351 :
自己:
…
……
コツ、コツ、コツ
近付いてくる足音に
彼女の体は緊張で堅くなった
”ダメ…顔を上げれない…”
ここは待ち合わせ場所である駅前のロータリー
彼女はベンチに座って彼を待っていた
待ち合わせ時間の数分前
彼から教えて貰っていた色の車が
ロータリーに入ってきて
隅のほうに停車した
352 :
自己:2013/01/30(水) 18:54:37.31 ID:jQldey580
その車から
男が降りてこちらを見るのが見えた
その瞬間、彼女は目をそらせて
下を向いた
”彼だ…”
彼と会うのは今日で二回目
>>331-335 一回目は街で偶然出会ったものの
彼に用事があり
また別の日に会う約束をして別れた
その約束の日が今日だった
353 :
自己:2013/01/30(水) 18:59:03.21 ID:jQldey580
…
”一回目より緊張するな…”
街で偶然出会ったとき
先に声を掛けたのは彼女のほうだった
一回目は彼を見付けた嬉しい気持ちが強く
勢いで声を掛けたが
いざ改めて、待ち合わせて彼と会うとなると
想像以上の緊張を感じていた
”ちゃんとお話できるかな…”
354 :
自己:2013/01/30(水) 19:03:17.07 ID:jQldey580
その時
♪♪♪♪♪♪♪
彼女の携帯がメールの受信を知らせる
メロディを鳴らした
”着いたぞ”
彼からのメール
彼女は彼の車が停まった場所を
見ることができず
違う方向にしか顔を向けることが
できない
”ダメ…見れないよ…”
355 :
自己:2013/01/30(水) 19:07:59.36 ID:jQldey580
”…でも”
彼女は思い切って
彼の車が停まっている場所を見た
彼は車の横に立って
自分のほうを見ているのが見えた
車のほうを見た彼女に気付いて
彼は手を上げたが
彼女は恥ずかしさから、また目をそらせて
顔を下に向けてしまった
”どうしよう…動けない”
356 :
自己:2013/01/30(水) 19:12:40.71 ID:jQldey580
コツ、コツ、コツ
足音が聞こえてきた
こちらに近付いてくる足音
彼女は顔を上げることはできなかったが
自分に近付いているのが
彼だと感じていた
コツ、コツ………コツ
足音が止まる
彼女の前で
うつむいたままの彼女に
足音の主は優しく声を掛けた
『よぉ、待ったか?』
357 :
自己:2013/01/30(水) 19:16:44.71 ID:jQldey580
彼女は
ゆっくり立ち上がると小さな声で答えた
「…今きたとこ」
『そうか、あのさ…』
そう言うと彼は
彼女の頭の上に手を置いた
「えっ?!」
驚いてビクッと体が動く彼女
358 :
自己:2013/01/30(水) 19:22:08.58 ID:jQldey580
彼は
笑いながら言った
『チビだな』
彼女はまだ顔を上げることができず
自分の顔が
赤くならないことを祈っていた
何も答えない彼女を見て
彼は彼女の頭の上に乗せた手を
彼女の肩に移動させて
その手で彼女を自分のほうに
抱き寄せた
『緊張するか?
ゆっくりでいい…これから徐々に
俺になれていけばいいさ』
359 :
自己:2013/01/30(水) 19:27:17.76 ID:jQldey580
彼女は
頷くと目線をゆっくり上へ上げて
彼の目を見た
「…あのね」
彼女がずっと彼に言いたかった言葉
今日伝えようと思っていた想いを
言おうとした
「…あのね、私…ずっと………」
『ん?』
優しく問いかけるような彼の視線を
見ていると
彼女はまた、彼から目をそらせてしまい
言葉を詰まらせた
360 :
自己:2013/01/30(水) 19:32:54.44 ID:jQldey580
『ずっと…何?
ずっと好きだった…とか?
それだったら言われなくても知ってるぞ』
笑いながら言う彼に
彼女は
「それは勘違いです、バーカっ」
と顔を真っ赤にしながら
彼から体を離して、彼を睨み付けた
「それに、こんな所で抱き締めちゃ
ダメだよ
人がいっぱいいるし」
361 :
自己:2013/01/30(水) 19:37:05.65 ID:jQldey580
彼は
彼女をしばらく見つめたあと
真面目な表情で彼女に言った
『これからさ…
たくさん同じ景色を見ようぜ、俺とお前でさ』
そう言うと彼は
彼女の手を掴んで車を停めている場所に
向かい歩き出した
彼女は彼に手を引っ張られ
歩きながら彼の顔を見ると
彼は少し照れているように見えた
362 :
自己:2013/01/30(水) 19:43:45.23 ID:jQldey580
彼は
前を向いたまま明るい声で言った
『ここがダメでも
別の場所ならいいってことだよな』
彼の言葉に
彼女は足を止めた
手を繋いでる彼の足も止まる
「えっ?えっ?私そんなつもりで
今日来たんじゃないよ」
早口で言う彼女に
彼は優しく微笑んだ
『冗談だ…だけど
さっき、お前を抱き締めたことは
冗談なんかじゃないからな
覚えておけ』
終わり