一週間に何度か、留置場から呼び出されて取り調べを受けます。
優しい警察官と厳しい警察官がいて、あの手この手で精神的に揺さぶりをかけてきます。
部屋には大きな鏡があり、当然ですが、それはマジックミラーです。
調書を取る際には、殆ど警察官の誘導によって行なわれます。
最初からある程度、文面が決まっており、具体的な場所、人物名、動機等が嵌め込
まれていくだけです。
『そういう事なんだろう?』
『・・・・・・いや、ちょっと違うんです』
『だから、大体はそんな感じなんだろう?』
『はい』
こんな感じで調書は進んでいきます。
しかし、文面では
『?月?日、私が??宅に押し入って、??をナイフで殺害・・・・・』
となります。
調書の最後には、容疑者の指で印を押します。
逮捕拘留の前に、手指、掌、足指、足紋を全て取られる為、それでもう立派な証明となります。
ちなみに、指紋を取る際に顔の写真も撮ります。
後ろの壁には、身長を示す物差しが貼ってあり、前と横の写真を撮られます。
昼には、食事がある為、また留置場に戻されます。
殆どの人間が、ちょっとした気持ちで起こした事で犯罪者となっているのです。
また、容疑者の聞は、不思議な連帯感が生まれます。
『お前、どうして入ってきたの?』
『いや、いつもの事なんだけどさ、母親を径我させちやって』
『ハハ。それは辛いな』
『ま、いつもの事だから、すぐ出られると思うけど』
食事時
『でも俺、母親好きだよ。親父はどっかの女と逃げたけどさ、一人で育ててくれたしね』
『うん』
『ま、そろそろ、まっとうな仕事につくかな?』
翌朝
(警察官)『おい、??、ちょっと来い』
『はい・・・・・。どうしたんですか?』
『お前のお母さん、収容先の病院で亡くなった』
自分は小さい場所に閉じ込められているが、地球が大きく宇宙を動いている。
自由の身とは何なのだろうか?色んな事を考えます。
留置場の中では手錠を付けませんが、精神的に参ります。
留置場の外では、手錠、腰縄を付けられ、精神的に屈辱を感じます。