この段階で、「自分は重罪人になってしまった」というのを とてつもなく実感する。
(あらかじめわかっていても、かなりくる)
逮捕状や家宅捜索令状は「一瞬」しか見ないから これを意識しないが、押収品目録交付書は 正面の取調官との話し合いのもとで書かれるため、
2時間ぐらいこの文書を見つめさせられる。書き終わったときには、すっかり「もう家には帰れない」という気分になる。
その後に、本式の取調べが 数日間にわたって続き、数十枚にわたって拇印をおしてゆく。
死にたくなるのも当然だ。
取り調べの最終日には、「自分の生い立ち」や「趣味」について調書がとられ、最後に各捜査員が入れ替わり立ち代り入ってきて「眼通し」が行われる。
(捜査員全員が 犯人の目を見ておくことで、次に別の犯罪でみかけたとき、すぐにピンとくるようにする作業。「目あたり」の予備作業みたいなもん。)
このときは できるだけ、目をつむっているか、ヘンな目をしておくことをお勧めする。
ただ、この頃には「ストックホルム症候群(人質が敵に親近感を持つ)」や「リマ症候群(人質が敵の文化や行動を受け入れる)」が発症しており、往々にして
「いやー、最後のほうになると 刑事さんと友達みたいになっちゃったよー!」
などと のたまう状態になる人も多いから、そんな気分は 吹っ飛んでるかもしれんけどな。
だから、観念したときのために、あらかじめ「着替えと洗面具持っていくか?」と逮捕時に言われたら、それに加えて「ハンコも持って行きます」と言っといたほうがいい。いろんな意味で。
せめてハンコのほうが 調書に拇印を押すより、精神的に かなりラクだしな。(本当だ。だまされたと思って持っていけ)
逮捕され、取調べを受けるときは、一流企業の社長並に「はんこマシーン」にさせられてしまうのだ。