1月16日 日本人は好きですか?
ホテルのロビーで、一人のおばちゃんが大きな声で電話をしていた。アクセントや
単語からすぐにイラク人だとわかった。完璧に聞き取ることはできないが、どうも
米兵とのトラブルのことを話しているということだけはわかった。周りにいたイラクの
友人たちが説明してくれた。おばちゃんは家族と一緒に車でヨルダンに向かっていた。
やっとイラク側の国境にさしかかったところで米軍から発砲を受けたそうだ。死者は
出なかったが、おばちゃんは相当驚いたらしい。数日前にも同じような話をプロジェクトの
メンバーから聞いた。
おばちゃんは電話を切ると、私の方を振り向いて「ハロー!アッサラームアレイクム!」と
言って微笑んだ。知らないイラク人に微笑まれるということが最近なかったので、
ちょっと驚いた。思わずカスムに「このおばちゃんは日本人が好きなの?」と聞いて
しまった。もちろん、以前ならそんな質問はしない。イラク人は戸惑うほどの親日家揃い
だった。けれど、最近はそんな風には言えない。日本人のこと、怒ってる。これは
紛れもない事実なのだ。
おばちゃんはバグダッドから来ていた。自宅はカラダ通りだと言っていた。ほんの
少しの英語を混ぜて話しかけてくれた。カスムがおばちゃんの様子を見て大丈夫と判断
したのか、私がバグダッドにいたことを話した。おばちゃんは私の家がカラダにあった
ことを知ると、「ご近所さん」だとうれしそうにしていた。こんな風だった。去年までは
こんな風に話ができていた。
おばちゃんはバグダッドもますますひどい状況にあると嘆いた。「マーク カハラバ。
マーク ベンジン。マーク マイ。(電気もない、ガソリンもない、水もない)」。
電化製品が何もないならそれほど停電にストレスを感じないかもしれないが、イラク人の
家庭は電化製品であふれている。テレビ、ビデオ、冷蔵庫、パソコン、プレステ。
去年の冬もガソリンがなかった。灯油を手に入れるのが大変だった。今年も寒い冬が
やってきて、燃料の価格は20倍にもなっている。今度は水まで出なくなってしまった。
挙句の果てには、無差別発砲の雨あられ。おばちゃんは疲れた表情だった。でも、
おばちゃんは笑いかけてくれた。私が日本人だとわかっても笑いかけてくれた。
ありがとう、と言いたい。
ちなみに、バグダッドは夜間10度以下に下がる。ところが、ファルージャやラマディ
などのアンバールはな、なんとマイナス2度まで下がることもある。朝は水溜りの表面が
凍っていることもしばしば。水道管も凍りつき、蛇口からツララが!先日は氷が降った
そうです!夏は50度を越える酷暑で、冬はマイナス気温。日本も今年はすごかったけど。
# by nao-takato | 2005-01-17 00:07