「みゅ、みゅーと……」
「とらびすの可愛い担当、あらんにももちろん嶺亜にも!負けるつもりありません。七五三掛龍也でーす☆」
「し、しめかけ……」
「俺といえばわかめ、わかめといえば俺。一応とらびす最年長、敬ってね!仲田拡輝でっす」
「あ、最後は普通だった」
「ってかさ、仲田くんって確か学業専念の為にちょっとだけお休み貰ってるんじゃなかったっけ」
「だよね、……なんでここにいんのかな」
Wゆうたが名前につっこみ、栗田と岩橋がこそこそ言い合う中でトラビスの四人がズカズカと部屋に入ってくる。
「で、何の用なんですか」
「よく聞いてくれたね、くらもっちゃん!……いや、正直俺は来たくなかったんだけどさ、」
「おい、のえる」
「怒んないでよ、みゅーと。うっとうしい」
テンションだけは無駄に高い川島が森田に凄まれ、しかし笑顔で毒を吐き返す辺り彼も一筋縄ではいかないようだ。
谷村はどうぞ絡まれませんように、と楽屋の隅で縮こまっている。羽生田はそれに呆れた視線を送ったが谷村が立ち上がる様子はなさそうである。
「じゃぁさ、みゅーとが説明しなよ」
「あー。ヒロキ、めんどさいって思ったでしょぉ」
「あ、バレた?」
ふひひ、と笑うわかめ……じゃない仲田と無駄に可愛い子ぶる七五三掛。可愛い担当というのは伊達ではない。
「お前らさぁ、よくもうちの可愛い可愛い可愛いいいいいいい弟達をなー、」
「……お、あ、なに、怒られる感じ、?」
「ちょっと岸ぃ、美勇人くんと同い年なんでしょ。なんとかしてよぉ」
「え、いや同い年だっていってもかなり先輩だし……」
「はいはーい!俺もみゅーとくんと岸と同い年!!」
パニくりかける谷村とそれを見て岸をけしかけようとする嶺亜。そんな中大声で七五三掛が発言し、どんどん空気をぶっこわしはじめるメンバーを森田がじろりと睨む。
「あー、……はいはい続きどうぞ」
「あのなー、お前達はなー、……………………俺の命より大事な弟達をよくも、あああああああ、あらんちゃんと宮近ちゃん待っててねお兄たん頑張るからねええええええええ、
梶山だってああ見えて中2で可愛い盛りで反抗期すら愛しくて、中村はそっちの中村に負けてないくらい可愛くて、でもぐもぐしてる姿がとんでもなくきゅーとで、ああああああらんちゃんんんんん!!!!!!」
(おまわりさんここです、目の前に変態がいます。)
あんなにクールでダンスも上手くて尊敬できる先輩の一人である森田が、神7は開いた口が塞がらない様子で森田の様子をまじまじと見つめる。他のとらびすのメンバーは慣れた様子で多少苦笑いしながら傍観している。
「あの、一ついいッスか」
「なぁに、神宮寺くん」
沈黙が訪れた楽屋内でおずおずと口を開いた神宮寺にきゅぴるんと首を傾げながら七五三掛が答える。神宮寺は思わずムラッとしそうになったが慌てて押さえて続ける。
「閑也はショタコン……じゃなかった、その、えっと対象じゃないんですか」
「はん?……いや、仲間としては大事だけどさ。閑也、同い年だし。寧ろ同い年なんだからそのポジション変われやああああああ、あああああらちかあああああ!!」
そうだ、岸と閑也が同い年で岸と森田が同い年なのだからもちろん閑也と森田も同い年ということになる。メンバーはその三人……七五三掛もいれて四人が同い年だということに酷く違和感を覚えたがこの事務所ではよくあることだ。
「そうだ、俺は嶺亜と勝負するためにここにきたの!」
「……僕と勝負、ですかぁ?」
「そう!俺、"可愛いキャラは譲れません!"ってファンと弟組の前で公言したからぁ。弟ができたって可愛いキャラは俺のまんまだよ!」
「あ、でも俺女の子にしか出来ない女の子座り出来るよ。女子力高いっしょ!」
「もう、のえるは黙ってて!……安井くんにも勝負挑んだんだけどね、"あぁうん、可愛い可愛い負けた負けた"っていわれたし」
それめんどくさがられてるだけなんじゃ……と嶺亜は思ったが大人の風格で実際に言葉にはしなかった。
「あっれ、颯まだ起きないの」
「……なにやったんですか」
暴走しはじめた森田とわちゃわちゃしはじめた七五三掛川島をよそに一人楽屋付近に出てきた仲田が颯を見下ろして彼の頬をつんつんとつつく。同じく避難していた谷村がおそるおそる問いかけるとにぃっと口角をあげる。
「ワカメ食べさせたの」
「わかめってあのわかめ?……え、あ……颯起きた」
岩橋も同じく避難してきて颯の顔を覗き込む、一瞬起きたようだが『わかめ……』とぽつり呟きまた気を失ってしまった。
「いやいや、騒がしすぎでしょ……」
倉本が離れたところからぽつり呟いたがそれすらも喧騒に掻き消される。
\TravisJapan弟組はもちろん兄組もどうぞよろしく!/
END
作者さんたちおっつおつ!
あむふうwwwww
部屋中に岸くん特大ポスターはまずかろうwww
夜の夫婦生活も見守られちゃうあむあむご愁傷様ですwww
れあたんったらいたずらっこだなまったくもうwwwww
いろんな新婚生活をありがとう!
トラビス兄組キターwwwwwww
何しにきたと思ったらわかめ食べさせただけやないかいwww
みゅーとなんてお兄たん頑張るといいながらあらちかで高まりすぎてショタコン絶叫しただけじゃねーかwwwww
盛大に笑ったありがとう!
作者さんたち沢山乙です!
そうだそうだ忘れてたけどトラビスは9人だったwwww
みゅーと兄さんナイスキャラですwww
またあらちかみたいなぁ・・・
作者さんたち乙です!
トラビス兄組の作品と安井くんの作品は同じ作者さん?
こことスノまでの間の年齢のジュニアくん名前は知っているけど
イマイチキャラがわからないので興味深く読ませてもらいました
乙です!
ワカメwwヒロキwww
作者さんたち乙です
いつもの作者さん、岸颯デート実現したとこ書いてくれないかなぁ。今日の記念に
岸颯デートの裏でひそかに神玄デートもあったみたいで萌えきゅん
作者さんたち乙です
2つの新婚、もはや罰ゲームかw
みゅうみゅうはあの外見で弟組にお兄ちゃんと呼ばせてるんだっけw
兄組もかわいいね
433 :
ユーは名無しネ:2012/10/22(月) 18:21:20.62 P
おでかけ!神7〜YUTA KISHI & FU TAKAHASHI〜
目が覚めると新聞配達のバイクの音が外から聞こえてきた。時計を見る。5時12分。目覚ましは7時に合わせてあったからまだ二時間もある。二度寝ができそうだったが眠気は全くなかった。
高橋は起き上がり、伸びをした。それからリビングに向かう。当然ながら家族は誰も起きておらず家中がシーンとしている。なんとなく音をたてないように気を遣いながらパンと牛乳の朝食を済ませた。だが味が分からない。
「…ききき緊張してきた…」
思わずどもりながら呟く。
今日は待ちに待った岸くんとのデート…じゃなくてお出かけだ。この日をどんなに心待ちにしたか…苦節5カ月とちょっと。ここにようやく実現した。
岸くんの誕生日前日に勇気を出して「二人きりで」と誘ったまでは良かった。だがまた延びに延びて今日に至る。今度こそ頼むぞ神様…けっして作者が他にかまけて忘れていたわけではないのだ。ちゃんと書く気はあった。それだけは分かってほしい。
中村の「好きな人と一緒にいられるんならどこにいても幸せ」という訓示に従い、全くのノープランでこの日に挑むことにした。しかしながら今更ながらに緊張してきた次第である。
待ち合わせは9時に渋谷だ。店が開くまでに時間があるがその間に色々話をしながら…と思い描いている。岸くんは岸くんでメールに「分かった。んじゃねー」と絵文字つきで返してきたからあまりどこに行きたいとかもないのかもしれない。
深呼吸をしてラジオ体操をし、気を紛らわせる。それでも緊張はほぐれなくて、とりあえずヘッドスピンをしてみた。これが一番効く。
「あんた何やってんの?」
リビングに、母親が姿を現した。怪訝な顔で息子を見おろしている。
「べ、別に…。回りたくなる朝だってあるだろ」
ぶっきらぼうにそう言って高橋は自分の部屋へ逃げるように戻った。動揺は収まらない。
「何着て行こう…」
次に、服装について悩む。高橋のファッションへの情熱は小学二年生の時がピークで今はもうかなりの下降線だ。普段は何も考えず適当にあるものをひっつかんで出て行くのにこの時ばかりは悩んだ。
岸くんはオシャレだから(少なくとも高橋にはそう見えた)それなりに釣り合いがとれた方がいいだろう…悩んでいるうちにいい具合に時間が過ぎて行く。
次は荷物だ。いざという時に役立つものを持っていった方がいい。
岸くんの頭上に何か落ちてきた時にすぐに冷やせるアイスノンとか岸くんがふいにどっかに落っこちた時にすぐ引き上げられるロープとか岸くんが犬に追いかけられて噛まれた時にすぐに手当てできる救急箱とかとか…
「あんたどこ行くの?登山?」
荷物を持って家を出ようとすると、これまた怪訝な表情の姉が問い質す。高橋は荷物を全て収納できる鞄がなくて父親の登山リュックを持ちだしたのだ。中にはお役立ちグッズがパンパンに詰め込まれている。
結局姉にリュックの中身を見られ、しこたま笑われていつものハンドバック一つで必要最小限のものだけ入れて高橋は家を出た。
渋谷は相変わらず人が多い。待ち合わせの人だけでごった返している。この中で岸くんをちゃんと見つけられるかどうか高橋は不安になったが…
「あ」
驚くほど簡単に、高橋は岸くんを発見した。キョロキョロと辺りを見回しながら岸くんが歩いてくる。向こうはまだ自分が見つけられないらしい。その無防備な姿を見るとしかし高橋の心臓は跳ねあがった。
(どどどどどどどうしようこっち来る来る…!)
当たり前のことなのにどぎまぎしてしまって高橋は自分も気付かないふりをして大スクリーンを無意味に眺めた。新しく始まるドラマの宣伝が流れている…
(いやダメだろこんなことしたって意味ないじゃないか岸くんに声かけなきゃ…)
思い直し、視線を戻す。が、岸くんはもう見えなくなった。慌てて探したが見当たらない。
(しまった…!)
焦りが高橋を包む、なんでこんな無意味なことしてしまったんだろうと後悔しかけると、ぽんと肩を叩かれた。
「岸くん!?」
振り向くと、知らない外人のおっさんだった。
「スミマセン、ワタシトカミニツイテ、オハナシシマセンカ?」
「けっこうです!僕は神7ですから!」
振りきって、辺りを探し回る。たった今までそこにいたのだ。そんなに遠くに行くはずがない。岸くんもきっと自分を探しているはずだ。だが焦れば焦るほど人にぶつかったり、前を遮られたりしてなかなか思うようにいかない。もどかしくて気が狂いそうだ。
名前を呼べば、もしかしたら近くにいれば気付いてもらえるかも…
この人ごみで、それは少なからず勇気のいる行為ではある。だが躊躇っている余裕はない。高橋は息を吸い込む。
「あ、高橋。いたいた。」
吸い込んだ息はどこかへ行ってしまった。
振り向くと岸くんがいた。
「き、岸くん…」
高橋は早くも心臓が悲鳴をあげた。レッスンやなんやでほぼ毎日会っているのに「二人だけで」という魔法が岸くんをより魅力的に高橋の眼に映らせる。
なんて爽やかな笑顔。くっきりと刻まれる法令線、ほんのり桜色の色白の肌、大きな鳶色の瞳、サラサラの髪の毛…うっすらと滲んで見える汗の色までもが煌めいて見える。この世にこんなにかっこいい少年がいるのだろうか。高橋は思う。
神宮寺は野球部室みたいな臭いがすると言うけれど、倉本はナイアガラみたいと言うけれど、はにうだは不憫がうつると言うけれど、中村は密室に二人きりになりたくないと言うけれど、栗田は自分のことを棚にあげてアホだと言うけれど、谷村は同族嫌悪みたくなってるけれど…
そしてSM好き疑惑もあるけれど高橋にとって岸くんはナンバー1なのだ。高橋ランキングぶっちぎり第一位だ。
「おはよ。いやーまいったまいった。いきなり寝過ごしちゃってさ。朝ご飯食べてないんだよね。マックかどっかでいいからちょっと寄らない?」
岸くんは肩目を瞑って申し訳なさそうに手を合わせる。ああなんて可愛いんだろう…高橋はもう天にも昇る心地だ。マックでもスタバでもちゃんこダイニングでもどこにでも行きます…岸くんと一緒ならどこへでも…
「そんれさ、めらましろけーがとまってたの。焦ってんろにウェンディが甘えてきてさ…」
マックでハンバーガーを頬張りながら岸くんは話す。ものをくちゃくちゃ食べながら話すなんて子どもみたいだ。中村は「岸お行儀悪いぃ」といつもたしなめるがそういうところも高橋は好きだ。
「僕なんて今日5時に目が覚めちゃった。ラジオ体操とか久々に聞いて…」
言いながら、これじゃあ楽しみすぎて早起きしちゃったってバレバレじゃないか何言ってんだ僕はと高橋は顔を赤らめた。
何か適当な理由はないか…父親が今日香港に出張でその見送りのために、とか姉に築地の朝市場にマグロ仕入れに誘われたとか家じゅうの時計が二時間進んでたとかとか…
「俺も小学生の頃夏休み毎日近所の公園でやってたよ。毎日参加すると図書券もらえるからそれ目当てにさー」
しかし岸くんは特に気にする素振りもなくラジオ体操第二についてあれこれ語りだした。ほっとしたような…
マックを出るともうたいていの店の開店時間になっていて街は活気づきはじめる。人もより多くなってるしうっかりしてたらはぐれてしまいかねない。高橋は少し勇気を出して岸くんとの距離を縮めて歩いた。
「あ」
岸くんは何かを思い出したように手を叩いた。
「ちょっとさ、行きたい店あるんだけどいい?」
「うん。この近く?」
高橋は岸くんの案内に従って歩く。岸くんはショッピングが好きだから色んなお店を知っているのだろう。それを教えてもらえるのが嬉しかった。
それは小さなアクセサリーショップだった。といっても女の人が買うようなものは少なく、どちらかというと男性向けの商品が多い。オシャレな感じでさすが岸くんだと高橋は感心した。
「岸くん良く来るの?この店」
「いやー、良く来るっていうか一度来てみたかったんだよね。こないだ神宮寺がここでネックレス買ったって言っててその話聞いてたら行きたくなって。」
「あ…そうなんだ…」
嬉しそうに話す岸くんに、高橋は少し胸が痛む。神宮寺の名前が出てきただけでさっきまでのわくわく感もうきうきも鎮火してしまった。
しかし岸くんは機嫌よくアクセサリーを見ている。その姿に、高橋は今しがた抱いた小さな痛みを無理矢理押し殺した。
だがしかし、一度芽生えた錆はじわじわと侵食してくる。
「これこないだ倉本がしてたのに似てるな…あ、こういう幸薄そうなデザイン谷椛に似合うかもな」
「あ、こういうのいいな。でもこれはにうだが似たようなのもってたしな〜」
「お、こういう可愛いの中村に似合いそう。あげたら喜ぶかな。でも栗田に殺されるかな」
岸くんは楽しそうにメンバーの名前を出しながら商品を眺めて回る。
(僕のことも、いない時に名前呼んでくれたりしてるかな…)
期待というよりは、少し不安になる。岸くんにとって自分はどれだけの存在なのか…
自分の中の岸くんの存在が大きすぎて、測り知れなくて、それが逆に色んな不安を植え付けてくる。欲すれば欲するほどに掌から逃れて行くような渇き。満たされることのない欲求…それらが徐々に高橋の神経を蝕み始めていた。
今、こうして岸くんと二人でいられることが嬉しくて仕方がないはずなのに、何故かちっとも満たされていない。先ほどまで抱いていた幸福感はどこかへ行ってしまった。
それはきっと、岸くんがメンバーの名前を出したことに起因するのかもしれない。
この中で…神7の中で自分のことを一番に見てほしい。考えてほしい。そんな理不尽な独占欲が小さな火種となって点火されている。それを今はっきりと高橋は認識している。
見ているだけで良かった。側にいて何気なく話しているだけで…今まではそうだった。
だけどいつからだろう、自分の中の箍がはずれかけたのは…。
サマリーだっただろうか、それとも他のきっかけがあっただろうか…不思議とそれは明確に思い出すことはできない。だがきっかけはどうでもいいことのように思えた。
「お、今待ち時間なしで観れるって。これ観たかったんだよねー、高橋、どう?」
映画館の前で岸くんは立ち止まり、そうもちかけてきた。高橋はもちろん二つ返事だ。薄暗い映画館の中で二人ならんで座るだなんてなんという幸せか…高橋が顔を緩ませていると岸くんは売店へ駆けて行く。
「ポップコーン買おう!!キャラメル味と塩バターで迷うな…うーん…」
ポップコーンの味について真剣に悩むその姿が17歳とは思えぬほどに愛くるしい。日本中どこを探してもこんなプリティセブンティーンはいないのではないか…と高橋は思った。
「岸くん、じゃあ僕がキャラメル味買うから岸くんは塩バターにして半分こしようよ」
「おお、ナイスアイデア!!」
岸くんの喜ぶ顔を見ていると、それだけでさっきの渇きもどこへやら、高橋は満たされる。
映画の内容は覚えていない。ずっと岸くんの横顔を盗み見していたから。だから映画館を出た後岸くんに映画のストーリーや登場人物についての話題に合わすのに苦労した。まあいつもトンチキな発言をしているからさほど不審に思われなくてすんだのは幸いである。
楽しい時間ほどあっという間に過ぎて行く。高橋が時計を見るとこの後の収録の集合時間までごくわずかだった。岸くんとは一緒にいられるが、「二人きりで」いられるのは今だけだ。
時間が止まればいいのに、と高橋はこの時本気で願った。諦めなければ叶うはずだと松岡修造も言っている。
「ちょっと早いけどスタジオ行く?」
岸くんがそう問いかけてくる。高橋は「嫌だ」と言いたかったがそれが言葉として出ることはなかった。中村がいたら「ダメだよぉわがままぐらい言わないとぉ」って怒られるだろうか…。
それが今の自分の限界なのかもしれない。もう少ししたらなりふりかまわず栗田のように岸くんにわがままを言えるかな。それともやっぱりそんなことはできないかな…。
駅に向かう。あと少しでこの楽しい時間は終わりを告げる。魔法は解けて、シンデレラは貧しい少女に戻り、再び王子様に会える日を夢見る…何故か童話の一節が頭をよぎった。
「あ、ちょっと待って高橋」
ふいに、岸くんが何かを見つけて立ち止まる。
「どうしたの、岸くん?」
「あっちの公園の展望台から海が見えるんだって。ちょっと行ってみよう!」
子どものようにわくわくした岸くんが、展望台目指して駆けて行く。その背中を高橋はなんともいえない高揚感とともに追いかける。魔法はまだ解けない。
「おおー!!いい眺め!!」
ベンチの上に立ち、掌を横にして額に押し当てた岸くんは爽快な声をあげる。若干陽が傾きかけたこの時間帯は遠くにうっすらと見える海が黄金色に輝いている。美しい秋の風景だった。
だが高橋は風景よりも岸くんの横顔に見とれた。穢れなき瞳。どこまでも眩しい純粋な輝き…しばらくそこに魅入った。
「もう一年になるよなあ…」
高橋がぼうっと岸くんに見とれていると、岸くんの口がそう動く。
「神7になってさ、この一年ほんと色んなことあったな。何度鬼ヤクザに怒られたことか、生死の境をさまよったことか…」
この一年…
高橋は振り返る。それは、あまりにも恵まれた一年だった。おそらくは自分の人生の中で最も楽しい…。
「でもさ、不思議だよな。俺が入所した時、まだ神7の誰もいなかったんだよ?」
岸くんは最年長でもあり、Jr歴も神7の中で一番長い。一番短いのは自分と羽生田だった。
「それから栗田が入ってきて、中村が入ってきて…二年かけて皆が揃って…そう考えるとなんか感慨深いもんがあると思わない?」
岸くんはくるりと高橋に向き直る。その強い眼差しが真正面に来て、高橋はどきりとする。
「う、うん…」
早鐘を打つ鼓動を収めようと努めていると、岸くんはまた遠くの景色へと視線を投げかける。
「一年後、俺達はどうなってるかなあ…」
風に吸い込まれそうな声で、岸くんはそう呟いた。
一年後…。
それは果てしなく遠い未来のように思えた。と、同時にもうすぐそこまで迫っていることのようにも。
一年後も変わりなく岸くんの側にいることができるだろうか。高橋はほんの少し胸が痛む。
この横顔を見つめ続けることができるなら、なんでもできそうな気がする。いや、何に変えてもそれは死守したい。
振り向いてくれなくても、その視線の先にいるのは自分じゃなくても、岸くんという存在が確かめられる場所にいたい。
「岸く…」
高橋が、自動的にその名を呼ぼうとすると、それを掻き消すような大声が轟いた。
「やっぱデビューだよな!!一年後、俺達はデビューしてる!!うん、間違いない!!」
断言するように叫んで、岸くんはベンチから柵へと飛び乗った。そして拳を掲げる。
その背中は、夕陽を受けて光り輝いていた。
高橋は目が熱を持ち始めるのを自覚する。その感情の正確な名前は分からないが、それがひどく昂ぶっていることは分かる。岸くんの宣言を、高橋は100%実現する未来…予言のように聞いた。
デビューというのがずっと岸くんの側にいられる方法なのだとしたら、自分もまたそこに向かって努力を惜しむことなく走り続けることができる。
岸くんといたいから。
その背中を、ずっと追っていたいから。
僕はそのためならなんでもできるよ。
高橋のゆるぎない思いが声となって岸くんの耳に届くことは今はないが、それでも少しずつ少しずつそれを伝えることができればこんな幸せなことはない。高橋は、その時のためにこの気持ちを今はそっと内に収めた。
「そうだね、岸くん。一年後僕達は神7としてデビューだ!デビューシングルはやっぱ8種くらい出してもらって握手会とかもしなきゃいけないのかな、そんでファーストコンサートはやっぱドームで…」
夢を語ろうとしたがしかし高橋の声はそこで途切れる。
「あれ?」
高橋は目が点になった。たった今まで眩い輝きを放っていた岸くんの姿が忽然と消えている。まるでテレポーテーションしてしまったかのように綺麗さっぱり…。
「岸くん?岸くん?」
周りを見渡してみても、岸くんの姿はどこにもなかった。
「岸くん!!岸くんどこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
半狂乱になって岸くんを探す高橋が見つけたのは柵から落っこちて生垣にひっかかった岸くんだった。
お役立ちグッズの中で唯一持ってきていたロープが役に立ち、岸くんは無事救出された。
今度どこへ行くのかはまだ未定だけど、やっぱり岸くんの為に不憫防止の便利グッズはフル装備していこう、と心に固く誓った高橋であった。
そして救出騒動で時間を食ってしまいレッスンスタジオに二人して遅刻してしまい、しこたま怒られたが高橋はそれでも幸せだった。叱責など耳に入らず、妄想で頭の中を満たす。
(…次はててててててて手くらい繋ぎたいな…なななななななななんちゃって…)
さて、次回が実現するかどうか…
END
作者さんおつです!
岸颯おめ!なんか>420が現実になったような?
せっかく感動していたのに岸くんテレポーテーションってwww
2人だけで出かけるときは要注意…w
作者さん乙!
登山リュックになっちゃう颯くん可愛いwww
不憫を防いでくれるシンメがいてよかったね岸くん!
こんないい場面でテレポーテーションなんてさすがwww
作者さんありがとぉぉぉぉ待ってたよ〜
なんでこの子らこんなに愛しいの…
次は是非とも2人でちゃんこダイニングへ!
443 :
ユーは名無しネ:2012/10/23(火) 14:07:23.37 0
作者さん乙です
ふうくん良かったねぇ
この2人ってなんでこんなにかわいいんだろう…
いつかデビューできますように…
全ステするよ!
んんんんんんんん岸颯んんんんんんんんんんんんああああああああああ
作者さん乙!颯きゅんの一途な想いにきゅんきゅんしたお
作者さん乙!
とらびす兄組詳しくしらないんだけど、これ!っていう画像とかないかな?
れあたんに勝負挑む七五三掛さんとショタコン森田さん気になるww
あ、のえるは知ってる
収録の本番前、楽屋はいつものようににぎやかだった。
楽屋の片隅のテーブルで谷村は出番までの時間つぶしに学校の宿題を片づけていた。
今日は何かが起こりそうな気がする…そんな不安がふと頭をよぎる。
出トチリか振り抜けか動線侵入かはたまた衣装が破れるとかすっ転ぶとかか!?次々と悪い予想が湧いてくる。
こういうネガティブ思考だからダメなんだよな、と思う。
JJLでも、おっとりした雰囲気の高校生Jrにのほほん口調でダメ出しされたし…
不憫1がただいま年下男子限定のモテ期に突入しているため、谷村は不憫の看板を実質ひとりで背負っているようなものだった。
そして、その看板は当分下ろせそうにない。
教科書とノートを見続けていたら何だか眠くなってきた。あと20分くらい時間があるし少し寝てよう、と目を閉じる。
次に谷村が目を覚ますと、あれだけ周りにうじゃうじゃいたJr達が1人もいなくなっていた。
それにもビックリだが、何よりも驚いたのはなぜか自分の自分が勃っていることだった。
えっ、なんでなんで!?ただ居眠りしてただけなのに…人体って不思議、と壁の時計を見ると本番まであと5分弱しかない。
この時間でトイレに行き…してまた帰ってこれるのか?谷村はパニックになりかけた。
「あー、タオルかけたまま出るとこだったあああー!まじやっべぇーー!」
大きな独り言を言いながら栗田が楽屋に入ってくる。
「なんだよおめーまだいたのかよー…ってギャハハハハ!!!どうしたその面!?」
栗田は楽屋の隅っこで途方に暮れている谷村に気づき、いつもの小学生男子のような奇声を発して指を差した。
そういえば鼻の下がなんかぬるぬるしている。鼻水かと思い手でぬぐうと、鼻血だった。
やっぱりな……なんだよこの泣きっ面に蜂状態…予感が的中しても全然嬉しくない。
栗田はずかずかとこっちにやって来る。右手で鼻を、左手でセクシーゾーンを押さえた不自然な格好の谷村を見てピンときたらしい。
「あ?…お前、まさか勃ってんのかよ!?なんで本番前に…アホだーーーー!ゲハハハハハ!!!」
爆笑しながら栗田はバンバンと谷村の背中を叩いた。
その衝撃で谷村はうっかり達しそうになり、せつない声が自動的に漏れる。
「…は…あ……んっ」
「何キモイ声出してんだよ。てめえまさかれいあのことオカズにしてのこの状態じゃねえだろうなあああ」
「しょうがないだろ…!勝手に出ちゃうんだよ!」谷村は半泣きの表情で首を振った。
これはもうダメだ。上も下もどうにかしないとみっともなさすぎる。
でも、今からトイレを往復していたら確実に本番には間に合わない。
どうする?どうしよう…でも俺1人いなくてもそんなに問題ないんじゃないか?センターとか目立つ位置でもないし、だいたい後列端っこだし…
「…ちょっとトイレ行ってくる。本番間に合わないかもしれないけど」
谷村はやっとこさ立ち上がって言った。
「あっそ。いーんじゃね?」と栗田はあっさり言った。蹴られるかどつかれるか怒鳴られるかを想像していた谷村は拍子抜けする。
「どうせ出なくっても一部の人しか気づかねーだろ。俺らって微妙な位置だしな。つーか、代わりなんていくらでもいるから」
「へ……栗…田…?」
「空いた穴は他の奴がどんどん埋めてくもんな。辞めたところで少しの間は噂になっても、そのうち忘れられてくんだよな。
辞めたとしてもべつの人生があって、案外そっちのほうが楽しかったりすんのかもしんねーし…」
なんだか遠い目をしながら淡々と話す栗田は別人が乗り移ったような様子で、谷村は少し怖くなった。
相方は通常のぶりっこ乙女モードとキレた時のドSモードの落差が凄まじいし、2人そろって多重人格なのかよ…
そういえば、俺の元シンメだったあいつはどこへ行ったんだろう。谷村はふと思い出す。
ちょっとお調子者っぽくて目立ちたがりみたいな奴だったけど。
辞めてはいないはずだが、もう同じラインで踊ることがなくなってしまった。
もしかして、このアホともいずれそうなってしまうんだろうか…
「新しいシンメ、千野とか羽場とかだったらウケルなー。意外と頼りになりそうだけど」と栗田がつぶやいた。
それを耳にして、小学生に負けてたまるかあああああ、と谷村の眠っていた闘争心に火がついた。
「このまま出る」ときっぱり宣言する。Show must go on…である。
「ぎゃはははは!!!まーーじでーーー!?やっぱ頭おかしいわーーーコイツ!!!」栗田は普段の口調に戻り、なぜか谷村は安心した。
何も30分や1時間踊り続けるわけじゃない。メドレーが終われば少し間隔が空くし、それまでの我慢だ、と自分の下半身に言い聞かせる。
しかし、ピチピチのタイトな衣装じゃなかったのが不幸中の幸いではあった。
「おい、こっち向けよ」
栗田がいきなり近づいてくる。谷村は脊髄反射的に防御の姿勢を取った。
肩にかけていた自分のタオルで栗田は谷村の顔面をごしごし拭きはじめた。しかし拭き方が乱暴なため、鼻血が顔中に広がっていく。
「あーもー!お前世話がやけんな!!ギャー手に血がついたああああ!!!…ま、いつも顔色わりーから赤くなってちょうどいいんじゃね?
あれだ、姉ちゃんがよく使ってるやつ……チ…?…チョークみてえ!」
チョークを顔面に使うとはさすがアホの姉さんだけあってワイルドだな、と谷村は感心したが、それどころではない。
鏡で一応確認すると、おてもやん、またはアル中のおっさんのようになっていた。リアル変なおじさんだ。
けれども、たしかに顔が明るくなったような気はする…
「ヤベエ!もう時間ねーよ!おい早く行くぞ!!」
栗田にせかされて、谷村はギクシャクした足取りでステージに向かった。
メドレーが終わると、谷村はものすごい形相でトイレに直行した。
「おつかれー」と通りすがりに栗田が背中を軽くどつく。谷村はひきつり笑いで応じた。
「ねえ栗ちゃん。今日の谷村なんであんな赤ら顔なのぉ?」後ろから中村がやって来た。
「さあ、知らねー」
「それに何これぇ、…まさか、血?」中村は栗田の手を取ってしげしげと眺める。
「なんだろうね、ペンキじゃね?」
「あっ、もしかして……」
廊下の先にあるトイレに谷村が駆け込むのを見て、中村は男子の勘が働いたらしい。
「衣装買い取りとかにならなきゃいいけど。谷村ってあんなかっこいいのになんか残念って言うか面白いよねぇ…」
「面白くねーよあんな奴」
「でもさー栗ちゃんのシンメが外見も中身も超イケメンとかだったらキツいから、よかったかもねぇ」と中村はしみじみした調子で言う。
「…れいあ、それどういう意味?」
栗田と中村はなんとなくトイレの前まで来て、立ち話をした。
そのため谷村は余計に出づらくなり、次の出番は3人揃って遅刻しかけた。
終わり
452 :
ユーは名無しネ:2012/10/24(水) 19:15:10.08 0
作者さん乙です!たwにwむwらw相変わらず不憫だなw
鼻血だけならまだしもたにむのたにむがムラムラてwww
栗ちゃんチークじゃなくてチョークかよ!w
栗谷好きだわー笑わせていただきました!素敵な作品をありがとう
ところでたにむの前のシンメって誰だっけ?思い出せない…
たにむの元シンメって三浦わたるだよね?
454 :
ユーは名無しネ:2012/10/24(水) 21:09:59.10 0
たにーは本当にかっこいいのに
変なイメージつきすぎw
栗谷なんかいいわー!作者さん乙です
れあたんが栗ちゃんに毒舌入ってるのも新鮮w
作者さん乙!
谷茶浜流血を顔面に塗ってステージwww
途中真面目になる栗ちゃんかわゆす!
れあくりいいよいいよ!
谷茶浜、最近本当に不憫一人背負ってるな…
りんりんにでも相談しなよw
457 :
ユーは名無しネ:2012/10/25(木) 20:10:30.86 0
谷村勃起してるイメージしかないwww
神7楽屋劇場 番外編「秋深しチュウガクイチネンジャーはなにする人ぞ」
「今日お前らに集まってもらったのは他でもない…」
玉元は精いっぱい威厳を示した渋い表情で呟く。本人は大企業の代表取締役ぐらいの貫録を出しているつもりだがいかんせん声が高いのと背が小さいのとでせいぜいコドモ警察だ。
「集まってもらったって…ここ俺らの楽屋でしょ?」
岡田が呆れながら呟くとその横で海宝も頷く。
「集まるも何も一番後から入って来たの玉きゅんじゃん」
「玉きゅんはやめろ。ふーみんとかふみんちゅとか玉もっちとかでいい。そんなことよりこれを見ろ」
玉元は一冊の雑誌を机の上に乗せ、ページを開く。そこには板前姿のJrが4人掲載されていた。
「あれ、元さんじゃん。こんな撮影してたの。てか似合いすぎだよね築地とかにいそうじゃん!元太寿司とかって看板掲げてさ!」
岡田が腹を抱えて笑う。海宝も吹きだした。
「元さんの為に撮影したようなもんじゃん〜。へいらっしゃいって感じだねえ〜」
「あ、間違えたこれじゃないこっちだ」
玉元は慌ててもう一冊の雑誌を取りだしパラパラとめくる。
「あ、こっちはまだチュウガクイチネンジャーに見えなくもない。てかさっきがインパクト凄すぎたんだけど」
「そうだね〜。あ、元さんWi○k up初登場だったんだねえ〜」
岡田と海宝はきゃっきゃと雑誌を見ながらはしゃぐ。彼らはどうやら写真にばかり目が行って肝心の文章を読んでいないようだ。それを促すと声に出しながら読み始める。
「なになに…尊敬するのは山田くん…王道だなあ。やっぱ時代は塚田くんでしょ」岡田は首を振る
「好きな食べ物からあげと卵焼き…砂ズリとか枝豆とかじゃなかったんだねえ〜」海宝は頷く。
二人はなおも呑気にそんなことを呟いている。いい加減業を煮やした玉元は「そうじゃなくて!」と叫ぶ。
「文章の末と尊敬する先輩の二人目だ!見てみろ!」
玉元に言われてようやく岡田と海宝はそこに目を向けた。
「えーと…谷村くん、すごく優しいの…だって。谷村くんって誰?」岡田は眉根を寄せた
「尊敬する先輩…山田涼介くん、谷村龍一くんだってえ〜。で、この谷村龍一くんって誰?V6とか少年隊の人?」海宝は玉元に訊ねた。
「違う…同じページに載っている…」
玉元は固唾を飲んで答えた。岡田が「ああ!」と手を叩く。
「見覚えあるある。スノプリの頃途中で入ってきたような…なんだかいつも栗田と中村に怒られてた記憶がある」
「そうなの〜?あ、でもそう言われれば僕もどっかで見たことあるよお〜。JJLのフットサルだったかな〜」
「これを尊敬してるって?元さんが?なかなかアダルトジョークだなーさすが精神年齢31歳!」
岡田が手を叩きながら笑った。海宝もうけている。
「元さんって時々スマッシュジョーク飛ばすよねえ〜」
「お前らは能天気だな…うらやましいよ…」
玉元は頭を抱えて溜息をついた。事の重大さがこいつらには分かっていない。これはいわばチュウガクイチネンジャーの危機でもあるのに…。
「それがジョークでも冗談でもホラでも嘘でもないんだよ!だから問題なんだ!お前ら元さんが今どこにいるか知ってんのか!?」
玉元は叫ぶ。まだ13歳なのに高血圧で倒れてしまいそうだ。岡田も海宝も呑気すぎる。
「え、どこ?競馬場?麻雀教室?」
「銭湯とかかなあ〜」
「違う!神7の楽屋だ!そのたに…たに…なんだっけ…えーと…」
玉元はたった今雑誌で目にしたその名前をもう忘れかけている。それは岡田と海宝も一緒だった。
「たにんちゅでいいんじゃない?」岡田は適当に答えた。
「まあいいや、そのたにんちゅのとこに行ってんだ!これは愛人の所に通う妾のようなもんだ!俺達としては元さんがたにんちゅの毒牙にかかるのを阻止しないといけない!」
ようやく本題に入れて玉元はホッとする。これが言いたかったのだ。ここまででどれだけ時間がかかってるんだ全くもう…
しかしながらやはり岡田と海宝の反応は薄い。
「いいんじゃないの本人が好きならさ。しかし元さんはなかなか個性的な趣味してるよね〜。それとも中年の心理だとこういう幸薄そうな美形の方が良く見えるもんなのかなあ」
岡田はもう興味を失ってケン玉を始めた。
「なんか文章見ててもこのたにんちゅって人暗いよねえ〜でも見た目だけだと元さんと釣り合いとれてない?この人いくつなの?」
海宝の質問に玉元はまた唾を飲みながら荘厳な表情で答える。
「それが…俺と同じ13歳…もちろん元さんとも同じ13歳…学年は一つ上だけど…」
「ええー!?」
それまでテンションのやや低めだった岡田と海宝は衝撃的な事実に二人して大声でハモった。
「これ13歳!?どう見ても哀愁漂う枯れかけた窓際美形サラリーマンじゃん!」岡田はどっかーんと跳びはねながら叫ぶ
「市役所のはしっことかにいそうだもんねえ〜くたびれたYシャツとよれよれのネクタイと缶コーヒーが似合いそうだし〜」
二人がやいのやいの言ってるとその松田が戻ってくる。三人は自然を装いながら若干不自然な表情で恐る恐る松田に問い質した。
「元さんどこ行ってたの?」
岡田が尋ねると松田は肩を回しながら、
「ん?ああ、神7の楽屋に行っていた。この後の収録で一緒に踊らないといけないもんでな。振りの確認だ」
淡々と答え、松田はゴルフの素振りの真似を始めた。しかし彼の得意スポーツはサッカーである。
「た…たにんちゅ君のところに…?」
海宝の問いに松田は眉根を寄せた。
「たにんちゅ?なんだそれは「谷人」とでも書くのか?どこの人だ」
「いやだから神7のたに…たになんとかって人のことで…」
玉元の答えに松田は厳しい表情になって三人を諭し始める。まるで学校の教師のように。
「お前達先輩に向かって妙なアダ名をつけるんじゃない。それに名前を覚えないのも失礼だ。谷村くんに謝れ」
誰もが覚えるのに困難な谷村の名前をするりと言える…
これは本物だ…三人はゴクリと唾を飲んだ。
「あ、でも俺はたにんちゅより入所早いから俺の方が先輩っちゃあ先輩なんだけど」岡田が物申す。
「むう…だがしかし人の名前をちゃんと呼ぶのは礼儀だ。しかもたにんちゅってなんだ。うみんちゅやふみんちゅなら聞いたことがあるが」
ぶつぶつ言いながら松田はウォークマンを聞き始めた。またいつもの演歌かもしれない。
松田は超がつくほどの常識人だ。「ジャニーズJrの真実」という番組では13歳とテロップがついたが31歳の間違いじゃないのかと疑われるほどの落ち着き払ったコメントは記憶に新しい。
チュウガクイチネンジャーも常々「年齢詐称じゃないの?」と思っていたがここに来て大きな爆弾が投下された。岡田もびっくりのどっかーんだ。
松田と谷村…一体どういう組み合わせだと一部を驚嘆させたその事実はしかしチュウガクイチネンジャーにとっては看過することのできないものである。こぶしをきかせながら熱唱し始める松田をよそに三人はこの時一丸となってこのゆゆしき事態について話し合った。
「一体何がきっかけ…そうか梅田サマリーか。あん時元さん神7と大阪行ったし…」玉元が顎に手を当てる
「その時に優しくしてもらったとか…?れあくりに虐げられてる姿に同情したとか?」岡田は腕を組む
「レッスンの後二人でどっか行ったとかかなあ…」海宝は首を捻った。
「でも待てよ」玉元が何かを思い出したように指を鳴らした。
「確かたにんちゅは…ロクネンジャーの奴らから「宇宙人」ってアダ名をつけられてたような…んで金田のことを執拗に追っかけまわしてるって…」
「ああそれなら俺もロクネンジャーの奴らから聞いた。ていうか金田の超音波は近所迷惑だからさあ。それに…あ、そうだ。こないだロクネンジャー達が騒いでた。たにんちゅと中村がちゅーしてたって…」
岡田の発言に玉元も海宝も目を丸くさせた。
「中村くんってどっちの?」海宝が尋ねる。
「ばっかうみんちゅじゃなくてれあたんの方に決まってるだろ。うみんちゅとたにんちゅのべろんちゅとか誰得だよ?」
「ええ〜!でもさあ、れあくりってじゃすてぃすなんでしょ〜?それなのにたにんちゅってどういうこと〜?」
「そんなこと俺が知るかよ。たにんちゅって奴ああ見えてとんでもないタラシかもしれないな…」
三人は唸る。大事なチュウガクイチネンジャーのメンバーである松田がそんなわけの分からん奴に熱を入れているなどと…
だがしかし、松田は見ての通り超常識人の真面目職人気質。浮ついた理由や一時の感情で流されるような人間ではない。それが分かっているからこそなおのこと不可解だった。
「…まずはたにんちゅがどういう奴か再調査してみる必要があるな…」
何故か三人はそういう結論に落ち着いた。そして音楽鑑賞が終わって機嫌よくさきイカとチータラで一杯やっている松田を置いて楽屋を後にした。
「俺がしっかりと調査してやらないとな…」
玉元は使命感に燃えて調査を開始する。いつもおっとり天然ボーイのふみんちゅだがやる時はやる。もう中学生だし仲間のことも考えなきゃな…と悦に浸りながら進むとロクネンジャー達が「だるまさんがころんだ」をしているところに出くわす。
「あー、君達、ちょっといいかね」
「あ、玉きゅんじゃん。なに?よしてほしいの?だったらこれ終わるまで待てよ」橋本が素っ気なく言い放つ。
「違う。俺はお前らと違ってそんな子どもじゃない。それより俺の調査に協力しなさい」
ロクネンジャー達は首を傾げた。玉元は本題に入る。
「実はうちの元さんがだな、たにんちゅって奴にどうもおネツでどんな奴か今再調査してるところだ」
「たにんちゅって?新種の毒グモ?」羽場が訊くと林が「それタランチュラだろ」とつっこむ
「神7の谷なんとかって奴のことだ。便宜上たにんちゅと呼んでいる。お前らが宇宙人とか言ってる奴」
ロクネンジャー達は「ああー!」と手を叩いた。そしてたにんちゅというアダ名にバカうけしている。しかし玉元は笑かしにきたのではない。これは真面目な捜査だ。
「なんでも金田に執拗に迫ってるとか…どうなんだよ金田?」
金田に振るとそれまで笑っていた彼は顔を歪ませた。
「どうもこうもないよ!ふみんちゅも生半可な気持ちで探ってると後で後悔するよ!俺なんか気絶させられて倉庫閉じ込められて緊縛SMやスパゲティプレイ強要されて好きだ好きだって迫られたんだからな!手記書けるくらいの恐怖体験だったんだよ!
サダコ3Dとかあれに比べればもう全然怖くないから!」
「な…何…そんなに…か?」玉元は唾を飲んだ。
「あとさー、こないだ楽屋開けたらさー、宇宙人の奴金田のこと追いかけ回しといて中村ともちゅーしてたんだよー」井上が報告する。これは聞き捨てならない。
れあくりのそりゃもうジャスティスっぷりはJJLのフライフィッシングの時に嫌というほど見せつけられた。それが…
「そ…それは…本当か…?」
「ほんとほんと。俺らも目が点になったよなー。でもまだ宇宙人が生きてるってことは栗田にはバレてないのかなー」橋本が頷きながら周りに意見を求める。彼らはやいのやいの議論し始めて玉元の質問に答えるどころではなくなった。
「やはり相当なド変態のタラシか…」
玉元は戦慄しながら報告書をまとめた。
「元さんもめんどくさい奴気に入るよなあ。幼稚園児の妹が嘆くぞ…」
ぶつくさ言いながら岡田は適当な楽屋を開けた。これもまたお約束の展開だが中ではれあくりがコトにおよぼうとしているところであった。
「あのさーいちゃいちゃはちょっと中断して俺の調査に協力してくんない?」
昔のよしみでずけずけあがって行くとれあくりはやれやれと肩をすくめる。
「岡ぴぃのそういう図々しいとこ変わってないねぇ。また色白くなったんじゃないぃ?」中村が顔を覗きこむ
「白いのはお互い様でしょ。ところでさ…」
「おめーまだ『どっかーん!』やってんのかよ。あれあんま面白くねーからやめた方がいいぞギャハハハハハ!!!」モノマネをしながら栗田がアホ笑いをする
「うるさいなそっちこそワギャンみたいな笑い方いい加減やめなよ。そんなことより…」
岡田は本題に移った。
「スノプリやってた時にさー、途中から入ってきた谷なんとかってのいたじゃん。そのたにんちゅにうちの元さんがさあなんかおネツみたいで。どんな奴か教えてもらえると有り難いんだけど」
「あ?たにんちゅ?谷村のことか?あのアホがどうかしたのかよ」
栗田が半笑いで訊き返す。アホはお前だろと岡田がつっこむと飛び膝蹴りが飛んできた。
「谷村またおいたしたのぉ?ほんとしょうがない子ぉ」
呆れ顔で中村は呟く。どうやら彼の地位は神7の中で相当低いようだ。岡田はメモった。
「そーいやさ、ロクネンジャーの奴らが言ってたけどそのたにんちゅと中村ちゅーしたの?」
岡田は何気なく疑問を口にしただけである。そしてこれも調査内容の一つだったにすぎない。けっこう軽い気持ちで聞いたのだが目の前のアホと乙女の形相が変わった。
「てめぇもっぺん言ってみろ…谷村のアホと俺のれいあがちゅーするとか地球が滅亡してもありえねえぞ…」
栗田は般若と化していた。
「いくら岡ぴぃでもそういう冗談許さないからぁ…」
中村は絶対零度を降り注いでくる。久しぶりに見た。
岡田は素早く判断する。事実関係は別としてこれは触れてはならない話題だ、と。何か不慮の事故か記憶喪失にでもなってしてしまったのだとでも考えれば片は付く。深入りするべきではない。
「…じゃ多分ロクネンジャーの奴らにからかわれたのかな。今度中学生としてタチの悪い冗談はよせと忠告しとくよ」
「そーだぞおめー。そこはもうボッコボコのビッシバシに叱っとけよ!もう俺はスノプリの叱り担当じゃねえからおめーに任せたぞ」
「でも蓮音にはあんまりきつく言っちゃダメだよぉ岡ぴぃ」
それから岡田は中村と栗田に谷村の人となりを聞いたが面倒くさくなった二人は「とりあえずこれ観とけ」とJJLのPPC谷村バージョンのDVDを見せた。全部観終わると岡田は報告書をまとめた。
「調査ってえ〜何すればいいのかなあ〜」
とりあえず出てみたものの何をすればいいのか分からない。分からないことは人に聞くのが一番だ。海宝はそう結論を出し神7の楽屋を訪れた。
「海宝くん!今日も癒しオーラ全開だね!」
殊更爽やかに高橋が回りながらそう声をかけてくる。海宝は目が回りそうだった。楽屋には高橋の他に岸くんと羽生田がいてそれぞれお茶をすすっている。
「あのうお休みのところ申し訳ありませんがあ〜ちょっと調査にご協力を〜…」
「調査ってなんの?」
海宝はいきさつを説明した。聞き終えると岸くん達は怪訝な表情で首を捻る。
「松田が谷袴を…?」岸くんは汗を一滴流した
「何ジャンル?」高橋は口を開けている
「蓼食う虫もというが蓼にも程があるんじゃないか?」羽生田は肉まんをかじった
けっこうな言われようである。しかしながら海宝は報告書を出さないといけないので彼らの一言一句を丁寧に書き写し始めた。
「奴は真正のドMだったはず…。もう中村のおしおきなくては生きていけない体になってて叱責受けてる時勃起していると専らの噂だ。あと変なおじさんのモノマネが得意」岸くんが丁寧に答える。
変なおじさん…海宝は記憶の引き出しを探る。そうだ、確か松田もJJLで可哀想なくらい低クオリティの志○けんの物真似を披露してたっけ…
「いつまでたっても振り間違いや位置移動間違いが直らないのもおしおきされたいからって説もあるよね?僕はFだからMとかよくわかんないけど…」高橋が言う。
「金田くんを執拗に追いかけ回すのもあの超音波に快感を感じてるとかいないとか…。それでいて緊縛SMやスパゲティプレイを要求する変態性も持ち合わせている。そして犬になってサネヤスに飼われたいとJJLでも発言していた。まさにキングオブ変態だな」
羽生田がさらりと言ってのけた。
「どえむってなんですかあ〜?」
「マゾヒストのことだ。つまりは精神的肉体的にイジられて快感を覚えるという異常性癖の一つだよ」
そういえばJJLのフットサルでも唇が特徴的な高校生ぐらいの人にドカバキやられて急所蹴られてもにんまりしてたっけ…と海宝は寒気を覚えた。
「え〜そんな怖い人だったんですかあ〜」
怖いものが苦手な海宝はもうブルブルだ。震える手で報告書をまとめあげると岸くん達にお礼を言って神7の楽屋を後にした。
「…想像の斜め上を行きすぎてる…」
報告書を出し合い、読み終わった玉元・岡田・海宝の三人は頭を抱えた。
「真性ドMで中村におしおきされる度に悦に浸って金田の超音波に快感感じて二股かけーの拉致監禁しーの…
フィンガーセラピー自我修復と見せかけて宇宙と交信しーのの変なおじさんはーこりゃこりゃってこれほんとにジャニーズJrなのかよ…世界びっくり人間大賞じゃあるまいし…」玉元は大きな溜息を漏らした。
「元さんにとても言えないなこんなこと…。知ったら世を儚んで辞世の句詠んで切腹しそうじゃん」岡田は溜息をついた。
「可哀想に〜。元さんおいたわしや〜」海宝は掌をあわせている。
三人は動けない。これを報告した時の松田の顔を想像するといたたまれなくなった。「元さん傷つくよな…」玉元は声を落とす。
「知らぬが仏、って言葉もあるし…」岡田は虚空を仰いだ。
「僕らから知らされるより〜自分で知った方がショックが小さいかも〜」海宝は呟いた。
三人は顔を見合わせる。そしてややあって頷き、3つの報告書を破って捨てた。そして楽屋に戻るとなんとそこには松田と谷村がいた。三人は凍りつく。
「おお、お前達どこ行ってたんだ遅かったじゃないかもうすぐ収録始まるぞ」
松田は爽やかな表情だった。その横でどんより曇り空が広がっている…
「じゃ、俺楽屋に戻るね…。振り確認ありがとう松田くん…」
ぼそぼそとまるで発泡スチロールが擦れ合うような声でそう松田に呟くと谷村は楽屋から去って行く。それを玉元・岡田・海宝は硬直しながら見送った。
「げ、元さん今のは…」玉元が尋ねると松田は「ああ」と言って
「振りの最終確認をしてくれたんだ。どうだ優しくて頼もしい人だろう?」
松田の眼には一点の曇りもなかった。そこで三人は思う。あの報告書を破り捨てて正解だと。
こんなに純粋に人を慕う仲間にどうしてあんな悪夢のような事実を話せるだろうか。友達として、その偶像は破壊するべきではない。いつか気付く時が来たとしてもそれは自然の摂理なのだからいたしかたないことだ。それまでは黙っててあげるのが友情というものだ。
「そ、そだね…。顔じゅうに点在するホクロがいい感じ…」玉元はとりあえず褒めるべきところを探したがそれしか思いつかなかった
「うん…スノプリの頃から存在感希薄でいるかいないか分かんなくて落ち着ける感じだったし…」岡田も遠い眼をして自動的に答えた
「背が高いのに姿勢が悪いからなんだか威圧感がなくていいよねえ〜…声もぼそぼそしてうるさくなくていいっていうかあ〜聞きとれないっていうかあ〜…」海宝も必死で言葉を選んでいる。
玉元・岡田・海宝は渇いた笑いを飛ばし合った。松田は少し訝しんでいたが休憩も終わり収録が始まる。
「てめ間違ってんじゃねーよ谷村ぁ!!」
「さっきも同じ間違いしたでしょぉ。はいおしおきぃ」
「うう…」
栗田と中村に虐げられる谷村はスタジオの隅で自我修復に勤しんでいた。そのなんともいえない暗黒オーラを身に纏った不憫な姿を前に玉元・岡田・海宝はドン引きだ。
「これがいいのか…」「これのどこが…」「これはいくらなんでもお〜」
三人は深い溜息をつく。そして一つの可能性が脳裏をよぎる。
「…」
三人見つめ合って不思議なアイコンタクトとテレパシーがかけめぐった。
もしかしたら松田はもう全て承知・把握しているのかもしれない。その上で谷村を慕っている…だとしたら…
三人は同時にそれを口に出した。
「実は元さんってああ見えて超アブノーマルなのかも…」
いつか二人で「変なおじさん」の物真似をする日がくるかもしれない。三人は寒気を覚えた。
その松田はスタジオの隅で涼しい顔でエアリフティングをしていた。不憫の星の元に生まれた谷村は本人の知らぬところで一世一代の僥倖が訪れようとしているのだが…それを本人が得るのはいつの日になるかは神のみぞ知る。いや、神とて知り得ぬかもしれない…
END
作者さん乙!
チュウガクイチネンジャーも調査乙!
げんげんんんんんんんんん
谷茶浜にそんなにまでハマっていたなんてええええええええ
色白美肌でさわやかで初々しい天然天使しゃかりきアイドルなのにやたら大人で渋いところ大好きだよおおおおおおおおお
おのれ谷茶浜のくせに生意気だぞwwwww
りんりんはどうする気だwwwww
作者さん乙です!
岸くんより栗ちゃんのほうが入所早いと思ってたわww
羽場ちゃんの「たにんちゅって毒グモ?」が腹イテエw
作者さん乙です!
チュウガクイチネンジャー可愛いいい!
そして台詞一つのたにむの存在感www発泡スチロール分かりすぎるww
栗田と脇山手つなぎ目情とか嶺亜にお仕置きされないか心配 岩橋神宮寺の野球観戦は以外だけど平和
岩橋神宮寺この前も電車で肩にもたれてたみたいだしかわいいのう
470 :
ユーは名無しネ:2012/10/28(日) 12:29:38.54 0
かわえええええ
神7楽屋劇場 「Trick or treat!!〜神7&ロクネンジャーin Halloween〜」
「俺達子どもの特権を活用する日が訪れようとしているな」
ロクネンジャー達は楽屋で通信ボードゲームを楽しんでいた。それをしながら橋本が呟く。
「子どもの特権?子どもの日は半年先だぞ。あ、キングボンビーなすりつけられた!」
羽場が方目を瞑った。
「バーカハロウィンのことだろ。そーかもうそんな季節か。おっと目的地到着〜!!キングボンビー井上な!!」
林がはしゃぎながら井上を指差す。井上は悲鳴をあげた。
「やっと羽場になすりつけたのに…!次の目的地那覇?めっちゃ遠いじゃん!!」
「ハロウィンは10月31日じゃん。まだ数日あるし。あ、10月31日って井上の誕生日じゃね?おめでとー」
金田が適当な口調で井上に言ったが井上はキングボンビーをなんとかして誰かになすりつけることだけを考えていて聞いていない。
「別にその日じゃなくてもいいじゃん。お菓子もらいに行こうぜ、お菓子!!くれなかったらロクネンジャー特製コショウ爆弾でイタズラして退散だ」
橋本の意見に井上だけが賛成した。勝ち目のないゲームをするよりお菓子をもらって回る方がいい。
しかしゲームも少々飽きてきたこともあってロクネンジャーはハロウィンコスプレをしてお菓子をもらいに楽屋を訪ねて回ることにした。ちょっとしたハロウィンごっこである。
「んじゃ戦利品はみんなで山分けして食べるということで…健闘を祈る!」
井上の号令によりロクネンジャーはそれぞれ楽屋に散って行った。
「よし、ほどよく腹減ったしお菓子もらって腹ごしらえしてレッスン再開だ!」
橋本は意気揚々と手近な楽屋を開けた。風にのって汗の臭いが漂ってくる。アイドルの楽屋のはずなのに何故か半年間掃除されていない野球部の部室のような異臭が充満していた。思わず顔が歪む。
「あ、はしもっちゃんじゃん何そのコスプレ、かわいーね」
中には岸くんと高橋がいた。高橋が回っているからこのこもった空気が部屋の中で拡散されている。そして臭いの源はこの汗だく男…
「お…お菓子くれなきゃイタズラするぞ…」
鼻をつまみながら橋本はなんとかそう口にしたが上手く発音できなかった。岸くんも高橋もきょとん、としている。
「なんだって?はしもっちゃん」
「何か用?お腹でも痛いの?」
橋本は不思議に思う。岸くん本人はともかく何故高橋はこの異臭の中平気な顔をして回っていられるのか。
「ティッシュ…」橋本はティッシュ箱を指さした。
「え?ティッシュ?あ、はい」
高橋が一枚取って橋本に手渡した。橋本はそれをちぎって丸めて鼻の穴に挿し込んだ。臭いが若干ましになる。
「お菓子をくれ、でないとイタズラするぞ!!」
やっとお決まりのセリフを口にすることができた。そこで「ああ!」と岸くんと高橋は手を鳴らす。
「ハロウィンか。なるほどなるほど」
「お菓子ねえ…僕はメロンパンしか持ってきてないけど…」
「メロンパンでもいいよ、ちょうだい」
橋本が手を差し出すと高橋はしぶしぶメロンパンを分けてくれた。が、岸くんはもう食べちゃってないという。さらにあろうことか橋本がもらったメロンパンを狙いだした。
こいつ鶏肉のスパゲティだけでなくメロンパンも奪おうとするなんてふてえ野郎だ。橋本はポケットに忍ばせたコショウ爆弾を岸くんに投げ付けた。
「コショウ爆弾より消臭ビーズの方が良かったかな」
岸くんのくしゃみと高橋の「あああ岸くんくしゃみも男らしい」という訳の分からない発言を背に橋本はそんなことを思いながら楽屋を後にした。
空腹を感じ始めた井上は早くお菓子をみんなで分け合いたい。急いで手近の楽屋のドアを叩いて中に入った。中には神宮寺と倉本がいてお約束通り神宮寺はエロ動画鑑賞、倉本はお食事中だった。
「おお!!みずきなんだそのかわゆい格好は!!この俺を癒しにきたのか!?」
おにぎりせんべいをばりばりやりながら倉本が目を輝かせた。
「ハロウィンプレイ!!お前ナイスアイデア!早速検索だ!!」
神宮寺もこれまた目を輝かせて神の指さばきでスマホをいじり始める。
「ハロウィンだよくらもっちゃん」
「ハロウィン?なんだそれは!ウィンナーの一種か!?」
倉本はぼんちあげをばりばりやりながら訊ねる。
「違うよくらもっちゃん。ヨーロッパの民俗行事で10月31日に行われる…」
「10月31日はお前の誕生日じゃねーか。んなことやってる暇ねーよ!ちゃんとその日は俺のために空けておけよ!約束しただろ!」
かっぱえびせんを口じゅうにほおばりながら倉本は井上を指差して確認を取る。
「ちゃんと空けてるよ…。でね、その日は仮装した子どもが家を一軒一軒訪ねてお菓子をくれって回って…で、お菓子くれなかったらイタズラするっていう日なんだよ」
「何!?お菓子がもらえんのか?てゆーか俺もお前と同い年の子どもだからそれをやってもいいわけだな。よし、神宮寺、お菓子くれ!」
倉本は神宮寺に右手を出した。左手はサッポロポテトを口に放り込んでいる。
「あ?お菓子?んなのねーよ俺はお前らみたいな子どもと違って食い気より色気だ。このあふれほとばしるフェロモンと一部に定評のある腰フリダンスを見よ!!」
神宮寺はドヤ顔で腰を振り始めた。悦に浸ってお菓子をくれるどころではない。
こりゃダメだ。諦めた井上はとりあえず倉本と一緒にコショウ爆弾を神宮寺に投げ付けた。
「コショウプレイか…お前らガキのくせにマニアックだな…へっぐし!」
転んでもエロなしでは起きぬ男、神宮寺はくしゃみを連発しながらまた検索を始めたのだった。
結局井上は倉本に「お菓子くれないと10月31日は先祖のお墓参りに行く」と半ば脅して倉本が8割食べ尽くしたポテトチップスコンソメ味をもらって退散した。
「しつれーしまーす。トリックオアトリート〜」
羽場はノックしながら楽屋のドアを開ける。楽屋かと思ったがなんだか中はそれっぽくなく豪華に改装されていて社長室のようだった。
間違ったかな?と思いかけているとアームチェアーに揺られてワイングラス方手に読書している誰かが見えた。
「あのー、トリックオアトリート」
とりあえずもう一回ハロウィンの決まり文句を言ってみるとその人物は羽場を一瞥した。
「なんだ君は。僕は読書中だ。遊びたいなら岸くんとかにしたらどうだ?同じレベルで遊んでくれるだろうから」
それはハニューダームだった。楽屋の中を勝手に異国テイストにしている。外国人のすることは分からない。
「お菓子くれないとコショウ爆弾投げるけどそれでもいい?」
「ちょっと待ってくれ今いいとこなんだ。やっと『ミナミの帝王』を51巻まで読み終えて…今週中には読破したいんだよ」
「粗筋かいつまんで教えてあげるからお菓子ちょうだいよ」
羽場が言うとやれやれ、とハニューダームは本を閉じた。
「先を読む楽しみがなくなる…お菓子?ああ、その格好…ハロウィンか」
やっと納得してくれたようだった。だがハニューダームは冷淡にこう言った。
「労なくして糧を得るなかれ。お菓子をもらうにはそれ相応の苦労をするべきじゃないのか?たとえばこの楽屋の掃除をするとか…」
「そんな時間ないもん。俺今日は早く帰って「VS嵐」観ないといけないし。今日は桜井くんが…」
羽場が尊敬する先輩の桜井翔の名前を出すとハニューダームの目がカッと見開いた。
「ほう…桜井くんが…君、嵐では誰が一番好きなんだ?」
「桜井くんに決まってんじゃん。尊敬してる先輩にも名前挙げるし」
ハニューダームの目は益々見開いた。
「なんと!ここに同志がいたとは!!そうと分かればこんなに爽快なこともない、好きなだけ持っていくといい!!」
何がお気に召したのか分からないがハニューダームは袋いっぱいのコンビニスイーツを羽場にくれた。
「マントでかいんだよな…ひきずっちゃってるし…」
林が若干サイズの合わない衣装にぼやきながら楽屋のドアを開けるとれあくりがいちゃいちゃの最中だった。だが中村は林を見て歓声をあげた。
「蓮音かわゆぅいぃ…!!なぁにその格好どぉしたのぉ?」
「ハロウィンごっこ。お菓子もらって皆で食べるんだよ。だからちょうだい、れいあ君」
林が両手を差し出すと、中村は頭を撫でくり撫でくりしながら愛で始める。だが栗田は面白くなさそうだ。
「れいあそいつ可愛がりすぎ!」
「だってぇ可愛いんだもん。このつぶらな瞳とかぁちっちゃい体型とかぁ長い髪の毛とかぁ全部ひっくるめて小動物っぽいとことかぁ」
「俺の方がかわいーし!このサラサラ髪と酒ヤケ声とゲハゲハ笑いと拒食症一歩手前の度を超えたスレンダー体型は誰にも真似できねーし!栗田オリジナルチャームポイントだし!」
「もう栗ちゃんやきもちやきだねぇ…」
中村はにこにこと二人を見据えている。林はもう一度お菓子ちょうだい、とねだってみた。中村は気前よく自分の鞄からお菓子を出し始める。
「えっとぉ…パインガムとメロンパンスナックとしみチョコとガルボあるけどどれがいーい?」
「んーとじゃあしみチョコにしよっかなー」
「れいあ俺にも!!」
「あーでもメロンパンスナックもおいしそうだなー」
「てめさっさと決めろよ!!俺とれいあの時間が減るじゃねーかよ」
「もう栗ちゃん蓮音にそんなきつく言っちゃだめぇ」
中村が頬を膨らませると栗田が拗ね始める。幼児のように手足をばたばたしながら喚き散らしだした。
「やだやだやだやだ!!!れいあは俺だけ可愛がってくんなきゃやだやだやだやだやだ!!!!」
「もう栗ちゃん小学6年生相手に対抗心燃やさないでぇ。蓮音ごめんねぇ栗ちゃんやきもちやきだからぁ」
子どもの特権でお菓子をもらいに行ったのに更に低い精神年齢の栗田のおかげで林は微妙な気分でメロンパンスナックだけをもらって楽屋を後にした。
ここまでの流れで勘のいい人なら察していると思うが金田が開けた楽屋にはちょうどきのこ狩りについて調べている谷村がいた。
金田は慌ててドアを閉めた。だが慌ててしまったためマントのはしをドアに挟んでしまった。
「金田くん…」
ドアが開き、地獄の底から絞りだされるような重低音が自分の名を呼んだ。金田は腰が抜ける。
「ああああああああ嫌だあああああああ喰らえ!!ジャックランタン!!ジャックランタン!!」
動転していたため、コショウ爆弾ではなくかぼちゃのランプを金田は谷村に投げ付ける。が、それてしまった。
「その格好はハロウィンだね…そうかお菓子…お菓子、あったかなあ…」
にたりと谷村は笑った。お菓子と引き換えに宇宙に連れて行かれる…金田は12年と7カ月の人生が走馬灯のように駆け抜けて行った。
「『きのこの山』で良かったら…」
「いいいいいいいいいいいりません欲しくありません間に合ってますだから連れてかないでフシギダネミュウツーエレキブルオニゴーリカモネギジュペッタヤナッキーモココルンパッパピカチュウげんきでちゅう!!!!!!!!!」
無我夢中でポケモンの名前を唱えていると誰かが通りかかる。金田は藁をもつかむ思いでその人物にすがった。
「おや金田。どうしたそんなに慌てて。なんだその格好?」
それはチュウガクイチネンジャーの元さんこと松田だった。金田は助けを求める。
「ちょっと助けてよ元さん!宇宙に連れていかれる!!」
「宇宙…?あ、谷村くん」
松田は谷村の名をすらりと呼んだ。何故か松田は超自然体で谷村に話しかけている。金田には信じられない行為だ。
「やあ松田くん…あ、金田くんこれ『きのこの山』…」
不気味な笑顔で谷村は『きのこの山』の箱を金田に差し出してきた。これを受け取ったら最後、宇宙へのご招待…
金田が気を遠くに飛ばしていると、松田が諭してきた。
「金田、人からものをもらったらちゃんとお礼を言わないと」
うるせえじじい、と言いかけてあ、こいつ俺と一つ違いだっけ…と金田は思い直す。だが松田がいればそうやすやすと宇宙に連れ去られることもないだろう、と判断し震える手で『きのこの山』を受け取った。
「ど、どうも…」
「何をそんなに緊張してるんだ金田。君は谷村くんとペアで撮影したこともあるだろ?」
嫌なことを思い出させるな、と金田は松田を睨んだ。あの時俺がどれだけ恐怖に寿命を縮めたか…。
「か、金田くん、それ似合ってるね…」
ぼそっと谷村が視線を下に落としながら呟く。これ以上長居は無用だ。というか危険だ。金田は逃げるように楽屋に戻った。とりあえず今回は超音波発声の事態に陥らなくて良かった、と心底安心する。
ロクネンジャー達が戦利品のお菓子をみんなでぱくついている頃、神7達も彼らに影響されてハロウィンごっこをしようとしていた。
「パンがなければお菓子をお食べ!!だっけ?コスプレこれであってる?」岸くんは何か勘違いをしていた。
「岸くんメロンパンならいくらでもお食べ…なんちゃってごにょごにょ」高橋も方向性がズレていた
「うおおマント萌えー!ハロウィンプレイ!!お菓子くれなきゃイタズラ(性的な)しちゃうわよーってか」神宮寺は一人悦楽の世界だ。
「おいてめーらいいからお菓子出せ!俺は子どもだぞ!!」倉本は都合のいいところだけを抜粋している
「ほうマントもなかなかいいもんだな…これにとんがり帽子か…ほうほう」羽生田は意外にコスプレにノリノリだ
「れいあ魔女コス―!!魔女コス―!!」栗田は興奮しきりである。
「もう栗ちゃんたらぁ…僕スカートなんか穿かないよぉ」中村には意外なこだわりがあった。
「金田くん『きのこの山』食べてくれたかな…」珍しく谷村は金田を泣かさずすませたことに大満足だった。
それぞれ盛り上がったはいいが盛り上がりすぎてこの後の収録に8人揃って遅れてしまい最年長の岸くんが無駄に怒られてしまったのは言うまでもない。
さすがに誰も鬼ヤクザの元へ「Trick or treat!!」と訪れる者はいなかった。
END
475 :
ユーは名無しネ:2012/10/28(日) 22:44:08.78 0
作者さん乙
たにーまるでホラー映画w
作者さん乙です
ちゃんと、約束守ってる瑞稀くんに一安心
477 :
ユーは名無しネ:2012/10/29(月) 02:42:50.89 0
こういう季節ものもいいですね
来年には離れ離れになってるかもしれないし・・・
季節物といえばきのこ狩りはいつ行くんだ?w
ふうきゅんが少クラで行きたがっていた紅葉狩りもいいね
479 :
ユーは名無しネ:2012/10/29(月) 19:21:22.99 0
作者さん乙です!季節ものも面白い!
たにーのお菓子はきのこの山だったのかw
金田くんポケモンの名前唱えてるのワロタ
作者さん乙!
ロクネンジャー相変わらず生意気で可愛いな…
子供の特権利用するくらもっちゃん可愛いwww
瑞稀覚えててくれてよかったね!
マリーアントワネット岸くんワロタwwwww
谷茶すっかりげんげんと打ち解け、げんげんのおかげで超音波免れてよかったねwww
まだ15歳。もう15歳。神7の誇り高きエンペラーに捧ぐ
「ようやくR指定解禁か…」
秋の真ん中。穏やかな日差しと薫る風を受け、今日も絶好調の神宮寺勇太は黄色い声援を受けながらレッスンスタジオに入る。
俺は誰だ?と自問する。そしてまた、自答する。俺は神宮寺勇太だ、と。千葉が生んだチャラエロエンペラーは大人への階段をまた一つ登ろうとしている。
奇しくも自身の誕生日が事務所入所日。そう、二年前のあの日、俺の運命は大きく動き出したのだと感慨に浸る。浸っていると後ろから肩を叩かれた。
「よーっす。神宮寺。何か新作ない?」
岸くんだった。もう日によっては肌寒いこともあろうというのに相変わらず玉のような汗をその額に浮かびあがらせていた。季節はどうやら関係ないらしい。
「岸くんよ、これを見ろ!!」
待ってましたとばかりにスマホを高橋名人ばりの指さばきで操作し、画面に秘蔵コレクションの一つを映し出す。岸くんは大きな目を更に開かせて画面に釘付けになっていた。その横を通りすがりに、
「神宮寺くん!ちょっと悪いけどスマホ貸してくんないかな!ぼぼぼ僕ちょと路線検索したいけど生憎携帯忘れてきちゃって。だからちょっとこれ消すね!ありがと!」
高橋がまくしたて、神宮寺の手からスマホを奪う。なかなか最近は行動的になってきたなと感心しつつも神宮寺は彼にこう耳打ちした。
「高橋、後で岸くんのお昼寝動画見せてやろうか?ん?」
「ななななななななんだって!?いいいいいいいつそんなの撮って…答えようによっちゃ生かして返せな…いやなんでもごにょごにょ…」
高橋はなおもごにょごにょ言いつつ神宮寺にさりげなく握手をし、その意志を示した。
「相変わらずだな君達は」
羽生田が肉まん食べ食べ通り過ぎる。コンビニの袋にはこれまたどっさりとホットスナックが詰められていた。その後ろから今日もいちゃいちゃれあくりこと中村栗田が手を繋いでお出ましだ。
「何やってんのぉ高橋と神宮寺ぃ」
「ギャハハハハ!お前ら揃いも揃ってアホだな相変わらず!」
じゃれあいながらスタジオに入ると倉本が団子方手に生意気な視線を向けてくる。
「お前ら中三のくせにほんとガキだよなー。俺とみずきを見習えよ」
その井上は何故か谷村を投げ飛ばしていた。じゃれあいなのかマジなのかは分からない。
そんなこんなで今日もレッスンは始まる。気を抜いていると鬼ヤクザに東京湾に沈められるから休憩中はふざけあってもレッスン中は韓国軍隊ばりに過酷そして真剣そのものである。
もちろん神宮寺もこの時ばかりはチャラもエロも一切切り捨てて気合いと集中で乗り切った。そして休憩時間…
「神宮寺、明日のレッスン終わりにささやかながらお前の誕生祝いするからバースデーコメントの一つも考えといてよ」
岸くんが言うと、皆うんうんと頷く。まあこれまでの流れからしてこの俺の誕生日を皆で祝うのはあたりきしゃりきだろ…そう思いつつもやはり嬉しいものは嬉しい。神宮寺はハイテンションで返す。
「俺焼き肉がいいな〜!あとプレゼントはやっぱエロアイテム関連で頼むわ!岸くん兄貴いるんだったらさ、ちょっと俺のために18禁アイテム調達とかわけないっしょ。
あと中村は俺のために一日くらい自由にさせてもらってもいいだろ?な、栗田?はにうだ、お前こないだ海外行ったっつってたから当然海外のAVぐらいはあるんだろうな?」
神宮寺の軽口に皆で笑い合う。和気藹藹としたした時間にレッスンの疲れも軽く飛んでいく。14年と11カ月の人生の中で今は最も輝いている時だと神宮寺は自覚する。そして更なる輝きに向かって突き進んでいくのだ。
今の自分ならなんだって叶う気がした。一歩一歩着実に歩んできているしドラマ出演と言うその第一歩も叶った。だから不可能なことなんてない。そう確信していた。
「よ。神宮寺」
レッスン終わりに声をかけられ、神宮寺は振り返る。そこには「バカレア組」のメンバーであるルイス・ジェシー、松村北斗、田中樹、高地優吾らがいて彼らもちょうど帰る頃だった。
「あ、ども。お疲れっす」
軽く頭を下げるとルイス・ジェシーにくしゃくしゃと頭を撫でられる。「スプラウト」共演でこうした年の近い先輩との距離も一気に縮まり可愛がられだした。喜ばしいことである。
「神宮寺最近マジかっこ良くなりだしたな。俺らん中で「セクシーぐうじ」けっこうキテるぜ」
松村北斗が柔らかい笑顔をたたえて言った。この大人びた雰囲気、とてもではないが岸くんと同い年とは思えない。二年後、俺もこんな風にきっとなっているはず…神宮寺は密かにシュミレーションしていた。
「そうそ。オシャレだしな。今度どこで服買ってんのか連れてってよ。おごれとは言わねえからさ」
田中樹が冗談まじりに軽快なノリで肩を叩いてくる。Jrが選ぶJr大賞で恋人部門第一位の男はさすがに人を楽しませるツボを心得ている。まさに内面からのかっこよさ。これも神宮寺の憧れだ。
「俺より全然大人っぽいね」
高地優吾が呟くと周りは「そりゃそうだろー!」と受け始める。この気さくさ、さりげないかっこよさ、彼もまた神宮寺の憧れを刺激してくる。
「駅まで行くだろ。一緒に行こうぜ。岸くんは先帰ったん?」ルイス・ジェシーが周りを見渡す。
「あ、ハイ。俺のためにAV…じゃなくて俺のプレゼント買いに急いで帰るっつって…俺明日誕生日なんで神7みんなで盛大に祝ってくれるみたいで」
「マジ?おめでとー!いくつになったー?」
「プレゼント買いに急いで帰るなんて岸くんいいヤツだな」
「神7みんな仲いいな。お前らいいグループだな」
「そういやさっき慎太郎、中村と一緒に帰ってったけど後ろで栗田が凄い眼で見てたぞ。あいつシャーマンみたいだった」
神7を褒められて悪い気はしない。神宮寺は答えた。
「まー普段はわちゃわちゃしててまとまりないっすけどねー。ま、俺の誕生日くらいは一致団結して祝ってもらわないとって感じで」
バカレア達は笑う。そして口々に神宮寺を褒めてくれた。
「神宮寺ドラマ出演もしたし、コンサートの歓声も凄いらしいな。ファンもめっちゃ増えてんじゃん」
「努力家だしな。ドラマも初めてなのにすげーがんばってて俺らも勉強になったよ」
「いやそんな…でも俺なんてまだまだだしデビューするまでに勉強することだらけで…まー神7の奴らには負けたくないですね。やっぱ仲間でありライバルなんで」
そう、神7の中では何にしても誰にも負けたくはない。それは年上である岸くんに対してもそうだし同い年のメンバーや年下にはなおのことだ。仲間でありライバルであることは常に念頭に置くようにしている。
それを聞いて、松村北斗が真剣な顔で頷いた。
「その通りだな。お前よく分かってるよ。俺らだってこんだけ仲いいけどやっぱライバルだし。いつ誰がどういう形で引き抜かれていくのか、脱落していくのか分かんない世界だしな」
「え…」
その遠くを見据えた鋭くも深い意志の宿った眼差しに、神宮寺は一瞬たじろいだ。
「今こうやって平気な顔してるけど、去年の今頃けっこう落ち込んだしな。でも今はこれで良かったと思ってる。負け惜しみじゃなくてな」
松村北斗は田中樹の方を向いた。
「そうそ。俺だって去年の今頃は自分がこいつらと一緒にやってるとは思わなかったし」
田中樹がペットボトルに口をつけながら言った。その横でジェシーが頷きながら、
「ちょうどHHJが解体されて…俺らどーなんだって二人で語り合ったもんな」
「…」
神宮寺が言葉を失っていると高地優吾が口を開く。
「俺も悔しかったよ、正直。でもいくら悔しがってもどうにもならないし、とにかく前見るしかないってそれだけが支えだったかな。ま、俺は劣等生だったからこんな気持ち抱くことすらおこがましいって感じだったけどね」
「ある日突然、残酷な展開が訪れるのが珍しくない世界だからな。絶対なんてないんだって」
「…」
返す言葉がなく黙りこくっていると、田中樹が「おいおいおい」と少しおどけて言った。
「お前らあんまシリアスになんなよ!ほら神宮寺ドン引きじゃねーかよ」
「あ、いや…そんな…」
「お前は大丈夫だよ神宮寺。このまま突っ走っていけるって」
松村北斗の瞳はもう元の穏やかな色を取り戻していた。
神宮寺は返事をすることができなかった。それは松村北斗の言葉に疑問を感じたからではない。彼らの仲の良さやグループとしての存在感は神7にとってまさに手本のようなものだ。ずっとそう思っていた。
だけど彼らは最初から同じグループだったわけではない。森本慎太郎はスノープリンス合唱団、ルイス・ジェシーと田中樹はHHJ、松村北斗と高地優吾はB・I・Shadow、京本大我も違うメンバーと活動していた。
それが今、「バカレア組」として一つのまとまったグループになっている。しかしそれすらいつ解体されるかも分からない。
神7は?
俺達は一年後、この8人で変わらずいることができるだろうか…。
ふとそんな不安がよぎる。考えたことがないわけではないが、改めて思うと脆い結びつきであることは否定できない。しかも、それは自分達の意思ではどうにもならないことだ。
所詮は誰しも駒の一つに過ぎない。打ち手があっちへこっちへ動かすことによってどんなに固い結びつきも簡単に崩れてしまう。それは嫌というほど目にしてきている。
もしかしたら一年後は全く別の奴と…
「…って俺何センチメンタルになってんだよ!キャラじゃねえ!俺は誰だ?神宮寺勇太だぞ!将来のスーパースターだ!俺に不可能はない。何故なら俺はエンペラーだからな!!」
通行人が振り返るほどの大声を出して不安を払拭する。そんな不確定な未来への恐れよりも今成すべきことがあるはずだ。俺は先のことより今のこと重視だ。そう思考を切り替え、神宮寺は帰路に着いた。
夢を見た。
運動会の徒競争。大歓声の中神宮寺はスタートラインに立つ。鉢巻をしっかりと締め「よっしゃ」と手を叩いて構えた。
「負けないぞ神宮寺」隣に岸くんがやる気まんまんで微笑んでいた。
「僕だって。走りには自信があるよ。陸上部だからね」反対側の隣で高橋も目をぎらつかせている。
「俺が負けるわけねーだろ」倉本も不敵な笑みを浮かべている。
「この僕の人生に敗北の二文字はいらない」羽生田も涼しい顔をしているが目が燃えている。
「僕もぉ負けず嫌いだしぃ」いつもふわふわの中村も真剣な眼差しだった。
「お前らがこけて俺が一位になる!ギャハハハハ!」栗田の悪魔発言は記憶に新しい
「とりあえずやるだけはやってみようかな…」谷村も静かに闘志を燃やしていた。
なんだ、神7で徒競争か…とぼんやり理解したところでピストルが甲高く鳴った。神宮寺は無我夢中で走った。
体が軽い。スピードが面白いように出る。今なら空も飛べそうな気がした。
前には誰も見えない。ということはトップだ。このままぶっちぎってゴールテープを切れば一着だ。
ゴールテープが見えてくる。神宮寺は最後まで全速力で駆け抜け、テープを切った。
「よっしゃあ一着うううう!!!」
ガッツポーズと雄叫びをあげて振り返る。だが…
「…?」
そこには、誰もいなかった。
「あれ…?」
何故か一緒に走っていたはずの神7達の姿は消えていて、どこにもいなかった。神宮寺が不思議に思っていると肩を叩かれる。
「おめでとう!ぶっちぎりだったな」
どこかで見たことがあるような、ないような…しかし今はっきりとその名前が出てこない。イケメンのちょっと年上っぽい少年達4〜5人が神宮寺に向かって拍手をしている。
「さすが神宮寺」「お前ならやると思ってたよ」「さ、祝賀会だ。行こうぜ」
誰だあんた達、と言おうとしても声が出ない。そうしているうちに腕をひっぱられてどこかへ連れて行かれようとしてた。なんとなく本能的に行くわけにはいかないと感じ、抵抗する。
「ちょ…ちょっと待ってくれよ!」
ようやく声が出て振り返ると、神7達が見えた。みんな楽しそうに談笑している。だが神宮寺には気付かないようだ。
「岸くん、こいつら誰?高橋、おい俺ここだぞ!倉本、はにうだ、ちょっとなんとかしてくれよ。中村、栗田、谷熊、気付いてくれよ!おい!」
だがいくら叫んでも神7達は聞こえないのか気付かないのか神宮寺の方を向かず去って行った。
「おい!!みんな!!!おいってば!!!」
そこで目が覚めた。
神宮寺は若干重い足取りでレッスンに向かう。スタジオまでの道のりにはオリキの女の子が山のように待ちかまえていた。去年の今頃は数えるほどしかいなかったのに…。昨日まではそれを心地よく思っていた。
『お前は大丈夫だよ。このまま突っ走っていけるって』
昨日、松村北斗に言われた言葉がふと頭をよぎった。彼は激励のつもりで言ってくれたのだろうが、神宮寺の今の精神状態はこう捉えていた。
突っ走った先に、自分一人だけになっていたら?
夢見た世界に、大切な仲間がいなかったら?
松村北斗のように、「これで良かった」と思えることができるだろうか。逆に、自分が抜けたことを「これで良かった」と思われていたら…?
「神宮寺どうかした?」
気付くと、きょとんとした岸くんの顔が目の前にあった。その隣で高橋も同じような顔をしている。
「Wゆうた」として日々コンビ愛が増して行っている中、急にそれを引き裂かれたとしたら…
あんなに仲良くしてたのに、もう存在自体忘れられてしまったら…
「おやどうした?神宮寺なんか顔がおかしいぞ。『俺はいつでもどこでもセクシーボーイズだぜ!』なんてうそぶいてるくせに」
羽生田が不思議そうな顔をして見る。
「Sexy Boyz」というユニットも、神7解体への第一歩かもしれない。現に中村は栗田と離されている。彼らがそれをどう思っているかが気になった時、本人達が通りかかる。
「おはよぉ。なになに何話してるのぉ?」
「神宮寺何アホなツラしてんだ?拾い食いでもしたのかよギャハハハハハ!」
中村と栗田は神宮寺より少し先輩である。「スノープリンス合唱団」という期間限定ユニットを経て今がある。そのスノープリンス合唱団のメンバーも弟組は未だロクネンジャーや歌舞伎などの舞台で一緒に活動しているが、兄組はバラバラである。
殊に、大塚祐哉の退所は少なからず二人に打撃を与えたことは神宮寺も知っている。いつもアホ笑いの栗田がいつになく元気がなかったのは記憶に新しい。
「お前らほんと毎日毎日飽きもせずおんなじことの繰り返しだなオイ」
バナナをむしゃむしゃやりながら倉本が通り過ぎる。こんな食欲の権化である倉本も、セクシーゾーンのメンバーから漏れた時は幼いながらに思うところがあったらしい。神宮寺もそうだった。あの時のことを神宮寺は思い出す。
悔しかった。
同期が、後輩がデビューして、自分は取り残された気分だった。がんばっているのに、それが評価されなかったことへの怒りと悲しみ。今思い出しても胸のあたりが重くなる。
また同じ思いをするのは嫌だ。
だから、自分にできることは最大限努力してきたし今それは実を結びつつある。
だからこれでいい。そう思っていたのに…。
ここへ来て、出口が見えなくなってきた。いや、その出口が本当に自分の望む未来へと導いてくれるのか、そこに疑問が生じてしまった。
「なあ、中村、栗田…」
休憩中、神宮寺は中村と栗田に問いかける。二人は目をぱちくりさせながら首を傾げた。
「なぁに?」
「んだよ変な顔して神宮寺。お前が変なのは性癖だけで十分だぞ」
「お前ら…スノプリでいたかったって思う時ある?」
中村と栗田は目を合わせる。
「どういうことぉ?」
「おめーまじでなんか変なウイルスもらってんじゃね?オ○ニーのしすぎは良くねーぞギャハハハハ!」
栗田にはギャグで済まされたが、中村がその後話しかけてくる。
「さっき言ってたことだけどぉ…僕はまだ入りたてで必死だったしぃ栗ちゃんのことも好きだったけどぉグループってどういうもんなのかまだ分かんなかったから「いたかった」って思うこともあるけど…
それより色んな覚えなきゃいけないことが押し寄せて来て考える暇もなく神7になっちゃったって感じかなぁ」
「…だよな。俺だって入りたての頃なんか先のことより今のことだったしよ」
「だけどね、栗ちゃんはスノプリが良かったなぁってちょっとだけ思うことがあるって。祐哉が辞めた時そう言ってた」
中村の目は少し遠くを見ていた。
「栗ちゃんはねぇ、祐哉と本当に仲良かったのぉ。ちょっとやきもちやくくらい」
「…」
神宮寺が黙っていると、中村は笑顔を作ってこう問いかけてきた。
「どうしたのぉなんか神宮寺らしくないぃ。下ネタは嫌だけどぉいつものチャラくてエロくてぱっぱらぱーな神宮寺に戻ってぇ」
なんとなく、中村は神宮寺の言わんとすることを感じとっている気がした。その上でこうして少し茶化してきたのだと神宮寺は理解する。きっとこれはあまり触れてほしくない部分なのだと。その痛みが風化するのをただひたすら待つしかない。そんな苦い経験だ。
「いや俺ももう15だしよ、ちっとは大人になんなきゃって感じでエロチャラの中にもアダルトな雰囲気出していこうって感じで…そんなわけでちょっと俺のアダルト講座のために協力しろ中村!」
「えっちょっとぉやめてよ神宮寺ぃ」
拭えない迷いと不安を無理矢理断ち切るようにおふざけでごまかそうと神宮寺は努める。中村に覆いかぶさろうとするとどこからかやってきた栗田の鉄拳によってそれはたやすく阻止された。
わらわらと他のメンバーも集まり、わちゃわちゃが始まるとほんの少しだけ気は紛れて行った。
「お望みどおり焼き肉にしたよ!とりあえず食おう。腹減ったー!」
レッスンが終わり、神7一行は岸くんの選んだ焼き肉店へ直行した。その頃にはもう神宮寺の中には不安も迷いも豆粒大ほどの小さなしこりになっていた。空腹と疲労が逆にいい緩和剤になっているという感じである。
「んじゃまあ神宮寺の15歳を祝いまして…かんぱーい!」
岸くんの音頭で烏龍茶のジョッキ方手に神7達は乾杯をした。周りは会社帰りのサラリーマンだらけで少々浮いていたが肉が運ばれてくると誰しもそんな細かいことは気にせずとにかくがっついた。
「おい岸くんそれまだ生焼けだろ!せっかちすぎんぞ!」神宮寺は岸くんの箸を箸で止める
「岸くんこの塩タンそろそろいい頃合いだよ」高橋はちゃっかり岸くんの隣を陣取っている
「おいはにー、それ俺が狙ってた肉だぞ!お前はピーマン食っとけよ!」倉本の勢いは凄まじい
「まったく…もう少し落ち着いて食べられないものかな…おっと倉本それは僕が育てた肉だぞ」羽生田は光の速さで箸をさばいて自分の肉を守る
「栗ちゃんタレついてるよぉ。あ、こんなにこぼしてるぅダメだよぉ」中村は栗田の介護に専念している
「れいあ食べさしてー」栗田は幼児がえりだ
「あの…俺まだ一つも肉食ってないんだけど…」谷村の声は肉が焼ける音に吸い込まれていった
育ち盛り8人はあっという間に大量の肉やら何やらをたいらげていく。ブラックホール一匹を擁しているためその消費量はハンパではない。だんだんと隣付近が目を丸くして注目し始めた頃…
「おめでとうございまーす!」
誰かがそう叫んだかと思うと神7達のテーブルに蝋燭を立てたケーキが運ばれてきた。店員がにこにこしながらケーキと着火マンをテーブルに置く。
「え、なにこれ?」
神宮寺はきょとん、とした。その横で岸くんが「あ」と手を叩いた。
「そうだそうだ思い出した。この店一日ひと組限定でバースデーケーキの無料サービスがあるんだよ。予約する時に誕生日会だって言えば抽選の対象になるって…」
「ほんとに!?凄いじゃん岸くん!」高橋が叫んだ。
「たまにこういうところで運の良さを見せるよな岸くんは」羽生田はメロンジュースをちびちびやりながら呟く。
「ケーキだケーキ!早く食おうぜ!」倉本の目はもうケーキに釘付けだ。
「じゃあ火、つけるねぇ」中村が手際よく蝋燭に火をつけてゆく。
「すんませんみなさん!今日こいつ誕生日なんでー!!」栗田が酒ヤケ声を店内に響かせる。
「やっと肉が食える…」皆がケーキに目が言っている隙にようやく谷村は初めての一枚が回ってきた。
「よ!おめでとー!!」
どこからかそんな声が響くと、周りの客も口々に神宮寺に祝いの言葉を投げかけ始めた。
「お父さんお母さん大切にしな!!」「立派な大人んなれよ!オジさん達みたくなんじゃないぞ!」「バカヤロー俺だってなあ!」「人生これからだぞ!」「そこのボク可愛いな…ん?れいあ君っつうの?どう?オジさんと今晩?」
「ども。どもども」
神宮寺はまるでディナーショーの演歌歌手のように周りに頭を下げ始める。そして岸くんが促した。
「じゃ神宮寺さん、コメントお願いしまーす!」
岸くんのフリで、何故か店内は静まり返り、神宮寺に注目が集まる。それを受け、神宮寺はソロコンサートばりにノリノリMCを披露し始めた。
「えー、ども!神宮寺勇太と申します!今日で15歳になります!まあ15歳っつーことでようやくR指定解禁だしこれからもエロエンペラーとして日々精進していきまっす!
夢はもちろんデビューでゆくゆくはハリウッド進出なんかしちゃったりしましょうかね!この店気に入ったんでまた来年もここで俺の誕生日会あると思うから皆さん良かったら神宮寺16歳のバースデーパーティーにどうぞ起こし…」
急に、視界が揺れた。
「くだ…さ…」
喉が詰まる。何故か、声が出ない。
「神宮寺?」
皆のきょとん、とした顔がだんだん滲んでいく。神宮寺は頬に何か熱いものがつたっていくのをぼんやりと感じた。
泣いてしまっているのだと気付く。困ったことに自分ではどうしようもなかった。
「どうした兄ちゃん!感極まったんか?」
「おおーいいぞいいぞ!」
おっさん達がはやしたてる。だけど神宮寺には答えることができなかった。
来年も…
この8人で…
いられるの?
たった今まで目の前で機嫌よく焼き肉を食べていたメンバーが今は目の前に映らない。今朝見た夢がフラッシュバックし、精神を揺さぶってきた。
振り返ると、誰もいないあの光景が
「嫌だ…」
こんなに楽しい今が、ただの思い出の一つとして風化し、忘れられる。皆は皆でいるのに、俺一人だけ…。
例えそこが、夢見た世界でも、この8人じゃなきゃ嫌だ。
「ずっと神7でいたいよ…」
震える声で、やっとそれだけを絞り出すと、途端、大きな笑い声が轟く。
笑い声の主は立ち上がった。神宮寺の失われた視界にその姿がぼんやりと映し出される。
「おめーアホだな!メガトン級のアホだな!それともなんかのネタかそれ!ギャハハハハハハハハ!」
栗田の爆笑する姿に、神宮寺ならず他のメンバーも茫然と見入っていた。
そして栗田はこう叫んだ。
「俺らは神7だろうがよ!!いつでもどこにいようとも何があろうとずっと神7に決まってんだろ!なーに当たり前のこと言ってんだまじウケる!!」
栗田の眼には一点の濁りもなかった。
それはきっと痛みを一度知った者だからこそ持つ純度。もう二度と離すまいとする…
神宮寺がそこに気付くと同時に、弾かれたように他のメンバーも声を出して笑い始めた。
「皆さんすみません、この神宮寺という男はですね、なかなかの名優でして…。あ、「スプラウト」ってご存知ですか?それに出てまして…」岸くんが終わったドラマの宣伝をし始めた。
「諦めるな!」高橋は松岡修造の物真似を始めた。
「ケーキ食うぞケーキ!」倉本はケーキのことしか頭にない。
「ハリウッド進出を最初に唱えたのは僕だからな」羽生田は何故かドヤ顔だ。
「もお〜神宮寺って面白いねえ〜」中村は穏やかな笑みを見せたがその向こうでどこか安心したような眼をしていた。そしてその右手はがっちりと栗田の左手と組まれている。
「カルビよりロースかな…」谷村は一人で肉を焼いている。
「それともよ、マジで俺らが催した誕生会に感激して泣いちゃってんの神宮寺!?」
栗田が茶化すと、神宮寺は急に羞恥心に襲われて慌てて涙を拭った。何やってんだ俺は。一体何をそんな泣くようなことがある?何をそんなに不安がってた?
馬鹿馬鹿しくって腹立たしくて情けなくて悔しくて恥ずかしくて可及的速やかにごまかさなくてはならない事態に陥るともう涙も不安も恐れも吹き飛んで行った。
「なわきゃねーだろ!これはな、ドラマ出演の先輩としてお前らに演技とは何かを実演してやってんだよ。いつでもどこでも泣けるのが名優ってもんだぜ!まー俺は次は月9で主演ぐらいはオファーくるだろうから参考にしろよ君達!」
そしてまだ火を消していないケーキにフォークをぶっ刺すとそのままむしゃむしゃ口に入れる。蝋燭が落ちてテーブルが焦げそうになり岸くんと高橋が慌てて鎮火した。
「あーうめー!!ケーキはやっぱ苺に限るな!諸君、それではプレゼントタイムといこうか!」
神宮寺は口の周りについたクリームを舐めた。呆れた神7達の顔がそこにあった。が、みんな笑い出す。
「すみません皆さん、この神宮寺という男はですね、少々どうしようもないところがありまして…ハイこれ俺から」岸くんは客に頭を下げつつビニールの袋を神宮寺に手渡した。
中身を見た神宮寺は歓声をあげた。
「うおーーーーーー!!!!これがウワサの無修正裏ってヤツ!?岸くんサンキュー愛してるぜ!!」
「ちょ…神宮寺、声がでかい…」岸くんは人差し指を立てた。
だがしかし神宮寺はテンションマックス状態にあり岸くんの制止を無視し高らかに叫ぶ。
「よし皆、今日は俺ん家でこいつの上映会だ!!何、心配すんな。俺の部屋は畳の6畳間だが8人くらいは無理すりゃ入る!!行くぞ我が家へ!千葉へようこそ!!今日は8人でオ○ニー大会だ!」
神宮寺は高々と岸くんにプレゼントされた無修正DVDを掲げた。
「ちょ…神宮寺いい加減にしろ!あああ皆の目が!俺の名前で予約してんだから…」岸くんは大慌てで滝のような汗を流した。
「じじじじじ神宮寺くんそんな卑猥なもの岸くんにねだったの!?最低すぎるだろオ○ニーは一人でやってろおおおおおおおおおおおおおおおおおお」発狂した高橋はテーブルの上でヘッドスピンを始めた。
「ムシュウセイってなんだ?あんまうまそうじゃねーなー」倉本は残りのケーキを頬張る
「あ、もしもし母さん?駅まで迎えの車よこしてくんないかな。うんそうなんとなく電車で帰りたくなくてね」羽生田は他人の振りで電話をしている
「栗ちゃん絶対ダメだからねぇ」中村は谷村に向けるような絶対零度を栗田に向けた
「俺そんなの見たいなんてちっとも思ってないしー」しかし栗田は目を逸らした
「…」谷村はパッケージがちらっと視界に入っただけで鼻から赤い液体を噴射し白目を剥いて倒れた。
大騒ぎをして店内をしっちゃかめっちゃかにした神7達が出禁になったことは言うまでもない。出血多量の谷村を高橋が抱えながら神7達は「Thunderbird」を熱唱しつつそれぞれの帰路に着く。
「んじゃな。神宮寺」
路線の乗り換えで神宮寺は神7達に手を振って別れた。帰りの電車はまた長かったがそれでも神宮寺の中にはもう不安はなかった。
俺は神宮寺勇太だ。不可能も可能にする男。
俺が願えばなんでも叶うはず。そう、神7でデビューなどちょちょいのちょいだ。何故なら俺はエンペラーだから。
とりあえずその第一歩に…
「よし!今日はこの岸くんからのプレゼント無修正裏DVDで夜通しオ○ニーだな!!そして今年こそ脱・童貞!!」
神宮寺の周りにいた乗客は潮が引くように散って行った。
END
作者さん乙!
神宮寺おめでとう!
神宮寺も無駄に腰回したりしながらいろいろ悩んでるんだろうな…
そんなときこそ仲間とエロ動画だ!
神宮寺どんどん公共の場で変態晒すようになってるwww
作者さん乙です!そして神宮寺おめでとう
来年の今頃はどうなってるのかなぁ
どうか神7達が幸せでありますように
作者さん乙です!じんたんおめでとう!
いつでもどこにいようとも何があろうとずっと神7に決まってんだろ!って
栗ちゃんのセリフが滲みますなあ
9〜12月は毎月誰かがバースデーなんだね
君が好きだから、愛をこめて捧ぐ。素敵な一年になりますように
「あんたは真面目だから大丈夫」
そう言われて手を引かれてオーディションに行ったのが井上が8歳の時だった。会場には大勢の男の子がいた。みんな自分より年上らしくて中学生も多そうだった。
その時の記憶はぼんやりとしかない。ただ言われたようにダンスをして、訊かれたことに答えた。体操を習っていたからそれをアピールすると印象が良かったのか合格の知らせがすぐに来た。
「You達今日からスノープリンス合唱団だよ」
なんのことか井上には分からなかった。入所が決まってすぐそう言われて、撮影をするからとスタジオに集められた。
自分と同じくらいの年の子もいて、その中にはオーディションの時に見かけた子もいた。女の子みたいな名前と顔で見かけによらずスケボーに乗ってアピールしていたから良く覚えている。一緒に合格したのだ。
ジャニーズJrとしての活動は当初はしんどいことだらけでくじけそうになることも多々あった。
だけど地道にコツコツ続けているうちに少しずつ要領も覚えてきたし同い年の橋本や羽場、年下の千野らには負けたくないという意地もある。それがいい励みになっていた。
「ねー、この曲の振り付け分かんないんだけど教えて」
入所して一年経った頃にはもう新しい子達が入ってきていた。一年いると色々要領も分かってきて、その時のイベントで振り付けを教えてあげるとその子は井上をいたく気に入ったようだった。
「俺倉本郁!小4だ!お前可愛いなー名前なんていうの?2年?3年?」
倉本郁と名乗ったそのJrは同い年にしてはずい分と背が高く井上は中学生か高学年かと思っていた。だから少し驚いた。井上も同い年の中では決して小さい方ではなかったがなんだかケタ違いの大きさだ。何を食べたらこんなに大きくなるのだろう。
何を食べたら、というよりそいつは四六時中食べっぱなしだった。うらやましいくらい沢山のお菓子やらパンやらを休憩中に吸い込むように摂取している。まるでブラックホールみたいだった。
その倉本の存在が井上にとって小さくない影響をおよぼし始めた。
「倉本郁です!10歳です!よろしくお願いしま〜す!!」
舞台上で高らかと自己紹介をする倉本を舞台袖で見ていると、少し悔しいという気持ちが芽生える。今までは自分は、自分達は同い年の中では恵まれた位置にいた。だから気付かなかった。
後から追い抜かされることの悔しさ。それが他でもない同い年のJrに…。
だがそれは倉本の存在だけではなかった。
「おーすげー!!お前ちっちゃいのにすげーなー!!」
自分より大分背丈の小さいJrが華麗にバック転、バック宙を決めて先輩達が絶賛する。年下かと思ったら同い年で彼は林蓮音といった。はにかみながら先輩達にお辞儀をしている。
得意分野である体操で、しかも同い年にこうして見せつけられるのはどうしようもなく悔しい。だけど井上は「悔しい」と思っているのを誰かに悟られたくはなかった。
何故かわからないけどそれは恥ずかしいことのように思えた。だから何気ない風を装いながら負けないよう努力することが自分を支える柱になった。
努力が認められたのか、それとも運か、5年生になってすぐにドラマ出演が決まった。ダンスの位置もいいところに置いてもらえて嬉しかった。髪を丸坊主にしたのは恥ずかしかったけど皆が褒めてくれたしすぐに生えてくるし、と割り切った。
「お〜みずき、今日もいい手触りだな〜」
倉本は井上の髪が伸びるまでの間毎度のように頭を撫でてきた。
「やめてよくらもっちゃん人の頭で遊ぶの」
「お前が可愛いからだろ。あ〜このモンチッチのような愛らしさ…たまんねーな」
倉本とは仲良くなったしロクネンジャーとも歌舞伎や各種イベントでずっと一緒に行動しているから今更ではあるが仲良しだ。
いい仲間でありライバルであるし、色んな経験をしてダンスも歌ももっと上手くなっていつかは一番になりたい。そんな無邪気な希望は漠然と抱いてはいた。
だけど井上は自分の性格がいい意味でも悪い意味でも真面目であることを知っていた。悪い方向に向かえばすぐにネガティブがやってくる。まっすぐで固い棒は折れやすい。しなやかさが自分にはないのだ。
6年生になってすぐのことだった。
「おおーすげー!!ピッタリ決めたー!!」
幼稚園の頃から習っている体操の大会で、年下の5年生に凄い子が現れた。
井上が補助ありでやっとできる技もその子は一人できちっと決めてくる。その他の連続技も精度が高く、「かなわない」の5文字がかけめぐる。しかも年下なのだ。悔しさは倍増した。
「しょうがないよ、あんたはJrの活動しながらだし、あの子はずっと体操だけをがんばっているんだから。あの子にしてみたら他のことしてる子には絶対負けたくないって思ってるだろうし」
母親がそう言って慰めてくれたが井上はそれでも悔しかった。小さい弟の手本になるように頑張ってきたし、かっこ悪い姿は見せたくない。父親が単身赴任でいない間は自分が弟にとっての男の手本だ。そう思っていた。
「みずき宿題はしたか?ちゃんと勉強もやんないとダメだぞ」
その父親が最近やっと単身赴任から帰ってきた。それは嬉しかったが勉強しろとうるさく言われるのはちょっとしんどい。だが父親はJrの活動を理由に勉強がおろそかになることは許さなかった。思うに、自分のこの真面目な性格は父親譲りだと思う。
「もうすぐ12歳なんだから。来年は中学生になるし今以上に両立が難しくなるから今ちゃんとやっとかないとな」
もうすぐ12歳…入所も4年目になった。同い年の中では長い方だ。
「誕生日プレゼントは何がいい?」父親が訊く
「んー…じゃあゲームで」答えると、父親は苦笑いをする
「まだまだ子どもだなあ。参考書や学習機材が欲しい、とはならないな」
父と母は笑う。「まだまだ子ども」なのは事実だが、井上が「子どもなりに悩みの一つもあるんだよ」と言うとやはり両親は笑っていた。
「おい神7!位置ちゃんと把握しとけ!すぐ本番だぞゴルア!!」
鬼ヤクザの怒号でいつもおふざけ神7も表情を変えて配置につく。その中に倉本もいた。
「倉本!!そこはしっかり映るぞ気ぃ抜くなゴルア!!」
怒鳴られながらも倉本は必死にくらいついている。神7では中高生の中でただ一人の小学生。体力的にも発達段階的にも無理なものを要求される。普通の神経ではすぐに潰れてしまうだろう。
だが倉本は立派にこなしている。潰れるどころか中高生のメンバーをも下に見るくらいのふてぶてしさ。例えできなくても俺はちゃんとやってるし、といった開き直り。今の井上には無意識に「かなわない」と想わせるのに十分な説得力がある。
「おい井上、時間空いてるしさー缶蹴りやらね?」
ロクネンジャーに誘われて、缶蹴りに参加するが頭の中は別のことを考えていた。
俺がこうして遊んでる間に倉本はどんどん経験値を重ねている…。
いいのかな、俺は、このままで…。
身長も何もかも、どんどん差をつけられていくんじゃないか…そんな焦りがあった。
「おい何ボーっとしてんだよ。井上が鬼だろ。さっさと缶追えよ!」
ロクネンジャー達といることだって経験の一つには違いない。歌舞伎ではほぼ毎日の舞台稽古。沢山怒られたが皆一回りも二回りも成長した。サマリーだってそうだ。
この中で一番にならなきゃ、倉本に追いつくことなんてできない。
だけど、じゃあ自分が一番になれるものって?
「やったねー!!いっちばーん!!」
快活に叫ぶ橋本を見て思う。カメラの前で物おじせず堂々と思ったことをすらすら口にする度胸、人を引き付ける天真爛漫な笑顔。一時期は井上がセンターだったのが今Wセンターになることが多い。橋本にはアイドルらしい明るさや子どもらしさがある。
「あ、ずりーぞ橋本、お前フライングだったじゃん!!やり直し!!」
羽場が文句を言っている。羽場はマイペースだ。ダンスも頭の良さもこの中では秀でているわけではないがその「俺は俺、他人は他人」と天然で理解している姿は自分と対照的だ。
それに羽場はこう見えてカメラの前でも素の自分を出せる。未だに定型文じみたことしか言えない自分と大違いだ。
「なー缶蹴り飽きたからなんか他の遊びにしよーぜー」
ちっちゃい林はやっぱり自分と得意分野が同じなこともあってそれが今のところ同じぐらいではあるけれど余計に負けたくなかった。身長が低いことも彼は武器と捉えているようだった.
それに林は後から入所したにもかかわらずすぐにダンスで追いついてきたから潜在能力が高くてたまに井上は焦る。
「かくれんぼはやだよ俺。トラウマあるんだから」
この中で一番後輩の金田はとにかく多芸だ。歌が上手いし、井上も上手いと言われることがあるが舞台でソロを任されるのは金田の方が多い。歌舞伎での演技も評価が高くて彼自身も自信を持っているようだ。
俺はこの中でこれなら一番って言えるものあるのかな…。
この先、小さい子がもっと沢山入ってきてその中には自分では絶対かなわないような武器を持っている子もいるだろう。それを見て自分は焦ってるだけなのかな…。
じゃあ何をがんばればいいんだろう。何だったらがんばれるんだろう…。
考えているうちに、レッスンも収録も終わる。荷物でぐちゃぐちゃのリュックを背負うと、井上はスタジオを出ようとした。そこで呼び止められる。
「おいみずき、明日は分かってんだろうな。俺と一緒だぞ!」
「あーうん。分かってるよ。でもあんまり遅くなると叱られるから」
「分かってるって!お前期待してていいぞ!明日は婚約記念日になるからな!」
倉本はわけの分からないことを言って神7達と焼き肉に行くと去って行った。今日は神宮寺の誕生祝いらしい。
ロクネンジャー橋本も今日が誕生日である。井上とは一日違いだ。井上は彼にささやかながらにプレゼントを渡した。そして「んじゃこれ」と言われて明日の自分の誕生日プレゼントももらったのだ。なんだか交換のようでおかしかった。
倉本には一カ月以上前から明日を空けておけと言われていた。倉本の誕生日にひと悶着あって予め約束をされた。ちょうど井上も父親が平日は忙しくて帰宅が遅いから誕生日のお祝いは週末にと言われたしちょうど良かった。
迎えた10月31日の12歳の誕生日。その日のレッスンは何人かに「おめでとう」と声をかけられ、レッスン終わりにプレゼントも幾つかもらった。嬉しくてそれだけで井上はテンションが上がる。上がっていると何故かネクタイを締めて正装した倉本がドヤ顔で立っていた。
「さあ行くぞみずき。俺とお前のスイートルームに」
何か悪いものでも食べたのだろうか…と井上が訝しんでいると倉本は彼の家の近くのファミレスに連れてきた。
「さあみずき、好きなもの頼め」
倉本はふっと笑ってメニューを手渡してくる。なるほどこれが誕生日プレゼントか、と思っていると彼は大きな包みをテーブルの上に乗せた。
「これは俺からお前への愛の証だ」
「え、プレゼントもくれんの、太っ腹だねくらもっちゃん!」
「まあな。俺の腹は日増しに太く…って違う!いいから開けて見ろ」
井上が包みを開けると中からは鞄とグリッドイットが出てきた。井上は感激する。
「うわー。これ欲しかったんだ。前にさ、JJLのアンサーステーション出た時にいいなーって思ってて。これさえあればもう鞄ぐちゃぐちゃにならずにすむ!」
「フッ…そうだろう。俺はお前の出演シーンは全てチェック済みだ。ちゃんとそれだけを集めてDVDにも保存してある」
「ありがとーくらもっちゃん!」
「よせよそんな…将来の夫としては当然のことをしたまでで…」
倉本がそう呟いていると料理が運ばれてきた。お腹がすいていたから二人で取り合いしつつしこたま食べる。食べたはいいが気になることがあった。
「くらもっちゃん俺300円しか持ってないけど大丈夫?食った後で言うのもなんだけど」
だが倉本は食べカスを吹きながら涼しげに言い放った。
「大丈夫だ。シメはお前の好きなチョコレートケーキでいいな。生憎蝋燭は立てれないがな…」
「くらもっちゃんもしかして借金とかしてきたの?ダメだよ。ご利用は計画的にってア○フルも言ってんじゃん」
「借金じゃない。前借りだ。お前はそんなこと気にすんな。さあ食おう」
普段お菓子をくれないくせに誕生日だからか倉本はえらく気前がいい。まあいい友達だよなあと井上が思っていると倉本はファミレスの次に児童公園に連れてきた。もう陽はとっぷりと暮れているから誰も遊んでいなかった。
「ここが俺の秘密基地だ」
倉本は公園のど真ん中にある遊具に井上を導いた。石のかまくらのようで中が空洞になっていてそこに梯子が延びて上に昇れるようになっている。どこにでもある遊具だ。
中は暗いがちょうどその横にある街灯の光でなんとかお互いの顔は見える。
「秘密基地って…思いっきり目立ったとこにあるじゃんくらもっちゃん」
「るせーなこれしか思いつかなかったんだよ。幼稚園の頃はここが俺の秘密基地だったんだ。ここで隠れてお菓子食うのが無上の喜びだったんだよ」
その頃から食ってばかりいたのか…と井上は呆れたがこのでかさを見ると納得である。
「お前にだけだぞ。ここを教えるのは」
倉本はドヤ顔だった。恐らくは彼の誕生日に井上が自分だけの秘密の場所を教えてあげたからそのおかえしなのだろうがちょっと笑いそうになった。
井上が笑いをこらえていると、倉本は鞄から何かを取りだした。
「みずき。左手、出してみろ」
「え?なんで?」
「いいから出してみろ」
訳がわからなかったが井上は言われたとおりにした。すると薬指に何かをはめられた。
「…何これ?」
それはごつごつした指輪だった。井上が尋ねると倉本はふっと笑みを漏らす。
「エンゲージリングの代わりだ。ちなみに俺のもある。」
倉本は同じものをもう一つ鞄から出してそれを左手の薬指にはめた。
「こないだ試しにレッスンにつけていったら神7の奴らに笑われたけどよ、それが似合う大人になったら俺達結ばれんだぜ!!」
どこまでが本気なのか、倉本はそう断言した。彼の眼には迷いというものがなかった。井上とは正反対だ。
「高橋の奴は勝手に純情片想い連盟に俺を入れてるけど俺は片想いで終わる気はねえ。みずきはきっと俺を好きになる。いつかれあくりもヒクくらいラブラブんなってベストカップル大賞もいただきだ!」倉本は拳を掲げた。
「…」
井上は思う。何故倉本はこうもポジティブなのだろう、と。
もしダメだったら…とか、叶うかな…とかそういった躊躇いがない。いつでも自信に満ちていて、困難にも立ち向かっていく強さとふてぶてしさがある。
それが、今の自分が決定的にかなわないところだ。
「俺は…」
井上にはまだ倉本の感情が本当の意味で理解ができない。でもきっと倉本の自分に対する感情と、自分の倉本に対するそれには若干のズレがあることは分かる。だがそれを倉本に伝えたところで彼はものともしないだろう。
それが倉本のゆるぎない強さの原子だ。それがうらやましくもある。
倉本は今言った。「みずきはきっと俺を好きになる」と。
いつか、って言ったけどそれはいつになるだろう?一年後?それとも10年後?それとももっと先?
井上は考えた。自分が倉本のことを好きになるとしたら、それは…
「くらもっちゃんのこと、好きになるかもしれない」
倉本は目を見開いた。一瞬の沈黙の後、飛び上がらんばかりに歓声をあげる。
「まじか!!みずき!!まじなのか!!それ!!」
「うん」
井上は頷いた。狭い遊具内で倉本の叫び声が谺する。井上はそれをどこか遠くで聞きながら、しかし冷静にこう続けた。
「でもそれは俺がくらもっちゃんに何もかも勝ってからだと思う」
「え?」
きょとん、と倉本は首を捻った。
「どういう意味だよ、それ」
「俺がくらもっちゃんより身長伸びて、ダンスも歌も上手くなって、なんでもくらもっちゃんよりできるようになったら俺はくらもっちゃんを好きになれると思う。でも、一つでも負けてるものがあるうちは好きにならない」
「ど…どういうことだよ、それ…」
「そのまんまの意味。今の俺は身長もそうだけど、くらもっちゃんに勝てるのは…アクロバットぐらいかな。だから一個一個克服して、くらもっちゃんのこと見おろしながら「かおる可愛いな」って言えるようになったら好きになれるってことだよ」
「おいそれ逆じゃないのか?俺がお前が憧れるぐらい何もかもできるスーパー倉本郁になったら好きになるなら分かるけどよ!」
「でも俺はそう決めたんだよ。だからくらもっちゃんがスーパーくらもっちゃんになっちゃったら俺はくらもっちゃんのこと好きにならないと思う。俺がくらもっちゃんのこと好きになるのはスーパーみずきになってからだよ」
倉本は首を捻って眉根を寄せて考えている。考えて考えて…結論が出たのか手を鳴らした。
「分かったみずき!お前ならすぐに俺ぐらい超えられるだろう!明日にでもそうなってんじゃないか!?」
井上は苦笑した。予想通りの返事だったからだ。
「それは不可能だよくらもっちゃん。常識的に考えて一日で身長が15センチも伸びるわけないじゃん。それに、わざと俺に勝たせたりしたってダメだからね。手加減なんかしたらそれこそ好きになんて絶対なれないから」
「な…に言ってんだよ俺がそんなことするわけないだろ!!」
倉本はしかし一瞬どきりとした。ちょっとそれが脳裏を掠めたからだ。だがそれは純粋な恋心故である。倉本にとっては井上に好かれるためならなんでもできる。何よりも最優先すべきことだからだ。
「約束だぞみずき!お前が何もかも俺を超えたらそん時は俺と結婚だからな!俺は手加減しないし全力で何事にも打ち込むって誓う!だからお前も誓えよ!?」
「うん。もちろんだよ」
井上は頷く。そしてはめていた指輪を外して掌の上に乗せた。
「その日までこれはちゃんと保管しておくね、くらもっちゃん」
井上の小さな掌の上で、そのごつごつした金属の環は鈍い光を放っていた。これが目も眩まんばかりに光り輝くか、それとも埃にまみれてしまうかは今は誰も知る由もない。ただ、その何の変哲もない物体が井上にとっては前を向いて歩く指標になってくれた。
「じゃあね、くらもっちゃん。今日は色々ありがとー」
「いいってことよ。あ、来年の9月23日と10月31日は予め空けとけよ。予約したからな!!」
鬼が笑いそうな気の早い約束を交わし、井上は倉本に手を振って別れる。
帰り道、井上は全力疾走で家まで駆けた。それは門限を過ぎてしまったからではなく何故か自然と体が動いていた。よく分からない高揚感のようなものが、その原動力となっている。
がんばるよ。
もう迷わないよ。
誰にも負けない。例え、勝てなくても。
雑草は、踏まれても踏まれても立ち上がるというけど、俺は踏まれても踏まれても立ち上がってなお咲き誇れる大輪の花になる。そうなるように前を向いていよう。
そうして固く握りしめた拳の中で小さな希望は光り輝いていた。
君の光り輝く未来まで、応援することを僕は誓う
END
500 :
ユーは名無しネ:2012/10/31(水) 00:34:17.63 0
神7劇場 「颯の散髪」
高橋 颯は鏡で自分の姿を見て思った
「髪、伸びてきたな…。そろそろ切らなきゃ」
それならばすぐにでも切りに行けばいいのだが1つ問題がある。髪型の仕上がり具合だ。前回は短く切りすぎてしまいファンからも非常に評判が悪かった。だから同じ失敗はしないようにと思ってなかなか切りに行けないのである
「今回は別のところで切ろうかな」
同じ美容院で切ればまた同じ髪型にされてしまう。それを恐れた颯は前回とは違う美容院に行った。もちろんポケットには岸の写真を忍ばせて…
数時間後、髪を切った颯は再び鏡で自分の姿を見る。そこには前回と同じ坊ちゃん狩り状態の颯がいた
「どうしてこんな風になっちゃうんだろう…」
すっかり颯は肩を落とした。明日みんなと会うのが嫌だな。憂鬱な気持ちで一日が終わる。
翌日、颯はいつものレッスンスタジオへ向かう。すでにそこには羽生田がいた
「はにうだおはよう」
「おはよう颯。あれっ、髪切ったんだ」
「そうだよ」
「なんだか坊ちゃん狩りみたいだな」
いきなり一番指摘されたくないところをついてくる。さすがKYと自覚しているだけある
「羽生田だって髪切ったらIt'sも坊ちゃん狩りじゃん!」
「し、失礼な!僕は毎回トップスタイリストにカットしてもらってるんだ。君の床屋カットと一緒にしないでくれたまえ!」
「オレだって美容院で切ってもらってるよ!」
来て早々羽生田とケンカ?をしてしまった。他のメンバーにも髪型のことを言われるのかと思うとつらい。
少しして神宮寺と倉本がやって来た。
「うぃーっす」
「あっ、颯の髪が短くなってるー」
2人とも颯の髪の変化にすぐに気づく
「うん。昨日切ってきたんだよ」
「なんか小学生みたいだなぁ。もしかしてみずきの髪型意識したとか?」
「違うよ!岸くんの写真を持っていったんだよ」
「またかよ。岸くんのこと意識しすぎじゃね?たまにはオレみたいにさ、茶髪にしてもっとシャレオツにしようぜ!」
「神宮寺君と一緒にしないで!そんなチャラい髪型にしたくないよ」
なんで豊満体型の小学生と背伸び中学生にこんなこと言われなきゃならないのだろう。颯がイライラしていると岸と嶺亜がやって来た
501 :
ユーは名無しネ:2012/10/31(水) 01:50:32.65 0
「颯の散髪」その2
「みんなおはよう」
「おはよう岸くん」
Jr.がそろってスタジオがより騒がしくなる
「おっ、颯髪切ったんだね」
岸がさっそく気づく
「ホントだぁ。さっぱりしたねぇ」
心から言っているのかよく分からないが嶺亜は当たりさわりのない事を言う
「今回も岸くんの写真を持っていったんだよ。どう似合う?」
颯は岸に聞いてみた
「え?オレ、坊主にしたことはあるけど坊ちゃん狩りにしたことはないけどなぁ」
「!!」
岸くんまでなんでそんなこと言うの?颯は深く傷ついた。岸の言葉に悪気は無いのだろうが他のメンバーに散々言われた後だったためより強くショックを受けていた。冷静さを失った颯は岸にひどい言葉を言ってしまった
「岸くんのバカ!!」
そう言って颯はレッスンスタジオを飛び出してしまった
このやり取りがあったためスタジオ内はざわついている
「岸ぃ、デリカシー無さすぎぃ。颯のこと分かってあげてよぉ。髪型失敗した時の気持ち分かるでしょう」
嶺亜が岸に言った。岸は自分の無神経さに責任を感じ、また神7のメンバーもちょっとストレートに言いすぎたかなぁと反省した
颯は廊下の隅で泣いていた。手には髪を切る時に使った岸の写真を持っている
「こんなもの!」
颯は写真をビリビリに破ろうとした
「…」
でも出来ない。あんなことを言われてもやっぱり岸のことが好きだからだ。颯はこの悲しみをどこにぶつけていいのか分からないでいる。しばらくして向こうから足音が聞こえてきた。それは嶺亜だった。
「颯の気持ち分かるよぉ。岸の髪型のつもりだったのにみんなの言い方はひどいよねぇ」
嶺亜は心が女だけあって人の気持ちに繊細に気づく
「でも岸のこと悪く思わないでぇ。この髪型になったのは岸の写真が原因だけどこれを持っていったのは颯でしょう?」
「うん…」
颯は話を聞いて少し冷静になる。そして嶺亜の顔を見て言った
「れいあくんはいつも髪型が決まってていいなぁ」
「そんなことないよぉ。すごいクセっ毛だし量が多いから大変だよぉ。颯の髪質がうらやましい」
「オレの髪質が?」
「そう。まっすぐで素直で。僕の髪よりずっと扱いやすいと思うよぉ」
「そうかな…」
嶺亜に言われているうちに颯は髪の毛に悩みがあるのは自分だけじゃないんだと思った
「颯、スタジオに戻ろう」
颯が落ち着いたので2人はスタジオに戻った
502 :
ユーは名無しネ:2012/10/31(水) 13:47:03.23 0
「颯の散髪」その3
スタジオではレッスンが始まろうとしていた。遅れないように颯と嶺亜は急いでみんなに混ざる。目立たないようにしたつもりだったが颯はまだ涙目だったため鬼ヤクザが気付いてしまった
「コラァァァァァ!!!オレの颯を泣かしたのはどこのどいつだぁぁぁ!!岸っ!!おまえかぁぁぁ!!!」
何故か岸が怒られて同じく涙目になる
「ち、違いますよ!泣かしたのは谷村です」
とっさに岸はいう
「えっ!?なんでオレ?」
と谷村はびっくりして目を見開く。鬼ヤクザは
「お前もかぁぁぁ!!!2人そろって今日は厳しくレッスンするからなぁぁ!!覚えとけぇぇぇ!!!」
岸は納得いかない顔で踊り始める。とばっちりを食らった谷村は岸のことを上目づかいで恨めしそうに見ながら自我修復する
レッスンが終わり、颯が帰ろうとすると岸に声をかけられた
「颯、一緒に帰ろう」
帰り道、颯はどんな会話をすればいいか困っている。少し沈黙した後、岸から先に話し始めた
「さっきはゴメン」
颯は岸の顔を見上げた
「颯はオレみたいになりたくてその髪型にしたんだよな。なのに坊ちゃん狩りだなんて言って傷つけて…。ホントにゴメン」
「いやオレの方こそ…オレが勝手に岸くんの写真を持ってっただけだから。岸くんは何も悪くないよ。当たったりしてゴメン」
2人はようやく仲直りすることができた。昨日、髪を切った時から続いていた颯の憂鬱な気持ちはやっとどこかへ消えていった。そしてこの後もっと嬉しいことが待っていた
「そうだ!今度オレの通ってる美容院を紹介するよ」
「えっ」
颯は再び岸の顔を見上げた
「オレの担当の美容師さんに切ってもらえばいいよ」
「ホント!?絶対だよ!」
颯のテンションは一気に上がった。元気になった颯は嬉しさのあまりヘッドスピンをしようとした。すると岸が
「おいおい路上でヘッドスピンは危ないよ」
と言って颯の足を手で押さえる
「エヘヘ…」
颯はニヤッと笑う。それは中学生らしい無邪気な少年の顔だった
この後2人はいつもの関係に戻り、駅までの道をおしゃべりしながら歩いた。おそらく颯の坊ちゃん狩りが見れるのは今回が最後になるだろう
END
503 :
ユーは名無しネ:2012/10/31(水) 18:04:52.69 0
颯くん よかったね。
神7劇場の作者さんありがとう。。
岸颯が大好きなので ほんと、うれしい!!
493の井上くんのお誕生日スト−リ−もよかった。。
作者さんの井上君への果てしない愛を感じる!!
井上君について詳しくなったよ!!
お誕生日おめでとう!!
作者さん乙です
瑞稀おめでとー
倉瑞の純愛?ホント感動する
颯くんのあの髪型もう見られないのか…
乙です
くらみずジャスティスからの颯きゅん健気すぎるー
作者さんたち乙です
くらもっさんなかなかやるじゃないか
同じ年には見えないけど純愛モエス
颯くんは岸くんの写真持ってくよりも美容師紹介してもらって正解w
作者さん乙!乙!
くらみずピュアで可愛くてほっこりする…!
瑞稀くんもまだ小さいのに悩みもたくさんあるんだろうな…
このスレで瑞稀くんさらに好きになったよありがとう!
くらもっちゃんと仲良くね!
颯くんどんどん岸くんと距離縮まってきてよかったね!
美容室選びは大事だよ〜
作者さんたち乙です!
くらもっさんも瑞樹くんもしっかりしてるけど
まだ小学生なんだよね・・・
颯くんよかったね。
2つとも純粋ピュアな感じで幸せな気分になった!!!
神7in日替わりキッチン
「どーもーきしゅーたです!今日はですねーオムライスを作りたいと思います!!」
「アシスタントの高橋颯です!会ってみたい歴史上の人物は織田信長と岸優太くんです。よろしくお願いします!」
「えっと、今回はチキンライスの具にタマネギじゃなくてキャベツを使ってみたいんですけど」
「キャベツ…(一瞬固まる)…おいしそうですね」
「じゃあキャベツを角刈り、じゃない角切りしといて下さい」
「はーい」指示を無視してキャベツをこっそりフードプロセッサーにかけるアシスタント。
「もう終わりましたー?それじゃ鶏肉とにんじんのみじん切りと炒め…ってなんじゃあこりゃあああーーー!??」
「すいません、つい手がすべってしまって…」
「なんか見た目が…液状だよねこれ!?」
「大丈夫ですよ。胃の中に入れば全部同じです!」
「しょうがないなー。ご飯に混ぜちゃえ!」
見た目とは異なり意外に器用にフライパンを動かす岸くんと、その様子を真顔で凝視するアシスタント。
「はいできた!なんかライスがドロドロしてリゾットみてーなんだけど…どうですか味のほうは?」
「…岸くんの味がします。まだ食べたことないんですけど」
「え!?(焦る)…あの颯さん、まだお昼の時間帯なんで下ネタはちょっと」
「下ネタじゃなくて岸くんネタです。えっと、全体的に大変おいしいです!!(なぜかガッツポーズ)」
「やっぱり?俺って料理のセンスあるのかなー男子ごはん出れちゃうかも?」
「あ、でも上にかかっているデミグラスソースをもっと甘〜い感じにすれば完璧だと思います」
「それはナシだな」
「どうもー、神宮寺勇太でーす!えーと今日はあ、…プリンでいきましょー!」
「アシスタントを務める羽生田拳武です。しかしプリンって簡単すぎやしないか?原液作って型に入れれば小学生でもできると思うけどね」
「(スルーして)ハイ!それじゃ卵割ってー牛乳入れてーっと」
卵と牛乳のパッケージを見て色々確認するアシスタント。
「ああ、ダメだこれは、ボツ。有機じゃないし」
「黙れアシスタント!!ボツとかねーから!時間ねーんだよ早くうううう」
アシスタント、やや不満げだが一応従い材料を混ぜ合わせる。
「…ところで、バニラビーンズは?マダガスカル産の」
「そんなん用意してねーよ。なんだよマダカスバルって。つーかいつもコンビニフードばっか食ってんのに変にこだわるよな」
「あれは既製品だからいいんだ。というか君もやれよ。相手にすべて作らせるなんて上○恵美子にでもなったつもりか?」
「俺、そういうキャラじゃねーから。チャラ男は料理なんてしねえ!」
「自分で言ってる…」
結局、アシスタントがすべて作り、試食するだけの神宮寺。
「おっ、できた?どれどれ(一口食べて)んー、まあまあだな…やればできるじゃん!」
「えーっと。すまん一発殴らせてくれ」
「中村嶺亜です。今日はそのぉ、鮭のムニエルを作りたいと思いまぁす!」
「…こんばんは、アシスタントの谷村龍一です。…」
「まだお昼ですよ。谷村って料理できるのぉ?」
「できるように見えます?」
「見えませーん(ニッコリ)僕、わりと家事できるからアシスタント必要ないと思うけど」
「じゃあ帰ります」
「ダメです。ほら、付け合わせの野菜の下ごしらえをして下さい」
「………」しめじとエリンギとしいたけを幸せそうに洗って切るアシスタント。
「なんか魚って手が生臭くなるぅー…って谷村、きのこ類そんなにいらないから、他の野菜はどうしたのぉ!?」
「すいません、ついきのこにかかりっきりになって…あああ!!」慌てたせいでボールを床に落としテーブルに足を引っかけ華麗に転ぶアシスタント。
「ち…ちょっと大丈夫ぅ?」
「…ぼ…僕にかまわず続けて…」
「あーん、これじゃコントだよぉぉ」
しかたなく野菜抜きでムニエルだけ作る中村。隣で足を押さえながら試食するアシスタント。
「あぁ、おいしい…!これだったらいくらでも食べられるかも」
「そぉ?よかったー全部食べていいよ」
「(急にどこからか殺気を感じる)…あ、このくらいでいいです」
「倉本郁でええす!今日は、僕の大好きなお肉!ハンバーグを作ります!」
「あしすたんとのー栗田恵っす。どーも」
「あのさー、栗田くんって料理とかできんの?」
「できるように見えるか?」
「…見えないから聞いたの。うわーなんでアシスタントがこれなんだよー嶺亜くんのほうがよかったなあ」
「俺だって嶺亜とやりてーわ。何、ハンバーグだって?そんなん小学生にできっこねえだろ!ギャハハハハハ!」
「馬鹿笑いしてないでタマネギでも刻んでよ。フードプロセッサーにかければいいから」
「あーこれ?ほい」
「ちょ…タマネギそのまま放りこむとかアホか!?皮向いて洗って少し切ってから入れるんだよ!」
「んだよめんどくせーな。…ふわ、なんか涙が出てきたあああああ何だよこれえええ鼻イテ!!鼻イテエエ!!」
「もう、僕ハンバーグの種作るからさ!タマネギは飴色になるまで炒めてくれ」
「飴色ってなんだよ?(自分のなめている飴を取り出して確認)、よっしゃー緑色になるまでってことか!」
「コショウと塩も入れてっと…ねえ、タマネギはー?」
「おいこれ腐ってんじゃねーの?いつまでたっても緑色になんねーぞ。なんか茶色…つか黒?」
「…それでいいんだよ!てか焦げてる!早く火止めて!!」
プスプスいってるタマネギとひき肉を黙々とこねる倉本。片っ端から調味料を放りこんでソースを作るアシスタント。
「おおーー?このソースめちゃクソうめー!!ミラクルきたーギャハー俺天才!!!」
「料理中にクソとか言わないでくれよ。(アシスタントがソースを口に入れる)え…何使ったの?まじで美味い!!!」
倉本の焼いたハンバーグの上にソースをかけるアシスタント。さっそく試食する倉本。
「うん、めっちゃおいしい!…だけどこのソース緑色なのが残念だね…」
NHK編成センター?@nhk_hensei
【R’s3期生登場】Eテレきょう午後6:55〜「Rの法則」
視聴者を含む2600人の応募者から選ばれた15人の新メンバーが初のお披露目。
ジャニーズJr.にAKB、乃木坂46からも参加する新メンバーへのメッセージをHPで募集byEテレ編成
http://nhk.jp/rhousoku/
神7秋の修学旅行〜きのこと紅葉に誘われて〜
「ねーみんな!ビンゴやろうビンゴ!」
岸くんがはりきってビンゴシートを鞄から出す頃にはもうみんな新幹線の中で爆睡中だった。高橋ですら取りあおうとしない。みんな蠅をはらうように訴えを退けた。
「うお!富士山!ねえみんな富士山見えるよ!!ほらほら!!」
岸くんはまだ叫んでいる。しかし乗客の白い眼にようやくおとなしくなった。仕方がないから岸くんも到着まで眠ることにする。
今日は神7みんなで京都まで小旅行に行くことになっていた。ちょっとした修学旅行だ。例によって羽生田一族所有の老舗旅館に一泊である。
おりしも季節は秋、秋の京都は世界中から観光客が訪れる。まさにベストシーズンである。
京都では市内散策や紅葉狩り、きのこ狩りなどワクワクプログラムが目白押しである。普段は忙しくてなかなか旅行ができないだけに皆楽しみにしていた。そして文字通りの夢ごこちに浸っていると…
「あーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!乗り過ごしてるーーーーーーーーー!!!」
高橋の叫びにみんな飛び起きる。新幹線は新神戸を通過していた。自由席に座ったのが災いし、寝過ごしてしまったのである。
「ちょっと岸くん何やってんだよ!」神宮寺が岸くんを責めた。
「え、俺?」
「岸くんはりきって起きてたじゃん、なんで起こしてくんないんだよ」
「いやだってみんながかまってくんないから俺も寝ちゃって…」
「あああ西明石を通過する!!次の姫路で降りて折り返すぞ!」
羽生田の号令で一同は姫路で折り返し、ようやく京都に着いた。
「うおー!!これが京都―!!けっこう都会―!!」岸くんは大階段で感激している
「岸くんと京都岸くんと紅葉狩り…」高橋は感涙しきりだ
「京都と言ったら舞妓だよな!!この日のために俺は舞妓プレイ動画を山のように集めてきた!」神宮寺は高らかに叫ぶ
「生八つ橋10箱くださーい」倉本は売店で腹ごしらえ用の生八つ橋を買っている
「ふむ…久しぶりだな。まあ国内旅行というのも気楽でいいもんだ」羽生田も倉本と生八つ橋をつまんでいる
「れいあ舞妓はんになってくれよー!!舞妓はんー!!」栗田は興奮しきりだ
「もう栗ちゃんたらぁ…着物は窮屈だから好きじゃないよぉ…」しかし中村はまんざらでもない
「…シャカシメジ…ササクレヒトヨタケ…」谷村はきのこ図鑑方手に予習に余念がなかった。
一行は京都でも指折りの名所、嵐山にやってきた。観光客でごったがえしているが紅葉が美しい。
「あああ…」
高橋がうずきだす。その理由を羽生田がいち早く察知した。
「いかんぞ高橋、渡月橋で回るのは。外国人観光客にジャパニーズクレイジーボーイとしてフェイスブックにUPされてしまうぞ。決してやるんじゃないぞ」
「ででででも…ちょっとぐらいなら…」
高橋と羽生田が押し問答している横では中村が力車マンに声をかけられていた。
「ボク、かわいーね。おじさんの力車のってかない?安くしとくからさ!」
「力車だってぇ栗ちゃん面白そうだよぉ」
「まじで!?おっさん俺金ねーから200円で頼むわ!わりーねわりーね」
そして岸くんははしゃぎまわりながらお土産屋で扇子を選び、倉本は宇治金時ソフトを三本買った。谷村は観光よりもきのこ図鑑だ。そして神宮寺は…
「おねーさん!舞妓はん!ちょっと写メらして!今晩のオカズ…じゃなかったボク修学旅行なんで思い出にしたいんです!15歳のピュアピュアチェリーボーイの願いをどうか!」
道行く舞妓に声をかけ続け、その様を外国人に「ジャパニーズチェリーボーイ」と笑われながら撮られていた。
神7達は屋形船で保津川下りに入る。ここから亀岡まで下ってトロッコ列車で戻ってくるというお決まりコースである。
「風流だな〜岸くん写メ撮ろうぜ」
神宮寺が岸くんと2ショットをもちかけた。それまで羽生田と「屋形船で回るか回らないか」を議論し合っていた高橋は耳がダンボ(死語)になる。
「き…ききき岸くんぼぼぼ僕ともしゃしゃしゃ写メ…」高橋は勇気を雑巾のように振り絞って言った。
「お〜いいよ。撮ろう撮ろう」
岸くんは快く承諾してくれた。天にも昇る心地で、しかし震える手で岸くんとの写メに成功…のはずだったが震えすぎて物凄いブレていた。手ブレ補正の限界を超えていたようである。だが高橋はそれでも幸せだった。
高橋は考える。この記念すべき2ショットをどのように活用すべきかを。
まず机の上に一枚、カレンダーにひと月ごとに一枚、ベッドに一枚、パスケースに一枚、ヘッドスピン用の帽子に縫い付ける用に一枚、できればトイレや風呂場にも貼りたいけど家族も見るし…と思いつつ結局20枚くらいプリントアウトすることを決意した。
「栗ちゃん綺麗だねえ、紅葉…」中村は栗田の肩に頭を乗せる
「れいあの方が綺麗だよー」栗田は声に似合わず甘いセリフを呟く
「谷村ぁ写真撮ってぇ」
中村に言われ、谷村はきのこ図鑑を閉じる。そしてデジカメを手に取ったが…
「ちゃんと紅葉と俺とれいあの全身入るように撮れよーギャハハハハハハ!」
「身切れたらおしおきだからねぇ」
いらぬプレッシャーをかけられ、屋形船のギリギリラインまで谷村は後ずさりアングルに集中する。集中する…が…
「うわぁ!!」
あわや落ちかけ、近くにいた倉本に助けられる。ここで中村のデジカメを水に落としたらおしおきどころではない。谷村は我が身よりもそっちの無事に安堵している自分に驚愕する。俺は骨の髄までこのドS乙女男子に蝕まれているのか…
「あーうめー。なあ湯豆腐もっとねえの?」倉本は湯豆腐をご機嫌に食していた。その横で羽生田が一句詠んでいる。それぞれ秋の京都を堪能した後は旅館に入った。
「おーいいじゃんいいじゃん。コンドミニアムタイプっつーの?旅館にしちゃ珍しーな」神宮寺が中に入って呟いた。
「明日は採ってきたきのこをここで料理して食べるのもいいかもしんないね」高橋はバッグをおろしながら言う。
「それいいねぇ。てなわけで谷村、ちゃんときのこの種類教えてねぇ」中村が谷村に言った。
谷村は、いよいよこのきのこ図鑑が陽の眼を見るであろうことに少なからず興奮していた。キャラ付けのために興味もないのに眺め続けて早一年。ここにようやくその成果が…。
谷村はその日半徹夜できのこの種類を復習した。いつもおしおきデッサンで徹夜も当たり前の生活だから不思議と疲労もない。むしろ気分が昂ぶっていた。そして迎えた翌日…。
「それではきのこ狩りにしゅっぱーつ!!」
岸くんの号令で神7達は近隣の山にきのこ狩りに出かける。秋の山は空気も澄んでいて気持ちがいい。おしゃべりにも花が咲き、きのこもいい具合に生えていた。
「お、みーつけ!!」
倉本ははりきっていた。食べ物と井上が絡むと小学生とは思えぬ力を発揮するのである。いち早くきのこを見つけ、手にとっている。そのまま生で食べてしまいそうだ。
「ちゃんと食べられる種類かどうか確認しないと…さあ谷茸、君の出番だ」
羽生田が振ってやるがしかし谷村の姿はなかった。
「あれぇ谷村どこ行ったのぉ…?折角一生に一度活躍できる時なのにぃしょうがない子ぉ」
中村が呆れて溜息をつくと、横で栗田が笑いながら、
「アホはほっといてとりあえず取ろーぜ!!お、ここにもある。れいあ見て見てー!!」
「岸くんほらここにも…」高橋がさりげなく岸くんを誘う
「角生えたー」岸くんはきのこを頭にのっけてモノボケをする
「これだったら俺のきのこの方がデカいな」神宮寺はドヤ顔だ
「松茸以外を狩るのは初めてだな…」羽生田は採ったきのこを匂う
神7達はきゃっきゃときのこ狩りに勤しんだ。
さて、谷村はというと…
「迷った…」
緊張のあまり、地面を見ながら最後尾で歩いていたらいつの間にかみんなが消えていた。どうやら一人だけ違う道を行ってしまったらしい。
「みんな…みんなー!!」
谷村は力の限り声を張った。変なおじさん声ではなく、ちゃんとしたフォルテッシモだ。おそらくこんな大声を出したのは悲鳴以外では初めてではなかろうかというほどに。
「…」
だが声は山々に谺するどころか吸い込まれていった。誰もいない。探しにも来ない。リアルに生命の危機が頭をよぎった。
「嫌だ…誰か助けてええええええええええええええええええええ」
谷村が八つ墓村ばりに半狂乱で山々を駆け回っていると、地元の野鳥の会の団体が通りかかり彼を保護した。そして旅館に戻ると神7達はお料理の最中だった。
「あ、谷蜆、そこの醤油取って」
「おい谷村ボケーっとしてないで野菜切れ!てめーの指落とすんじゃねえぞギャハハハハハハ!」
「谷村ぁお豆腐ないから買ってきてぇ木綿豆腐だからねぇ間違って絹ごし買ってきたらおしおきだよぉ」
俺がいなくなったことに微塵も気付かず、通常営業できのこ料理に精を出しちゃってまあこの人達ったら…
谷村は自我修復をしながらスーパーに買い物に行った。
「いただきまーす!」
採取したきのこを入れた味噌汁、きのこご飯、きのこ鍋を神7達は囲む。岸くんは意外にも料理の腕が冴えていて、羽生田が高橋の殺人味付けを阻止した甲斐があってどれもおいしくできあがった。倉本は凄い勢いで流し込む。
「美味い!俺料理の才能あるかも!」岸くんは目をキラキラさせながらぱくついている
「岸くんステキ…僕の為に毎朝味噌汁作っ…ごにょごにょ」高橋は顔を赤らめてきのこ汁を一気飲みした
「うっめー!!みずきも連れてくりゃ良かったー!!」倉本はひたすら食べる。とにかく食べる
「きのこプレイとか今更すぎるけどやっぱ王道は飽きがこないな…」神宮寺の頭の中はきのこプレイでいっぱいだ
「松茸以外もなかなかいけるもんだな」羽生田は頷きながらきのこご飯を食す
「はい。栗ちゃん。あ〜ん」中村は栗田の口にきのこソテーを運ぶ
「れいあ後で俺のきのこもちゃんと世話してよー」栗田は神宮寺ばりの下ネタをぶっこむが中村は栗田の口から発せられる言葉には寛容である
「…これは…」谷村は茶碗を手に取り言葉を失う。
神7達が採ってきたきのこは揃いも揃って毒きのこばかりだった。
「みんなこれは食べちゃダメだ、これはベニテングダケと言って…」
しかしすでに時遅し、神7達に異変が起こり始めた。
まず始めは…
「うえ…うえぇ…俺はなんでこんなにイケてんのにまだ童貞なんだよ…毎晩毎晩右手だけが恋人で…くっそ…くっそ…」
神宮寺は泣き始める。そして訳の分からないことを言っては泣き、言っては泣きの繰り返しだ。どうやら感情を支配する脳神経に異常をきたす成分が含まれた種類を口にした模様だ。
そして羽生田は栗田並のバカ笑いを始めた。
「アハハハハハハハ!!何を言ってるんだ神宮寺!!君なんかとっくにお口の童貞ロストしてんだぞ!!厳密に言うところのチェリーボーイではないのだ!!ハハハハハハ!!相手を知りたいか!?知りたいだろう!!!
しかしこの僕が教えると思うか!?これは墓場まで持っていくトップシークレットだ!!ハハハハハハ!!」
羽生田は腹を抱えて狂ったように笑う。こちらは俗に言う「笑い茸」を摂取してしまった…。
「あ?たこ焼き食いたい?任せろ!栗田特製スペシャルたこ焼き作ってやるからありがたく食えよギャハハハハハ!!」
こちらも笑い茸かと思ったがどうやら幻覚を見ているようである。栗田は白い壁に向かって延々しゃべり始めた。
一方、高橋は…
「あああ、岸くんそんな、皆が見てるよ、ああでもこんな幸せってもう今世紀中にはないかも…お任せします、何もかも…!!」
なんの幻覚を見ているのか、高橋はヘッドスピンをしながらそう叫んでいた。回りながら前後左右に跳ねている。新技だ。
「ちょ…みんなどうした…大丈夫か…?」
岸くんが唖然とそう呟いた。どうやら彼は毒きのこを免れたのか…谷村が藁をもすがる思いで岸くんに駆け寄る。
「岸島くん、大変だよ、みんな毒キノコ食べちゃってる。早く病院に連れて行かないと…」
二人でならなんとかなるかも…と谷村が思ったその時だった。
「うっ!」
岸くんがばたりと倒れた。
「岸玉くん!?」
「か…からだが…痺れ…」
岸くんは硬直したまま動けなくなった。彼もまた毒キノコを口にしていたのだ。全身麻痺の症状は確か…
いやいやいや、そんなことを考えている暇はない。なんとかしないと明日の京都新聞の見出しは『美少年8人が集団心中か!?旅館で変死』で飾られてしまう。
いや、この場合一人無事な自分が犯人に仕立て上げられ『有名中学の二年生生徒、同じ事務所の少年7人を毒殺。現代が生んだ心の闇に迫る』とでもワイドショーで特集組まれるのか?そんなことになったら両親姉は自殺ものだ。なんとしてもそれだけは…
そうだ。まずは病院。救急車だ。えっと救急車は110番だっけ…いやいや114番…
谷村が頭をパニックにさせていると、肩を叩かれた。
「谷村ぁ全然食べてないじゃん」
中村だった。彼は平然としていて、天使スマイルを作っている。何故かドS成分は綺麗さっぱりなくなっている…。
「はぁい。谷村ぁ。食べてぇ」
小首を傾げながら可愛らしく中村はお茶碗を谷村に差し出した。しかしそこには食べると全身麻痺をひきおこすきのこがたっぷりとご飯と共に盛り付けられていた。
冗談じゃない。こんなもの食べたら不憫一直線だ。断固拒否だ。
いくら中村がイタズラ大好きれあたんでも、『保湿液だよぉ』ってひげそりクリームを顔に塗られても、これは限度を超えている。生命の危険すらあるのだ。ここはなんとしてでも…そう、例えおしおきされてでも拒否を貫かねば。
「いや…これは食べると全身麻痺になるから…ていうかみんなを早くなんとかしなきゃ…」
谷村は説得にかかった。だが…
「た・べ・てぇ」
ハイ出ました。
天使の微笑み、小悪魔ぶりっこ、有無を言わさぬ強制力。どうあがいても抵抗は不可能です本当にありがとうございました。
「ハイ。いただきまふ…」
谷村は泣いた。泣きながらきのこご飯を食べた。味は分からない。おいしいのか、おいしくないのか、哀しいのか嬉しいのか…
「あぁ…」
意識が薄れて行く。その向こうでけたたましい中村の笑い声が聞こえた。
そう、彼もまた毒きのこを食していた。
そして笑い声と泣き声と叫び声と意味不明な言語とヘッドスピンが飛び交う中…
「あれ?もうねーの?お前ら食いすぎだろ俺は育ちざかりなのに!!」
空になった鍋と炊飯器を睨みながら倉本が愚痴をこぼした。彼の場合、人並み以上に摂取していたのだが何故かなんの影響もなかった。
倉本の胃袋は普段からの鍛え方が違うのか、はたまた育ちざかりは毒をも分解・吸収してしまうのか…とにかく一人素面で不貞腐れる。
「あ、もしもしみずきー?なんかよー、神7の奴らうるさくてつまんねーよ。お前もくればよかったのにきのこ食い放題だぞ。え?金ない?金ぐらいなんとでもなんだよ全く俺に寂しい思いさせんなよなー」
倉本は井上に迷惑がられながらも一晩中通話して暇をあかした。
そして翌日…。
「もう岸と谷村しょうがない子だねぇ…」
「全身麻痺ってアホかよーギャハハハハハハハハハ!!!!」
「谷ヶ屋、君はきのこに詳しいんだろう?なんだって毒きのこなんか食べちゃったんだ」
「あーなんか目が腫れぼったいんだけどなんだよこれ」
岸くんと谷村以外の全員は毒が抜けたが二人の麻痺はまだ続いていた。仕方がないから力車マンに任せて他は散策に散ってゆく。だがしかし…
「谷ヶ岳が岸くんと二人で力車に…そんな…そんな殺生な…」
高橋は谷村にジェラシーメラメラだった。できることなら代わってもらいたい。
「仕方がないだろう二人とも病人だ。お、あそこにぜんざいの店があるぞ」
羽生田に説得されたが未練を引き摺ったまま高橋はブレブレの2ショットをカメラ屋でプリントアウトし、心の慰めにした。
「栗ちゃん縁結びのお寺ないかなあ」
「何言ってんだれいあ、俺らとっくに結ばれてるだろうがよーギャハハハハハハハ!抹茶ソフト食おうぜー」
れあくりは通常運転でいちゃいちゃしながら京都散策を満喫、
「舞妓はーん!!神宮寺勇太に愛の手をー!!」
神宮寺は舞妓のおっかけに専念、
「おばちゃん夕子10箱ちょうだいー」
倉本はひたすら食べ歩く。
そして岸くんと谷村は…
「おきゃっさん、ここねえ、化野念仏寺っつってね、水子供養の寺で…」
岸くんと谷村は化野念仏寺まで連れて行かれた。
何故思春期の少年なのに水子供養の寺を見せられなくてはならないのか…しかも相手が岸くんもしくは谷村て…二人は非常に微妙な気持ちになったが力車マンオススメの出町ふたばの豆大福をもらってほんの少しほっこりしたのだった。
帰りの新幹線ではさすがの岸くんも死んだように眠っていた。二人の麻痺が完治するまで丸一日を要したという。
END
作者さん乙です
安定の不憫1そして2…
いつかふうくんの岸くん写真コレクション見てみたい…怖いけど
作者さん乙!
神7を堪能しながら京都巡りも堪能できて一石二鳥ww
颯くんと羽生田ナイス同期www
颯くん写真コレクションはどのジャニヲタよりも凄そうだ…
谷茶浜せっかくのきのこコラボが岸くんと共に安定の不憫さすがっすwww
作者さん乙です
神7と京都旅行満喫気分味わえて楽しかった!
とにかくジェンガ組に負けるなよ
W誌で颯くんが頑張って岸くんにチューしようとしてるぞ!
放課後デートあむあむ可愛いいいい
その隣のページの谷栗めちゃくちゃイケメン
谷茶浜の話があむあむ並みにセレブっぽいのに読み進めると安定の不憫で激しくワロタwwwww
521 :
ユーは名無しネ:2012/11/08(木) 01:26:51.86 O
神7と京都…いいなあ
れあたんと桂川のほとり歩いて谷村を清水の舞台から突き落としたい
谷村wwwww
なんだかんだでショップの谷村のソロ写真に胸熱
メイドイン☆神7
岩橋玄樹(源氏名:げんげん)
メイドイン☆神7のエース、無自覚ヤンデレキャラだが本人にその気は全くない。客層は健気萌えとヤンデレ萌えが半々。ほとんどのお願いは笑顔でこなしてくれるけれど、やりすぎると何処からか野球ボールが飛んでくるので注意。
キャッチコピー→エースやらしてもらってます、凹んじゃうこともたっくさんあるけど受け止めて☆愛の剛速球!
主な固定客→森田美勇人、じぐじぐ、ラブホリ先輩
高橋颯(源氏名:FUUUU)
メイドイン☆神7の中で一番客層が幅広い、そして一番アレな人間が多い。失敗するととりあえずあたふた→ヘッドスピン、ヲタの間ではパンチラ祭りと崇められているためミスする度に固定客が増える。
キャッチコピー→頭の中もご主人様でぐるっぐる〜、そして実際にぐるっぐる?回りにくいけどフリルは着たい、だって女の子だもん!
主な固定客→岸優太、茂木さん、鬼ヤクザ
谷村龍一(源氏名:たにむ〜)
系列店である執事イン★神7の面接に行ったはずが何故かメイド要因としてこちらにまわされてしまった。量より質、固定客の一人一人が落としていく金額は誰よりも多いがその分やらかすことも多い。
キャッチコピー→駄目メイドでごめんなさい、……捨てないで?…………お仕置き、してくれますか?
主な固定客→高橋凛、松田元太
中村嶺亜(源氏名:れあたん)
メイドイン☆神7のプリンセス。自分の趣味で客を選ぶので固定客になりたいけれどなれない人間多数、所謂VIP御用達。の、割には本人は系列店で働く栗田に夢中だとかなんとか……。
キャッチコピー→可愛さは留まる所知らず!ご主人様ぁ、順番だからまってて、ね?
固定客→栗田恵/固定客になりたい→おはぎさん、しずや、あらん
倉本郁(源氏名:くらもっちゃん)
スイーツ食べ放題という文句に釣られてなんとなく入ったものの、生意気キャラが案外受けてずるずる続けている。体重によって客層が微妙に変化しているという七不思議持ち。
キャッチコピー→あーんしてほしい?仕方ないなぁ、……ご主人様のプリンくれたら、してあげる
主な固定客→ロクネンジャー、年上のおねーさん
岸くん、じぐじぐ、栗ちゃんは系列店の執事イン★神7の執事。
羽生田は神7グループのオーナー。
こんなメイド喫茶にいきたい。
525 :
ユーは名無しネ:2012/11/11(日) 11:14:36.37 0
岩橋って神7でもないしエースでもないし
そういえばたまに出てきて頭皮の心配とかしてるけど、まだ旅行に連れて行ってもらってないね。
たにむ〜可愛すぎる。
岩橋は別に嫌いじゃないけど
岩橋担は調子に乗りすぎで苦手
確かに岩橋は厄介なオタを抱えているな
530 :
ユーは名無しネ:2012/11/11(日) 19:30:04.94 0
げんたんの可愛さは圧倒的だからね
他からの嫉妬もすごいよね
まぁ、この板的には岩橋は神7入りしてないけど
実際は神宮寺以上に推されだし、神7だよな
きのこ狩りなら谷村連れてってやれ
神7の面々は特に再編制なかったみたいだけど
今日の少クラ収録、トラビスすのまん安井さん辺りのグループのメンバーがごちゃまぜになってたらしいから気を付けた方がいいかも
……神7周辺はINはあってもOUTはない(と信じたい)
534 :
ユーは名無しネ:2012/11/12(月) 23:10:17.46 0
でもいつかはみんなバラバラになるんだよな
神7楽屋劇場 「地球滅亡の危機」
「やっぱよ、男優の顔は極力映さずできるだけ女優メインで映してほしいわけよ!あとわざとらしい喘ぎ声はダメだね!女優なんだからそのへんもきちっと演じてほしいわけよ俺としては!」
「いやー俺は内容ありきだなー。どんだけ下手でもアングルがおかしかろうとやっぱ内容でしょ。このへんは趣味嗜好があるから一概に語れないけどさ…」
「岸くんSMだったらなんでもいいんだろ。俺はそういうのとは違うな。やっぱ高い芸術性と精緻な脚本を求めるわけよ。今、俺ちょっと執筆中だから今度読ませてやるよ」
「いやーそんなSM好きってわけじゃないんだよ。たまたま自分的にヒットだったのがそれだっただけで…」
Wゆうたが大声でAV談義をしながら廊下を練り歩く。すれ違うJrが顔をひきつらせるのもおかまいなしだ。今日も絶好調のコンビは熱く語り合いながら楽屋のドアを勢いよく開ける。
「よっしはりきって動画検索だ!おい誰かちょっと検索ワード挙げてみてくれ!なんでもいいから思いついた単語を!」
中にいるメンバーに向かって神宮寺がそう叫びながらスマホの入っている鞄をひっつかむと物凄い寒波が飛んでくる。まるでロシアの冬のようだ。
「…?」
凍てつく波動に吹っ飛ばされた神宮寺と岸くんは自分の身に起こったことが理解できぬままそれを目にする。
「た…高橋…?」
岸くんは、部屋の隅で正座し目を伏せる高橋に呼び掛けた。
「た…谷椚…?生きてんのか…?」
神宮寺は自我修復をしようとしてそのまま凍りついて白目を剥いている谷村に問いかける。
すると二人のちょうど間に佇んでいた影が振り返る。
岸くんと神宮寺はちびりそうになった。いや、ちょっと出てしまったかもしれない。
影は言った。
「神宮寺ぃ…下ネタは嫌だっていつも言ってるでしょぉ…?」
「はひ…?」
神宮寺は目をこすった。しかし目の前で暗黒の波動に身を包む夜叉は確かに中村だった。ふんわり乙女のれあたんは何処へ…?気のせいか「ゴゴゴゴゴ…」という効果音まで聞こえる。
「あの…これはどういう…どうした?中村…?」
岸くんがおろおろと説明を求めると、中村は高橋を睨む。そこで彼は震える声で説明した。
「ぼ…ぼぼぼ僕が回りすぎて迷惑かけちゃっただけで…は、反省中です…」
中村は次に谷村を睨む。そこで彼の氷縛結界は一時的に溶け、いつもの倍増しでおどおどぼそぼそとした声で谷村は答える。
「つ…つまらない変なおじさんの物真似をしてしまって反省中に気を失っただけでふ…」
二人の中二はもう怯えに怯えていた。似たような光景を春ごろに見たような…
これは一体…一体何が…
もしやトマトか?岸くんと神宮寺はそこに思い至ったが楽屋内にはトマトのトの字もない。それに、プッツンではなく明らかに中村は相当ご機嫌ナナメのご様子だ。だとすれば理由は…
「あの…栗田は?栗田はどこに…?」
岸くんの問いかけに、しかし寒波はもう一段階激化した。「なんてこと訊くんだ」と高橋と谷村がまるでタブーを犯した罪人を見るような眼で岸くんを見つめる。
「栗ちゃん…?栗ちゃんはぁ…撮影中…」
中村は下唇を噛んで小刻みに震えていた。まるで何かひどく屈辱的な言葉を言わされてるかのように眼が燃えたぎっている。見ているだけでもう一回ちびってしまいそうだ。
「撮影ってなんのだよ?」神宮寺が尋ねる
「ジャニーズジュニアランド…」
ただの撮影なのに、ここまで般若化する理由って…?岸くんと神宮寺が慄いていると楽屋のドアが勢いよく開く。
「やっぱ休憩中の肉まんは格別だな!はにー!」
「まったくだ。しかし酢豚まんも捨てがたいな」
倉本と羽生田が肉まんの入った袋を両手に食べながら入ってくる。が、次の瞬間にそれは冷凍肉まんに変わった。
「なんなんだ一体…何が起こったというんだ…」
凍った肉まんを涙目で見つめながら羽生田が小声で高橋に問うた。
中村以外のメンバーは楽屋の隅で小声で話す。中村は背を向けていたがそこからただならぬ暗黒オーラが出ていた。今、話かければそいつは死ぬ。そんな凄まじいエネルギーがしゅうしゅうと放出されている。
「分かんない…楽屋で回ってたら中村くんだけが戻ってきて…物凄い衝撃波喰らったと思ったら『邪魔だから回らないでぇ』って言われて…」
高橋は涙ながらに恐怖体験を語る。次に谷村が同じく眼を潤ませながら語った。
「いつも暗いって言われるから今日は明るく行こうと物真似しながら入ったら『それもう飽きた』って睨まれてそれから記憶がなくて…」
いくらドMでも限界値を超えたらしく谷村は一度石化した自分を少し離れた上空から見たと語る。それ臨死体験じゃ…と岸くんが言いかけて黙った。
6人が恐れ慄いているとまた楽屋のドアが開く。恐る恐る振り返るとそれは栗田だった。
「お?なんだお前ら。んな隅っこで固まって。あ、れいあー休憩入ったよー」
栗田はいつもの様子で中村の背中にそう声をかけた。
固唾を飲んでそれを岸くん達が見守ると中村はゆっくり振り返る。
「栗ちゃん。待ってたんだよぉ」
凍てつくシベリアの凍土に暖かい春がやってくる。Spring has come。花が咲き乱れ小鳥が歌い若葉が芽吹く。緊張感が最大限に張り詰めていた楽屋はその糸が切れ、解放の光が射した。
「遅いよぉもう待ちくたびれちゃったよぉ」中村は栗田に駆け寄る
「わり。なんかさーカメラトラブルとかあってー。んでまた後で撮り直しとかあんだけどー」
「えぇ…終わりじゃないのぉ?」中村は不満顔で頬を膨らませる。
いつものれあたんが戻ってきた。神7達が安堵に包まれていると栗田がアホ笑いをしながら指をさしてくる。
「お前ら何やってんの?揃いも揃ってアホ面してさギャハハハハハハハハ!」
「ほんとぉどうしたのぉ?うふふ」
たった今まで自分がブリザードを巻き起こしていたことなどまるでなかったかのように中村は乙女ちっくに笑う。何がなんだか訳が分からないが極寒地帯からは免れたので深く考えないことにした。神7達はそれぞれのいつもの過ごし方に戻る。
「神宮寺、検索ワード「フランスパン」とかどうかな?今思いついたんだけどさ」岸くんは神宮寺に検索ワードを囁く。
「き…岸くん、フランスパンで何を想像して…」高橋はショックと興奮の狭間に陥る
「フランスパン!なんか新しい世界に出会えそうな気がするぜ!さすが岸くん!今日冴えてんな!」神宮寺はノリノリでスマホを起動させた
「肉まんレンジでチンしてくる」倉本は凍った肉まんの袋を持ってレンジを求めに行った
「さて、経済学でも学ぶか…」羽生田は『ミナミの帝王』55巻を鞄から取りだした。
「勉強でもしよう…」谷村は参考書を広げる
和やかな雰囲気はしかし、15分ともたなかった。
ドアがノックされる。そこに入ってきたのは…
「あ、栗田くん。撮影始まるみたいです。呼んでくるように頼まれて」
礼儀正しく入ってきて栗田を呼んだのはフレッシュJrで目下活躍中の村木亮太だった。濃い眉毛と焦点の定まらないワンダーアイとナチュラルな語り口がチャームポイントの中学二年生である。
「お。わりー。ありがと村木」
栗田がそう言って立ちあがり、中村に「んじゃちょっと行ってくる」と言う。中村は微笑みながら栗田に手を振る。
ドアが閉まった瞬間、絶対零度のブリザードが楽屋を襲った。
「な…なに…?」
吹っ飛ばされかけた岸くんが目を丸めて呟くと、中村は岸くんを睨んだ。女王様…という単語が岸くんの脳裏に浮かぶ。SMは好きだがこれはなんだか次元を超えている。生命の危険すら感じた。
「フランスパンで何考えてんのぉ…言ってみなよぉ…」
岸くんは歯の根が合わない。こんな恐怖を感じたのは17年と2カ月生きてきて初めてだ。何度も死にかけたことはあったがそれはこれの比ではない。
「フランスパンってそういうことのために作られたんじゃないよねぇ岸ぃ…」
岸くんが慄いていいると、中村はキレ始める。
「この変態!!下ネタは嫌だって言ってんだろ!!いっつもいっつもセクハラまがいのことしやがってその汗にまみれた貧相なチ○ポ噛みちぎって犬のエサにしてやる!!今すぐ脱げ!!いいから脱げ!!!」
「うわああああああああごめんなさいごめんなさい助けて神宮寺!!!高橋!!!!はにうだあああああ!!」
岸くんは泣き叫びながら神宮寺、高橋、羽生田と命からがら楽屋から脱出した。中村は楽屋から出てこない。一人逃げ遅れた奴いなかったか…?と思っていると誰かの絶叫が楽屋から轟いた。谷村だ。岸くん達は合掌した。
「お?なんでお前ら裸足で出てんの?」
肉まんを解凍し終えた倉本が食べながら戻ってくる。
「今楽屋に入るな…命が惜しかったらな…」
羽生田が説明する。そこで5人は廊下でこの非常事態について話し合った。
「どうもその…最近ジュニランの撮影がさ、別々になることが多いから精神不安定っぽい中のやきもち妬いてるっぽい感じのそれが村木に対してっぽいみたいで…」
高橋の見解に岸くん達はもしかしたら…と記憶を掘り起こす。
「確かに撮影とかも舞台も一緒になることがあるな…でもなんで村木にだけ?」
「フリースタイルバスケだっけ?あの時妙に栗田が村木に対して好意的目線だったとかたこやきパーティーでも親切だったとか…」
「二人で仲良く話してるとことか目撃もあるみたいだし…」
やきもちは今まで栗田の専売特許だった。それは栗田に対してはJr内で誰も疑いをもたれるような行動を起こす者がいなかったからなのだがこの件は全く別である。栗田が親切にしているというあまりない光景ではある。
栗田といえば先輩だろうが後輩だろうがおかまいなしにばっさばっさと切り倒す。中村以外の人間に優しくしているところなどほとんど見かけない。
珍しい現象だからこそ、どこか生々しい。中村もそれを感じとっているからこそ精神的支柱がグラグラしているのだろう。
しかしそれを栗田本人の前で出さぬようギリギリのところで耐えている。その反動が栗田がいなくなった後に来ているのだ。
「以前…悪ふざけでちょっと栗田と親密っぽく見せかけてみたら中村はスチール缶を握りつぶしたぞ…」
羽生田が恐怖体験を語る。汗が一筋頬を伝った。
「普段のふんわり乙女キャラとのギャップがこういうとこに出るのか…。あーでも噛みちぎられるくらい強くしゃぶられたらそれはそれで昇天だな」
喉元過ぎればなんとやら。神宮寺が呑気に呟く。するとそこでバン!とドアが開く。凄い形相の中村が出てきた。神宮寺はひっくり返りそうになった。
「…」
5人は凍りつく。それを一瞥して中村はどこかへ去って行った。
恐る恐る楽屋に入るとそこには白目を剥いてピクピク震えて倒れている谷村がいた。浜に打ち上げられた魚のようだ。岸くん達はもう一度手を合わせた。安らかに眠れ、と…。
谷村の骸を囲んで5人はある結論に達する。
「とりあえず撮影が終わるまでの我慢だ。その後はいちゃいちゃれあくりが戻ってくる。そうなれば何もかもいつも通り。絶対零度は過ぎ去るんだから耐えよう」
皆で頷き合う。そう、今日一日の我慢だ。明日からはまた平和が訪れる。うふふのれあたんも戻ってくる。
話し合いは終わった。皆精神的疲労が溜まっていたから甘いものを食べ食べ、紅茶飲み飲み休憩時間をすごす。そこにれあくりが戻ってきたのは30分後だった。
「ねぇ栗ちゃん今日ゲームセンター寄ろうよぉ。プリクラ撮ろぉ」
「オッケー。なんか腹減ったなー」
「あ、栗ちゃん苺ポッキーあるよぉ。はい、あーん」
どうやら無事撮影は終了したようだ。神7はほっと溜息、安堵した。この後は歌の収録が残るのみ。それが終えればまたしばらくは平和な日々が…
しかし問題はその歌収録に残っていた。
「おいコラ!!聞いてんのか中村!!どっち見てんだゴルア!!」
セクシーボーイズメンバーと岸くん・高橋・岩橋の三人とその他では振り付けや立ち位置が微妙に異なる。それぞれ説明を受けているのだが中村は栗田達の方を物凄い眼つきで見ている。栗田が村木と話しているからだ。そこで鬼ヤクザの怒号が飛んだ。が…
「ちゃんと聞いてますぅ…Aメロの時はこっちでBメロになったらこっちに移ってここはこうでああでぇ…聞いてますから気にせず続けて下さぁい…!」
中村は鬼ヤクザを睨んだ。神宮寺、羽生田、倉本はもう気を失いそうになる。だが折れたのは鬼ヤクザだった。
「お…おう…」
一回カメラリハを通して休憩、となった。中村は栗田のところに飛んで行く。
「ね、栗ちゃん楽屋でゲームしよぉ」
ふんわりと中村が栗田に寄り添ったが、栗田はバツが悪そうに頭を掻いた。
「わり。れいあ、俺ら振り全然入ってないってさっきさんざん怒鳴られたからさ…。自主練しないといけねーなってなって…」
「えぇ…でも栗ちゃんちゃんとさっき僕らと確認してできてたじゃん…できてないのは他の子でしょぉ?」
「そうなんだけどさ…あん中じゃ俺がいっちゃん先輩で年上だし…揃わなかったらまた怒られて収録どんどん伸びるしみんなでやんないと…」
「松倉に任せればいいじゃん。松倉だって中三だしぃあの子ダンス上手いしぃ」
「松倉今日なんか体調わりいみたいなんだよ。谷村の野郎もなんか死にかけだし…。だから俺が…」
中村と栗田がそんな会話を交わしていると、そこに遠慮がちに入ってきたのは村木だった。
「すいません栗田くん、あの…最初からもう一度合わせてもらってもいいですか?」
「おう」
栗田が二つ返事をしたことが中村の精神を崩壊させた。
「栗ちゃんのばかああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
スタジオじゅうに轟き渡る凄まじい衝撃波はセットをも大破しかねないエネルギーを持っていた。大道具が慌てて駆け付けたが当の中村は姿をくらましてしまった。
神7が大慌てで中村の後を追うと、彼は楽屋にいた。しかし絶対零度もブリザードも飛ばしてはいない。隅でうずくまって携帯電話方手にぶつぶつ言っている。恐る恐る近づくと彼は言った。
「ねぇはにうだぁ…即日配達の宅急便って知らないかなぁ…」
「宅急便…?何を送るんだ…?」
「違うのぉ…家にある物ちょっと持ってきてほしくってぇ…今家に連絡したんだけどぉお母さん妹の送り迎えでいけないしぃお父さんは仕事だしぃ持ってこれる人がいなくってぇ…」
中村の声には抑楊が全くなく、目は死んだように生気がなかった。肌の色もいつにも増して白い気がする。
「何を持ってくるの…?」
高橋が震える声で訊ねると、中村は淡々と答えた。
「こないだぁファンの人がプレゼントしてくれてぇ…『何かあったら使って』ってちっちゃなボタンがついたコントローラーが入ってたのぉ。関東平野一帯ぐらいなら草一本残らないようにできるってぇ…」
「ちょ…!!」
「もいっこあったんだけどぉ…それは格納庫から出さないといけないみたいでぇちょっと今日中には無理かなぁでもそっちの方が強力だからいいんだけどねぇ…。RS-20Zh15とかって番号がついててぇ旧ソ連が開発したやつらしいんだけどぉ…」
神7は顔面蒼白になる。そんなもんぶちこまれたら地球が滅亡してしまう。ウルトラマンも裸足で逃げ出すだろう。
「ちょっと待って!落ち着いて!あの栗田が浮気だのなんだのあり得ないから!だからそれはどっか海にでも捨てて!!非核三原則ってあるじゃん?持たず作らず持ちこませず…だっけ?なんにせよ平和的解決を…」岸くんが慌てふためいて中村を宥めに入る
「そうだよ!栗田くんは仕事への真面目な姿勢から振り付けを確認してやってるだけで…アホだけどやる時はやる、そういうところに中村くんは惚れたんでしょ!?僕の恋愛教祖なんだから気をしっかり持って!」高橋が岸くんばりに汗だくで説得する
「そうそう!れあくりはジャスティス!ジャスティスはれあくり!これは自然の摂理!万物の総意!だからそんなの捨てなよ!」倉本がスナック菓子を放ってまで止めに入る
「皆の言う通りだ!暴力で解決は良くない!今すぐ栗田のところに行こう!話せば分かる!いくら栗田がアホでも…ってなんで栗田は来ないんだ!?」羽生田は後ろを振り返る
「てゆーかよ!!そんなんぶちこんだから栗田もろともお釈迦様だろうがよ!冷静に考えろよ中村!死んだら栗田といちゃいちゃできねえんだぞ!!」神宮寺が珍しくもっともな意見を放った
だが今の中村には全く無駄だった。うふふと狂気的な微笑みがそれら全てを駆逐する
「お星様になったらずっと栗ちゃんと一緒にいられるでしょぉ」
さよなら地球…岸くんは白目を剥いた
どうせ死ぬんなら今から無理矢理岸くんと…高橋は白目を剥いた
童貞のまま死ぬのは嫌だ。もういっそこいつらの誰でもいいから…神宮寺は白目を剥いた
みずきどこ行った…倉本は白目を剥いた
「おいみんなしっかりしろ!いいから栗田を呼んでこよう!これをどうにかできるのは栗田しかいない!」
羽生田だけが唯一まだどうにか冷静さを残していた。5人でマッハで栗田のところに向かう。振り確認の最中で真剣な表情だった。だがなりふりかまってなどいられない。栗田を説得にかかる。
だが栗田はけろっと言い放った。
「収録終わったらちゃんとれいあと話するから邪魔すんなよ。これちゃんとできなかったら俺ら出番なくなんだから」
「そんなこと言ってる場合か!地球の危機だぞ!」
「地球の危機より今の危機なんだよ俺は!もうこれ以上立ち位置下げられるわけにゃいかねーんだよ!」
その言葉に神7達ははっと気付く。
そうだ。収録の一つといえども気を抜くことはあり得ない。そんなことが許される奴はこの中には誰もいない。一つ一つ全力で真剣に取り組まなくては明日にももう呼ばれなくなってしまう。そんな厳しい世界だ。それを恐怖ですっかり忘れてしまっていた…。
「れいあと一緒にいるためにも今は練習しなきゃなんねーんだよ」
神7達は頷く。その通りだ。中村が泣こうが叫ぼうが今は練習しなければならない。栗田は何が大事かをちゃんと理解し、ぐっと耐えている。
きっと、中村も分かってくれる。そう思ったから神7は栗田の気持ちを代弁すべく楽屋に引き返した。
楽屋では、中村が一人で膝を抱えていた。もう携帯電話も持っていない。配達員も来ないから地球破壊爆弾のスイッチはまだ闇の中だ。
「中村、あのさ…」
岸くんが声をかけると、中村は顔を上げる。
「俺達も振りの確認しよう!さっき鬼ヤクザにも怒られたし…まだまだ揃ってるとは言い難いしな」
中村は頷いた。彼もちゃんと分かっているようだった。
そして収録は無事終了する。今日の撮影は全て終了だ。解散を言い渡されそれぞれ楽屋に戻った。
「栗ちゃんごめんなさい…さっきは我儘いってぇ…反省しますぅ」
「何言ってんだよれいあー。そんだけ俺のこと好きってことだろー。もっとどんどん妬けよギャハハハハハ!!」
「うん…。栗ちゃん優しいぃ…大好きぃ」
中村は栗田に幸せそうに寄り添った。一件落着。神7達は心の底から安堵した。
そこへ…
「あの栗田くんさっきは振りの確認ありがとうございました。これ食べて下さい」
村木がお菓子の箱を持って現れる。栗田は機嫌よくそれを受け取った。
「お、サンキューサンキュー。気にすんなよ、振り合わせは大事だからな。がんばってこーぜ!」
ぽん、と栗田が村木の肩を叩き、村木は笑って頭を下げた。そして楽屋を去ってゆく。
「れいあーお菓子もらった。食べよーぜ」
栗田がお菓子の箱を中村に渡すと、次の瞬間それは木端微塵に砕け散った。
「栗ちゃん…」
ゆらりと中村は栗田をねめつけた。そして地獄の重低音でこう呟く。
「他の子から安易にもの受け取らないでぇ…あとボディタッチも絶対やめてぇ…谷村が振り間違いした時のおしおき以外で触れるの僕ぜっっっっっっっっっっっったいに許さないからぁ…!!!!!!」
粉塵と化したお菓子は床に無残に散らばる。それをぞっとするような眼で見下ろしながら中村は断言した。
「守ってくんなきゃ栗ちゃんのことこのお菓子みたいにしちゃうかもしんないからねぇ…!!!!!!!」
「はい…」
栗田は口を開けながら自動音声のように答え、何度も小刻みに頷いた。
「天地神明にかけて誓います…」
栗田が震える声で誓いを立てると、中村はにっこり笑って元の柔らかい笑顔に戻る。それを背中に汗をかきながら見守る岸くん達はこう呟いた。
「地球の平和は栗田にかかっている…頼むぞ栗田…」
END
作者さん乙です!
谷村の骸www
いつもの作者さん乙!
やきもちれあたん可愛いやら恐ろしいやら…www
地球の命運はひとりのアホな少年に託されたwww
さすが神7、このカオスさ大好きだ!
んんんんんんれあたんんんんんんんんんん
「僕は天使なんかじゃないよ」
誰かが耳元でそう囁いた…気がした。そこで覚醒が訪れる。薄眼を開けてけだるい体を起こして数回の瞬きと共に室内を見渡す。眠る前と変化はない。
時計を確認すると午前三時半。まだまだ夜明けには早い。ベッドの横に備え付けられた電灯が淡い光を放っていた。
すぐ側には中村が寝息をたてて眠っている。岸くんはそれを少し複雑な想いで見つめた。
あどけない寝顔…幼児のように無邪気で穢れのない…
たった今までしていたことはしかしそうした無垢さとはほど遠い行為である。背徳感や羞恥心がないわけではないがそうしたものが褪せてしまうほどにもう常態化していた。
「ん…」
中村が寝がえりを打つ。頬に人差し指をあててその肌の滑らかさを確かめると岸くんは再び蒲団を被って眠りにつく。夢は見なかった。どこまでも深い闇に堕ちて行くだけ…
「お、これいいんじゃね?岸くん似合うんじゃね?」
「神宮寺じゃあ買ってくれ。あ、はにうだでもいいや」
「何言ってんの?自分で買いなよ。俺らそんな金ないし…あ、マック寄ってこーぜ」
神宮寺と羽生田とレッスン帰りに買い物に出かけた岸くんはマックで休憩がてら雑談を楽しむ。外を歩き回るには少々厳しい季節になってきた。銀杏並木が木枯らしに揺らめいている。
「はにうだ買いすぎじゃね?食いきれんの?」
トレーに山盛りのファストフードに神宮寺が目を見開きながら指摘する。
「あ、チキンナゲット頂戴」
岸くんが羽生田のトレーに乗せられたチキンナゲットに手を出そうとするとぱしっとはたかれた。
「意地汚いな。自分で買えよ。ていうかポテトだけ?ケチすぎない?」
「いいんだよ。ポテト浴びるほど食うのがちっちゃい頃からの俺の夢なんだから」
岸くんはポテトをがしっと掴むと口の中に放り込む。神宮寺はホットカフェオレに息を吹きかけながらそれを笑って見る。
和やかな時間。冗談を言い合って、共通の話題で盛り上がって…時間も忘れて岸くん達はしゃべり続けた。時間の概念なんてなくなってきた頃…
ポケットに入れていた携帯電話が震えた。しかし震えはすぐに治まる。メールの着信だろう。岸くんはなんの気なく着信源だけを確かめた。
「…」
それを確認すると、立ち上がる。
「岸くん?」
羽生田の問いかけに、「ちょっとトイレ」と言って岸くんは席を立った。トイレの前で携帯電話を耳に当てる。
「もしもし?どうした?」
電話の相手は岸くんにシンプルに自分の要望だけを伝えて切った。浅い溜息と共に岸くんは席に戻り、神宮寺と羽生田にこう言った。
「悪い。ちょっと家からで…今日早く帰って来いって言われたの忘れてた。あ、ポテト食べてくれてていいから」
神宮寺と羽生田はきょとん、としている。
「帰って来い…って…今日は三人何も用事がないから遊ぼうってなったんじゃん」
「そうなんだけど…俺が忘れてただけで…ほんと悪い。また今度誘って」
荷物をつかみ、そのまま店を出ようとすると後ろから神宮寺が追ってきてこう言った。
「嘘だろ。また呼び出されたんだろ」
岸くんは後ろを振り返った。
神宮寺は岸くんの電話の相手を正確に察知している…ようだった。確信めいた口調だ。
「行く必要なんかないだろ。だいたい俺らはちゃんと誘ったぞ。なのに「今日は用事がある」って断ったのはあいつだろ。なのに後から岸くんだけ呼び出すとかどういう神経してんだよ」
「なんか勘違いしてない?俺は家に帰るだけだし…」
岸くんは努めて冷静にそう返した。だが神宮寺はそんなことでは退かなかった。
「いい加減ちゃんとあいつに言えよ。『俺はおもちゃじゃない』って。かまってほしいのかからかってんのかいいように使ってんのか分かんないけど迷惑だって」
神宮寺の眼には怒りの色が見え隠れしていた。それはあいつに対してだろうか、それとも煮え切らない自分への…
しかし岸くんは神宮寺の忠告には答えずそのまま走って駅まで向かった。神宮寺は追ってこなかった。
目的の駅まで約30分。その間、岸くんは色んなことを考えた…だが何一つ纏まらなかった。そうしているうちに乗り過ごしそうになり、慌てて電車を降りる。
改札を抜けて、券売機の側の大きな柱にもたれかかるその横顔を確認し、近づいていく。
岸くんが至近距離にくるまでその人物は気がつかなかったようだ。美しい横顔は張り付いた能面のようでまるで魂を持たぬ人形のようだった。
「中村」
声をかけると、弾かれたようにその人形は魂を取り戻す。こちらを振り向くとにっこりと笑った。
「岸、ごめんねぇ」
開口一番、中村はそう言って手を合わせた。少し媚びるような笑顔と声色。中村の得意技である。
「いいけど…用事ないんだったら一緒に行けば良かったのに。なんでわざわざ…」
「分かってるくせに」
小悪魔な笑みを中村は浮かべる。そう、分かっている。分かっているからこそわざと訊いたのだ。
「マック行こぉ。お腹すいちゃった」
中村はさっさと歩く。たった今までそのマックにいたんだよ、と言おうかとも思ったがそれが言葉となることはなかった。マックに入り、注文を済ませると中村は不思議そうに岸くんのトレーを覗く。
「岸ポテトばっかじゃん。そんなんでいいのぉ?」
「俺の夢はポテトの海に溺れることなんだよ」
そう答えると、中村はふふっと笑った。そしてソフトクリームを舐めながら、
「いいね、それ」
と言った。
マックを出ると中村はカラオケに行きたい、と言った。時間帯が混雑時と少しそれていたからすぐに通される。二人で何曲か歌った後、中村はソファの隅に移動し、岸くんを手招きした。
「何?」
マイクを置き、岸くんは中村がぽんぽん、と自分の側のソファの上を手で叩くのでそこに移動する。
「ここだと多分カメラに映んないから」
中村は部屋に設置されている防犯カメラを指差した。岸くんがそれを見上げようとすると中村はもう岸くんの背中に手を回した。
「…」
脳の奥が痺れてくる。たった今までそんな気もつもりもなく純粋にカラオケを楽しんでいたのに岸くんは貪るように中村の唇を求めた。
「…はぁっ…」
全身が燃えるように熱くなってゆく。自分の中で何かが弾ける音がした。
息を乱しながら岸くんは中村のベルトに手を伸ばした。しかしそこでその手を掴まれる。
「ここでそれ以上は無理だよぉ…さすがに…」
そっちから誘ったくせに、こうして人の気持ちを弄んで笑うその神経に岸くんは腹がたった。だから少し冷たく「分かった」とだけ言って衣服の乱れを直すと、中村は顎を引く。
「怒ったのぉ?」
「別に」
「あ、怒ってるぅ。ごめんなさい、僕が悪かったからぁ」
気持ちのこもっていない「ごめんなさい」はしかし岸くんにとってはジョーカーのような役割を果たしていた。それも計算済みなのか中村は荷物を取ってさっさとマイクを戻した。まだ残り時間は30分以上あったのだが…
「続き、しに行こぉ」
中村は岸くんの手を取った。どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか分からない。自分はそれに振り回されるだけ…?それとも、振りまわしている…?それすらも分からなくなり岸くんは中村と手を繋ぎながら町を歩く。
ポケットの中の機体がまた振動した。それを手に持とうとして…
「ダメだよ、出ちゃ」
中村の、囁くような…しかし、強い意志が宿った声が耳を撫でる。岸くんはポケットの中に入れた手を再び出した。
そうして岸くんは中村といつものように、爛れた行為に耽る。求められているもの、求めているもの…奇妙な感情のパズルがこの時だけはぴったりとはまる。
だがまたピースはバラされる。その繰り返し。循環指数のように終わりのないエンドレス・ゲーム…
すやすやと寝入っていたはずの中村が、ふいに眼を開けた。
彼は掠れた声でこう呟いた。
「ごめんなさい…」
そこにはちゃんと感情がこめられていた。
だが、その謝罪の意味が岸くんには分からなかった。
548 :
ユーは名無しネ:2012/11/15(木) 23:42:08.81 0
き、岸くん・・・。。。
問題作や…
久しぶりに岸れあキター
きしゆ切ない…
ふうきゅん知ってたらえらいこっちゃ…
愛しのプレイガールれあたん…
人口密度www
‘・)ギリギリギリギリ
颯きゅんがお怒りのようです
続きはあるのか…?
れあたん魔性や…
ぎじぐん羨ましいぞ替われこのやろう
わかったよ れあたん・・・切ない・・・
【ジュニランCM出演メンバー】岩橋玄樹、岸優太、倉本郁、神宮寺勇太、高橋颯 、羽生田挙武 (J-webより)
れあたん外されたのか…ショック…
562 :
ユーは名無しネ:2012/11/16(金) 22:21:02.56 0
まあベストメンバーだね
563 :
ユーは名無しネ:2012/11/17(土) 09:12:26.63 I
栗田くんヤキモチやきすぎ 笑笑
564 :
ユーは名無しネ:2012/11/17(土) 11:40:06.59 0
岩橋は好きだけど神7のラインにいてほしくない
レイア加えて7人でもよかったのに
今日は関東一帯は激しい風雨に注意が必要、という天気予報は珍しく当たっていた。家を出て、レッスンスタジオに到着するころにはジーパンの膝から下がびしょ濡れになっていて靴下まで染みていた。
代わりの靴下を持ってきて良かった、と思いながらスタジオで高橋はそれを履き替える。
「うっわー、鞄の中身も濡れてる。たまんないなー」
悲鳴のような声をあげたのは岸くんだ、高橋も自分の鞄の中身を確認する。
「ビニールに包んでくりゃ良かった。こんな降るとは思ってなかったもんなあ」
岸くんは隣で携帯電話をいじっている中村にそう言った。彼は「そうだね」と生返事で携帯電話から目を離さず答える。
その中村が、高橋の方に歩み寄ってきた。
「高橋、対戦しようよぉ。まだ時間あるしぃ」
言われて、高橋は自分の携帯電話を取りだした。そして格闘ゲームの対戦を始める。
「なになに、面白いの、それ?」
岸くんが中村の携帯電話の画面を覗きこんだ。中村の顔と岸くんの顔が接近し、高橋はそこに注意を奪われる。その一瞬の隙をつかれ、負けてしまった。
「やったぁ〜」
中村がガッツポーズをする。岸くんの顔はまだ彼に接近したままだ。
「岸には無理かもねぇあんまゲームやんないんでしょ岸は?」
「そんなことないよ。貸してみて」
岸くんの大きな手が中村の携帯電話を彼の手ごと包む。
「駄目。岸壊しそうだもん」
「壊さないよ。ちゃんと丁寧に扱うから操作方法教えてよ」
「やだぁ」
二人はじゃれあう。それを見てぐらぐらと神経を支える柱が揺れる。
いつの頃からか、ぼんやりと…しかし明確な形を伴って高橋はそれを察知してしまった。中村と岸くんの間に流れる空気は単なる友達としてのそれとは全く違うことに。
本人達がそれを明言しているわけじゃない、周りも言っているわけじゃない。だけど、言葉よりも確かなものが存在している。ある意味ではそれは最も真実味を帯びている。
仕草、視線、雰囲気…何気ない動作の一つ一つがそれを暗示、いや明示している。漂い流れる空気の全てが証明している…ような気がした。それは今こうして見せつけられていることで自分が精神的ダメージを負おうとしていることが何よりの証拠だ。
だけど、それを知ったところでどうするわけでもない。ましてや、本人達に問い質すなんてことは絶対にできるわけがない。そんなことをするのは全く無意味だ。
だから、気付かないふりをして今までどおり笑いあって過ごすだけだ。
だけどもう知らないふりも限界なのかもしれない。
携帯電話を握りしめながら、高橋はそんなことを思った。
「うわ!誰だよ俺の水にお酢入れたの!うえー」
休憩時間、岸くんの絶叫がスタジオ内にこだまする。それをくすくすとイタズラな笑みを漏らしながら中村が見て、彼は自販機コーナーに高橋を誘った。
「あーおかしい。岸お水思いっきし吹いちゃってたねぇ」
「お酢はさすがにキツイよ。知らずに飲んだなら尚更」
高橋は苦笑しつつ自販機のボタンを押す。そこで思わずこう呟いてしまった。
「でも、なんで岸くんにばっかイタズラすんの?神宮寺くんとかはにうだにもしてみたらいいのに」
「んーリアクションが一番面白いじゃない。それにぃなんか岸にはかまってほしいんだよねぇ」
ミルクティーのボタンを押しながら、中村はそう答えた。
「かまってほしい、か…」
中村には子どもっぽいところがあって、誰かに注目されたい、自分を見てほしい、そういった気持ちが強く出る瞬間がたまに見える。
小学生が好きな子にわざと意地悪してしまうのと似た感情だろうか…それとも親の愛情を試したくてわざと叱られる行為を繰り返す子どもの心境…いずれにせよそこには何か満たされない想いが存在する。いわば心の闇だ。
闇は光を強く求める。中村の場合、それを照らしてくれるのが岸くんだったのかもしれない。岸くんにはみんなから好かれる不思議な魅力があるし自分もそこに惹かれた。だから納得できるといえばできる。
しかしその一方で、何故それが岸くんなんだ…というやりきれない想いが存在する。そしてそれは日増しに強くなる。
何も、岸くんじゃなくても、他にいくらでもいるだろうに…中村だったら得意のぶりっこと媚びるような甘える仕草で、誰でも自分の方に向かせることぐらい可能だろうに、何故…
僕が岸くんのことを好きだって知っててわざと…
その可能性が脳裏を掠めると、高橋の中では葛藤が嵐のように渦巻いたのだ。自分の中でどうしようもないどす黒い感情が吹きだしてしまうのを抑えることがいつかできなくなった時、何をしてしまうか分からない。それがたまらなく怖い。
だから、もうやめて…と高橋は思う。
岸くんに触れないで
岸くんに話かけないで
岸くんを見ないで
言葉にならない咆哮は、どんどん内に向かって行くばかり…
分かっている。岸くんにとって自分はそういう存在ではないことを。中村にはあって自分にはないものが嫌というほど理解しているからこそ余計に身を切るような想いがかけめぐる。
自分がどうあがいても辿り着けない領域に、中村はあっさりと到達する。
なんで?どうして?なんで?どうして…
数えきれない疑問符が頭の中を埋めつくし、この身を支配する。答えの分かりきっている疑問は虚空に留まる。
負のエネルギーが、感情が、木枯らしとなり吹きつけてくる。荒れ狂う感情に支配されそうになり、叫びたくなるのを必死にこらえる。いつまでそれがもつか…
「高橋?どうしたのぉ?行くよ」
だけど、ほかでもない中村のその笑顔を見ると自分の中に渦巻く激情が緩和される。それが救いでもあった。
こうして顔をつき合わせて何気ない会話をして日常を過ごしている限りはまだ大丈夫。
そう思った矢先にそれが視界に入った。
前を行く中村は、階段を降りる。そこで目についてしまった。
中村の首筋のあたり…そこに、うっすらと小さな痣のようなものが見えた。
痣と呼ぶには少し淡い…そんなところに自然とこんなものがつくということはあまり考えられない。
目の前に、ストロボをたかれたかのように視界が一瞬真っ白に染まる。
この痣をつけたのは…
それが意味するもの、その行為…
見たくもない光景が、フラッシュバックのように視界に映ると、ゴオ…と鼓膜を何かが振動させた。ほとんど無意識に高橋はそこへ手を伸ばしていた。
「高橋?」
中村がゆっくりと振り向く。指に力を入れようとした、その時…
「高橋、ハンカチ落としたぞ」
後ろから声をかけられて、高橋は我に返った。振り向くとそこには羽生田が高橋のハンカチを手に持って立っていた。
「ありがと…」
高橋は、うわごとのようにそう呟くことしかできなかった。
続きキター
ふうきゅん切ない…
気づいてしまったか
切ない…苦しいね…
572 :
ユーは名無しネ:2012/11/18(日) 09:51:29.60 I
岩橋くんは、岸くん颯くんと3人で活動してるから、もう神7入りでいいんじゃないでし
ょうか??
そのうち、この板でも神7入りさせてほしいですっ
>572
岩橋は嫌いじゃないけどあなたみたいな岩橋ファンは苦手
他人任せじゃなく自分で岩橋加入させた話をかけばいいのでは?
まあ作者さんの自由で
575 :
ユーは名無しネ:2012/11/18(日) 18:30:29.26 0
げんたん好きだけどこの中だといまいちキャラが弱すぎる気がする
>>572 どこから来たか知らないけど、一生ROMってた方が良いと思うよ
げんたんって言ったら松田元太だろ
578 :
ユーは名無しネ:2012/11/18(日) 21:03:27.86 0
げんたんも元太も好きだから悩ましいねえ
れあたんだけ外されること多いな
でも、今日のJJL歌コーナーは谷栗松田松倉と岩橋が衣装同じで
颯はにーシンメセンターポジション、Wゆうたシンメ、くらもっさんれあたんシンメで衣装同じ、と
またよくわからん組み合わせで……
じぐはにシンメセンターでセクボ推すのかと思いきやはにー、写真でなかったしな
岩橋書くかどうかは作者さんの自由だけど、リアルでは岩橋IN確実
ただ、事務所がなにをしたいのかいまいちわからん
村木本高の存在もチラチラしてきたし
>>572 象さんからでも来たの?
それとも岩橋ヲタの評判を下げたいなりアンチ?
どうでもいいけど、ピリピリしてるれあヲタ刺激しないほうがいいよ
>>579 本高はともかく村木は……レギュラーも決まったし
っていうかJJLで新しく出てきたメンバーは要注意な
ここは現実はどうあれ妄想を楽しむ場所です
アいかわらず、プマホモ気持ち悪い
今の状態だと栗田と谷村はヤバイ状態だね
滝チャンも村木と元高inだし
栗田は手を抜かないで谷村は表情をなんとかして生き残れ
tst
585 :
ユーは名無しネ:2012/11/19(月) 15:13:32.39 I
572と同一人物です。
すみません、わたしは岩橋担なんですけど以後気をつけます。
まーでもリクエストは悪いことじゃないよね。それで新しい話読めたりするし
担当を想う気持ちはみんな一緒なんだし、そんなに怒ることないんじゃないかな
神7もリアルに仲良くしてるみたいだし温かく見守ろうよ
とりあえず>572は半年ロムってね
しばらく前からやたらきつい言い方の人増えたな
初期はおいこら荒らしかって人きても華麗にスルーする平和なスレだったからその頃みたいにまったりいきたいぜ
一時期作者さんの書いたものに○○出すなとか内容にケチつけて急激に過疎ったしな
作者の妄想で勝手に話作ってヲタが沸いて本人達にもいい迷惑だわな
書きたいなら違うサイト作って書けばいいのに
え
規制が解けない…
換気!意見は人それぞれだし自分は作者さんの作品楽しみだ!
594 :
ユーは名無しネ:2012/11/25(日) 14:29:56.79 0
ジャニワ裏話 神7
ジュニランCM裏話 神7
とか
面白そうだけど・・・
(作れたら書くのだが・・。)
CMはれあたんいないから辛いお
れあたんは楽屋で待ってることにすれば?
597 :
ユーは名無しネ:2012/11/25(日) 21:03:01.24 0
徐々にバラバラになっていくのかな・・・
ジャニワ見てきたよ
神7みんな元気だった
岸くん相変わらず険しくて負けずに凝視したったw
さあ、始めよう。君の物語を。君だけの物語を
曼珠沙華 空を仰ぎて 舞い踊る by挙武
透き通るような冷風を顔に受けながら羽生田はレッスンスタジオまで疾走する。課外授業が長引いたから若干遅刻気味だ。
急ぐべき時に限って意識がよそへいきがちで、なんだか一句詠んでしまった。晩秋の肌寒さが切なさを誘うせいかもしれない。季節は人を文人に変える。
「うらぁ!!はにうだおせーぞてめぇ!!さっさと位置につけぇ!!」
ヤクザのような口調の振付師にももう慣れた。最初こそなんて非人道的な口のきき方をするおっさんだと恐れ慄いたもんだが今は気を抜くとそのヤクザ口調がBGM化しそうなほどに体に馴染んでいる。不思議なものだと羽生田は思う。
休憩時間はそうした厳しいレッスンの中でのひと時のオアシスだ。甘いものを食べて気を落ち着かせようとちょうど横にいた高橋とお茶をくむ。
「おおなんだそのメロンパンは、新作か?」
「そう。こないだの撮影の時に使われた奴でおいしかったからスタッフさんにどこのか訊いたんだよ。岸くんもおいしそうに食べてたよ。フフ…岸くんと二人きりの撮影…フフ…フフフ…」
高橋は思い出し笑いを不気味に漏らしている。
「そうか、ちょっとひと口」
「意地汚いな、自分で買いなよ。あ、そうだじゃあこれが誕生日プレゼントということで」
高橋は冗談めかしてかじったメロンパンを差し出してきた。
「何言ってるんだ、別に誕生日プレゼントがほしいわけじゃないがそんなけちな感じで済ますなよ」
「あー、ていうかはにうだ何にする?ほら神宮寺くんの時は大騒ぎして焼き肉店出禁になっちゃったじゃん。もうちょっとおとなしめの店とかの方がいいかな?」
「大騒ぎしたのは高橋だろう。まあ僕としては別にどこでもかまわないよ。強いて言うなら帝国ホテルの中華とかかな」
高橋と冗談を飛ばし合っている横では、中村、神宮寺、栗田の呟きが聞こえた
「えーと…Xが2の場合ぃ、Yはぁ…」
「しょぎょうむじょう、ってどう書くんだっけ。あそうだこれだ」
「れいあー、ここ教えてくれ、これー」
休憩時間に問題集やら宿題やらを持ち込む頻度が増えたのは中学三年生のメンバーである。おりしも世間では受験生。ジャニーズJrとて例外ではない。差し迫った受験に皆必死の悪あがきだ。
そして受験生でもないが谷村も問題集を方手に勉強をしている。彼もエリート校に通うJrの一人。最近きのこ図鑑は封印したようだ。
「いいよなはにうだはエスカレーターだからよー」
神宮寺がエンピツ方手にぼやく。何を言うんだこのエロエンペラーは…羽生田は言い返した。
「何言ってるんだ僕の場合は成績が悪かったら上がらせてもらえない上に退学だぞ。こっちだって必死なんだよ」
「でもお前んとこ大学までついてんだろー。フツーにやってりゃ大学まで行けんだろ」
「馬鹿言うな。そのフツーを維持するのがどれだけ大変か…」
言いかけて、嫌なことを思い出す。最近あったテストで成績が下がったのを。
そして学校では学校でこれだ。
「はにうだ君はいいよね、ジャニーズやってるからそんな勉強勉強ってうるさく言われないでしょ?僕んとこはちょっとでも下がったらもう鬼のように怒られるんだ」
クラスメイトの会話の中で、羽生田は最近とみにこんな嫌味を言われる。いや、本人達に嫌味のつもりはない。羽生田がそう感じるのは自身の成績が芳しくないからだ。
「僕のところは兄2人がずっと成績トップクラスだったからプレッシャーが凄くて。その兄二人も官僚になれってプレッシャーかけられてるし…」
「そういう意味でもはにうだ君っていいよね。家が立派な経営者だからアイドルがダメでもそっちのポストがあるし」
「ほんと、うらやましいよ。今度またなんかの番組にも出るんでしょ?これ友達って言ったら親戚がうらやましがってさ、将来嵐みたいになるの?って訊かれたし」
「今からサインもらっとこうか。あ、ところでこないだの実力テストどうだった皆?」
羽生田は適当に話を会わせながら苦虫を噛み潰した。
テストの結果はさんざんだったからだ。
(…ここは一つ、もうちょっと真面目に勉強をしないといけないな…)
忙しいのはいいことだ。Jrの活動も、今の自分は目立つ位置に置いてもらえているから雑誌の取材やコンサートのリハ、レッスン、番組収録などスケジュールは程良く埋まっている。それらの合間をぬって勉強をし、そこそこの成績をキープしていれば全然問題ない。
だが、いくらエスカレーターとはいえ世間では受験生である中学三年生になれば自ずと皆勉強に力を入れてくる。特に羽生田の通う学校は教育熱心な家庭の子ばかりだから生半可な努力では成績は上がらない。
それどころか、ちょっとでもさぼればすぐに落ちこぼれてしまう。しかしながら、幸いにも両親が羽生田のJr活動と学校の成績について多少理解があるのが救いだった。
どっちも死ぬ気でがんばれ、と言われ続けたら潰れてしまう。成績が下がったことでJrを辞めろと言われることもないのは有り難かった。
「挙武、来週のお前の誕生日はどこに食べに行こうか。予約入れないといけないから決めといてくれ」
夕食の席で、珍しく早く帰った父親がもちかけてくる。羽生田は色々候補を挙げてみたが待てよと考えなおす。
「ちょっと保留で。もしかしたらJrの友達と食べに行くかもしれないし…予約しなくてもいい店探しとくから」
「そうか?まあお前ももう中学三年だし家族でってより友達との方が楽しいかもしれないな」
神宮寺の誕生日は焼き肉店で大騒ぎをして出禁になってしまったから今度はそうならないよう神7達には釘を刺しておかなくては…
そんなことを考えながら自分の部屋に向かうと飼い犬がとてとてとて…と歩いているのが見えた。
「よちょす!まちょす!」
犬の躾も、妹に任せっきりだ。そのせいか最近あまり羽生田に懐かない。今も声をかけたものの、知らんふりで去って行ってしまった。
「さて、とりあえずは明後日の小テストに向けて少しはがんばるか」
気合いを入れながら机に向かうと、携帯電話のメール着信音が鳴った。いきなり出鼻をくじかれ、なんだよと羽生田が覗きこむと岸くんからだった。
『明日のリハ何時からだっけ?11時?12時?教えてはにうだ!』
羽生田は溜息をつく。これが17歳とは嘆かわしい。どうしていつもいつも僕らに訊いてくるのだろう…
シンプルに答えてやると、次に着信が鳴る。そのまま取ると神宮寺だった。
「おいはにうだ!すっげーエロエロ動画見つけたぞ!!好みのうるさいお前でも唸らせるほどの超傑作だ!!今からURL送るから今すぐ見ろ!!うおお興奮してきた!もういっちょオナ…」
神宮寺の言葉を最後まで聞かず、羽生田は通話を終了した。折角勉強する気になってきたのにあの全身下半身男はどうしてこう…
誘惑を断ち切り、羽生田は勉強を開始する。だがまた携帯電話が鳴った。
「あ、はにうだ?ちょっと相談があるんだけど…岸くんって確か好きな数字8だったっけ?でも4って言ってたような…気になって眠れなくてだから教え…」
もういい加減にしてくれ、と羽生田はキレた。
「そんな下らないことでいちいち電話してくるな!!ていうかなんで僕に訊くんだ!!本人に訊けばいいだろう!?」
「だって岸くん寝てたりとかしたら迷惑かかるじゃん。それに恥ずかしいし…」
「僕だって迷惑だ!!今から勉強するから中村か栗田にでも訊け!!神宮寺はオ○ニー中だから多分出てくれないぞ!!」
全くあの同期は僕に対する遠慮や配慮に欠けている…。気になって眠れないならそのまま起きてて眼のくまをより濃くすればいいじゃないか。
若干血圧が上がりかけたので羽生田は気分を落ちつけるべくレモンティーを飲むことにした。そしてまた電話がかかってこないように電源を切る。これで大丈夫だ。
しかしながら、気分が落ち着きすぎたため、気付けば机に突っ伏して眠っていたのだった。
翌日のリハは少し長引いていた。なかなか進行が捗らないせいか現場にもピリピリとした空気が流れる。鬼ヤクザもいつもの1・5倍増しでヤクザっぷりを轟かせJr達を震撼させていた。
「てめーら休憩明けまだそんなフザけた出来ならもう出番なしだ!!全員東京湾にノーシュノーケルダイビングだからなゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ようやくの休憩時間。いつもならこの時間を惜しんで宿題だのテスト勉強だのをしているメンバーも疲労感故かノートを広げる姿は見えない。みんなぐったりとして疲労とストレスの解消に努めていた。
いつもエロ動画鑑賞で騒ぐ神宮寺もおとなしく仮眠しているし、高橋も回らずに押入れの中で眠っていた。
羽生田も空いている押し入れで寝たかったがとりあえず糖分を摂取して身体的機能を回復させようと予め買っておいたコンビニスイーツの袋を探す。だがどこにもなかった。
「あれ…?確かこのへんにおいたはず…」
不審に思いつつ楽屋内を見渡すと、なんだか見覚えのある容器が散らかっていた。
「これは…」
もしやと思って一つ一つ手にとって確認していくと、その中央に倉本がいた。
「なんだよはにー、俺の顔になんか付いてんのか?」
なんかどころか食べカスだらけの顔で倉本がそうふてぶてしく問うてくる。食べていれば大抵ご機嫌の倉本はしかし、相当に機嫌が悪く、悪態をついた。
「くっそ鬼ヤクザの野郎俺ばっか怒りやがって!!たにーだって間違えてたのによ!!なんで俺ばっかり!!」
「それは倉本お前が怒られてるのにふてぶてしい態度とるからだろう。ていうかこれもこれもあれも僕のコンビニスイーツだ!!君の胃袋に収まるためにコンビニから脱出したのではない!僕の栄養となるためなのに何故そんな堂々と窃盗を働く!!」
「あ?うっせー!!てめーが置きっぱなしにしてるからだろーが差し入れだと思ったんだよ!!」
羽生田と倉本の凄まじい口喧嘩に神7メンバーが半ば収めようと、半ば迷惑がりながら間に割って入る。
「うっせーぞ静かにしろ!!こっちゃ寝てんだよ!よそでやれ!!」
「そうだようるさいよ寝かせてよ!」
神宮寺と高橋は仮眠中でけだるい声で怒鳴る。そして中村と栗田は倉本側についた。
「はにうだ大人げないぃ」
「そうだぞおめー、楽屋に食いもん放置はNGだって考えりゃ分かんだろ倉本が見つけねえわけねえだろうがよアホかおめー」
「イタズラばっかりする小悪魔に大人げがどうのこうの言われたくない。そしてアホにアホと言われる筋合いもない。僕はちゃんと鞄の横に置いておいた。普通に考えたら他人のものだって分かるだろう?」
「かおる怒られっぱなしでストレス溜まってるしぃ許してあげたらぁ?」
「そうだぞおめー、れいあの言う通りだぞおめー」
「僕だってストレスは溜まっている!!だからおとなしく糖分を摂取してその解消に努めようとしてるんだ!!なのにこれとはどんな仕打ちだ!!
だいたい他人のものを盗んでおきながら悪びれもしないとはどんな非人道的行為だ!小学生だからこそ今のうちに学んでおくべきじゃないのか!!」
声を荒げるとしかし、それまで大人しく隅っこで勉強していた谷村がぼそっと口にしたセリフが羽生田の耳に入る。
「勉強に集中できない…」
羽生田の苛々は頂上付近に達しようとしていた。そこへきて岸くんのこれである。
「ねーちょっと俺のケータイ見当たらないんだけど誰か知らない!?誰か鳴らして!!頼む!!はにうだケータイ貸して!鳴らしてみるから早くううううううううう!!」
羽生田はブチ切れそうになる。そして喚き散らす岸くんは高橋以外の全員から大ブーイングをくらい、涙目になった。
そうこうしてるうちに休憩が終わりリハが再開された。
「全く…揃いも揃ってなんという非人道的連中だ…」
帰り道、羽生田は苛々を昇華できずに体中にまとわりつかせたままぶつくさと呟きながら歩く。このところ碌なことがない。成績は下がるわコンビニスイーツは食われるわ誰も味方になってくれないわ更にはそのイライラがリハにも影響して必要以上に怒られてしまうわ…。
倉本に食われた分のコンビニスイーツを帰りに買って帰ろうとしたが生憎手持ちがなかった。さらにダメージが蓄積される。
だがまあここでストレスを溜めこんでしまわないのが羽生田挙武だ。溜まったストレスはその日のうちに解消だ。誰にも邪魔されない自分だけの城にシャワーを浴びてから入る。
そしてガウンを着こんでブランデーに見立てたレモンティーのグラスを手に録画していた番組を見る。至福の時だ。
「…やはり桜井くんは偉大だな…」
嵐のバラエティ番組を一通り見終えるとなんだかまるで世界名作を読み終えたような爽快感が訪れる。
尊敬する桜井翔御大の素晴らしいバラエティ適正と名キャスターっぷりは羽生田を痺れさせる。いつかは自分もこのように人が憧れるような存在になりたいものだ。そのためにできることをしなくては…。
サマリーで衣装を間違え、落ち込んで涙したことを思い出す。奇しくもドキュメンタリー番組の追跡撮影中で全国のお茶の間に自分の失敗と無様に泣く姿が映し出され、羽生田は二度と同じ過ちをすまいと心に誓っている。
勉強とJr活動の両立、それが今の自分に課せられた使命である。そしてゆくゆくは経済に関する本を出版し、ハリウッド進出が夢である。
夢に向かって努力は惜しんではならない。さしあたっては目の前に迫った小テストを乗り切ることだ。羽生田は机に向かった。
「…まあまあだな…」
即日で返ってきた小テストの結果は良くもなく悪くもなく…しかしまあこのところ下がりっぱなしだったからそこに歯止めをかけられたのは大きな成果である。安堵しつつ羽生田は放課後リハーサルスタジオに向かう。
街はそろそろクリスマス商戦に入る頃だ。毎年、そんな雰囲気を感じながら自身の誕生日を迎える。去年の今頃はちょうど神7が結成されてすぐの頃だったからまだお互いを深く知らなくて、彼らとどう過ごしたかうすぼんやりとしている。
羽生田は振り返る。メンバーの誕生日を。何故か…いや、当然と言うべきなのか、それぞれ鮮明に思いだすことができた。
中村の誕生日は遠征先の大阪で、ロミオとジュリエットばりに栗田がホテルの9階のベランダを伝って彼に会いにやってきたらしいが自分は寝言がうるさいと椅子でどつかれ朝まで気絶していた。
栗田の誕生日はれあくりカップルの初体験騒動に少なからず神7にも影響が飛んできた。神宮寺が妄想で狂ったようにオ○ニーに励んでいたのと谷村が出血多量であわやお星様になりかけたのを思い出す。
高橋の誕生日はジャンプのコンサート中で岸くんが怪我をした。あんなに落ち込んだ高橋を見たのは初めてだったし、そこから立ち直った彼を見直したりもした。
倉本の誕生日自体は神7でお祝いパーティーは催さなかったが彼にとってはいい誕生日になったようだ。まだまだ子どもなのが微笑ましいがいい加減食欲は自制してほしいものだ。
岸くんのバースデーサプライズは記憶に新しい。普段のほほんとしている彼も色々と葛藤を抱えているらしいし、なんだかんだ不憫だが皆に慕われている。もちろん自分もそうだ。
そして神宮寺。彼の意外な繊細さを目にして羽生田も若干将来が不安になりかけたりもしたがやはりこのメンバーでなくては、と再確認するきっかけにもなった。
そして今日は自身の15歳の誕生日。誕生日を特別視するほど子どもではないつもりである。いつものように学校に行き、小テストの結果に安堵し、これからリハに行って帰りに神7達と夕食を済まして返る。
まあ感動的なバースデーコメントで彼らを泣かせてやってもいいが…モノマネ10連発くらいで湧かせとこう。普段のセレブキャラと正反対のハジけたプッツンキャラを併せ持つのがこの羽生田挙武の魅力の一つであると自負している。
リハは滞りなく終わった。心地よい疲れと疲労感。やりきったあとの充足感はステージに立つのと同じくらい快感がある。機嫌良く楽屋まで戻ろうとするとすれ違う先輩達の中に羽生田の誕生日を覚えてくれている者もいた。ありがたいことである。
「さて、と…」
楽屋に戻って着替えて…どこの店になったのか結局聞けずじまいだったが連れて行かれるままに向かおう。もっとも、月曜日だからそんなに羽目をはずすこともできないだろうが…
そんなことを思いながら、楽屋のドアを開けると羽生田はおや、と思う。
楽屋はきれいさっぱりもぬけの殻。ただ羽生田の荷物だけがあった。
「あれ?」
誰もいない。荷物もない。確かにここは神7の楽屋だ。来た時はそれぞれの荷物でごったがえしていたし間違うなんてことはないはず…
不思議に思いつつも着替えを済まし、荷物を持って羽生田は楽屋を出る。ロビーなどメンバーがいそうなところを見て回ったが見当たらない。
「どこに行ったんだ、全く…」
少々苛つきながら携帯電話を手に取り、高橋にかけてみる。が、コール音が虚しく響くだけで出ない。続けて岸くん、神宮寺、中村、栗田…と順番にかけていったが誰も出ない。スタジオにも姿がない。何人かにそれとなく訊ねてみても誰も知らないという。
「なんなんだ…?」
外で待っているとかなのかと考え至り、羽生田はスタジオの外に出た。だが待機できるような場所もなくそのすぐそばにはオリキの女の子達が押し寄せているからスタジオの外で、など自殺行為だ。そんなはずはない。
では彼らは一体どこに行ったのか?全くもって訳が分からない。分からないが羽生田はとりあえず駅に向かう。その途中でもずっと電話をかけたがやはり誰も出ない。
「おいおい…」
まさか今日という日を忘れて帰った?いやそんなはずはない。それにしても誰もいないのはおかしい。そんなにもたもたしたつもりもないし、第一電話に出ないというのも…
頭の中はどっぷり思考に浸かっていて、無意識のうちにパターン化された動きをしていたからなのか、気がつけば羽生田は自分の家の最寄り駅に着いていた。残すはここから徒歩で帰るのみになるのだが…
今日は家にも「Jrの友達が祝ってくれるから食べて帰る」と言ってしまっている。このまま帰宅すればどうしたと訊かれるだろう。その質問にどう答えたものだろう。
「誕生日忘れられてたみたいだよ」「どこに消えたのか分かんないからもう帰ってきたよ」「電話にも出やしない。全く困った連中だ」駄目だ、どれも惨めすぎる。かくなる上はどこかで時間を潰して…
しかし何故そんなことをしなければならない?今日は誕生日だぞ。記念すべき生誕日にそんな偽装工作をしてまで保ちたいものって…?
考えれば考えるほどに、羽生田の足取りは重くなっていった。まるで足に鉛の枷でもはめられたかのように…。
ふいに、風が吹く。心にぽっかりあいた穴を吹きぬけて行く。
なんだってこんな…
あいつら、僕のことなどどうでもいいのだろうか…
つい一か月前は神7はいつでもどこでも一緒だろうがよなんて言っておいて…
僕の存在などあいつらにとってその程度のものなのか?
視界が揺れ出した。筋肉が弛緩してしまって歩くことすらおぼつかなくなってくる。意識はふっと遠い方向に…
ふと見上げた月がぼんやりと淡い光っている…
と、そこでいきなり衝撃に襲われる。
羽生田は反射的に叫び、飛び上がる。後ろからいきなり破裂音が響いたのだ。まったくの不意打ち。本能が無意識にそういった行動に及ばせた。
「んな…!!」
そこには、よく見知った顔達がいた。そして地面に散らばった色とりどりの紙くずが…
クラッカーだ。
「大成功!!」
高橋がそう叫び、彼らは笑う。そう、神7達がそこにいた。クラッカーを手に持ち、満足げに笑っている。岸くん、神宮寺、中村、倉本、栗田、谷村…全員揃っていた。
「はにうだびびったー?俺らまじで帰ったと思った?」神宮寺が腹を抱えている。
「いやーまさかこんなに上手くいくとは」岸くんは何度も頷いている
「あー腹減った。早く行こうぜ」倉本は腹を押さえている
「はにうだびっくりしたぁ?」中村はくすくす笑っている
「ギャハハハハハハハハ!そのアホ面!!」栗田は爆笑だ
「フフ…フフフ…フフ…」谷村は不気味な忍び笑いを漏らしていた
羽生田は、少しずつ回路が繋がっていく。成程…そうか…これは所謂つまりの属に言う「ドッキリ」という奴で誕生日サプライズとかいう…
馬鹿馬鹿しい。下らない。なんて幼稚なイタズラだ…。この連中の考えそうなことじゃないか…
「およ?はにうだ泣いてる?ちょっちやりすぎたかあ?」
栗田のアホ声がそう響いた。羽生田は自分の頬を何か温かいものが伝うのをそこでやっと自覚する。その液体はこの安堵からやってくるものなのか?否、違うぞ。断じて違う。これは…
立ち上がり、埃をはらう。努めて冷静に羽生田は答えた。
「何を言っている。これは完全なるドライ・アイだ。最近乾燥がひどいからな。生憎今日は目薬を忘れて来てね」
羽生田は目をこすった。
「全く…そんな下らないことをする時間があったらさっさと始めよう。今日は月曜日だぞ。明日も学校やらリハやらで忙しいんだからな。
それに、君達が後ろから付いてきたこととか僕が気付かないとでも?だいたいね、ドッキリならもうちょっと捻りを加えて上手いことやらないと。もうバレバレもいいところだよ」
気に入らないのは、神7達は浅い溜息をついて「まあそういうことにしといてやるか」的な微笑みを浮かべていたことだ。何かもう一言つけ加えようかと口を開きかけてやめた。言葉は溜息に変わる。
「てなわけではにうだの15歳を祝ってかんぱーい!!」
神7一行は羽生田の家の近くにあるファミレスで誕生会を催した。いつものどんちゃん騒ぎ。倉本がひたすら食べ、れあくりがいちゃいちゃして岸くん神宮寺が騒いで谷村が隅っこで皆がオーダーし終わった後にやっとメニューを見る。
「じゃあはにうだバースデーコメントを!」
岸くんに振られ、羽生田は予め準備していた物真似15連発をお見舞いした。羽生田セレクションの選りすぐりだ。これがウケないはずがない。予想通り、テーブルは爆笑の渦に包まれる。
そして11発目の「唇先輩のイフワナのラップ部分」にさしかかった時…
「あれ?羽生田くん?」
通りかかったその声に振り向くとそこにクラスメイトとその家族がいた。眼を丸くして唇先輩の顔真似から入る羽生田を見据えていた。
「何故…こんなところに…」
言いかけて、そりゃまあそうかもしれないと羽生田は気付く。十分生活範囲だ。遭遇することだってあり得る。普段、羽生田はこういった類の店に家族で来ることもないしあまり利用したこともないから会ったことはないのだが…
「お…お友達…なの…?」
「うんまあ…学校の同級生で…」
クラスメイトの親が怪訝そうに唇バージョンの羽生田を見据え、クラスメイトがきまずそうに紹介する。そして彼らは一番遠くの席へと去って行った。
「…」
テーブルは静寂に包まれる。羽生田は気が遠くなった。
「え、えーと、デザート食べよっかなー」岸くんがメニューを開く
「あ、メ、メロンパンパフェとかおいしそうじゃない岸くん?一緒に食べごにょごにょ」高橋はどさくさにまぎれて岸くんと恋人食べに挑戦し始める
「ここで神宮寺特選動画セレクショーーーーーーーーーーーーーーン!!!!」神宮寺の両腕を岸くんと高橋ががっちりホールドした
「おい、パンプキングラタンオーダー通ってねえぞ!あ、お姉さんちょっと!」倉本がまだこないパンプキングラタンに業を煮やして店員を呼びつける
「栗ちゃんおそろいのマフラー買おうねぇ」中村は通販の雑誌を広げた
「れいあ二人で一つのマフラーでよくね?その方がひっつけるしー」栗田はメロンソーダを中村とカップル飲みしている
「やっときた…いただきます…」谷村はようやくオーダーが通り、手を合わせて和風ハンバーグにナイフを挿した
誕生会はこうして過ぎて行った。だが羽生田は記念すべき15歳と一日目に大きな課題を与えられた。
明日学校でどう言い訳をしようか…
晩秋の夜長に、羽生田は一晩中頭を抱え続けたのだった
END
作者さん乙です!あむあむおめでとう
しょうもないことで電話掛けてくる岸颯神宮寺に笑ったw
あむ様おめでとう!
作者さん乙です!
仲間っていいねぇ…
609 :
ユーは名無しネ:2012/11/26(月) 01:11:01.72 0
あむあむ、おめでとう!!
思い出深い一年にしてね!!
作者さん、君だけの物語 挙武編
よかった!!
深いわぁ・・。
ありがとう。。
はにーおめ!作者さん乙です
唇先輩のラップの物真似見たいw
はにーはとくに学校とJrの世界の差が激しそうだな
あむあむおめでとうううう!
作者さん乙!
お誕生日祝いにいい話ありがとう!
みんないい子!
素直じゃないようで素直なあむあむ可愛いよ!
唇先輩のモノマネを学校でつっこまれたら懇切丁寧に教えて差し上げたまえ!
612 :
ユーは名無しネ:2012/11/27(火) 00:58:53.44 0
あむたんも他のみんなも自分なんか想像も出来ないような努力してるんだろうなあ
現実の彼らよりここに存在する彼らが大好きって
気がついた今年の秋
リアルの彼らもこのスレの彼らもどちらも愛しくてたまらない秋の夜長
ここの神7は理想がつまってる。その理想を追い続けたい
ズニアコン当たったぞ
待ってろ神7つーか出ますように…
全日当たったお!岸くんヘッスピ神宮寺かおるはにうだれあたん栗ちゃん谷なんとか待っててね!
618 :
ユーは名無しネ:2012/11/30(金) 22:16:21.87 0
くらもさんの憧れがラブホリ前歯にかわってた件
唇派だと思ってたのにどういう心境の変化なんだろうw?
くらもっちゃん演技派だったよ素晴らしかったよ!
いつも食いしん坊いじりばかりだがこれから演技派かおるんとして敬うよ
小6にはえぐい題材だったがよく頑張った…!
ご褒美に瑞稀と一緒に食べ放題連れてってあげたい!
【22:00〜22:15 スタジオトーク】
神7とトラビスジャパンがスイッチで暴露合戦。「実は女である?スイッチオン!」「この中に好きな人がいる?スイッチオン!」
【22:15〜22:20 コスプレコーナー】
リクエストのあったコスプレを毎週一人のJrがダイジェストでお届け。初回は羽生田くんがコスプレ15着と噂のわがままボディを披露。
【22:20〜22:25 ライブコーナー】
ゲリラ的に岸くんのソロ収録を決行。「岸くんのソロを撮ります」と言われあわてふためく岸くんのリアクション映像もおまけで。
【22:25〜22:35 舞台裏映像コーナー】
出演メンバーの楽屋や収録風景の映像をお届け。初回はトラビスジャパンの楽屋にカメラと成人誌を設置。
【22:35〜22:40 新人くん紹介コーナー】
新人くんを身体測定などで検査するコーナー。初回は本高克樹くん。衣装は強制的にサイズ小さめの体操服。
【22:40〜22:50 ロケコーナー】
Jr数名でロケをするコーナー。初回は松田元太くんと松倉海斗くんがホラースポットでデート。
【22:50〜22:55 次回予告コーナー】
毎週Jr一人が猫耳をつけて次回予告するコーナー。初回は岩橋玄樹くんがにゃんにゃん言葉で紹介。
よし!みんなで今すぐジュニランにリクエストしよう!!!!
何で別のところからわざわざ持ってきて貼ったの?
た、たまらん…
今日は歌収録だ。覚えなくてはいけないことが山ほどある。臨機応変に対応していかないと鬼ヤクザの恫喝が飛んでくる。気を引き締めて挑む必要があった。もっともそれは毎回の事だが…
楽屋のドアを開ける。もう2〜3人来ていて適当に挨拶を交わしリハーサルまでの時間を好きに過ごす。谷村は参考書を開いた。明日は学校でテストがあるからそちらも気を抜くことは許されない。時間の許す限りは勉強だ。
順調に問題を解いて、ふと時計をみやると10分前になっていた。トイレに行っておくか…と楽屋を出て手洗い場に向かった。その手前まで来てふいに手首に感触が伝う。何かを確かめる暇もなく個室に連れ込まれた。
「…何?」
谷村は冷静に自分を個室に連れ込んだ相手…中村を見おろす。その冷静さが気に入らなかったのか中村は頬を膨らませた。
「何、じゃないでしょぉ」
じれったさを含ませた声色で呟いくと中村は谷村に抱きついてくる。谷村は分かっていて少し焦らした。
「こんなとこ二人で入ったら…誰か来た時怪しまれるよ、中村」
「また中村って言う…二人の時はれいあって呼んでっていつも言ってるじゃん」
中村は睨む。谷村にとってはそれも想定内の反応である。だからわざと言ってみたのだ。
「分かってるよ…れいあ」
名前を囁くと、中村はうっとりと恍惚とした瞳で谷村を見つめる。それからそっと目を閉じた。これ以上焦らすと本気でむくれそうだから谷村はおねだりに応えてあげた。そっと自分の唇を中村のそれに重ねる。
「…」
ソフトなキスを一回だけ…にしようとしたのだが中村が離さなかった。飢えた羊が狼を襲いだすかのように激しく唇に吸いついてくる。谷村の首の後ろに回していた手はそこから離れ、下半身に伸び出した。
そこで、谷村はそれを制止する。
「駄目だよ。もうリハ始まるから。それに、誰か来たら本当に怪しまれてしまうよ。俺達がこういう関係だってのは誰にも内緒なんだから」
宥めすかすように言ってみたがやはりというか中村は頬を紅潮させて不満顔だ。
「内緒内緒って…いつもそんなこと言って逃げるんだからぁ。たまには龍一の方からしてくれたっていいじゃん」
「時と場合を選ばないと…ばれたら色々厄介だし」
「またそれぇ?なんでそうやって周りや後のことばっか気にするのぉ?僕の気持ちはどうでもいいの?」
中村の語気が荒くなってくる。このままでは手洗い場の外にも聞こえてしまいそうで、谷村は人差し指をたてた。
「もう少し声のトーン落として。そんなことないって。ただ、取り返しのつかないことになったら会うことすらままならなくなっちゃうだろうからちゃんと考えないとって言ってるんだよ。分かってよ」
「分かんないよ!僕のこと好きじゃないのぉ?」
「好きだよ。だから言ってるんだ」
「嘘。本当は金田の方が好きなんでしょぉ?だから僕にはそうやって冷たいんでしょぉ?」
中村の瞳は不満から哀しみに変わろうとしている。理屈よりも感情の問題だということは谷村にも分かっていた。少し反省し、謝罪の意味をこめてそれを行動で示した。
「…」
中村の華奢な体を強く抱き締め、濃厚な接吻を繰り返す。舌を入れ、滑りこませる。殊更卑猥な音をたてて唾液を絡ませ合った。
「んく…りゅういちぃ…」
「れいあ…」
そうしてねっとりと愛を注いだ後、耳元でこう囁いた。
「俺だって何もしたくないわけじゃないよ…だから分かって。いい子だから…」
「はぁい…」
従順な瞳に戻った中村は熱に浮かされたようにそう呟いた。そして谷村に寄り添ってくる。
「今日の歌収録終わったらどっか寄ろぉ」
「どっかって…どこ?」
谷村が、中村の髪を撫でながら問いかけると彼は指を谷村のそれに絡ませてくる。そして言った。
「誰にも邪魔されずに愛し合えるとこ」
「龍一!龍一ご飯できたわよ!聞こえてるの?寝てるの?龍一!!」
ドアの向こうで母親が呼ぶ声に谷村は急激に意識が現実に引き戻される。すでに右手にはさきほど自分から放出されたものが収められているティッシュが握られていた。慌てて衣服を整えそれをビニール袋の中に入れた。
またやってしまった…
勉強してたはずなのに、気付けば最近こうなっている。困ったことに妄想のレベルは日に日に上がっていってとどまることを知らない。もうちょっとで映像化も可能な気がした。
以前に夢精した時、証拠隠滅に失敗して小火騒ぎを起こして白い壁の病院に入れられてから谷村の部屋には火の気を起こす類のものは一切撤去された。
学校に行っている間に母親が部屋の掃除と称してこと細かにチェックしているから思春期にもかかわらず谷村の部屋にはごくごくシンプルなものしか置かれていない。
だから、もう妄想で済ますしかないのだ。幸いにも自分が掲載されている雑誌は置くことが許されているからそれに載っている某女王様と子リスを見ながら交互に…という涙ぐましい思春期ライフを過ごす日々だ。
ティッシュはゴミ箱には捨てることができない。ゴミもチェックされているであろうことは考えずとも分かる。だから谷村は通学途中の駅のゴミ箱にいつも捨てることにしている。これが日課になりつつあった。
今のところ誰にもバレていない…はずだ。もしバレるようなことがあれば日本海にでも旅に出ようと谷村は常々思っている。だが冬の日本海は寒い。そのまま北○鮮に拉致されたらシャレにならない。だからバレるわけにはいかない。
今日は子猫のように自分に甘えてくる中村に大人の余裕で(年下だけど)軽く対応しながらもきちんと想いに応えてあげる…というシチュエーションでやってみた。なかなかいい。こんな調子でバリエーションはどんどん増加中である。
さて、明日はどうしよう…
そんな楽しい妄想に浸りながら、谷村はキッチンまで向かった。そして階段前で躓いて勢いよく転げ落ちて悶絶したのだった。
END
作者さん乙!
谷村になだめられちゃうれあたんも可愛いよおおおおおおおお
子リスって金田くんだよね?
最初アホのほうかと思い「おい谷村のくせにれあくりまとめて踊り食いとかやるじゃねーかwww」と思ってしまった
普通に中2男子らしいことをするにも不憫な谷茶浜
作者さん乙です
谷繁でかした!いいぞもっとやれ
たにれあモエス
作者さん乙です
たにー、元さんも加えてあげなよw
んなわけない!ってびっくりしたぁ
谷むぅ乙
作者さんおつ
たにれあ秀逸すぐる
神7楽屋劇場 「天の岩戸」
冬の寒さが一層厳しくなり、日本列島を寒波が襲う。そんな吹きすさぶ寒風にも負けず今日も元気に岸くんはレッスンへと向かう。
オリキの女の子もかわしつつ軽い足取りでスタジオに到着すると、靴ひもがほどけていることに気付く。いかんいかん、と結び直して立ちあがった時である。
岸くんは腰を抜かしそうになった。あと少しで悲鳴を上げるところであった。
目の前に、栗田の呆然とした顔があった。大きな目の表面はいまにもこぼれおちそうな涙が溜められていて、瞳孔が開きかけている。唇は小刻みに震えていた。
「なんだよ栗田、驚かすなよ…あー心臓に悪い」
岸くんがやれやれと通り過ぎようとすると、震える唇から微かな声が漏れる。
「…ない…」
「え?」岸くんは振り返り、訊き返した。
そこで、栗田から俄かに信じ難い言葉が放たれる。彼は震える声でこう言った。
「れいあが、昨日から口きいてくれない…」
「原因はこれしかねーな」
楽屋で神宮寺が一冊の雑誌を見せる。そこには撮影のオフショットが小さく乗っていてその中の一つに衝撃的なコマがあった。
岸くんと高橋は同時に溜息をつき、神宮寺は腕を組んだ。羽生田は眉間に皺を寄せている。倉本だけは無関心で井上と二人でウノをしていたが楽屋内には重苦しいムードが漂った。
「これは怒るに決まってるだろ栗田。仮に中村がこれを誰かとしたら…お前確実に相手を東京湾に沈めるだろ?」
岸くんの問いかけに、栗田は放心状態で虚空を仰いだ。
小さな一コマにはなんと岩橋と栗田がチョコレートを口移しで食べているきわどいショットが映っている。いくら撮影とはいえ、なかなか過激をきわめている。高橋はこれが岸くんじゃなくて良かった…と心の底から安堵したぐらいだ。
「なんでまたこんなこと…」
高橋の呟きに、放心状態の栗田が自動音声のように返す。
「…だってやれって指示が飛んだんだもん…でもこれ使えないねーっつってたから忘れてたんだよ…。そしたらオフショットで載ってて、れいあに電話したけど出てくれなくて、メールの返事も来なくて、口もきいてくれなくて…」
確かに、撮影なら「嫌だ」と拒否することは許されない。特に栗田はこれ以上自分の立ち位置や扱いが下げられないように撮影もレッスンも収録も真面目にこなすよう心を入れ替えようとしている。しかしそれが裏目に出てしまった。
「中村だって分かってくれるだろう、撮影なんだし自分の意志でやったわけじゃないし仕方がないって」
羽生田がそう慰めようとしたが栗田は首を振った。
「もうそんな次元じゃねーんだよ…あんな怒ったれいあ初めて見た…怖かった…」
ガタガタと震えだし、栗田はぽろぽろと涙をこぼした。まるで子どものように泣きじゃくり、普段のアホ笑いも能天気もどこへやら、悲劇の真っただ中に身を投じシェイクスピアも真っ青の状態である。
「やばいぞこれは…地球の危機が再び訪れた…」
岸くんの呟きに、神7達は戦慄した。中村がその気になれば地球破壊爆弾が発射されて地球は宇宙の塵と化す。
それだけはなんとしても避けなければ。神7達は中村を説得をするべく血眼になって彼の行方を捜した。
「…ふう…」
溜息をつきながら、谷村はスタジオの廊下を歩く。今日の収録は一つだけだから気合いを入れればミスもなく終えることができるだろう。そう、気合いだ。気合いがあればなんでもできるってアン○ニオだって言っていた…いや、元気だったっけ…まあどっちでもいいや。
このところミス続きでおしおきの量がどえらいことになっているし中村栗田のカップルから喰らう絶対零度とボディタッチがなかなかにストレスになっているから今日こそはそれを避けたい。
とりあえず、縁起を担ぐのと精神統一をはかるべく谷村はひと気のない場所で自我修復を試みた。できれば、狭くて薄暗い倉庫かなんかで…そんなことを思い、条件に合う場所を探して回った。
「…ここなんかいいかも…」
地下の物品倉庫のドアがほんの少し開いていた。ここなら、人も来ないだろうし静かだ。谷村はドアを引いて中に一歩踏み出した。
「…?」
谷村はすぐにその人影に気づく。薄暗い倉庫の中に誰かが座り込んでいる。見覚えのある華奢な背中と少しくせのある髪質…見間違うはずもなかった。中村だ。
「中村…?」
名を呼び掛けると、ゆっくりと中村は振り返る。谷村は思わず後ずさった。
「あ…あの…どうかされましたか…?」
中村の眼は虚ろで、肌は驚くほど白く全く血色がなかった。様子がおかしいことは一目瞭然である。
ここで「失礼しました」と言ってすぐに踵を返すべきだったのだが生憎谷村の全身は凍りついてしまって動けない。金縛りにあっていると中村の声が狭い室内に静かに響いた。
「なんでぇ…?」
「え?」
「なんでなのぉ…?」
「あ、あの…一体何を言って…」
谷村がまだ事態についていけなくておろおろしていると、しかし次の瞬間中村は凄い剣幕で喚き立てた。
「なんで僕最近こんな目にばっか遭うのぉ!?CMも外れるし、ベストアーティストも出れないし、挙句の果てには栗ちゃんが他の子と口移しでお菓子食べてるの全国誌で見せつけられてぇ…!!!
僕が何をしたっていうのぉ!?言ってみなよぉ!!!!!僕不憫3になるのおおおおおおおおおおおお!?」
「ああああああああすみませんごめんなさいかんにんしてください全て俺が悪いですもうオカズにしてオ○ニーもしません雑誌二冊買いして一冊をぶっかけ用になんてやめますだから殺さないでえええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」
恐怖のあまりひたすら謝って許しを請おうと土下座しようとすると、信じられないものが目に飛び込んでくる。
「うえぇ…」
中村の大きく見開いた眼から、涙がこぼれおちた。
「あ…ああ…あああ…」
谷村は一層パニックになる。人前で泣くことを誰よりも嫌う中村が、よりによって自分に涙を見せるなんて俄かには信じ難い現象だ。きっと、一番見られたくない相手だろうし、そうでなくても精神的に打撃を受けていることは明らかである。
谷村は今更思い出した。そうだ、その撮影には自分もいた。だがそんなことになっているとは露知らず、谷村も昨日自分の映っているのを確認程度に誌面を見たが我が目を疑った。そういやカメラマンからあれこれリクエストされていたが…
「うえぇ…うえぇ…」
中村は泣きじゃくる。そこで谷村のパニック状態は再び警報を鳴らした。これはもう俺なんかに手に負える問題ではない。地球の危機だ。これをどうにかできるのは栗田をおいて他にはいない。
谷村がその結論に辿り着いたその時、微かに中村を呼ぶ声が聞こえた。
その声はどんどん近づいてくる。岸くん、羽生田、栗田…皆が中村を捜している。天の助けだ。谷村はドアから半身を出して皆を呼んだ。
「中村はここにいる!早く来て、みんな!」
幸いにも、今日は喉の調子が良かった。声は廊下に響きあたり、それに気付いてもらえたのか神7達がこちらに駆けてくるのが見えた。今朝はちみつレモンを飲んでおいて本当に良かった。谷村は己のファインプレーに拍手を送る。
「谷結び!そこに中村がいるんだな!?」
岸くんが叫ぶ。谷村は手招きをして彼らを招き入れようとした。
だが…
「へ?」
手首に物凄いエネルギーを感じると共に、谷村は再び倉庫の中に引き戻された。そして光の速さでドアが閉められ、鍵のかかる音もする。中村が肩を震わせながらドアの前に立っていた。
「あ、あの…」
谷村が頭の中を真っ白にしながら問いかけると、中村は低い声でこう呟いた。
「もうこうなったらとことんどん底にまで自分を堕としてやるよぉ…」
「おい!谷結び!!どうした?一体なんの真似だ!?そこに中村がいるんじゃないのか!?」
岸くんは目の前で閉められたドアをダンダンと叩く、確かに谷村の声で「中村はここだ」と聞いたし、彼が手招きするのも見た。
だがドアには鍵がかけられているのか、ドアノブが回らない。羽生田と神宮寺と高橋、倉本、そして栗田も皆必死でドアを叩く。
「中村くん!中村くん!そこにいるの!?」高橋が叫ぶ
「おい、いいから出てこいよ!浮気の一つや二つ、男のたしなみだと思って目ぇ瞑れよ!」神宮寺は岸くんに殴られた
「れいあ君!とりあえずあんぱん食べようよ!」倉本はあんぱんの袋を握り締めた
「話せば分かる!地球破壊爆弾のスイッチはまだ押すんじゃないぞ中村!」羽生田は説得にかかった
そして…
「れいあー!!れいあー!!俺が悪かったよおおおおおおおおおお!!もう二度と撮影でもあんなことしたりしないからだから許してよおおおおおおおおおおうえあああああああああいああああああああああああああいいいいいいいいい」
号泣する栗田の魂の叫びが館内全体を揺るがしたが、しかし倉庫の中からはなんの反応もなかった。
本当に、ここに中村がいるのだろうか…谷村のタチの悪い冗談か間の悪いジョークかと疑っていると、耳を疑う言葉が中から漏れてきた。
それは確かに中村の声で、しかも奇妙なまでに落ち着いた口調だった。だがその内容は神7全員の目を点にさせるのに十分な破壊力を持っていた。
「谷村ぁ…脱いでぇ…今から僕と×××するよぉ…」
その場にいる全員の時が止まった。そう、あたかも「ザ・ワールド」のスタンドが発動したかのように…
谷村は、埴輪人形になった。
黒丸の目に楕円の口になり、右手は腰に、左手はこめかみに当てられている。そのまま動けない。
今、なんて?
たにむらあぬいでえいまからぼくと…………するよお…?
たった今の記憶を谷村が掘り起こしていると、なんと中村が着ていたシャツのボタンを外し始め、上半身を露出させた。
びっくりするほど滑らかな白い肌とわずかに浮き出た骨格が妙に艶めかしい。谷村はパニック状態にもかかわらず思わず生唾を飲んだ。
「あ…あの…あの…」
「谷村ぁ…挿れたいぃ…?それとも、挿れられたいぃ…?なんなら両方でもいいよぉ…」
谷村は腰が抜けた。そして、自分の意志に関係泣なく下半身が悲鳴をあげる。
なにこれ?なにこれ?なにこれ?
棚からぼたもち?果報は寝て待て?豚に真珠?谷村にれあたん?もうわけわかんない…わかんないけどできれば両方…いやそうじゃなくて…
倉庫の外では谷村同様に神7がパニックになり始めた。
「中村!!中村!!早まるんじゃない!!そんなことしたってなんの解決にも…っていうか谷結びとなんてやめてえええええええええだったら俺にしてえええええええ」岸くんはどさくさまぎれにとんでもないことを言う
「中村くん!ダメだよそんなの!!れあくりはジャスティスなんだ!!ジャスティスの崩壊はこの世の秩序の崩壊なんだ!
そんなことになったら僕はこの先何を恋愛教祖としていいのか分かんないよ!!」高橋は必死になるあまり岸くんの問題発言は耳に入っていない
「ふざけんなよ谷結び!!!俺と変われ!!俺が代わりに中村に挿れてもらう!!」神宮寺は何故か受け願望だ
「れいあ君ってば!あんぱん!あんぱん食べようよってばー!!」倉本はもうあんぱんから頭が離れない
「中村!!そこまでして自分を穢す必要があるのか!!あてつけにしても相手を選べ!!」羽生田はけっこう失礼だ
そしていよいよ栗田は半狂乱になる。
「いっぎゃあああああああれいああああああああああぞれだげばやめろおおおうおおおおおおおおおおおじゅshだすsひゅbdhsbjdbhgyauadhjndksnkakいくぁwせrftgyあqwsでrffgthyふじこ!!!!!!!!!!」
喚き散らしながら栗田はドアを叩いたり蹴ったりを繰り返したが鋼鉄のドアはびくともしない。そうしている間にもどんどん中村は暴走してゆく。
「谷村はぁ…初めてだろうからぁ…まずはお口で優しくしてあげよっかぁ…?」
艶めかしい眼つきで中村は迫ってくる。目眩がするほど妖艶だった。谷村はもうどうしていいのか分からない。ただ下半身のある部分が燃えるように熱を帯びて膨張していることだけやたら鮮明だった。
栗田にしているあんなことやこんなことを自分にリアルにしようとしてくるなんてオ○ニーでも考えたことがなかった。というより想像の限界というものがある。哀しいほど童貞、という格言が脳裏に浮かんだ。
いまからめくるめく官能の世界が訪れる。と同時にそれを終えてここを出たその瞬間に人生は終了する。紙くずみたいに肉体がちぎられてしまうだろう。まさに天国からの地獄。やるか死ぬか、それが問題だ。
「れいあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
栗田の絶叫が耳をつんざく。だが中村の眼はまだ虚ろなままだった。
薄い唇はこう動いた。
「あぁ…谷村ぁ…もうこんなおっきくなってんじゃん、せっかちだねぇ…」
そこで閃光が瞬いた。
岸くん、高橋、神宮寺、倉本、羽生田、そして谷村は目の前の光景に呆然とする。
鋼鉄のドアが、栗田の渾身の一撃によってまるで粘土細工のようにひしゃげてこじ開けられた。人間技とは思えぬ超常現象に、ただあんぐりと口を開けることしかできない。
血の涙を流した栗田は全身から白い煙を発しながらこう呟いた。
「れいあと谷村が×××するくれえなら俺が地球破壊してやる…!!!」
ガシャーンガシャーンと金属音をたてながら破壊マシーンと化した栗田は一歩一歩谷村に近づく。おい、破壊するのは地球であって俺じゃないだろ…と谷村が意識を戻しているとしかし目の前に中村が踊り出る。
「来ないでよぉ!!もう栗ちゃんなんかどうでもいいよぉ!!誰とでも好きにすればいいよぉ!!僕だって滅茶苦茶やってやるぅ!!!ヤリ○ンビッチ中村嶺亜になってやるよぉ!!」
「んなことさせるぐれえなら俺が今すぐれいあ殺してその後俺も死んでやる!!!!!!!!!」
「勝手に死ねぇこの浮気者ぉ!!!」
激昂した中村が投げたものが栗田の顔面にヒットした。全員ぎょっとしてそれを注視する。
「あ…」
中村の顔色が変わる。栗田の鼻からは今の衝撃で血が垂れた。
「ちょ…大丈夫か栗田、今から収録なのに…」
岸くんがおろおろとポケットを探りながらハンカチを出したが栗田はそれを受け取ることなく、中村に近づいてゆく。
栗田は全くの無表情だった。それが逆に無言の圧力を放っていて思わず神7達は恐怖を感じるほどだった。
その栗田の手がゆっくりと振りあげられる。中村は怯えを見せて、目をきつく閉じた。
「栗田待て!冷静になれ!中村に手をあげたら一生後悔するぞ!!」岸くんが叫ぶ
「駄目だよ栗田くん!絶対ダメだ!」高橋が叫ぶ
「おい栗田、気は確かかよお前!!」神宮寺が叫ぶ
「だからみんなであんぱん食おうって!!」倉本が叫ぶ
「暴力はいけないぞ!相手は女…の心を持った男だぞ!!」羽生田が叫ぶ。
そしてそれまで呆然と座り込んでいた谷村が反射的に立ちあがって叫ぶ
「中村殴るなら代わりに俺のこといくらでも殴れ!!!」
一瞬の沈黙。
その一瞬はしかし永遠とも思える永さだったと後に神7は全員で語る。それこそ、時が止まったかのようだったと…
振り下ろされた栗田の手は、中村の体を包みこもうとして背中に回された。
「ごめん…れいあ…」
栗田は中村を抱き締めた。
「本当にごめん…もう絶対れいあのこと泣かしたりしねえから…だから許して…」
栗田は泣いていた。そして中村も声をあげて泣き始める。
「ごめんなさい…栗ちゃん…ごめんなさぁい…」
二人はひしと抱き合う。しばらくそうした後、自然と唇を重ね合った。
こうして宇宙一はた迷惑な痴話喧嘩は終焉を迎えようとしていた。収録の前に中村と栗田を除く神7達は円陣を組んで今後の仕事についてのあり方を確認し合う
「とにかく…栗田と他のJrとのスキンシップは全力で阻止だ。いいなみんな?それが中村と栗田のため…ひいては地球のため…自分達のためなんだ」
いつもバラバラでまとまりのない神7もこの時ばかりは同時に首を縦に振った。そして後ろでいちゃいちゃし合うれあくりを微妙な眼差しで見つめる。大きな溜息が6人の口から漏れた。
「てめーら次こんなたるんだダンスしやがったら全員波のどよめくオホーツク海に沈めるからな!!反省しやがれアホンダラァ!!!!!!」
収録はさんざんだった。神7は全員精神的疲労と肉体的疲労がほぼ限界にまで達していたから集中力が散漫で鬼ヤクザの血管が常時浮きだっていた。
叱責と恫喝、そして怒号が飛び交い皆終了後は抜け殻のようになって楽屋でぐったりとうなだれる。
「…」
トイレから出た谷村はふらふらと廊下を歩く。もう意識が朦朧としてきた。もう何も考えずただ泥のように眠りたい。深い深い眠りがきっと訪れるだろう…
いつも以上にミスがひどく、しまいには鬼ヤクザが名指しで「てめえは素っ裸にして流氷の上にくくりつけてやる!!」と言われる始末だ。今朝の気合いはどこへやら。もうなんの気力も残っていなかった。
でももう終わったんだ。真っ直ぐ寄り道せず家に返って引き籠ろう。そしてひたすらフィンガーセラピーに励もう。谷村がそう気を取り直していると・・・
「谷村ぁ」
後ろから、聞き覚えのある声が響く。谷村はもう歩く気力もないのに背筋を伸ばして起立した。条件反射だ。
振り向くと、思ったとおり中村が立っていた。栗田はいない。
つかつかと、無表情で中村は歩み寄ってくる。谷村はもう背中に汗をかいていた。
この収録でさんざんミスをして移動の時にぶつかったり進行を妨げたりしてしまったことか、それともさっきの痴話喧嘩騒動の時に思わず暴露してしまったオ○ニーの件か、それともそれとも…心当たりがありすぎて一つに絞れないのが悲しい。
いずれにせよ、今日もまたおしおきが飛ぶ…
ああでももうさっきみたいに泣かれるよりはましかな…なんてことをぼんやりと思っていると、スッと中村は通り過ぎ様にこう呟いた。
「………さっきは………ごめんねぇ………」
「へ?」
谷村が一瞬時が止まって今言われたことを確認しようとすると、そのまま中村は歩み去っていく。その姿が曲がり角に消えたと同時に彼の声が響いてきた
「……ありがとぉ」
それは聞きとるのがやっとなくらいの小声であったが確かにそう谷村の耳には届いてきた。幻聴かと疑ったが心臓がありえない打ち方をしていることがそうでないことを証明している。
信じられない…
中村が、自分に「ありがとぉ」なんて言う日が来るなんて…
放心状態の谷村が楽屋に戻ると、いつもの光景が広がっていた。
「さー帰ろ!腹減ったなぁなんか食べてく?」岸くんはお腹を押さえている
「き…岸くん、ラーメンなんてどうかな…」高橋は岸くんを誘いにかけてみる
「いーねー!ラーメン食いてーな!ちょうどラーメン動画見てたとこなんだよ!」神宮寺はノリノリだ
「みずきラーメン食うぞー!!」倉本はラーメンで井上を釣り始める
「ふむ、いい機会だから屋台ラーメンとかいうものに一度お目にかかりたいな」羽生田はスマホで屋台ラーメンの検索を始めた
「栗ちゃんお鼻大丈夫ぅ?ごめんねぇ…」中村は心配そうに赤く腫れた栗田の鼻をさする
「いーってことよれいあ!ラーメンの麺の端と端を二人で食べてもぐもぐちゅーとか良くね?ギャハハハハハハ!」栗田は中村の肩を抱く
「しょうゆラーメンがいいな…」谷村はあっさり味が好きだ
羽生田の最新式スマホがかけた検索エンジンで2012年の東京にはまだ屋台ラーメンが存続していることが判明した。絶滅寸前のチャ○メラを彷彿とさせるその屋台ラーメン屋に神7と井上は群がった。
冷え込みの厳しい季節、頑固親父の作るこだわりの熱々ラーメンは少年達の体と心を芯まで温めたのだった。
END
作者さん乙!
自分もあの写真みて大丈夫かと心配してた…
今回も地球の危機を回避できてよかった!
谷茶浜、妖艶れあたんに迫られるなんておいしいが不憫www
谷茶浜も岸くんも神宮寺もここぞとばかりにいろいろカミングアウトしやがってwww
失礼なあむあむがなんだか好きだ
岸くんとラーメン行けてよかったね颯くん
ラーメン屋台に集う神7可愛いなあ
ところでラーメン動画ってなんだwww
スパゲッティプレイみたいにラーメンプレイもあるのかwww
640 :
ユーは名無しネ:2012/12/09(日) 16:44:24.59 O
確かにれあたんってここぞって時に外されるから不憫ポイント高いな…
んんんれあたんに幸あれええええええ
谷村とれあたんあのまま続けばいいのにと密かに思ったのは自分だけじゃないだろうな
作者さん乙です!
岸くん、谷結びって何だよ…w
しかし谷結びは雑誌にぶっかけてるんですねw
谷むぅがれあたんをかばおうってしたとこがかっこよかった!
あああああああああああああもう
れあたんかわいいよおおおおおおおおおおおおお!!!!
外されても出番少なくても好きだよおおおおお
れあたんが好きだよ永遠に好きだよ
れあたん・・・
645 :
ユーは名無しネ:2012/12/16(日) 10:35:16.44 O
神7は今日のJr.コンいるかな?
んんんんんん神7んんんんんんんんん
岸くんのある日
「いーかげんにしなさい!起きろって言ってるでしょ!何回言わせんの!優太!!」
母親の怒号でようやく岸くんは身を起こした。寝ぼけまなこで時計を見る。8時。起きなくてはいけないギリギリの時間だ。健気にも目覚まし時計は7時から一時間以上も悲鳴をあげていた。だが岸くんは目覚まし時計は鳴らしておいてやるのが礼儀だと思っている。
「ほんとにもう毎朝毎朝…早く食べな!」
食卓の上にはトーストとスクランブルエッグが載っている。岸くんは牛乳をコップに注いでまずそれを一気に呷る。
「おっさきー」
中学生の妹が嘲笑混じりに鞄をさげてリビングを出て行く。兄はもうとっくに出発していていない。
「お、ウェンディ、ほしいの?」
愛犬のウェンディが尻尾を振って寄ってきたので岸くんはバターを塗ったトーストを差し出してみた。が、ウェンディはそっぽを向いて去って行ってしまった。
「今日もジャニーズのレッスン?晩ご飯は?」
母親が今日の予定を訊いてくる。岸くんはおざなりに応えると身支度にかかった。
「行ってきまーす」
誰にともなしにそう言って玄関を出ると朝陽が眩しく照り注いできた。顔をそむけつつ、駅までお気に入りの自転車で走る。そしてウォークマンでお気に入りの音楽を聞いて軽快に走る。これが岸くんのお気に入りの朝。お気に入り3点セットだ。
風は冷たかったがまだそれを心地よく感じる余裕がある。スピードも乗ってきていい感じだ。このまま飛べるんじゃないだろうか。
「ッカヤロー!!死にてえのか!!」
つい調子に乗って赤信号を渡ってしまい接触しかけた車の窓から怒鳴られた。てへぺろをしながらスピードはゆるめず、そのまま駅前の駐輪所に滑り込んだ。
学校の授業は退屈だが休み時間はまた別だ。クラスメイトとワイワイやりながら、時にはテンションが上がってしまって「ファイヤー!!」と拳を突き上げ叫ぶ。そうすると教室内が一瞬シーン…と静まり返る。
が、また元に戻ってガヤガヤ鳴り始める。最近ではこの流れが快感になってしまっていることに岸くんは気付く。
「くあ…」
午後の授業はひたすら欠伸を噛みしめる。昼食を済まして満腹になって眠気が押し寄せてくるからだ。しかも今日は退屈の極みの化学だ。岸くんはうとうとしながら何か眠気ざましになる面白いものはないか…とこっそり携帯電話を盗み見た。
「ん?」
メールが着ていた。神宮寺からである。時間はついさっきだ。『世紀の大発見!!』という見出しと共にURLが貼り付けられてある。岸くんはなんの気なしにそれを開いてみた。
「あああ!!!女王様!!!あああ!!!もっともっとおおおおおおおおお!!!!!!!」
いきなり大音量が岸くんの携帯から鳴り響いた。神宮寺が貼ったURLはなんとSM動画のリンク先である。岸くんは眠気が一気にぶっ飛んだ。
「ちょ…!!!」
教室内は騒然となる。慌てた岸くんは電源を切ることも音量を下げることもできない。
「ああ女王様、ワタクシは哀れな犬ッコロでございます!どうぞ躾をおおおおおお!!」
超ハードSM動画は岸君の携帯電話の画面の中で着々と進行してゆく。あああ見たい、が、そんな状況ではない。岸くんはパニックに陥った。
「岸いいいいいいいいい!!!!!貴様授業中に何見てんだああああああああああ!!!!!」
もう定年間近の化学教師がまるで鬼ヤクザのように激昂しながらチョークを飛ばしてきた。ダル○ッシュもびっくりのコントロール。チョークは岸くんの額に見事ヒットした。
教室は爆笑の渦。岸くんはなんとJr内だけでなく学校でも「SMダイスキ岸」のレッテルを貼られることになった。
「やれやれ…ひどい目にあった…」
放課後、生徒指導室でこってりしぼられた岸くんはそのままレッスンへと向かう。だが時間があるのと腹が減ったのとで何か食べようとレッスンスタジオ近くのファストフード店に立ち寄った。
「いただきま…」
ビッグ○ックをせーのでかぶりつこうとすると黄色い声が耳をつんざく。
「岸くんじゃない!!?え、まじ!?」
「わー本物!?すっごい法令線!!」
「見て見て!真冬なのに汗だく!もう一発キメてきたのかな!?」
「今日学校の授業中にSM動画見てたって本当!?教室で「女王様あああああ!!!!」って叫ぶって本当!?」
大きな声でとんでもないことを店内で言いだし、あろうことか指を差し始めた。店内の客の眼が突き刺さってくる。
どうやらオリキの女の子に発見されてしまったようだ。それにしてもこの情報の素早さはなんだろう。しかも後者は違う。女王様ではなくファイヤーだ。
「くほっもう食べらがら行ふしかないふぉ…」
ハンバーガーを口の中に放り込みながら岸くんは慌てて店を出た。しつこい女の子達を振り切り、スタジオに全速力で入ると誰かとぶつかった。
「いてて…」
「いったぁ…」
ぶつかったのは井上で、小さい彼は簡単に岸くんの勢いに負け、バランスを崩して二人とも倒れ込んだ。そして次に頭上に衝撃。
「げ」
倒れたモップの先端が直撃し、岸くんは痛みに呻く。しかしなんだか頬にふんわりとした心地のいい感触が…
「痛いよもう…重いし…」
すぐ近くに井上の声。頬には彼のもちもちのほっぺたの感触があった。倒れた時にくっついたのだ。さすがに小学生の肌は滑らかだ。中村に勝るとも劣らぬ…なんてことを思っていると絶叫がすぐ近くで轟いた。
「俺の…俺のみずきを…貴様…!!!!!」
見上げるとそこには般若のような顔の倉本が立っていた。