キャンパス温泉 出なかった
立正大 7000万円フイ 新学科も断念
温泉療法を学ぶ新学科の設置などを目的に、立正大学(東京都品川区)が熊谷市万吉の熊谷キャンパ
スで進めていた温泉※開発事業が失敗に終わった。約7000万円を投じて掘削したものの、温泉はほ
とんどわき出ず、今年5月で工事が打ち切られた。事業には地下水学を専攻する高村弘毅学長ら同大の
教授陣が参画していただけに、大学関係者のショックは大きい。県によると、湯量が少ないことを理由
に温泉工事が中止されるのは極めて異例だ。
「大学全入時代」を目前に控え、学生の獲得競争が激化する中、大学の個性化・差別化を図ろうと、
立正大は2003年ごろから熊谷キャンパスでの温泉開発事業を検討。事業では〈1〉温泉療法などを
学ぶ学部・学科の新設〈2〉温泉施設の地域住民への開放〈3〉隣接する特養老人ホームへの温泉供給
――などが計画されていた。
同大などによると、事業には地下水の専門家である高村学長のほか、「地下水」や「地盤」に関する
講座がある地球環境科学部の教授陣も参画。事前の調査で「地下1500メートルまで掘れば、水温4
3度前後の温泉が毎分100リットル以上湧出(ゆうしゅつ)する」との結論が得られたため、キャン
パス内で昨年7月から掘削工事をスタートさせた。
ところが、専門工事業者が約5か月かけて1500メートルまで掘ったものの、温泉はほとんどわき
出なかった。「動力ポンプによるくみ上げさえできないほど少量で、温泉成分の分析もできなかった」
(関係者)という。
さらに深く掘り進めることも検討したが、費用の面などから断念。同大は工事を打ち切り、今年5月
に掘削完了届を県に提出した。温泉に関する新学部の設置など当初計画もすべて中止した。
県薬務課によると、02〜06年度の5年間で県に提出された掘削申請は、立正大学を含めて59件。
県の担当者は「温泉掘削には多大な費用がかかるため、事前に十分な探査が行われる。掘削したのに温泉
が出なかったという例は記憶にない」と話している。
(2007年9月20日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news001.htm