257 :
自己:
…
……
………
『一年前の約束、覚えてる?』
「一年前?…何だろう、覚えてないな」
『ストラップは?』
「何を言ってるんだ?それより約束って何だ?」
『うげげ』
「お前、なに言ってるんだ?w」
2ちゃんで出会った二人は
お互いに相手に対して一歩踏み出せずに
ずっと一定の距離を保って
接してきた
258 :
自己:2013/01/17(木) 19:41:41.88 ID:9XMU541j0
彼女は
溜め息をつくと『またね』とだけ書いて
スレを閉じた
”一年前のことだもん、覚えてなくて当然だよ”
彼女はもう一度溜め息をつくと
部屋に貼っているカレンダーを見た
ある日にちに予定シールが貼ってある
それは今週の日曜日
明日だった
”…でも、いっかw
あの時だけでも同じ気持ちになれたんだしね”
彼女はまた溜め息をつき
ベッドに入って目を閉じた
259 :
自己:2013/01/17(木) 19:46:29.68 ID:9XMU541j0
次の朝
窓の外は一面の雪景色
”どうしようかな…約束を忘れていたし
この雪だと開いてないだろうし”
彼女は窓の外の雪を見て
一瞬ためらったが最初の予定通り
出掛けることにした
”少しだけ待ってみよっと
そのほうが気持ちも納得するだろうし”
彼女は新しく買った服を着て
手袋をつけると雪景色の中に出ていった
260 :
自己:2013/01/17(木) 19:51:03.46 ID:9XMU541j0
…
彼は
布団の中に入ったままTV画面に映る
ニュースを見ていた
「ひでぇ雪だな、今日は引きこもるか」
彼は布団の中から手を伸ばして
パソコンを掴んで
自分の目の前に置いた
そして2ちゃんを開いて自分のスレを
見る
「結局”一年前の約束”って何だったんだ…」
261 :
自己:2013/01/17(木) 19:56:02.32 ID:9XMU541j0
一年前
彼女には付き合ってる男がいた
でも彼女は別れたがっていたんだ
だけど
複雑な事情があって
彼女は男とは別れられないって
言っていた
自分からは別れ話はできないと…
俺はあの時、彼女の相談にのっていた
あの時に何を約束したんだ?
一年後に何を?
「思い出せねぇ…」
その時TVから流れてきた【粉雪】に
彼は彼女とのオフを思い出した
262 :
自己:2013/01/17(木) 20:02:20.81 ID:9XMU541j0
俺は
彼女と一度だけ会った
仕事で彼女の住む土地に行くことになって
当日、急に会うことになったんだ
皆には言わないでおこう
そう二人で決めて
その後、2ちゃんでは勿論
メールでもあの日について話すことは
なかったんだ
あの日
彼女は俺の住む土地の近くに
引っ越すことになるかも知れない
って言っていた
だけど、その後
引越ししたのか止めたのかは聞いていない
263 :
自己:2013/01/17(木) 20:07:20.53 ID:9XMU541j0
突然
TVの音が大きくなり
ニュースでは各地方の観光地や遊園地に
降る、雪の景色が映っていた
USJの賑やかな音楽
「ああ!そうだった!」
彼は布団から出て、急いで着替えると
机の上に置いていた
USJのストラップのついた携帯を掴んで
雪の中に出ていった
264 :
自己:2013/01/17(木) 20:13:21.29 ID:9XMU541j0
あの時
初めて会った時
”会うのはこれが最初で最後だね”
って二人で決めたんだ
だけど
”もし一年後、お互い一人になっていたら会おう”
そう約束した
そして
”この場所で”
彼女はそう言うと、俺がプレゼントした
俺の地元の遊園地のストラップを指差した
合言葉は”ストラップ”
そう、俺と彼女はあの時ストラップを
交換したんだ
265 :
自己:2013/01/17(木) 20:21:15.43 ID:9XMU541j0
「もう…帰っただろうな」
約束の時間は11時
俺と彼女が初めて会った時に待ち合わせた
時間だ
待ち合わせ場所は俺の地元の遊園地
遊園地に着くと、遊園地は閉まっていて
【雪のため本日の営業は中止します】
という看板が
入り口ゲートに立てられていた
「もう12時だもんな…」
溜め息をついて、もう一度看板を見る
よく見ると看板の下に
小さな雪だるまが何個か並んでいた
”彼女が作ったものじゃないだろうか…”
266 :
自己:2013/01/17(木) 20:29:21.56 ID:9XMU541j0
『その雪だるま
あなたのスレのメンバーだよ!』
背中から聞こえてきた声に振り向くと
そこに居たのは彼女だった
彼女は手に小さな石や木の枝を持っていて
僕の隣りを通り過ぎると
看板の前に行き、雪だるまの前で屈んだ
『これは、まきひと』
そう言うと1つの雪だるまの顔に
石で目を作った
『これは〇さん』『こっちは△さん』『これは…』
雪だるまの1つ1つに
石や木の枝で顔を作っていく彼女
最後の1つには顔がなかった
「もしかして俺?
どうして顔がないんだ?」
彼は最後の雪だるまを指差して笑った
267 :
自己:2013/01/17(木) 20:35:24.38 ID:9XMU541j0
彼女は
急に立ち上がると手袋を外して
両手で彼の頬をそっと触った
『ここにあるから』
彼は彼女を抱き締めると
「忘れていてごめんね」と彼女の
耳元で呟いた
涙ぐみながら首を振る彼女
彼は彼女の涙を自分のコートの袖で拭いた
「どこか暖かいとこに行こうか」
『うん………あっ!』
「どうした?」
彼女は笑いながら答えた
『…まきひと踏んじゃったw』
268 :
自己:2013/01/17(木) 20:41:50.62 ID:9XMU541j0
「…ひでぇなw」
彼女は踏んだ雪だるまの前で屈むと
形を綺麗に整えて
雪だるまの体のところに四角い石を
置いた
『これで大丈夫、まきひと復活!』
「その石は何だ?」
『フリカケだよ!まきひと好きでしょw
じゃあ
暖かいお店の検索しよっと!』
そう言ってポケットから取り出した
彼女の携帯には
一年前に彼が渡した遊園地のストラップが
揺れていた
終わり
…
269 :
自己:2013/01/17(木) 20:46:34.87 ID:9XMU541j0
この話は
ずっと前に夢板で書いた話の”その後”を
書いた話で
夢板で書いた話は何処かに消えてしまった
”誰か一人の記憶に残れば、それでいい”
これは、ある自己板の固定さんが
言った言葉
僕も同じ気持ちです
”誰か一人の記憶に残れば、それでいい”