五関くんのモノローグ 〜出逢い〜
オレは幼少の頃両親を亡くし、一人っ子だったから家族の温かみなんて知らずに育った。
そんなオレにも親友と呼べる奴ができ、そいつんちは母子家庭で、
年の離れた父親違いの弟がいた。
初めて奴ん家に遊びに行ったのは確かオレが高校一年の時だった。
「コイツ五関。ゲイなんだ。」
親友はあっけらかんとオレの事を母親に紹介した。
そしてそんな親友の母親だけあって、
「あらっ、そうなの?じゃあ、この子をこよなく愛してあげてね!
でも郁人には手を出さないでね。」と、その小さな小学三年生の弟くんを抱きしめ笑って言った。
そして郁人には
「五関くんに食べられないように気をつけなさいね。」
と言うもんだからオレは、
「コイツにも郁人くんにも手なんて出しません!」
と慌てて否定した。
実際本当にオレはゲイだがノンケの親友に興味はなかったし、ましてやチビに関
しては完全な対象外だった。
「五関くんはボクを食べちゃうの?」
大きな瞳に長い睫毛のチビは楽しそうに興味深げに笑顔でオレを見上げた。
「ああ、いたずらする悪い子は喰ってやる〜!」
オレがふざけて郁人に言うと幼い少年はキャッキャッと喜んだ。
その日から郁人は何故かオレにひどくなついた。
実の兄貴よりオレに戯れついてくることが多く、その度にオレは、
「喰ってやる〜!」
と威した。
それが楽しいのか郁人は性懲りなく戯れついてきた。
そんな郁人をオレも実の弟のように可愛がった。
数年が経ち、オレたちも大人になり郁人も中学三年生になっていた。
中学に入ってからというものダンス教室に通っているらしく、
たまにオレが親友ん家に遊びに行った時にいたら顔を合わすというぐらいでしかなかった。
だが相変わらず屈託のない笑顔でオレに戯れついてきてはいた。
ある日、オレは親友ん家で買い物に出かけた親友を待っていた。
すると郁人が帰ってきた。
郁人は嬉しそうにオレにちょっかいをかけてきた。
いつになくしつこく、うざいぐらいに絡んで来て、はしゃぐのでオレは少しイラついた。
「おまえ本当うざいなー!あんまりしつこいと喰っちゃうぞ!」
そう言うとオレは郁人を床に押し倒した。
郁人は楽しそうに笑っていたが急に真顔になりこう言った。
「食べていいよ…。」