1 :
マジレスさん:
彼は今日52回目の電話を僕の携帯にかけてきて言った。
「ねぇ、僕はそんなに暇じゃないんだ。君にばかり時間を割いている訳にもいかないんだよ。もし君が払えないなら実家、職場にお願いするけど、どうかな?」
どうやら彼は僕を脅しているらしかった。僕は返事をせず時計を見た。
14:43。
あと17分の我慢だ、と自分に言い聞かせた。
振込みのタイムリミットの15時を過ぎると゛彼ら゛の追い込みは少しその勢いを落すのだ。
僕は経験上それを知っていた。そして僕がそう考えている事を彼らもやはり知っていた。「ねぇ、僕は何も難しい事は言ってないんだよ。借りた金は返す。当たり前だろ?そんなのムクドリだってアリクイだって知ってる事さ」
「無知なんだ」
僕は言い訳した。「すまないとは思ってるんだ。でもこれはどうしようもない事なんだ。そもそも君達が闇金だなんて知らなかったんだ。トイチの利息なんて払えっこないさ」
「トヨン」彼が訂正した。
「え?」
「うちは10日で4割だよ」
やれやれ。
僕は電話帳で弁護士を探した。
2 :
マジレスさん:2006/10/16(月) 15:55:18 ID:9R/Bc1r9
オーケー 2ゲットだ
3 :
マジレス三鳥:2006/10/17(火) 00:45:35 ID:eZmPTEHf
3取りー!!!
4 :
マジレスさん:2006/10/21(土) 10:20:50 ID:KdxKecx0
4ゲッツ! 以下、同様に1000まで埋まりますように。
5 :
マジレスさん:2006/10/21(土) 14:31:12 ID:eMmPEkhs
5
好むと好まざるに関わらず
機械的な作業で数字を並べ続ける。
6 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 16:04:45 ID:vKJC8YqP
「6」
僕は口に出して言ってみた。
しかしそれはまるで他人の声に聞こえた。
7 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 16:16:41 ID:mdNjg1xU
7
ななほしてんとう
8 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 16:36:34 ID:9bhCfUDl
8のひと刺し
9 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 17:35:18 ID:vKJC8YqP
9本目の煙草を吸いながら鼠が言った。
10 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 17:44:58 ID:mdNjg1xU
ジュージュー
11 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 18:43:41 ID:5hDYuhIZ
11
やれやれ。1000までこれを続ける気なんだろうか?
12 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 18:49:52 ID:mdNjg1xU
空気読め
13 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 21:38:56 ID:vKJC8YqP
13時を回った頃、僕は台所でスパゲッティを茹でていた。
14 :
マジレスさん:2006/10/22(日) 22:04:56 ID:9bhCfUDl
14回のコールの後、ぼくは受話器を取る事にした。
15 :
マジレスさん:2006/10/23(月) 02:10:00 ID:YWOA/3m8
「15分だけ、お時間くださるかしら。」と、見知らぬ女は言った。
16 :
マジレスさん:2006/10/23(月) 07:25:52 ID:LSds2WK+
「16歳」
突然彼女が言った。
「妹は16歳の春に首を吊ったの」
17 :
マジレスさん:2006/10/23(月) 07:45:46 ID:bGPuQAt0
1の文章オモロイ。朝からやる気でた。
18 :
マジレスさん:2006/10/23(月) 11:50:35 ID:v13SQrPt
「18分してからかけなおしてくれないか。
ちょうど、スパゲティが茹で上がるところなんだ。」
ぼくは、そう言って受話器を置いた。
19 :
マジレスさん:2006/10/23(月) 12:28:42 ID:LSds2WK+
19歳の誕生日に彼女は言った。
「25まで生きるの。そして死ぬのよ。」
彼女が死んだのは三日前だった。
冷たい雨が降る夜に脇見運転のトラックと塀の間で彼女は人生を終えた。
25歳と三か月だった。
20 :
マジレスさん:2006/10/23(月) 22:14:24 ID:YWOA/3m8
20歳を迎えたばかりのぼくにとって、彼女の死は、耐えられない衝撃だった。
21 :
マジレスさん:2006/10/23(月) 23:29:36 ID:LSds2WK+
21回。
僕と彼女が性交した回数だ。
僕はその全てを細かく思い出す事が出来た。
彼女とのセックスはとても素張らしかった。彼女の中に入るとまるで春の木漏れ日のような暖かさに包まれた。
僕は冬の終わりを待ちこがれた草食動物のようにその温もりに身を委ねた。
22 :
マジレスさん:2006/11/03(金) 11:42:58 ID:pdWGDYPQ
数字あそびなんかするからいきずまるんだよ...
22回のため息とともに僕は、つぶやいた。
23 :
マジレスさん:2006/11/03(金) 13:44:58 ID:UX3Eyu3E
「ワタナベノボル君。あなたは23歳にもなってそんな事もわからないの?」
直子はパジャマの上に厚手のカーディガンを羽織っていた。
秋が終わろうとしていた。
彼女が入院して四か月になる。
初めて見舞いに訪れた時は裏庭の木々はまだ緑に包まれていた。
「受け入れるのよ。簡単な事だわ」彼女はベンチに座り落葉を足で集めながら言った。
遠くからムクドリの啼く声が聞こえた。
長く沈黙が続いた。
「もうここへは来ないで欲しいの。そろそろ髪の毛も抜け始めるわ」
「そんなこと。副作用だから仕方ない事じゃないか。」
「あなたにそんな姿見られたくないの。わかるでしょ?」「
僕は黙っていた。「今年はあのマフラー巻けそうにないわね」
直子の声はわずかに振るえていた。やがて大粒の涙がこぼれ落ちた。
「巻けるさ。」
「そう思う?」
「うん」
「ありがとう。でももういいの」
それが僕らが交わした最後の会話だった。
その夜直子は病院の7階から飛び下りた。
早朝、出勤してきた食堂のパートの女性が見つけるまで、彼女は冷たい落葉の上にさらされていた。
彼女はパジャマにマフラーだけ巻いていた。
去年のクリスマスに僕がプレゼントしたものだった。
24 :
マジレスさん:
ぼくは、フランクフルト空港行きのルフトハンザ機のシートの中にいた。
24th December.
ぼくは、その日のことをまるで昨日のことのように思い返すことができる。
直子が死んで12回目のクリスマス。
記憶はあせることなく、今でも僕の心の中に、直子と最後に会った時の情景を描き出す。
寒い朝の公園のベンチ。赤いマフラーとベージュのコート。
しかし、黙って僕を見ている直子の表情だけが、ぼんやりともやがかかったようにぼやけている。
泣いているのか、笑っているのか...
ぼくは、それを思い出すことがでるなら、すべての記憶をなくしてもいい...
とつぜん、12年前と同じ悲しみが発作のようにこみあげてきて、流れ落ちてくる涙をこらえきれなかった。