「弾性エネルギー説」というのはオレが勝手に付けたネーミングで、元の研究論文は「航空機衝突時のWTCビルの動的挙動について」というタイトルがついている。↓
http://www.kz.tsukuba.ac.jp/〜isobe/163.pdf
この研究の骨子は、航空機の衝突によって建築物の構造全体がどのような影響を受けたのかをシミュレーションするものだ。
同様のシミュレーションは、以前日本のゼネコンがやったのだが、今回は全く違った結論が出ている。
要約して言うと、それは「航空機衝突の影響によって、ビルの強度が著しく損なわれた可能性がある」というものだ。
そして、その弱体化をもたらした最大の要素が「弾性エネルギー」であるというわけ。
詳細は原文を見てもらいたのだが、いくぶん専門的な用語が混じっていて理解が難しいと思われるムキのために原理を簡単に紹介しておく。
(1)弾性エネルギーとは、普段負荷を支えている鋼材が、なんらかの理由で除荷された時、上向きに引き伸される力である。押さえられていたバネが除荷によって伸びる場面を想像すればわかりやすい。
(2)航空機の突入によって、コア支柱の何本かが、上から約4分の1のところで破断した。
(3)そのことによって除荷が起こり、それらの支柱の破断部より下は「伸び上がる」動きをした。
(4)弾性エネルギーによって生じたコア支柱の変位が、床結合部の破断を招き、床が崩落する。
(5)床の崩落によって、コア支柱群はさらに除荷され、これが連鎖することで支柱結合部が破断し、支柱がバラバラになった、あるいは極度に強度が落ちた。
(6)わずかな衝撃、たとえば上層階の崩落で下層階は抵抗を示すことなく崩壊した。
一見すると、なかなか筋の通った原理に見えるが、これのどこが変なのかは稿を改める。