ちょっと艶(つや)っぽい俗謡がある。「浮名立ちゃそれも困るし世間の人に
知らせないのも惜しい仲」…。アナン国連事務総長の胸中を言葉にすれば歌の
文句になるかも知れない◆安全保障理事会の常任理事国を増やす場合、
「日本は当然、そのなかに入る」と語った。加盟国が決める事柄に
私見を挟むのは異例のことで、つい口を滑らせたらしい◆日本と国連の
濃密な間柄は確かに、世間に知らせずにおくには「惜しい仲」だろう。
非常任理事国の経験は過去最多の9回を数える。一国で国連財政の約2割を
支えている。人的貢献の評価も、とみに高い◆そうは言っても立場上、
特定の国と浮名を立てられても困るようで、「加盟国が物事を決める権利を
封じる意図はない」と、報道官室が事務総長発言について釈明文書を
配るひと幕もあったという◆英国のBBC放送が23か国の計2万人余に
尋ねた世論調査では、日本の常任理事国入りについて21か国で支持が反対を
上回った。しのぶれど色にいでにけりわが恋は…アナン氏が漏らした日本恋慕の情は、
国連の機能強化を願う諸外国のあいだで共有されつつある◆反対多数の2か国が、
ゆがんで映る色眼鏡を愛用し、日本憎しの教育に余念がない隣人ふたりというのも
分かりやすい。ひとの恋路を邪魔する野暮(やぼ)なお方はいつの世にもいる。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050322ig15.htm