12 :
藤堂志摩子:
そうと一瞬は思ったのだが、良く見ると、既に何らかのアクシデントによるものなのか?
大きな後ろ足(バッタにとっては最も重要な2本の主要な後ろ足の内の1本)の片足が
既にもげてしまっており、なんかそれを見てたら、バッタのひょうきんに見える顔と
自然界の厳しさが余りに乖離しており途端にかわいそうに思えてきたので、
結局殺すのを止めて、逃がしてやりました。
だって、俺がもしそこで殺していたとしたら、そのバッタは余りにも不運ではないでしょうか?
俺が捕まえたその時点でさえ、過去に足がもげるほどの事があったのです。
そんな目に遭っても一生懸命生きてきてたバッタを、俺が殺せるからといって
簡単に殺してしまっては、最早それは残虐行為・非人道的行為としか断罪せざるを得なくなる。
これはそんな極悪人ではない。
蜘蛛の糸@カンダタよろしく、地獄から助けてもらおうなんておとぎ話でもない。
俺は純粋に、そのバッタを見ていて情が移ってしまったのである。
どうせ今鳴いている沢山の虫達は冬も越せずに全て死に絶える。
たった1年しか生きられない儚い命…。
そんなバッタを捻り殺し、なぶり殺して一体何の値打ちがある?
俺は危うく、弱い生き物に危害を加えて最低の卑怯モンになる寸前だったのである。
しかし、俺の偉い所はあくまでも【ムシャクシャしてても結局はそこまでに至らなかった】
という点だ。
俺はちゃんと理性や道徳、正義の心、やさしさが働く分、真っ当な人間。
この抑制が効かないのが、卑怯モン&キチガイ&ウンコ脳と呼ばれている連中である。