68 :
雨城雪矢:
こんばんわ、ほとりさん。
雨城雪矢(あまぎゆきや ♀)と申します。
ほとり改さんの紹介で来ました。私は昴治第一主義です!
たとえ彼が「アニメ至上最弱の主人公」と言われようとも昴治が好きです!
なので「昴治が幸せならそれでOK!」な人間です。
ですから、人によっては「これは違うんじゃ・・・?」とかな話しがあっても
気にしないで下さい。
それでは私の小説をどうぞ。
無限のリヴァイアス −告白−
「イクミ、何とかしろ…!!」
悲鳴のような昴治の声が響き渡る。
何度目かの戦闘であり、馴れると迄はいかなくとももう少しは落ち着いて対処出来るであろう情況なのに、この日の昴治は異様に恐怖心を募らせていたのだ。
リフト艦でバイタル・ガーダーを操っていたイクミは、通信機に映し出された昴治の、不安で泣き出しそうな表情を目にして、叫び返す。
「大丈夫だって、俺に任せろ…!!」
そんなイクミの様子を前の席からちらりと視線だけを上げて見た祐希は、内心で盛大な舌打ちを洩らしている。
祐希にも昴治の声は届いているし、表情だって見えている。
自分もこの場所に居る事を判っている筈なのに、昴治は決して祐希には声を掛けてはこない。
判ってはいる事だが、原因も自分にある事だが、祐希は面白くなかった。
しかし今は戦闘中だ。
敵の動きに意識を集中しなければならない。
イクミから視線を外して作業に没頭しようとした祐希だが、勢いに任せてイクミが口にした言葉に完全に身体が固まってしまった。
「イクミ…!」
「大丈夫だ…!昴治、お前は絶対に、俺が守ってやるから、心配するな…!!」
祐希だけでなくこの言葉を耳にした者全員が一瞬首を傾げて動きを止める。
「だから早く何とか…!……??あれ…?」
反射的に叫び返していた昴治も、イクミの言葉に妙なものを感じ取り、ホケッとした表情を浮かべて首を傾げた。
「えっと…今…あ、あのさ、イクミ…?」
「何ー!?」
69 :
雨城雪矢:2001/06/29(金) 02:56
「いや、さっきの台詞…えっと、和泉に伝えれば、良いのか…?」
戦闘中に似つかわしくない言葉だが、取り敢えず、昴治はそう言うしかなかった。
昴治の言葉に他の者達もそうだよなあ…と気を取り直して手を動かす。
イクミはずっと手を動かしており、只一人、祐希だけがまだ固まっているが。
「え、こずえ…?何で…?」
「あの、だ、だってさ…イクミ、何時も和泉に守ってやるって言ってたから…」
「そりゃ言ってたけど、今のはお前ってちゃんと言ったぞ」
「えーっと…それって、俺の事…??」
「そーだよん、他に誰がいるってーの…?」
「いや、まあ、確かに、何とかしろって言ったのは俺だけどさ…」
「うん、だから、昴治は俺が守るって。だーいじょうぶ、まっかせなさーい!!」
「えぇっと…そうじゃなくて…あれ…?」
何とははっきり言えないが、何処か妙な感じがする。
女の子に対してと同じ台詞を言われても、昴治の心中は混乱するだけなのだが。
いきなり衝撃が走り抜け、立ち上がっていた昴治はバランスを崩して床に倒れ込んだ。
「うわっ…!」
敵の砲撃がリヴァイアスに命中したらしい。
かなり大きな衝撃に全員が必死で何かにしがみついている。
「昴治、昴治…!?」
いきなり画面から消えてしまった昴治を、イクミは必死で呼んだ。
「いっててて…」
転んだ拍子に何処かに頭をぶつけたらしく、昴治は左のこめかみの辺りを押さえて起き上がる。
また倒れでもしたら適わないので、きちんと椅子に腰掛けると、画面には必死の形相で呼びかけるイクミが映っていた。
「昴治…!大丈夫か…!?」
「ああ…一寸ぶつけたかな…」
「あら、本当…青痣になってるわ…」
何時の間にか昴治の隣にファイナが立っていて、押さえていた昴治の左手を取って痣を眺めている。
「え、ほんと…」
「ぬわぁにいぃぃ…!!」
70 :
雨城雪矢:2001/06/29(金) 02:58
ファイナの言葉に、画面の向こうでイクミが恐ろしい程押し殺した声で呻く。
えっ、と思って昴治が視線を向けると、イクミははっきりと怒りを露わに全身をぶるぶると震わせていた。
「イ、イクミ…?」
訳が判らずきょとんとした声で呼び掛けてみるが、イクミにその声は届いていなかった。
イクミは物凄い勢いで手を動かしながら、叫ぶ。
「俺の昴治に怪我させるなんて、ずえぇぇぇっっっっったい、許さねえ…!!!」
バンッ!とリターンキーを叩き、間髪入れずに手を動かすイクミ。
だが、動いているのはイクミだけだった。
「俺の昴治」発言に、聞いていた者全員が、再び、完璧に、動きを止めてしまっている。
暫く沈黙が続き、声を発したのはファイナだった。
「尾瀬君…」
「どりゃぁぁぁ…!!」
「尾瀬君…」
「このこのこのこの…!!」
「尾瀬君…!!」
「うっせーぞ、今忙しいんだ!!」
「さっきの発言、どう言う意味なのかしら…!?」
71 :
雨城雪矢:2001/06/29(金) 02:58
「あー!?」
「言ったでしょ、俺の昴治、とか何とか…!?」
「言ったぞ!それがどうした!?」
「だから、どう言う意味って聞いてるのよ!」
「そのまんまだ!!」
それじゃ判らん、と思ったのは、全員だ。
「だから…!」
「ファイナ・S・篠崎!俺の昴治に気安く触ってんじゃねえ…!!」
唐突なイクミの言葉にファイナは一瞬で頭を沸騰させる。
ファイナは昴治の左手を持ったままだった。
「何言ってるの!?あなた、訳が判らないわよ…!!」
珍しくも激昂しているファイナに、イクミは負けじと叫び返す。
「昴治は俺のものだー!!!」
きっぱりはっきりと宣言したイクミに、誰もがどんな反応をして良いものやら判らない。
何人かはグラリと、真剣に眩暈を感じて身体をフラつかせ、そのうちの一人、シュタイン・ヘイガーは誤って全艦放送のスイッチをONにしてしまった事に、全く気づけなかった。
イクミの宣言に、真っ向から反発したのはそれ迄固まっていた祐希だ。
祐希は荒々しく音を立てて立ち上がると、拳を握り締めてイクミを睨み付ける。
「てめえ…黙って聞いてりゃ勝手な事ばっかりほざきやがって…!」
「黙ってるそっちが悪い、ブラコン!」
「な、何だとう…!」
「ブラコンが昂じて自分だけ構ってほしくて、でも素直になれないから反抗期に乗じて一々絡んで気を惹こうとしているお前の態度はな、当の昴治以外の人間にはバレバレなんだよ!!」
72 :
雨城雪矢:2001/06/29(金) 02:59
身体中に《図星》を突き刺し全身を震わせながらも硬直すると言う器用な芸を披露する祐希に、イクミは畳み掛けるように言葉を発する。
「お前みたいな捻くれ者にはな、昴治は勿体無いんだよ!あいつは俺がきちんと守って、大事にしてやるから、安心してブラコン卒業しな!!」
「…んだとう…」
ブチッと切れたらしい祐希が、ガバッと顔を上げてイクミを睨み付けた。
「お前なんかに渡すものか…アニキは、俺のものだー!!!」
こちらもはっきりきっぱりと宣言した祐希に、全員が脱力してしまった。
昴治は二人の発言の意味を理解出来ず、困惑して狼狽して、何とか状況を確認しなければと思う。
思うのだがはっきりと意味を問い質して却ってくるであろう言葉に、自分の精神が耐えられるだろうかと不安にもなる。
二人の睨み合いが続くと当然だがバイタル・ガーダーの動きが止まり、敵からの攻撃を浴びる。
リヴァイアスが再び激震すると、昴治は現状を認識して叫んだ。
「イクミ、祐希、手を止めるな!俺達を殺すつもりか…!?」
特に考えて口にした言葉ではなかったが、イクミと祐希には効果覿面だった。
但し、昴治は俺達と言ったのだが、二人には俺と聞こえたようである。
「サブ・ルーム、何やってる!5番と6番を回せ!」
「カレン、10・11・13番、早く!!」
73 :
雨城雪矢:2001/06/29(金) 02:59
猛烈な勢いでイクミと祐希が動き出すと、動きを止めていた全員が慌てて作業を再開した。
「このこのこの、よくも昴治に怪我を…!」
「落ちろー!!邪魔なんだよ、てめえらは…!」
「お前も邪魔だからな、祐希!」
「てめえの方が邪魔なんだよ!今更俺とアニキの間に割り込むんじゃねえ!」
「お前と昴治の間にはな、埋めようのない深くて広い溝があんだよ!勘違い大賞だね!」
「やかましい!そっちこそ、彼女いるんだろうが!」
「こずえは別だよん、可愛いけどまだ俺の中ではちゃんと彼女になってない。俺の本命は昴治だ!!」
「こきゃあがれ!!この八方美人野郎!!アニキはフェミニストの気があんだよ、そんな事言ったら嫌われるぜ!!」
「はっはっはーだ。こずえはちゃんと判ってるよん!リーベ・デルタで出会った瞬間、俺は昴治に一目惚れしたのさ!!」
「ほざいてろ!俺なんか生まれてこの方、アニキ以外は目に入ってねえんだよ!てめえとは年季が違うんだ!!」
「恋愛に年季なんか関係ないね!お前じゃ絶対、昴治を不幸にする!!」
「それはこっちの台詞だ!誰がてめえなんかにアニキを渡すかよ!!」
怒鳴り合いながらも、二人はしっかりと手を動かしていた。
興奮しているせいもあってか、今迄以上にバイタル・ガーダーの動きが良い。
イクミと祐希の会話(?)の内容が非常に気にはなるものの、目の前の敵を倒す事が最優先事項であるから、リフト艦のメンバーは顔を引き攣らせながらも作業を続けている。
勿論、一番困惑して混乱していたのは、昴治だ。
74 :
雨城雪矢:2001/06/29(金) 03:00
呆然とした表情で通信機の画面に分割されて映っているイクミと祐希を見ている。
頭が働かなかった。
考えたくなかった。
昴治の心情を最も的確に体現していたのは、昴治とのシンクロ率が高いネーヤで、ネーヤはリフト艦の上部通路で、意味もなく踊っていた。
やがて、イクミと祐希の声が綺麗にハモる。
「終わりだー!!」
次の瞬間、敵は全滅していた。
互いを睨み付けながら肩で息をする二人を、それ迄黙って眺めていたブルーとユイリィが、チラリと視線を交わして同じ事を考えているのを確認する。
『相葉昴治、使える…』
人の数だけの様々な思いが交錯する中、昴治は只々、呆然としていた。
我に返ったのは、呼び掛けるイクミの声の為だ。
「昴治ー、終わったよん!」
「え…あ、ああ…勝ったんだな…」
「とーぜんでしょ、ちゃんと守るって言ったじゃん」
75 :
雨城雪矢:2001/06/29(金) 03:01
今の所ここまでです。短くてすみません。
ほとりさんの趣味に合うように頑張ります。