【人間的料理】産経の賛戦報道をチェキすれ26【オムレツ】

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801国連な成しさん
タリバン時代のアフガニスタン。十三歳の少女マリナは相次ぐ戦禍で男手を失った一家を支えるため、おさ
げ髪を切って「少年」になる。女性が身内男性の同伴なしに外出すれば、それだけで罪になった。「マリナ少
年」はカブールのミルク屋の店員に潜り込むのだが…。

 ▼東京で今年、評判を呼んだ映画「アフガン零年」の冒頭シーンだが、きのう投票された同国初の大統領選
で唯一の女性候補、マスーダ・ジャラルさん(四一)は「屋外で仕事をした」だけで投獄された経験を持つ。
つい数年前のことだ。

 ▼「悪貨は良貨を駆逐する」という。この四半世紀、アフガンはソ連軍、タリバン…と入れ替わり侵入した
巨大な「悪貨」に数百万もの住民が国外に文字通り駆逐された。今回の大統領選では隣国パキスタンなどに逃
げた大量の難民にも投票用紙が配られ、有権者一千万人中、四割が女性だ。

 ▼アフガン民主化のバロメーターの一つは女性解放度といわれ、アテネ五輪にも女性選手二人が参加した。
しかし一度はびこった「悪の華」の根も深い。タリバンは資金源の麻薬栽培に巣食って民主化阻止のテロを繰
り返す。

 ▼今年のノーベル平和賞にケニア女性の植林・人権活動家、ワンガリ・マータイさん(六四)が決まった。
昨年の受賞者もイランの女性人権活動家だった。医師で国連世界食糧計画(WFP)職員でもあったジャラル
さんの注目度も高まるだろう。

 ▼だが、アフガン社会では男尊女卑の陋習(ろうしゅう)がなお幅を利かせ、「悪」は二重、三重に根を張
っている。マリナもその後、街の「少年」全員が招集された宗教学校で女と見破られたあげく、老人の四番目
の妻にされてしまう。「良貨が悪貨を駆逐する」気の遠い闘いはまだ緒についたばかりだ。