【うなる!】産経の賛戦報道をチェキすれ10【大向こう】
フセイン元イラク大統領が生け捕りになったぶざまな末路について、北朝鮮では
一週間たった今も一言の報道もない。「沈黙」が逆に独裁者の衝撃の深さを物語
っているが、専門家の間では「金正日総書記は本当に怯(おび)えている」とい
う見方が支配的だ。
▼「中東の無法者」を遂に追い詰めた米国の執念と情報網、加えてひとまず肩
の荷を下ろして自信回復したブッシュ政権の目はまたぞろ北に向けられる。いま
だに大量破壊兵器が発見されないイラクと違い、北は事実上の核保有宣言まで行
って攻撃の根拠を自ら与えてしまってもいる。
▼十四年前のクリスマス、ルーマニアのチャウシェスク大統領はたった一時間の
軍事裁判で銃殺刑に処された。「民族浄化」のミロシェビッチ元ユーゴスラビア大
統領は今、国際戦犯法廷の被告人席だ。そこにフセイン氏の拘束である。
▼国民には徹底的に情報を封鎖しながら自分は世界中のテレビを見ているといわ
れる金総書記は、三人の先輩独裁者の三様の末路を映像で瞼(まぶた)に焼き付け
たはずだ。どの道でもより取り見取りだが、「生き恥」を避けるため中国やスイス
などへの亡命もひそかに画策しているとの観測もある。
▼とはいえ北には人民軍の中に通称「穴掘り部隊」があり戦後五十年以上も国中
に穴を掘り続けている。山中の岩盤をくりぬき核攻撃にも耐える堅牢な地下室もあ
るそうな。さては「その時」に備え、秘密の地下宮殿を強化して潜伏する算段でも
始めたか。
▼脱北者は増え続け、金総書記側近の「交通事故死」や「病死」も相次いでい
る。孤独な独裁者の「末路の怯え」は国際社会には吉と出るか、凶か。拉致事件
や六カ国協議での軟化はあるか。ここは日本の情報網をフル回転させる時だ。