【うなる!】産経の賛戦報道をチェキすれ10【大向こう】

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538国連な成しさん
米CNNテレビのインタビューに答えているリビアの最高指導者・カダフィ
大佐が、敬虔(けいけん)なる伝道者のように見えた。俳優の丹波哲郎さん似
の風貌(ふうぼう)で、北朝鮮やイランに対し「自国民に降りかかる悲劇を避
けるために、リビアを見習え」と。

▼リビアの“国是”だった大量破壊兵器開発計画を放棄したのだからこれに
は驚く。国際社会と協調する道を選んだのは九カ月にわたる米英の極秘交渉の
結実だというが、しかしそれが“話し合い”や“対話”の成果などといったら
おかしい。国際社会で笑われる。

▼「テロ支援国家」と名指しされたリビアは、イラク戦争という非情な現実
をまのあたりにした。逃亡していた独裁者がねずみのように穴ぐらから引き出
される光景をカダフィ大佐も見た。彼のマントを脱がせたのは、太陽ではなく
北風だったのである。

▼ちかごろは国際政治でも世界戦略でも、何かというとイソップ寓話(ぐう
わ)の「北風と太陽」が引き合いに出される。北風は悪玉あるいは敗者、太陽
は善玉あるいは勝者として登場するが、しかし現実の国際関係はそんなに甘く
ない。子供向けの話がそのまま通用する世界ではない。

▼童話の世界だってそうなのだ。『本当は怖いグリム童話』という本があっ
たが、グリム兄弟が執筆した初版では、「白雪姫」に出てくる意地悪な継母の
魔女はじつは本当の母親だった。「ヘンゼルとグレーテル」も、当時のヨーロ
ッパでは飢餓で子捨ての風習があったという。

▼童話や寓話の裏には思わぬ人生の真実がある。北東アジアで国民を飢えさ
せている独裁者に、対話や話し合いをどうやって実現させるというのか。きれ
いごとの“太陽政策”が通用するはずがない。能天気な寓話はいい加減にして
もらいたい。