【うなる!】産経の賛戦報道をチェキすれ10【大向こう】

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827国連な成しさん
 明治の作家・国木田独歩に『牛肉と馬鈴薯(ばれいしょ)』という作品がある。
ごく短い小説で、ある冬の夜、東京・芝のクラブに集まった人びとが議論をする。
牛肉を「現実」、馬鈴薯を「理想」にたとえて人生観などをたたかわす。
 ▼馬鈴薯党は、ジャガイモは北海道ではたくさん生産できるし、人間の食物と
して理想的であると主張する。それに対し牛肉党は、肉のほうが栄養があるし実
際に食べてうまいじゃないかと反論する。しかし食物としてはどちらも大切で、
イモも肉も食うという恋愛観や哲学が生まれていく…。
 ▼クリスマスの贈り物でもあるまいに、ついに米国でBSE(牛海綿状脳症、
狂牛病)が発生した。日本国内の牛肉市場で米国産牛は26%を占めるというか
ら、輸入停止をふくめて大きな「食」の問題になった。年の瀬の市場や食卓が直
撃されている。
 ▼しかしここは独歩の議論にならって、「理想」と「現実」に分けて考えて
みよう。理想としては日本には一頭も入れないのがいい。脳や脊髄(せきずい)
が汚染された牛を食べることで、致死性の異常プリオンが発症する危険性はゼロ
ではないからだ。
 ▼だが現実には、米国の飼育牛は一億頭もおり食肉処理牛も三千五百万頭に
のぼる。そのうちBSEがみつかったのはたった一頭である。日本ではこの二年
間に二百六十万頭のうちBSE牛はわずか八頭だった。この牛を食べて人間が病
気になる危険性は極めて低い。
 ▼報道によると、クリスマスの夜の日本の焼き肉店や外食店では肉の売り上げ
は決して悪くなかったそうだ。消費者は二年前の学習経験を積んでいるから、賢
明で冷静な対応だったらしい。バランスがとれていたのである。ただし前提には
あくまできちんとした情報開示が原則である。