俵孝太郎の辻斬り説法2005年3月4日号
「興味本位の報道は困る」とは笑止のフジテレビ
ニッポン放送株をめぐるライブドアとフジテレビの激突が連日ニュースになる中で、
フジテレビの社長が「興味本位の報道は困る」といった。この発言に対して、お前ら
にだけはいわれたくないと、思う人は少なくないだろう。
フジテレビで8年半ニュースキャスターを務めた人間としていうが、かつてフジ
テレビは、報道担当専務・報道局長・ニュース室長・報道部長のラインからキャスター
の筆者まで、同じ新聞社・同じ政治部で働いたチームで固めて、報道志望はもちろん
芸能担当希望の連中も、新聞記者教育の流儀で鍛えに鍛えた。
オンエア原稿に最終責任を負うキャスターである筆者が、不出来な原稿を書いた記者
を出先から社に呼びあげて叱りつけ、書き直しを命ずる情景などは、マンガになって
部内で回し読みされ、新人心得の教材になったものだ。
そうして築いた黄金時代のピークが日航機御巣鷹山事故での、生存少女の救出映像だ。
あれは偶然の産物ではない。道なき道を現場に急いだ記者・カメラマンと映像中継技術者
の、報道魂と綿密な計画の所産だった。
しかし星霜移り人は去り、「話題性」や「絵つくり」を最優先にする手合いがニュースを
仕切るようになって、黄金は鉛と化した。いまやどこのテレビニュースも似たような体たら
くだが、「面白くなければテレビじゃない」と放言して興味本位の先鞭をつけたのがフジ
テレビの現経営陣であることは確かだ。
ホリエモンを意外性のあるタレントとしてクイズに起用したのも、興味本位路線だ。
テレビマンは自局の番組に出演してもらうことを、偉そうに「使う」というが、「使った」
つもりの男に使われそうになって周章狼狽したのが、いまのフジテレビの姿だ。