http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK25028_V20C13A2000000/ 直近の四半期で売上高も純利益も過去最高を記録した米アップル。株価が低迷しているとはいえ、テレビやパソコン、
スマートフォンなどを手がける国内メーカーの業績とは、極めて対照的だ。1990年代後半に経営危機にひんしていた
アップルがこの10年で世界中の消費者から支持されるようになったのはなぜか。アップルの内情に詳しいカーマイン・
ガロ氏の書籍『アップル驚異のエクスペリエンス』によると、同社の「ビジョン」に答えがありそうだ。
「従来のコンピューター産業には、ハード、ソフトなどそれぞれの専門領域に特化した企業が存在し、誰かがそれらを
統合して消費者に提供していた。しかし、このビジネスモデルはもはや時代遅れで、消費者のニーズに応えられなくなっ
ている。消費者は洗練されたエクスペリエンス(体験)を求めており、技術はその体験を提供するための黒子だ」
これは、アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)が今年(2013年)2月14日、米ゴールドマン・サックスのカンファ
レンスで話した言葉である。クックCEOがここで触れたエクスペリエンスとは、製品のデザインやユーザー・インタフェース、
顧客対応などアップル製品やサービスを通して得られるものだ。
実際アップルは、製品のハード、ソフトだけでなく、直営店で顧客サービスも提供してきた。それが、2001年に開業した
「アップルストア」だ。アップルストアも含めたエクスペリエンスを提供することで、ユーザーとの間に強い関係を築いてきた
のである。
一方、この10年間に日本メーカーは、製品そのものの新機能や新技術の開発ばかりに注力し、製品全体を通したエクス
ペリエンスまでは考えていなかったように見える。これが、iPhoneなどアップル製品に大きな差をつけられてしまった背景に
あるのではないだろうか。
アップルストアでのエクスペリエンスとは、具体的にどのようなものだろうか。まず、世界各地のアップルストアはどれも美
しく、店内は明るく整然と製品が並べられている。そこで働く従業員は、顧客に笑顔でフレンドリーに声をかける。また、アップ
ルは従業員の給与体系を歩合制にはしていないので、従業員が必要以上に高スペックな製品を薦めるようなことはない。さ